2007年09月19日

女子代表1次リーグ敗退

 女子代表はドイツに0−2で完敗。「完敗」だったのだから「完敗」と書くしか無いのがあまりに残念なくらいの見事な試合だった。しかし、どう考えても「惜敗」と言う単語は使えないくらい差があった。
 ドイツに臆せず競りかけ、確保したボールは丁寧にかつ大胆につなぎ、いずれの選手も精力的に上下動を繰り返す。荒川と宮本を温存して後半勝負と言う策も、勝ち点3獲得のためには妥当だったように思う。結果的には後半荒川が交代早々に負傷してしまった不運で、ただでさえ劣勢な試合は勝負がついてしまった(もっとも点を取ると言う意味で貴重なセットプレイが武器の宮間を外したり、荒川負傷退場後にせめても敵陣前で強さを発揮できる可能性のある永里を外すのはいかがかとの議論はあるだろうが)。しかし、この不運がなかったにせよ、慎重に分厚く守るドイツ守備陣をこじ開けるのは難しかったように思う。
 むしろ「ドイツ戦のサッカーがイングランド戦でできていれば」とも思う(この試合は結果を知ってから映像を見たので、先日のコメント欄で指摘いただいた「スイス戦、五輪カタール戦以上の興奮」を味わい損ねた私は負け組です)。イングランド戦は、ドイツ戦ほどパスワークが機能せず、ボディアタックの前に押し込まれてしまった。もっとも、2次トーナメント進出のために、お互いが「勝ち」を狙った初戦は、イングランドのプレッシャの前につぶされてしまい、最終戦早々に先制し慎重に戦ってきたドイツにはパスワークが通じたとも考えられるのだが。
 こう言ってしまっては身も蓋も無いが、今の女子代表は強さを前面に押し出してきたチームに対し、それをかわすパスワークが足りないと言う事になる。

 考えてみれば、アテネ五輪の女子代表は結果的には1勝2敗での準々決勝敗退に終わったが、そのパスワークは列強により通用していた印象がある。スウェーデン戦の快勝は胸のすく思いだったし、ナイジェリアに対しても合衆国に対しても、互角に近い戦いを演じていた。残念ながら、今大会の日本の出来は3年前ほどのものではなかった。
 これには2つの要因があると思われる。
 1つは他国の日本研究が進んだ事。アテネ五輪でも、合衆国は日本に対して露骨なパワープレイを狙ってきた。イングランドもドイツもFWは大柄な身体を小柄な日本の守備ラインの選手にぶつけてくる。上背の差は、周囲のカバーリングと、パスの出所を押える事である程度守ることができる。しかし、体重差は、腰を低くして重心を低くしながら当たるくらいしか対応策はなく、押し込まれる要因となる。さらに体重差のある中での戦いは、都度体力を消耗していくと言う意味でもつらいところだ。そして、この体力の消耗は、押し上げの遅さにつながり、トライアングルが巧く作れず、日本得意のパスワークの乱れにつながっていく。
 2つ目は日本のチーム構成。アテネ五輪からチームの中央骨格は、磯崎、宮本、酒井、澤、荒川とそうは変わっていないし、彼女達はより経験を積みチームを支えている。アテネでは、その周辺で川上、小林、山本と言ったタレントが伸び伸びと派手な個人技を発揮していた。一方の今大会、宮間も近賀も永里も重要なところで得点に絡み、彼女達の個人能力が非常に優れたものである事を証明した。しかし、90分間を通して見た限りでは何かその個人能力が埋没していた感を持った。これは、ベテランに対する遠慮がもあるかもしれないが、大橋監督がパスワークを強調し過ぎたためではないか。パスワークを強調するあまりに、個々の局面で「敵を抜き去る」とか「一発のロングパスを狙う」と言った変化が少なくなり、結果的に敵に読まれてパスが巧くつながらない事態になっているのではないか。
 近賀や宮間がせっかくサイドでフリーになりながら、ショートパスやアーリークロスを狙うのを見ると、ついつい川上の傍若無人なドリブル突破や、小林の芸術的なアウトサイドのロングパスを思い出してしまったのだが。

 北京で上位進出を目指すために、今更体格差はどうしようない。とすれば、若く能力の高い選手が、局面によってエゴイスティックな個人技を発揮できるかどうかが、重要なのではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(3) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
安藤に期待されているのは、川上のような傍若無人(笑)な上がりかもしれませんね。
山郷に「ハワイ戻ってこ〜い!」いや福元に「アンちゃん戻ってこ〜い!」と怒鳴られるくらいの。
Posted by とおりすがり3 at 2007年09月22日 16:22
実は3年前から退化したようにしか感じられませんでした。
男子代表のパス回しサッカーの悪い部分をまねてしまった
ようでとても残念です。
下手にパス回しをして、相手にディフェンスを固められる前に
裏を突く、スペースを上がるなど、
手数をかけないで攻撃できないと、
体格に劣る西欧、アメリカ勢には今後勝てなくなると思います。
Posted by sawachan at 2007年09月23日 18:25
もう戦術で伸びるのは限界でしょうね。後は、普及と育成で技術とフィジカルが強い選手が伸びるのを待つしかないでしょうね。
Posted by まさみつ at 2007年09月28日 12:21
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