2007年02月28日

ようやく始まったチーム作り

 TVのスポーツニュース。
「収穫は勝った事だけ」
反町氏が試合後語った。
「自分達が練習してきた事が全然活かされていなくて」
平山が試合後語った。
 反町氏の発言には全く納得できなかったが、平山の発言はよく理解できた。

 反町さん、日頃、貴兄には厳しい私だが、今日の試合は評価しているのだ。今日の収穫は非常に大きかった。何故ならば、ここ数ヶ月無駄な作業を繰り返していた貴兄だが、今日の試合の後半から、ようやく北京五輪に向けて正常なチーム作りがスタートできたと思うからだ。

 前半の先制点(カレンの好ドリブルからのスルーパスを平山が決めたやつ)、直後のカレンの突破からポストに当てたシュート。いずれも、カレンの個人能力による好機だった。立ち上がりにマークを押えきれない香港に対して、精力的なFWが見事にその能力を発揮したのだ。
 しかし、香港の守備ラインが機能し始めると、日本は全く好機を作れなくなる。その要因については、合衆国戦で述べた通り。合衆国戦同様、3トップが水野と本田の蓋をして、さらに青山敏と伊野波は引いてきてパスを受けに来る味方がいないので、遠方のチームメートに向けて、(必ずしも得意でない)ロングパスを狙っては敵にボールを渡す。酷い前半だった。これまた合衆国戦同様だが、出来が酷くても最終ラインが非常に強いので、ほとんど敵に決定機を与えないのも、このチームの問題点を顕在化しないのだが。
 その状況が改善されたのは、後半の家長の起用以降。李に代わって起用された家長は、挙動開始点こそ左サイドだったが、時に後方に引き、右サイドに顔を出す。ボールを受けるや、鮮やかな技巧で次々に仕掛ける。流れは一変した。速攻ができない場面、3DFと青山敏は落ち着いてボールを回し、無理なロングパスを仕掛けずに遅攻が利くようになった。家長がよく動くから、本田の前にスペースが出き、そこから好機が作られるようになる。
 さらに増田が起用される。増田の精力的な上下動により、水野も再三右サイド前方への進出が容易になる。2点目に至る水野の執拗な右サイドのえぐりは凄かった。1人で3人を相手にあそこまでやるのだから。
 終盤、青山敏に代わり、上田が起用されたのも納得。元々の3トップが悪かったのだが、そこに不正確なロングパスを連発して敵にボールを渡した青山敏は、この日残念な出来だった。とすれば、ジュビロで実績を挙げている上田の起用、テストは当然だろう。芸術家が多いこのチームだけに、戦える選手がもっと欲しい。

 つまり、この日の後半からは、ようやく真っ当に五輪代表チームがスタートしたと考えられる。本田と家長を共存できる組み合わせの確認。梶山の特長を活かすためにも中盤の人数を増やす事。水野の活かし方。技巧派が多いMFで戦う選手として誰を使うべきか。Jで実績を挙げているタレントの組み合わせ、連動が、ようやく形になろうとしている。今日の後半のような組み合わせを、谷口、枝村(さらには柏木?)ら、Jで実績があるタレントを含め、試していく事が強化につながるはずだ。
 誤解されては困るが、カレンも李もよい選手だ。スタメンからこの日の後半のやり方(家長、増田を起用)をしておいて、終盤タフなカレンや李を起用すれば、相当香港の守備ラインは悩んだ事だろう。要は選手の個人能力を活かすために組み合わせがあると言う事。監督の思いによる組み合わせのために選手の個人能力があるのではない。

 冒頭に戻ろう。この日の収穫は非常に大きかった。不可解な3トップをやめればチームが機能する事が実証されたのだから。そして、チーム作りのコンセプトが狂っていたのだから、練習が有効でなくても仕方がないだろう。平山にとって重要な事は、幾多の優秀なチームメートに対し、「俺のここにボールを出してくれ、ここに出してくれたら、必ず俺が点を取る」」と伝える事につきる。



