2007年04月13日

中村憲剛のヒラメキ

 昨日、許丁茂に対する過去から引きずる屈折した歓喜について述べたが、実はあの試合には未来への決定的歓喜もあったのだ。ただ、憮然とした許丁茂の顔を見ると嬉しくて仕方が無くて、ついつい過去への屈折に専念したエントリを書いてしまった(笑)。コメント欄での賛美ありがとうございます。

 本題に戻ろう。一体、あの3点目の憲剛のアシストをどう表現したらよいのだろうか。

 まず直前の場面。ホームで2点差でリードされている全南が相当前掛りに攻勢を取ってきた。フロンターレは村上(やはりベガルタ出身の選手がこのような晴れ舞台で活躍するのは嬉しい)に代えて井川を投入するなど、守備を厚くして対応。それでも全南が鮮やかな中央突破に成功、ペナルティエリアに入ったあたりから強シュートを打たれGK川島が見事なフィスティングでCKに逃れる。(フロンターレから見て)左サイドからのCKをヘッドではね返すが拾われ、逆の右サイドに展開されてえぐられて低いセンタリングを通される。非常に危ない場面だったが、ファーサイドに飛び込んだ選手に対して、一番外をカバーしていた憲剛が落ち着いて対応。敵の僅かなトラップミスを見逃さず、そのままボールを奪い取りやや外にドリブル気味に持ち出す。そして、その瞬間ルックアップするや、左足のインサイドキック(たぶん)でハーフウェイライン手前で左サイドに流れるジュニーニョにフィードした。そのフィードの強さと精度は完璧。左に流れるジュニーニョがワンタッチで敵DFと入れ代わる事のできる4次元地点そのものに届いた。
 もちろん、この得点そのものは、直接的にはその後のジュニーニョの完璧なボール処理によるものだった。このストライカの素晴らしさが出た得点だった事は間違いなく、あくまでも憲剛のプレイはその序幕を引いたに過ぎない。

 けれども、あのパスに至る直前に、憲剛の頭の中にはどのようなヒラメキがあったかだろうか。CK直後の場面ならば、ジュニーニョを残しておく事はチームの約束事かもしれない。それならば、ジュニーニョが左に流れる事を意識して、あのようなパスが出ても、「滅多に見る事のできない妙技」レベルの話だ。しかし、あの場面は違う。あの右サイドからのグラウンダのセンタリングは、正に決定的なピンチ。敵FWのトラップミスがあったものの、憲剛がボールを持ち出した瞬間は「まず守る事」が頭にあったはず。そこで巧い持ち出しができた事でルックアップ、この時点で初めて左に流れようとするジュニーニョが視野に入ったはずだ。そしてそのジュニーニョの動く方向とスピードを見て取って、狙い済ましたパスをサイドキックで出したのだ。その間せいぜい1秒程度ではないのか。もし、「とりあえずジュニーニョに合わせて時間を稼ごう」と言う意図ならば、裏を狙うロングボールで敵陣のオープンで時間を稼がせるか、逆に短めのボールで確実に自陣向きにキープさせる事を狙うはず。しかしあの憲剛のパスは、あの瞬間的な短時間で「ジュニーニョの個人技で突破させる」と判断したとしか思えないものだった。
 もちろん、憲剛が狙ったのは、ああも巧くジュニーニョが抜け出す事までは想定しておらず、あくまでもジュニーニョが裏を突く事までだったかもしれない。ところが、ジュニーニョ突破が見事過ぎて、そのまま得点ににつながったのかもしれない。そうだとしても、憲剛の驚異的なヒラメキそのものが素晴らしいことに変わりはない。
 また百歩譲って、憲剛が自陣で持ち上がる時はジュニーニョが左に流れる約束事ができており、ルックアップして視野にジュニーニョが入る事は、織り込み済みだったのかもしれないが、そうだとしても、やはり憲剛の驚異的なヒラメキそのものが素晴らしいことに変わりはない。

 この試合の映像は深夜BS朝日で放送されたのみと聞いている。またニュースでの映像のほとんどはジュニーニョの入れ代わりしか映してないように思える。したがって、ほとんどの人がこの憲剛のヒラメキの映像を見る事ができていないのではないか。
 オシム氏のスタッフは、この憲剛のプレイ映像のディスクを、セルティックの中村、ガンバの遠藤、レッズの小野、ルマンの松井、グランパスの本田に送付し、「南アフリカのライバルはここまでのプレイを見せてくれた」と伝えるべきではないか。

 昨日、私はあの遠方まで出向き隣国の強豪を破る事に貢献したフロンターレのサポータに謝意を述べた。しかし、あの憲剛のプレイを生で見る事のできた彼ら、彼女らに、猛烈な嫉妬も感じる
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(2) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私はBS朝日を見れる環境にある武藤様に嫉妬しますw

地上波ニュースだと、ジュニーニョにパスを供給したのが中村までは解ったんですが。
もしパスを送ったのが中村違いなら、ばっちり流してくれたのだろうな、
と軽い嘆き。
Posted by 大黒の風 at 2007年04月15日 04:29
はじめまして、かもしれません。

http://www.youtube.com/watch?v=xfSrXHGYTOk

ここで、川島のフィスティングからジュニーニョのゴールまでの全貌を見ることができます。自分のような凡俗の眼には「単なる好プレー」として短い記憶しか与えられない場面が、武藤さんが光を当てると一気に輝きを増して、語り継ぎたくなる忘れられないプレーになるのですよ。
いつも本当に感謝してます。
Posted by kettsu at 2007年04月17日 00:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

中村憲剛 -アジアカップ'07 日本 VS UAE-
Excerpt:  日本代表、UAEに勝利し、ついに首位に躍り出た。  この試合でも、ボランチの中村憲剛はいい働きをした。攻撃を組み立てる時、周りの選手は大体 憲剛にゴロでいったんボールを預けてる。  で、憲剛のボ..
Weblog: Jリーグ・海外サッカー観戦ブログ
Tracked: 2007-07-15 00:39