個人的には、「クラシコ」のような外来語を使うとどうにも印象が軽くなるので、「伝統の一戦」の方が販促上はよいように思うのだが。「多摩川クラシコ」と言う「軽さ抜群のグッドアイデア」が既に先行して一定の成果を挙げているのだし。
もう1つ、テレビのアナウンサが提供する情報が混乱していた。どうやら、クラシコの開幕をJ開幕戦(あの、ほんの僅かな期間でいなくなってしまったオランダ人のマイヤーの先制点の試合)に設定しているのだが、J開幕戦がスタートでは「クラシコ」もへったくれもない。あくまでも80年代、プロ化を指向して日本サッカー界をリードした時代があっての「クラシコ」だろう。せっかく、83年読売がJSL初制覇した以降、読売と日産が相当期間タイトルを独占した事は映像で紹介していたし、正確には聞き取れなかったが「最初の対戦は7○年」とアナウンサが語ったり、とJリーグより前の情報も提示していたのだから、もう少しやりようはあったのではないか。
私の認識ではこの両クラブの初対決は77年8月28日、JSL2部、三ツ沢にて日産が1−0で勝った試合。この試合に坂木嘉和、清水秀彦、ジョージ与那城、小見幸隆、松木安太郎、鈴木武一らが出場していた。もちろん、日産の監督は加茂周氏。こう言った面々に取材をすれば、非常に分厚い放送となったと思うのだが。そうすれば、ラモスや木村和司氏のような「若手」に頼る必要もなかったのではないか(もっとも、ラモスは松木よりも数ヶ月年上か)。
まあいいや、試合に行こう。
ヴェルディが先制するまでは、完全にマリノスペース。ディエゴに対して厳しいチェックをかけ、フッキにまともなボールを入れさせない。一方で、この圧倒的なマリノスペースの時間帯を無失点でしのいたのが、勝敗を分ける事になった。ヴェルディの最終ラインは土屋、那須、服部、富澤(富澤はサイドバックの負傷で急遽本来とは異なるポジションでの起用となった模様だが)、さらに中盤も菅原、福西、大野と経験豊富で手練手管に長けた選手が多く、バランスがとれている。中でも、先日から中盤底に起用されるようになった菅原の知的な位置取りと服部の巧妙な上下動は非常に有効。我慢をしているうちに、ディエゴがよい体勢でボールを受けられるようになってくる。フッキが出場停止になっているうちに、菅原の起用を軸に守備組織を立て直しフッキの復活に備えた柱谷氏の成功とも言えよう。
そして迎えた39分、ディエゴが左(以降も左右は全てヴェルディサイドから見て)に巧く進出、中澤を引き出して低いセンタリングをフッキに。ここで、フッキには田中裕がしっかりと付いており、さらに逆サイドには小宮山が戻ってカバーに入っていた。つまりマリノス守備ラインは全体が右にスライドして、組織的には崩れていなかった。ところが、あろう事か田中裕がセンタリングをインタセプトしようとして空振り、全くフリーでボールを受ける事に成功したフッキが冷静に決める。さすがの中澤も部下の不首尾がこのように出てはカバーのしようがない。80年代後半、強い時代の読売は、悪い時間帯は加藤久、トレド、松木、エジソンらで粘り強く守り、隙を突いてラモス、湯田、戸塚、上島、ガウショあたりで点を取るのがやたら巧かったな。
後半開始早々、ロニーの外に向かうドリブルから強く踏み込みGKの二アサイドを抜くシュートで、マリノスが追いつく。木村和司、金田、マリーニョ、水沼、レナトなど、組織攻撃が巧く行かない時には「圧倒的な個」で得点を決めるのも、日産以来の伝統か。
ところがヴェルディはディエゴ、フッキのコンビで突き放す。この場面の中澤の守備策は議論が分かれよう。ほぼゴール正面からディエゴがドリブルで前進、斜め前方左に開いたフッキに速いパス、ここで中澤はパスの方向(つまり自分から見て右側)にターンした。セオリーからすれば、ワンツーを警戒してパスの後走り込むディエゴの方向(自分から見て左側)にターンすべきなのだが、フッキの事だから強引にシュートに持ち込む(あるいは、1点目でフッキのマークをし損ねた田中裕のカバーを考えたのか)と読んだのだろうか。結果的にフッキは、ディエゴにリターン、抜け出したディエゴが冷静に決めた。中澤の読み違え負け。
さらにヴェルディはGK榎本のミスから拾ったボールを丁寧に回し、最後は左サイドで服部が全くのフリーになって、狙い済ましたセンタリングを逆サイドの福西に正確に合わせ10年来のコンビネーションを見せてくれた。以前より不思議なのだが、マリノスはGKの補強を考えないのだろうか。榎本と言うGKは乗っている時の能力は素晴らしいが、大ポカが多過ぎると思うのだが。と、マリノスベンチのGKコーチを見て、そう言えばこの人の80年代の不安定さも酷かったと思い出したりして。
マリノスは、上記したGKへの疑問、隼磨の調子がもう1つな事、ロペスの使い方(と言うか、いい選手だと思うし、大好きな選手なのだけれども、J1のトップを目指そうと言うチームの「将軍」ではないと思うのだが)など疑問が多いのだが、戦闘能力は抜群だし、桑原氏の手腕も疑いない。これらの問題が修正され、それなりの所まで行くだろう。山瀬が完全に確立すれば「久々」もあると思う。
ヴェルディは、ようやく体制が整備された。フッキと言う爆弾は存分に機能するのはもうわかっている事、最大の問題は後方のベテラン達が夏場にどこまで戦えるかだろうか。
何にしてもはっきり言える事は、この両チームが強い方がリーグ戦が面白いと言う事だな。





