2008年01月06日

高校選手権準決勝

 ベスト4は流通経大柏、津工業、高川学園、藤枝東。中々バランスの取れた4強と言えるだろう。高円宮杯を制覇した流通経大柏は、タレント豊富なJクラブユースと互角以上の戦闘能力を持つ首都圏の強豪。津工業は古くからのサッカーどころ三重県の代表、名門四日市中央工を下しての出場だが基本的な戦闘能力が高いのだろう。高川学園は、学校の経営問題から名前が変わったが、高松大樹、中山元気、中原貴之らの大型ストライカを輩出し続け、安定した強さを持つ地方の私立高校。そして、松永行、菊川凱夫、山口芳忠、桑原隆、松永章、碓井博行、中村一義最近では中山隊長、山田暢久、長谷部誠らを育んだ名門中の名門の藤枝東。全国にサッカーが普及し、Jクラブに高素材が流出しているため、上位進出チームが予想しづらい高校選手権だが、何となくもっともらしいベスト4が並ぶのが面白い。

 流通経大柏対津工業。流通経大柏は今大会の映像は初見だが、さすがに優勝候補らしく、ここに来て調子を上げてきたのか。エースの大前が爆発すると共に、見事な守備の固さを見せた。敵のクロスに対するDFの堅実な対応、球際に対する強さが素晴らしい。津工業はスキルフルな選手を抱えているが、ここまでの連勝で精神的にも肉体的にも一杯だった感じもあり、単発な攻撃に終始、終盤大差がついてからは守備の粘りもなくなってしまった。
 高円宮杯の時も思ったが、大前のような瞬間的に高速になれて、かつ技巧に優れたストライカは将来が多いに愉しみ。個人的に気に入ったのは4点目(大前自身としては3点目)、ペナルティエリアに敵GKが飛び出した所のこぼれ球を拾って無人の敵陣に蹴り込んだ一発。無人のゴールを狙うと判断した瞬間のトラップが正に完璧だった。このトラップが正確だったからこそ、落ち着いて敵DFをかわす事が可能になり、そのままボールを蹴りこむ事ができた。
 
 一方の高川学園対藤枝東。これは熱戦となった。
 開始早々の藤枝東のビューティフルゴールには恐れ入った。サイドからグラウンダの低い横パスと軽妙なボールタッチの組み合わせで、高川守備陣に僅かなギャップを作り、エースの河井がそのギャップから強烈に決めた。これは凄い得点だ。最後に河井がシュートを狙うまでは、各選手が瞬間瞬間で敵の逆を付く事を狙って高川守備陣を揺さぶる事を狙っていた。逆に言えば、最終的にどのような崩しをするかは最後に河井がヒラめく時点で初めて明らかになった訳だ。これは防げない。絶好調のアルゼンチン代表チームのような得点だった。そう言えば、準々決勝の三鷹戦の先制点も、浮き球をつないでズドンと言うアルゼンチンばりの得点だったな。このような技巧と発想の得点は、私のような年代の人間にとっては正に70年代に憧れた「藤枝東のサッカー」。美しい。
 高川学園も精力的に両翼から攻め込む。しかし、藤枝東の守備ラインが実に粘り強い。最終ラインの個々の強さと、中盤選手の知的な位置取り。これは80年代から90年代に精強を誇った堀池、服部、田中誠に代表される静岡らしい知的な守備を思い出した。高川はスピードのある技巧派を多数抱えていたが、上記したようなかつての大型ストライカがおらず、どうしても崩しきれなかった。むしろ、両翼に拘らず片方のサイドに選手を集めて拠点を作るような「奇策」を弄してもよかったのではなかろうか。
 それにしても藤枝東の決勝進出は、73−74年シーズン(高校選手権がまだ大阪で行なわれていた)、あの中村一義が、山野兄弟(山野孝義氏は現NHK解説者)の北陽高に敗れた時以来だな。

 かくして興味深い決勝戦となった。
 Jクラブユースを連覇して高円宮杯を獲得した流通経大柏。高速ストライカの大前を軸にした速い攻撃と、強い守備。一方の古典的名門の藤枝東は、河井を中心に技巧的で発想に優れた攻撃と、知的な守備。いかにも、関東の洗練されたサッカーと、静岡の技巧を活かすサッカーの対決となった。両軍のベテラン監督は1週間の準備期間をどう活かそうとするか。大前と河井と言う小柄ながら、抜群の素質を持つタレントは、どのようなヒラメキを見せてくれるか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック