直前にセットプレイから1対1に追いつかれていたベガルタ。ここでPKを決められると相当苦しくなる。5連敗が頭にちらつく。
しかし、我々には関憲太郎がいた。
前半立ち上がりに、守備ラインの左から右へのスライドが遅れたところを、レオ・シルバに狙われ、中央を崩され、ラファエル・シルバが抜け出す。しかし、関が鮮やかな飛び出しで、シュートブロックで防いでくれた。この場面の関が素晴らしかったのは、その位置取り。ラファエルの前進を的確に把握し、反応可能な距離を置きつつ前進していたことにあった。六反から定位置を取り返した関、その充実振りを如実に示すビッグセーブだった。
そして、冒頭の場面のPKストップ。
ここまで4連敗と苦しんできたベガルタを救う、いや生き返らせる、2つのビッグセーブだった。関と六反の、非常にレベルの高い戦い。ありがたいことだ。
上記した開始早々のアルビレックスの決定機を関が防いだ以降は、重苦しい展開となる。ベガルタ、アルビレックス共に、相手の組織的な中盤守備を抜け出すことができなかったからだ。共に連敗しているだけに、「何としても負けたくない」 意識も高かったからだろう。
後半、ベガルタは、チーム全体を引き気味に修正し、アルビレックスを引き出しておいて、逆襲をねらうやり方に修正。これが当たった。奪った2得点とも、ようやく体調が整ったウイルソンが、長駆を繰り返せるようにになったことがカギとなった。
先制点は、ベガルタ陣から左サイドに持ち出したウイルソンが、ハモンの左への流れも利用したカットインで敵DFを抜き去って、振りの非常に速いグラウンダのミドルシュートをニアに決めたもの。何とも鮮やかな一撃だった。持ち出しと言い、振りの速いシュートといい、ウイルソンに往時の切れが戻ってきたのが、何ともうれしい。
上記関のPKストップ直後の奥埜の決勝点は、ウイルソンがまた異なる魅力を発揮してくれたもの。前の場面と同じように左から持ち出したウイルソンは、ハーフウェイラインを越えたあたりから、逆の右サイドに前進している奥埜にピタリとロングパスを通した。完全に敵DFの裏をとった奥埜は、正確なトラップから落ち着いて中央に切り返し、左足で正確なシュートをファーサイドに叩き込んだ。
2点とも、美しい逆襲からの、見事な得点だった。
2対1になった後は、アルビレックスが手替え品替え攻め込んで来るが、渡邉監督もいつになく、早め早めに選手交代。菅井、藤村、二見を起用、終了間際は両サイドにサイドバックを2枚ずつ並べる分厚い守備布陣で、何とか逃げ切りに成功。貴重な勝ち点3獲得に成功した。
もともと、運動量を基盤に戦うベガルタは、夏場は中々勝ち点を伸ばせない傾向があった。しかし、この日は水曜日に試合をしながら、最後まで戦い続けるタフファイトを継続し、勝ち切ったことは、とても重要だ。
もちろん、まだまだ課題は大きい。
短期的に気になるのは、石川の調子が落ちていること。同点弾も、マークしていた舞行龍に、石川が完全に振り切られたものだった(ちなみに、前々節のガンバ戦の先制点も、石川がマークしていた米倉に振り切られたものだった)。さらに冒頭のPKも、山崎に裏を取られた反応の悪さも問題だったが、慌てて不用意なプッシングをしたのも感心しなかった。まずは体調を整えて欲しい。
また、これからさらに気温が上がる盛夏となる。富田、梁、ウイルソンと言ったベテラン達がいかに、体調を整え継続的に活躍してくれるか。これも、渡邉氏以下のコーチングスタッフの課題となる。
しかし、連敗中もブレずに積み重ねてきたサッカーは、いずれのチームにも通用する組織力を持つ。そして、敵に最も脅威を与えられるウイルソンが帰ってきた。
丁寧に、丁寧に、勝ち点を積み上げていきたい。