カカと坪井の格の違いが出た失点だった。
開始早々、ミランはレッズの様子を見ながら慎重に試合に入る。レッズは阿部と啓太がレッズの慎重さを見て取り、巧みにボールを刈り取り速攻を仕掛け、阿部、長谷部がミドルシュートを放つ場面を作った。強敵を相手にする場合は、序盤の交通事故は1つの狙い目だ。
序盤、カカは阿部に複数回ボールを奪われた。一方でカカは阿部の間合いを計っていたのだろう。前半20分過ぎ、カカはガットゥーゾのサポートもあったが、阿部を完全に出し抜き、高速ドリブルで前進し、セードルフの決定機を演出した(都築の冷静な守備が素晴らしかった)。これでカカを乗せると拙いと思われた。しかし、阿部はよく修正。1度右サイド(以降左右は全てレッズから見て)から崩されかけた場面(ヤンクロフスキがシュート)以外は、カカをそれなりに止める事に成功した。
件のカカのプレイ以降、ミランがペースを掴むが、闘莉王を軸にレッズはよく我慢。オッドのクロスにジラルディニが合わせた場面以外は、決定機を与えなかった(ジラルディニと闘莉王の対決はアテネ以来か)。一方でワシントンの前進(前を向けばネスタとカラーゼに対しても、あの戦車前進は通用するのだ!)から相馬の好クロスを永井が落とし啓太がフリーでシュートを放つなど、散発ながら逆襲も見せる(それにしても相馬が前進すると、ミラン守備陣が2枚並んで必ず縦を押えるのは面白かった、ちゃあんとセパハン戦をスカウティングしているな)。前半あと2、3分になったところで、ミランが無理をせずに時計を進めるためにボールを回し始めた時は、ちょっと感動した。あのミランが、リスクを最小限にする戦いを指向しているのだから。
とにかく前半を0−0だった以上、後半のアタマからミランが仕掛けてくるのは当然か。状況を悪化させたのは闘莉王。左サイドで見事なタックルでボールを奪いながら、調子にのってオッド?を抜こうとしてボールを奪われ、慌てて抱きかかえて止める。いかにもらしいプレイ(笑)だが。このFK以降、ミランは一気に押し込んでくる。
セードルフの2度の決定機。ピルロ?の浮き球を巧みにレッズDFから1度消えて裏に入りこまれた場面、カカの高速ドリブルから右サイドフリーで抜け出され打たれた場面。90年代半ば、ライカールトの後継者として注目されたセードルフ、中盤ならどこでも最高レベルのプレイを見せる多様性が逆に最適なポジションが決まりづらい感もあったこの名手が、幾多の経験を積み31歳になってこのような第2ストライカとして完成するとは、若い頃は想像すらしなかった。
何とか後半30分まで0−0で行かないだろうかと思い始めたのが後半15分頃だったか。そこまで持ちこたえれば、ミランも無理をするか、あるいは我慢するか、どちらかを選択するはず。前者ならば逆襲でケタグリをかける機会が増えるだろう、後者ならば延長まで持ち込める可能性が高まる。と思ったところで、インザギが投入された。アンチェロッティ氏も、もつれさせたくなかったのだろう。そして、セードルフが中盤に下がり、カカがトップに位置取り。結果的にこの策が奏効した訳だ。
一方で、後から思えばこの前後の時間帯が最もレッズがミランゴールをおびやかした時間帯だった。闘莉王の縦パスから永井が突破、ネスタ?がダイビングヘッドで防ぐ(永井の独特の間合いは存分にネスタとカラーゼを悩ませていた)。啓太のインタセプトからワシントンのカーブをかけたシュートをジダがファインセーブ(本当に啓太は素晴らしい選手に成長したものだ)。
そうこうしているうちに、カカの高速ドリブル。坪井が抜かれ、闘莉王が抜かれ、それでも追いすがった坪井が鮮やかなスライディングで防ぐ、坪井の速さがよく出た好守(ちょっとPKっぽかったけど)。そして、その直後の失点場面に...
