2018年10月21日

まことめでたし、ウルグアイ戦

 まことにめでたい試合だった。堂安、中島、南野の3人のプレイを見ているだけで、幸せな気分になれたのだから。

 ウルグアイ戦と言うと、85年や96年の対戦を思い出す。
 85年のキリンカップはウルグアイ代表、ウェストハム(イングランド)、サントス(ブラジル)、マレーシア代表、日本代表、そしてその年の元日の天皇杯優勝した読売クラブが、総当り戦を行うレギュレーション(毎年レギュレーションはあれこれ変更になったが、当時のキリンカップは優勝を争う大会だった)。読売クラブには、当時の代表チームの大黒柱のCB加藤久、定位置を確保していた両サイドバック松木安太郎、都並敏史がいたが、彼らは読売クラブで大会に参加、日本代表では出場しなかった。今で言えば、麻也、長友、酒井宏樹が、不在で戦うようなものである。かくして迎えた日本対ウルグアイ、加藤の代わりに腕章を巻いた木村和司のすばらしい直接FKで先制し、CBとして守備を引き締めた岡田武史の奮闘はあったものの、切れ味鋭いカルロス・アギレラと、優美なストライカのホルヘ・ダ・シルバに2得点ずつ奪われて、1対4で完敗した。そう言えば、この試合には長沢和明(有名女優の親父殿)も出場していたな。80年代の日本代表は、欧州や中南米の代表チームとは、ほとんど試合をしてもらうことすらできなかったわけだが、このウルグアイ戦はとても貴重な経験となった。その絶好機を主将や中心選手抜きで戦ったわけだが。
 余談ながら、その後日本代表は、加藤を軸とする読売クラブとも対戦、戸塚哲也に得点を奪われ0対1で敗れている。
 96年は加茂氏率いる日本がユーゴスラビア、メキシコを連破し、(ホームでコンディションがよければ)欧米の列強にも勝てるのだと雰囲気が漂い始めた折だった。そして日本はその勢いのまま、ウルグアイを圧倒。次々に得点を重ねた。中でも、中盤後方にポジションを替えた名波の高速展開から、左サイドバックの相馬がオーバラップして好クロスを上げ、カズがヘディングで決めた得点はまことに美しいものだった。ちなみに70分くらいまでに4対1とリードしたものの、終盤バタバタして失点を重ね、終わってみれば5対3となっていたのだが、何か今回も似た試合になったな。
 余談ながら、この時のウルグアイは不思議なことに赤い色のユニフォームを着ていた。あと、無名のストライカに2点を奪われたっけな、アルバロ・レコパと言う若者だった。

 さて、この試合。
 もちろん、遠藤航の成長も楽しかった。特に後半大迫の宇宙開発を演出した場面、遠藤は中盤で見事な守備でボールを奪い、酒井宏樹に正確なスルーパスを通したわけだが、鳥肌モノのプレイだった。若い頃からリーダシップをとれ安定した守備力に定評あったこの選手が、コスタリカ戦に続き攻撃力も発揮してくれたのは結構なことだ。
 大迫も、屈強なCBのゴディンを相手に優美な技巧を披露し、最前線で幾度もみごとなターンを見せ、相変わらず輝きを見せてくれた。先ほど述べた宇宙開発を含め、よくシュートを外したのは確かだが、とにかく1点は奪ってくれた。シュートはまずは打たなければ入らないのだし、外しても気にせず狙い続けるのはストライカの基本要素だ。
 大迫だけではない、ロシアで活躍したベテランが元気なのは嬉しいことだ。我らが誇る世界屈指の両サイドバックである酒井と長友が相変わらず攻守で格段だったこと。ここ最近試合出場機会が減っているとのことで心配していたのだが、麻也の1対1の安定感は絶品で、腕章がとても似合っていた。
 など色々語りたいことがあったが、この試合に関しては、堂安、中島、南野のトリオが鮮やかな個人技を発揮して、美しい得点を重ねてくれたことが何よりだったのは言うまでもない。

