2023年01月03日

新潟医療福祉大のオナイウ情滋を楽しむ

 ベガルタに入団するオナイウ情滋が所属する新潟医療福祉大が、元日に行われた大学選手権決勝戦(対桐蔭横浜大)に進出。国立競技場で観戦した。情滋応援団として、ベガルタサポータの仲間たちと一緒に応援できたのも楽しかった。さらに偶然、我々の席のすぐそばに、新潟のジェフ入団決定済みの小森飛絢を応援するジェフサポの方もいて、それも嬉しかった。
 大学サッカー観戦は久々、1試合だけの観戦で大学サッカー云々と語るのは危険なので、あくまでも大学トップレベルの1試合を見ての感想について講釈を。

 一言で言って、相互の狙いが、とにかく単調なのに驚かされた。
 お互い、中盤でつなげる技巧もタイミングの理解もあるのに、負けるのを怖がってか、縦にロングボールを蹴ってしまう。一方、守備側は裏を突かれるのを怖がり、ラインを上げ切れない。結果的に不正確なロングボールが両サイドに飛べば、それなりに好機となる。
 そうこうしているうちに、前半、FK崩れから情滋がミドルシュート、敵DFに当たったこぼれを大柄なストライカの田中翔太が詰め、新潟が先制。情滋のシュートは、少々当たり損ね感があったが、とにかく枠に飛んでいたのだから、よしとしようか。
 直後、左サイド(新潟から見て)を崩され中央混戦から同点とされる。桐蔭の2トップはフロンターレ行きが決まっている山田新(川崎ユース出身、来季から出戻りが決まっているわけだな)と、ホーリーホック入りが決まっている寺沼星文。ペナルティエリアにボールが入ると、この2人のボールコントロールがよく、それだけで好機を作られてしまう。序盤から左サイド(新潟から見て)で巧みな位置取りをする井出真太郎(横浜Mのユース出身)への対応に苦慮していたが、完全に崩されてしまった。
 その後、新潟はサイドバック神田悠成のロングスローを、CB秋元琉星がすらしCB二階堂正哉が決めて突き放す。3人とも青森山田出身なのには、なるほど感がありましたが、とにかく、2-1で前半終了。

 新潟は後半序盤は、リードして落ち着いたのだろう。短いパスを中盤でつなぐようになる。特に左サイドで丁寧につないで、桐蔭守備をひきつけてサイドチェンジ。情滋がフリーでボールを受け、幾度か好機を作る。もっとも、情滋はフリーのミドルシュートが枠に飛ばなかったり、中央突破を試みながら身体を入れ損ね簡単にボールを奪われるなど、ベガルタサポータからすると「おい、こら」と言う場面も見受けられたw。いや私が「もっと、がんばらんかい!」と思わず語ると、周りのベガルタサポータの方々が、楽しそうに失笑してくれたけれどw。
 ところが、新潟は後半半ば以降、勝ちを意識したのだろうか、落ち着いてつなぐことがなくなり、再び縦パスに頼ることになってきた。そうなると、結果的に桐蔭に簡単にボールを渡し、幾度も攻め返されることになる。上記の通り、桐蔭の2トップは技巧も持ち堪えも巧み。簡単に桐蔭にボールを渡し、前線に差し込まれると、それだけで危ない場面となってしまう。そうこうしているうちに、75分過ぎに同点とされる。
 同点となれば、少しは落ち着くかと期待したが、その後も同様の展開。新潟が単調なロングボールを蹴り、そこから桐蔭が好機をつかむ時間帯が継続する。それでも試合は同点のまま進み、アディショナルタイム。桐蔭の決定機を新潟GK桃井がファインセーブ、その直後のCKもしのぎ、桃井のゴールキック。ここでまったく時間は残っていないのに、桃井は単純にロングボールを蹴ってしまう、それを跳ね返され、桐蔭の逆襲速攻、エース山田に強烈な一撃を食らった。試合運びとすれば、あまりに稚拙。若い学生チームとすれば、やむを得ないのだろうか。
 桐蔭関係者(川崎や水戸の関係者もそうでしょうが)からすれば感動的勝利だったことでしょう。新潟関係者としては、たまったものではありませんでしたが。

 オナイウ情滋は、ボールを持てば多彩な攻撃の起点になれる。強引に縦に抜け出した直後、少々体勢が悪くとも高精度の右クロスを上げることができる。敵DFがウェイティングしようとすると、「縦に抜け出すぞ」と脅しDFの腰を引かせた上で、中に切り返したり、周囲にパスを出したり、色々な変化も作れる。また、右足のインフロントキックで蹴るプレイスキックも魅力的。球足は速いし、相当カーブもかかるし、精度も中々だった。しかし、少なくともこの試合ついては、ボールに触る回数が少な過ぎた。もちろん、桐蔭も情滋を相当警戒していたのは間違いない。しかし、エースなのだから、もっともっとボールにからみ、勝利に貢献しようとすることは責務のはずだ。情滋本人の受けのアイデアと周囲への要求それぞれに課題があったのだ。大学サッカーでの最後の最後の試合で、情滋はそこまで自分を活かすための工夫までは築き上げることができなかった、と言うことなのだろう。
 さらに言えば、守備面での不満も多かったのだが、まあいいや。まずは得意のプレイの頻度が少なかったことが課題だな。そして、この決勝戦程度しか、攻撃面で貢献できなかったのを見ると、ベガルタですぐに定位置を奪ったり、効果的なプレイをするのは簡単ではないように思える。

 などと、若い選手に愚痴を語るのは、何とも言えず楽しい。願わくば、私の見立てがはずれていることを。まずはしっかり休み、気持ちも体調も整え、キャンプに向かって下さい。
posted by 武藤文雄 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月01日

アルゼンチンと我々の差

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 クロアチアに敗れて、約1ヶ月が経ちました。未だ悔しくて悔しくて仕方ありませんがが、頭の整理もようやくついてきました。様々な思いを整理して講釈を垂れていきたいと思います。
 ドイツとスペインには勝てたが、なぜクロアチアに勝てなかったのか。2次ラウンドで勝ち続けるために、何が足りないのか。ここまで戦い、ここまで近づけたから具体的に理解できたことが多数あります。年始第一弾の講釈は、優勝したアルゼンチンと我々の差について講釈を垂れたいと思います。

1. アルゼンチンの謎
 本当に興奮する決勝戦だったとは思う。そして、PK戦まで見据えて粘り強く戦い切ったアルゼンチンの強さには恐れ入った。しかし、アルゼンチンはもう少しうまく戦っていれば、あそこまで苦戦せずとも勝てたのではないか、と思えませんか。もちろん、世界一奪回がチラついたところで2回追いつかれながら、PK戦用の交代カードを残し、丹念に勝ち切ったのは、すごかったけれど。
 この超大国は、半世紀足らずの間に、ディエゴ・メッシと、ペレと並ぶスーパースターを2人輩出した。そして、ワールドカップごとに毎回、優勝候補と目される強力なチームを送り込みながら、再度の戴冠まで36年の年月がかかった。
 本稿では、この超大国の決勝戦と世界王者奪還までの36年を振り返った上で、我々との決定的な差について講釈を垂れたい。

2. 決勝前半、アルゼンチンの圧倒的攻勢
 決勝前半のアルゼンチンの美しさをどう語ったらよいのだろうか。
 フランスの弱点、エムバペの守備の弱さを突き右サイドから攻撃を展開。時に中盤や最終ラインに戻し揺さぶりを加える。フランス自慢のチュアメニとラビオが、まったくアルゼンチンのパス回しを妨害できない。結果的にメッシに自由なボールタッチを許す。そう言った流れから、フランスの守備を右サイドに引き付けておいて、左サイドに展開。そこには、大外に開き全くフリーのディ・マリアがいた。フリーで加速したディ・マリア、いくらヴァランでもまったく対応できない。フランスが対応に苦慮しているうちに、前半半ばで2-0。
 デシャン氏は、前半終盤にジルーとデンペレを外して、テュラン倅とコロムアニを起用し、何とか前線両サイドからの守備を整備、これ以上点差を広げない策を選択するしかなかった。
 しかし、後半に入っても展開は変わらず。フランスは攻め込んでもシュートに持ち込むことすらできない。一方アルゼンチンは幾度も速攻から好機をつかみ、ロリスとヴァランがかろうじて防ぐ展開が続く。
 ワールドカップの決勝は、案外一方的な試合となることは多い。敗戦国が決勝進出までにエネルギーを使い切ったり、体調不良だったり、極端な不運に襲われたりしたためだ。82年のイタリア3-1西ドイツ、98年のフランス3-0ブラジル、02年のブラジル2-0ドイツなど。前回18年のフランス4-2クロアチアも、クロアチアに考え得るすべての不運が重なったような試合だったが、一方的な展開となってしまったのは記憶に新しい。
 この決勝も、そのような試合になると思われた。終盤までは。

3. 決勝終盤、アルゼンチン動かず
 70分過ぎ、デシャン氏が、グリーズマンを下げコマンを投入したことで、フランスが知性や技巧で崩すのをあきらめ、強引な突破に僅かな望みを賭けたのがわかった。こうなると、アルゼンチンは、単純な強さや速さにやられない対応(交通事故防止)が必要となる。具体的には、フレッシュな選手を投入し、マイボールの時間を増やす、フランスの後方選手へのプレスをしっかりかけて精度の高いボールを入れさせないなど。しかしエスカローニ氏は動かない。そうこうしているうちに80分過ぎ、交通事故が発生した。エムボマの縦パスをコロムアニが追うが、アルゼンチンCBのオタメンディが先にコースを押さえていたにもかかわらずミス、コロムアニに裏を突かれPKを与えて1点差。さらに交通事故が連続する。中盤でメッシがボールキープしたところを奪われたにもかかわらず、修正が緩慢。一番許してはいけないエムバペの裏突破で同点。
 残り時間はあと10数分。先方は単調な攻撃に終始。そして、交代枠は4枚残っている。もうアルゼンチンは36年振りにカップに手が届きつつあった。それなのに、エスカローニ氏は交代策をとらず、みすみす同点を許してしまった。ピッチ上の選手達も、丁寧さがなくなり単調な縦パスに逃げるケースが増えてくる。結果として、同点後もフランスの強引な攻撃が奏功し、90分のうちに逆転弾を浴びてもおかしくない場面もあった。もちろん、アディショナルタイムのメッシとロリスの戦いは素晴らしかったけれど。
 エスカローニ氏も、さすがに延長前半までに3人を交代させ、108分についにメッシが決勝点。
 またもアルゼンチンは、あと10分ちょっと守り切れば状況となる。しかも、デシャン氏は113分まったく動けなくなったヴァランも交代。ヴァラン、グリーズマン、ジルー、フランスの知性を象徴するタレント達は、皆ピッチから去った。デシャン氏にはこれ以上の交代カードはなく、ピッチ上のフランスの選手達は疲弊しきっている。しかし、アルゼンチンは、引くでもなく、中盤で止めるでもなく、曖昧な戦い方をする。最前線のタッチライン沿いでボールキープする時間帯もあったが、フランスを苛立たせるようなボールキープも行わないし、残った交代枠を活かすでもない。CK崩れからハンドを取られたのは相当な不運だったが、やりようはもっとあったはず。例えばそのCK直前に守備固めでペッセーラを起用したが、もっと早くにこの交代を行っていれば、そのCKを与えることもなかったのではないか。
 その後も両軍は単調な攻め合いに終始。120分過ぎにはコロムアニの超決定機をマルティネスの超ファインプレイでかろうじてしのぐ場面も許した。その直後のアルゼンチン決定機獲得と合わせ、野次馬として見ている分にはおもしろかったですから、文句を言うのは筋違いかもしれませんがね。
 我々は最終的に、PK戦でマルティネスがファインセーブを連発し、120分過ぎに起用されたディバラを含め延長に入ってから起用された選手達が見事なPKを決めたのを知っている。結果論からすれば、エスカローニ氏は、PK戦を得意とするGKを抱え、最終盤にPKが得意な選手を起用、最後の最後のPK戦での勝利を含めて采配を振るったように見える。底知れぬ二枚腰三枚腰、いや十枚腰くらいの奥深い勝負強さも感じた。しかし、2-0でリードしていた後半、3-2でリードしていた延長後半、それぞれに選手交代を含めて守備を再整備さえしていれば、もっと楽に世界制覇に至ったのではないか、と思わずにはいられないのだ。

