2013年05月25日

前節は俊輔に怯え、今節は相性に怯える

 東海道線を西進、清水に向かっている。私は、このノンビリした列車による小旅行が大好きだ。難敵との戦いに想いをはせながら少しずつ清水に近づくにつれ、車内にはオレンジを身にまとった人々が少しずつ増えていく。もうこの雰囲気が嬉しくてたまらない。そして、このサッカーの街のクラブに、私の故郷のクラブが対等に対抗する日が来るなんて。
 もっとも、対等に対抗させてもらってはいると思うが、よい結果の思い出はあまりないのだけれども。

 前節ベガルタは敵地でマリノス戦。結果は0対0だったが、両軍が能力を出し合う見事な試合だった。
 前半、中2日で全体的に重さが残る先方に対し、角田を軸とする中盤のプレスで圧倒。中村俊輔を自由にさせず、齋藤学には前向きでボールを持たせない。こうして守備は完璧だったのだが、攻撃が単調過ぎた。
 そして、単調な攻撃では中澤は破れない。攻勢はとるも崩し切れずに無得点で前半終了。梁勇基、ウィルソン、菅井と、攻撃に変化をつける仕事を担当する選手が不在。だから、攻撃がどうしても単調になるのは仕方がない、と言えばそれまでなのだが。

 後半に入り、中村俊輔が猛威を発揮し始める。後半早々に自陣左サイド後方に思い切り引いて、当方のプレスを引きつけるだけ引きつけてのサイドチェンジ。これが、速さも精度も抜群で、受けた小林祐三がすぐにトップスピードで前進開始できるもの。ベガルタは、この攻撃はかろうじてしのいだものの、以降思い切りのよいプレスがかけづらくなる。
 すると、俊輔はじわじわと前進、ちょっとした引く動きで当方のアプローチを外すと、半身のダイレクトパスで前線のチームメートに好パスを展開し始める。特に齋藤学は前向きにボールを受けるや、躊躇せずに技巧あふれるしかも強引なドリブルで突破を狙って来る。ファウルをすれば、俊輔のFKなのだから、当方守備陣は非常に難しい対応を余儀なくされる。
 そうこうしていると、俊輔が前進してくる。溜めてみたり、ダイレクトではたいてみたり、整然と組織された当方守備陣を執拗に揺さぶって来る。あのポスト弾は両軍関係者以外の方も映像でご覧になったと思うが、「こちらは、ちゃんと守っているのだから、勘弁してください」と言いたくなるものだった。
 遠藤保仁は、確かに恐ろしいが、彼の恐ろしさは攻撃全体の演出。だから、粘り強く組織守備を維持すると言う対抗手段がある。中村憲剛は、心底恐ろしいが、彼の恐ろしさは精度とタイミングと速さが格段のラストパス。だから、パスの受け手を厳しく押さえ込むと言う対抗手段がある。けれども、全軍を指揮しながら、僅かな隙を作り最後に悪魔のようなシュートを狙って来る俊輔を、どうやって防げばよいのだろうか。
 しかし、ベガルタの守備陣は、最後まで組織を崩さず、粘り強くマークを受け渡し、林の個人能力を含め、守り切った。

 当方だって、黙ってはいない。マリノスが前進してくれば、十八番の湧き出る速攻を仕掛ける事も可能になる。
 赤嶺が絶好調で、厳しくマークして来る栗原を引き出しながら、空中戦も互角に戦い、前線の起点となる。あれだけ、献身的に守備を行い、ひとたび攻撃に移るや敵のマークに動ぜず前線で起点となり、さらにペナルティエリアに入れば冷徹なシュート。本当にすばらしいセンタフォワードに成長してくれたものだ。
 赤嶺が作った起点に、柳沢が絡み、後方から、太田が、松下が、富田が、蜂須賀が、次々と湧き出す。時にサイドからいやらしく崩しを狙い、時に松下や柳沢の個人技で中央を崩す。
 けれども、どうしても中澤を破れない。何とも、呆れる読みの鋭さ。あれこれ工夫する当方の揺さぶりに対し、最後のシュート場面にはかならず登場。少々、不細工ではあるが、強く激しくフェアなタックルなりブロックで、我々のシュートに立ち塞がる。
 終盤、中原、武藤、佐々木を次々に投入、タレントの特長の違いでさらに揺さぶりをかけるが、中澤を破り切れずタイムアップ。前線を変えるだけでなく、奥埜あたりを中盤後方に投入し、湧き出し方を変えるのも一手段に思えたが、手倉森氏は守備のバランスも考えたのだろう。
 あと一歩で勝ち切れそうな試合だったのだが。くそぅ。
 まあ、難敵との敵地戦。勝ち点1獲得をよしとすべきだろうな。絶対マリノスサイドも「あと一歩だった」と思っていたに違いない内容だったし。

 さて、エスパルス戦だ。どうにも勝てずにいる、いや負けてばっかりいるエスパルス戦だ。
 個人的には、これは相性と言うよりは、運不運の問題だと思っている。昨年終盤の敗戦は、鎌田の軽率な報復による退場劇と、安易に守備に入った手倉森氏の采配ミスが要因だった。岡崎がいた時は、組織的な攻守を展開し中盤で圧倒していながら、岡崎のワンプレイでPKをとられ朴柱成が退場を食らってガタガタになった事もあった。追いつこうとして、アディショナルタイムのCKに林が上がり、大前の冷静さにしてやられたのも忘れ難い。うん、思い出してはいけない事ばっかりだな。ほんの最近の事だけでも。
 先方はバレー不在で、当方はウィルソンが帰って来る。先方はナビスコの疲労も残っている。陳腐な言い方になってしまうが、エスパルスにはよい選手は多数いるが、俊輔や中澤のような神業を発揮する選手はいない。
 だから当たり前に中盤で激しく戦えばよい。前節前半の攻撃の単調さの修正は必須だが、ウィルソン復帰も大きいし、何よりそのあたりの積み上げは手倉森氏の得意なところだ。繰り返すが、だから当たり前に中盤で激しく戦えばよい。そうすれば結果はついてくるはずだ。はずだよね。
posted by 武藤文雄 at 12:31| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
武藤さんーサランへヨーー
Posted by えりえり at 2013年05月28日 13:01
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