 とにかく、堂安はウルグアイにボールをとられないのだ。いや、取られないだけではない、いわゆるデュエルで相手を打ち破った後すぐに次のプレイにつなげることができる。元々、どのレベルでも日本代表が、南米勢に苦戦する要因は、中盤でのボールキープ合戦で劣勢となり、チーム全体として攻撃の時間を確保できないところにあった。ところが、堂安は屈強なウルグアイ守備陣に身体を当てられても、ボールを取られない。堂安が1人いるだけで、日本の他の選手は前を向くことが容易になった。小野伸二や遠藤保仁のキープ力は格段だったが、彼らの挙動地域は中盤後方だった。中田英寿や本田圭佑もは中盤前方で見事なボールキープを見せてくれたが、持ちこたえた後に次のプレイをするためには、もう一拍持ち直しが必要だった。けれども、堂安は相当な細かなタッチで高頻度にボールを触れるので、敵を打ち破った直後、そのまま前進し仕事ができる。大迫の2点目を生んだ中島のシュートへの持ち出し、南野の4点目につながった堂安自身の強シュートはその典型だった。そして、何よりだったのは3点目。酒井のスルーパスも見事だったが、トップスピードで抜け出しながら、鋭い切り返しでウルグアイDFを完全に手玉に取りつつ、自分が正確にボールを蹴ることができる場所にボールを置くことに成功した。ボールがネットを揺らすのを確信できる美しい得点だった。同じピッチの反対側のゴール前に、堂安と同じ背番号21をつけていたウルグアイのストライカも中々の選手だったが、少なくともこの日に関して言えば、当方の21番の方が格段に光り輝いていたな。
 敵DFに身体を当てられながら、細かなボールタッチで持ち出しすぐに次の仕事ができる。そう、堂安はあたかもアルゼンチンのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 中島の切れ味あふれるドリブルに対し、ウルグアイの守備選手達が完全に腰が引けていたのも痛快だった。変化あふれるドリブルを長い距離で仕掛けた直後でも、強烈なシュートを打つことができる中島。大迫の2点目時を含め、この日も強いシュートを幾度も枠に飛ばしていた。なので、ウルグアイ選手もズルズルと下がることもできない。と言って軽率に取りに行くと、中島はボールにはあまり触らず大きなフェイントが武器なので、ベロッと抜き去られてしまう。ウルグアイDFもそれがわかっているので腰が引けた対応をするしかなく、中島はドリブル突破とシュート以外の選択肢も容易にとることができる。1点目の南野へのアシストのように狙い済ましたパスを通したり、オーバラップする長友を使ったり、逆サイドの酒井や堂安に展開したり。そのような選択の判断力が磨かれれば、中島はさらなる高いレベルに行くことができるのではないか。また、その魅力を活かすためにも、ボールを受ける挙動はサイドでもよいが、どんどんと中央に入ってプレイすべきにも思う。
 敵DFに正対しながら、ボールに触らず素早いフェイントを繰り返せる。そう、中島はあたかもブラジルのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 コスタリカ戦、パナマ戦を含めて、得点を重ねている南野のプレイは、堂安や中島ほど派手ではない。しかし、何が見事と言えば、その冷静な判断力だ。大迫が広範に動き、身体を張り、ボールを日本のものにすると共に、敵陣前にスペースを作る。南野は、ボールがペナルティエリア近傍に入るまでは、マークをひきつけながら遊弋し、堂安なり中島なりからのボールが、大迫が作ったスペースに入ろうとする瞬間に、フルパワーのプレイを見せる。要は、肝心な場面に体力を残しているのだ。なので、一番プレッシャがかかる敵ペナルティエリア内でも、正確なトラップをすることが可能で、自分が強いシュートを打てる場所にボールを置くことができる。南野は大迫を含めたチームメートすべてを己の配下と割り切り、一番おいしいところをいただく感覚を確保しているのだ。
 これって、古くはエンツォ・フランチェスコリ、新しくはディエゴ・フォルランを思い起こすではないか。そう、南野はあたかもウルグアイのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 もちろん、この試合には突っ込みどころも多々あった。失点もセットプレイでの空中戦の完敗、中盤デュエルでやられての速攻、三浦のお笑いプレイ。しかし、次のワールドカップはまだまだ先のことだ。新しい攻撃タレントが、この南米の強豪国に対して、美しいプレイを連発し、ゴールネットを揺らし続けてくれたのだから、私は素直にこれらを喜びたい。先方のコンディションが不十分だった、来年のコパアメリカに向けて準備中だった、スアレスがいなかった、など余計なことを考えても、しかたあるまい。息が詰まるような思いをしながら胃が痛くなるような試合は、ロシアで存分に堪能したではないか。あれは間違いなく最高の体験だったが、このようなお祭りのような試合も悪くないではないか。
 そうは言っても、アジアカップは近づいてくる。そして、その準備と言う視点からしても、結構な試合だった。大体、第2列はこの3人のほかに、ロシアであれだけ光り輝いた原口がベンチに控えていた(そして、パナマ戦での原口の存在感は圧倒的だったし、この試合でも終盤起用された原口はすばらしいプレイを見せてくれた)。もちろん、召集されなかったが乾がいる。本田や岡崎のような圧倒的な経験値を持つ選手を呼び戻す手段もある。後方に目を転じても、上気した遠藤航の充実に加え、パナマ戦では三竿もよかった。ここには、青山や柴崎ほど射程は長くないが、緩急の変化と短く速いパスが格段の大島がいる。最終ラインでは富安が底知れぬ素材感を見せてくれたし、三浦もあの場面がなければ…アジアカップを制覇するための準備も順調と考えてよいだろう。それはそれでよし。

 本調子ではないウルグアイに対して、あれだけ美しい攻撃を繰り出し、次々と得点できる国が、世界中探して他にいくつあると言うのだ。しばらくは、このめでたい試合を肴にしておいてバチはあたるまい。 
posted by 武藤文雄 at 23:12| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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