2023年12月31日

2023年10大ニュース

 恒例の10大ニュースです。日本代表は強いし、相変わらずJリーグはおもしろいし、よい1年だったとは思います。ただ、ベガルタサポータとしては、つらい1年でしたが、ベスト11にしても、10大ニュースにしても、ベガルタサポータ視点は切り離して語るのが楽しいので。
 まあ、ベガルタサポータとしては、下記の第4位で強調したことがすべてでしょうか。

1.日本協会とJリーグ当局、夏夏・年またぎ開催を強行
 いわゆる年またぎ開催へのシーズン制変更が困難なことについては、十数年前に随分と書いた。例えばこれ。現実的に大量の試合数をこなすためには、週中の平日に試合をこなすしかなく、そのためにはナイトゲームを行う必要があると言うこと。もし、年またぎのシーズン制を採用すると、北方のクラブでなくとも厳冬期(具体的には12月から3月)の客商売には大きな支障があり、観客動員視点で大きな損失が予想される。もちろん、日本海側の積雪地帯では厳寒期の外出は大きく制限されるから、そう言った地域をホームにするクラブとしては受け入れ難い変更なことは言うまでもない。シーズン制云々よりも、試合数をいかに減らすかが本質的な課題であることも当時指摘した。
 しかし、日本協会もJリーグ当局も、この十数年に渡り、上記の本質的課題を能動的に解決しようとせずに来た(例えば、欧州のスタジアムに見られる暖房システムの導入など、ハード面での改善など)。その上でACLがいわゆる年またぎ開催になったことを既成事実として、シーズン制の変更を強行しようとしている。しかも、J1のクラブ数を増やすと言う愚挙も加えてである。
 シーズン制の変更理由として、現状のシーズン制の継続では各クラブ(あるいはリーグとしての)収入増限界が理由になっているのもおかしい。厳寒期に試合をすることで収入が増えるとはとても思えないからだ。
 もちろん、欧州のトップクラブあるいは中東の一部クラブと、金銭的に戦うことは当面事実上不可能なことだ。そのため、世界のトップレベルの選手はもちろん、日本のトップレベルの選手をJにつなぎ止めるのが難しい現実はある。その中でどのようにサッカー界に入るキャッシュを増やすかは、極めて深刻な課題だ。しかし、その深刻な課題解決のためにやるべきことがシーズン制の変更ではないことは明らかなことだ。
 百余年の歳月をかけ、ようやく世界のトップと伍した代表チームを所有するに至った日本サッカー界。もし、報道通りシーズン制変更と言う残念な事態が強行されたとしても、Jリーグの観客動員が一時的に減少したり、よい選手の欧州以外流出が増える程度の被害で済むとは思っている。日本海側クラブの経営に決定的な痛手が生じることがないように祈ってはいるが。そのくらい今の日本サッカー界は磐石な基盤はできている。しかし、愚かな行為はするべきではないのは言うまでもない。

2.女子代表、世界最強チームを作りながら敗戦
 大変失礼な物言いとなるが、女子W杯の日本代表があそこまで強力なことは、まったく予想していなかった。こちらに書いたが、戦闘能力だけを見れば、正に世界最強の一角と言っても、言い過ぎではない程だった。それでも勝てないのはサッカーの常、それでもこれだけのチームを作ることができたのだ。特に戦術眼と技術に優れた若い選手が次々と登場している、女子代表の近未来は明るいものがある。女子の強化を推進した多くのサッカー関係者に改めて経緯と感謝を表したい。
 確かに世界一を獲得してから12年間、女子サッカーの環境改善はかなり進んだ。例えば、私が関与している神奈川県西部の女子サッカー環境は、小学生世代の女子選手を積極的に集めて試合機会を増やしたり、中学から大人までの一環したクラブが立ち上がったり、十数年前には考えられなかった環境整備が進んでいる。これが全国に広がっているかと言うと、まだまだなのはわかっているが。
 ただ、どうにも難しいのがトップレベルの観客動員。常に思うのだが、観客動員視点では、女子サッカーはすぐ隣に男子サッカーと言う強力な競合がある。観客にとって貴重な娯楽に割く時間を、どのようにして女子サッカーに向けることができるのか。そして、その通りWEリーグの観客動員の苦戦はよく知られている。しかし、一方で欧州や北米のトップレベルの女子サッカーの観客動員成功には驚くものがある。その秘訣をうまく整理して日本でも展開できれば、事態は解決するのだろうか。
 