4. 準々決勝オランダ戦の稚拙さ
 考えてみれば、準々決勝オランダ戦の終盤の稚拙さも相当だった。前半メッシのラストパスからモリーナが先制、73分アクーニャが倒されたPKをメッシが決め2-0。オランダは好機すらつかむことができずにいたので、パワープレイを選択。83分に失点し1点差となったものの、およそ追いつかれる雰囲気はなかった。しかし、残り僅か10分の間にアルゼンチンは軽率なプレイを繰り返す。89分バレデスがオランダベンチにボールを蹴り込み、退場になってもおかしくない無意味なプレイ。さらにオランダの同点弾を産んだFKは終了1分前にペッセーラが全く不要なファウルで与えたものだった。攻め込まれて苦し紛れのファウルに逃げたのではない、まったく行う必要がないファウルで苦しい場面を招いたのだ。
 ところが、アディショナルタイムで追いつかれると言う衝撃的な状況に追い込まれたアルゼンチンは、延長に入って立ち直る。チーム全体で落ち着いてボールを回し、オランダに好機すら与えない。そして112分に起用したディ・マリアを軸に猛攻をしかけ幾度も決定機をつかむが決め切れずPK戦へ。しかし、決定機をつかみながら勝ち切れなかった精神的ショックを一切感じさせず、皆が落ち着いてPKを決め続けての勝利。

5. アルゼンチンの36年
 アルゼンチン代表の歴史を振り返る。
 アルゼンチンは、78年地元大会にケンペス、パサレラ、アルディレスらを軸に美しい攻撃的サッカーと紙吹雪大観衆で初の世界王者に輝く。この国はそれ以前はワールドカップの成績は大したことはなかった。1930年の第1回大会で準優勝以降、ベスト4に残ることすらなかった。ディステファノを筆頭に高名な選手を輩出し続けたにもかかわらず。けれども、地元で初戴冠し、前後してディエゴ・マラドーナが登場、以降この超大国は世界一に拘泥し、常にワールドカップに強力な代表チームを送り込む。
 82年は前回優勝メンバにディエゴが加わったがチームとしてのバランスが悪く、イタリアとブラジルに完敗。
 86年はディエゴの神の手や5人抜きなどの伝説的神技で2回目の戴冠。
 90年は、ディエゴを含め負傷者続出の中、2次ラウンドでブラジル・旧ユーゴスラビア(オシム監督でエースはピクシー)、地元イタリアを下し、決勝進出。決勝で0−1で西ドイツに苦杯するが、決勝点は怪しげな判定からのPKだった。
 94年はシメオネやバティストゥータと言った若いメンバにディエゴが加わる布陣で、1次ラウンド2連勝でスタートするも、ディエゴに薬物反応が出て大会から追放され、2次ラウンド1回戦でハジ率いるルーマニアに完敗。ディエゴの時代は終わる。
 98年は初戦で我々も手合わせ、2次ラウンド初戦でイングランドをPK戦で振り切る。続く準々決勝オランダ戦、終盤にオルテガがGKファンハールの挑発に乗ってしまい退場、直後ベルカンプの芸術弾に散る。
 02年は1次ラウンドでイングランドに敗れたものの、最終戦のスウェーデン戦に勝てば2次ラウンドに進出できたが、強引で単調な攻めに終始し引き分け敗退。
 06年は準々決勝のドイツ戦後半序盤に先制しほとんど好機すら与えない展開。ところが早い段階でGKアボンダンシエリが負傷交代、ワンチャンスをドイツクローゼに決められ追いつかれ、PK戦で敗れる。
 10年はディエゴを監督にすると言う自暴自棄策に出るが、まあ誰もが予想した通り失敗。アルゼンチン協会も毎回毎回最強クラスのチームを送り込んでは早期敗退と言う悪い流れを断ち切ろうとしたのかもしれないが、いくら何でも無茶だった。
 14年は基本に立ち返り、攻撃はすべてメッシ、後ろはすべてマスケラーノと言うチームを作る。ところが決勝は、メッシの副官として変化をつかさどるディ・マリアの負傷もあり、決勝でドイツに延長で惜敗。
 18年は、マスケラーノの衰えが顕著で、チームのバランスがとれぬうちに、2次ラウンド初戦でフランスと当たり沈没。

6. アルゼンチンの「勝負強さ」
 こうやって振り返ると、86年ディエゴで優勝した以降、この超大国は毎回のように優勝候補と言えるチームを送り出している(10年と18年はちょっと弱かったかな)。しかし、90年と14年しか決勝進出できていない。とてもではないが、「勝負強い」とは言えないではないか。
 我々はアルゼンチンと言うと、時にアンフェアなプレイをしても戦い抜く勝負への執着に感心し、安易にしたたかで「勝負強い」と思い込んでいただけなのではないか。より正確に表現すると、彼らの「勝負強さ」にはムラがあるのだ。
 決勝フランス戦。80分までの見事なサッカー。それ以降の延長戦を含んだ時間帯、交代策が後手を踏み、お互いノーガードの打ち合い。PK戦での氷のような冷静さ。
 準々決勝オランダ戦。80分までの見事なサッカー。それ以降の後半終了までの時間帯、各選手がラフプレイを連発し自滅の同点劇、延長とPK戦での氷のような冷静さ。
 つまり、頭に血が上がってしまい冷静さを失う時間帯があると言うことだろう。それも監督含めてチーム全体で。しかし、延長戦に入る、PK戦に入るなど、一旦落ち着く機会があれば、彼らは冷静さを取り戻す。

 それにしても、あれだけ冷静に戦える戦士たちが、何故あれほど冷静さを欠いてしまうのか。おそらく、「勝ちたい」と言う執念が強過ぎるからではないか。だから、チーム全体で頭に血が上がってしまうのだ。ともあれ、メッシとその仲間達は、頭に血が上がった時間帯もあったが、肝心の場面で氷のような冷静さを取り戻し、36年振りにワールドカップを取り戻した。
 このカタールワールドカップ、我々はドイツやスペインを叩きのめし、クロアチアをあと一歩まで追い詰めた。もはや目指すは世界一である。ワールドカップ制覇は、決して簡単な道のりではないし、少なくとも62歳の私が生きているうちに実現することはないだろう。
 しかし、世界一を目指すためには、世界一の国から学ばなければならない。そして、36年振りに世界一を奪還したこの超大国の戦士達は、氷のような冷静さを持っているにもかかわらず、冷静さを失う程「勝ちたい」との執念で戦っていた。我々とアルゼンチンの差はこの執念だ。
 世界一を目指すために、我々がこの異様な執念を身につける必要はないかもしれない。しかし、アルゼンチンのような超大国が、我々とは格段に異なるこのような執念の下で戦っていると冷静に把握するのは、世界一を目指すために必須のはずだ。
posted by 武藤文雄 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月31日

2022年10大ニュース

 恒例の10大ニュースです。カタールワールドカップについて、まだ何も書けていないので迫力に欠けることこの上ないのですが、今年の重要事項を自分なりに整理しました。11、12月にワールドカップを堪能してしまうと、あまりにその影響が強すぎるのですけれど、何とかまとめました。

1. 日本代表ベスト8 ならず

 できればこの正月休みのうちに、日本代表についても、ワールドカップ全体についても、まとめたい。

 今はただ、クロアチア戦の苦杯は、とにかく悔したかったと言うことだけ。今回こそは、今回こそは、と思ったけれど勝ち切れず。とにかく悔しい。繰り返すが悔しい。何度でも言うが悔しい。ドイツやスペインはやっつけたけど、悔しいのだ。

 一方で。今は私は62歳、何となく大会前から、死ぬ前に一度はベスト4を体験できるのではないかと思っていた。そして、それを希望ではなく、確信できたのがこの大会かなとは思う。たとえ、それが錯覚で自惚れだとしても。

 でも、延長前半の三笘のシュートが、もう少しポスト寄りに飛んでいればとは思うけれど…

2. ヴァンフォーレ甲府の日本一

 日本で最も歴史の古いクラブチームの一つ、ヴァンフォーレ甲府が天皇杯制覇、初めての日本一の栄冠を獲得した。歴史的偉業と語られ続けるべきだろう。

 甲府の前進の甲府クラブの事実上の設立は1965年と言う。甲府クラブは1972年のJSL2部設立時に参加以降、常にJ1、J2、JFL、JSL2部のいずれかで戦っている。設立は読売クラブより古く、継続的に活動している純粋なクラブとしては神戸FCと並ぶ歴史を誇る。もちろん、日本中にあるいわゆる学校のOBチームで、より古い歴史を持つクラブはあるかもしれないが、トップリーグで高い続けている歴史は圧倒的だ。特に90年代後半、プロ化を決断した直後に大きな経営危機を迎えるが、関係者の血の滲むような努力で回避。人口が決して多くない地方クラブとして自立に成功。さらに複数年にわたりJ1で戦うなど、日本中の地方クラブの象徴とも目標とも言える存在となっている。

 またカタールで戦った日本代表のエース伊東純也は、甲府でプロのキャリアをスタートさせたことも特筆されるべきだろう。

 その甲府が天皇杯制覇。それもサンフレッチェ広島と戦った決勝の勝ち方が鮮やかだった。先制に成功するが終了間際に追いつかれて延長に。延長でも丹念に守っていたが、116分にチームのレジェンド山本英臣が痛恨のハンドでPKを与える。そのPK河田晃兵が止めPK戦に。PK戦で最後に山本が決めると言う劇的勝利。

 来シーズン、甲府はACLを戦える。「J2で苦しい戦いになる」とか「ACL出場権をカップ戦王者に与えてよいのか」と、サッカーをわかっていない輩が余計なことを言うが、言いたい奴には言わせておけばよい。難しいシーズンにはなろうが、国際試合で戦う権利は、勝者にしか与えられないのだから。

 この決勝戦ですっかり悪役となってしまったサンフレッチェ広島。こちらは森保監督時代に3回J1制覇をしているが、カップ戦は幾度か決勝進出はあったが優勝はなかった(もっとも、前身のマツダ(東洋工業)時代には1960年代は複数回天皇杯制覇しているが)。今回も決勝で苦杯を喫し、「またか」感ががあった。しかし、1週間後に行われたルヴァンカップ決勝セレッソ戦、セレッソに退場者が出たこともあり、アディショナルタイムの連続得点での逆転勝利。劇的なルヴァンカップ制覇となったのも付記しておこう。


3. 横浜マリノスと川崎フロンターレの覇権争い

 ここ数年、優勝争いを演じている両チーム。今年は横浜Mが川崎を振り切った。疫病禍下でACLも合わせて戦わなければ難しいシーズン。

 韓国に快勝するなど実に気持ちよい優勝を演じてくれたE-1東アジア選手権の中軸は今年の横浜M、水沼宏太や岩田智輝の知性あふれるプレイはすばらしかった。老人としては、30歳過ぎて日本代表に到達した水沼宏太に、かつての水沼貴史の面影を見て感涙ものだったのだが。

 もっとも、川崎サポータはこのチームの中核は谷口彰悟だったと語り、カタールの日本代表は、谷口の他に、板倉滉、山根視来、田中碧、守田英正、三笘薫と川崎出身選手が中軸だったと主張するだろうが。

 リーグ戦が終わってみれば、この2チームの後ろに、新監督スキッベ氏が機能した広島が続き、監督問題で苦労したが優秀な選手を多数抱える鹿島が続いた。まあ妥当な結果なのかなとは思う。海外への選手流出が続くJリーグだが、丹念にクラブの経営規模を拡大し、丹念な強化を継続しているチームが常に上位をうかがっている。野心的に上位を目指す各クラブにも、適切な目標が提示されている形態は健全な状況に思える。