 ついでに余談。別なTVのスポーツニュースで、北澤氏が「『勝とうとする意思』が足りない。このままでは五輪には出場できない」と酷評し、指摘した終了間際の場面。チーム全体の技巧と発想で、完全に崩しながら最後のフィニッシュで増田のシュートがずれ、敵のハンドで防がれたものの、主審が反則に取らなかった場面だ。確かに審判の判定は拙かったよ。でも、北澤氏の指摘は正しかったと思う。巧く言えないけれど、「勝とうとする意思」が、何か伝わってこない試合だった。
 さて、かつて日本代表の攻撃的MFを北澤氏と争っていた反町氏。この厳しい北澤氏の問いにどう答えるか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(26) | TrackBack(3) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かに終盤のあの場面は綺麗に決めようとしすぎた感じがしますね。
タレントは豊富なだけに気合が足りないのはもったいない。

このタレント集団にアトランタでブラジルを倒したときのチームの魂を注入できればメダルも夢じゃないでしょう。

このチームが北京に行けないのは悲しすぎる。
北京は比較的近いからサポーターの応援も期待できるし。
選手、監督共々奮起を期待したいですね。

あと、どうも日本はいいタレントがいるときは微妙な監督で、選手の質が今一歩のときは素晴らしい監督がいる気がしなくもないです。
Posted by るる at 2007年03月01日 03:10
相変らずのサッカーで、時間が長く感じました。確かに後半に光明はありましたが。

ところで、井原コーチはどうしちゃったでしょう?
Posted by at 2007年03月01日 10:08
昨夜(28日)は、前半だけ現場にいました。息子がまだ小さくて後半まで体力が持たなかったのです。
で、武藤さんご指摘の通り、一点取ったあとの前半20分過ぎから香港のペースと行った感じでうごきません、戦術以前に良くないと思ったのが日本人同士の短いそして弱すぎるパスです。香港選手がすぐ近くにいるのに初心者がするような弱々しいパス。味方を愛していないというか、考えていないパスに見えました。またペナルティー周辺でボールを持つと何をやったら良いのか一瞬戸惑ったような感じで開いてしまう場面があったこと。その選手にアイディアがないと言うか、ひらめきがないんだなぁと見ました。
1-0で国立を出て、引き分けにならなければ良いがと思いながら帰ってきました。
前半だけ見ると3-0の結果を聞いて良かったなと思えるような試合でした。
よかったのは、平山選手のプレーでした。ボールを貰うポジション、トラップ、ポストプレー、シュートなどすべてに非凡なものを感じさせる選手です。彼を見られたことは昨夜の一番の収穫でした。
Posted by ゲルトが好き at 2007年03月01日 10:12
武藤さんの言ってるとおり、ある意味収穫あったかもですね。今後様変わりしてくれる事を期待します。
平山選手は時間かかりそう。
批判を一身に集めてますが、なんとか点とりながらがんばってもらいたいです。
Posted by at 2007年03月01日 10:51
平山はさすがの出来でしたね。香港程度があいてだと余裕のプレー。他のFWとは格がちがうなと思いました。
ところで武藤さんはかなり本田圭を評価してるようですが、アメリカ、香港戦ともにたいしたプレーではなかった。技術とアイデアでは梶山にはおよばず、いまのところクロスマシーンとしてしか使えない。クロス自体の本数も少ないし。家長と交代してもよさそうだ。
Posted by j at 2007年03月01日 12:26
平山はさすがの出来でしたね。香港程度があいてだと余裕のプレー。他のFWとは格がちがうなと思いました。
ところで武藤さんはかなり本田圭を評価してるようですが、アメリカ、香港戦ともにたいしたプレーではなかった。技術とアイデアでは梶山にはおよばず、いまのところクロスマシーンとしてしか使えない。クロス自体の本数も少ないし。家長と交代してもよさそうだ。
Posted by ジャック at 2007年03月01日 12:28
無理やりだな
Posted by U at 2007年03月01日 12:56
拙い試合をすると必ず選手のせいにする反町監督。
試合前に流れたVTRで早くも五輪に出場出来なかった時の言い訳を始めています。
「W杯は4.5でしょ?五輪は3ですから・・・。」
本当に汚い・・・。どこまで汚いんでしょう。

私見ですが今のままでは五輪に出場できない可能性は90%以上です。
Posted by at 2007年03月01日 13:22
五輪がW杯より予選として厳しいのは
事実と思いますよ。
特に最終予選、
グループで1チームしか
出られないというのは相当大変ですよ。

