2007年05月26日

終盤交代させられた水野

 TVでジェフ−ガンバ戦を堪能した。この試合は生観戦も計画していたのだが、諸事情で断念。しかし、競技場に行かなかった事を心底後悔させられるほど面白い試合だった。

 ただでさえ選手層の薄いジェフは、ストヤノフ、佐藤勇と言う後方の大黒柱を欠く苦しい布陣。それでも、チーム一丸となった組織守備は健在。前半からガンバにペースを握られながらも、鋭いカウンタから好機を掴む。
 そして20分過ぎ、水野が、鮮やかボレーキックでサイドチェンジを山岸に通した好機以降、チーム全体が集中して押し上げ猛攻。執拗に山岸が左サイドを狙い、ガンバ守備陣がしのいだ所を拾った羽生の正確なクロスを、巻が打点の高いヘッドで落とし、新居が正確な胸トラップからきれいに流し込んで先制する。
 期待通り水野は相変わらず好調、忠実に動いて巧く自身の前方にスペースを作る。その上で、いやらしいドリブルと強烈なカーブがかかったクロスと2種類の攻撃を常に持つだけに、ガンバ守備陣にとっては大変厄介な存在となった。その後も、相当深いところから水野が入れたクロスに巻と新居が飛び込んだ場面も惜しかった。
 また巻も豊富な運動量で暴れ回る。TV解説の三浦泰年氏が「ドロクバみたいだ」と言っていたが、さすがにそれは褒め過ぎに感じたが、あれだけ引き出して前線でつぶれれば後方の選手は相当楽になる。ちなみに巻は70分ごろ交代するのだが、ベンチに戻るのもつらそうなくらい息が上がっていた。にも関わらず直前まで走り回っていたのだ。この男の持久力と言うのは一体どうなっているのだろうか。

 攻勢を取りながら攻め切れない展開に西野氏は、後半アタマから家長を投入。二川を両翼に迂回させ、家長が強引なドリブルで中央突破を狙う、そして本来のボランチに下がった遠藤が自在に配球する事で、完全に中盤を制圧。家長と二川の即興性あふれる崩しに強力2トップが絡む攻撃は迫力十分、しかもやや攻め疲れてきたところでベンチで機を待っていた播戸を投入できるのだから。
 さらにガンバが巧かったのは、右DFにポジションを写した橋本が中央にやや絞込み、左DFの安田を徹底した上げてきた事。あれだけ中盤でキープされて全体が押し下がった状態で、左DFが上がってくれば、対面の右MFの水野はどうしても守備重視になる。これにより、最も怖ろしい水野の前進を押える事にも成功した。ここはジェフは後方に選手を増やし、水野を前に出すべきだと思ったのだが。
 しかしジェフの守備陣は粘る。斉藤のカバーリングが冴え、下村も押し込まれながらも守備ラインに吸収されずにボールを拾う。主将を任された水本も、1度安田に入れ替わられた場面を除いては、持ち味のしつこい守備力を存分に発揮する。池田がポジションを誤り、シジクレイのクロスからマグノ・アウベスにヘッドされた場面(ボールはバーに当たった)は唯一完全に守備が崩された場面。しかし、それ以外では守備網が振り切られてガンバにシュートを打たれても、ギリギリまで身体を寄せる事で防いでいた。
 押し込みながらも、すっかりジェフの守備ペースに巻き込まれかけていたガンバを救ったのは、明神だった。安田が見事なドリブルで水野を抜きセンタリング、ジェフ守備陣は1度ははね返し、そのボールを羽生が拾って下村に落として逆襲の起点にしようとした。そして、その落としを明神は狙っていた。見事なインタセプト後、そのままのスピードでジェフ守備陣を抜き去り、左足で低く抑えたシュートは逆サイドネットに。好守を続けていた立石は全くチャンスがなかった。「ああ、ガンバにはこの男もいるのか」と思わせる一撃。明神ももう29歳になった。こういうプレイを見ると、これだけのタレントを使おうとしない代表監督がいた4年間を改めて悲しく思えてきたりして。
 しかし、0−1から猛攻を仕掛け、ようやく同点に追いついたガンバにはやや攻め疲れも見え始める。そして、ジェフも再び速攻を仕掛けられるようになる。中でも惜しかったのは75分頃だったか、工藤が黒部を壁にしたワンツーから抜け出し冷静な左足シュートでガンバGK藤ヶ谷を破った場面、シュートはポストのほんの少し外側を抜けていった。2人が見せたアイデアと技巧も見事だったが、面白かったのは水野の位置取り。右サイドフリーでボールをもらえる位置に入った瞬間、スッと後方に下がって静止した。その結果、安田?と遠藤の2人が魅入られるように水野を警戒するため外に開いてしまい、結果として工藤がワンツーで抜け出すスペースを作る事になった。
 
