2008年06月08日

ありがとう楢崎

 まあ、色々あった試合だが、やはり楢崎のPKストップにつきる試合だろう。あそこでまた突き放されると相当苦しくなるところだった。

 とにかく、あのような灼熱の環境での試合そのものが異様なのだ。テレビのアナウンサが嬉しそうに高温を叫んでいたが、先日のホームゲームから移動を含めて中4日と言う悪条件も加わり高温順応もままならない日程。日本選手も暑さに苦しんでいたが、オマーンの選手も同様に苦しそうだった。せめて2日のホームゲームを1、2日繰り上げるような工夫はできなかったのだろうか。
 さらに、この報道が真実だとしたら、何とも悲しい話だ。霞を食っては生きられないのも確かだが、それは程度問題であろう。日本協会は、ただでさえ異様な過酷日程問題を放置しているのみならず、個別の事態を悪化させる事さえも阻止しようとていないのだろうか。

 異様な環境下、日本の試合への臨み方は悪くなかったが、進め方には課題があった。この試合は「負けない事」が優先されるべきだったが、どうもチーム全体として「勝つ事」が優先された感があった。
 立ち上がりから、遠藤を軸に、各位がボールを受ける前に次のコースを意図したボールの受け方をして、素早くボールを回す。失点前に俊輔のスルーパスから玉田が抜け出した場面は秀逸だった(それにしても玉田は、この年齢になって、あの得意の角度に抜け出してシュートをGKにぶつけているようでは困るのだが)。この試合への臨み方は正しかったと思う。
 しかし、両サイドバック、両ボランチが全体に押し上げ過ぎなのは感心しなかった。サイドにロングキックを蹴られると、闘莉王か中澤がそれに対応する際に、中央が薄くなるのだ。失点時のFKも、闘莉王が左サイドに引き出され、やらずもがなのファウルを提供してしまったもの。中央が厚ければもう少し冷静な対応ができたのではないか。そのような意味では、長谷部ではなく今野か啓太を起用して後方をより厚くして試合に臨むべきではなかっただろうか(おそらく、岡田氏はホームでいきなり2点を取ってしまったので存分に機能性を確認できなかった長谷部−遠藤のドイスボランチを試したかったのかもしれないが)。
 と言う事で、先制する事よりも、先制されるのを防ぐ事が第一義となるべき試合だったが、全くの逆の展開。ただし、救いはその先制点があまりに早かった事。あれだけ時間が残っていれば、いくらでも攻め返す時間は残っている。と言う事で前半はボールをよく回しての猛攻が継続する。
 しかし、相変わらずサイドバックとボランチが揃って上がってしまい、逆襲を食らうのには感心しなかった。前半半ば俊輔がペナルティエリア外で倒されるも主審がファウルを取らなかった場面、チーム全体が「ファウルもらった」と止まってしまい、食らった逆襲速攻はかなり危なかった。ボールを保持して振り回しているのは日本だし、大久保や中澤が決定機を掴んでいたから、いつかは崩れるだろうとは予測されたが、非常に苦しい状況で前半を終えた。
 
 後半に入り、岡田氏より「両翼を意識せよ」との指示が出たのだろうか、日本は攻勢を強化する。そして、複数回の好機を掴んだ後、中央からの崩しで長谷部のパスを受けた玉田を余らせる事に成功、見事にPK奪取。4年前の埼玉での俊輔のこのGKへのPK失敗を思い出したら、蹴るのは遠藤だった。
 直後、駒野のクリアミスが敵に当たってこぼれた所で、闘莉王が裏を突かれPK。このように一瞬の対応が遅れるのは暑さのためかもしれない。しかし、冒頭述べたように、これを楢崎が止めてくれた。予選と言うものは、様々な事態が起こるものであるが、このPKストップは今回の予選のハイライトの1つとして語り継がれるもかもしれない。
 以降日本は落ち着いたペースで攻め込む。そして大久保の退場劇。もういい歳なのだから...
 幸い敵DFが挑発に乗り、痛み分けになったからよかったようなものの、あの場面で10対11になっていれば、これまた相当辛い事になっていただろう。
 それにしても、大久保の離脱は痛い。残り2試合で4次予選に向けてのチーム構成を固めると言う考えからすると、高原も前田遼一も計算できない現状で、唯一最前線の軸として期待できそうな男がこれでは。と言うよりこういう男なのだよね、こいつは。これについては別途。
 その直後、岡田氏は松井に代えて山瀬を投入。これはこれで攻撃を活性化したが、この後の日本の試合の進め方はよくなかった。単純なノーガードの攻め合いになってしまった。ここは岡田氏は、啓太か今野を投入し、中盤でボールを奪取するなり、(「あまり無理をするな」と言い聞かせて)憲剛を入れてキープする時間を増やすなりして、試合を落ち着けるべきだった。楢崎、中澤、闘莉王がいれば、そうは失点しないのは確かだが、前半同様の交通事故はあるはず。
 しかし、岡田氏もチーム全体も強引に勝ち点3を狙いにいったようだった。まあ、それはそれで全否定はしないけれど。

