2008年05月12日

阿部勇樹が中村憲剛を止める

 エンゲルス氏就任以来負けなしのレッズ。ふと気がついてみたら、阿部と闘莉王を軸にした安定した守備でジワジワと独走体制を固めようかと言う勢いになってきた。一方のフロンターレもここの所好調、関塚氏の後任の高畠氏は難しい状況のチームを見事に建て直し順調に勝ち点を伸ばしてきた。
 エンゲルス氏は監督就任以来微調整を重ねたが、最終的には、阿部をセンタに堀之内と堤を配する3DF、闘莉王と細貝をその前に配する布陣を採っている(啓太の復調後はまた興味深いが)。闘莉王は時に攻撃的ポジションに使われるが、過去のアレもなくなり、細貝のサポートを受けて、いささか常識的だが丁寧で正確な展開で攻撃を組み立てる。そして阿部が最終ラインで抜群の読みと対応の巧さを見せる。
 一方の高畠氏。3DFの前に新人の守備的MFの菊地を固定し、谷口を2トップの後方に飛び込む仕事に専念させる仕掛け。ただし、この日は右サイドの切り札森を欠いたのが痛かった。
 最終的には、憲剛があれこれ創意工夫をするものの、阿部を破れなった試合となってしまった。阿部の読みは絶品で、前半(フロンターレから見て)右サイドから憲剛が仕掛けた場面を読み切った場面は圧巻だった。憲剛としては、さらにもう一工夫して阿部を外側に引きずり出す算段をしなければならなかったのだが失敗してしまった。
 唯一それに成功したのが、例の幻の得点場面。ジュニーニョと憲剛で右サイドに拠点を作り、大きく逆サイドに展開する事で、阿部の位置取りを崩した。山岸の折り返しも上々で、さらに飛び込んだのが後方から長躯っした菊地だから見事だった。ただ、最後に谷口が蹴りこんだ瞬間は、見ていた誰もが「オフサイドは大丈夫か、谷口は前に出過ぎていなかったか」と思ったはず。そして、それを判断できるのは、真横に位置取りしている副審しかいないのだから、副審がそう判断した以上は、谷口はオフサイドだったのだろうとしか言いようがない。私としては、斜めの位置から映しているVTR映像を見た限りでは、谷口よりも都築と山田?の方がゴールラインに近いところにいたように思えた(つまりオンサイドではないかと思えた)が、このようなケースでは副審の判断を尊重するしかあるまい。
 審判の判定と言えば、もう1つこの日の決勝点となった、高原のPK誘引となる。私は映像を見た最初は、井川の足がボールを捉えていたので、「PKはフロンターレには気の毒」と思った。しかし、スロー再生では井川はボールに触った後で(、結果的に抜け出そうとした高原の足を払ったように見えた。とすれば、これもPKを取られてもしかたがないところだ。ちなみに井川が最初にボールを触ったのはペナルティエリア外で、足を払ったのがペナルティエリア内だった。つまり、井川のタックルはPKのリスクを避ける非常に適切なタイミングで行われた事になる。これは井川は悔しいだろうな。
 こう振り返ってくると、フロンターレは不運だったと思う。ただしリーグ戦はまだまだ長いし、今期彼らはACLがない分、秋口はライバルと比較して、日程は楽になる。「このような試合もある」と割り切り、「後期はいかに阿部を破るか」と考えるのが健全だろう。

 ここに来ての阿部の復調を一番喜んでいるのは、岡田氏かもしれない。啓太が離脱している現状で、岡田氏は阿部(先日のバーレーン戦でのプレイは論外の酷ささったが)と闘莉王をどう使っていくか。召集が確実視される俊輔、松井と、遠藤、憲剛の組み合わせを含め非常に興味深いところだ。さらに、少々怪しいが個人的には物凄く嬉しい報道もあるのだが、それはそれとして。
 また、細貝と谷口の好調は、反町氏を喜ばせている事だろう。オーバエージがどうなるか、全く予想はつかないが、五輪ではこの2人で中盤を構成させるのも一手段だろう。それにしても、反町氏の、谷口への評価は理解できない。一昨シーズンJのベスト11にも選考される活躍をしている谷口を散発的に呼び、(谷口はよいプレイを見せたにもかかわらず)代表から外し、Jでの実績が谷口以下の選手を選択してきた。何がしかの理由で反町氏は谷口を気に入らなかったのだろう。選手選考の権利は監督に帰するから、それはそれで1つの考えだと思う。しかし、最近再び反町氏は谷口を選考し始めた。反町氏は谷口をいったいどう評価しているのだろう。
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2008年05月07日

