ベガルタはホームでグランパスに2-0で快勝。7位、6勝5分け6敗、得失点差プラス7と、そこそこの成績でリーグ戦を折り返す事になった。途中、暗黒の5連敗があった事を思えば、上々の折り返しと言えるだろう。
グランパスは闘莉王、田口、ダニルソン、矢野ら、経験豊富な選手の多くが負傷離脱中。3-4-3のフォーメーションで守備的な布陣を敷いてきた。とは言え、最前線にはノヴァコビッチ、永井、小屋末と癖のあるタレントが並んでいる。そして、前節は少ないチャンスを活かしてノヴァコビッチの一撃でレイソルに勝利している。ベガルタとしても、慎重な戦いが必要だった。
ベガルタは金園と奥埜の2トップのチェーシングがよく、それに呼応し最終ラインが的確に押し上げ、ペースをつかむ。グランパスの守備ラインが3DFと言うよりは、5DFと呼ぶのが適切な感じで引き過ぎている事もあり、両翼で数的優位を作れる。左は野沢と蜂須賀、右は梁と菅井。それに加えて、2トップのいずれかが絡み、3人の連係が効果的。金園、奥埜、梁が決定機を掴みながら決め切れず、ちょっと嫌な雰囲気が漂った39分、奥埜が見事な動き出しから右サイド前線でボールを受ける。金園がよい位置に入り込んでいたので、クロスへの対応を意識したグランパス守備陣に対し、奥埜は意表をついたドリブルで内側に切れ込み、走り込んだ野沢にラストパス。梁の陽動動作もあり、全くのフリーとなった野沢が正確にサイドネットを打ち抜き先制。きれいなゴールだった。
直後左サイドの崩しから、梁がミドルシュート。先ほどの野沢とほぼ同じ場所からだったが、僅かに枠を捉えられず。これが決まっていれば、一方的な展開になっていたかもしれないのだが。
正直言って、グランパスの引き過ぎは疑問だった。上記の通り、後方の中核選手の多くが離脱しているチーム事情はわかるが、あそこまで引き過ぎるのはいかがだろうか。逆に最終ラインのタレントの個人能力の弱さが前面に出てしまうリスクもあるし、梁や野沢に自由なスペースを与えてしまう事にもなっていた。
後半、西野氏は動いてきた。DFの竹内に代えて、川又を起用。4-2-4に切り替えたのだ。そのため、グランパスの中盤が薄くなり、野沢と梁の抜け出しが容易になり、ベガルタはさらに攻勢をとれるようになる。ところが、そうなると野沢と菅井が凝り過ぎた軽いプレイを行い始め、攻撃に人数をかけた状況でボールを奪われ、速攻を食らい、再三危ない場面を作られる。幸い、鎌田と渡部の出来が素晴らしく、さらに六反の好セーブもあり、何とかしのぐ。
「これを続けると、いくら何でも危ない。野沢か菅井を代えるべきではないか」と思い始めた70分あたり、菅井が魅せてくれた。富田の好パスで右オープンに抜け出すや、ダイレクトのサイドボレーで正確に後方から走り込む梁に鮮やかなラストパス。梁は教科書通りの完璧なファーストタッチでボールを受け、ファーサイドに強シュート、「これは決まった!」と思ったものの、楢崎が驚異的な反応を見せる。しかし、さすがの楢崎もCKに逃げるフィスティングまではできず、ボールはピッチ内にこぼれる。そこに奥埜がいた。まあ、菅井の魔術は、凡人の守備的姿勢を遥かに超えていると言う事だな。
2点差となり、グランパスの動きはガクッと落ちた。ベガルタは野沢→金久保、奥埜→山本と交代し、丁寧に試合をクローズ。贅沢を言えば、もう1点欲しかったし、藤村を使って欲しかったが(3枚目の交代はアディショナルタイムでの菅井→多々良だった)、贅沢を言ってはいかんな。
完勝を堪能した一夜だったが、楢崎の鮮やかなセービングに切歯扼腕する快感も素晴らしかった。
的確な位置取り、当方のシュートぎりぎりまで動かない姿勢、老獪な読み。楢崎がゴールマウスにいなければ、大量得点が奪えたはずなのに。しかし、最高級のゴールキーパにありとあらゆる手段で妨害されながらの完勝。もう最高です。
楢崎のプレイ1つ1つは、日本中のサッカー狂にとっての宝物だ。若いゴールキーパにとってこれ以上の教科書はないのだし。今後も節制を重ね、美しいプレイを見せ続けて欲しい。ベガルタ戦を除いて。
リーグ戦の折り返し。5連敗しながら、相星に戻しての7位と言う成績は悪くない。
何より、六反、渡部、金眠泰、奥埜、金園と、新しい選手が完全な中軸として機能している。茂木が調子を崩しているのは残念だが、若さ故の苦闘と前向きに捉えておこう。一方で、ここに来て金久保が試合ごとによくなっている。多々良、山本、藤村も起用されれば相応に活躍している。すっかり選手層が厚くなってきた。
また、この日何より嬉しかったのは、蜂須賀がよかった事だ。今シーズン、蜂須賀は幾度か守備固めに起用されながら、軽率なプレイで期待を裏切ってきた。ところが、前節左DFに起用されよいプレイを見せてくれた。利き足の右が活かせない左サイドで起用されると、ファーストタッチを強く意識する事になるのが大きいようだ。自分が蹴りやすい位置にボールを置く事を強く意識し丁寧にプレイしてくれた。蜂須賀が左サイドで機能すれば、負傷離脱中の二見にも格段の刺激となる事だろう。
ベガルタフロントの手腕を高く評価する。もちろん、渡邉監督の手腕にも。昨シーズンの老齢化から脱却する事に成功しつつあるからだ。このまま、全てがうまく行くと思うほど、私はウブではない。でも、これだけ若手、中堅どころが機能しているのだ。楽観的になる私を許してほしい。
もう1つ。今シーズン、梁勇基が素晴らしいのだ。33歳になった梁、さすがに瞬間加速は往時に比べて衰えてきた。しかし、ファーストタッチの精度が格段で、そこから様々な攻撃が生まれるのだ。上記の2点目はその典型だ。中村俊輔とも、遠藤保仁とも、小笠原満男とも、中村憲剛とも、それぞれ異なるベテランMFとして、梁勇基は格段の輝きを見せてくれようとしている。
うん、私は幸せだ。
2015年06月29日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック