そして、加地の代表引退宣言は、ここ数年日本協会が超過密日程を放置し続けた事に要因があるのではないかと考えた。以下理由を述べる。
代表チームに長く選考され続けた選手が、代表を去るのは、通常は大きく分けて5つの場合が考えられる。1つは年齢的に能力が少しずつ衰え、ある時期をもって選考されなくなる場合。これは当然ながら最も多く、一般の代表選手に限らず、井原、カズ、福田、堀池ら圧倒的な実績を残した選手もこのように代表を去っている。2番目としては、監督の評価が下がるなり、大きな負傷なり、突然の劣化なりで、チームが一連の強化中、まだ若いにも関わらず選考されなくなる場合。名波や松田、さらには広義には前園もこれに当たるだろう。過去には木村和司が典型事例となっている(これは日本サッカー史上最大のもったいなさだな)。3番目は、大きな大会終了後、監督の交代など、代表チームの大きな節目以降選考されなくなる場合。宮本、森島あたりがこれらの例にあたる。古くは加藤久、前田秀樹、落合など長く代表チームを支えた選手もこのような形態で代表を去った。そして4番目は、存在感が傑出した選手が自ら「代表引退」を宣言するケース。具体的には、中田、ラモス、古くは釜本もこれらの事例である(これらの3人に共通する「微妙な感覚」は面白いですね)。5番目は、監督なり他の中心選手との折り合いなりが悪く、自ら代表を去る場合(上記2番目は「監督が選ばなくなる」場合だが、こちらは「選手が辞退する」場合)。最近これらが自明になったケースはあまり聞かないが、大昔は古前田、小見、戸塚などがこのような道を選んでいる(その後、状況変化により、小見、戸塚は代表に復帰)。余談ながら、このケースは海外でも、シュスターとかR・ディアスとかレドンドとか超大物が色々と。1、2番目は受動的に代表を去る場合、4、5番目は能動的に去る場合、3番目はそれらの中間と言えばよいか。
もちろん、中山のように1番目の状況にありながら、大事な大会のために呼び戻され結果的に3番目の事例に横滑りする事例もある。また中田のケースは3番目にも当たるが、極めて特殊にサッカーからの廃業発表を行ったのだから4番目に分類する方が適切と考えた。
では、加地や坪井はいかがか。能動的に代表を去るのだから4、5番目のいずれかだろうか。4番目に近い印象もあるが、2人には少々失礼ではあるが「選手としての存在感」と言う観点から、今回の「引退劇」は上記した事例とは決定機に異なる。岡田監督にとって、この2人の離脱は痛いだろうが、チーム構成の根底を修正するまでの大事件ではない。一方で、5番目ではないかと論ずる向きも多い。実際、加地について、弊BLOGにそのような趣旨のコメントを寄せて下さった方もいる。しかし、私にはとてもそうは思えないのだ。
坪井については、ある種の推測が可能だ。昨期終盤より、坪井は明らかに体調不良と言うよりは守備感覚が狂っているとしか思えない凡プレイを見せる事もあった。実際レッズでも、代表引退表明後の話だが定位置を奪われる事態。とにかく、本人も狂い気味の感覚を何とか戻す事が最優先と考えたのではないか。監督交代(岡田氏はまず「坪井も見てみたい」と考えたのだろう)と絶不調のタイミングが重なり、自ら代表を辞退するしかなかったのではないかと推定できる(中澤、闘莉王はさておき、阿部、今野と言った非本業DF、水本、青山直と言う若手の存在が、「辞退」の気持ちに輪をかけた可能性もあろうが)。
しかし、加地はどうだろう。上記したように拙エントリのコメント欄でも発言されている方がいたが、「左サイドで使われた、(自分より劣ると思われる)若手に定位置を奪われた、岡田氏に不満だった」と、加地が考えるだろうか。加地のここまでの経歴を振り返ると、私にはとてもそうは思えない。
加地はセレッソに入団し早々に準レギュラになり、あのナイジェリアユースチームの一員だった。加地の出場機会は少なかったが、明るい性格でチームをよく支えたと言う。以降、トリニータ、FC東京とプレイを続け、ジーコにA代表に抜擢されるまでは必ずしも注目される存在ではなかった。さらに代表に定着した以降も、自チームで徳永に一時定位置を奪われるなど、今日の地位を掴むのに大変苦労している。また岡田氏への不満云々と言うけれど、彼が仕えてきた監督は原氏と西野氏、岡田氏とは非常に近い経歴を積んだ監督だ。さらにチームメートの遠藤(ジーコ時代の酷い使われ方に耐え、今では完全に代表の中心選手になっている)、播戸(中々代表に定着し切れないが、選考された際の真摯な定着への努力は屈指の存在)は、2人ともユース代表時代からの戦友だ。
このような加地が、代表チームで少々難しい立場になって、不平を持って代表を辞退するとはとても思えないのだ。
もちろん上記は私の邪推に過ぎず、加地の真意はわからない。しかしこう考えてくると、加地の代表引退声明の要因は、もう過密日程以外に推定のしようがない。代表選手達にとって、現状の日程はあまりに過酷なのだ。昨期ガンバは天皇杯準決勝まで進み、今期に入り1月から代表合宿に召集。加地はほとんど休んでいない。秋口にはACLが待ち構え、体調を整え健全な状態で戦うために、シーズン早々に負傷した加地は「ワールドカップを諦めるしかない」と考えたのではないか。正に苦渋の選択。
もちろん、類似の状況で代表に相変わらずモチベーションを持っている選手はも多数いるから、「過密日程即代表引退」と言う事ではないけれども。ここ数シーズンの超過密日程を放置してきた日本協会の施策の失敗のツケが、少しずつ具体化してきているのではないかと危惧するものである。
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代表よりクラブ。僕はこのスタンス好きですね。
