2007年10月20日

で、エジプト戦なのですが

 あまりに数時間後の五輪代表のドヒャーが強過ぎたので、大久保の復権についての講釈が遅れてしまった。

 思えば早いものでら、4年の月日が経った。
 以降大久保は、五輪予選での苦境を救い、本大会でも噛み合わないチームで奮闘し、欧州に渡る(その前にはセレッソの大エースとして、森島以上の活躍をした)も思うような結果は出ずに帰国した。実に多彩な経験をしてきた訳だ。
 大久保が代表で点を取っていないのは、しばしば我々の酒の肴になっていたが、20試合無得点と言うのは改めて驚いた。どんなレベルのサッカーでも、20試合もFWをやっていれば、普通何点かは取るものだ(と言うか、「入るものだ」と言う日本語が正しいか)。それが20試合無得点と言うのだから、これはこれで1つの記録だな。

 記念すべき大久保の1点目。遠藤の粘りから(敵陣に対して)左斜め後方に向いてボールを左足で止めた大久保(このファーストタッチがよかった、レベルは大違いだが毎週子ども達に「浮いたボールと、自分の体勢をよく考えて、最初に触る時に次のプレイがしやすいように止めよう」と伝えている身としては、トッププレイヤの見事なトラップは最高の教材なのだ)、右、左と交互にボールタッチをしながら(上から見て)時計回りに回転、左足のインフロントで強いボールを蹴る事ができる体勢に持ち込んだ。このちょっとスローテンポなターンは、いかにも「得点の予感」を感じさせてくれるものだった。いいシュートだった。
 この得点に至る組立がまたよかった。憲剛がキュッと持ち出して、駒野−前田とつながり、前田が彼独特の正確で速いリターンを遠藤に落とす。これで遠藤は余裕綽々駒野に正確で強いグラウンダのパス。駒野は完全なフリー。このようなパス交換でサイドでフリーの選手を作る組立は、見ていて本当に嬉しくなる。フリーの駒野が強くカーブのかかったクロスを蹴るも、敵DFに当たりルーズボールに。そのルーズボールに素早く寄せた遠藤が、巧みに大久保にボールを落とした。

 大久保の2点目。右サイド遠藤のCKのこぼれ球を拾った憲剛が一瞬左サイドを向いて敵DFを中央に固めてから、右に残っていた遠藤に。全くフリーの遠藤が狙い済ましてクロスを蹴るのがよくわかった。この時ニアにスッと入り込む動きをしたのが前田。さらに外側に阿部(観戦時は中澤だと勘違いしていたのだが阿部だった)がいた。「どちらを狙ったのだろう」と思っていたら、ボールはその中央に送り込まれ、「誰か」が凄いスピードで走りこんできた。小柄ながら抜群のジャンプ力、「誰か」は大久保だとすぐにわかった。遠藤は大久保の特長を理解して前田と阿部の中間点にボールを落とし、大久保は遠藤のクロスの精度を信じて走り込んだのだろう。素晴らしい得点だった。

 前田遼一は前半3度の決定機を外していた。
 1つ目は先制直後、左サイドから右サイドペナルティエリア内まで長躯30m以上走り込んだ山岸が、遠藤の高精度のロブから受けてヘッドで前田に落とした場面。前田は蹴り損ねでシュートは枠に飛ばず。
 2つ目は逆襲速攻から敵DFを連れてハーフウェイラインまで戻りターンをした瞬間に、遠藤か憲剛(だと思うが確認できなかった)が完璧なスルーパス。全くフリーでGKと1対1になりながら、GKに防がれた場面(股間を狙ったをGKに読まれた)。
 3つ目は遠藤、憲剛とつないだボールを受けた加地のスルーパスでまたもGKと1対1になり、今度はGKをかわすも角度が無くなってしまった場面。
 この日の前田は最前線によく残っての正確な技術のポストプレイが素晴らしかった。上記大久保の1点目の起点となる遠藤へのリターンなど、強さといい方向といい最高のプレイ。しかし、FWである以上は、「点を取ってナンボ」と言う世界であり、上記の3回の逸機は非常に印象を悪くするものだった。
 で、前田の3点目。憲剛の強いクサビを受けたボールをさばいて前進しようとした前田が珍しく処理を失敗し敵DFにカットされる。が、そのボールが偶然に山岸のところに転がり、山岸は落ち着いて走り出していた前田に通す。怪我の功名で抜け出した前田。今度はGKの股間を抜くのに成功した。この日ポストプレイでほとんどミスがなかった前田が、珍しくミスをした場面から決定機を掴んだ事が、サッカーの面白さ。そして、やや偶然に生まれたこの好機に、前半失敗したプレイと似たプレイで意地を通して代表初得点を決めた前田の精神的強さを称えたい。

 4点目も実にきれいな得点。
 左サイドに流れた大久保と山岸のパス交換から遠藤がまたも前向きにフリーになり、上記の2人の動きにより作られた内側のスペースに進出した駒野に好パス。左サイドで駒野が完全に抜け出し、よくルックアップして逆サイドの加地にセンタリングを上げた。加地が鋭い切り返しで敵DFを外し、冷静に左足でサイドネットを揺らした。
 4DFでサイドバックのセンタリングを逆サイドのサイドバックがゴール前で受ける攻撃は、よほど相互の信頼関係がないとかなり難しいものなのだが。

 と言う事で、非常に景気のよい4得点を満喫。その他の不満や感想は別な機会に。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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