4. J2山形対岡山戦再試合

 J2モンテディオ山形対ファジアーノ岡山戦で、主審のルール適用ミスがあり、Jリーグ当局は再試合と裁定した。私はこの裁定が間違っていないとは思うが、サッカーのルールと裁定が非常に難しくなったものだと嘆息した次第。上記リンクは非常によく整理されており、経緯は以下だと理解できる。

 (1) 主審がルール誤適用をして山形GKが退場、山形は約80分間10人での戦いを余儀なくされ敗戦

 (2) Jリーグ当局がIFABに問い合わせたところ、「ルール誤適用の場合は『主審の試合決定が最終』とは言えない」と回答受領

 (3) ルール誤適用についてJFAもJリーグも規定なく、試合成否決定という重要事案なので理事会で議論し、再試合とした

 実はこの誤適用となったルール追加は約2年前のこと。キーパがゴールキックやFKをペナルティエリア内で蹴り、それがミスにつながり敵が決定的チャンスを掴んだ場合などに、キーパが他選手より先にボールに触ったら警告なり退場(退場はDOGSOのケース)と言うもの。一方で、バックパスを手で受けた場合は従来通り敵に間接FKが与えられるだけで警告も退場にもならない、とも同じ条項内で明記されている。そして今回は後者のケースにもかかわらず退場と誤適用してしまった。余談ながら、当時少年サッカーのコーチ仲間とこのルール変更が話題となり「そんな難しいこと、いちいち覚えてられないよねえw」と語り合ったものだった。

 まず、私のような年寄りは「前者だろうが後者だろうが、そんな稀にしか起こらないことはルール化せず、主審の判断に任せてしまえ」と言いたくなる。しかし、昨今のルールの考え方は、全世界で?極力判定基準を揃えようとするもの。結果的に、本件のようにやたら細かい項目を考慮してルール化することになる。ついでに言うと、得点や決定機の阻止の退場についてはDOGSOを満たした場合と条件を具体化したのも、審判の仕事をやたら難しくすることとなっている。私のような底辺の4級審判員には、あまり縁のない世界だが、トップレベルの審判の方々には同情を禁じ得ない。

 さらに、私のような年寄りは「主審の試合決定が最終であるべきだろう」と言いたくなる。しかし、ルールを詳細化することで、今回のように「後から考えたら誤適用」となるケースが出てくる。そうなると、「試合の最終決定を誤った判断をした主審に任せてよいのか」問題起こってしまい、今回のような騒ぎに発展してしまう。誤適用により主審の最終決定をくつがえす事例にはこんなことがあった(当時私も講釈を垂れた)。以降、ルールが一層複雑化しているのは言うまでもなく、このような事例が世界中で増えているのかもしれない。

 加えて、私のような年寄りは「さてJ当局は、このような誤適用がシーズン終盤日程に余裕がない時に起こったならばどうしたのだい?」と言いたくなる。しかし、これはただ私が性格が悪いだけのことだな。誤適用で不利益をこうむった山形が負けていた以上、Jリーグ理事会が当該決定をしたことは正しいのだろう。

 それにしても、厄介な時代になったものだ。


5. 名古屋グランパス虚偽報告

 名古屋は、保健所の指導がなかったにもかかわらず、活動停止の指導があったと虚偽報告を行い、チェアマンに7/16に予定されていた川崎フロンターレ戦を中止させた。後日、それが判明、Jリーグ当局からけん責と罰金200万円の処罰が発表された。

 上記リンクから、名古屋が行ってしまった虚偽報告と経緯を具体的に記載しば部分を抜粋するとおおむね下記となる(以下の抜粋では「名古屋グランパス」をすべて「名古屋」に読み替えた。
(前略)真実は管轄保健所から指導を受けたものではなく、名古屋の対応方針を是認されたものにすぎないのに、新型コロナウイルス感染者の多発により管轄保健所から同日から3日間の活動停止の指導を受けた旨をJリーグに報告し、チェアマンをして(中略)同試合の中止を決定させた。
 さらに上記リンクでは、名古屋の日程遵守義務回避疑念を厳しく追及している。
(前略)「Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」(規約第3条の2)においては(中略)各Jクラブが虚偽を述べないことが大前提となっているところ、本件名古屋の行為はこの前提を揺るがすものである。(中略)公式試合は予め一部のJクラブのみが不利な日程にならないよう調整して日程が組まれており、特別の事情がない限り変更され、または中止されないことが原則である(中略)。そのため、各Jクラブは公式試合の日程遵守義務を負っているところ、虚偽報告により安易に日程遵守義務を回避したとの疑念を他のJクラブ、サポーター等に抱かれかねない事態を招いたことは、Jリーグの信用を大きく毀損するものである。
 ただし、J当局の調査によると、情状を考慮すべき点もあるとのこと。
一方で、弁護士等も交えた(中略)への聞き取り調査に基づき、名古屋が虚偽の報告を故意に行ったとは認められず、(中略)名古屋側が示したチームの活動停止の方針に保健所側が異議を唱えず、(中略)他クラブの直近の事例からしても、当時の名古屋の陽性者の広がりからすれば保健所から指導があり得ると考えても不自然とはいえない。また、その後の調査によれば、(中略)当時、名古屋はエントリー下限人数をもともと満たせていなかったことが客観的に明らかであるために、虚偽報告の有無にかかわらず、結果的に開催可否判断への影響が限定的であった。
 以上より、譴責と200万円の罰金が妥当との結論になったようだ。弁護士を交えた客観調査で、チーム内の実情は感染者が相当数出ていた。そのため、虚偽報告がなくとも、最終的にチェアマンが試合中止を判断した可能性が濃厚だった。そのため、虚偽報告は論外だが、結果的には同じ結論に至ったと言うことらしい(いつも思うが、Jリーグ当局は、もう少しリリースをわかりやすく書いて欲しいのだがw)。ただし、今回たまたま対戦相手が、ACLにも出場し日程的に非常に厳しい戦いを演じていた相手が川崎だったこともあり、日程遵守義務を回避した虚偽報告は、川崎を含めた関係各部門にも相当な迷惑をかける事態だった。そのために性悪説をとなえ、名古屋が意図的に川崎戦を回避したのではないかとの揶揄も飛んだが、まあそれはなかったと言うことだろう。



 疫病禍下のリーグ戦を継続するのは、本当に難しいことが顕在化した事件と言えよう。J当局が上記の情状を考慮し、けん責と200万円罰金と言う処罰を決定したのも間違いとは思わない。本件については。

 しかし、昨年の10大ニュースの筆頭でも議論した浦和への意味不明の懲罰とのバランスがまったく取れていない。事務手続きのミスはあったものの、結果的に誰にも迷惑をかけていない浦和は試合をなきものにされた。一方、(結果論からもしれないが)虚偽申告で多くの関係部門に迷惑をかけた名古屋は200万円の罰金にとどまった。

 21年の浦和への裁定が間違っていたのだ。今からでもよい、Jリーグ当局は当時の誤りを認めるべきだろう。

6. ACLレッズ決勝進出と声出し罰金問題
 浦和レッズがACLの決勝に進出。

 それにしてもこのクラブの最近のカップ戦の強さには恐れ入る。15年天皇杯決勝進出、16年ルヴァン制覇、17年ACL制覇、18年天皇杯制覇、19年ACL決勝進出、21年天皇杯制覇、そして今回のACL決勝進出。20年は疫病禍が最も厳しい年だったので、天皇杯が特殊レギュレーションで行われたので例外的な年。そう考えると、毎年のように必ずカップ戦で決勝進出しているのだから、さすがだ。日本最大のサポータ集団に支えられた勝負強さとでも言おうか。実際、浦和のサポータの大声援はすばらしいと思うのだよね。もちろん、浦和サポータの友人と会話していると、彼らの悩みは深い。クラブの経済力を考慮すると、常にリーグ戦でも上位を争い、栄冠を掴むのを当然と思っているのだろうから。まあ、それはそれでステキな悩みですよね。

 ところが、そのサポータ集団の一部をクラブが制御できない残念な事案から、2000万円と言う多額の罰金が浦和に課せられた。一部のサポータがマスクなしで、複数回声出し応援を行ったと言うものだ。カタールワールドカップを典型例に、海外ではマスクなしでの声出し応援が許可されている。しかし、その是非はさておき、Jでは声出し応援は禁止されていた。これはJ当局に賛同せざるを得ない。J当局の裁定を抜粋しておく。
(前略)声出し応援の禁止等のガイドライン遵守をはじめとする秩序維持にはサポーターの強い自律が必要であって、クラブには、これを促すための不断の改善努力が求められる。短期間のうちに(中略)秩序を損なう行為を阻止できなかったことは重く受け止めざるを得ない。かかる状況はJリーグ全体への社会的信用の低下につながるものである(中略)、今後Jリーグも浦和と共に再発防止に向けて対応するものの、浦和が再び(中略)懲罰事案を発生させた場合、無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく。
 一部のサポータの暴走をクラブが複数回止められなかった事実は重い。これは前項で述べた昨シーズンの不合理な裁定とは無関係な話である。

 あのすばらしいサポータ集団の一部に困った人々がいる残念な事態、何とか解決してほしい。


7. ジュビロの国際契約違反

 事象としては単純だが、情報の多くが公表されていないので、非常にわかりづらい事件となっている。ともあれ、アジア王者となった実績もある歴史あるクラブが、事務手続きで決定的なミスを冒したわけで相当な事件である。

 ジュビロが契約したファビアンゴンザレスが、その前にタイの別クラブと契約していたとの疑惑が濃厚。結果的に二重契約を行なったジュビロが、FIFAから常に厳しい制裁の決定を受領。ジュビロが、それを不服としてCAS(スポーツ仲裁裁判所)に異議申し立てを行なった。ジュビロは、このリリースで、本件の詳細について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)における審理に影響を及ぼす可能性がございますので、回答を控えさせていただきます。と言及している。そのため、本件の経緯や詳細については、第三者の我々にはよくわからない。しかし、結果的にジュビロの異議申し立ては却下されたと言う。

 この手の二重契約を防止するために、移籍の際に国際移籍証明が徹底されている。ここで引用したのは、日本協会のものだが、当然ながら他国でも同様の対応がとられているはず。どこかで大きな間違いが生まれたのだろうが、よくわからない。起こしてしまったことはしかたがない。改めて、何が起こったのか、どこで間違いがあったのか、適正な情報公開を期待したい。説明責任としての責務もあるし、これが再発防止につながる。


8. サッカー中継の将来、ABEMA

 ワールドカップの放映権をABEMAが獲得したと聞いた時、「また新しい有料配信サービスにカネを払わなければならないのか」と思った。ところが、全部無料だったのには驚いた。考えてみれば、ABEMAで試合を見ている間、ハーフタイムや試合の合間には、そこから流れてくるCMを見ているのだから、民放テレビと同じではないか。「そうか配信サービスも無料での観戦は可能なのか」と改めて勉強した感がある。

 カタール滞在中は、把握できなかったが、本田圭佑氏らの若々しい解説が、ABEMAでは好評だったとのこと。帰国後、準々決勝以降ABEMAの配信を楽しんだけれど、提携しているTV局の優秀なアナウンサ、豊富な解説陣、何ら既存のTV局と変わりなかった。本田圭佑氏の解説は松本育夫氏、松木安太郎氏の系譜を継ぐ本能型の解説でおもしろかった。故岡野俊一郎氏を起点とする、岡田武史氏・反町康治氏・戸田和幸氏・中村憲剛氏の流派だけではつまらないからね。いや、NHKが拘泥してるサッカーの魅力を矮小化するアテネ五輪代表監督のような外乱が登場しない分、安心して楽しめたかな。

 冗談はさておき。我々はサッカー中継を見られればよいのであって、方式や媒体はどうでもよいのだと、改めて痛感した。今後のサッカー中継がどうなっていくのか、注視していきたい。


9. 山下氏ワールドカップ主審選考と女性審判のこれからと三笘の1mm

 ワールドカップの審判として、山下良美氏が選考された。

 山下氏はJ1及びACLの主審経験があり安定した判定は評価されているが、日本人の主審としてはトップとは言えない存在。また、大会では第4審を複数回務めたのみで、笛を吹く機会は訪れなかった。女性の優秀な審判と言うことでワールドカップの審判団に下駄を履かせた評価で選考されたが、現地での事前準備で笛を吹くところまでの評価を得られなかった、と言うことだろう。いささか失礼な評価となるが。ただし、女性審判と言う視点では、ドイツ対コスタリカをステファニー・フラパール氏を主審とする女性審判団が裁き、上々の評価を得た。

