2021年07月31日

いかに2次ラウンド3連勝を目指すか

 戦闘能力を順調に発揮し、3連勝で1次ラウンドを終えた日本。準々決勝はニュージーランドと戦う事になった。ベスト8はアジアから2か国(日本、韓国)、オセアニア1か国(ニュージーランド)、欧州1か国(スペイン)、アフリカ2か国(エジプト、コートジボワール)、北中米1か国(メキシコ)、南米1か国(ブラジル)と、全大陸の国が残ることとなった。
 各大陸の強国がまんべんなく残ったのは、五輪が若年層大会であること、欧州南米の2強が地域選手権の直後でそちらが本命だったこと、東アジア独特の高温多湿の気候に一部強国がやられたことなど、様々な要因があろうが、グローバルなタイトルマッチ感たっぷり。何とも楽しいではないか。
 そして、ここまでアフリカ(南ア)、北中米(メキシコ)、欧州(フランス)はやっつけた。あとはニュージーランド(オセアニア)とブラジル(南米)をやっつけて全地域を制するのみ。

 ニュージーランドは開幕戦となる韓国戦に1-0で勝利(番狂わせ的な印象が強い勝利だった)。その後ホンジュラスには2-3で競り負けたが、最終戦のルーマニアには0-0で引き分け、しぶとく2次ラウンド進出を決めてきた。
 もちろん、油断は禁物だ。ニュージーランドと言えば、2010年南アフリカワールドカップが記憶に新しい。プレイオフでバーレーン(ミラン・マチャラ氏が率いており日本も結構苦戦した)に競り勝ち本大会へ。そしてスロバキア、パラグアイ、イタリアと3引き分けで1次ラウンド敗退するも、唯一の無敗国と話題になった(パラグアイはその後1/16ファイナルで我々の前に立ち塞がった。)
 常識的には戦闘能力的には当方が格段に上だろう。とは言え、初戦の韓国戦で守備を固めてワンチャンスをものにして韓国を破ったと言う。フランスのように中途半端に前に出てきてくれれば、田中碧の展開で崩せるだろうが、南アフリカのように引かれると厄介な展開になる。ただ日本は、上田の調子が上がってきており、久保は相変わらずよく点をとる。南ア戦のように敵速攻をケアした戦いをすれば、どこかで仕留めることはできるだろう。油断することなく、しっかりと勝ってほしい。

  ではニュージーランド戦、そしてそれ以降、日本はどのようなメンバで戦うのだろうか。 
 ニュージーランド戦では、酒井が出場停止。ただ、ここに入る橋岡は運動能力が高く、上下動を苦にしないタレント。酒井と比較されると、自陣での粘り強い守備や攻撃参加時の変化では劣るかもしれないが、この比較は相手が悪いと言うこと。この世代ではトップレベルの能力を誇り、レッズ時代もチーム状態が悪い時でも安定したプレイを見せていた。ほとんど心配はないだろうし、酒井を休ませられると前向きに考えるべきだろう。
 冨安が復帰し、麻也との2CBはさらに安定した。ニュージーランドのトップは、プレミアで活躍するクリス・ウッドだが、この2人ならば心配ないだろう。また冨安離脱中に、2試合起用された板倉がCBとして安定したプレイを見せてくれたのは、カタールワールドカップに向けて嬉しいことだ。
 最終ラインで一番不安だった左DFだが、中山がメキシコ戦で落ち着いたプレイで敵エースのライネスを止め、評価を上げた。このポジションは、A代表でも長友のバックアップがはっきりしていない。守備力が計算できる180cmある選手の確立は、カタールに向けて非常に重要。攻撃参加時も、左利きのメリットを活かし中盤のパス回しの逃げ所としてよく機能している。自クラブでも常時左DFで使われ、クロスの精度など経験を積んでくれるとよいのだが。
 ゴールキーパの谷はメキシコ戦で残念なミスがあったが、それ以外は安定している。特にクロスへの対応がよい。この手の大会、最後はキーパの超ファインプレイが勝負を左右する。伸び盛りの谷に期待しよう。
 中盤後方の遠藤航と田中碧は大会前の期待通り圧巻の存在感。ただ、問題が2つある。1つ目は、2人とも1枚警告を食らっていること。航の南ア戦の警告は主審のミスだった。そもそもあの場面は相手の競りかけの体制が悪く、航のファウルでもないように見えた。しかし能力が低い主審と当たるのは若年層世界大会では仕方がないこと。通り魔に会ったようなものだ。碧のメキシコ戦の警告は、いわゆるデュエルの結果で仕方がないか。準決勝をこの2人不在で戦う事はあまり想像したくないのだが、それを確実に避けるためにはニュージーランド戦を休ませるしかない。さらに厄介なことは2人とも警告をもらっているから、両方とも休ませる選択が難しい。油断をすると言う意味ではなく、戦闘能力で当方が優位と思われるニュージーランド戦、スタメンを航ではなく板倉で行く選択肢はあると思うが、それはやり過ぎだろうか。
 2つ目の問題は、田中碧不在時(出場停止と言う望ましくないケースと、休ませると言う積極的なケースがある)のバックアップの目鼻が立っていないこと。遠藤航不在時は、板倉を同じポジションに起用すれば、中盤で激しいボール奪取としっかりした持ち上がりを見せてくれるだろう(もちろん遠藤航ほど効果的でないかもしれないが)。いや、麻也、冨安、酒井、堂安、久保と言ったタレントにも、交代する選手は揃っている。こう言った中心選手が不在となれば戦闘能力が落ちる(先ほど遠藤航と板倉を比較したように)が、やり方は変える必要がない。しかし、碧がいなくなれば前線の堂安や久保に精度の高いボールを通す選手はいないから、異なるやり方を考えなければならない。常識的には、碧の代わりに板倉を入れて堂安や旗手の位置を少し後方に下げるなどが考えられる。その場合、上田と林の2トップにしたり、久保と三笘を両翼にする3トップなども考えられるかもしれない。ただ、問題はそのような試行を準備試合ではほとんど行っていないことだ。スペイン戦で、碧を外し板倉と航を並べたが、強豪相手の最終テスト的な試合となり、やり方のトライアルとはとても言えなかった。6月の強化試合を選手選考に使ってしまい、やり方を増やすことを怠ったツケが出なければよいが。
 興味深いのは攻撃ラインをどう編成するのか。日本の攻撃陣は皆好調。攻撃的MF陣は堂安、久保は言うまでもないが、相馬は縦抜けを再三見せてPKを奪うし、三好も知性と技巧を感じさせる得点を決めた。そして旗手は独特のキープから攻撃のアクセントとして面目躍如。FW陣も、林の岡崎風がんばり、前田は俊足を活かしとうとう点をとり、上田は枠に2発飛ばした。そして、Jリーグを席巻しているドリブラの三笘はまだ本調子ではないが、何かこう秘密兵器感が漂うよね。オプションはたっぷりある。日本のこの手の代表チームで、ここまで誰を出してよいかわからない的な、潤沢なタレントを豊富に持てた時があっただろうか。
 しかしここは議席は4つ。もちろん、フランス戦のように勝っていれば、久保や堂安を休ませる選択肢は取りやすい。しかし、もしどうしても点をとりたいときに、森保氏は久保や堂安を外して、他のバラエティあふれるタレントを使う決断ができるだろうか。

 誠にめでたいことに、森保氏への嫌味も迫力が減ってきたようだ。よいサッカーを見せ、堂々の3連勝を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 17:01| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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