平山と言う選手は、このような横からのクロスに走り込んで、点で合わせるのがスタイルなのだ。さらに言うまでもなく、平山のもう1つの良さは足先のボール扱いの正確さと左右のインステップキックの強さ。以前より再三主張してきたが、この選手の「素材」は「ポストプレイヤ」としてのものではなく、「ストライカ」としてのものなのだ。
ところが、新旧五輪代表監督やユース代表監督は、いずれも後方からのズドーンに合わせて、ポストプレイをする事を平山に強要し、彼の成長を妨げてきた(いや、平山の言動を見るにつけ、平山自身にも問題があった事は間違いないとは思うが)。
先日のアントラーズ−アルビレックス戦。開始早々の矢野貴章の得点は衝撃的でさえあった。ハーフウェイライン手前よりドリブルを開始した矢野が、追いすがるアントラーズDFをスピードと強さで振りちぎったもの。トップレベルの試合で、日本人の選手がこのような得点を決めたのはほとんど記憶がない程のものだった。例えば、釜本や福田や久保がこのような長距離のドリブルから点を決めたのは幾度か見た記憶がある。しかし、彼らの長距離ドリブルは技巧にあふれたエレガントなものだった。一方矢野のドリブルはそうではない。もちろん素晴らしい技巧は持っているものの、単純な力強さに満ち溢れた「前進力」によるものだった。このような単純な前進する力を持っているストライカは、我が国では極めて珍しい。先日のスイス戦で代表初得点を叩き込んだ矢野への期待は大きいのだ。
ところが、矢野がユース代表にいた時分、当時のユース代表監督(前出(笑...笑えないか))は、矢野をポストプレイヤとしてのみ遇し、そのようなプレイを強要した。いや、矢野の前所属クラブでも...
何故、日本協会ご用達のコーチは、長身のFWが登場すると、画一的なポストプレイを期待するのだろうか。極めて大胆な推測だが、ハンス・オフト氏の影響ではなかろうか。
オフト氏は、高木琢也と言う稀代のポストプレイヤを代表のレギュラに固定した。「点を取る」と言う意味ではどう考えても、中山雅史や武田修宏の方が優れていた。それでもオフト氏は常に高木に拘泥した。それは、高木が「ターゲットマン」として、後方からのフィードを(当時の代表チームには、井原とラモスと言う精度の高いロングボールを蹴る事のできるタレントがいた)持ちこたえ、カズや福田や北澤が敵陣を向いて前進できるスペースを獲得できたからだろう。92年から93年にかけての高木琢也は、ヘディングやシュート力には課題はあるが、とにかく後方からのボールを持ちこたえる能力があるFWだったのだ(後日、高木が多様なストライカに成長していったのは、以前述べた通り)。
ところが日本協会ご用達のコーチ達は、「大柄で強い」FWが登場すると、その選手の特性をしっかり見極めないままに、高木のような「ターゲットマン」としての機能を期待してしまうのではないか。かくして、矢野や平山に後方からの単調なロングボールが蹴られるつまらない試合が増えてしまったのではないか。
そう考えてくると、若森島は久々に登場した典型的な「高木」型選手だ。後方からのロングボールに対して、敵DFに身体を当てて、持ちこたえるのが若森島の魅力。若森島が最前線にいるならば、「彼に当てる」ロングフィードは非常に有効になる。事実、五輪代表は若森島の加入以降、随分チームの流れはよくなってきている。
段々議論が発散してきたが、言いたい事は「大きくて強い」FWと言っても、それぞれの個性があると言う事。「その個性を無視して『後方からドーン』は、やめましょう」と言う事なのだが。
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11人しか居ないゲームなので、なんでも機能分化できるとは思わない。相手にも依るだろうけれどデカ森島の脇に平山置くならヒサトなりチビの方の田中君なり大久保なり置く方が魅力的でしょ。
まあまあ、落ち着いて(苦笑
日本サッカー有数のポストプレイヤーである
西澤がセレッソを去ってすぐに森島(康)が頭角を現したことを絡めて考えると
また面白いものが見えてきそうですね。