2007年05月20日

フットサルアジア選手権決勝

 恥ずかしながらフットサルは自分でプレイした事はあるもののトップレベルの試合を観るのは、TV観戦含めて初めて同然。ともあれ、結果は大変残念だったイランに敗れた決勝戦の映像は、存分に堪能させていただいた。ともあれ、ピントのずれている視点があるかもしれないがご容赦を。

 言われ尽くされている議論かもしれないが、フットサルはサッカーとは全く異なるスポーツだ。決定的に異なるのは中盤がない事。速攻がかけられない時はサッカー同様ボールを回して敵の隙を伺うのは同じだが、この日の両国のように組織的に集中した守備振りだと、それだけでは崩せない(守備力が弱いチームが相手だと、ミドルシュートを打つスペースができるのかもしれないが)。結果、遅攻で直接崩すと言うよりは、むしろ後方でボールを回す目的は、全体で動いて敵守備網にズレを作り、速攻と同様に前線に速いボールを送り込む機会をうかがう事が狙いに思えた。このあたり、サッカーとは全く異なる概念だ。
 サッカーとは異なる競技な事は確かなのだが、では似た広さのバスケットボールやハンドボールに似ているかと言うと、「足と手」の決定的な違いがある。バスケットやハンドボールでは、「ボール保有時には得点をする」事が基盤となるが、上記したようにフットサルの場合はボールを回していても得点にはつながらないケースが格段に多い。すると、類似するスポーツとして当然考えられるのはアイスホッケーなのだが、オフサイドと壁の利用とゴール裏でのプレイの相違から、これまた全く異なるスポーツの様態を呈してしまう(ボールを運ぶスピードはアイスホッケーが一番近いかもしれない)。昔、合衆国で流行っていたと言うプロの室内サッカーは壁を使ってもよかったはずだけれども。そう考えると、フットサルは全く独自の競技なのだろうなと。
 もちろん、基本技術としての足技の重要性は言うまでも無くサッカーとの類似しているのだが。

 イランとの決勝は、見たところ完敗。エースストライカの9番をこちらは止められず、一方敵の主将のヒゲの10番の心憎いポジショニングに日本の攻撃はほとんど止められてしまった。正直なところ、こちらがホームだったにも関わらず、よほどの幸運に恵まれないと勝てないのではないかと印象を受けた。もちろん、1試合だけ見ての印象に過ぎないし、昨年は逆に準決勝でイランに快勝しているとの事。実際には両国の戦闘能力差はそれほど大きな差は無く駆け引きや作戦で、結果的に内容、得点とも差がついたのかもしれない。
 ただいずれにしても、この決勝戦を見る限りでは、このレベルまで来ていると、ボール扱いと判断力と言うサッカーと同様の「個の力」の向上が必要なのかと推察した。

 フットサルと言う競技は、普及については今後も問題ないように思える。少年にとってサッカーへの導入としても適しているだろうし(ロナウド、ロナウジーニョと言った名手達がフットサル出身と言うし)、成年が仕事帰りにやる競技としても相当定着しているし、年寄り同士ならば動かずに済むフットサルは悪くないし(ただし、サッカーと異なりサボるとすぐばれるのは問題だが)。問題は、その普及から強化にどう結びつけるかだろう。
 今秋より開催されるFリーグが、どれほどの集客が可能で、各クラブの損益計算がいかほどになるのか。Lリーグと同様Fリーグも、常にJリーグと言う強豪と戦いながらの集客が必要となる。また、サッカー女子代表のように、勝利が一層のサッカーの普及につながる(刺激された女性が1人でも多く球を蹴り始める)循環が働くかと言うと微妙な部分もある。フットサル代表の見事な勝利に刺激されて、サッカーあるいはフットサル人口が増えるかと言うと、その露出の少なさ、特にサッカー露出との相対差を考えると、そう単純には事が運ばないようにも思えるからだ。
 などと言うややこしい事は、Fリーグの各クラブ(既にプロのクラブもあると言う事だが)が経営破綻さえしないと言う前提を守りながら、走りながら考えればよいのかもしれない。とにかく、私の宿題は秋から始まるFリーグをまず生観戦する事だな。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(3) | TrackBack(0) | サッカー外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フットサルに限らずアリーナスポーツ最大の問題は、

1.日本には客席が5,000人以上あるアリーナがほとんどない
&あっても稼働率が高くてなかなか使えない。

2.アリーナが観客を入れて興行することを前提に作られていない
(ので、試合がすごく見づらい)

ことかと。バスケやバレーならアリーナ内に仮設スタンドを出して
客席数を稼ぐことが出来ますが、コートの広いフットサルでは出来ませんし。
おそらく、ストレスなく試合を観られる席は1,000席以下という
アリーナが大部分じゃないかな。

各クラブがどんなに頑張っても客席数以上に客は入れられないわけで、
全体の1/3をセントラル開催にして万単位で客を入れられる
会場で試合するというのは、現在の日本の環境下では
仕方のないことなのだろうと推察します。

ただし、2万人規模のサッカー場を作るよりも1万人規模の
アリーナを作る方が安くつくので、Fリーグが軌道に
乗ってくれば「スポーツクラブがほしい地方自治体」にとって
格好の受け皿になると思うんですよ。既に佐賀県の武雄が
手を上げていますが、「サッカークラブは我が市の財政規模では無理だが、
フットサルクラブなら……」ということでしょうし。
貧乏人にとっては、「芝のグラウンドを準備しないでいい」というのは
大きな魅力だと思いますよ。
Posted by masuda at 2007年05月24日 22:00
フットサル観て頂き、また記載して頂きうれしいです。

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実際には両国の戦闘能力差はそれほど大きな差は無く駆け引きや作戦で、結果的に内容、得点とも差がついたのかもしれない。
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そうだと私も思います。

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ただいずれにしても、この決勝戦を見る限りでは、このレベルまで来ていると、ボール扱いと判断力と言うサッカーと同様の「個の力」の向上が必要なのかと推察した。
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ミスが多かったのが残念でした。個人のレベルアップが望まれます。

Fリーグの生観戦よろしくお願いします。

Posted by Yan at 2007年05月26日 22:48
いつも楽しく拝見させて頂いております。
武藤氏がいつフットサルについて言及してくださるのだろうと心待ちにしておりました。

フットサルに長年携わるものとして光栄に思います。

イランに敗戦したのは残念ですが、
要は今年からのFを成功させることがこれからの大命題です。

私的なことで申し訳ありませんが、審判として多少Fリーグに関与することになりそうです。

また講釈頂けると幸甚です。よろしくお願いいたします。
そして、いつかどこかの会場で。
Posted by Tom at 2007年05月28日 01:55
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