2008年01月27日

オシムチルドレンと内田 −チリ戦雑感−

 試合直前、何が盛り上がったと言えば、
「せばんごお〜、にぃじゅっご!うちだ〜〜、ぁあつと!」
とアナウンスがなされた瞬間だ。

 岡田氏は、やはり相当慎重なメンバ構成を選択した。加地の代わりに内田を起用した以外は、基本的にアジアカップのメンバではないか。
 新しい選手のトライは、固定メンバに少しずつ織り込んで行くのがセオリー。既存の選手達に内田を組み合わせたメンバ構成は、非常に理に叶ったものだった。まあ、「試す」と称して、全部のメンバを変える監督が、ちょっと前にもいたし、つい最近もいるけれど。
 そして、このテストは70分過ぎに、内田が加地に交代されるまで継続した。残念ながら、現時点では「不合格」と言う結論だったが。内田にとって、かほど強力なチームと戦ったのは初めてだったろう(ワールドユースはもちろんJのトップチームよりも、今日のチリは強かった)。また、正対した左ウィングの縦に出る速さは相当だった。しかし、新進気鋭のサイドバックがあそこまで押し込まれてしまい、ほとんど攻撃に参加しないのでは...一方で加地がピッチに入る時の堂々とした態度が面白かった。「こんな餓鬼と俺を比べるなよ」(と加地が思っていたように、私が思っただけですが)。
 この日の内田の出来は残念なものだった。おお、内田のポジションにおける日本サッカー史上最高の名手も、反対サイドのワールドカップ初出場に貢献した知性派も、考えてみれば内田の高校の先輩ではないか。厳しい評価はしたものの、不出来だったこの日の内田のデビュー戦は、あの2人の偉大なサイドバックの代表デビュー当時よりは、格段によいプレイだった事は間違いない(あの2人とも、若い頃はそんなものだったのだ)。厳しく成長を見守りたい。

 アジアカップの後、オシム爺さんは巻、山岸そして羽生に拘った采配はあまりしていなかった。それにも関わらず岡田氏が巻、山岸をスタメンに並べ、交代の一番手に羽生を使ってきたのは、まずは爺さんが期待していた(そして相当期間手塩にかけて育成してきた)この3人を改めて見極めたいとの思いがあったのだろう。
 巻はシーズン序盤の体調維持が難しい時期の試合にも関わらず、強引に身体を寄せていくプレイでよく戦った。立ち上がりの絶好機を敵の見事なスライディング(ファウルではないかとの報道が多いが、私は正当なボールへのタックルと見たが)に防がれたの惜しかった。あそこでの抜け出した時の丁寧なボールタッチは高く評価できる。定位置争いは厳しいが、強引に身体ごとボールを持ち出す強さは、チリDF陣にも十分に脅威となっていた。この手の「強い」FWは、多くの場合、経験を積み30歳近くになって花開く場合が多い。今後も相当期待できるのではないか。
 山岸は、やはり厳しい。この日の山岸は、運動量も豊富で開始早々からよくボールを引き出した。新たにチームメートとなった憲剛とは、お互い精度の高いコンビを形成しようとの意識も感じられた。しかし、どうしてこの男は敵ゴールライン間近で突破を狙わないのだろうか。瞬間的なスピードも、正確なボール扱いもあるはずなのに。(より後方のタレントに関わらず)加地や駒野が勝負どころで見せる強引な前進に対し、山岸の前を向いた場面での消極性へのフラストレーション。引き出せるだけに、突破しない事がもどかしい。
 一方、羽生は存在感を見せ付けた。前後して投入された大久保の派手な好機獲得(と直後の失敗)に隠れた感があったが、黒子を演じた羽生は評価されるべき活躍。羽生の上下左右動は、遠藤のヘロヘロ展開、憲剛のビシビシ展開それぞれとのマッチングがいい。憲剛のパスを受けた直後、大久保に通したスルーパスなど絶品だった。前に出て行くMFとして、水沼、北澤、反町、森島の系譜に連なることができるか。飛び出せる能力は現時点でも国内屈指だが、持ち出せる能力では羽生を凌駕する山瀬、(ずっと若い)梅崎、柏木と、ライバルは多いのだ。このあたりの比較論は別途やりたい。

