2008年01月03日

宮城県工高の奮闘

 仙台に帰省中。

 高校サッカー選手権のテレビ中継は地元チームの中継。今年の宮城県代表は宮城県立工業高校。地元では県工と言われている。赤と白の横縞のストッキングが、30年前の私の高校時代から変わっていなかったのが嬉しい。テレビ桟敷で大騒ぎしていたら、娘が「お父さん、この高校と試合した事はあるの?」と聞いてきた。「もちろんある。負けたり、引き分けたり、負けたり、勝ったりしていた。」と答えた。大体こんな星勘定だったな。県工の私の1年下には、後に住友金属(アントラーズの前身)で高速ウィンガとして長く活躍する茂木一浩がいて、随分痛い目に会わされたものだった。ちなみに茂木は、80年代半ばJSL1部と2部を上下する住金のエースとして素晴らしい活躍をしてくれた。同年齢の鈴木淳(当時仙台向山高校、現アルビレックス監督)とは高校時代からライバルとしてそれなりに話題になっていたな。

 で、県工の初戦の相手は鹿児島実業。何が腹が立ったと言えば、アナウンサが最初から「鹿実が勝つ」と言う前提で放送をしている事だった。しかも解説者は鹿実OBの前園真聖氏。上位進出する鹿実の初戦突破を観察すると言う番組編成が自明ではないか。
 しかし、流れてくるテレビ映像は、テレビ局の思惑とは全く異なるものだった。立ち上がり、様子見で試合に入った鹿実に対し、県工は最前線からプレスをかけ攻撃を仕掛ける。このプレスが相当厳しいのだが、主審の判定基準が激しいチャージを許容するものだったため、ほとんど反則が取られないのが県工に幸いした。そして、前の方の各選手が自らフィニッシュを決めようとする意欲にあふれていた。昨日の天皇杯決勝にたとえて言えば、皆が内田的な意欲を見せていたのだ。それでも鹿実は押されているとなると、7,8人で守備ブロックを固め、しっかりと守ってくる。このあたりは、豊富な試合経験の賜物だろう。「よくない時間帯は耐えるべし」と言う教えがしっかりと、各選手に身についているのだ。それでも、前進意欲がとぎれない県工は、前半半ばにCKから見事に先制点を決める。
 この時点では解説の前園氏も冷静だった。「いやあ、宮城工業高のプレスは素晴らしいですね。鹿実は受身に回ってはいけません。」と余裕の目線を継続。しかし、アナウンサの「なんと、なんと、宮城県工業が先制しました!」はいくら何でも失礼だろうが。
 後半の立上りこそ押し込まれたが、粘り強い守備で対応。この時間帯は危なかったが、鹿実が県工の逆襲を警戒したのか、比較的深めに守備ラインを築いていたため、第2波、3波の攻撃がやや薄かったのも幸いした。後半半ばに逆襲から見事な個人技で2−0に突き放すロビングシュート。上記したように鹿実の守備は人数が揃っていたのだが、技巧あふれるドリブルと前半から見せてくれたフィニッシュへの意欲が奏効した。この時点で前園氏もさすが絶句。こうなると鹿実の攻撃は焦り気味になり、県工は分厚いカバーリングで冷静にいなす。さらにロスタイムには自陣FKから、時間稼ぎの交代で起用した選手がファーストタッチで得点を決め3−0としてしまった。何とも見事な勝利だった。
 県工が鹿実をよく研究し激しいプレスと前線の個人能力で対抗した事、鹿実が「確実に初戦突破」を考えやや守備的に戦い過ぎたのが裏目に出た事の2点が勝敗を分けたのだと見た。

 これは上位進出か、と盛り上がったのだが、次の試合の都立三鷹戦で敢え無く敗退。鹿実戦と異なり、前半何か集中を欠いた入りをしてしまい、いきなり2失点。そのままズルズルと押し切れず敗れてしまった。この試合の解説も前園氏だったのが、「昨日の良さが出ていない」と不満そうだった。確かに鹿実戦に焦点を合わせ過ぎ、目標を達成してしまって、集中を欠いたのかもしれない。また、2点差と言う事を考え過ぎて攻め急いだのも敗因に思えた。
 このあたりが、高校選手権の面白さでもあり、難しさでもあるのだろう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
宮城県工肘打ち 高校サッカー 鹿実VS宮城県工
http://jp.youtube.com/watch?v=n3WCi3p4u6g

こんな事をするようなチームには勝ち上がってほしくないですね。
Posted by a at 2008年01月06日 01:24
鹿実との試合を生で見ていました。
前半に得点を決めた選手に、審判の見えないところで鹿実の選手が何度も肘打ちしているのを見ました。
見ていて可哀想に感じたのも事実です。
だからといって報復の肘打ちが許されるわけでもありません。
でも偶然にカメラに映った場面だけを見て揚げ足を取るのはよくないと感じます。
それに、次の日の放送で、この選手は肘打ちを食らわせた選手に謝って、許してもらっているわけです。
いまさら持ち出すのはどうなんでしょう。
Posted by ゆうす at 2008年01月06日 03:06
宮工OBとして、見に行きました
肘打ねぇ 鹿実のヒップアタックも見事だったけど
宮工に、謝りにきたのかなぁ

どっちもどっちな試合でしたな
差は決定力でしかないw
Posted by 捲土重来 at 2008年01月06日 19:28
静岡在住ということで、テレビでは連日藤枝東関係のカードが放送されています。県工が三鷹に勝てば久しぶりに県代表の試合が見られるところだったのですが残念。
というわけで、昨日は三鷹×藤枝東の試合を観たわけですが、中継全体が「特待生も体育コースもない都立高校がここまでやってきたのです」的な雰囲気でなされるのにはうんざりです。
下記はスポナビの記事なのですが、こういうふうに「分かりやすいキャラ」にあてはめて対象を記述するのがスポーツ中継の常套手段となってきていて(選手に一行キャッチコピーをやたらとつけたがる陸上やらバレーやら・・・)不快ですね。当の三鷹の選手たちにも失礼な気がします。
むしろ、「サッカーってのは結構見えないところでガツガツやってんよ」っていうのがかいま見えるくらいの方がスポーツ中継としてはリアルでいいんじゃないかとも思います。もちろん相手の選手生命に関わるような行き過ぎたラフプレーは論外ですが。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/hs/86th/column/200801/at00015925.html
Posted by かわうそさん at 2008年01月06日 21:31
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