2019年01月05日

奥埜博亮との別れ

 昨年末より噂となっていた奥埜博亮のセレッソへの移籍が発表された。
 奥埜は、24年に渡るベガルタ仙台の歴史においては特別な選手だ。と言うのは、ベガルタユースから、J1のトップクラスのプレイヤと紛れもなく呼べるまでに成長させることができた、初めてかつ(現状では)唯一、と言ってよいタレントだからだ(他のクラブのサポータからは、「お前ら、それしか成功例がないのかよ?」と笑われるかもしれませんが、事実は事実なのです)。しかも、ユース卒団時にはトップ加入は時期尚早として、提携していた仙台大でプレイさせ、同大を卒業後に入団させた選手。さらにその後、Vファーレンにレンタル移籍させて経験を積ませて、とうとうトップの選手として確立した選手だ。この奥埜の育成方法は、素材的にレベルが高いが高卒段階ではトップには達していないタレントへの対応としては、実に適格なものだったと思う。そのような経歴のタレントなので、ベガルタサポータからすると格段に思い入れがある。
 ボールを保持しながらのターンが速く、瞬間的な加速にも優れているので、中盤の小さなスペースで相手を抜き去ることができる。(少々常識的だが)丁寧なパス出しでゲームを作り、粘り強い守備で敵攻撃の第一波を防ぐのもうまいし、スリムな体躯ながら腰を低くした当たりからのボール奪取も中々のものだ。シュートの精度に若干の改善の余地はあるが、ベガルタの中盤の中核として、奥埜は、とても頼りになる存在だった。
 正直言って、奥埜が今シーズンオフに他クラブに移ることはないと思い込んでいた(油断していた)。と言うのは、奥埜は89年8月生まれで、2019年シーズンには30歳になる。もうベテランと言ってよい選手なので、経済的に豊かな他クラブの獲得興味対象にはならないと考えていたのだ。奥埜が定位置を確保した15年シーズン以降は、オフになる度に「20台半ばの働き盛りの奥埜が他のクラブから買われたらどうしよう」とオロオロしていたのは確かだが、奥埜は毎シーズンオフにベガルタと契約を継続してくれた。これだけのタレントなので、過去非公式でも他クラブからの打診がなかったとは思えない。しかし、奥埜はベガルタでのプレイを選択し続けてくれた。これは、ベガルタが奥埜にそれなりの誠意(この世界で誠意とは現金以外ない)を見せていたからだろう。そして、30歳を迎えようとする奥埜には、ベガルタを凌駕する誠意を見せるクラブが出てくるとは思っていなかったのだ。
 そうこう考えれば、今回のセレッソは奥埜に対して最高級の誠意を提示してくれたのは間違いない。とすれば、違約金を含めてベガルタにもそれなりの実入りはあったはずだし、ユースからの自前育成選手が、この年齢にもかかわらず、経済的に豊かなクラブに購入いただけたのだから、まことめでたいと言う事になる。まずは、素直に喜びを…などと言えるわけないではないか。残念だ、とにかく残念だ。

 毎シーズンオフ、選手の他クラブへの流出を懸念して、何とも言えない日々を送るのが常なのだが、上記の通り、奥埜については完全に油断していた。このオフについては大岩一貴、シュミット・ダニエル、椎橋彗也の3人については、本当に心配していた。特に椎橋については、素質がある選手であれば後先なく買い集めるような金満クラブに目をつけられたらどうしようと不安だったのだ。奥埜と異なり、ベガルタがまだ若い椎橋に、他を圧する誠意を見せていたとは思えないし。
 奥埜の他も他クラブに場を求めた選手は少なくない。特にこのオフは中盤選手の移籍が目立つ。ベガルタ加入後その潜在能力を発揮するようになった野津田岳人が保有権を持つサンフレッチェに、個性的なドリブラの中野嘉大がコンサドーレに、サイドアタックのスペシャリスト古林将太がベルマーレに、高精度パスが期待された庄司悦大がレンタル先のサンガに、そしてベガルタユース出身で強いキックが持ち味の茂木駿佑がやはりレンタル先のホーリーホックに、それぞれ移籍した。正直言って中盤の核だった奥埜と野津田が2人チームを離れたのは戦闘能力的に大きな痛手かもしれない。ただ、上記の通り、将来性を含め中盤で最も重要な椎橋は確保し、新たに中盤には松下佳貴、石原崇兆、飯尾竜太朗と働き盛りで実力は折り紙付きの中盤選手を3枚補強できたわけだし、痛手は思ったよりは少ないかもしれない。まずは、2019年シーズンの編成の最終確定を待ちたい。

 ともあれ、タレントの流出については、悪いのは移籍先のクラブではなく、ベガルタなのだ。奥埜にセレッソ以上の誠意を提供できない経済力しかないベガルタがいけないのだ。天を恨んで人を恨まず、残念なことは極まりないが、快く奥埜を送り出したい。セレッソの新監督のロティーナ氏のヴェルディ時代の采配を見た限りでは、奥埜は氏好みのタレントだと思うし。 
 奥埜よ、今までのすばらしいプレイをありがとう。君が定位置を確保した2015年シーズン以降、ベガルタは、早々にJ1残留を決め中位を確保、17年シーズンはルヴァンのベスト4、そして昨18年シーズンは天皇杯決勝進出、これらの好成績は君抜きでは、なし得なかった。新しいクラブで頑張ってくれ、ただしベガルタ戦以外で。
posted by 武藤文雄 at 19:03| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。