関係ないですが僕の中での好きな順は
Jリーグ>ACL>CL>海外リーグ>ユーロ>WC>>日本代表
です。
今や代表よりクラブの時代。選手の代表軽視はこれからは増えてくると思います。
気持ちの整理がつかないままの状態でも、請われれば一生懸命頑応えようとする、そういう性質の選手だと思います。
ただ、自身がクラブと代表のバランスを保てなくなった。そうなった時にクラブを優先した。
それだけのことなんだと思います。
彼がガンバに移籍した後のインタビューか何かで「僕のような選手を莫大なお金をかけて欲しいといってくれた。タイトルを獲得する事でそれを返して行かなければいけない」という旨の発言をしていました。怪我は代表で負ったものではありませんでしたが、今年前半のなかなかコンディション自体が上がらずチームに貢献できない状況と言うのは彼にとって堪えたのでしょう…
僕としては、ガンバも好きですし今年の後半のリーグ、ACL他各タイトルに向けての加地の仕事ぶりは楽しみにしたいと思います。
ただ、引退発表直後の全南戦でキャプテンマークを巻くとは思いませんでしたw
というのも私の出身都道府県にはJチームが一つ。
そこで私のサッカーはプレイも観戦も始まりました。
でもそのチームは私の生まれ育った町からは遠く離れすぎてて何の感情移入もできない。
大学入学と共に故郷を後にしましたがそこにはJチーム無し。
大学院時代に暮らした町にはJがあり、喜んでレプリカ買ってスタジアムに通いましたがイマイチ感情移入できず。
現在暮らしてる町にはJは無し。
(いつか家族ができてJがある街に住めたら観戦を楽しめるのではないかと考えているのですが。
だから私が手に汗握って応援できるのは今も昔も代表だけです。
武藤さんには到底敵いませんが89年から見ております。
ドーハ、98ジャマイカ戦、02トルコ戦、06ブラジル戦の後はしばらく何も手につ着ませんでした。
92アジア杯優勝、ドーハ韓国戦、97イラン戦、02ロシア戦、04中国戦の後は嬉し過ぎて突拍子も無い行動を取ったりしました(笑)
でも、昨今は世界中で必要とされながらも代表を引退する選手が増えてきている。
そして日本に関わりの深い世界的名将を初め、代表不要論・悪者論を唱える向きが日本も含めて世界中で顕著になってきている。
「プロサッカーは地域に根ざしたクラブが基本」
「金だしてんのはクラブ。怪我でもされちゃたまんない」
「クラブ中心に応援するのが本当のサッカー愛好者。日本のサッカー文化もやっと成熟してきたな」
どれも正しいでしょう。
でも、理屈では理解できても個人的感情の中ではどうも腑に落ちないんです。
私は無駄と言われたり悪者扱いされるチームを応援し続けてきたのでしょうかね?
まぁ誰に何と言われようが無くならない限り私は代表チームを見続けますが、何か悲しいです・・・
この件は、選手の特長と性格面の要因が重なったように思います。
加地の特長は運動量です。
プレースタイルスタイルも、省エネモードができないものです。
過密日程で疲労が蓄積すると、代表レベルの良さが消えてしまいます。
もし良さの消える期間が1シーズン続くなら、選手生命が危うくなります。
性格面は闘争心を表にださず、名誉慾を感じる言動も殆どありません。
にも関わらず代表レベルの選手です。
自身の向上とベストパフォーマンスを発揮することに、
大きなモチベーションがあるように推測しています。
疲労の蓄積でパフォーマンスが低下しました。
加地が毎年行う体作りの自主トレは、非常に厳しいと聞きましたが、
今年は自主トレの期間を取れませんでした。
今年の1月頃に、えらく弱気な発言をスポーツ新聞か何かで見ましたが、
ベストパフォーマンスを発揮できない辛さが、
他人よりも大きいのかもしれないです。
ただし日本代表の危機に加地の力が必要となれば、
話が変わるかもしれません。ネドベドのように、
期間限定で代表に復帰してくれるかもしれないと思います。
あと何年この世界でトッププレイヤーとしていられるかと考えたときに、可能な限り充実したプレイを続けるために、まず代表選手であることを切り落としたのではないかと私は思います。
ワールドカップにはもう出場したし、ファンを含めた周囲のために、現役としての残り数年をJリーグで燃焼したいと考えたのではないでしょうか。
それはそれとして、加地と坪井ではその理由は全く違うのかもしれませんが、日本サッカー界としては、この優れた両選手の代表固辞について同列に考えて、対策を考えていったほうが良いように思います。
この二人を越えなければならない若手に、ラクをさせてはいけませんから。
「世界中のすげー奴らと戦いたい」というアスリートの
根源的な欲望があると思うのですが、今はACLとクラブW杯が
あるからこの種の欲求はクラブだけで満たされるのですね。
クラブでの活動だけで欲求が満たされるなら、わざわざ
気心の知れない監督や選手と一緒に、ロクに練習できない環境で
上を目指す必要もない。両方頑張るのがしんどくなったら、
代表を切るのは当然の選択でしょう。
代表引退を発表した選手がレッズとガンバという
「世界を目指せるクラブ」所属というのも偶然ではないんじゃないかな。
ただ正直武藤さんの1〜5の分類はあまりよくないかもしれません。
奇しくも「小沼氏インタビュー」と対を成す事件でしたね。
あちらの本の中でも武藤さんは小沼氏の言葉を受けてなお過密日程を糾弾。
私にはどちらも納得のいく意見だけにこのエントリーも楽しく拝見させて頂きました。
後は本人達が引退してからのインタビューしかないんじゃないかなー
年齢だけで宮本と同じ括りにしたのか知りませんが、無理がありますね。