J1昇格を逸したベガルタだが、今日今シーズンで来期契約更新しない選手(わかりやすい言葉で言えばクビにする選手)が発表された。一方で、スポーツ新聞の記事だから真贋は全く不明だが、ロペス、萬代、菅井などの中心選手に対し、J1の有力クラブから引合が来ていると言う。
この手の選手の往来を考えるのは、シーズンオフのやや重い愉しみ。今日はそのあたりを講釈したい。
まず、解雇問題。
毎シーズン新しい選手を加えなければならないのだから、誰かをメンバから外さなければならないのは当然の事。とは言え、理屈でそうわかっていても、割り切りきれないのが、この手の人事の常なのだが。30代に入っている小針、白井、丸山は出場機会が少なくなっており、仕方がない判断と言う事だろう。
中堅的存在の熊林、中田洋、大橋は、残せば貴重な戦力になろう。しかし、一方で現状のチーム構成においては出場機会は限定されるだけに、彼らのためにも無理に保有するのは不適切になりかねない。おそらく、熊林と中田洋は他クラブが獲得してくれるのではないか。大橋は昨期はベンチ入りした事もあったが、今期はほとんど活躍できずトーキンにレンタルで出されていた。このまま、トーキンへの移籍となるのだろうか。
左山は高卒でまだ2年の経験しかない。これからが「化けどころ」と期待していたので残念。一昨年樋口を解雇した時も議論になったが「高卒選手を2年で見切るのはいかが」と言う考えと「見込みがないと考えたら、できるだけ若いうちにフリーにしてあげた方が本人のため」と言う考えのどちらが正しいかは、非常に難しい。
ベガルタを解雇された、石井、財前、村上と言ったタレントが、移籍したクラブで大活躍している事がしばしば話題になる。今期、石井と財前には、リーグ戦のロスタイムに決められると言う痛恨を味あわされた。村上はJ1のトップチームのレギュラとしてアジアのベスト8に貢献した。
一方で彼らをクビにした際のベガルタでのプレイ振りを思い起こすと、ベガルタにこのまま残留しても、大きな飛躍は望めそうも無かった。それが解雇された事で新天地を見つけ、活躍しているのだから、これはこれで素晴らしい事だと思う。
返り討ちは決して望まないが、熊林らの新天地での成功を祈ろう。
次にロペス問題。
数週間前に一部のスポーツ誌で「J1のトップクラブがロペスを狙っている」と言う報道がなされた。もちろん、スポーツ誌の報道なので「全てが偽り」の可能性もあるのだが。
ただし、J1のトップクラブの多くが、下位クラブで実績のあるブラジル人選手を買い上げる事で補強に成功しているのはよく知られた話。ガンバなどは、その方策で毎シーズン好成績を上げている。そう考えれば、J2で猛威を振るっているロペスに声がかかる事は不思議ではない。
一方で、ベガルタから見て「貴重な外国人選手枠はロペスでよいのか」と言う考え方もある。ロペスは大柄で技巧に優れた素晴らしい選手だが、一方で暑さに弱く怠慢なプレイもしばしば見受けられる。同コストで、もっと有用なブラジル攻撃選手を獲得できないかとも思えなくもないのだ。個人的には、来期もロペスには残った方がベガルタにとってはプラスになるとは思うが、これはこれで考え所なのは間違いない。
そして、(あまり語りたくはないが)萬代、菅井問題。
これまたスポーツ誌で「彼らの獲得を狙うJ1クラブがある」との報道が目立ち始めた。
シーズン半ばから、今期J1昇格に失敗したら、この2人をつなぎ止める事ができるかどうかが非常に不安だった。J2であれだけ実績を残した若い2人(加えて梁も他クラブから強い引合がきてもおかしくはないが、梁はそれほど若くないので果たして他クラブがどのように評価するか)。
ベガルタは彼らに対し、最高の誠意(具体的には経済的条件)をもって慰留に努めるべきだろう。しかし、彼らに提供できる原資には限りがあるだけに、もし彼らが移籍を希望するならば、快く送りださなければならない。もちろん、最高額の移籍金を支払ってもらう前提付きだが。