ミランがレッズから得点してあれだけ喜ぶなんて。それはそれで嬉しかったが、もちろんこの得点がない方がもっと嬉しかったのだが。
終盤、アンブロジーニが細貝の若さを再三突いて再三ボール奪取。試合を進める中で、最も経験の不足している選手を冷徹に見極められた。序盤を除いて長谷部はとうとうよい体勢でボールを持たしてもらえなかった。中盤で最も創造的な選手への厳しいケア。試合が煮詰まれば煮詰まるほど、見えてくる確かな差。
最後の3分。最終ラインに下がっていた阿部に再度前進して欲しかったのだが。
達也とポンテがいれば、闘莉王が最後まで残っていれば、などと色々な思いはある(とは言え、負傷した闘莉王に代わった山田が独特の突破力とシュートを見せてくれたのは嬉しかった)。しかし、よくやったとは思うが、明らかな明らかな差を改めて改めて感じた試合だった。
98年6月、トゥールーズでアルゼンチンに対し「よくここまでやってくれた」と感動し、ナントでクロアチアに対し「でも、どうやってこの差を埋めていけばよいのだ」と感動した。あれから9年、間違いなく差は詰まっているのはよくわかった。しかし繰り返そう。改めて改めて埋めきれない差を感じたのだ。
歴史的な試合だったのだ。現場で参戦できた幸せを噛み締めつつ。杉山隆一氏と落合弘氏はこの試合に何を感じたのだろうか。
ただ、まだまだ「微妙な」面のあるこの大会、そのステータスを維持するためには、決勝がミランとボカの対戦になったことは良かったといえるのでは。
ミランとの力の差は分かっていたので、さして落胆はしていません。どうせ負けるなら、ポンテと田中達也が揃っている状態で負けたかったという気はしますが。それなら諦めがつくし。ベストメンバーを集めながら敗れ去ったフランスW杯とは全く状況が違います。あれほどの忸怩たる思いは感じませんでした。
日本と海外との最大の差は、強いて言うなら「指導者の質」でしょうね。
たとえば、オシム前日本代表監督は、日本の監督達がシュートを外した選手に「OK、OK!」と言っている場面を見て大いに憤慨した、というようなことを文藝春秋あたりのインタビューで語っておられました。
それから、日本の指導者などがよく言う「ファウルしないでボールを奪え」という教え。これも「アホか」の一言。ようは攻撃を止めればいいのだから、危険な場面はどんどんファウルで止めるべきです。
武藤さんは、子供達=未来の日本代表の卵達に、日頃いかような指導を行ってらっしゃるのでしょうか? もしあなたも上記のような三流指導を行っておられるのなら(すなわち草の根レベルから間違った指導が浸透しているのなら)、「埋めきれない差」は半永久的に埋まらないことでしょう。
差があるのは分かっているけれど、カカ→セードルフの1点は、ほんとうに悔しかった。
ベガルタが負けるのより悔しかった。
浦和に拍手です。大きな拍手です。
もし勝ってたら、胸糞悪いことこの上なかったです。
ただ、ポンテが居なかったのが痛すぎるとはいえ、レッズがミランに
試合のほとんどを、余裕綽綽で受け止められていたのは、
レッズのはるか後方に位置するチームのサポとしては、やっぱり少しショック。
レッズ負けろ!の目線では見ててもね。
あと、坪井があの場面でカカをファウルで止めてたらPKだったんじゃ
ないかと思うんですが、どうでしょう?
あの場面の直前、PKに取らない方がおかしい(個人的主観)ようなファウルが
流された場面があったので、下手なタックルは、PK取られる、
という坪井の思いも無かったのかな〜なんて。
オシム監督が憤慨したのは、それがプロのチームだったからでは?
(文藝春秋あたりの前後の文脈がわからないので何とも言えませんが)
子ども達相手なら、「シュートを打ったのはOK!でも、なんで外した(外れた)か考えてみ?」って感じではないでしょうか?
