2007年07月03日

ユース代表初戦快勝

 スコットランドの監督アーチー・ゲミル氏は、私達の世代には忘れ難い名選手だ。70年代半ばイングランドリーグをダービーカウンティとノッティンガムフォレストの中盤の将軍として2度制覇している。小柄ながら、中盤後方で豊富な運動量と安定した技巧で支えた名手中の名手。当時スコットランドは欧州屈指の強豪で、78年アルゼンチンワールドカップ前には優勝候補の一角とも言われた。ちなみにイングランドは予選でイタリアに屈して本大会に出場できなかったが、当時はスコットランドの方がイングランドより強かったのは間違いない。この時のスコットランドの中盤は充実しており多数の名手がズラリと揃っていた。結果的に初戦のペルー戦は、押し出されるかのようにゲミルはスタメンから外れてしまった。ところがスコットランドはこの試合、ペルーの伝説的名手クビジャスの技巧にチンチンにされ完敗。続く2試合目のイラン戦からゲミルが起用された。ところが、イランの自殺点で先制したものの、後半にゲミルが自陣前でベロンと抜かれたところから失点し、結局1−1に終わる。当時、アジア代表が欧州のチームと本大会で引き分けるのは、相当な快挙だった。しかし、ゲミルはこの屈辱を、1次リーグ最終戦のオランダ戦で晴らすことに成功する。3点差で勝たなければ次ラウンドに出場できないと言う厳しい状態のこの試合、オランダの名手レンセンブリングにPKで先制されるも、リバプールの名手ダルグリッシュで追いつくや、ゲミルのPKで逆転。そして、ゲミルが鮮やかなドリブル突破から3人抜きで美しい得点を決める。その後、オランダのレップに1点差とされてしまい、敢え無くスコットランドは1次リーグ敗退。以降もスコットランドはワールドカップに出場しては、1次リーグの壁にはね返される歴史を繰り返す事になる。
 ともあれ、この名手率いる大英帝国北方のサッカー強国に対し、我らの自慢の若者達が完勝したのだ。何も文句を言う筋合いはあるまい。

 試合そのものは、日本が技巧、戦術眼でスコットランドを圧倒した。一方のスコットランドは1人1人は決して器用ではないが丁寧なプレイを続けて、高さと強さで日本の守備陣を悩ませる。それでも、日本の守備陣が粘っているうちに、根負けしたスコットランドにミスが出始め、日本が先制に成功した。槇野の何でもない縦パスを敵CBがミス、さらにGKがクリアを若森島にぶつけてしまうのだから、幸運といえば幸運。しかし、この幸運は技巧的なサッカーで日本が攻め続けたから舞い降りたものと考えるべきだろう。以降は前に出てきたスコットランドのミスを拾った逆襲から、梅崎と青山が見事なミドルシュートを決めて振り切った。青山はこのメンバの中で唯一Jでの試合出場経験に乏しい人材。ベンチにはJでも経験を積んでいる太田、香川、森重、柳川らがいた訳だが、それでも青山にこだわった吉田監督の采配に見事にこたえた。得点場面も見事だったが、DFラインの前でよくボールにさわり、見事な展開振りだった。この日のマンオブザマッチと言ってもよいだろう。どうでもいい話だが、北京世代にはどうして「青山」と言う選手が多いのだろうか。
 柏木、梅崎は「格」を発揮し、林、福元、槇野は常に安定した戦いを見せ、若森島は強さと思い切りのよさで活躍し(でも後半柏木のパスから抜け出した場面は決めろよ)、アトムと河原は知的によく動いた。贅沢を言うと、内田と安田には攻め上がるのみならず常に高精度なラストパスを狙って欲しかったと思うが、これは期待値が高過ぎるのかもしれない。

 余談ながら、どのような世代でも日本の代表チームならば、つまらないミス(選手にも監督にも)や燃料切れが起こらなければ、欧州北方の国との試合はこのような展開から、技巧と戦術眼で勝利するパタンを持っている。私がアジアカップについつい楽観的になるのは、今の代表チームならば豪州相手にこの日のユースのような試合で快勝できるのではないかと思うからなのだが。

 ともあれ、初戦快勝は結構な事。あのバカダンスを幾度も鑑賞できる事を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(14) | TrackBack(2) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あの「バカダンス」はどうも好きになれない。
サッカーの品位ってそんなもん?
って聞かれた・・・・。(ボソ)
Posted by あらら at 2007年07月06日 00:33
>バカダンス
生暖かく見守るなり、冷笑的に見るなり、それは人それぞれだと思いますが、
あまりに批判的な視線は若い人間を萎縮させる年寄りの小言となりうるのであまり好きではありません。

