2015年01月25日

敗因はアギーレ氏にあるが、アギーレ氏はよい監督だ、任せよう

 悔しい。

 日本代表を応援して40余年。重要な大会で、組織的に整然と攻撃を繰り返し、精神的に崩れずに戦い抜き、相手を圧倒しながら、堂々と敗れ去るのを見る事ができたのは初めてだった。また新たなサッカーの魅力を経験する事ができた。昨年のブラジルとは異なるサポータ冥利に尽きる敗退。現地に行かなかった己の愚かさを呪うと共に、見事な試合を見せてくれた両チーム関係者と審判団に感謝したい。
 過去のアジアカップ、96年のクウェート戦にしても07年のサウジ戦にしても、チームが機能不全に陥り、好機もあまり作れずに敗れ去った(92年の初優勝前は、まともにアジアカップに参加すらしていなかった)。ワールドカップを思い起こしても、予選を含めた敗退劇のいずれも、敵を圧倒できた事などなかった。
 つまりだ、私は74年のオランダ、82年のブラジル、毎回毎回のアルゼンチン、そこまでは行かないが、それに近い無常観を味わる事ができたのだ。日本サッカーはここまで来たのだ。過去幾度も幾度も、悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない思いを味わってきたが、また異なる悔しさを堪能できた。ありがたい事だ。

 敗因の多くは、現場責任者のアギーレ氏にあった。
 まず何より、ヨルダン戦で主力を引っ張り岡崎と遠藤を消耗させてしまった事が問題だった。特にあれだけシュートを打ちながら1点しか取れなかった訳だが、「点を取る」と言うサッカーで最も悩ましい問題の多くを解決できる岡崎をヨルダン戦で無理に引っ張ったのは、あまりに愚かしかった。負傷で選手が離脱するのは運不運だが、長い大会を見据えて負傷したエースを大事に使うのは、当たり前の事なのだが。さらに言えば、ヨルダン戦で岡崎に代えて豊田をつかっておけば、周囲の選手も豊田との連係をより磨く事もできていたはずだ。
 交代を早く行い過ぎた事も問題だった。負けていたし、前半から好機を生かせぬイヤな展開だったのは確かだ。けれども、幾度も崩す事には成功していたし、UAEが相当な運動量で無理をしていたのは自明だった。少なくとも、54分に2枚目のカードを切る試合ではなかった。結果論だが、負傷を抱えていた岡崎を交代させるために、65分に最後のカードを切る事となってしまった。交代出場した武藤と柴崎が上々のプレイを見せてくれたのも結果論に過ぎない。乾も遠藤も決して悪いプレイ振りではなかったのだから。もっと我慢していれば、じわじわと締め上げるように猛攻をかけた終盤に交代策を使えたのだ。負けている事で焦り、早々に交代を使ってしまっのだろう。
 延長に入り、長友が故障したにもかかわらず、ポジション変更を怠り貴重な延長前半を無駄にした事も残念だった。延長後半、柴崎をサイドバックに下げ酒井を左に回すポジション修正を実施した以降は、再度猛攻できたのだから、延長前半の無策は本当に痛かった。
 再三ここまで愚痴を垂れてきたが、準備試合で坂井や皆川を選考し時間を無駄にした事。細貝なり田口なり(他の選手でもよいが)守備ができる中盤選手の3人目を豪州に連れた来なかった事、大会前の準備の拙さも、アギーレ氏の責任である事は言うまでもない。
 もちろん、決定機をことごとく決めきれなかった事、軽率な守備で失点した事など、多くの問題は、選手に起因する。また、UAEの工夫を凝らした戦いぶりもまた見事だった。敗戦の要因すべてがアギーレ氏によるものではないのは言うまでもない。けれども、上記のように、あれだけ監督が不首尾を重ねてしまっては、勝利の確率が大きく減ってしまった事は間違いない。繰り返そう、この悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない敗戦の責任の多くはアギーレ氏の采配にあったのだ。過去も幾度か講釈を垂れたが、アギーレ氏は気が弱く、近視眼的に采配を誤る事も多い。そう言う監督なのだ。

 一方で。ここまで監督が采配に失敗しながら、UAEが組織的によく守っていたにもかかわらず、選手たちは整然と戦い、幾度も決定機を作った。これは、日本代表の選手たちの能力の高さと、アギーレ氏のチーム作りの適切さが、いかに素晴らしかったかの証左である。さらに選手たちがこの難しい試合で、粘り強く戦ってくれたのは、現場の責任者であるアギーレ氏のリーダシップが並々ならぬ事を示している。
 我々は「采配を除いて」非常に優秀な監督を獲得したのだ。これはよい。ワールドカップ本大会で好成績を得ようとするために必要なのは、まずはチームの基盤を適切に作れるかどうかが重要だ。うん、まずはアギーレ氏に任せるべきだ。ただし、上記のような采配の拙さが継続するとしたならば、ロシア本大会前に人事は考える必要があるかもしれないがこれは別な話(この「別な話」をどうすべきかは、酒の肴としては最高ですね)。あるいは選手たちが一層成熟し、アギーレ氏の拙さをカバーしてくれれば最高だし。

 もう1つ。UAEの戦い振りは見事だった。過去の同国に見受けられた(当方選手が深刻な重傷を負いそうな)危ないファウルも、見苦しい時間稼ぎもなかった。全選手が丁寧にボールを保持する事を基盤に、分厚く守備を固め、丹念に戦ってきた。そして、後半終盤以降にほとんどの選手が動けなくなってしまったが、粘り切られてしまった。悔しいけれど、彼らの見事な戦い振りに感心した。90年に名将マリオ・ザガロ氏に率いられワールドカップに出場し、90年代はアジアカップでも上位の常連だったが、最近は目立った成果は見受けられなかった。今後非常に厄介な存在になっていくのだろうか、これはこれで愉しみな事だ。

 冒頭に嘆息したように、このような敗戦は、日本サッカー界にとっても初めての経験だ。選手達の思いはいかばかりだろうか。それぞれが何とも言えない思いで自分のクラブに戻る。今回の苦渋の経験をさらに活かして成長して欲しい。これが一層の日本サッカーの発展につながる。
 選手達に対する思いも多々あるが、やはり柴崎に言及したい。同点弾も見事だったし、丁寧な組み立てを見せ、PKも冷静に決め、なるほど遠藤の後継者になり得るプレイを見せてくれた。けれども、結果は結果だ。私はこの試合を「柴崎が延長最後のフリーキックを枠に飛ばせかった試合」と記憶していく。あの痛恨を忘れないで欲しいから。
posted by 武藤文雄 at 19:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「終末論」のケアも、お忘れなく。
Posted by at 2015年01月27日 14:55
私には本田、香川の両エースが揃ってPKを外した試合、です。そりゃ勝てない。
PKは運にも左右されるとは言え香川が6番目に出てきたということは彼はPKを蹴りたくなかったということでしょう。「10番」がそれでいいのか?とは思います。
柴崎は代表にとって大きな収穫と思います。
しかし時折不用意なボールの奪われ方を見せるのが恐いです。これは酒井高徳にも言えること。
若さの故かと思いますが成長してほしい点です。
Posted by ポール at 2015年01月27日 19:23
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