2023年03月23日

WBC制覇2023

 日本野球が世界一を奪回した。まことにめでたい。
 過去2回の優勝も、まことめでたかったが、今大会の歓喜は格段。今大会は合衆国も大リーグのトップスターをズラリと並べた布陣。そして日本も大リーグの選手のほとんどを招集できて、いわゆるベストメンバ。誰が何を言おうが、日本が世界野球最強国になったのだ。
 サッカー狂の私だが、サッカーに浸り始めたのは中学生になってから。小学生の時は普通の野球好きのバカガキだった(私の世代では当たり前のことなのだが)。そのような世代のサッカー狂からすると、ワールドカップ同様に野球の国際試合を楽しみたい、と言う思いは常にあった。そして、(それなりに嫉妬の思いはあるが)野球ならば、当然ねらうのは世界一だろうと。
 今回の世界一奪回は、このようなバカガキの半世紀に渡る妄想が実現したことになる。
 そして、素直に思う。「羨ましい、とにかく羨ましい。いつか、ワールドカップで優勝したい、世界一になりたい」と。
 でもね、私は常に冷静なのです。私も62歳、あと何年生きられるかはわかりませんが、さすがに「俺の生きているうちは無理だろうな」とは思います。贅沢言ってはいけないよね、ドイツやスペインに勝ち、クロアチアにPKで負けたのが悔しくて悔しくてしかたがない現状など、若い頃とてもではないけど想像もしなかったのだから。よい時代になったものだ。

 ともあれ、少しWBCについて講釈を垂れさせていただこう。
 実は決勝戦は生中継を見ていない。間抜けな話だが、本業で休みをとる真剣な努力を怠っていたのだ。しかし、準決勝のメキシコ戦だけで、いくらでも語る素材はあった。
 メキシコのレフトのアロサレーナの完璧な守備能力。5回裏の岡本の「やった!ホームラン!」をハイジャンプで捕球された場面もすごかった。その後も日本打者が左翼に好打球を飛ばすたびに、この忌々しいアロサレーナの好守に防がれてしまった。おそらく、事前情報による日本打者の特徴を理解した位置どりに加え、打った直後の判断力がすばらしいのだろう。バカガキ時代にあこがれた高田繁さんを思い出しりして。
 栗山氏のチャレンジでアウトになった、7回表のメキシコのトレホの盗塁。あの2塁ベース上のトレホのタッチかいくぐりと、源田の執拗なタッチの戦いを何と語ってよいのか。トレホの格段のボディバランスと工夫。源田の冷静な対応。アウトになって、我々は嬉しかったが、本当にアウトだったのかを、映像で確認するのは非常に難しい。大体、野球の判定は厳密な定義が極めて曖昧なのだ。タッチとか捕球が、映像で確認できるわけがない。最新技術を用いた厳密な判定をするためには、ベースタッチ・守備者のグローブのタッチ・捕球の確認、以上の3点を何がしかのセンサにより検出しなければならないのかな。まあ、そのような比較論も楽しいのですが。
 吉田正尚。大谷の大活躍を否定するものではないが、私ならば吉田をMVPに選ぶ。あの好機での強さをどう表現したらよいのか。WBC打点新記録とのことだが、何とも頼りになる勝負強さだった。そして何よりメキシコ戦での3ランの美しさ。大谷や村上や岡本と言ったフィジカルに恵まれたスターの渾身のバッティングによる美しい弾道はすばらしい。しかし、この準決勝の吉田の丹念なスイングによるギリギリの本塁打の微妙な弾道の渋さをどう日本語で称えればよいのだろうか。ポールに跳ね返された映像、本当に嬉しかったよね。加えて、8回裏にツーアウト2・3塁でタイムリーヒットを喰らったものの、2塁ランナーをホームで殺した的確な返球も見事だった。繰り返すが、私の選ぶMVPは吉田だ。

 もう1つ。この世界一については、栗山監督を讃えるしかあるまい。特に感心するのは、投手起用の適切さだ。
 元々、このWBCと言う大会は、投手の投球制限など、怪しげで複雑なレギュレーションが錯綜する。そう言った中で、豪州戦で大差をつけ勝利が確定しつつある中、ダルビッシュを2回に渡り投げさせたこと。準決勝で先発佐々木が3失点したところで、決勝先発が予想された山本を起用したことなど、納得できないことが多かった。
 しかし、決勝終盤の投手起用で栗山氏の意図が正確に理解できた。少しでも世界一の確率を高めるために、決勝の最強敵合衆国に対しては、一番頼りになる山本の先発、終盤でダルビッシュと大谷の起用を決めていたのだろう。しかし、準決勝で佐々木が想定外の3ラン本塁打を許し、3点差となったところで、「これ以上の点差にはできない」と判断し、山本を投入し傷口を広げないと言う判断に切り替えたのだろう。いわゆるプランBだな。そして、決勝では今永、戸郷、高橋宏斗、伊藤大海とフレッシュな投手を次々に起用し失点を防ぎ、大勢、そしてダルビッシュと大谷につないだ。恐れ入りましたとしか、言いようがない。
 もちろん、一番の「恐れ入りました」は、村上を起用し続けたことだけれども。

 かくして楽しかったWBCは、日本優勝と言う最高の形で終了した。一点気になるのは、選手たちへの休養提供。これだけ厳しい戦いを演じた戦士たちが、すぐに自チームに戻り新シーズンに備えるのだろうか、と言う疑問。僅かでもよいから、彼らに家族や恋人との休養を提供した方が、シーズンを通しての活躍と言う視点では適切と思うのだが。
 などと、あれこれ講釈を垂れることができるのだから、本当に楽しい大会だったと思う。改めて、栗山氏とダルビッシュとその仲間たちに感謝。
posted by 武藤文雄 at 01:10| Comment(1) | TrackBack(0) | サッカー外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コトタマ ─宇宙・生命より─
Posted by 言霊 at 2023年07月22日 17:26
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック