2013年05月29日

筋が悪い

 「Jリーグ当局が、2ステージ制を真剣に検討している」との報道が見受けられる。最初は、2chあたりで語られてる冗談だと思っていたのだが、どうやら大本営自信が真剣に考えているらしい。

 まず感情。
 私は不愉快だ。ようやく20年の歳月を経て、こんなすばらしいリーグ戦を獲得した。それなのに、どうして、「明らかにつまらなくなる」方向に舵を切る必要があるのか。こんなに、こんなに、愉しいJリーグなのに。
 サッカーの年間に渡るリーグ戦の魅力は、その停滞感にある。1試合、1試合、もがくように勝ち点を積み上げる。いや、積み上げに失敗する事の方が多い。それでも、淡々と積み上げる。そうやって、苦労に苦労を重ねて積み上げて来た終盤戦。どうしても勝ち点が足りない。そこで思い悩み、数ヶ月前の痛い勝ち点ロスを悔いる。どんなに準備しても、どんなに工夫しても、どんなに知恵を働かせても、どうにも思うようにならない切歯扼腕。そして、それら一連の努力をちょっとでも怠れば、泥沼への一直線。
 これが愉しいのだよ。思うようにならない事態の連続、それでも、それでも、たまにサッカーの神様は笑顔を振り向けてくれる。その僅かな機会にしか享受できない神様の笑顔。その、ほんのちょっとの笑顔のための日々の努力、絶望、失望、悔悟、痛恨。
 この究極の娯楽をどうして取り上げられなければならないのだ。

 ただし、私は自覚もしている。私はこのような斬新な案の評論には向いてない事を。
 この事案検討の目的は、観客動員増あるいは収入増であり、そのための一手段として「Jリーグにあまり興味持たない人々の興味を引く」事が狙いなのだろう。
 そして、私はサッカーと言う娯楽が、好きで好きで仕方がなく、暇さえあればサッカーの事を考えていれば幸せな、おめでたいサッカー狂だ。「Jリーグにあまり興味を持たない人々」からは相当距離がある。だから、「彼らに、どうしたら競技場に来てもらえるのか、どうしたらJリーグに興味を持ってもらえるのか」と言う問題に、適切な答を考える能力を持っていない。
 そして、わざわざ「明らかにつまらなくなる」方法を採用しようとしているのだから、Jリーグ当局は相当なスポンサ料、最低でも20億円くらいを確保する自信があるのだろう。そこまでの臨時収入が確保できるのならば、いくら「明らかにつまらなくなる」にしても、反論はやりづらい。

 しかしそれでも、私は今回の事案は、あまりにも「筋が悪い」と思う。単に刹那的なイベントで耳目を集める事では、長期的な視野での観客増が望めるとは思えないからだ。
 たとえば、南アフリカワールドカップで、日本があれだけ魅力的なサッカーを見せ、結果を残したにもかかわらず、Jリーグの観客動員はそれほど伸びなかった。あれだけの代表チームの活躍と言う刺激があっても、だめだったのだ。Jの観客増のためには、何かが足りなかったのだ。
 おそらくこう言う事なのだと思う。
 派手なイベントを通して、新規顧客を獲得する事はできるのかもしれない。これは、日本代表戦が典型だが、天皇杯決勝にしても、ナビスコカップ決勝にしても、競技場が満員になるような試合ならば、いずれも該当するだろう。けれども、そこで初めて同然にサッカーに触れた方々が、定着してくれるかどうかが問題なのだ。欧州のトップクラブのほとんどの大観衆は、シーズンチケット保持者、つまり固定客で構成されると言う。Jリーグでも、シーズンチケットホルダーをいかに増やすかが経営の要諦と言われる。
 そして、そのために大切なのは、「Jリーグにあまり興味を持たない人々」を競技場に連れて来る事も重要なのは否定しない。けれども、もっともっと重要なのは、そうやって来てくれた方が、幾度も幾度も来場してくれるようになる事なのだ。
 だから、今回議論される2ステージ制は「筋が悪い」。もし実現したとしても(莫大なスポンサ収入以外には)何も生み出さない。結局のところ、陳腐極まりない結論だが、この麻薬のような、底なし沼状況の魅力的な娯楽を、地道に人々に伝えて行くしかないのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:52| Comment(9) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
専用スタジアムをたくさん作ることかなぁと思います。
しかし、公園の中に、しかも陸上トラック有りじゃないと
なかなか自治体はお金を出してくれない法律になっているそうなので、
その法律を変えることから始めないといけないようです。
FOOT×BRAINでそのように言われてました。
Posted by 77 at 2013年05月29日 02:38
スタジアムの件も含めてJFAはロビーイングしているのだろうか?