それにしても今の五輪代表は
全然スピードを感じないチームですね。
平山もテレビで見る限りは
トラップなどまだまだな感じがしましたが...
Posted by baron at 2007年03月01日 13:45
平山のコンディションはかなり上がっていると思います。
この相手とはいえ、ポストプレーの巧さはさすがですよ。
点を取れない時もあるでしょうが、絶対不可欠な柱であることは間違いありません。
それから私も本田圭佑は必要ないと思いますよ。
代わりに谷口や柏木をボランチに加えてほしい。
スタメンから左は家長でいってほしいです。
Posted by 土のカオス at 2007年03月01日 14:25
井原コーチはシリアに視察に行ってます。
Posted by 反町だめかも at 2007年03月01日 14:32
選手として半熟くらいのU-22世代に、監督として半熟の人間をあてがうのはもうやめてほしい
今までそうやって協会が若手監督育成の場にしてきた中では、反町はマシなほうなのはわかるが
トルシエ、クビになりたてのマチャラなんか来たら昇天モノですよ
Posted by at 2007年03月01日 14:48
唯一の五輪経験者である平山だが、経験に見合うだけの成長がみられない。
幾度かみられたトラップ時のボール位置をみるにつけ、高校選手権の時より下手になったのでは…と思うほどだ。
確かに高さは魅力だが、オシム的志向のサッカーにおいて平山ありきのシステムはいかがなものか?
反町君自身が3トップという現状効率的とはいえない方策に陥っているのも、第六感上に幽かに感じる平山への不審とのせめぎ合いにもあるのではないか?
一度、平山を外して組み立ててみるのも手だと思うのだが…。
それが巧くいったうえで、そこにどう平山を埋め込むかという作業を行った方が効率的に思えるが…。

いずれにせよ"平山ありき"の様な一選手ありきのチーム作りは薦められない。
Posted by なか at 2007年03月01日 15:21
あの3topは機能しないのと、本田がいまいちなのが分かった試合として収穫のある試合。
あと、真ん中が2人では、どうにも組み立てられないと言うことを再確認
次ぐらいには、その収穫を実にして欲しいっすね

カレンと平山の2トップ。
左に家永、真ん中に3枚(本田拓と青山を除く)
この2試合見ると、そうしたい感じです。
Posted by at 2007年03月01日 15:24
本田は世代別の代表でしか見たことが無いのですが、やたらいい前評判の割にフレア(閃きと言うべきか?)がまったく感じられない。
ボールを受けた後やたらに球離れは遅く、さんざんこねくった後に蹴ったボールにスピードが無い。
プレーの判断スピード、崩しのセンスも並み以下。
都合、相手にとってとても守り易い選手。
ぬるま湯環境で甘やかされているのでは?と邪推してしまいます。
Posted by at 2007年03月01日 17:11
本田はグランパスで見るときには
フレアが感じられますよ!

ただ持ちすぎる傾向はあるし、
グランパスがぬるま湯環境であることは
否定できません...
Posted by baron at 2007年03月01日 18:37
 中盤の薄さと前線の濃さが問題なのは分かっただろうから、次戦からは違う形になると期待したいですね。