とはいえ、連中も今回のバッシングに懲りてもう少し受けのいいパフォーマンスに切り換えるんじゃないでしょうか。
パフォーマンスをすること自体に懲りないといいな、と思うのですけれどね。
Posted by yocc at 2007年07月06日 01:04
バカダンス けっこう
この世代は伸び伸びと育てたい。
新潟勢を見ていると他サポとしては脅威だなあ…
Posted by u at 2007年07月06日 02:42
>>どうでもいい話だが、北京世代にはどうして「青山」と言う選手が多いのだろうか。

みんな良い選手だね。

吉田の株が上がっていく。
大会終了後、反町と変えてもいいかもしれない。
Posted by ポロリーノ山田 at 2007年07月06日 07:14
3回目のバカダンスには、彼らの間にも「もういいんじゃね?」という雰囲気を感じました。それでも「やろうって決めたんだから、」という感じで最後までやるあたり、よくもわるくも日本人・・・みたいな印象を私は受けましたね。でも気持ちいい試合でした。あの内容なら、ピッチ外はどんなパフォーマンスでも可です。
Posted by じーさ at 2007年07月06日 08:30
バカダンス、ダメですか?
あれで、結束が強まるんなら
いいと思いますけど。

2戦目も浮ついた様子なかったし。

ああやって、目立ったことやると
すぐにこうやった叩く人がいますけど
どうも私には理解できません。

試合で結果を残すこと。
輝ける将来につながるプレイをすること。
世界大会でした経験できないことを
数多く経験すること。。。

例えばこの辺がきちんとできているので
あれば、あの程度は批判するに値しない
範囲なのではないでしょうか?

誰に迷惑かけているわけではないし。
Posted by 黒貞桓 at 2007年07月06日 09:42
あのダンス、私はかなり気に入りました。
チームの結束が高いのがわかるし、採用したダンスが世界的に認知度の高いビリー氏のものってのもなかなかいい。個人的にはビリーダンスのバージョンを変えて続けていって欲しかった。(^^

>新潟勢を見ていると他サポとしては脅威だなあ…

今年の第2節、新潟vs浦和で0-2で負けているところから後半途中投入の河原と田中で1点づつあげて同点に追いついたのを思い出します。(間違ってたりして)
順調に伸びてくれるとほんと脅威ですね〜。


Posted by さく at 2007年07月06日 12:42
このチームは要はラテンなんですよ。吉田監督も好不調の波が激しいと言っているように。
そのつもりで見ると吉。

今こそジーコが必要かもしれない(笑)
※ドゥンガじゃダメ子
Posted by 新庄の影響かも at 2007年07月06日 15:27
「バカダンス」、いいじゃないですか。
おバカでいられるのは若者の特権なんですから。

ただまあ、良識家さんたちの眉をひそめさせるのもバカをやる醍醐味の一つでもありますんで、「ケシカラン」というおじさんがいるのもまたいいじゃありませんか。

そのへんらくーにいきましょ。

※その代わり、おバカ権力者の老害は徹底的に叩かないとね。
Posted by かわうそさん at 2007年07月06日 16:40
ははは、あたしの性格だと、
目の前であれやったら必ず削りに行きます...(^^;
Posted by あらら at 2007年07月07日 01:38
>必ず削りに行きます

随分程度の低いご意見ですね
Posted by at 2007年07月07日 15:25
はい、程度低いですう。(><)
それでいつも怒られました。品位に欠けるんだそうです・・・。

自分でも「××るぞゴラァ」なんて「試合相手の目の前でのバカダンス」と同じくらい程度低いと思います、はい。(^^;

特にもう次の試合が無いとかで、カードなんか怖くないときがチャンス・・・じゃなくて危ないですよね。

ラフプレーには気をつけましょうね。
ダメダメ。w
Posted by あらら at 2007年07月07日 16:36
>必ず削りに行きます

あれ一人か二人でやっちゃうと、相手の憎悪もマックスになるんでしょうけど、みんなでやっちゃうと、相手もどうしていいか、迷っちゃうんじゃないでしょうか?

あとアトムって英語じゃ下ネタ用語になるようですけど、カナダじゃどう捉えられてるのか、気になっている俺でした。
Posted by パト at 2007年07月07日 19:25
アフリカのチームで奇妙なダンスを踊ったりしますが、アレを見て
「むかつく、削ってやる」なんて思う人いますかね???
Posted by at 2007年07月08日 07:58
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