 このような消耗戦では、誰が突然動けなくなるかわからないので、あまり早くカードを切るのは得策ではない。その意味でギリギリまで交代カードを我慢したのは理解できるし、またチーム全員が最後まで走りきった体調維持の見事さにも感心する試合ではあった。結果的には、必要な勝ち点1を獲得したし、チームの連携も一歩向上し先につながる試合もあった。
 しかし、もう少し守備を固めて、確実に勝ち点1を取りに行くべきじゃなかったんですかねえ、岡田さん。
 まあ、いいや。これで来週のバンコクがタノシミになりました。私も行きます。
posted by 武藤文雄 at 23:23| Comment(17) | TrackBack(1) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> テレビのアナウンサが嬉しそうに高温を叫んでいたが、

余計な情報が多くて、うるさい実況でしたねえ。「なんという」がやたら多くて大げさだし、「日本はこの試合に勝てば……」も何回言ったことやら。

ただでさえ、拡声器とチャルメラの応援でやかましいんだから、実況も解説も、もうちょっと落ち着いて、ボールと人の動きを追ってくれないかな。
Posted by 神社米価 at 2008年06月09日 01:16
ドイツ大会の直後に伊東武彦氏(元サカマガ編集長)に話を伺う機会があったのですが、
どうも日本協会の人々は「猛暑は日本に有利」と認識しているようなんですね。
#だからジーコが暑さを言い訳に使うとは思わなかった……というオチなのですが。

代表スタッフのコンディション調整能力に絶大な自信を持っていて、相手よりも先に
足が止まることはないと考えている。だから安心して真昼間に試合をさせられるし、
岡ちゃんも勝点3を取りにいけると。こういう認識である以上、死人でも出ない限り
現状は改まらないんじゃないかなぁ。
タイ戦も夕方ゲームですよね。
Posted by masuda at 2008年06月09日 02:54
電通やTBSも最低ですね。

楢崎も最高でしたが、退場者を出させた松井も非常にクレバーで、さすが海外でやってるなと思いました。あそこ11対10だときつかったですから。

大久保はGKに股間を蹴られたキレたみたいですが、本当に反省してほしい。しかし彼の力は必ず必要です。
Posted by at 2008年06月09日 07:04
>これについては別途。

寿人や久保を招集、などと言い出さないでくださいね。
Posted by k at 2008年06月09日 09:02
大久保は、Jリーグの試合(岡田主審のときを除く)では結構いい子にしているのですけどね。
彼をいい子にさせるには孫悟空の頭の輪の緊箍児よろしく、腕章をまかせるしかないです。神戸ではそれが非常にうまくいっています。
Posted by ZEN note at 2008年06月09日 09:47
うーん・・・。
敵地でしかも酷暑という条件だったとしても・・・。
ほんといいのでしょうか・・・。

わからない。
ジーコが悪くて今の監督を擁護するのは・
Posted by あらら at 2008年06月09日 09:56
>駒野のクリアミスが敵に当たって

この手の失敗が駒野には多いですね。これはケアレスミスではなくキックの時にずっとボールをみていないと蹴れないという技術上の構造的問題でしょう。

>一瞬の対応が遅れるのは暑さのためかもしれない。

これまた暑さのためではないと思われますが。闘莉王の歩幅が中澤のそれに比べて広すぎること注目すべきです。あれでは敵の切り返しについていけません。歩幅が広いということは細かな重心移動についていけないからです。実際PKがとられた場面では敵のちょっとした方向変換についていけてないし、それはJリーグでも闘莉王の欠点として普通にみられる部分です。
Posted by at 2008年06月09日 10:06
ジーコの時は過酷な条件だからどんどん交代しろと言っていたのに岡田だと動かなくても許すんですか?
評価基準は一定にしてほしいです。
オールオッケーかボコボコに叩くかの二択なのはサッカーを見るプロとして恥ずかしいですよ。
武藤さんの講釈は大好きなので少し残念です。
Posted by mase at 2008年06月09日 13:41
>kさんへ
寿人が招集された模様です。ソースはニッカン。