 ホームのジェフも、常時攻撃を唱えるガンバも引き分けで終わらせる気持ちはなかったところが、この試合を一層面白いものにした。双方疲労した終盤、殴り合いの感を呈してきた頃、両軍ベンチが最後の交代カード。西野氏はここまで対水野に七転八倒していた安田に代えて入江。守備固めと言うよりは目先を変えて右DFに入った橋本を押し上げようとする策に思えた。ところが、アマル・オシム氏は水野に代えて青木。確かに水野は疲れてはいたが、他の選手にはできない事をできる唯一無二の存在だと思うのだが。
 その後もジェフは幾度かセットプレイを含む好機を掴むが、もう水野はいない。そして、運命の遠藤の直接FKを迎える事になる。遠藤のFKのコースも強さも完璧、GK立石の視野を防ぐガンバのチームメートも見事。けれども、立石が先に動いてしまったのはどうした事か。1年半前のナビスコ決勝でPKの名手遠藤に対し、「最後まで動かない」事で好捕した場面を思い出すと複雑な気持になる。

 ガンバは強い。負傷離脱の加地、後半登場した家長、播戸とまごう事なき代表選手3人を除いてスタメンを組む事ができる事だけでも凄いのに加え、後から後から選手を起用し次々と変化ある攻撃を行い、苦しくなると明神のような選手が活躍する。レッズがアジアチャンピオンズリーグも視野に入れながら戦う以上、やはりリーグ戦の本命はガンバだろう。西野氏恐るべしだな(うーむ...これについては別に書きたいと思っています)。
 ジェフも悪くはない。飛車角抜きの守備陣でこの日くらい忠実に守れる組織力。そして水野と巻を軸に多彩な攻撃(水野がいればJのいずれのチームからも得点は計算できよう)。この順位にいるのは、今シーズン目を覆うようなミスからの失点が再三あったからだが、この日に関して言えば90分集中が続き(あの明神にやられた場面は敵を褒めるべきだろう)よく戦っていた。このまま我慢を続ければ、必ずや順位は上がっていくだろう。
 だからこそ、終盤水野を交代した策はいかがなものかと思う。しかし、一方であの勝負どころで代えられてしまう事に水野自身の問題でもある。確かにこの日も、上記した他にも安田にやられた場面が複数回あったし、相変わらず正確につないでキープすべき場面で無理をしてボールを奪われた事もあった。まだまだ課題も多い事は確かだ。
 試合終了間際、NHKのカメラがジェフベンチを映し、敗れ行く自軍を呆然と見守る巻と水野が大映しになった。力を使い果たしピッチを去った巻はさておき、なすすべもなく自軍が敗れて行くのを見守るしかなかった水野はこの敗戦をどう捉えたのか。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(12) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水野は素晴らしい選手です。
ですが、ここしばらくの武藤さんの水野に対しての記述はさすがに贔屓の引き倒しでしょう。
ここ最近のジェフの不調は、
イコール武藤さんが自ら書かれた水野のいくつかの課題が影を落とすものでもありました。
守備対応ミスから失点、攻撃の判断ミスから数多くの逸機、
前に出す・あるいはトップ下に置くことも今季は辛抱強く何度もやっているのですが、
今のところは芳しい結果は出ていないです。
この部分については自分も武藤さんと同じように水野に期待をかけている部分であるので
今後も続けてやっていってほしいのですが、
これまでの成果を見ると、特別なオプションとはなりえていない状況です。
話によると水野自身がWBでのプレーを望んでいるということらしいので、
それであれだけ1対1でやられるようでは交代もやむなしでしょう。
セットプレーが得点に繋がるケースも多くなく、今のところはあと少し、といった感です。

まずは、故障で万全ではない水本が勇人に替わりキャプテンを務めてるところに何かを感じ、
より冷静な気持ちでムラをなくしてほしいです。
あと2年待ちましょう。
ここを越えれば間違いなく日本最高の選手になっていますから。
Posted by at 2007年05月27日 20:51
ナビ決勝だけでなく、A3の時も立石は遠藤のPKをがっちりキャッチし、生涯(?)2度目のPK失敗を味わあせました。で、その後のFKを直接決められてしまいました。まるでリプレイ…。