 性別にかかわらずサッカーに携わってくれる人が増えるのは大歓迎だ。副審の場合は瞬間的な守備ライン上下動や逆襲速攻に対応する必要があるため、脚力の面から女性のハンディキャップがあるかもしれない。しかし主審ならば、展開の予測や位置取りの工夫やトレーニングによる運動量確保で、極端に不利になることはないのではないか。女性でトップレベルの審判を目指す人がもっと増えて質の高い経験を積めれば、上記のような失礼な表現が不要となる時代も来るだろう。

 そう考えてみると、今大会話題になった画像処理による判定がトップレベルのサッカーに定着してくれば、女性副審でも脚力の弱点がカバーされる。個人的にはVARは相当改善の余地があると思うが(画像処理によるライン判定と、複数審判の連係による反則判断が、将来あるべき姿だと思うが)、技術の向上が間違いなく審判に必要な要素を変えていく。女性の審判進出もその一例だろうが、サッカーも変わっていくのだろう。
 その典型が、あのスペイン戦の三笘の神業だったのだろう。三笘の1mmと言う歴史に残る妙技を、新技術が支えてくれたのだ。


10. 高校選手権決勝、青森山田対大津の両監督

 約1年前となってしまったが。

 高校選手権決勝は青森山田対大津。幾多の名選手を輩出した大津が、はじめて選手権の決勝にたどり着き、この世代で圧倒的強さを誇る青森山田と対戦。非常に興味あふれる試合となったが、4-0と青森山田の完勝。大津はまともにシュートにすら持ち込めなかった。

 大津平岡和徳氏と青森山田黒田氏は日本のユース世代指導者としては代表的存在。平岡氏は巻誠一郎、植田直道、谷口彰悟、黒田氏は柴崎岳と言ったワールドカップ代表選手を育てている。

 平岡氏は、言うまでもなく帝京高校出身。高校選手権で創意工夫を凝らした采配で勝ち切ることに執念を燃やし結果を出してきた古沼監督の弟子にあたる。しかし、この決勝では、特別な工夫すら行わず、戦闘能力で優位に立つ山田にまともに戦いに行き、木っ端微塵に粉砕された形となった。およそ、古沼先生の弟子とは思えない淡白な采配だった。もっとも、平岡氏は、トッププレイヤの育成や選手たちの人間教育に主眼を置き、師匠と異なり選手権での上位進出には拘泥していないのかもしれないのかもしれない。

 一方で、このシーズンオフ、青森山田の監督を長年勤めていた黒田氏の町田ゼルビア監督就任が発表された。黒田氏率いる山田はプレミア、高校選手権など幾度も日本一を獲得、采配の実績は格段。また、青森山田中からの一環強化に見られる組織作りも相当の手腕。ユース世代の指導者として格段の成果を挙げていた黒田氏が、大人のクラブを率いるのは、大変興味深い。類似例としては、市立船橋で格段の成果を挙げた布啓一郎氏が思い起こされるが、トップレベルの指導者のキャリアメイクとしてどのようなことになるか、注視していきたい。
posted by 武藤文雄 at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年ベストイレブン

 どうしても、今年はカタールワールドカップのメンバが中心となります。ただ、東京五輪に続き、この大切な大会をベストで迎えられなかった冨安健洋は選んでいません。また、ドイツ戦とスペイン戦で見事な得点を決めた堂安律も、コスタリカ戦とクロアチア戦は不満なので選びませんでした。この2人への要求はこんなものではないのです。

GK 権田修一
 ドイツ戦、スペイン戦、難しい時間帯、よくもまあ守り切ってくれたと思います。細かい部分を言えば不満はありますが、やはり今年の日本のGKと言えば今年は権田でしょう。

DF 酒井宏樹
 クロアチア戦75分以降の知性の限りを尽くした戦いを見ると、やはり右DFはこの選手です。浅野の裏にボールを出すだけになった単調な攻撃に変化をつけようとした尽力は忘れられません。

DF 谷口彰悟

 ワールドカップでの大活躍は言うまでもなし。E-1東アジア選手権での圧倒的存在感も格段でした。予選でも麻也、冨安不在時に何も不安を感じさせませんでした。カタールでタップリ稼いでください。今まで、本当にありがとう。

DF 板倉滉
 スペイン戦の先制を許した痛恨のポジションミスはありました。しかし、それ以外はほぼ完璧な守備。もちろん、予選でのすばらしい守備も忘れられません。列強に対して、冨安との2CBで留め切る姿を見るのが楽しみです。

DF 中山雄太
 予選での充実を含め、メンバ選考された直後の重傷は本当に痛かった。森保監督は、3DFを採用しサイドMFに三笘薫を抜擢する奇策で上位進出を果たしました。しかし、中山がいれば、三笘をもっと前で使えたはずです。

MF 遠藤航
 カタール直前負傷の情報が流れましたが、大会が始まってみれば、俺たちの遠藤航でした。中盤でのタフなボール奪取、落ち着いた前進。何と頼りになることか。

MF 岩田智輝
 E-1東アジア選手権での活躍、J制覇への貢献を考えると、カタールの26人に入るのではないかと思っていました。横浜Mでは最終ラインで使われることが多く、Jの最優秀選手にも選考されたわけですが、一番魅力を発揮できるのはMFだと思います。セルティックでの活躍を期待。

MF 守田英正
 日本サッカー界がようやく作り上げることができた、攻守に戦い続けることのできるMF。イタリアの名手、タルデリ、デ・リービオ、ガットゥーゾを彷彿させるタレント。

FW 伊東純也
 2021年日本代表のエースは、2022年本大会もやはりエースでした。予選のサウジ戦の得点とアシスト。カタール本大会でも幾度右サイドをえぐってくれた事か。さらに3DFのサイドMFとして起用されると、シャドーに入った堂安と美しい連係も見せてくれました。

FW 前田大然
 2002年に鈴木隆行が見せてくれた日本伝統の守備的CF。あの献身がスペイン戦の逆転劇を演出し、クロアチア戦の先制弾を決めてくれました。他の国ではまったく考えられない異次元のストライカに育って欲しい。

FW 三笘薫
 ドイツもコスタリカもスペインもクロアチアも、皆三笘の突破を警戒しまくっており、それでも三笘は幾度も突破を成功させました。3DFのサイドMFで守備もあそこまで見事に演じられるのも驚きでしたが、もう少し前で攻撃に専念して欲しかったかなとも思います。
posted by 武藤文雄 at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月25日

富田晋伍との18年

 富田晋伍が引退する。
 18年間に渡り、ベガルタ仙台一筋で戦い続けてくれた戦士。ベガルタゴールド以外のユニフォームを着る事なくトップレベルのプレイを終える富田。言葉にならないほどの感謝を、微力ながら日本語化させていただきたい。

 富田のプレイは何がすばらしかったか。
 言うまでもなく、中盤でのボール奪取能力だ。ただし、この奪取能力が、独特の魅力を持っていた。常に中盤で位置取りの修正を行い、敵の進出経路を予測し、自らのプレイエリアに入ってきたところで躊躇せず身体を張りボールを奪取、常識的だが正確なパスで味方につなぐ。富田の最大の特長は待ち構えて躊躇せず奪いしっかりつなぐところにあった。
 ボール奪取を武器するMFには様々なスタイルがある。例えば遠藤航、自ら能動的にボール奪取のために飛び出し、身体を当て合い、ボールと敵の間に自らの身体を入れボールを奪取。そのまま強引に前進を継続する。例えば明神智和、豊富な運動量で敵に幾度もからみ都度攻撃を阻止し、ボールを奪うやあちらこちらに展開する。一方上記の通り、富田のスタイルは待ち構えて躊躇せず奪いしっかりつなぐやり方。似たスタイルの選手を探すと鈴木啓太だろうか。鈴木啓太の方がパス精度は高かったが、ボール奪取力は富田が上回っていたのではないか。躊躇せず奪うと言うとアルゼンチンのマスケラーノを思い出す。富田のパスの精度やタイミングは、さすがにこの南米の大巨人の足下にも及ばない。しかし、ボール奪取の妙は紛れもなくこの名人を彷彿させるものだった。
 富田はチーム戦術への柔軟性も高かった。ACLに出場した手倉森政権の頃は、分厚い守備からの速攻の起点となっていた。この頃は富田は敵からスッとボールを奪い、素早く梁勇基や菅井直樹や朴柱成にボールを渡すプレイが光っていた。角田誠と富田のドイスボランチが、いかに他クラブを苦しめたことか。一方で、渡邉晋氏が采配時のポゼッションを軸としたサッカーでも十分に機能した。渡邉氏が指向するサッカーは様々な変遷があったが、前線に通すさりげないパスや、後方でフリーとなったDFにロングフィードを出させるパスを、富田は巧みに操った。奥埜博亮、三田啓貴、野津田岳人らと組む中盤は魅力的だった。
 もう少し上背があれば、代表チームに選考された可能性もあったかもしれない。国際試合だと、どうしてもこのポジションだと高さが欲しくなるからだ。ただ、あの躊躇せず奪う能力は、富田が短躯で重心が低いが故に完成したもののようにも思える。もちろん、サッカーにはヘディングと言う重要な要素があり、上背は高いに越したことはない。しかし、サッカーの能力要素を個別に整理すれば、背が低いことがメリットになるケースもあるのだ。もっとも富田は的確な位置取りで、ヘディングも決して弱くはなかったけれど。

 2005年シーズン富田がベガルタに加入したきっかけが、あの都並敏史監督にあった。そのあたりは、引退記者会見で富田自身が言及していたし、よく知られたことだ。ただ、都並氏は不思議なことに、この富田をサイドバックとして抜擢した。しかし、富田は、足が速いわけでもなく、角度のあるクロスを蹴るのがうまいわけでもなく、長駆を繰り返せるタイプでもない。なぜ、都並氏が、富田をサイドバックに起用したのは本当に不思議だった。
 当時のベガルタは毎シーズンJ1復帰を目指し迷走を繰り返していた。毎シーズン監督交代を繰り返し、一貫性ある強化が叶わず、再三空振りを繰り返すこととなった。都並氏の招聘もその一つ。さすがに、日本代表選手として豊富な経験を積んできた都並氏が算数ができないとは思ってもいなかったけれども。
 ともあれ、そんな事ははるか昔のこと。都並氏は監督としての姿勢も能力も残念なものだったかもしれない。けれども、私たちは富田晋伍をたっぷりと18年間にわたって堪能できた。改めて都並氏にも感謝したい。

 2009年シーズンにJ1に復帰して以降、ベガルタは高橋義希、和田拓也、金眠泰と言った能力の高い守備的MFを補強した。言わば、定位置争いで富田のライバルとなる選手たちだ。しかし、彼らは短期間ベガルタに在籍したのみで、他クラブに移籍する。そして、移籍後にすばらしい活躍をすることになる。これは、彼らの能力の高さを的確に評価したベガルタフロントの慧眼と、彼らとの定位置争いに負けなかった富田の存在感を示している。柏レイソルで中心選手として活躍する椎橋慧也。2020年シーズンにベガルタで定位置を確保した後、レイソルに移籍した。しかし、この2020年シーズンは富田が重傷を負い、リーグ戦登場の機会がなかった。椎橋はベガルタに在籍した4シーズン、毎年少しずつ出場機会を増やしていたが、富田が元気な間は完全に定位置を奪う事はできなかったのだ。言い方を変えれば、富田は定位置争いのライバルだったこう言った選手達に対して大きな壁となることで、彼らの成長にも大きく貢献したことになる。

 富田の18年間。上記したがJ1再昇格を目指しての迷走時代、富田や梁をしっかり育てJ1への昇格、考えられない自然災害、ACL出場、経営規模拡大が叶わず毎シーズンの苦闘、天皇杯決勝進出、疫病禍における経営危機、J2降格。思えば色々なことがあった。そして、幾多の喜びと悲しみを味わう事ができた。
 改めて富田晋伍と言う我々のレジェンドが引退する報を聞き、まず大きな空虚感を味わった。そして、幾多の喜びと悲しみを思い出し、整理できない感謝の念が交錯した。無数の感謝を整理していると、不思議なことに喜びばかりの記憶に満たされてきた。目をつぶれば、多くの待ち構えて躊躇せず奪いしっかりつなぐプレイを思い起こす事ができる。そのすべてに感謝の言葉を捧げたい。富田が敵からボールを奪ってくれた分だけ、私は喜びを味わえたのだ。

 富田晋伍さん、本当にありがとうございました。18年間積み上げた無数のボール奪取に乾杯。
posted by 武藤文雄 at 18:59| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月31日

東京五輪の失敗を再現するのか?反省を活かすのか?

