2008年02月06日

悠然と初戦突破

 私の席はバックスタンドで屋根があったから、雪の影響は少なく、防寒さえしっかりすれば問題は少なかった。靴にホカロン、アルミ毛布で下半身ガード、毛糸のマフラー、熱燗、の組み合わせでほぼ完璧な対応ができた。もっとも、下半身にアルミ毛布を巻きつけながら、日の丸を振り、日本が好機を掴む度に立ち上がるのは、いささか難しかったが。
 しかし、ゴール裏(屋根がない)のサポータの方々、選手達、特に南国のタイから来た敵国の勇者達には、あまりに過酷な環境だった。2月に極東で南国の選手が公式戦を戦うのは、やはりいかがなものかと思うのだが。まあ、欧州ではこの環境で試合するのは普通だろうし、9月にアラビア半島でやるよりはましかもしれないな。仕方がないのだろうか。
 元々圧倒的な戦闘能力差があるところに加え、気候のハンディキャップ。信じ難い失点があってもなお、勝ち点を失う事は、まずないだろうと言う内容での快勝だった。

 タイは4−1−4−1のフォーメーション。9人のフィールドプレイヤで守備を固めてきた。センタバックは厳しく高原と大久保をマーク。好調山瀬がスタメンで来るのも予想していたのだろう、トップのいずれかが引いて、山瀬がすり抜けを狙う攻撃もよく読んでいた。憲剛のサイドチェンジで内田なり駒野がフリーでせり上がってきても、サイドMFがよく頑張り、容易に2対1を作らせない。よい守備だったと思う。
 しかし、あまりに攻撃力がなかった。中でも痛かったのが、トップのサラーユットと言う選手が、中澤を相手にボールキープはおろか、時間を稼ぐ事すらできなかった事(普通FWがCBに完敗した時は「突破はおろか、ボールキープすらできなかった」と言う表現になるのだが...)。日本はどのような状況でも2人DFが残っているから、これでは逆襲速攻すらできない。もちろん、日本のパスを中盤でカットして、比較的前掛りで攻めけける機会も若干あったが、日本の攻から守への切替が早い事もあり、サイドで数的優位を作れない。それでも、サイドで2対2くらいから前進できれば面白いが、寒さのせいか、日本の守備が俊敏なのか、東南アジアチーム独特のショートパスの突破が機能しない(タイは昨年のアジアカップで、豪州をその得意なショートパスで散々苦しめたのだが)。序盤に駒野のミスパスからの速攻で、せっかくサイドに拠点を作りながら、パスワークで突破が叶わず安易なアーリークロスを上げた場面には、失望じゃなかった安堵した。中澤が適切な位置取りをしている状況で、早いクロスを上げるのは日本にボールを提供するだけではないか。
 結果的にタイが日本陣に近づいたのは、同点弾の他は、後半立ち上がりのFK、75分過ぎに2回ほど駒野の背後を突破しかけた場面くらい(1回はCKを獲得した)。気候のハンディキャップは間違いないが、ここまで90分間を通じて圧倒できる試合も珍しい程、内容に差があった。

 かくして、日本の圧倒的な攻勢が継続した。組織的によく守っていたタイだが、憲剛と遠藤を軸にしたパスワークであれだけ振り回されれば、いつかは崩れる。
 日本の1点目は、ハーフウェイラインを10mちょっと入ったところで、中澤が素晴らしいスタンディングタックルでボールを奪い、そこから短いパスで日本がペナルティエリア近傍へ進出、最後は大久保?が倒されたFKから。「この距離ならば阿部が蹴っても面白いのでは」と思っていたら、遠藤が見事に決めた(それにしても、阿部の直接FKを見る事がめっきり少なくなって寂しい)。もっとも、友人と「いやあ、4年前を思い出すねえ」などとノンビリ語りながら、毛布を直していたら、敢え無く同点にされてしまったのだが。
 2点目は後半立ち上がりからの猛攻の賜物。憲剛がやや前掛りになり、無理をした攻撃を重ねた時間帯だった。右サイドフリーになった内田が強引に突破を狙うが、タイDFは何とかはね返す。拾ったボールを今度は左に展開、山瀬がこれまた強引なドリブルで左サイドをこじ開ける。タイDFは、山瀬を止めるのが精一杯。憲剛がプレッシャをかけ、やや偶然に憲剛に当たったボールがゴール前にこぼれたところを、大久保がいかにも彼らしい俊敏さで反応して流し込んだ。
 3点目は右サイドで巧くプレスをかけて中澤が巧みな?個人技で攻め上がったところを、タイのナロンチャイが慌ててファウルで止め、2度目の警告で退場。その直後の左からの攻め込みでFKを獲得。そのFKを中澤が完璧な高さで決めた。中澤のマークについていたタイのCBナタボーンは、この場面まで空中戦もよく頑張っていたのだが、相手が悪かった。何とか同点で終えたいタイはリードされた時間で退場者が出て、非常に苦しい状況で、次の対応も迷うところ。そのタイの迷いの最中に、最強兵器でしっかり点を取るのだから。
 4点目は、タイの集中が切れていたところもあるが、あの時間帯で巻が巻らしいシゴトをした事は高く評価されよう。
 1点目と3点目は、守備を固めたタイの僅かな隙をついてのセットプレイ。2点目は「点を取るための猛攻の時間帯」に、サイドの選手が無理を仕掛けた事。4点目はロスタイムの敵の集中切れ。仕掛けどころにチーム全体で集中して、しっかりと得点を上げた。このような公式戦は何よりも結果が重要であり、難しい初戦で勝ち点3を確保した事も評価されるべきだが、内容もよい試合だった。

 当然ながら、失点場面を含め課題も散見されたが、それは明日以降。
 オシム氏が作り上げた「格段の基盤」を受け継いだ岡田氏は、2つの準備試合とこのタイ戦で内容も結果も十分な成果を発揮してくれた。
posted by 武藤文雄 at 23:55| Comment(3) | TrackBack(3) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2点目。大久保はQBKではなかったということですね。

とりあえず、この試合で日本の課題を見出すには、相手の状況や条件が悪すぎました。次、先勝した者同時のバーレーン戦で、ある程度、足すものと引くものが見えてくるはずです。
Posted by 徒然 at 2008年02月07日 12:58
悠然と、ですね。
まあ、話題がにぎやかなのは、それはそれで楽しいのですが、あまりにも見え透いた(予定稿的な)辛口論評が多すぎると思います。
大差で勝てば「相手が弱過ぎる」(実力差はあれ、タイはがんばってはいました)「前半が流動性がない」(いや、実力下位のチームに対しては、しっかり回して攻めてれば、後半崩れることに期待できるんで)「セットプレーでしか点がとれない」(とれりゃいいじゃないですか)「アイディアが足りない(崩した点がない)」(きれいに崩すのを狙って失敗すれば「泥臭く狙うことも大事」とか言うくせに)
この1試合で課題もなにもないと思います。むしろ武藤さんご指摘のように仕上がりが早過ぎるくらいと思います。
Posted by Dortmund06 at 2008年02月08日 13:53
前半の前半でトイレに行っててタイの得点を見逃したんですかそうですか<徒然
アンタがここでえらそうにコメントするのも自分ちでつまんないblogエントリ書くのも自由だが上から目線で物言うのはせめてちゃんと観戦してからにしてくれよ
キックオフ前にトイレぐらい行けるだろ
Posted by 草 at 2008年02月08日 14:21
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