非常に面白い試合だった。エトワール・サハル(チュニジア)対パチューカ(メキシコ)。
チュニジアは北アフリカ地中海沿いのアラブ系の国、洗練されたビルドアップするサッカーは、イラクに通じるものがある。2002年の森島スタジアムの歓喜を含め、幾度か代表チームとも手合わせしているライバル国の1つとも言える。そして、このエトワールは、宗主国のフランス人監督マルシャン氏の指揮の下、典型的な4−4−2で後方を8人で固める非常に組織的な守備を見せてくれた。一方の攻撃もオーソドックスにトップの技巧を軸に、サイドに数的優位を作ろうとする。あるいは、稠密な中盤で前の方でカットしての逆襲速攻。
一方のパチューカは、これまた中米の雄メキシコの典型的チーム。最終ラインの3DFのゾーンと、横に並ぶMF4人の距離感が抜群で、散発のエトワールにチャンスを作らせない。攻撃は各選手がいかにもメキシコらしいリズムのフットワークと独特の間合いで、ショートパスを軸に丹念に逆サイドを突く。エトワールの分厚い守備網を崩しきれずとも、ファウルを誘いセットプレイの名手ヒメネスの強烈にカーブのかかるキックが有効。
ただし、両軍ともトヨタカップの常かもしれないが(笑)、守備を意識してチームを仕上げてくるため、得点の匂いがしない。
エトワールは上記した巧みな攻め込みを見せるのだが、最前線の選手の技巧が今一歩で逆襲が最後のところで精度に欠く。日本テレビが大騒ぎしていた若きエース?のシェルミティだが、プレッシャがかかると精度がガクンと落ちる。1−0でリードした終盤、無理攻めを仕掛けてきたパチューカの裏を突いた逆襲から抜け出し、左サイド全くフリーの選手に出したパスが浮いてしまって巧く通り切らなかった場面は、このシェルミティと言う選手がまだまだのタレントである事を如実に示していた。もっとも日本テレビのこの若者をスターに仕立てる努力は大したもの。解説の都並敏史は(TV局の意図を読む経験はさすが)シェルミティの本質的でない場面の精妙なボールさばきを絶賛する。試合終了後も特別な殊勲者とは言えないシェルミティのインタビューを生中継で流すなど、相変わらずの姿勢を見せていた
一方のパチューカ。注文相撲通り、ヒメネスのセットプレイが猛威を振るうのだが、エトワールの守備がこれまた凄い。GKマトルティが落ち着いた対応でギリギリでセービングを連発。前半開始早々のバーに当たった後のヘディングをゴールラインギリギリではじき出した後は、マトルティはヒメネスのキックにリズムが合ってしまったとも言うべき守備を見せ続けた。この試合マトルティ唯一のミスは、後半半ば過ぎにヒメネスのFKの落差の大きい変化に判断を誤りボールをこぼした場面。詰めていたパチューカ、マンスールが決め、勝負ありと思われたが、オフサイドで救われた。それにしても、この場面のマンスールのオフサイドの愚かさは何なのだろうか。詰めるための前進狙いはよくわかるが、ヒメネスが特別なフェイントをかけている訳でもなく、エトワール守備陣がトリッキーなオフサイドトラップをかけた訳でもないのに、ヒメネスが蹴る前にスタートしてオフサイドポジションに飛び出してしまった。その後のパチューカの連続CKも凄い迫力。高さでは勝てないため、左右から2連続で大外を狙い、3本目でニアを狙った。そこに見事に飛び込んだのが上記のマンスール。Not His Day!!!
これは延長かと思われた終盤。エトワールが勝負を決めてしまった。巧みな速攻から、右サイドで人数をかけて戻しのパスがフリーのナリーに。ナリーのグラウンダのシュートはパチューカのDFに当たり方向が変化、GKカレロはボールに触るも防ぎきれなかった。必ずしも創造的でも技巧的でもなくとも、サイドに人数をかけて起点を作り、後方のMFのシュート力を活かす事に成功した得点。互角の攻防ながら、執拗な守備を愚直に繰り返したエトワールに幸運が舞い降りた。
エトワールがボカに挑む準決勝も中々の見ものになるのではないか。おそらくボカはミランに対し、いかにケタグリをかけるかに専念した準備をしてきているはず。必ずしも準決勝対策は十分ではないと思う。そのボカに対しエトワールの組織守備は悩ましい障壁になるはず。これはこれで、非常に愉しみな見世物だ。
いよいよ明日は、拡大トヨタカップにレッズが登場。よりによって、セパハンと戦わなければならない事実が、「地元枠」の愚かさを如実に示している。来年以降、この拡大トヨタカップがどのようなレギュレーションで行なわれるか、どの国で行なわれるか、私は知らない。しかし、「地元枠」の愚行は今大会を最後にして欲しい。
それはさておき、レッズには期待したい。もうここまで来たら理屈ではない。私は公式戦で欧州の大巨人に挑戦する日本のクラブを見たいのだ。
2007年12月09日
この記事へのコメント
羨ましそうに観戦していた井原が最も印象的でした
Posted by at 2007年12月10日 01:52
地元枠の愚かさ....確かに。と思いますが、同時に、オセアニア代表が自動的に「世界クラブのベスト6」的な位置に入るのも問題なような気がします。それを総合的に考えると、地元枠があっても致し方ないと思えるのです。
Posted by TM at 2007年12月11日 22:49
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