 カタールのメンバ発表が近づいてきた。
 最終メンバをどのタイミングで絞るかは、ワールドカップの歴史でもとても微妙な問題。直前まで多めに集めて最後に絞ろうとすると、98年のように「外れるのはカズ、三浦カズ」となってしまう。一方で早めに絞ってしまうと、06年の茂庭照幸のように「南洋の休暇をとりやめて急遽帰ってまいりました」になってしまう。いずれの状況に陥っても、マスコミの好餌となり世間の耳目を集めるかもしれないが、チームの強化にはマイナスになる。難しいものなのだ。
 本稿では、これまでの森保氏の采配を冷やかしながら、最終メンバを予想しつつ、カタール本大会に想いを寄せてみたい。
 
 ともあれ。Twitterで幾度かつぶやいたが、森保氏のカタールへの準備には、既視感がある。最近に流行り言葉では再現性かw。守備的MFは既にギリギリに絞り込んでおり、煽れんばかりの数の攻撃ラインの選手の選考に迷う。その結果、チームの要の遠藤航が疲弊と前線の連係不足で、モヤモヤ感を残したまま、勝ち切れない。
 東京五輪直前の準備試合、ホンジュラス戦とスペイン戦。いわゆる後方のMF要員として招集されたのは、遠藤航、田中碧だけ。2つのポジションに2人のみ。一方で、攻撃的MFとFWはドラミ相馬、三好康児、三笘薫、堂安律、久保建英、前田大然、上田綺世、林大地、4つのポジションに対し8人の候補選手がいた。一応DFで選考された板倉滉、中山雄太、旗手怜央が中盤のバックアップ(もできる要員)と予想された。ところが冨安健洋の負傷もあって、大会に入り3人ともDFラインの定位置での起用となり、結果的に遠藤と碧はフル回転。2人が疲弊したことが直接要因となり、メダルを逃した。この年代には渡辺皓太、田中駿太、岩田智輝ら、中盤後方で活躍できそうなよい人材は多数いた。しかし、森保氏は最後の準備試合の時点で、早々に彼らに見切りをつけてしまい、遠藤と碧の消耗を招いてしまった。
 3ヶ月前の6月シリーズ。4連戦の最終チュニジア戦、冨安健洋と守田英正不在のため、ほぼ皆勤していた遠藤と吉田麻也のミスから3点を奪われ完敗した。守備的MF不足と冨安不在→板倉CB起用→遠藤ボロボロ。正に東京五輪の再現だったw。
 そして、今回の二連戦。このシーズンの編成を見る限り、後方のMF要員はレギュラ定位置2枚に対して遠藤、守田、田中、柴崎岳の4人しか選考していない、しかも柴崎は強度が大きな課題で、守備面でのリスクを抱えるのは言うまでもなく、ターンオーバしたエクアドル戦の苦戦要因となった。もちろん、負傷で選考外になった板倉はパラグアイ戦のようにMFでも十分使えそうだが、本大会では冨安とCBを組む可能性は高い。一方攻撃的MFとFWは4枚に対して、鎌田大地、原口元気、伊東純也、堂安、久保、前田、上田、古橋亨梧、町野修斗、三笘、南野拓実、ドラミ、合計12名。もしかしたら、森保氏は、この9月シーズン直前に負傷した、ジャガー浅野琢磨や、復調の評価著しい大迫勇也まで考慮しているのかもしれない。そうなると、53日前の今日時点で、ポジション4個に対して14人の候補選手がいることになる。守備的MFの見切りはとても早く、FWは最後まで迷い続ける。東京五輪前の再来ではないか。

 先日の強化試合を振り返ってみる。
 USA戦。久々に4-2-3-1を採用。USA首脳は、これまでの日本の基本布陣4-3-3を予想していたのかもしれない。前田大然と鎌田大地の2トップがいきなりフォアチェックで、圧倒的攻勢をとることができた。前半、危なかったのは、序盤右サイドのプレスをうまく回避され、左に展開されて好クロスを上げられた場面くらい。特に前田の繰り返される俊足プレスはUSAを悩ませる。USAもMFやサイドバックを加えて最終ラインを3人にしてつなごうとしたり、ロングボールで日本のラインを広げようと工夫する。しかし、USA前線選手はボールの受けの位置取りに工夫が少ないため、強引なロングボールは冨安が完封、精度に欠ける縦パスは幾度も遠藤と守田の餌食となる。そのため、USA陣内で幾度もボール奪取に成功。前半は鎌田の得点のみの1-0で終わったが、伊東、鎌田、久保が次々と好機を演出、GKターナーの再三のファインプレイがなければ大差にできていたかもしれない。
 余談です。6月の国立ブラジル戦、厳しいフォアチェックをしのぎ、持ち出そうとする度にフレッジとカミネーロに止められ、速攻の危機を迎える、ちょっとほろ苦い思い出だが、その恐怖を相手国に味合わせていると思うと気持ちがよかった。
 後半は、冨安を右サイドに出したために中央の強度が落ち、USAも前線の選手を代えて受けの位置取りを改善してきたため、前半ほど圧倒的な攻勢はとれなくなる。しかし、ここに来て代表に定着しつつある伊藤洋輝も落ち着いた守備を見せ危ない場面は作らせない。そして、68分両翼を堂安と三笘に代えることで攻勢を取り直す。75分三笘が作った絶好機は堂安は決めなければダメ、大きな反省点だ。終盤鎌田に代えて原口を起用し、5DFの守備固めオプションを試したところで、三笘が得意のヌルヌルドリブルから決めて突き放したのも愉快だった。冨安の復帰が大きかったが、過去の日本代表史を振り返ってもベストに近い内容の試合だった。
 エクアドル戦。スタメンを総取り替えすれば、バランスは崩れるのは当然のこと。そもそも、田中碧と柴崎岳でボランチを組むことそのものが健全な試合の取り組みとは言えない。2人は、共に落ち着いたキープや、長距離のパスを得意とするスタイルで、ボール奪取が本業ではない。幾度も語ってきたが、柴崎のロシアワールドカップでの鮮やかなロングパスは最高だった(残念ながら、それ以降柴崎はあの輝きを再現してくれていないが)。田中碧は、五輪代表で遠藤航や板倉のサポートを受け中盤の指揮官として君臨。ワールドカップ予選でも、遠藤と守田の献身の下、幾度も前線に鋭いパスを通して、本大会出場に貢献した。しかし、この2人並べても有効でないことは、試合をする前からわかっていたこと。このエクアドル戦は、柴崎ではなく遠藤と守田を45分ずつ起用すべきだった。結果的に本大会出場の26人に入ることを目指してる他の選手たち、特に前線で空回りを余儀なくされた古橋と南野が、何より気の毒に思えた。
 しかもエクアドルは、最終ラインの選手のつなぐ能力はUSAを凌駕していた。古橋と南野のフォアチェックに対し、後方を3枚にして落ち着いてかわし、前線にボールを供給。冨安不在の日本は第一波をはね返し切れない。さらに、第二波の中盤のデュエル合戦も、碧と柴崎ではボールを取り切れないことが多く、連続攻撃を許す。こうなると、裏抜けをねらう最前線の古橋亨梧によいボールが供給できず、いよいよ攻めあぐむ。結果、ピンチの連続となった。前半右サイドを崩されポストに当たるシュートを許し、終了間際にはCKからのピンチをシュミットがファインセーブ、かろうじて0-0でしのぐことに成功した。
 後半古橋に代えて上田綺世を起用。上田が前線でキープすることで、ペースを少しずつたぐりよせる。そして68分にようやく遠藤を起用し中盤を落ち着け、交代で入ったドラミの切れ味鋭いドリブルと、鎌田の変化で好機を掴むも決め切れず。逆に谷口が敵FWの妙技にPKを許すも、シュミットが止めると言った場面もあり、試合は0-0の引き分け。冨安と板倉と守田が不在、遠藤と麻也も僅かな出場時間と言う条件下で、ワールドカップ出場国を無失点に押さえたのは結構なことだ。
 選手個人と言う視点でも、本大会に向けて明るい発見もあった。USA戦で久保が左MFで攻守に渡り活躍できたこと。これまで、久保はこのチームで、鮮やかな個人技を発揮はしたものの、自分本位のプレイばかりでチームに混乱を招くことが多かった。しかし、このUSA戦では組織的な崩しにも、守備にもしっかり参画。スタメン久保、終盤三笘起用と言う流れが最もバランスがとれているようにも思えた。
 懸念されていた左DFも、USA戦では中山が90分間、守備を固めながら、左サイドからの攻め込み時は常に的確に押し上げを継続、この選手は攻守ともに圧倒的な能力を見せるタイプではないが、苦しい時間帯でも常に適切な一度理をしてくれる。一方で、エクアドル戦は大ベテランの長友が、さすがのプレイ。中央に絞ったカバーや、自陣での1対1の間合いなど老獪なプレイの数々、ここに来て圧倒的な存在感。酒井の体調に不安がある中、ブラジル戦での右サイドでの好プレイ含め、大したものだ。
 まったく誰が選考されるか、目処が立っているに見えないCF。「予想が難しい」のではなくて「目処がが立っているように見えない」のは残念だが、ここは多数の候補が揃っていると前向きに考えることにしよう。とは言え、前田の献身的かつ強引な前線刈り取りは魅力的だった。余談ながら、この前田の暴力的なフォアチェックに、約20年前の鈴木隆行を思い出したのは私だけだろうか。前田は鈴木に比べると、身長は大きくないため迫力にはやや欠けるかもしれないが、人相の悪さと執拗な疾走の繰り返しは同レベル、そして短距離奪取の速さは鈴木を凌駕するものがある。このような短距離疾走の速さは、欧州の大柄なCBが最も嫌がるものゆえ、ドイツやスペインに対し非常に有効となるだろう。
 エクアドル戦の終盤に起用されたドラミ相馬が切れ味鋭いドリブルを見せたのも頼もしかった。五輪でも大活躍し、韓国、エクアドルと言うワールドカップ出場国でも機能したこの小柄な異才は間違いなく本大会でも戦力となろう。ただ、久保がよかっただけに、ポジションのバッティングがあるのだが。
 そしてシュミット・ダニエル。PKストップも見事だったが、度々前線に鋭いフィードを入れ、高いボールへの強さも上々だった。さてドイツ戦のスタメン、権田の安定感をとるか、シュミットの特長をとるか、森保氏の決断を待ちたい。

 さて、それでは26人はどうなるか。一部選手の負傷報道が聞こえてきているが、そのような外乱がなければ、おおむね以下となるのではないか。
 まず確定メンバを推定する。GKは権田とシュミットは確定として、3人目は川島または谷。右DFは酒井と山根、左DFは長友と中山。CBは麻也、冨安、谷口、伊藤、そして板倉。MFは遠藤航、守谷、田中碧、原口、鎌田。負傷明けの板倉を、CB要員ではなくMF要員と考えれば、いわゆるドイスボランチを、遠藤航、守田、板倉で回して、勝負どころで田中碧を使える。このやり方をすれば、散々イヤミを語った選手森保一選考しない問題を解決できるように思う。そしてFW、右は伊東純也、堂安、左は三笘、久保、そして問題のCFだが、上記した傍若無人的活躍をした前田大然は決まりかなと思う。そして、森保氏はヴィッセルで調子を取り戻した大迫勇也を選ぶように思えてならない。ここまでで23人で残り3枠。
 この3枠を、瀬古、柴崎、旗手、南野、ドラミ、上田、町野、古橋、そして浅野が争う。ここから先は読みづらい。ただ、ここまでの選考を考えると、森保氏が大好きな柴崎はメンバ入りするだろう。(この森保氏の柴崎への極端な愛情は、本当に興味深い)。CFとしてもう1人上田か古橋(大迫が間に合ったので町野は選考外となるのではないか、あの強引なシュート狙いは魅力ですけれど)。そして、最後の1枚は南野かドラミ。
 私個人の好みとしては、とにかく点を取るのがうまい小林悠を入れたらとか、中盤で骨惜しみしない選手がもう1人欲しいから稲垣や川辺選べばよいのではないかとか思いはあるが、まあそれはそれ。