43年目の危機

 ジェフがクゼ監督を解任した。ここまで11試合では2分9敗、内容も芳しくなかったが、何より全く結果が出なかった。通期の約1/3を終え、降格脱出権の15位のとは勝ち点10差。フロントとしても看過できないと判断したのだろう。

 以前も述べたがが、監督交代時に一番難しいのは、その後任の監督が前任者より優秀である必要がある事。そうでない場合(そしてそうでない事が世の中結構多い、世界にそうたくさんのシャムスカはいない)、そのチームはさらに階段を転げ落ちるように苦戦するケースもままあるのだ。そう考えると、クゼ氏の実績を考慮し、もう少し我慢をする選択肢もあったようには思う。
 特に現状のジェフの場合、昨シーズンの中軸が大量に抜けただけに、それなりの選手を集め直し、基盤からチーム作りをする必要があった。クゼ氏の招聘はその狙いがあったはず。事実、クゼ氏はクロアチアでの評価も悪くないし、ガンバでのそれなりの実績もあった監督だったのだ。そう考えると、クゼ氏の能力をもってしてもJ1で存分に戦えないほど基盤の選手の能力が足りなかったと考えるべきだろう。
 とすれば、今後のジェフは、基盤強化のための選手補強と、より能力の高い監督獲得と言う、2面から対応を考える必要がある。ある程度の基盤があったチームならば、やり方の異なる監督を就任させればよいだろうが、現状のジェフは全く違う。監督交代と言う大ナタのみで現状の問題を解決できるとは思えない。

 そうは言っても、クゼ氏最後の采配となったレッズ戦、失点場面の映像を見ただけだが、ジェフフロントが「何か手を打たなければ」と考えたのも無理ないようにも思えた。1点目は闘莉王の個人能力にやられた感があり、単に戦闘能力差と捉えればよい失点だった。しかし、2点目、3点目はDFが精神的に萎えてしまっていたのか(肉体的な疲労と言うよりは精神的に疲労して身体が動かないように見えたのだが)、揺さぶりについていけず、非常に無様な失点だった。クゼ氏の采配や選手選考がどうのと言うより、選手達が戦えなくなっている現状で、一種のショック療法として監督を交代する発想はあるのかもしれない。
 現状後任が発表されていないが、契約面を含めまだ目処が立っていないのだろうか。あと2試合リーグ戦をこなせば、リーグ戦が長期中断するので、それまでは暫定政権でつなぎ、本格政権として大物監督を招聘しようと言う狙いか。上記したように、選手達に精神的疲労感が目立つために、とにかく流れを変えようと言う事なのだろう。
 また補強面だが、報道によるとサンフレッチェの戸田、ガンバの寺田など、それなりの実績があるが出場機会の少ない選手を狙っている模様。狙いは悪くないと思うが、守備ラインには相当スーパーなタレントの獲得が必要ではないか。格段の実績を持ち、将来性もあり、シーズン序盤の不振で出場機会に恵まれていないCBがいるのだが、彼をレンタルで獲得すると言うウルトラCがあるように思うが、相互の感情面を考えると難しいのだろうな。そうすると、新しい外国人DFの模索となるのだろうか。

 以前から幾度となく述べてきたように、古河−ジェフは、JSL開幕以来43シーズンに渡り、1部リーグの座が確保し続けてきた唯一のクラブ。昨期も危なかったが、今期はいよいよ危ない。
 暫定政権を支えるのは、越後和男コーチ(ベガルタサポータとしても何とも思いで深い男だが)の模様。おお、古河がアジアチャンピオンを獲得した当時の若き指揮官ではないか。越後氏が、この名門の苦境をいかに支えるか、まずは注目したい。
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2008年05月06日

冷静に現状を喜ぼう

 ベガルタはロスタイムに決勝点を奪い、敵地でサンフレッチェに勝利との事。強敵ゆえ攻勢を取られ、敵シュートが2本ポストに当たったりした模様。一方、当方のシュートがかき出されたのが非常に微妙だったり、攻められっ放しでもなかったようだが。ここは素直に難敵に対する敵地での勝ち点3を喜ぼう。
 さらに嬉しいのは、得点を決めたのが中原で、アシストが由紀彦と、ある意味シーズン当初から最も「狙える」雰囲気の2人で奪った得点だと言う事。滞空時間の長さを誇るFWと、サイドからの高速クロスを得意とする選手がいるのだから、何とか巧く噛みあって欲しいと言う願いがようやく叶ったか。
 また、8期目でリーグ戦に初出場を果たした萩原がよいプレイを見せたのも、何とも嬉しい。それにしても、萩原が感じたプレッシャは相当なものがあったと思うが、大したものだ。そして、苦労した選手の成功は、そのままチームの厚みにつながる。

