2008年02月05日

ワールドカップへの道

 ワールドカップ予選が始まる。
 私は人生でこれ以上の娯楽を知らない。昔はおおむね丸1年を用いて、予選を消化するのが常だった。前回大会より丸々2年(実質的には1年半か)を使い、じっくりとワールドカップ予選を堪能できる事になった。今回は日本が登場する段階のさらに前から、1次予選、2次予選が行なわれた事で、厳選された20チームが3次予選を戦うレギュレーションも興味深い。かつての予選のように、大量点を奪うような試合は、少なくなってしまったが、アジアのタフなライバル達と、本大会出場まで14試合の真剣勝負をじっくり愉しめる訳だ。

 そして、明日の初戦、埼玉スタジアムにタイを迎える。タイとの初戦と言えば、神戸ユニバースタジアムで行なわれた93年合衆国大会予選を誰しも思い出すだろう(日本ラウンド、UAEラウンドのダブルセントラルで、日本、UAE、タイ、バングラデシュ、スリランカの5国が2回戦総当り)。前年のアジア初制覇の後、何としてもワールドカップ初出場を獲得したい思いで臨んだあの重苦しい初戦。福田の絶妙なパスから、カズが美しい得点を決め1−0での勝利の歓喜は、今なお忘れる事ができない。
 もっとも、あの試合前後の思い出は他の事も多いな。早朝着の長距離バスで神戸について、夜キックオフの試合までやる事がなくて、友人と有馬温泉に行った事。さらに、あの予選で忘れられないのは、国立で行なわれたタイ−UAE戦。既に日本はタイに勝っていたから、ライバルUAEがタイに勝てないと、日本は相当有利になる。その事を「わかっていた」好事家が数百人国立のバックスタンドに集結。タイに熱狂的な応援を行なった。タイも我々の熱狂的な声援に応えて?後半終了間際まで実に見事な守備を見せてくれたのだが、あと5分のところでUAEが決勝点。我々の思惑は藻屑と消えてしまった。いや、あの試合は興奮したな。

 あれから15年の月日が流れた訳だ。
 あの15年前は、日本代表チームが「初めて国民的支持を集めて世界に挑戦した」年だった。そして、あのカズの美しい得点によるタイ戦の勝利から、その冒険は始まった。冒険の終結は、あまりに甘美な悲しいものだったが。
 そして、以降の15年間の日本サッカーの歩みを振り返ると、陳腐な言い方になるが感慨深い。毎年、様々な形態で欧州、南米の列強と親善試合を行ない互角の成績を収め、アジアで競合国に勝ち切れないと非難を轟々と浴びせる人もいる。15年前に、UAEやタイに勝つ事がいかに重要だったかと思うと、この時代の流れが何とも愉快ではないか。もっとも、93年より前(より正確にはオフト氏と柱谷哲二の仲間達が92年のダイナスティカップを制する前)などは、中東の強豪から勝ち点を奪う事が、奇跡に近いと思われた時代もあったのだが。

 過去を振り返っても、今回の予選ほど磐石の体制で迎える事ができた予選はないと思う。ただでさえ、アジア屈指の分厚い選手層、倒れる前のオシム氏が丹念に作り上げた基盤、受け継いだ岡田氏のしたたかな準備(岡田氏の「接近云々」と言うキャッチフレーズは、明らかにマスコミの注目を一点に向け、準備を円滑に進めようとする三味ではないかと思うのだが...以前も述べたようにショートパスによる局面打開は、日本代表が今より高いレベルに上がるために非常に重要だとは思うが、それが方法論であり、目的ではない事を、岡田氏は十分に認識しているはず)。大エースの中村俊輔を呼び戻さずとも、明日は確実に勝てるのではないかとの思いは強い。
 もっとも、私の楽観的な予想は外れる事になっているのだが。

 しかし過去も再三述べてきたが、試合が始まってしまってから私にできる事は、声を限りに応援する事だけ。厳しいタイトルマッチで、真摯に応援できる環境がある事が、何よりも嬉しい。
posted by 武藤文雄 at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最初は「どうか失点(UAEの得点)を1点でも少なく終えてくれ」という気持ちからだったタイヘの声援が、UAEの猛攻をことごとく弾きまくるファインプレーの連続を目の当たりにして、やがて心からの「ワチャラポン」コールへと化して行ったことを懐かしく思い出します。

もし彼が健在であれば経験豊富な(40歳くらい?)名キーパーとして、我々の前に立ち塞がっていたことでしょう。
Posted by たかはし at 2008年02月06日 10:00
さて、そろそろ国立へ行くか。
Posted by at 2008年02月06日 15:06
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