 散々森保氏には文句を語ってきたが、間違いなく氏は史上最強の日本代表を作りつつある。一方で、過去出場6大会と比較して、しんどいグループリーグに入ってしまったのも間違いないけれど。
 予選埼玉サウジ戦でワールドカップ本大会出場国にほとんど危ない場面を作らせず、キッチリ得点を奪う完璧に近い試合ができた。そして、USA戦では、決定機獲得頻度とピンチ少ないと言う意味では、サウジ戦以上の試合を見せてくれた。
 攻撃連係の練度には不満が残るが、伊東や三笘のように個人能力で決め切るタレント、鎌田や堂安のようにラストパスを操るタレント、田中碧のように崩せるパスを出せるタレントが揃っている。そして、こう言った攻撃タレントに対し、忠実な組織守備と切り替えの早さを徹底したのは森保氏の貢献だ。
 現実的に、ドイツもスペインも、USAやエクアドルやサウジや豪州よりは強かろう。また毎回よいチームを作ってくるコスタリカも非常に難しい相手だ。しかし、いずれの相手もブラジルほどは強くない。これだけのタレントが揃ったのだ、十分にやれるはずだ。
 そして、本稿冒頭でイヤミを語った再現性問題。考えてみれば、相手国は当然日本のことを詳細にスカウティングしているはずだ。森保氏がカタール本大会での歓喜のために、難敵スカウティングチームを混乱させるために伏線を打っていたのだとしたら…
posted by 武藤文雄 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月23日

選手森保一を呼ばない森保一監督

 ワールドカップ前の貴重な準備試合、USA戦を迎える。
 先日、森保氏がセンタフォワードをどうするつもりなのかと講釈を垂れたが、今日は今回選考のメンバを俯瞰しながら、(おそらく皆が最も気にしている)守備的MF選考について講釈を垂れたい。今大会よりメンバ総数が、23人から26人に増えた。森保氏の現状の基本布陣は4-3-3だから、GK3人、DF8人、MF6人、FW6人(これで合計従来の23人)に、あと3人をどう組み合わせるかが、常識的な選考方法となるのだろう。
 一方で今日のお題の守備的MFについて。選手森保一は、運動量が豊富で、敵選手にうまくからんでボールを奪い、落ち着いて味方につなぐのが格段にうまい守備的MFだった。格段にフィジカルが強いようには見えないが、敵攻撃に対する予測力が格段に高く、敵にからんでスッとボールを奪い、攻撃の起点となる。最近の選手ではフレッジや稲垣祥をイメージしてもらえばよいだろうか。本稿では、代表監督としての森保氏が、最も思い入れの深いであろうこのポジションに対して、どこまで深く考えているのかが見えてこないことに対する愚痴を語りたい。
 
 まずGK。ここは権田修一、シュミット・ダニエル、川島永輔、谷晃生の4人が選考。森保氏の信頼厚くここ数年安定した守備を見せている正キーパの権田。フィードの精度が高く権田とは長所の異なるシュミットが第2GK(ベガルタサポータとしては、この欧州遠征で従来以上の高さを見せて欲しいところだが)。第3キーパを大ベテランの川島と若い谷が争う。中東という独特の文化の国、初めて11月開催、試合間隔も短いなど、今大会は未知のことが多いだけに、ここは語学堪能で経験豊富な川島の選考が妥当か。
 DFは、右が酒井宏樹と山根視来、左が長友佑都と中山雄太、中央が吉田麻也、冨安健洋、谷口彰悟、伊東洋輝、そして瀬古歩夢。ブンデスリーガで大活躍していながら直前に負傷した板倉滉が外れた。伊藤は6月シーズンで長時間使われ、貴重な左利きで左DFにも起用可能で再度選考された。瀬古は板倉の代替招集。東京五輪では冨安、板倉らの後塵を拝し出場機会を得られなかったが、CBとのしての才能は疑いない。冨安と板倉の20代半ばのCBコンビを世界中に見せびらかすのは楽しみだだった。しかし、もしこの2人の体調が整わなくても、大ベテランの麻也、先日のA3で韓国相手に格段の存在感を見せた谷口、そして潜在力は疑いない伊藤と瀬古が控える。過去いずれのW杯でもセンタバックの層の薄さに悩んでいたとは思えないタレントの厚み、よい時代になったものだ。
 サイドバック、大ベテランの長友が、先日のブラジル戦で右サイドで「さすが」としか言いようないプレイを見せ状況は格段に好転した。常に選手層の薄さに悩まされていた左サイドは長友、中山、伊藤と3枚タレントがいる。右サイドは酒井、山根、長友に加え、もちろん冨安を回せる。欧州で活躍している菅原由勢や橋岡大樹でさえ、この選手層の厚みから選考外になってしまった。これはこれで、すごい事だと思う。
 報道によれば、板倉は本大会に十分間に合いそう。瀬古は逸材とは言え、準備の合宿で麻也や谷口を凌駕する能力を見せない限り、この欧州遠征で起用されるかすら微妙で、本大会メンバ選考は難しかろう。そして、DFを8人とするか9人とするか、もし8人となると最後の一枠を山根、中山、伊藤が争うのだろうか。贅沢なものだ。

 中盤については、今日の本題なので後述する。

 右FWは、大エースの伊東純也、左足で多くの変化を演出する堂安律、何かしらの潜在力に期待したくなる久保建英。左FWは、最前線のタレントとしては欧州で最も高い評価を受けている南野拓実、予選でも幾度か決定的な仕事をしたヌルヌルドリブラの三笘薫、先日のA3で大活躍した短距離ドリブルの切れ味あふれるドラミ相馬勇紀。これまた3人ずつの選考。もちろん、いずれのタレントも魅力的だが、森保氏はどうやって絞り込むのだろうか。常識的には大エースの伊東純也を最大限に活かすためのタレントをどう選ぶかだと思うのだが。例えば、伊東と堂安を併用するのだろうか、それとも併用せずに試合終盤攻撃の変化をつけるために伊東の代わりに堂安を起用するのだろうか、もしそうならば久保は不要なのではないか、云々。
 さらにCFに至っては、先日散々講釈を垂れたが、このポジションは何も決まっていない。誰が中核なのか、控えをどうするのか、変化をどう付けるのか。今回の欧州遠征では、選考直前に負傷したジャガー浅野拓磨が外れ、前田大然、古橋亨梧、上田綺世に加え、町野修斗の4人が選考された。ここに来て、嬉しい誤算だがJで大迫も復調してきている。改めて断言するが、この欧州遠征に至っても、森保氏は選択(言い換えれば捨てること)を決断していない。しかし、このポジションの枠は最大3枚なのだ。いや、4-3-3にこだわらず、4–2-2-2と言う選択肢をとるならば、南野や堂安や久保や鎌田のトップ下起用の選択肢があるだろうから、CF枠は2枚かもしれない。
 そして、このUSA戦とエクアドル戦は、攻撃の連係を磨くのに最高の機会。選考した前線の選手たちすべてにプレイ機会を与える余裕などないはず。森保氏が、状況ここに至っても選手選考を絞り切れない現状にイヤミを語りつつ、今後の氏の選手選考に注目していきたい。

 そして、今日の本題のMFについて。 
 4-3-3の布陣を基本とするとしたら、3人のMFの主軸は言うまでもなく、遠藤航、田中碧、守田英正。遠藤はシュツットガルトで主将を務め、ブンデスリーガシーズンベスト11にも選考された実績を持ち、格段の体幹の強さを生かしたボール奪取と落ち着いた展開はすばらしい。田中は中盤後方から、視野の広さと正確な技術を活かし、敵の守備を飛ばしたパスと緩急の妙で試合を作る。ファルカン、レドンド、ピルロ、デ・ブライネと言ったタレントを目指して欲しいのですが。守田は切り替えの早さと豊富な運動量を軸に、常識的だが長短のパスも上手、フロンターレ時代の田中との連係も強み。この3人で組む中盤が、ドイツやスペインにどのくらい通用するのかを想像し実感するのは、カタール大会の大きな楽しみの一つとなっている。
 この3人の控えだが、常時予選でも選考されていたのは柴崎岳と原口元気。柴崎については後述する。原口は、ロシア予選から代表の中心選手、森保政権になってからは貴重な控えとして活躍を継続。予選でも試合終盤によく起用され、献身的な上下動と厳しい当たり、さらに若い頃からのドリブルのうまさに加え、最近ではラストパスの妙も見せてくれる。そして先般の6月シーズンには鎌田大地が久々に選考され、ブンデスリーガでも高く評価されている攻撃力の片鱗を見せるのみならず、インサイドMFとして組織的な守備も上々だった。そして、今回の欧州遠征で、旗手怜央が改めて選考された。旗手のセルティックでの活躍はすばらしいし、フロンターレでのサイドMF(あるいはサイドバック)としての、いかにも静岡学園出身らしい技巧と知性に疑いはない。
 さて、誰もが思っているだろうが問題は柴崎だ。まず言及しておく必要があるが、ロシアでの柴崎はすばらしかった。セネガル戦で左サイド長友に通した60mクラスの超ロングパス(その後、長友とのシザースパスでフリーになった乾が得点)、ベルギー戦で右サイド原口のフリーランにピタリと合わせた40mのグラウンダのスルーパス。この2つのプレイだけで、柴崎は日本サッカー史に残る存在となった。もちろん、長谷部誠との連係から落ち着いたボールキープでの試合コントロールも見事だったけれども。
 森保氏は代表監督就任以降、柴崎は常時メンバとして選考し続けている。試合によっては主将も託したこともあった。けれども、柴崎はこの4年間、あのロシア大会のような目の覚めるようなロングパスを見せてはくれていない。それどころか、最終予選の初戦ホームオマーン戦、柴崎は有効な組み立てやチャンスメークをできぬまま時計は進み、試合終盤疲弊したところで敵に決勝点を許してしまう。さらに敵地サウジ戦では、後半、疲労の色が顕著な柴崎は再三ミスパスを連発ピンチを招く。それでも森保氏は柴崎を引っ張り、運命のバックパスミス。日本サッカー史に残る珍場面と言えるだろう。敵地オマーン戦は守田の警告累積出場停止に伴い、柴崎は久々にトレスボランチでスタメン起用されたが、冴えないプレイ。前半で交代させられた。最終予選、柴崎はほとんど活躍できなかったのだ。
 ここで改めてMF勢を並べてみる。レギュラは遠藤、田中、守田。控えに原口、鎌田、柴崎、そして旗手。遠藤や守田のようにボール奪取や敵を潰すのが得意は控え選手は選考されていない。中盤でボール奪取を主眼とする役目の選手は、豊富な運動量が要求され、累積警告による出場停止の可能性も高い。実際、東京五輪では、遠藤航と田中碧を中盤後方に並べる布陣を基本としながら、この2人の控えがおらずほぼフル出場(このポジションのバックアップと目されていた板倉滉がCBにレギュラ起用されたこともあったが)。大会終盤に入り、2人の疲弊もあって、メダル獲得に失敗した。3位決定戦で疲労困憊ながら献身する遠藤の姿は美しかったけれど。また先日の6月強化試合、最後のチュニジア戦でも、遠藤の疲労は顕著でそこが敗因の一つとなった。言い換えれば、森保氏は1年前の東京五輪での失敗経験を、この6月シーズンに活かせなかったのだ。
 では、このポジションにタレントが少ないかと言うとそうでもない。川辺駿、稲垣祥、橋本拳人、岩田智輝と言ったタレントは、森保氏率いる日本代表に選考され、起用されれば充実したプレイを見せてくれた。しかし、今回の欧州遠征では選考されなかった。イヤミな言い方になるが、森保氏就任以降の約4年に渡り、柴崎は彼ら4人より充実したプレイを見せてくれただろうか。
 もちろん、森保氏がしたたかな準備をしている可能性は否定しない。例えば、遠藤と田中は確定として、3MFのもう1人は鎌田か原口を起用し、常に守田をベンチにバックアップとする、あるいは板倉はCBに使わず、常時ベンチに置きバックアップとする、等々。
 グダグダと講釈を垂れてきたが、不思議なことは柴崎を招集し続けることではない。守備的な能力の高いMFを、レギュラーの遠藤と守田しか呼ばないことなのだ。その代わりと言っては何だが、毎回FWの選手はベンチに入りきれないくらい呼んで、特にCFは本大会出場確定という選手がわからないことだ。繰り返すが、森保一のようなタレントをもう1人呼んでおくべきではないのだろうか。