 とは言え、リーグ戦をおよそ1/4終えたところでの成績としては、可もなし不可もなしと言ったところだろう。贅沢を言えば、ホームのヴォルティス戦とホーリーホック戦は勝ち点3を取りたかったし、敵地のベルマーレ戦とセレッソ戦は引き分けに持ち込みたかった。しかし、この日のサンフレッチェ戦みたいに敵地で「巧く行った」と言う試合もあるのだし。現実的にサンフレッチェが大崩れするとは考えづらいので、1強の混戦リーグがしばらく続くのだろう。そう考えると、4節のセレッソ戦で2敗目を喫した後は、状態が悪くとも必ず引き分けには持ち込んでいるのは評価してよいと思う。FWの誰かが大化けしない限りは、そのように丹念に勝ち点を積み上げていく試合を続けるしかないだろうから。
 1つ気になる点は、後方中央が結局木谷、岡山、直樹、永井とベテランに頼る構造になっている事。ホーリーホック戦の前半、不出来だったために交代させられた広大は、ここ2試合ベンチから外されている。また、ようやくベンチ入りしている富田だが、直樹や永井に疲労が顕著になった終盤でも起用される事が少ない事から、まだ手倉森氏の信頼を存部に確保できていない模様だ。磯崎の復活も重要だが、後方の若手選手の奮起を待ちたい。同様に平瀬、由紀彦が結果を出している状況だが、西山、飛弾らにも、もっと割り込んで来て欲しいものなのだが。

 J2は当面混戦が続く。新加入の岐阜とロアッソを含め、ここ数年で予算が足りないなりにJ2で戦い抜くノーハウが全チームに普及しつつある。最終的には、戦闘能力の高い低いでジワジワと差が開いていくだろうが、いずれのクラブとの試合でも「確実な勝ち点確保」は難しいと思われる。
 そう考えると、ここ最近のベガルタのように、失点してもせいぜい1点、いずれの試合でも1点は取る、と言う試合を継続して、大事に戦い続ける事が夏場までは重要なはずだ。夏場に入れば、過密日程の中、選手層の差、負傷者を巧く回復させる対応、引き分けや小差の負けを割り切る姿勢、など別な駆け引きが出てくるだろう。しかし、今はまだそのような段階ではない。彼我の戦闘能力差を考慮しつつ、ホームでは勝ち点3、敵地では勝ち点1、それぞれを大事に獲得する事を目指す試合が継続する。
 できれば、サンフレッチェもその混戦から抜け出せないでくれれば、ありがたいのだが、そう贅沢は言ってられないだろう。
 毎年の事とは言え、このような陰々滅々としたリーグ戦に1年付き合えるのだから愉しい。もっとも、先日述べたように、近い将来この愉しいリーグ戦に「陥落」と言う、より愉しい変化が生まれるだろう。これは盛り上がるよ(その前にJ1に上がれれば嬉しいけれど、上がったら上がったで今シーズンのコンサドーレ的な苦闘を愉しむ事になるのだな)。
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2008年05月04日

日本のクラシコ(下)

 西野氏の続きに行かなくてごめんなさい。ご要望にお答えして連勝したあたりで書きますね(それにしても、何と言う過酷な日程なのだろうか、そして来期の「改革ACL」ではさらに試合数が増えると言う情報も...)。

 読売対日産を「クラシコ」(繰り返すが「伝統の一戦」の方が適切に思うけれど)と呼ぶ事に否定はしないが、私のような年齢の人間には、いずれのクラブも70年代後半以降に強くなってきた新興チームと言う印象がどうしてもある。
 ちょうど私が熱心にサッカーを追いかけ始めた頃のJSLは、ヤンマー(現セレッソ)、三菱(現レッズ)、日立(現レイソル)の3強時代と言われていた。中でも、ヤンマー−三菱戦は、非常に注目を集めた対決だった。そう言う意味では、セレッソがJ1に復帰すれば、将来そのような販売促進に挑戦するのは、結構面白いのではないか。釜本のように華のあるオジサンもいるし(一方のレッズはそのような販促をする必要もないんだな)。
 などと年長の友人に話していたら、「ヤンマーだってしょせん60年代後半に釜本を獲得して強くなった新興チームではないか、やはり東洋工業(現サンフレッチェ)と八幡製鉄が...」と語りだした。八幡製鉄は後の新日鉄だが、残念ながら継続しているクラブはない。しかし、考えてみるとJFLにニューウェーブ北九州があるから、両クラブが同じリーグでプレイすれば、「超クラシコ」と強引に呼んでみるのも面白いかもしれない。と言う事で、サンフレッチェの皆さん、「無理に急いでJ1に戻らずとも...」と、6日の試合に思いをはせたりして。
 いや、さらに遡ると、田辺製薬だとか、結局早慶戦だとか、東京帝大(東大)と東京高等師範学校(筑波大)ではないとダメだとか、色々出てくるだろうが、キリがないですね。

