ジェフは敵地とは言え、アントラーズに1−3で完敗。
押され気味の展開から、水野(だと思ったのだが)の好FKからファボンの自殺点で先制したところまでは順調。しかし、前半のうちに、水野の寄せの甘さから新井場にミドルシュートを決められる。さらに、後方から巧みに前進してきた小笠原に水本が寄せ切れずきれいなグラウンダのミドルシュートを決められる。小笠原は見事だったが、南アフリカを目指そうという水本なのだからもう少し何とかして欲しかったのだが。
その後、当然のように後方を固めるアントラーズに対し、ジェフが攻勢を取る。佐藤勇人の上下動と下村の正確なパスで素早く前線にボールを運ぼうとするのだが、守る気になった時のアントラーズの守備は固く、思うように崩せない。そうこうする間に試合は終盤に進み、内田の巧技を楽山がファウルで止めたPKで2点差となり勝負はついた。
アントラーズは、小笠原が腕章を巻き攻守両面で機能、得点場面はもちろんだが、相変わらず正確なパス、いやらしい守備など、渡欧前の実力そのまま。イタリアで起用されなかった原因はさておき、相変わらず日本屈指のMFである事を自ら証明した。
ただ、小笠原、野沢、本山と攻撃面で力を発揮するタレントが中盤に並ぶのに加え、両サイドバックも攻撃が持ち味なため、守備面でのバランスを危惧していた。しかし、この日の分厚い守備は、往時のアントラーズを彷彿させるもの。終盤の中後の左コーナフラッグでの時間稼ぎなど、昔の相馬を思い出した。最前線での得点力の問題が解決されれば、アントラーズはガンバ、レッズに追いつく可能性を持っているのではないか。
この日のジェフは羽生が負傷離脱と言う事でレイナウドがスタメン、これで水野と2枚前線でボールを持てる選手が増えた事になるが、レイナウドの切れ味は今一歩で分厚いアントラーズ守備網を突破するには至らない。
こうなると水野の「ビッグプレイ」に期待がかかる。水野はこの日も意欲は満々で、再三カーブのよくかかった好クロスを蹴り、時に左サイドに回り好機を演出し、角度のない所から決定的なシュートを狙い、右サイドに押し出され2人の守備者に守られながらも見事な突破を見せ、2点差となった終盤には分厚い守備網を前に見事な切り返しから左足で強シュートを狙うなどした。しかし、いずれも後一歩で得点には結びつかなかった。それぞれの決定機に至るプレイは確かに見事だったのだが、まだこの若者は何かが足りない。
この日、改めて感じたのは、突破を狙えない時にチームでキープするためのパスの精度の悪さ。ラストパスを狙う時にあれだけ気の利いたキックを見せるのに、キープのパスを再三アントラーズに奪われていた。ただのつなぎに凝り過ぎるのも悪癖だが、それ以上に展開時の集中が足りないのだ。このようなミスパスの多さにより、チーム全体の信頼を未だ勝ち得ていないのではない事が最大の問題ではないのか。だから、勝負どころのラストパスでもチームメートが水野を信頼し切って「ここに来る」と言う感覚で飛び込めないのではなかろうか。
J1はまだ14節も残っており、やや時期尚早かもしれないが、残留争いを考えてみた。
現状最も苦しいのは、シーズン半ばを過ぎてようやくベテラン選手中心のメンバ構成を切替え、戦いながら連動を作る横浜FC。失礼な言い方になるが、このままでは高木氏がよほど神業のようなチーム作りをしない限り、J2落ちは決まりだろう。
その他の座を、アルディージャ、トリニータ、ジェフ、ヴァンフォーレ、サンフレッチェ、FC東京あたりが争う。
このうち、トリニータはここに来てホベルト、エジミウソン、前田、梅崎と実に効果的な補強に成功、戦闘能力を格段に上げる事に成功している。西川の負傷離脱と言う誤算はあるが、シャムスカ氏の手腕を考えると、抜け出しそうに思う。またサンフレッチェは、何とストヤノフ獲得に成功、槇野の成長と合わせ最大の課題だった守備力を格段に上げる事に成功した。守備の問題が解決すれば攻撃力はリーグ屈指、むしろ中位から上位を伺う存在になる可能性すらある(もっとも、監督批判を行なったストヤノフが、ジェフを1度解雇され、新たにサンフレッチェに雇用されたのだが、移籍料などはどうなるのだろうか。直接のライバルクラブへの移籍の形でもあり、何か釈然としない)。
そう考えると、ジェフがアルディージャ、ヴァンフォーレ、FC東京と残留争いを繰り広げる事になるのではないか。FC東京は戦闘能力では優勝を争ってもおかしくない陣容だが、相変わらずチーム力が揃わない。原氏がどうにもチームをまとめきれずにいる。アルディージャは、勝ち点が思うように積みあがっていない時期でも、ロバート前監督のチーム内での評判は悪くなかったと聞くが、監督交代が奏効するかどうか。ヴァンフォーレは他のチームと異なり、チーム力としてのまとまりは抜群だが、個々の選手の能力が今一歩の感がある。このクラブに関しては、2部落ちを怖れずに現状通り攻撃的に戦い続ける事ができれば、残留できると思うが。
その中で、ジェフの現状は決して明るいものではない。ジェフは中断期間中も多くの代表選手を輩出した関係で、チームの再調整が思うようにできなかった事もあり、レイナウドの加入はあったものの、もう1つチームはピリッとしていない。昨シーズンからの巻の「慢性疲労」も心配だ。さらに活動量を前面に押し出すチームの特色は、この暑さでは発揮しづらい。
そして、何より五輪代表予選があり、中心選手の水野、水本が再三離脱する。しかも今回の五輪予選は
(1)先日の中国遠征を日本協会が花相撲優先で台無しにした事
(2)反町氏がメンバ固定の試合と新メンバテストの試合を完全分離した事でチーム作りが遅れている事
の2点から、96年以降の予選では最も苦しい戦いが予想され、選考された選手はJリーグに非常に集中しづらい状況になる可能性がある。FC東京も同じ問題があり、楽観を許さないが、伊野波、梶山、平山に対するチーム依存度は、ジェフにおける水野、水本への依存度よりは格段に小さい。
そうこう考えると、ジェフの状況は相当苦しい。
「古河電工−ジェフ」と言うクラブは、JSLが創設された1965年より、常に日本のトップリーグでプレイしてきた名門中の名門。かつて古河電工は、78−79年シーズンのJSL1部で最下位になったが、当時は最下位のチームでも2部のチームとの入替戦があった。入替戦の相手は本田技研(現ホンダFC)だったが、古河は当時日本代表の大黒柱だった前田秀樹をスイーパに下げ、ひたすら守備を固めてこの難戦を乗り切った。また、90年代後半J2が組織化されJ1からの降格制度ができてからはしばしば陥落の危機を迎えたが、かろうじて残留を継続した時代もあった。
そのような危機を乗り切り、常にトップリーグの座を守ってきたジェフ、全国リーグ創設42年目に迎えた危機をどのように乗り切るのだろうか。
2007年08月15日
この記事へのトラックバック









新潟戦で全治4週間の負傷のため残留争いに参加
する可能性が高くなってきたことをお知らせします。
予想
◎ 横浜FC
○ 大宮
△ 甲府・千葉・名古屋