3.浦和レッズ、3度目のACL王者
 レッズが堂々と3回目のアジア制覇。決勝ではサウジの難敵アル・ヒラルを振り切った試合は実に見事。初戦のアウェイゲームで開始早々連係ミスから失点するも、少ない好機を活かし同点として敵地での引き分けに成功。ホームの第2戦は見事な組織守備と少々幸運な得点でリードを奪い、最後までしっかりと守り切った。正に、大人の戦い。
 クラブW杯でも、メキシコのレオンに競り勝ち、マンチェスターシティにケンカを売ることはできた。ただ、もうチーム全体があそこまで疲労していては、どうしようもなかったけれど。
 それにしても、このクラブのカップ戦での強さには恐れ入る。もちろん、サポータの方々からすれば、リーグの再制覇は大きな目標なのだろうが、毎年のようにしっかりとタイトルを取り切るのだからすごい。

4.ルヴァンカップ城後寿の戴冠
 ルヴァンカップ決勝。開始早々、紺野和也の鋭い突破から福岡が先制。浦和が落ち着いて攻め返すが、福岡の組織守備がよく機能。さらに山岸祐也が最前線で巧みなボール保持を見せ、幾度も福岡の速攻が浦和守備陣を脅かす。そして、前半終了間際、またも紺野が輝き、2点差に。
 後半の浦和が攻める。交代出場した明本考浩が見事な個人技を発揮して1点差。その後の浦和の猛攻を福岡が押さえ切り(少々怪しげな判定もありましたが)、初戴冠。
 でもさ。城後寿がカップを上げる光景はすばらしかったよね。日本中の他クラブのすべてのサポータが、福岡のサポータたちに羨望した瞬間。

5.ヴァンフォーレ甲府ACL 2次ラウンド進出 
 昨シーズンの天皇杯王者の甲府が、ACLで堂々の2次ラウンド進出。しかもJ1昇格を視野に入れてターンオーバを採用しながらだからすばらしい成果だ。いずれの試合でも、中盤は互角以上の攻防を見せ、変化ある攻撃と組織的に連携した守備を披露。天皇杯制覇が偶然の賜物ではないことを、堂々と証明してくれた。
 J1とJ2の最大の差は、両ゴール前での精度にあると言われる。しかし、敵陣前ではピーター・ウタカと三平和司のベテランが知性の限りを尽くしたプレイで、アジアの強豪たちと伍して変化を作り、各選手が次々とネットを揺らした。
 多くのトッププレイヤが欧州に流出してもなお、Jリーグが極めて高いレベルのリーグ戦であることを、甲府が堂々と証明してくれた。

6.ヴィッセル神戸、J初制覇
 強かった。
 大迫勇也、山口蛍、酒井高徳、扇原貴宏とロンドン五輪代表が中核を占め、武藤嘉紀も好調をキープ、周囲を固める前川黛也、山川哲史、本多勇喜、井出遥也、佐々木大樹、汰木康也と言ったタレントが皆堅実に成長、若年層代表時ほど輝きが見られなかった齊藤未月や初瀬亮も輝きを取り戻した感があった。
 このクラブは、言うまでもなく約20年前に経営不振で苦しんでいた際に、地元出身の三木谷浩史氏が出資し多くの支援を行ってきた。三木谷氏の支援の下、多くのスター選手を呼ぶなどしていたが今一歩成果は上がらず。特に2014年以降は、三木谷氏の個人支援からいわゆるクリムゾングループの一員となり、バルセロナとの連携や、アンドレス・イニエスタやダビド・ビジャの招聘など多くの施策を行ってきたが、2019-20年シーズンの天皇杯制覇以外は決定的な成果を挙げることができずにいた。
 ここにきて、吉田孝行氏が全権を掌握。上記のベテラン達を軸に、知的労働者たちが輝くチームとなった。結果が出てみると、サッカー的には当たり前のことが証明された感があるけれど。選手吉田孝行は知性あふれるストライカだった。特にフリューゲルス最後の天皇杯制覇の決勝点など忘れ難い。
 でも、全盛期とは言えずとも、イニエスタの優雅な舞を幾度も国内で堪能したのだから、それはそれで楽しかったな。 

