2014年10月09日

手倉森ジャパン、アジア大会敗退

 ちょっと遅くなったがアジア大会について。手倉森監督率いる五輪代表候補チームは、地元韓国に苦杯、ベスト8に終わってしまった。

 考えてみれば。今大会、イラクと韓国に敗れた訳だが、両国とも日本とは異なるレギュレーションで選手を集めていた。
 イラクは、2007年アジアカップのスーパースタアのマフムードをオーバエージで起用。2007年大会で、最盛期の高原と大会トップストライカの座を争い、決勝で(日本が苦杯した)サウジを叩き潰したマフムード。このような要がいるとチームは強い。実際今回のイラクは、チーム全体が、まずマフムードにボールを集め、あるいは集める振りをして意表を突く、と言う攻撃の道筋が完全に整理されていた。例えば、今回の五輪代表候補チームに、寿人なり豊田を加えていれば、全軍の攻撃の道筋が明確になり、格段に強力なチームを作る事ができていた事だろう(そして、実績面でマフムードは寿人や豊田の上を行く)。この差は、どうしようもなかった。
 韓国は、大会規定に則り、U23+オーバエージでチームを構成。U23とU21の違いは大きい。例えば、日本が今回U23でチームを作ろうとしていれば、柴崎、宇佐美、武藤嘉紀、昌子と言った面々が選考範囲内となる。もうこれだけで、今回の日韓の戦闘能力差が「仕方がないもの」と認識される事だろう。しかも、韓国はここまでの試合で日本をよく分析。特に常時CBをしっかりと2人残し、鈴木武蔵を厳しくマーク。武蔵も無理な前進を繰り返してボールを失い続け、苦境を継続させてしまった。もう少し、判断力を磨いて下さい。
 実際、イラクも韓国も、戦闘能力では明らかに当方より、一枚上だった。そして、素直にその両国に2敗してしまった。残念と言えば残念。たとえ、いかに敵が格上だとしても、創意工夫で勝ち切るからこそ歓喜がある。いや、実際選手達はその格上相手に、相応には抵抗してくれた。イラク戦は守備の甘さはあったが、勇気あふれるパスワークで終盤、イラクを追い込んだ。韓国戦は、イラク戦の反省が活きたのだろう、最終ラインが整然と韓国の単調な無理攻めをはね返し続けた。よくはやってくれたとは思う。

 もちろん、細かい文句を言い始めればキリがない。イラク戦の終盤猛攻時に、中島や野津田のシュートの雑さは残念だった。中島の精力的なフリーランはこのチームのストロングポイントだったが、この逸材は小柄なだけに得点力を磨く事はとても重要なはずだ。野津田には「左利きの天才肌選手は過去無数にいたよ、俊輔と本田以外にも」とだけ、言っておこう。
 韓国戦の大島のPKは、笑い話と言えなくもない。しかし、少なくともこの主審は、再三同様なファウルを取っていたのも確か。大島には、もう少し冷静にプレイして欲しかった。一方で、大島にこれだけの失敗経験を積んでもらう事ができたのだから、このアジア大会は大成功と言えるかもしれない。陳腐な言い方になるが、大島には自覚して欲しい。彼からすれば「神」としか言いようがない中村憲剛が、とうとう代表の定位置を確保し切れなかった事(もちろん、憲剛の物語は終わっていないのだが)、そして2歳年上の柴崎よりも高いレベルのプレイができなければ日本代表での定着もないと言う事を。

 などと、前途有望な選手に、思いをはせるのもまた愉しい。北京五輪時に、誰が「岡崎がブンデスリーガの得点王を争う」と予想できただろうか。
 
 負けたのは悔しいが、安堵感も感じている。イラクや韓国が、我々よりも有利なレギュレーションで選手を集めておきながら、我々が簡単に勝てるとしたら、それこそ大問題ではないか。
 考えてみれば、五輪アジア予選のレギュレーションも不思議と言えば不思議。本大会に合わせ、オーバエージを加える事を許可しても矛盾はないはず。もっとも、そんなレギュレーションになれば、日程破綻している日本はオーバエージを選考できず、予選敗退のリスクが格段に高まろうが。まあ、そうなったら仕方がない。たかが五輪なのだから。

 そして何より。このチームを率いているのが、「俺たちのテグ」なのだ。テグの稠密さ、自己本位の墓穴、得点時の歓喜、苦境時の強がり。俺たちは皆、よくよくよく知っている。そして、「俺たち」の時とは、全く異なる素材の質の格段の高さ。単純な嫉妬だな。
 うん、何と、俺たちは幸せなのだろうか。
posted by 武藤文雄 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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