2008年01月14日

流通経済大柏の完勝

 高校選手権決勝、新興の強力チーム流通経済大柏と名門中の名門藤枝東の対決となった。試合前は、高円宮杯を制した制した流通経済大柏がやや優勢なのかなとは思っていたが、藤枝東の準決勝や準々決勝の得点の技巧と着想も中々レベルが高く、拮抗した好ゲームを期待していた。生観戦を計画していたが諸事情で断念、自宅でテレビ観戦となったのだが、どうやら満員札止めだったらしいので、結果的には正しかったのか。
 で、試合内容。流通経済大柏が予想を飛び越えて強く、正に完勝。藤枝東は何もできなかった。準決勝、準々決勝を見る限り、藤枝東も相当強力なチームに思えたのだが、ここまで流通経済大柏が強いとは正直言ってビックリ。

 開始早々から流通経済大柏の強烈なプレスに藤枝東は中盤を全く抜け出せない。最前線からのチェイシングが厳しく、藤枝東の前線へのフィードが精度を欠くため、流通経済大柏の守備網が藤枝東FW陣を圧倒する。そのため藤枝東の中盤は前を向いてプレイができない。
 唯一エースの河井はよくない体勢でボールを受けても、見事な技巧で前を向くが、すぐに2〜3人くらいに絡まれてしまう。それでも河井は鮮やかなフェイントで抜け出しかける事もあったが、そうなると流通経済大柏は迷わずファウルで止める。押し込まれている影響で河井がボールを受ける場所はハーフウェイライン近傍なので、藤枝東はFKを獲得してもあまり有効ではない。
 それでも藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。

 開始早々の先制点は、大前が前向きにペナルティエリア内でボールを受けたところで勝負あり(巧く右サイドを崩して大前にパスを出した主将の名雪だと思ったが、技巧も判断も非常に優れた選手だな)。大前は実に見事なボール扱いで藤枝東DF3人を引き寄せてから、後方に目がついているかのようなマイナスのグラウンダのラストパス。全くフリーで走り込んできた村瀬が冷静にコースを狙って決めた。以降も流通経済大柏のペースで試合は続くが、藤枝東も粘り前半は1−0で終わる。押されていた藤枝東が1点差でハーフタイムを迎える事ができたので、流通経済大柏も攻め疲れがでてくるであろう後半はかなり面白い展開になるのではないかと期待した。
 そして後半開始早々、河井が右サイドから仕掛け、好クロスに藤枝東FWが合わせようとする好機を掴む。期待通り、前半我慢した藤枝東ペースになるのではないかと期待は高まった。しかし、これが、この日藤枝東の最初にして最大の好機になるとは。
 この直後、左サイドをえぐった流通経済大柏の低いクロスを、負傷上がりと言う上條(とても負傷上がりには見えない程よいプレイだった)が持ちこたえ、走り込む大前に正確に流し、大前がアウトサイドで狙いすましたシュート。藤枝東1年生GK木村が見事な反応で防いだが、そのこぼれ球を名雪が拾いセンタリング、逆サイドで待ち構えた大前がダイレクトでニアサイドを抜く一撃を決めた。これで事実上、勝負はお終い。それにしても、大前のゴール前の技術の精度には本当に感心させられる。よくもまあ、あのクロスから正確に低くコースを狙った強いシュートが打てるものだ。
 このあたりからは、流通経済大柏の一方的展開となる。あれだけ押されてしのぎ続けた藤枝東だったのだが、2点差となり精神的にも相当つらくなってしまったのも大きかったろう。原則、速攻を仕掛ける流通経済大柏だが、攻め切れないと判断すると、再三左サイドで数人でボールキープして遅攻を仕掛ける。このボールキープが巧みで、藤枝東はどうしてもボールを奪えない。出足や裏を付く速さのみならず、ボールキープでも藤枝東は劣勢になるとは思いもしなかっただろう。3点めは左サイドバックのえぐりから、上條のつぶれ、フリーの大前、と完璧な崩し。4点目は大前のCKから逆サイドに待機していた交替直後の田口がフリーで決めた。さすがに終盤、流通経済大柏のフォアチェックは緩んできたが、最終ラインの強さは変わらず、藤枝東は好機らしい好機すら掴めなかった。

 エースの大前が終始敵陣近くでよい体勢でボールをもらい続けた流通経済大柏と、エースの河井が敵陣より遥か離れた場所で奮闘を続ける事を余儀なくされた藤枝東。準決勝から1週間日が空いたためか、流通経済大柏各選手の体調が非常によく、あれだけ厳しいプレスを90分近くかけ続ける事ができた事が大きかったのかもしれないが、ここまで大きな差は全く予想していなかった。多くの名選手を育成してきた本田裕一郎氏の経歴での集大成とも言うべき試合だったのではないか。そして、あの藤色のユニフォームのチームがここまで何もできないと言う事に、何とも言えない感慨を持つ試合でもあった。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(3) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> それでも藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、
> 技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。
> ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。
> 流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、
> 再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。

流経のプレスに対抗して裏へ蹴るというのは当然の発想です。でも広島ユースは高円宮杯決勝でそれをやって完敗しました。藤枝東も総体でこれを試して流経に負けたそうです。藤枝東は今大会の一回戦も「大きく蹴るサッカー」をやって、香川西相手にPK戦までもつれ込む苦戦となりました。

藤枝東に厳しいようですが、あれは「こだわり」でなく唯一の選択だったのだろうと思います。テレビ中継がある試合で恥ずかしいことはできないというのも多少あったかもしれませんが…。
Posted by 党首 at 2008年01月15日 06:25
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武藤文雄のサッカー講釈: 流通経済大柏の完勝
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Weblog: Reysoloid
Tracked: 2008-01-15 10:36

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