あと久保のゴール↓
http://jp.youtube.com/watch?v=wzR1jPEW-PY
Posted by mm at 2008年06月09日 15:30
状況が状況なだけにあまり突っ込みたくはないですが決定期に外しすぎました。
チャンスじたいは普通に作れてたので、もうちょっとしっかり決めないと。
FWにヘッドの強い選手が欲しくなる試合でしたね、巻はやはり不調なのか?

今野や山瀬は岡田さんのお気に入りですが、ポジショニングは上手くないので
中盤で使うのはどーでしょうかね?二人ともスペースがあると生きるけれど
密集には弱いのでこれからも使いずらい選手になるでしょうね。
今野の守備は奪取能力の高さにあるけれど啓太と比べるとポジショニングが悪いので
啓太を優先的に使って欲しいです。
Posted by at 2008年06月09日 17:34
啓太のコンディションがどの程度戻っているのかも気になりますが、俊輔、松井、遠藤、憲剛、啓太、長谷部をうまくブレンドして使って欲しいですね(最終予選まで)
土曜日に関しては、決めきれれば良かったですが、まああまり高望みしなくてもいいかなという試合でした。やや、危なっかしい重心の置き方(前掛かり)でしたが、その狙いはピッチで表現できているので、そうしたいのならそれも悪くないだろうと
キリン杯以降の代表は、遠藤-俊輔という軸ができていて(遠藤が俊輔に気持ちよくプレーさせようという、おぜん立てがうまくいっているようです)局部的な苦境や流れの悪さにも苛々せずに観られます。この軸に憲剛や啓太が絡んでほしいですけどね
ところで……。オシム翁は遠藤のPKのときもTVの前から姿を隠していたんでしょうかねえ。どうでもいいですが、ついその姿を想像してしまいました
Posted by Dortmund06 at 2008年06月09日 18:06
先週のサカマガかなんかで、大久保は「このチャンスを逃したくない」って言ってたくせに・・・。愚か者とは彼のことですよ。なまじ才能があって周囲がおだてるものだからああなるのでしょう。小嶺先生にもう一度鍛えてもらったほうがいい。W杯3次予選でオマーンが相手じゃ、切迫感が足りないのでしょうね。
Posted by john at 2008年06月09日 22:05
>mmさん
寿人招集は飛ばしだったようですね(ソースは寿人公式
技術委員長が候補として挙げたのをニッカンがフライングしたんじゃないでしょうか。

>これについては別途。
正直、寿人がいない場合非常に困るので勘弁して九ださい・・・
あと、久保はタイ米が不味いという理由で行かない気がしますw
Posted by yuki at 2008年06月10日 03:27
オシムが席を立つのは延長が終わっても決着がつかない場合のPK戦の時ですよ。
試合中のPKでいなくなるわけがない。
Posted by beat at 2008年06月10日 10:10
後半は涼しくなったのか、明らかに全員の動きがよくなりました。選手を見ている限り、集中力も保っており、消耗戦というような感じではなかったように思います(むしろオマーン選手はキツそうだった)暑いからといってジーコのケースと同じではないです。
過去記事との単純比較でなく、自分が試合の流れをどう見たのかをベースにコメントしたいものです。
Posted by at 2008年06月10日 10:52
>オシムが席を立つのは延長が終わっても決着がつかない場合のPK戦の時ですよ。

わははは!そりゃそうですね。間抜けな感想ですみません
いや、あのPKをライブで観ないのは損だな〜という気持ちでおかしなコメントをしてしまいました
Posted by Dortmund06 at 2008年06月10日 15:19
>オシム翁は遠藤のPKのとき

スイスとの一戦では、PKの場面になったら「キャッ」という感じで慌てて目をつぶって
耳を塞いでましたね
そのあと恐る恐る通訳の方に「決まったか?」という風に尋ねて、確認したあと
腕を組み直し、元の威厳ある姿に戻りました

思えばあれはオシムジャパン屈指の名場面でしたね
Posted by at 2008年06月10日 15:29
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