平山相太の引退が発表された。オフに契約更新をしていたにもかかわらず、キャンプ中の発表、さすがに驚いた。度重なる負傷に悩まされた選手人生を象徴する引退発表となった。
昨シーズン開幕戦、ユアテックでコンサドーレと対したlベガルタは押し気味に試合を進めるが崩しきれず、試合終盤を迎えた。渡邉監督は、この場面でベンチにいた平山を石原と交代させることを決意した。ところが、平山がピッチに入ろうとタッチライン沿いで待機していたところで、ベガルタは三田の強シュートのこぼれを石原が押し込み先制に成功。渡邉氏は、交代選手をストライカの平山から、DFの増島に切り替え、守備固めを選択した。
そして、その翌日のサテライトの試合、平山は重傷を負い、チームからの離脱を余儀なくされた。
今回の引退発表。その負傷の回復が順調でなかったと言うことだろう。残念極まりない。
平山が格段の素質に恵まれていたことに異論を唱える人は、ほとんどいないだろう。ただ、残念なのは、その格段の素質の内容を見誤った指導者が、当時の若年層日本代表を率いていたことだったと思っている。そして、その監督がその後FC東京でも、平山の上司となった。
もちろん、平山の魅力の1つに、190cmの上背があったことは確かだ。しかし、彼の格段の能力は、その上背ではなく、正確なボール扱いと、足でのシュートのうまさにあった。国見高校時代の幾多の得点が、落ち着いたインステップキックのグラウンダのシュートだったことは重要だ。また、その技巧を活かしたターンのうまさも相当だった。
長身を活かした空中戦も悪くはなかったが、細身なこともあり、後方からの高いボールを受けるのは、あまりうまくなかった(一方で低い足下へのボールを収める上手だったが)。しかし、横に動いてマーカを振り切ってからのヘディングシュートの威力は中々だった。
だから、そのような使い方をしてほしかったのだ。ああ、それなのに。
もちろん、負傷が多かったと言う不運も大きかった。また、オランダでのホームシックに代表される、精神面の課題もあったのかもしれない。けれども、あれだけの大柄な身体でありながら、あれだけ柔らかなボール扱いの上、あれだけ弾道の低いシュートを打てる技術を身に着けた男が、努力を惜しむ性格だったとは思えない。
だからこそ、その格段の素質を活かしたチームでプレイすればとの思いは消えなかった。そして、ようやく、ようやくのこと、その機会は、やって来たのに。渡邉氏の指導の下、丁寧にボールを回し、両翼に人数をかけ、時に前線に速いパスを入れるベガルタ。ザ・リアル・ストライカの平山が、その格段の能力を発揮できるチームに、ようやく、ようやく出会えたのに。
度重なった負傷を呪うしかないのか。
それはそれとして。
幾多の素敵な場面を見せてくれた平山に、改めて感謝したい。中でも、インタネットのカクカク画像で堪能したこの試合は、忘れられない。また、似非FC東京サポータとしてゴール裏に侵入し平山の消える動きを堪能したこの試合も。
結びに戯言を。よく、「平山相太に、岡崎慎司のハートがあれば」と言う人がいる。でも、私の意見は違う。「平山相太が、岡崎慎司の上背しかなければ」と思うのだ。そうだとすれば、平山は、優雅で技巧的なストライカとして、誤った使われ方をせずに、もっともっと、その個性を活かせたのではないか。
幾多の美しい得点に多謝。
2018年01月29日
この記事へのコメント
武藤さん。平山への愛情あふれる記事でしたね。ただ、日本サッカーには激震が走っているようです。こちらの方も是非書いて欲しいです。
Posted by ok at 2018年04月10日 12:43
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