その時もアマルは坂本を下げたんだよなぁ…。ちなみに今、ジェフには「後方の選手」はまったくいません。怪我人だらけです。
Posted by at 2007年05月27日 22:49
「アマルは坂本を下げる」というのは、
その後のテレビ解説での原博実氏の発言や実際に坂本が移籍したこともあり
まあいろいろ言われることのひとつですが、
下げるだけならぶっちゃけ前の監督も普通に下げてましたよね。
Posted by at 2007年05月27日 23:27
水野は確かに素晴らしい選手です。
が、常に全力全開なので90分もたない。
デビュー時はスーパーサブとして後半から試合を支配していましたが、スタメンで出るようになってスタミナ不足が顕著に。同じく全開な巻や羽生は持続するんですけどね。5/19の広島戦、終盤の水野は歩くのもやっとでした。
もう少し緩急をつけられるようになればと思います。あと、最近はボールを持ちすぎて取られることが多すぎ。サイドを駆け上がりDFと対峙してから毎回中に切り込んでくるのも読まれてる。
ジェフの攻撃が水野頼みなのは全くそのとおりなので、交代しちゃうと手詰まりなんですけどね…。
Posted by at 2007年05月28日 16:06
でも、僕も水野と家長は贔屓の引き倒ししてしまいますね・・・

この二人にはサッカーを見る楽しさがつまってますから。
Posted by まさみつ at 2007年05月28日 16:23
↑×2
水野頼みなんて言い切っちゃうと、羽生や工藤や新居がかわいそうですよ。
というか「全くそのとおり」って、武藤さんは別に水野頼みだなんて言ってはいませんし。
ガンバ戦だって水野が絡まずにいくつもチャンスを作っていたじゃないですか。
もしもジェフサポの方ならなおさらそういうことは言わないようにしましょうよ。
そうでないならまあこのコメントはスルーしてください。

今季の水野は、セットプレーで合わせるボールの質があまり良くないのが残念ですね。
Posted by at 2007年05月28日 18:22
新居の方が動き良かった
Posted by at 2007年05月28日 19:47
>西野氏恐るべしだな(うーむ...これについては別に書きたいと思っています)。

また西野監督を叩く記事を書いて、自己満足したいんですか?
貴方が西野氏を嫌ってる事はもう解ってますから。
Posted by at 2007年05月28日 19:51
西野監督の采配、かなり良かったですね。
中盤のカバーリングの仕方が上手くオーガナイズされていて
明神の上がりを引きだす要因になったと思います。
交代も状況判断がなかなか良かったし合理的で
監督として成長してますね、本当に。

いまだFWに電柱を置きたいという未練はあるようですが
何とか4バックの移行に成功して髪の毛も増えてきた感じがします。
監督の精神状態は髪に出やすいから要チェックです。
Posted by at 2007年05月28日 20:34
2つ上のコメントは何が言いたいんだ?

> また西野監督を叩く記事を書いて、自己満足したいんですか?

このblogの筆者は(というか、たいていのblogの筆者は)読者の満足を第一に考えて書いてるわけじゃないだろ。
自己満足を目的の一つにしてblogエントリを書いたとして(武藤氏がそう考えているのかどうかわからないけど)、いったい何の問題があるって言うんだ?
自分の評価と一致しないエントリを読んで不快になるのならば、読まなきゃいいんじゃないのかね。

…とか書いているオレは、「西野氏を嫌ってる事」を多くの当blog読者に知られている武藤さんが、彼の監督としての仕事をどんな風に評価する(渋々ながらせざるを得ない)のかをニヤニヤしながら読めるのを楽しみにしてるわけだが。
Posted by at 2007年05月30日 17:04
武藤さんの西野監督評は、
・意固地なほど自分の考えがハッキリしていて、そのせいで才能を活用できないことがままある。
・その一方で結果が出ているケースも確かにある。
というもので、監督という職業を考える上で、二面性のあるこの人の仕事ぶりは興味深いテーマだ、という趣旨だと理解しています。
確かに武藤さんの好きなコーチングスタイルではないのでしょうが、結果は認めているわけだから、キライなので消えろとかやめろとか、そんな次元の低い話ではないと思いますよ。

読まないのは自由ですが、書き手を不愉快にさせる書き込みはやめていただきたい。私は武藤さんの評論が読みたいので。

むしろ、西野氏の仕事がこう優れているとか、武藤さんの考える彼の欠点についてこういう長所や理由があるんだという話なら歓迎したいですね。
Posted by げらげら at 2007年05月31日 02:56
書き手を不愉快にさせないって言うのはおかしい。
誰でも読める上にコメントもつけられる以上、批判意見が出るのも当然では。
武藤氏本人がそれを嫌だと言うなら、会員制にでもすればイイ。
Posted by at 2007年05月31日 20:31
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