2021年05月25日

酒井宏樹のJリーグ復活と五輪代表

 酒井宏樹が浦和レッズに移籍するとの報道が、もっぱらだ。さらに五輪代表オーバエージとして、酒井の他に、吉田麻也と遠藤航が確定とのこと。この移籍と五輪代表確定、野次馬としては、大いに楽しみでもり、突っ込みどころも感じる。
 まず、浦和の右サイドバックには、圧倒的な存在感を放っている西大悟がいる。西は鹿島で長年活躍し今シーズン浦和に移籍、酒井よりも年長の名手だ。もちろん、酒井も西も経験豊富なタレントで、他のポジションもこなせるから併用も可能だろうが贅沢な話ではある(そして、この2人が併用され、売り出し中の小泉佳穂に使われ、キャスパー・ユンカーにラストパスを通す場面など、想像するに楽しくなってくる、もちろん我がベガルタ戦以外でだが)。
 一方五輪代表も、このポジションはよい人材が多い、オランダで活躍する菅原由勢、昨シーズンまで浦和の右サイドで活躍していた橋岡大樹(橋岡がこのオフに欧州を志向せず浦和での活躍を選んでいたら、西や酒井がどのような選択をしていたのかは、楽しい思考実験だが)、大分から横浜Mに移籍し中盤起用などで幅を広げている岩田智輝、最近負傷離脱しているようだが新潟、鳥栖で順調に経歴を積み今期清水に移籍した原輝綺。敢えて、オーバエージをこのポジションで起用するのが、適切な策なのかどうか。
 もっとも、東京五輪のCOVID-19影響による1年延期により、五輪代表の強化は様変わりしている。この1年で、いわゆる五輪世代の選手が、次々に大化けしているからだ。冨安健洋と堂安律を別格としても、J屈指の名手に成長した川崎の田中碧と三笘薫、Jでボコボコ点をとっている前田大然や上田綺世、格段の守備を見せている瀬古歩夢、オランダで相当な活躍をしていると言う板倉滉など。そうこう考えると、いずれのポジションにも良好なタレントがいるから、ポジション的に薄いところを強化する必要はないのかもしれない。
 疫病禍となる前の五輪代表を考えると、強化の不手際でまったくチーム作りができていなかった。19年11月に実施したコロンビアとの強化試合は、堂安や久保建英を呼び戻しベストメンバ風で戦ったが、中盤後方の弱さを徹底して突かれ惨敗。その後、20年1月のU23アジア選手権は、各選手の覇気のないプレイ振りと、首脳陣の工夫のない采配で惨敗。誰が定位置をつかんでいるかもわからないほどの窮状だった。
 ところが、疫病禍による五輪の1年延期で流れが変わった。どうしても日本のサッカー界は、ユース世代(Jユースだろうが高校だろうが)と大人世代の断絶が大きい。しかも、好素材であればあるほど、J1の強豪に加入するケースが多いが、そうなると試合出場の機会が減ってしまい、伸び悩むタレントが多いのだ。本来であれば、本当の好素材は、Jのクラブユース所属時から、J2やJ3の大人のチームにレンタルされ、厳しい環境での経験を積むことが望ましいのだが。しかし、疫病禍により、皮肉なことに高卒5年目の選手の多くがJで大活躍。大学を迂回していた三笘や上田に代表されるように、多くの選手がしっかりとした大人の選手に成長した。おそらく、疫病禍がなく、2020年に五輪が行われていれば、非常に厳しいチーム作りを余儀なくされていたことだろう。しかし、森保氏と横内氏は、良好なタレントを自在に使うことが許されている。事実上、ぶっつけ本番ではあるけれど。
 そう考えると、地元五輪では、純粋に最強チームとなるべく最高のオーバエージタレントを選考するのが適切に思えてくる。なるほど、吉田、遠藤、酒井は欧州での経験も格段、精神的にも頼りになる格段なタレントだ。彼らに匹敵する好調のタレントとしては大迫勇也、南野拓実、伊東純也あたりが考えられようが、短期決戦の大会、守備の安定を考え後方のタレントを揃えるのは理解できる施策だ(ゴールキーパに経験豊富なタレントを選考すべき、と言う議論はあるかもしれないが)。中でも酒井は、歴代の日本代表選手で、中村俊輔と長谷部誠と並び欧州で最も実績を残した日本人選手だと思っている。ネイマールさえ封じた粘り強く激しい守備、柏時代から定評あった前進のタイミングと好クロス、ロシアでも記憶に新しい大柄な体躯を活かしたスペースカバー。もちろん百戦錬磨の吉田も、ブンデスリーガ屈指のMFと言われる遠藤も格段なプレイを見せてくれるだろう。
 事実上ぶっつけ本番の五輪代表は、来月ガーナとジャマイカと戦い、さらに大会直前に2試合(うち1試合はスペインとのこと)。まずはガーナもジャマイカもよい状態で来日し、よい強化試合となることを祈るとするか。まあ、ロシアワールドカップが典型だが、急ごしらえのチームがうまく行くこともある。五輪が本当に開催されるのだったら、酒井を含むこの豪華なメンバで黄金のメダルを獲得することを期待したい。先日、アルゼンチンに快勝したように、選手の能力には疑いがないのだから。それにしても、よい時代になったものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:44| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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