 29年前のドーハ、W杯最終予選。
 サウジ、イラン、北朝鮮、韓国、イラクとの6カ国総当たりで、上位2国がUSA本大会に出場できるレギュレーションだった。最終戦前に2勝1分1敗でトップに立っていた日本だが、最終イラク戦の終了間際にCKから追い付かれ本大会初出場を逃した。
 重要だったのは第3戦の北朝鮮戦、3-0でリードしていた日本だが、終盤森保一はつまらないファウルで警告を食らい、続く韓国戦は出場停止。韓国戦は、森保の位置にラモスを下げ、北澤を起用する布陣が当たり1-0で勝利を収めることができた。しかし、最終イラク戦、韓国戦で運動量を要求されるポジションに起用された33歳のラモスは疲労困憊、2-1と突き放すゴン中山へのアシストは見事だったが、試合終盤まったく動けなくなってしまった。あの同点ゴールとされるCKは、イラクの攻撃を一度森保が止め、ラモスにパス。ラモスは自陣でのボールキープを狙うべきだったが、敵陣への縦パスを選択し、それを奪われた速攻から提供したものだった。
 もし、あの北朝鮮戦の終盤、森保がつまらないファウルを冒さなかったら。あるいは、ハンス・オフト氏が、森保の適正なバックアップ選手を選考できていたら。
 29年後、監督森保一が同じ街で戦う真剣勝負。遠藤と守田に加えて、選手森保一のようなタフな選手を招集すべきに思うのは私だけだろうか。
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2022年09月07日

原崎監督更迭劇に思う

 本業の11時から始まった重要な会議は結構重苦しい内容、今後の展開のための議論が錯綜したのを何とか整理し、昼休みを迎えた。「さて、ちょっと暑そうだから、外に食べに行くのをやめて社員食堂に行こうかな」など考えながら、何気なくスマフォを叩いたら、ビックリするようなニュースが飛び込んできた次第。
 とにもかくにも、J2降格と言う難しいシーズンに監督を引き受けてくれて、ここまで多くの選手の特長を活かした攻撃サッカーを見せ、上々の成績を挙げてくれた実績。ここまでの原崎前監督の功績を讃え、感謝したいと思う。ありがとうございました。
 そして、今後の氏の指導者生活が成功することも祈りたい。ただし、ベガルタ戦以外でだが。
 フォギーニョと中島のコンビによる強くて前線に精力的に飛び出す中盤。氣田、名倉、加藤、真瀬、内田らサイドプレイヤの精力的な上下動。富樫と中山を軸にした強さとシュートのうまさが際立つ最前線。ベテラン遠藤が見せる魔術。特に氣田や皆川など、昨シーズン手倉森前監督が、あまり機能させられなかった選手が、原崎氏の下でよく化けてくれたのは大いに讃えられるべきだろう。

 半世紀近くとなるサポータ人生、これは自分にとっては、2003年のベガルタ清水秀彦氏更迭と2018年の日本代表ハリルホジッチ氏以上の超ビックリ更迭劇となる。
 清水氏の時は、(少々失礼な言い方になるが)当時のベガルタフロントへの助言者があまり信用できず、「何か妙なことが起こらなければよいが」的な思いがあった。そのため、発表を聞いた時の驚きはそれほどではなかった。
 ハリルホジッチ氏の時は、さすがに驚いた。上記リンク先で延々と講釈を垂れた通り、田島会長の判断がまったく理解できなかったからだ。ただ、当時から会長の言動を見聞きする限りでは、氏にとっては日本代表の好成績以上に何か重要なことがあるのだろうと言う諦念はあった。これはこれで不愉快だが、田島会長はルールにのっとって選考された協会会長だし仕方がない。今日見せてくれている彼なりの努力を、現役の選手時代に発揮して欲しかった思いはあるけれども。1975-76年の高校選手権決勝での、浦和南対静岡工業戦、浦和の大エース選手田島幸三の鮮やかな2得点に憧れたサッカー狂としては。

 けれども、今回の原崎氏更迭は、まったく予想外だった。ここに来ての4連敗、勝点勘定的にも相当厳しくなっているし、チームの沈滞感も相当なものがあるのだろう。しかし、シーズン当初から原崎氏が見せてくれたサッカーは魅力的で、成果も出ていた。原崎氏更迭の判断は、J1復帰と言う短期目標、J1再定着と言う中期目標、国内トップクラスのクラブと言う長期目標、いずれにとってもマイナスにはたらいてしまうのではないかとの不安も大きい。
 確かに、攻撃志向を徹底するためだろうか、守備麺の課題は多かった。自陣から無理せずに抜け出すべきなのに逆襲速攻を無理にねらい、急ぎ過ぎて、逆に敵にボールを奪われてしまうケース。セットプレイでのファーサイドやライン前の守備。両サイドバックを前線に送り込み、押し込んだところで散見される、ミスパスから決定的な逆襲を許す。
 もちろん、これらが解決してくれれば嬉しいが、いずれも選手個々の判断力に起因する課題。各選手の知性のレベルアップは監督にとっても最も難しく時間のかかる仕事。ここまで素敵な攻撃的サッカーを見せてくれた原崎氏に、たとえ時間がかかってもこれらの修正を期待するのは、十分理に叶っている。原崎氏だって、Jを率いるのは初めての経験、この難しい状況を打破してくれれば、我々は格段の監督の入手に成功すると期待していた。
 正直言って、私は今シーズン、いや今後も原崎氏と一緒に戦いたかった。

 一方で。私はベガルタの佐々木社長を信頼している。社長就任以降最大の課題だった債務超過問題を解決の目処を立て、大口を含めたスポンサを丹念に増やし、原崎氏にチームを託し上々の成果を上げてきた。クラブやチームの詳細な内実は、我々サポータには理解できない。クラブ内、チーム内の詳細を検討した上、佐々木社長はこの重い判断を下したのだろう。佐々木氏の判断には敬意を表したい。そして、公認の伊藤彰監督の実績は中々のものがあるのも、また確かだ。

 その上で。
 我々がやれることは簡単。伊藤新監督、そして梁勇基とその仲間達を熱狂的に応援すること。そして、シーズン終了後にJ1復帰に歓喜すること。まずは次節敵地大分戦、難敵が相手だが勝点3獲得を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 02:10| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月03日

ベガルタいかに立て直すか

 先日、ベガルタのJ1自動昇格への楽観論をまとめたところ、以降思わぬ3連敗。2位新潟と勝点10差がついたのみならず、岡山にも抜かれ4位に落ちてしまった。私が悪かったのだろうか。ともあれ。ここは正念場。ここからの立て直しを期待し、改めて楽観論の講釈を垂れることにしたい。
 勝点勘定が極めて厳しくなったことは否定しない。しかし、一般論として、残り試合数≒逆転可能勝点と言われている。残り9試合で勝点10差、まだまだ諦める段階ではないことは強調しておきたい。
 加えて3連敗を振り返ると、それぞれの3試合の課題はまったく異なる。言い換えれば、チーム全体が構造的な不振に陥ったわけではなく、個別の課題を一つずつ修正すればよい。また、試合内容を見た限り、それぞれの課題は修正の方向に向かっている。勝負はこれからなのだ。

 まずホーム大宮戦。序盤押し込みながら崩し切れず、大宮にCKを許す。そのCK、しっかり跳ね返したこぼれを、F ・カルドーゾがいかにも彼らしい淡白なヘッド、ゴール前に戻されたボールを決められた。さらにその直後、キックオフからのボールを跳ね返され、慌ててボールを奪いに行きかわされ、逆襲を許し右サイドを簡単に突破され2点差。その後、やや上滑り的に攻めるものの、好機を決め切れない。ひどかったのは守備で、大宮につながれると、強引に奪いに行っては外され、自滅気味に攻め込まれる。3失点目もそう言った形からだった。大宮の集中守備は中々見事だったが、逆サイドを突けば崩せているのだから、何を慌てたのだろうか。あれだけ慌てたのは、大宮へのリスペクト不足としか言いようがなかった。後半、立ち上がりから3人を交代し、遠藤と中島を軸に落ち着いて攻め返し、1点差まで追い上げたがそこまで。さすがに3点差を追いつくのは難しかった。
 もっとも、後半の攻撃は変化あふれ非常によかった、特に2点目は中島の鮮やかなボール扱いと遠藤の知性あふれる位置取りによるもので、美しさは格段だった。
 
 続く敵地群馬戦。群馬の精力的なフォアチェックと、中山と富樫不在のため前線に起点を作れず苦戦。皆川が左右に精力的に開いてボールを受けるが、氣田、名倉が揃って体調不良なのか、フォローが遅く孤立。さらに久々スタメンの金太鉉が決定的ミスを連発。劣勢を挽回しようとするフォギーニョもコンディションが悪そうで、再三自陣でボールを奪われる。それでも、PKを小畑が止めるなどもあり、0-0で前半をしのぐ。しかし、後半序盤に連係ミスから失点すると、いよいよ状態が悪くなる。幾度も群馬の鋭い逆襲に苦しめられ、よくもまあ0-1で試合を終えることができた、と言う内容だった。FWが2人欠場したことと、MF陣の疲弊、守備の中軸金太鉉の絶不調、これだけ悪いことが重なると、ちょっとどうしようもなかった。
 この3連敗、唯一生参戦できたのはこの試合だったが、屋根のない競技場で、雨の中の重苦しい敗戦だった。けれども、身体が利かない中で奮戦する大好きフォギーニョ、サポートが少ない中で単身打開を図る中島、味方の度重なるミスを冷静にカバーする平岡、こう言った選手たちの奮戦を応援できたのだし、悔しい敗戦だったからこそ、現地にいられてよかった。余談ながら、我らが遠藤と群馬の細貝の、中盤での虚々実々の駆け引きも本当におもしろかった。幾多の栄光を掴んだ2人が、30代半ばとなり、故郷のクラブのために知性の限りを尽くして戦っている。

 続く、ホーム千葉線は、中山復帰で前線で拠点ができ、中盤でのしつこさも戻り、各選手の体調もよいようで、前節よりは格段に改善され安心して見ていられた。ただ前半から、ボールを奪うと前に急ぎ過ぎる傾向があり、千葉の戻りの速さから攻め切れず。速攻し切れない時に落ち着いてじっくりボールを回したいところだった。一方で、主審の判定がやや仙台に有利な感もあり、複数回セットプレイの好機があったが崩し切れない。ところが後半序盤、千葉に押し込まれた時間帯に、前半から気になっていた無理な持ち出しで、逆に連続攻撃を許し、そこからのCKで失点。さらに、落ち着いて分厚い攻めを展開していたところでミスから逆襲から決定機を許し、一度しのぐもののロングスローから追加点を許し、そのまま0-2で敗戦。2つの失点は、いずれもニアでフリックされ、ファーの選手をフリーにしてしまったもの。当方が幾度もあったセットプレイを決められず、一方で似た形から2失点してしまっては苦しい。
 ただ、後半から起用されたフォギーニョ、名倉は前週の不振から脱した感があった。また何より、ここ最近まったく昨日していなかったF・カルドーゾも相応に機能した。底は脱しつつあることは実感できた。

