アントラーズで長年主将を務めた本田泰人が引退した。ここ最近出場機会がめっきり減ってしまっており、ある程度予想された事とは言え、感慨深いものがある。
私が本田泰人を認識したのは、今なお語り継がれる87−88年の高校サッカー選手権帝京高−東海大一高。帝京の守備的MFとして広範な活動量でチームを支えていた。以下余談、この試合の本田の敵方の大黒柱だった澤登の引退試合が過日行われたが、本田が呼ばれていなかったのはちょっと残念。もっとも、当時の本田のチームメートであり現役時代から見違えるほどの体型となっていた礒貝が話題になっていたな(でも礒貝の膝にテーピングが巻かれていなかったには何かしら嬉しかった...ついでに澤登引退試合で体型劣化の礒貝のプレイ振りを観戦した友人が「でも、本当に礒貝は巧かった」と語っていた事も付け加えよう)。
帝京高卒業後、本田は当時のJSLの中堅チームだった本田に加入する(ややこしいな)。当時は高校のトップレベルのプレイヤのほとんどは大学に進学し、多くの選手が必ずしも強化に恵まれない環境下で伸び悩んでいたため、本田の進路選択は好意的に受け止められた。そして、加入2年目の90−91年シーズンには、本田を始め、黒崎、北澤、石川康と言った、20歳前後の選手が機能、JSLで3位に躍進する。当時のJSLでこれだけ優秀な若手選手が機能したチームは珍しかった。個人的に本田のプレイと言うと、このシーズン浜松都田競技場で見せてくれた、メシアス(本田で長きに渡って活躍したMF、80年代のJSLを代表する名手)と北澤とのコンビネーションが、最も強烈な印象になっている。当時このチームを指揮した若き今井雅隆監督(現ヴォルティス監督)の手腕は多いに評価されるべきものだろう。
ところが、本田(チームの方)がJリーグ出場を見合わせたため、北澤が読売に移籍したのを皮切りに次々と有力選手がチームを去る。本田(選手の方)も、黒崎や長谷川祥人らと共に、住友金属=鹿島アントラーズに移籍する事になる。もし、この頃本田技研が浜松をホームタウンにJを目指していたならば、日本サッカー界がどう変遷したかを想像するのも、また愉しい事ではある。
ちなみに、残念だったのはバルセロナ五輪のレギュレーション。1969年8月生まれ以降の選手に出場権があったのだが、本田は6月生まれ。仕方のない事なのだが、本田があの五輪代表に入る事ができていればと今でも思ったりする。
アントラーズで守備的MFのレギュラを完全に確保した本田は、95年代表入り。一時は山口素弘と共にドイスボランチの定位置を確保した感もあった。その後、名波がボランチにコンバートされたためフル出場は叶わなくなったが、フランス予選でも安定した好プレイを見せていた。しかし、フランス本大会では、服部、伊東らの若手が台頭してきた事もあり、メンバ入りはできなかった。
とは言え、90年代後半のアントラーズ全盛期に、アントラーズの主将として君臨。豊富な活動量と、粘り強いマーク(汚いとの評価もあったが、結果的に敵を押さえ込むマークの厳しさは秀逸だった)、やや常識的とは言え落ち着いた展開。味方にとってこれほど頼りになり、敵から見ればこれほどいやらしい選手はいなかった。
このような愚行があったのも、それはそれで1つの歴史と捉えるべきだろう。
アントラーズと言うクラブは、フロントの経営感覚がなかなかのものがある。優秀な若手選手を丹念に獲得し、ベテランとなったプレイヤを巧いタイミングで放出するのが得意なのがその表れ。しかし、そのアントラーズがここ数年出場機会が明らかに少なくなっていたにも関わらず、本田だけは放出しなかった事は重要ではないか。本田の雇用には、結構な高額な報酬が必要だったはずにも関わらずだ。アントラーズフロントは、本田だけはどうしても放出したくなかったのだろう。この事こそ、全盛期のプレイ以上に、本田泰人と言う選手の偉大さを示すのではないかと思えてならない。
2007年02月09日
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もう現役時代の給料もらえないし離婚かなあ。
ボランチをやる選手が固まらなかっただけで本田が特別だった訳じゃない気がします。<br />
大黒柱の中田コは出ていくわ、青木は安定しないわ<br />
フェルナンドは年中怪我がちだわで「保険」の意味合いが強かったような。<br />
去年、増田が中盤でけっこう使えたので青木と組ませれば<br />
一人前と目処が立っての放出なんじゃないでしょうか。<br />
サブとしてはまだまだやれたと思いますけど。<br />
奈良橋も内田が使えなかったら、まだいたでしょう。
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アントラーズと言うクラブは、フロントの経営感覚がなかなかのものがある。<br />
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ビスマルクを過去に因縁に囚われず引き抜いたりしたことにはなかなかと思いましたが、最近の柳沢の扱いなんか見ているととてもそうは思えないのですが。
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また1つの時代が終わった感じがあります。<br />
あの気の強さ、粘りっこさは間違いなく世界トップレベルでしょう<br />
ビスマルクも本田をべた褒めしてますが、やはり見方にとってはあれほど頼りになる、心強い選手はいなかったと思います<br />
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愚行と武藤さんが評している行動も自分は嫌いではないです<br />
彼の気の強さが端的に現れた行動でしたし<br />
今野に輸血しましょうか?本田の血を。