7.遠藤航のリバプール加入
 30歳になった日本代表の主将、遠藤航がこの年齢でリバプールに加入。当然のように毎試合の好プレイを継続し、中心選手として機能している。考えてみれば、ブンデスリーガでもW杯でもあれだけのプレイを披露してきのだから、これは驚きではない。
 ただ、このクラスのメガクラブへ、この年齢になってから加入できた日本人選手は記憶にない。過去多くの日本人選手は、早熟な選手(例えば、香川真司や冨安健洋のように)10代のうちに5大国のリーグに加入し経歴を積まないと、欧州CLの優勝を争うようなメガクラブへの加入が難しい感があった。これは、選手編成が必ずしもその年その年のチーム強化と言う視点だけでは決定されず、選手の転売益などの投資的な視点も考慮されたからだろう。したがって、長谷部誠や酒井宏樹のように。そのポジションで世界屈指の名手と言われても、メガクラブへの道が開かれづらかったためと思われた。だから、日本人選手の代理人の多くは、日本でほとんど実績上がっていないタレントを、無理に10代のうちに欧州で売りに出そうとしているるのだが。
 しかし、この遠藤の成功は、ベテランの域に達した日本人選手の有用性を示すもの、今後の欧州での各選手の活躍の場を広げるきっかけになるのではないか。

8.ドイツ戦の完勝
 気持ちよい完勝だった。
 点の取り合いでリードした前半。サネの好機を冨安が完全につぶす。後半立ち上がりに3DFへ切り替えてサネを止めに行った戦術変更。ドイツの攻めをいなしておいて終盤の加点。
 日本代表の好調の重要な要因は、カタールW杯で築くことができた各選手の自信だろう。ドイツもスペインも確かに強い。しかし、同様に日本も強いのだ。もちろん、これら強国から学び続けることは、今後も重要だろう。しかし、それらの強国で行われていることを盲信し、日本が積み上げてきた強化を全否定する必要はない。 

9.活字媒体の消失とネット媒体の使いづらさ
 年寄りの愚痴です。
 サッカー界に限ったことではないが、活字媒体の弱体化が進み、多くの活字媒体が廃刊やネット化を余儀なくされている。
 大概のサッカー情報は、ネット経由で入手可能。いや、何よりサッカーの本質である1次情報の試合の映像があふれるほどネット経由で入手できるのだから、ありがたい世の中になったものだ。
 しかしですよ。自分のクラブ(私の場合はベガルタ仙台)以外の試合情報の入手が、最近非常に難しくなっている。Google検索を行おうとすると、多くのサイトは広告収入狙いで相当数回クリックしないと目的情報には辿り着けないのだ。いや、何回画面を叩いても目的情報に到達しないことも多い。例えば、「今週末、おもしろそうなJリーグ以外の試合あるかな」とか「来週のドイツ対日本は、何時キックオフだっけかな」的なことを調べるのに、ものすごく苦労するのですよね。面倒な世の中になったのだ(笑)。

10.J1昇格プレイオフの非喜劇
 J1昇格プレイオフ。余談ながら、第1回現ルヴァン杯決勝と同じ対戦だと、話題になった。あれは31年前、日本が初めてアジアカップを制した直後のことだったな。カズに先制された清水終盤の猛攻、トニーニョのシュートが僅かに外れ勝敗が決した感が漂った時、オーロラビジョンに悔しそうな表情の、清水レオン監督が大映しになった。「ああ、セレソンの元主将が日本で監督しているんだ、」と妙な感動をした。「今まで経験したことのない素敵な時代が来るんだ」と言う何とも言えない予感。そして、その予感通り、30年以上に渡り、若い頃はまったく想像できない歓喜をいくつもいくつも味わうことができた。
 本題に戻ります。東京VのハンドによるPKで清水が先制。このハンドだが、東京Vが不当な守備をした訳でも何でもなく、ハンドと言うルール独特の運不運によるものだった。先制後の清水の守備は組織も強度を完璧に近かった。それに対して、東京Vも粘り強く遅攻を重ね、幾度か好機を掴むも崩せずアディショナルタイムに。分厚く守る清水は敵陣にボールを運んだので、定石通りラインを上げる。その瞬間、東京VにFW染野が裏をねらい、縦パスを受け抜け出しかける。しかし、突破したのは染野1人で、簡単に決定機にはつながりそうもなかった。しかし、清水DFが意図不明のスライディング、巧みなスクリーンで持ち出した染野が倒されPK、同点に。
 東京Vの久々のJ1復帰が話題となっている、早速横浜Mと開幕戦を戦うなど話題性ある演出も行われているようだ。実際、プレイオフでは私以上の年齢の(笑)サポータの歓喜する姿が印象的だった。一方で清水の悲劇、もうこんな負け方は防ぎようがない。無責任なライターが「清水の体質改善が…」などと語っているが、あんな負け方は体質をいくら改善したってどうしようもない。
 いわゆるオリジナル10クラブの明暗が分かれた訳だが、こう言う理屈で説明不能なプレイで来期の昇格が左右される理不尽さ。どうしてサッカーって、こう言った無常観を味わえるのだろうか。
posted by 武藤文雄 at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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