 幸いにして、明日(もう今日か)のユアテック水戸戦は、疫病禍後ホーム初めての声出し応援試合。試合内容も底を脱した状況、最高の環境ではないか。己が参戦できない情けなさはさておき、ベガルタにとっては間違いなくよい兆候。仲間達の熱狂的声援の下での歓喜をDAZNごしに楽しめる。
 繰り返すが、勝点勘定が厳しいことは否定しない。しかし、それがどうしたと言うのだ。この程度の苦境は、過去幾度でも体験してきたではないか。今こそ、ベガルタ関係者すべてが、往生際の悪さを発揮し、粘り強く反転すべき時が訪れたのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:21| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月21日

センタフォワードがいっぱい

 ワールドカップが近づいてきた。
 中3日の試合、直前の準備期間がほとんどない、欧州はシーズン真っ只中を中断、現地が観光の魅力に乏しい(これはピッチ上は関係ない自己都合、でも重要)など、過去にないワールドカップ。非常に展開が読みづらい。さらには、次回から出場チーム数が増大するから、「もしかしたら本質的に楽しいワールドカップはこれが最後かもしれない」などの思いもある。
 とは言え、わからないことや悪いことばかり考えても意味がない。近づきつつある世界最大のお祭りを自分自身が楽しむためにも、少しずつ代表チームのことを書いていこうと思う。

 先日の東アジア連盟E-1選手権、韓国に3-0で快勝したのは嬉しいし、従来代表経験が少ないJリーグのトップスターが活躍したのは、まことにめでたかった。とは言え、見事に活躍した各選手だが「カタールへの道」は遠い。今の代表チームは過去4年間の強化が奏功し、いずれのポジションも既に相当分厚い選手層となっているからだ。
 右サイドバックとしてすばらしいプレイを見せた小池龍太、このポジションには酒井宏樹、山根視来と予選で実績を残した選手が2人いる。さらに、森保氏に再三招集された実績ある室屋成、オランダでかなりの評価を受けている菅原由勢、東京五輪でこのチームの中心選手の多くとプレイ経験ある橋岡大樹も控える。既に実績があり海外経験が豊富な選手が5人いるポジションで、小池が「カタールへの道」を獲得するのは、非常に難しい。
 水沼宏太は知性あふれる位置取りと全軍を奮い立たせるリーダシップを発揮、優勝に大いに貢献した。しかし、右FWは伊東純也・堂安律がいて久保建英の選考も危ういほど。これまた相当苦しいと言わざるを得ない(水沼宏太については、あまりに思い入れが大きい選手だけに別に講釈を垂れたい)。
 もちろん、ポジションによって状況は異なる。左FWの有力候補は、三笘薫と南野拓実の2人のみだった。だからE-1で大活躍しMVPを獲得したドラミ相馬勇紀はこの2人に割り込む可能性がある。
 既に実績ある選手が多数いるところに加えて新しい選手が候補として出てくるのは結構なこと。ただ現実的には、多くのポジションでは、負傷がなければおおむね誰が選ばれるか、ある程度予想はついている。

 ところが、現時点でまったく誰が選考されるかわからないポジションがある。センタフォワードである。
 言うまでもなく、このチームのこのポジションは大迫勇也が起用されることが多かったが、ここのところ体調を崩している。そのため、今年6月のブラジル戦を中心とした連戦に選考されたのは、浅野拓磨・古橋亨梧・前田大然・上田綺世の4人。4人とも起用されれば、そこそこのプレイを見せているが、他の選手より決定的に優位に立つ活躍を見せていない。その他に過去、森保氏は、北川航也・オナイウ阿道・鈴木武蔵らを呼んだこともあったが、最近は選考外。そして、先日町野修斗がE-1で活躍して、候補に名乗りを上げた。町野はよく点をとったのみならず、韓国戦で敵DFの詰めが甘いと見るや強烈なミドルシュートを枠に飛ばし、前線でしっかりボールを収めた。欧州クラブ在籍選手不在の韓国とは言え、このアジアの宿敵相手に、これだけのパフォーマンスを見せたのだ。町野の能力は、国際試合でも存分に期待できると言ってよいだろう。
 これほど多士済々のCF候補から誰かを選ばなければならない状況など、過去のワールドカップではまったく考えられなかった。まずは素直に優秀な候補選手が多数いることを喜びたい。
 しかし一方で、事前準備試合はUSA戦・エクアドル戦とあと2試合しかない。ここに至っても、攻撃の中心のこのポジションに誰が選ばれるかまったくわからない。さすがに間に合うのか心配になる。繰り返すが、準備試合はあと2試合しかないのに。

 そもそも森保氏の謎の一つは、大迫不在時にどのような攻撃を狙おうとしているのかがよくわからないことだ。大迫は後方からのボールを収めるのが格段にうまいから、チームはそれを基軸に攻撃をしかけることができる。しかし、そのようなタイプではないCF、例えば浅野や前田を起用しても、森保氏は周りの選手に戦い方を変えるような指示をしているようには見えない。加えて、大迫とは別なタイプのCFと周囲の選手の連係を積極的に築こうとしているようにも見えない。ただ、自チームで好調なCFを連れてきて試合に出しているだけに思えてならないのだ。
 森保政権初期に大迫のバックアップとしてよく選考されていた北川は、アジアカップ前の準備試合で南野や堂安のような攻撃の中心選手とプレイする機会がほとんど与えられなかった。そのため、大迫が負傷したアジアカップでは、得意の鋭い動き出しを見せてもよいパスがもらえず、中々機能しなかった。
 先日のE-1中国戦に起用された売り出し中の細谷真大。この試合で細谷は、周囲の選手と中々連係がとれなかった。それでも、後半に入り、ようやく脇坂や野津田と呼吸が合いはじめ、幾度か好機をつかめるようになった。そうやって得点の匂いを感じせてくれたところで交代となってしまった。ここで交代するならば、何のために、この大会に細谷を呼んだのだろうか。
 これまで森保氏率いる日本代表が追い込まれた試合を振り返ってみる。具体的には、W杯予選の敵地サウジ戦・先日のチュニジア戦が挙げられる(W杯予選ホームオマーン戦は先方に先制されたのが試合終了間際だったので、どうしようもなかったので、これには含まない)。この2つの試合で、森保氏は終盤選手交代を行うが、ベンチに残っている攻撃タレントをただ並べ変えているようにしか見えず、終盤攻撃を活性化できなかった。そもそも、森保氏の公式戦での逆転勝利はアジアカップのトルクメニスタン戦とウズベキスタン戦くらいしか記憶にない。そしてこの両試合とも後半の比較的早い時間帯に(特に選手交代せずとも)逆転したのだから、スタメンの戦闘能力差で勝ち切った試合だ。
 もっとも、森保氏が率いているのはアジア屈指の強豪国、常識的には守備を固め、先制したら確実に勝ち切る試合運びが主体となる。どうしても逆転したい試合などは、中々遭遇しない。逆転勝利が少ないのは、リードを奪われた頻度が少ないからで、むしろ評価すべきかもしれないので、そこは誤解しないでいただきたい。だからこそ、「ホームベトナム戦はしっかり逆転しろよ」と言いたくなるが、まあそれはそれ。うまく行かないから、サッカーはおもしろいのだし。
 森保氏に批判的な文章を続けてきたが、逆転ではないがW杯予選のホーム豪州戦の交代策を述べなければ、森保氏への批評としてはフェアではなかろう。直前に敵地でサウジに苦杯し、勝点3が必達だったこの試合、70分に同点とされた後、前線に伊東・古橋・浅野を並べ(同点前に大迫→古橋と交代、同点後南野→浅野と交替)、疲労気味の豪州DF陣の粉砕に成功した。これは、森保氏の試合終盤の冴えた采配と評価すべきだろう。言い方を変えると、本当に追い込まれると、この監督は冴えるのかもしれないな。本大会でも期待しよう、できればコスタリカ戦やスペイン戦ではなく、2次ラウンド以降で。
 繰り返すが、これまでの森保氏の采配を見ていると、CFと言うポジションに誰を置き、その選手の特長を活かした攻撃をどのように行うか、まったくわからない。逆でもいい、例えば中盤の中核は田中碧、攻撃の突破口は伊東として、この2人が作った好機を活かすために、他のポジションあるいはCFをどうするか、と言う思考がまったく見えてこないのだ。
 思い起こせば、森保氏は広島の監督時代は佐藤寿人という格段なCFを所有し、全選手が寿人に点を取らせることで意思統一がとれているチームを作った。森保氏は、前任のペトロビッチ氏が作った寿人に点をとらせるチームの守備を大幅に改善、具体的には、ボールを奪われてからの切り替えを早くした上で、不用意に大量の選手が前線に上がるのを修正。その結果、守備は格段に改善され、一方で寿人は点を取り続け、森保氏はJ1の複数回制覇に成功した。そして日本代表監督としての森保氏は、チーム黎明期の大迫や、広島監督当時の寿人のような確固たるCFが登場するのを、ただただ待っているようにしか見えない。自らは何の工夫も行わずに。

 私なりの妄想を語る。例えば、敵が中央を固めており、伊東と三笘を両翼に配して彼らの個人技によるサイド突破から点を取ろうとするならば、短い距離の速さで中央のDFを出し抜ける前田や、屈強な欧州や南米のDFにマークされても身体を利かせられるオナイウが有用だろう。例えば、敵にリードを許し、8人なり9人で後方を完全に固められてしまったら、上田や町野のように持ち堪えられるCFを起用し、その後方で狭いスペースでボールを扱える南野や堂安(先日E-1で活躍した西村拓真でもいい)に支援させて、敵陣近くで拠点を作るのが有効だろう。何より上田と町野は僅かな空間をもらえれば強シュートがあり、敵CBを引き付けることができる。また、田中や堂安や鎌田大地の才気、伊東や三笘の個人技で好機を作るから、とにかくネットを揺らす選手が欲しいと言うならば、大ベテランの小林悠と言う選択肢もあるかもしれない、小林ならば田中や三笘との連係も期待できる…
 もちろん、以上は私の妄想に過ぎません。何回でも言うが、ドイツ戦より前に、森保氏にはUSA戦とエクアドル戦の2試合しか残されていない。この2試合で選手個々の特性の新しい組み合わせを作り込むのは現実的ではなく、今さら、オナイウや小林の選考は現実的ではないだろう。
 カタールのCF候補は6月に選考された浅野・古橋・前田・上田、それに復調すれば大迫、そしてE-1の韓国戦で猛威を奮った町野の6人のいずれかだろう。先日の4連戦を見た限りでは、森保氏は浅野と古橋を高く評価しているようだ。予選の敵地豪州戦、6月連戦初戦パラグアイ戦、最終戦チュニジア戦で浅野をスタメンに起用している。一方、古橋は一番重要なセレソン戦のスタメン、苦戦に陥ったチュニジア戦で後半浅野に代えて起用された。浅野が再三単身で豪州守備網を切り裂きかけたこと、ブラジル戦の古橋は守備に奔走していたが強豪相手に機能したことは、それぞれ間違いないし。ただ、森保氏が浅野や古橋を起用して、この2人の特長を活かすような布陣を敷いたことも、田中や伊東ら中軸の特長を活かすようにこの2人を動かしたことは記憶にない。これまでクドクドと講釈を垂れてきた通り。
 いずれにしても、森保氏は、この2連戦前に、候補選手を3人程度に絞らなければならない。「絞る」という言葉を言い換えると「捨てる」と言うことだ。9月シリーズ前に、森保氏は誰を捨てる決断をするのだろうか。

 改めて語るが、過去の日本代表を振り返っても、これだけ有為なタレントが揃ったワールドカップは初めてだ。同時に、カタールに向けてCFに誰を起用するか目鼻が付いていないのも、また確かだ。森保氏には、自分の眼力に自信を持ち、最適と判断する選手を絞り込んでほしい。その絞り込みに、森保氏なりの強い意志があればあるほど、ドーハの超歓喜が近づくはずだ。森保氏にはこの街で29年前の悲劇の復讐を果たしてもらわなければならないのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする