2014年05月06日

武藤雄樹決勝弾

 76分の事だった。乱戦となったホームヴィッセル戦、直前に太田の得点で3対3に追いついたベガルタ。 
 関のパントキック。この日すばらしいプレイを見せていたヴィッセル右DFの奥井が、僅かに処理を誤る。ために、抜け出す事に成功した武藤雄樹。トラップはやや左外に流れてしまったが、右足を強く踏み込んでの左足インステップキックでのシュート。ボールは鋭く低い軌跡を描き、GK山本海人を破り、反対側のポスト内側を叩きながら、鮮やかにネットを揺らした。

 武藤が決めてくれた。

 これまで、武藤のプレイに幾度溜息をついた事だろう。よい体勢でボールを受けながら、決定機を決められない、あるいは好機に的確なラストパスを出す事ができない。よく動くが、あまり知性を感じさせないプレイ。幾度も幾度も出場機会をもらいながら、それを活かす事ができず、我々サポータを切歯扼腕させてきた武藤。その武藤が、この苦しい試合で鮮やかな決勝弾を決めてくれたのだ。
 そして、終盤のヴィッセルの猛攻に苦しみ、再三関のファインプレイに救われながら、ベガルタは今シーズン初めてユアテックで勝ち点3の獲得に成功した。
 武藤の決勝点で。そう、武藤雄樹の決勝点で。



 前半、ベガルタは酷いプレイをしてしまった。
 もちろん、J1トップを目指そうとするヴィッセルの試合内容がよかった事もある。前線から実に見事な組織的なプレス。鎌田や武井が後方からのつなぎを引っ掛けられ、角田や渡辺広大が不用意なファウルで警告を食らい、幾度もヴィッセルに好機を許す。好機を許しただけではない、敢え無く失点を繰り返してしまった。
 先制点は、CKからマルキーニョスにフリーでヘッドを許したもの。CK前の位置取りの争いの詳細は映像からは確認できななかったが、敵の大エースをあそこでフリーにしてしまう事は論外だろう(広大のマークミスに見えたのだが…)。実に情けない失点だった。
 さらに2点目。上記の通り、前半のヴィッセルの最前線からのプレスは非常に鋭かった。結果、後方からの組立てすら、思うに任せず、幾度もショートカウンタを許し、危ない場面を作られていた。そして、小川?の鮮やかな縦前進に角田が対応できず、丁寧に蹴られたファーサイドへのクロス、武井が内側に入り過ぎマークしていたペドロ・ジュニオールに裏を突かれてしまった。クロスが上がりそうな場面で、マーク相手を視野に入れておく事は、非常に難しい守備技術だが、J1選手ならば何としてでも身につけて欲しいところ。この場面だけで武井を責めようとは思わないけれど…
 上記した通り、ヴィッセルの最前線からのプレスの質は非常に高かった。だから、これを抜け出すのは容易ではない。だとしたら、我慢しなければいけない。しかし、ベガルタはその鋭いヴィッセルのプレスを、正面に受け止めてしまい、幾度も決定機を許してしまった。ベガルタは、まだまだ甘い。

 後半立ち上がり、渡邉氏は赤嶺を広大に代えて起用。角田をCBに下げ鎌田と並べ、梁をボランチに下げ富田と並べ、武藤を左サイドMFに開かせ、多くのポジションに修正を行った。そして、渡邉氏は控室で相当厳しい激を飛ばしたのだろう。前半消極的だったベガルタ戦士達が、前半とは比較にならない厳しい当たりを見せるようになってくれた。
 そして、ウィルソンが自ら倒されたPKを決め、1点差に。さらにその直後、赤嶺の細心のスルーパスから抜け出したウィルソンが、丁寧にGK山本海人を破り、同点に追いついた。
 ウィルソンの久々の得点。エースが得点したが故にベガルタは完全に活性化された。ボランチの梁と富田が次々にボールを刈り取り、太田と武藤の両翼に素早く石川と武井が支援。「よしよし」と思っていたら、好事魔多し。ヴィッセルに速攻を許し、ペドロ・ジュニオールの前進から、小川慶治朗に抜け出され、再び突き放される。
 それにしても、小川の裏に抜け出す瞬間加速は素晴らしい。ベガルタ守備陣は前半から幾度となく、小川の飛び出しに悩まされ続けていた。若い頃の柳沢を彷彿させる動き出しの早さと飛び出しの速さ、そして3点目を典型とするシュートの巧さ。大変な逸材である事を、再確認させられた次第。

 しかし、再び突き放されてもベガルタは折れなかった。
 3対3にする太田の同点弾。左サイドを丁寧なパスワークで崩し、梁がペナルティエリアに進出し、得意の右インフロントで狙った一撃を、敵DFがブロック。こぼれ球を拾った太田が、よく体勢を立て直して強烈に決めた。小川にやられた速攻は反省材料だが、ウィルソンの同点弾以降の「勢い」を止めずに、すかさず追いついたベガルタイレブンの執念はすばらしいものだった。

 そして、その直後、冒頭の武藤の一撃が。

 もちろん、反省材料は多い。
 特に前半の2失点は残念。先制弾はセットプレイへの対応不足、2点目はヴィッセルの攻勢をまともに受けてしまったがため。このような失点を防ぐ事が、強いチームの基本となるのは言うまでもない事。まずは、次節のセレッソ戦への修正を期待したい。
 と、真面目くさって反省を述べるのは、とても大切な事と思う。でも、今日くらいは、そのような小難しい事を語るのはヤメにしよう。

 そう、とにかく武藤が鮮やかな決勝弾を決めたのだから。今は、愛するクラブの同姓の若者が決めた美しい得点を肴に酔っぱらう事に専念しよう。武藤が、今後同じような鮮やかな得点を飽きるほど決めてくれる事を確信しながら。うん、酒が美味い。
posted by 武藤文雄 at 23:14| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Jリーグタイムの「感rui」が武藤で、また涙
Posted by 宮城野 at 2014年05月07日 10:05
Jリーグタイムの「感rui」が武藤で、また涙
Posted by 宮城野 at 2014年05月07日 10:06
ご覧になっていることと思いますが、
「いま試されるベガルタFW武藤雄樹の英語力」

http://blog.livedoor.jp/domesoccer/archives/52082392.html
Posted by いつも拝読しています at 2014年05月07日 18:26
何年か振りに書かせていただきます。武藤さんのおっしゃる通り。うちのチームには6年が25人います。ベンチ入り16人の全日少ではベンチ入りすらできない子が9人。昨年度までは、クラブ名を変えて2チーム出してましたが、レギュレーションが厳しくなってそれも無理。JFAのお偉方は、なぜベンチ外の子ども達を増やしたいのか、納得できない。日本サッカーの未来には、Jリーガーだけでなく、サッカー好きの普通の大人を育てるのも大事なはず。誤審審判をリスペクトするための一人審判というアイディアも現実的でなく稚拙。8人制自体は悪くない。でも、全ての公式戦に強制するのは今一。できれば再考して欲しい。子どもなんだから、せめて全員ベンチ入り可にさせて欲しい。長文すみません。
Posted by 子育てパパ at 2014年06月07日 23:45
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