2021年09月12日

ベガルタ残留プラン

 ベガルタ8月の再開後2分4敗と思うように勝ち点を積み上げられず、現状残り11試合、勝ち点19、得失点差マイナス25の18位。17位までが降格の厳しいレギュレーションで、15、16位クラブの勝ち点は26、13、14位の勝ち点は30。J1残留には相当厳しい状況となっている(これらの数字は前節完了時点)。残留ラインをどう予測するかだが、40と見ると5勝6分0敗の勝ち点21、35と見ても4勝4分3敗ペースの勝ち点16の獲得が必要。不可能な数字ではないが、これまでベガルタは3勝しかしていないのだし、簡単に実現できると言ったら嘘になる。

 上記再開後の試合を振り返ってみると、何かしら運もない。大差をつけられ完敗したのはマリノス戦のみ。このマリノス戦は後半立ち上がりまで粘り強く守っていたが、水沼とレオ・セアラの妙技に2点目を許し、前に出たところで大量失点を食らったもの。
 それ以外の負け試合はなんとも言えない微妙な負け方ばかり。8月再開初戦のガンバ戦とこの代表ウィーク中断直前のサガン戦は、セットプレイによる失点をどうしても返せず0-1の敗戦。FC東京戦はアディショナルタイム、敵の明らかなダイビングをPKとされると言う主審の個性的な判定での敗戦(そうは言っても試合は審判に任せなければ成立しないからしかたない)。引き分けたセレッソ戦と横浜FC戦は、相応に好機をつかんだがポストに嫌われた。まあ、長いシーズンだ。ツキがない時とはそう言うもの。ここは割り切って粘り強く戦うしかない。
 幸い上記した通り、守備網はかなりのレベルで整備されている。そして後述するが、手倉森氏が守備の再構築を主眼にチームを整備している構想は正しいと思っている。

 けれども、どうにも点が入らないのは頭が痛い。何せ上記8月以降の6試合、奪えた得点は僅かに1点なのだから。
 多産系の点取屋がいないから得点力不足に苦しんでいるわけで、まずは月並みだが好機を増やすべく努力するしかない(「いや攻撃力が貧困だから大量に点を稼ぐストライカがいない」との禅問答の講釈を垂れるのもおもしろいが、今は置いておく)。
 そのためには、勝負どころで人数をかけた攻撃を行うことに尽きる。
 どうしても守備的に戦うやり方をしている以上、攻撃の頻度は少ない。しかし、よい形でボールを奪った時に人数をかけて攻められるかどうか、これは選手個々の守備から攻撃への切替の判断(チームとしての意思統一)にかかっている。逆説めくが、有効な多人数速攻がしかけられない状況ならば、無理に前に行かずボールを保持した遅攻に切り替える判断も重要だ。相手が守備ブロックを固めても、松下佳貴や上原力也ならばそのブロックを崩すパスを出すことができるから、人数をかけた攻め直しもしかけられる。この意思統一が8月シーズンはまだまだ成熟していなかった。この代表ウィークでどこまで改善できたか期待したい。
 人数をかけた攻撃をしかける以上、ボールを奪われた後の敵の速攻にどう備えるかも重要だ。幸い、ベガルタの組織守備は整備されており、8月シーズンを見てもそのリスクはかなり小さかった、このあたりの整備は手倉森氏はさすがと言えるだろう。点がとれないからこそ守備を強化した手倉森氏のやり方は正しかったのだ。地味ながら夏のオフの補強の大ヒットと言える福森直也と周囲の連係も次第に成熟していくだろうから、逆襲の備えはますます充実するだろう。
 もちろん、失敗はあった。マリノス戦は敵の強力なプレスに耐えているうちに2点差とされてしまった。FC東京戦は、永井謙祐と高萩洋次郎の老獪な2トップの受けと位置取り、試合終盤にMFに起用された森重真人の格段の守備力で、速攻後の連続攻撃を許しピンチの連続だった。とは言え、マリノスのような強力な前線守備や、FC東京のような高度な判断力を備えたベテランを並べられるようなチームは、そう多くはない。また上記した守備組織の一層の成熟があれば、速攻をしのいだ後のつなぎで敵プレスをもっと上手に外せるようになるはず。だから、大胆に人数をかけた攻撃を整備するのは十二分に可能なはずだ。

 もう一つ改善を期待したいのは、もっと個々の選手の特長を活かすことだ。
 例えばフェリペ・カルドーゾ。後方からの高いボールについては収めることはもちろん、ヘディングの競り合いに勝つことも滅多にない。したがって、後方からのロビングを前線にいれてもほとんど意味はない。しかし、足元に入ったボールターンは格段にうまい。五輪オフの直前の札幌戦、押し込まれた前半たった1回よいグラウンダのパスを受け見事なターンから、真瀬の得点につなげた場面は忘れ難い。押し込まれる時間帯にDFがロングボールで逃げる局面はさておき、ボールを回して敵プレスをかいくぐった時に縦パスを入れる後方の選手達には工夫が欲しい。
 例えば氣田亮真。前を向いた状態でボールを受ければ、鋭いドリブル突破を見せてくれる。しかし、敵の組織守備下で後ろを向いた状態でボールを受けてもほとんど機能しない。そのため消えてしまうことが多い。氣田自身の位置取りの向上も必要だが(もうシーズンも2/3過ぎたのだから、そろそろ自ら解決して欲しいのだが)、手倉森氏ももう少し采配に工夫できないか。例えば左右対称ではないフォーメーションをとり、大胆に氣田のベースポジションを大外にして、福森や蜂須賀にサイドチェンジを狙わせるとか。
 余談ながら、サイドMFには(もう若手とは言えなくなってしまったのが寂しいが)ユース育ちの佐々木匠、今シーズンの補強の切り札と期待された秋山陽介らがいるのだが、ベンチ入りの機会もほとんどない。手倉森氏の彼らへの評価が、現状の氣田未満なのは残念なことだ。
 このあたりはネガティブに考えるとキリがない。一方で百点満点ではないかもしれないが、個別に武器を持ったタレントは揃っているのだ。色々文句を言ったが、F・カルドーゾのターン、自分の間合いでの氣田の突破、佐々木の中盤からの抜け出すドリブル、秋山の左クロスなどレベルの高い攻撃兵器は揃っている。後は手倉森氏が、それらの特長をいかに組み合わせるかなのだ。
 
 約10年前にACLに出場した時の手倉森サッカーの魅力は、後方から一気に(一揆に?)多くの選手が攻撃にからむ速攻、湧き出る速攻だったのだ。各選手の意思統一、特長が異なる選手の組み合わせの妙。
 2021年の手倉森氏の課題は、いかにそれを再現するかにある。基盤は完成しているのだ、絶対にやれるはずだ。

 確かに状況は苦しい。
 正にサポータ冥利に尽きるシーズンではないか。積み上がらない勝ち点、しかも参戦しても声を出すことができない疫病禍。(自粛とは言え)移動にも制限がかかり、思うように競技場にも行かれない。
 切歯扼腕が継続し稀に歓喜雀躍が訪れるのが、サッカーの最大の魔力。半世紀近くサッカーに浸り切ってきたが、ここまでその魔力そのものを体験できるシーズンも珍しい。最終節終了時には(遠隔なのか、アクリル板ごしなのか、ワクチン完了してのオープン居酒屋方式なのかはさておき)「いんや苦しいシーズンだったっちゃね」と、サポータ仲間と共に祝杯を上げられることを確信している。
posted by 武藤文雄 at 10:33| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。