 ここまで名前が挙がっていない伝統のチームと言うと、やはり古河(現ジェフ)と言う事になる。なにせ、このクラブは、昨シーズンも述べたように、1965年JSL結成以来過去ただの1度も2部に落ちた事がないのだ。昨シーズン「いよいよ危ない」と思われたが、終盤の盛り返しで無事残留。
 ところが、今シーズンも、ここまでの成績は芳しいものではない。あれだけ中心選手が抜ければ仕方がないとも言えるし(一方で、あれだけ中心選手が抜けたのだから、短期的に物凄い量の現金がはいったはずだから、相当な補強ができたはずだと思うのだが...)、シーズンはまだまだ長いから、妙に慌てるタイミングではないはず。今重要な事は、適切な補強構想、一層の組織化など、先を見た施策だろう。負傷がちの巻に今の時点で無理をさせるなどは、最大の愚策だと思うのだが。
 さて、ジェフは次節レッズと敵地で対戦する。不調のクラブには、あまりに厳しい難敵となる。で、ハッと大昔30年前を思い出したのだ。こちらの97ページをご覧いただきたい(会員登録が必要ですが無料なので是非)。古河が三菱を破った試合なのだが。
 この78年シーズン、ヤンマー、フジタ(現ベルマーレ、このクラブの伝統もすばらしいな)と優勝を争っていた三菱は、後期の連勝で一気に独走体制に入った。日本サッカー史に残る巨人落合弘(偶然ながら、先週発売のサッカーマガジンの54ページに取材記事が掲載されている)が守備を固め、現レッズ社長の藤口光紀が中盤を仕切るバランスの取れた好チームだった。
 一方の古河、前々シーズンにJSLを初制覇し、そのまま強豪としてJSLに君臨するのではないか、とも予想されたのだが、奥寺の欧州移籍などもあり、すっかり停滞。このシーズンはリーグ序盤から連敗を重ね、最下位独走状態だった。大永井、前田秀樹など、代表の完全なレギュラ選手を抱えていたにも関わらずにだ(ちなみにマリノス監督の桑原氏も当時の古河の中心選手)。
 そして、この78年10月6日の試合、苦闘していた古河が意地を見せて、優勝に向かう三菱を止めた。この試合はリーグ終盤であり、その後三菱は堂々の優勝。古河はそのまま最下位、入替戦で新進気鋭の本田に大苦戦しながら、前田秀樹の大活躍で乗り切りJSL残留をする事になるのだが。状況も環境も大きく異なるが、30年ぶりの因縁を愉しんでいただければ。

余談 
 引用したサッカーマガジンのバックナンバだが、冒頭のユース代表のメンバの方が、もっと受けるかもしれないな。4ページの集合写真など、お愉しみ下さい。ちなみに、同郷のスーパースターの鈴木淳はこの大会で、初めて日の丸をつけたのだが。
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2008年05月03日

日本のクラシコ(上)