 その他。
 川口の好守とおバカ、駒野の攻撃能力、中澤、阿部、啓太の安定感、憲剛と遠藤の妙技などは、まあ流行語?で言えば「仕様」か。高原はタイ戦には合わせて来るのだろうな(しかし、時に見せた正確なトラップと回転は評価しよう)。
 大久保は評価すべきだろう。確かに点を取れなかった事への不満も多い。ここで、「枠に飛ばせ」と激怒するか「打たなければ入らない」と期待するかは、さておき。
 残念だったのは山瀬。80分以降、チリが明らかに疲労したにも関わらず、もう1つ攻撃がピリッとしなかったのは、山瀬がしっかりとボールを受けて落ち着ける事ができなかったから。厳しい言い方になるが「やはり憲剛の方が」と言う出来だった。代表での成果はまだ「カメルーン戦終盤の出会い頭」しかない事を自覚して欲しい。

 テレビに常時映るバックスタンドだけが妙にガラガラ、他は満員のスタジアム。チリも強かったし(チリの若者達にとって、日本、韓国との敵地での連戦は素晴らしい経験になるだろう、とてもよいマッチメークだと思う)、日本も悪くなかった。足元から心底冷え込む辛い観戦だったが、内容がよかったので辛くない試合だった。ボスニアヘルツェゴビナ戦も期待しよう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フランスの時は内田は10歳だったのかとか、川口のこの10年てなんだったのかとか、
試合の「感想」よりも「感慨」が沸いてくる不思議な試合でしたね。
他方、翌日の三ツ沢で、カズ城のセンターサークルでのあの祈りポーズがあったり。
変わったものと変わらないもの、いろいろありますが
我々の脳裏に焼き付くのはやっぱり「感動」なのだなと。
スタジアムの空席(ボスニア・ヘレツェゴビナ戦はもっとヤバいらしいですが)、
音程の外れたエビータ、そして、フランスの指揮官がそこにいる光景は
私にとってはやっぱどこか間の抜けた光景でした。

俺たちの日本代表はどこへ向かっているのだろう。
・・・と思っていたら、武藤さんの講釈、本当に、凄い。
いや、昨今のサッカージャーナリズムを見渡しても、一体どこにこんなに温かく、冷静に、ぶれずに代表を
見る眼があるだろうかとマジで思いました。
今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by とし at 2008年01月28日 21:36
チリは予想外に、いいチームでした。

ビジョンや方向性はオシムと同じでも、あのオーソドックスなフットボールで羽生、山岸使うのは??です。

羽生、山岸クラスの選手ならJに大勢います。
Posted by 徒然 at 2008年01月29日 14:37

言いっぱなしはよくないですよ。
それなら具体例を挙げなければ。大勢って言ったんですから一人二人では利きませんよ。

まあ百歩譲って山岸についてはいいとしても
(とはいえ、武藤さんの文章にもあるように、あれだけ動いて引き出せる選手が他に大勢いるとは…)、
羽生にまでそのようなことを言ってはおかどが知れてしまいますよ。
ここを一緒くたしているようでは…

では、例えばその羽生にあれだけ好機をお膳立てしてもらって、
それを決められなかった大久保なんてどうでしょうか。
羽生抜きで大久保一人でやらせた方が点が取れる、とか言いますか?もしかして。

とりあえず、この方向性は変わらないのですから、
徒然さんがやられることは、持論をしっかり示した上で批判しつづけるか、
あるいは監督交代まで応援を止めるかのどちらかではないでしょうか。
あ、あとは監督解任運動ね。
Posted by at 2008年01月29日 17:44
武藤さんの山岸と大久保の評価の違いが興味深いです。
お互いもう一歩が足りないということなのに、その一歩の内容の違いでここまで評価に差が出てしまう。
山岸の一歩は大久保のもう一歩前とも考えられますが、
その辺は元々のプレースタイルの違いもありますしね。
私としては、山岸はとても好きなプレーヤーなので、
このまま代表に残って武藤さんをギャフンと言わせる活躍をしてもらいたいです。

ついでに、大久保と山岸はポジションを入れ替えて同時起用すれば嵌ると思うんですがどうかな?
Posted by まる at 2008年01月29日 20:47
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