試合でシュート外す度にどなっていたら、その子はシュート打たなくなりますよ。
中には「うるせぇ、次は決めてやるぜ!」って子もいると思いますけど。
「危険な場面はどんどんファウルで止める」
まともに日本語も喋れない連中にそんなこと教えたらどうなると思います?
彼らは基本的に自分の都合のいいようにしか解釈しませんよ。
さぼる、ズルをすることにかけては、こっちが感心するくらい天才的な連中です。
危険な場面をどんどんファウルで止めてたら、差は広がるばかりだろうなぁ。
トーナメントで0−1で負けているのに、勝ちにいくより、きれいに負けようとした戦いに見えました。
Jリーグ、天皇杯と、サッカーは何があるか分からないスポーツだと身をもって体験してきたのだから、逆の立場でそれを実践してほしかったですね。同じ土俵に立ってるんだから。いつまでも“あのミラン”なんて思っていると差は縮まらないのでは?
支配率なんかあてにはならない、というのは承知の上ですが「支配させてカウンター狙い」というのとは明らかに違う、力の差通りの支配率の差だったと思います。これだけボール持てないとそもそも単発でしか攻められないし、カウンターでFWがボールを受けても大体1対3くらいになって簡単に止められてましたよね...
車の来ない赤信号の横断歩道(爆)で如何に振舞うか? という問題と同様、教え―教えられて覚えるものではないと思うのだが。
とまれ、日本サッカーを「世界」(←何だ“世界”って?〉と比較して卑下して語る王道パターンがここでも繰り返されているな。
感情的には理解できますが、「取り合えずクリアしろ」と並んで、もっとも選手の成長に繋がらない意見だと思います。
安易なファウルに頼らないで済む個人戦術力を身につける事が先だと思います。
勝つことが全てに優先する試合で後がない場面(例えばACLの決勝戦やW杯地区予選、入れ替え戦)ならファウルでも止めるべきだと思いますが、この試合は日本サッカーの成長度を世界に披露する試合だったのだから、安易なファウルで試合を壊すべきではないと思います。
今の日本の守備は数的優位を作ることに主眼を置いていますが、これからは1対1で止められる守備技術を磨くべきだと思います。武藤さんが挙げておられた阿部の守備はいい手本でしたね。
今年も寂しい季節がやってきましたね。
これは、結果論でしょう。
それより、フリーの選手がいたことが問題でしょう。
あの時、DFは全員ボール(カカ)を見ていた。
ボールより人を見るといった基本ができなかったことが敗因でしょう。
まぁ3バックならあのスペースは捨てるしかないんだけどね。
(中でしっかり弾くしかないでしょう)
指導者が危険な場面はファールで止めることを教えない
などと言う暴論を主張している方がいらっしゃるがサッカー素人の戯言ですね。
育成の場面でこれをやっていると選手は絶対育たない。
プロフェショナルファールという言葉だけがひとり歩きしている(笑)
海外列強と日本の差は指導者の差でなく、環境とフィジカルの差ですね。
土のグランドでサッカーやっている限り、絶対に追いつけないですね。
それに、身体のスピードは絶対に追いつけない。
あとは、個人の判断のスピードを鍛えるしか、身体のスピードに追いつく方法はない。
ACLでも規格外の動きを見せたワシントンが(コンディションがふるわなかったとしても)完璧に抑えられてしまいました。
ダイジェストでは分からない圧倒的な守備力を見せ付けられました。
失点の場面では闘莉王のヘルプも遅かったように見えましたが、むしろ中を固めたほうが良かったのでしょうか。サイドを破られた時の対処は難しいので正解など無いと思いますが…
>天邪鬼さん
フィジカルの差ということですが、単純なぶつかり合いではそんなに劣勢ではなかったように思えました。
むしろ、一歩目の早さに差を感じました。
仰るとおり判断のスピードを鍛える必要があるのだと思います。