2014年12月04日

山岸範宏の準備

 お盆休みに実家でスポーツニュースを肴にダラダラと飲んでいた折、「楽天イーグルス敗戦」映像が流れてきた。母が「おやまあ、また負けたか、今年は弱いねえ。」と嘆く。調子だけはよい息子が「田中マーがいなくなったのだし、仕方がないでしょ。則本もいるし、松井が出てくればまた強くなるよ。」等と慰めたら、「野球は2部落ちがないからいいねえ。ところでベガルタは大丈夫なのかい。」と切り返されて動揺したのは秘密だ。

 29日、ヴォルティスに辛勝し、エスパルス、アルディージャの両ライバルが苦杯を喫し、ベガルタのJ1残留が決まった。試合後の歓喜の宴。うん、盛り上がりました。先日クドクドと講釈を垂れたが、本当に苦しいシーズンだった(いや、来年はもっともっと苦しいシーズンとなるような予感もありますが、まあそれはそれ)。
 こうなると、肴は「J1への残留争いと昇格争い」となる。正に、他人の不幸は蜜の味。さらに宴に仙台出身在住の謎のセレ女が参加してくれた事もあり、盛り上がりは最高に。「誰を強奪しようか」と。レアルマドリード、バイエルンミュンヘン、浦和レッズ、FC東京。あの晩だけは、気分は金満クラブのサポータ、だった。
 一夜明け、素面になって現実を思い起こすと、来期の事を考えて早くも胃が痛くなるのだが、それはそれ。

 と、バカを語るのはさておき。上位リーグからの降格、下位リーグからの昇格は、見世物としては本当におもしろい。いや、サッカーの醍醐味と言っても過言ではないだろう。
 そして、先日のジュビロ対モンテディオは、野次馬にとっても、忘れ難い試合になった。

 どうしても点を取らなければならない終盤、CKに対応しGKが上がるのは珍しい事ではない。けれども、それがうまく行くかどうかは全く別な話。裏目に出る事もあるし。少なくとも、国内においては、デビュー直後の川口が公式戦でヘディングをポストに当てた記憶はある。しかし、海外を含めてトップレベルの試合でこのような得点が生まれたのは思い起こせない。「いや、お見事!」としか言いようがない。
 ともあれ、技術面から整理しておこう。CKのキッカーは大ベテランの石川竜也。若い頃から左足の精度には格段の定評があった男だ。その石川がニアに入り込んだ山岸にピタリと合わせた。山岸のジャンプのタイミングは良好で、マークしていたのは岡田(だったと思う)にしっかりと競りかけられたものの、上背の差でヘディングを取る事に成功した。しかし、岡田がしっかり飛んでいたため、山岸も当てるのが精一杯、どこにボールが飛ぶかは想定していなかっただろう。ところが、ジュビロGK八田は、ほどよくミートしたボールにタイミングを取る事ができず反応できない。ボールはゆるやかにファー側のサイドネットを揺らした。
 山岸はこのような事態を想定して、ちゃんとヘディングの練習をしていたと言う。それが岡田との競り合いを制した要因なのだろう、恐れ入りましたそして、石川のクロスの精度は言うまでもない。実際、ゴール裏のサポータ達に向かった石川のガッツポーズは、何とも言えず味わい深かった、大したものです。
 しかし、石川の精度、山岸のタイミング。そこまではモンテディオ側の準備の成果だが、そこから先は「神の領域」だったのだ。

 名波氏は語った。「奇跡を呼ぶ力が山形にはあって、僕らにはなかった。」その通りだと思う。ピッチ上で日本サッカー史屈指の視野の広さを誇った名波氏が、この悲劇から何を学ぶのか。この日のジュビロイレブンには、日本サッカー史上、個人責任としては最大の痛恨を演じた駒野友一もいた。駒野は、この悲劇から何を学ぶのか。かつてアジアを制したこの歴史あるクラブに訪れたこのドラマ。改めて、日本サッカーの歴史の厚みを感じる事のできる試合だった。

 美しい試合を提供してくれた、両軍のイレブン、サポータを含めた関係者に、感謝、尊敬、そして羨望の想いを伝えたい。

 そして。いや、しかし。
 山岸が試合後に語ったように、モンテディオはまだ何も掴んではいない。全てはジェフとの決戦次第。これまたよい試合を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 01:30| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>個人責任としては最大の痛恨を演じた駒野友一・・・

川淵さんの人選だと思っていました。
あれで8年くらい時間を無駄にしたような気もしますが。
Posted by at 2014年12月04日 20:19
サニーサイドアップの次原は、少しは日本サッカーに金をもたらしただろうが、多額の「見返り」をかすめ取っていったのではありませんか?

Posted by あ、今もそんなお兄さんがいるな at 2014年12月09日 09:48
天皇杯決勝の予想は無しか・・・。
忙しいのか、「悔しい」のか、読者としても残念。

観戦記はあるんですよね?
Posted by at 2014年12月13日 10:18
この試合に関して山岸や石川、名波のみではなく駒野にも言及された方はおそらく武藤さんだけでしょうね。
彼が何を思ったのか、気になります。

駒野は年俸50%減を呑み磐田残留を決めたとの報道もありますね。
Posted by at 2015年01月14日 01:08
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