彼らが、自らのキャリアメークをどう考えるか。故郷に近い(萬代は福島出身、菅井は山形出身)熱狂的なクラブで地位の確立を目指すか、経済的に余裕のある都会のクラブで這い上がることを狙うか。プロフェッショナルとして、彼らがいずれの選択を行なっても、それはそれで評価をしたい。
と言う思いを交えての最終戦。J1昇格の望みがついえたからこそ、大事な試合とも言える。選手達もサポータ達も、勝っても何も得る事のできない試合。ただ「勝つ喜び」だけを目指す試合。今期を締めくくる快勝を共に味わいたい。
2007年11月30日
この記事へのトラックバック
終了後の熊林の挨拶とスタンドからのチャントには率直に感動しました。
ロペス、ジョニウソンの放出が正式にリリースされました。一部では噂されていたことですが、まあいろいろあるようです。
これはいつも思うのですが、現場の最高責任者となる監督が正式決定する前に来季の陣容を背広組が決めていく仕組にはどういうメリットがあるのでしょうか。
数日〜数週待てば監督は決まるのですから、その後でユニフォーム組と背広組が、使える予算と予想される戦術を見据えて協議し、来季メンバーを策定していく方が良い結果をもたらすと思うのですがいかがでしょう。移籍市場はタイミング勝負だからそれまで待てないというのであれば、それなりの手腕を期待したいと思います。
それともう一つ。河北の記事中に
「複数の主力選手の移籍が避けられそうにない情勢なのが惜しまれる」
という言及がありましたが、これも意味はわかりますが意図不明です。契約ごとは土壇場まで虚々実々の駆け引きがあり、どう転ぶかわからないのですから、噂の段階の情報をこのようなかたちで記事化し、「主力選手の移籍は避けられそうにない」らしいという空気を醸成することに何のメリットがあるのかさっぱりわかりません。とくに書き手がそのことが惜しまれると書いているなら、そういう態度を一般には「マッチポンプ」と言いますね。
地元とはなんの利害関係もなく、スクープ力で販売部数を競う全国スポーツ紙がそういう速報合戦をするのは社のメリットにつながることとして理解できるのですが、(「白河以北」の)地域振興を社是とするブロック紙にとってのメリットはベガルタや楽天、89ersが強くなって健全に経営されることだと思いますので、このような記事は有害無益だと思います(もちろん、しっかりとした根拠があって書いているならそれを示せばよいのです)。
もし、スポーツ担当デスクの判断として「主力選手を放出して移籍金を取った方が球団経営にプラスになる」と思うのなら、たんなる噂を根拠に思わせぶりなことを書くのではなく、堂々とそう主張すればよいのです。それがジャーナリストの品格だと思います。
いささかスレ違いの内容かもしれませんが、武藤さんや読者のみなさんはどう思われるでしょうか。
恐らく、小長谷氏が単独で今回の代理人と交渉をしてたと思いますが(随意っぽい空気らしい)
小長谷氏を切って、多少なりクラブの身の丈に合う選手の補強を行いたい、という思惑も感じられます。
…ただ、そのパイプが仙台にあるのかどうか…なにやら「純国産」もにおわせていますし…
(こないだ来たマルコスは伏線って可能性も否定できませんけどね)
仙台の若手移籍に関しては、恐らく関係筋からのある程度のリークがあるかと思いますけど、個人的には地ならしをしている可能性もあるかなと。
ある程度の「出るかも」という報道を流す事によってショックを緩和させる…みたいな。
ロペス関連に関して、そういう雰囲気も漂ってくるような気もしますしね。
ただ、外国籍選手を切ったなら日本人の若手の流出は避けるべきでしょうし、それができなければ上積みなんて望めません。
それとは別に鹿島からFW補強という話も出てきてますし(FWの補強でいいのか?)色々ですよね。
けれど、その直後、来期にはこの3人はいないかもしれない、と思いました。
なんだか複雑な気持ちです。
まあ、そんなこと言ったって、来年もユアスタに通うのでしょうけど。