2019年07月15日

シュミット・ダニエルとの惜別

 シュミット・ダニエルが、ベルギー、シントロイデンへ移籍、ベガルタを去ることとなった。シュミットは生まれ育ちが仙台と言う意味でも、ベガルタにとって特別なタレントだ。その惜別の試合が、何とも言えないホームでの0対4での惨敗だったのだから、何とも我が軍らしいか。

 シュミットは、森保氏が代表監督に就任して以降、常時代表に選好されるようになり、ここまで5試合に出場。アジアカップこそ定位置を権田修一に譲ったものの、先日のキリンチャレンジではトリニダード・トバゴ戦、エルサルバドル戦とゴールを守り、少しずつ定位置確保に近づいている感もある。
 ベガルタにとって、過去A代表に出場したのは、2003年韓国戦の山下芳輝、2010年アルゼンチン戦の関口訓充以来のこと。ただし、2人ともそれぞれフル出場ではなく、その後出場機会も得られなかった。改めてそう考えると、シュミットが代表に定着しかけていることそのものは、まだ四半世紀と言う歴史の浅い私のクラブにとって、着実な積み上げの成果と言っても過言ではないだろう。
 簡単にベガルタのゴールキーパの歴史を振り返ってみる。14年シーズンに林卓人が移籍した後、関憲太郎が定位置を確保するが、必ずしもよいプレイを見せられなかった。翌15年シーズンは移籍加入した六反勇治が定位置を奪い、日本代表合宿にも呼ばれるなど活躍した(出場はなかったが)。しかし、翌16年シーズンは関が定位置を奪い返し、ここからは激烈な競争が行われる。一方、14年にベガルタに加入したシュミットは、定位置争いには参画できず、14、5年にはロアッソ、16年には山雅にレンタル移籍し経験を積む。そして、17年にベガルタに復帰したシュミットは、以降関と激しい定位置争いを演じる。シュミットがほぼ定位置を確保したのは、昨18年半ばのこと。そこから、シュミットは一気に代表の定位置争いまで駆け上がったことになる。ここで重要なことは、関と言い、17年にエスパルスに移籍した六反と言い、ここ数年ベガルタのGKの定位置争いが非常にレベルの高い強化が行われていたことだ。

 本人が移籍時のコメントとして述べたように、27歳と言う年齢を考えると、欧州で活躍するにはギリギリの年齢と言うことでの、決断なのだろう。日本のトッププレイヤあるいはトッププレイヤを目指そうとするタレントが、欧州でのプレイを望むのは、ここ最近のサッカー界を考えれば、当然のこととなっている。短い現役時代の収入を最大限にすると言う意味でも、己の能力をより厳しい環境で限界まで伸ばし日本代表で中核として活躍すると言う名誉を考慮しても。
 ただし、そのためには欧州のクラブに移籍するだけではなく、そこで活躍しステップアップしていく必要があるのだが。そして、シュミットが移籍するクラブはベルギーのシントロイデン。日本企業が出資し、積極的な経営をしつつ、遠藤航、冨安健洋、鎌田大地らの日本代表選手も活躍経験があり(さらに冨安のステップアップもあり)、何か日本人選手の移籍先として安心感のあるクラブではある。
 しかし、だからと言って、シュミットの活躍が担保されているわけではないのは言うまでもない。シュミットは197cmのサイズが話題になるが、そのプレイの最大の特長は左右両足のボール扱いのよさと、正確なキックにある。また大柄にもかかわらず、低いボールへの対応がうまく、敵のシュートに対しギリギリまで我慢できるのも見事なものだ。ただ、一方でその大柄な体躯にもかかわらず、時折クロスへの判断を誤ることがあったのは、ご愛敬か。ともあれ、昨シーズン最終盤からはそのようなミスも減ってきて、代表でも出場機会を得ることができてきたわけだ。ここまで、丹念に能力を向上させてきたシュミットの努力と、そのための知性は、すばらしいものがある。
 その長所、短所が、欧州でどのように評価されるか。欧州でプレイした日本人ゴールキーパと言えば、川口能活と川島永嗣と言うことになるが、シュミットは川島と異なり語学にも課題があるようで、どうなるだろうか。
 楽観も悲観もしていない。しかし、シュミットが努力を重ね、正確なボール扱いとフィード、広い守備範囲、シュートへの的確な対応を誇る、Jでも屈指のGKとなったのは間違いない。そして、この個人能力が、まずはベルギーの中堅クラブでどこまで評価されるのか、期待を持って送り出したい。
 もちろん、違約金もそれなりに入るはずだし、ベガルタにとって、決して悪いことばかりではない。昨シーズンの西村拓真に続き、生え抜きのタレントが欧州に旅立ったことそのものが、単純にうれしい。加えて、西村にせよ、シュミットにせよ、ベガルタ加入前に同世代の中で格段に飛び抜けた評価を受けていたタレントではない。彼らは、ベガルタと言うクラブを選んだからこそ、ここまで来られたのだ。
 これは、若い逸材にとって、ベガルタと言うクラブが、己の能力を高めるいかによい環境であるかの証左となるだろう。

 ベガルタフロントは、シュミットの移籍と前後して、ジュビロのカミンスキーをも上回るとの噂もあり、ポーランド代表経験もある、ヤクブ・スウォビィクを獲得した。これはこれで大いに期待できるタレントだ。もちろん、シュミットと激しい定位置争いを演じていた関憲太郎もいる。また、ここ最近関は負傷離脱していたわけだが、常に安定した第3キーパとして機能していた川浪吾郎にとっては、シュミットの移籍は、定位置確保の大きな好機なのは言うまでもない。
 選手の移籍放出は寂しいことだし、戦闘能力的なマイナスも起こる。しかし、サッカークラブは生き物であり、選手の出入りは常なるものだ。愛するクラブのために尽くしてくれた選手のステップアップは何よりもうれしいものだし、それにより新しい選手の活躍機会の拡大もまた楽しみなものだ。

 2022年ワールドカップ、世界屈指のゴールキーパとなったシュミットと共に、ベスト8、いやそれ以上を戦えることを祈念してやまない。
posted by 武藤文雄 at 23:47| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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