どの競技団体よりも金があるのに・・・。
Posted by at 2013年05月29日 09:22
地域の少年サッカーの雰囲気の「インテンシティ」を高めることだと思います。

こどもたちの会話に地元チームへの憧れが滲んでいるか、彼らを支える親御さん達にそれをサポートする熱い配慮があるか、そしてその受け皿となる地域の土台に小さな無数の夢の実現化に一肌脱いでやろうという新しい企業倫理が根付いているか。

やっぱり100年かかるでしょう。

とても楽しみです。
Posted by じょるじゅ at 2013年05月29日 09:26
代表チームでのイベントであって、Jリーグとはほとんど関係のない話ですからそこはあまり関係ないでしょう。
あのイベントのおかげで代表チーム自体はずっと盛り上がってるわけですし。

とはいえあまりに2ステージは筋が悪い。
刹那的イベントが欲しいくせに、なぜ世界屈指の野球大国に住んでいて知識も充分あるはずなのに、素直にアメスポを丸パクリしようとしないのかな?世界一のスポーツとしてのプライド()なのかな。
Posted by at 2013年05月30日 00:22
なぜJリーグの客が増えないのか。

……単に、日本人の所得が実質的に目減りしているからじゃ(笑)

食費光熱費等は削れないんだから、遊興費が削られるにきまっている。
実際、本は10年前に比べて売れなくなっているし、
野球やラグビーは観客が激減している。そんな中で、
Jリーグは10年前に比べたら客を増やしている(特にJ2)んだから、
大きく成長しているんです。

成功体験が強烈過ぎた為か、Jリーグの中の人は
自分を過信している所がありますね。頑張れば、
努力すれば結果が伴うと思っている。でも、サッカーに限らず
娯楽産業は日本経済という大木に食いついて樹液をすする
カブトムシに過ぎないわけで、木が健やかに育っていないと
どうにもならないんですよ。
幹が太くならない限り、頑張っても結果は出ない。
無理やり樹液をすすろうとしたら、変なものを飲んで
かえって具合が悪くなる。

この辺はなでしこリーグ改革をやっている田口さんも
似てますね。頑張りゃいいってものじゃないんだ。
Posted by masuda at 2013年05月30日 00:43
広告代理店に吹き込まれたのかなぁ?
秋春制もそんな噂があったが、2シーズン制はそんなに反対なさそうではあるし。
せめて1〜2シーズン実施してみて、検討するとかすれば抵抗少ないのだが。
Posted by at 2013年06月02日 11:44
「世界と戦う」って表現自体がドメスティックなんだよね。
Posted by at 2013年06月04日 00:43
>77さん
たかが玉蹴りで法律を変えるなんて無茶ですよ。
そもそも国が金を出さなくてもクラブが自腹を切れば好きな物を建てられますから。


>6月2日、11時44分に書き込まれた方。

1〜2シーズンどころか過去に10シーズンほど実施してますよ。
今更、試験期間など不要です。
その上で決めるべきです、反対ですけれど。
Posted by 灯油 at 2013年06月04日 02:40
>Posted by masuda at 2013年05月30日 00:43

http://fukuju3.cocolog-nifty.com/footbook/2013/08/post-4d80.html

家計調査における「スポーツ観覧料」の年別推移

家計調査> 家計>収支編> 総世帯> 詳細結果表> 年次 による。総世帯、全国の値。

デフレとはいいながら、全国1世帯あたりのスポーツ観覧料は斬増する傾向にあるようである。

August 22, 2013 | Permalink
Posted by at 2013年09月14日 19:50
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