 個人的にはこのチームには第1ボランチが出来る選手が本田拓也しかいない事が気掛かりですね。
今回は外れましたが小林、高柳らの台頭を期待したいです。
Posted by saru at 2007年03月01日 19:45
baron様、二度もご丁寧なコメント、ありがとうございます!
Posted by at 2007年03月01日 21:14
反町の日経の連載によると
「自分が現役時代に指導を受けた監督は皆反面教師」とのこと
これ聞いたら武藤さんはますます嫌いになりそうですね。
Posted by at 2007年03月01日 21:17
3トップにするなら、平山の衛星役として早稲田の兵藤を呼んでほしい。ワールドユースの悲劇から数年、使い方さえ間違えなければ、かなり有効なんじゃないか。
Posted by 学 at 2007年03月01日 22:23
しかし、3バックは酷かった。
このレベルじゃ、予選突破は厳しい。
ストッパーとスイーパーの連携が悪いし、
基本的に1対1が弱すぎる。
攻撃についても、サイドチェンジが少ないから、両サイドがフリーになってもボールがこない。
左サイドは完全に交通渋滞状態。
こんなんで本田に期待するのは無理だね。
3トップにするなら本田は左サイドなら、スタメンから外した方が良い。
レジスタで使用したほうがサイドのスペースが有効に使えると思う。
もちろん、両サイドは家長と水野だが。
Posted by 天邪鬼 at 2007年03月01日 22:48
天邪鬼さんって、本当に天邪鬼なんですね。
あるいは最初に天邪鬼と打って出れば、ご自分の見識のなさをカモフラージュできるという算段であるのか。
ともかく、そろそろご自分のブログを持たれてはいかがでしょうか。
Posted by at 2007年03月01日 23:01
確かに本田のプレーにはこれ!!っと言うものはないように感じます。
無回転ボールやクロス精度で大きく取沙汰されていますが、見る限りでは水野や家長の方がフィットしているような気がします。
個人的にはボランチあたりの位置で使うのがいいのかなと…。梶山選手に勝るものとは言いがたいですが…
あとはカレン選手のチェイシング。いつ見てもいいものです。望まれるのは彼の得点です…
Posted by No,19 at 2007年03月02日 01:08
選手の気持ちを感じられたのは最初の10分程で、
先取点取ってからは気の抜けた感じが伝わって来た。
スタンドで見ていて熱くなる物がなく益々寒さを感じた前半。
家長投入後はチームが蘇り、本田もボールに触る機会が増えた。
試合前に氏のコラムを読んでいたのでやっぱりこのチームでは3トップは機能しないことを実感しました。
公式戦でこんなに「ぬるい」試合を見たのは久しぶりでした。
最後に審判も酷かったですね。
Posted by at 2007年03月02日 02:03
>確かに審判の判定は拙かったよ。
>でも、北澤氏の指摘は正しかったと思う。
>巧く言えないけれど、「勝とうとする意思が、
>何か伝わってこない試合だった。

↑全く同じ事を感じていたので驚きました。口幅ったいようですが、同じサッカー指導者としての肌感覚でしょうか?戦術、フォーメーション、トレーニングも大事ですが、一番改善が必要なのは実はこのチームのメンタル面ではと思いました。
Posted by 一サッカーコーチ at 2007年03月02日 06:27
「スリートップ」→本田の蓋 の分析見事だと思います。でもあれだけはっきり出れば、さすがの反町氏も機能しないことがわかるはずですよ。それよりも、私が気になるのは、ここ一番という重要な場面で平山が必ずといっていいほどファールを取られることです。体張って二秒キープするというシビアなポストプレーですから、体や肘の使い方は真っ正直ではだめでしょうが、ファールを取られないような微妙な振る舞いをしないと、「平山に当てて」どころか、「平山でターンオーヴァー」→全速で上がろうとしていた両サイドの消耗となります。
それにしても、鼓舞する意味で味方を怒鳴り散らすトゥーリオみたいな選手いないんですかね?このチーム。
Posted by けんぞう at 2007年03月02日 13:40
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

老成?
Excerpt: 昨晩の五輪二次予選、対香港戦を見ての印象としては「熱が低いな」ということと「クオリティが足りない」ということだろうか。 後者は問題点というより永遠の課題なので、あまり求めすぎてはいけないでしょう。そ..
Weblog: 12人目のイカれる男
Tracked: 2007-03-01 12:34

あれじゃ機能しないでしょ・・・北京五輪アジア2次予選
Excerpt: 北京五輪2008 アジア2次予選日本 3−0 香港先週はすっかり忘れてて見逃したので(苦笑)、今度はちゃんと見てたんですが・・・反...
Weblog: ミューズとソフィア
Tracked: 2007-03-01 16:57

U-22 日本 vs 香港 (3-0)
Excerpt: 北京五輪に向けたアジア2次予選がいよいよ始まった。「勝ったけれど、選手が個人プレーに走ったため、がっかりしている」 とは試合後の反町監督のコメントなんだけど、選手のプレーがどうこうってよりも、監督のス..
Weblog: Una Noche Perfecta Para El Descarga
Tracked: 2007-03-01 20:21