 先日言及したが、ヴェルディが、マリノスとのホームゲームを「クラシコ」として販売促進を行った。日本テレビも珍しく地上波で生放送。夜のテレビニュースでも再三採り上げられたので、「クラシコ」との情宣は成功だったのだろうか。ただし、NHKのJリーグダイジェストで、木村和司氏が寂しいと語っていた21798人と言う観客数は今一歩だったが。もっとも和司の全盛期の日産対読売の観客数など、1万人行けば超大入りだった訳だけどね。
 個人的には、「クラシコ」のような外来語を使うとどうにも印象が軽くなるので、「伝統の一戦」の方が販促上はよいように思うのだが。「多摩川クラシコ」と言う「軽さ抜群のグッドアイデア」が既に先行して一定の成果を挙げているのだし。
 もう1つ、テレビのアナウンサが提供する情報が混乱していた。どうやら、クラシコの開幕をJ開幕戦(あの、ほんの僅かな期間でいなくなってしまったオランダ人のマイヤーの先制点の試合)に設定しているのだが、J開幕戦がスタートでは「クラシコ」もへったくれもない。あくまでも80年代、プロ化を指向して日本サッカー界をリードした時代があっての「クラシコ」だろう。せっかく、83年読売がJSL初制覇した以降、読売と日産が相当期間タイトルを独占した事は映像で紹介していたし、正確には聞き取れなかったが「最初の対戦は7○年」とアナウンサが語ったり、とJリーグより前の情報も提示していたのだから、もう少しやりようはあったのではないか。
 私の認識ではこの両クラブの初対決は77年8月28日、JSL2部、三ツ沢にて日産が1−0で勝った試合。この試合に坂木嘉和、清水秀彦、ジョージ与那城、小見幸隆、松木安太郎、鈴木武一らが出場していた。もちろん、日産の監督は加茂周氏。こう言った面々に取材をすれば、非常に分厚い放送となったと思うのだが。そうすれば、ラモスや木村和司氏のような「若手」に頼る必要もなかったのではないか(もっとも、ラモスは松木よりも数ヶ月年上か)。

 まあいいや、試合に行こう。
 ヴェルディが先制するまでは、完全にマリノスペース。ディエゴに対して厳しいチェックをかけ、フッキにまともなボールを入れさせない。一方で、この圧倒的なマリノスペースの時間帯を無失点でしのいたのが、勝敗を分ける事になった。ヴェルディの最終ラインは土屋、那須、服部、富澤(富澤はサイドバックの負傷で急遽本来とは異なるポジションでの起用となった模様だが)、さらに中盤も菅原、福西、大野と経験豊富で手練手管に長けた選手が多く、バランスがとれている。中でも、先日から中盤底に起用されるようになった菅原の知的な位置取りと服部の巧妙な上下動は非常に有効。我慢をしているうちに、ディエゴがよい体勢でボールを受けられるようになってくる。フッキが出場停止になっているうちに、菅原の起用を軸に守備組織を立て直しフッキの復活に備えた柱谷氏の成功とも言えよう。
 そして迎えた39分、ディエゴが左(以降も左右は全てヴェルディサイドから見て)に巧く進出、中澤を引き出して低いセンタリングをフッキに。ここで、フッキには田中裕がしっかりと付いており、さらに逆サイドには小宮山が戻ってカバーに入っていた。つまりマリノス守備ラインは全体が右にスライドして、組織的には崩れていなかった。ところが、あろう事か田中裕がセンタリングをインタセプトしようとして空振り、全くフリーでボールを受ける事に成功したフッキが冷静に決める。さすがの中澤も部下の不首尾がこのように出てはカバーのしようがない。80年代後半、強い時代の読売は、悪い時間帯は加藤久、トレド、松木、エジソンらで粘り強く守り、隙を突いてラモス、湯田、戸塚、上島、ガウショあたりで点を取るのがやたら巧かったな。
 後半開始早々、ロニーの外に向かうドリブルから強く踏み込みGKの二アサイドを抜くシュートで、マリノスが追いつく。木村和司、金田、マリーニョ、水沼、レナトなど、組織攻撃が巧く行かない時には「圧倒的な個」で得点を決めるのも、日産以来の伝統か。
 ところがヴェルディはディエゴ、フッキのコンビで突き放す。この場面の中澤の守備策は議論が分かれよう。ほぼゴール正面からディエゴがドリブルで前進、斜め前方左に開いたフッキに速いパス、ここで中澤はパスの方向(つまり自分から見て右側)にターンした。セオリーからすれば、ワンツーを警戒してパスの後走り込むディエゴの方向(自分から見て左側)にターンすべきなのだが、フッキの事だから強引にシュートに持ち込む(あるいは、1点目でフッキのマークをし損ねた田中裕のカバーを考えたのか)と読んだのだろうか。結果的にフッキは、ディエゴにリターン、抜け出したディエゴが冷静に決めた。中澤の読み違え負け。
 さらにヴェルディはGK榎本のミスから拾ったボールを丁寧に回し、最後は左サイドで服部が全くのフリーになって、狙い済ましたセンタリングを逆サイドの福西に正確に合わせ10年来のコンビネーションを見せてくれた。以前より不思議なのだが、マリノスはGKの補強を考えないのだろうか。榎本と言うGKは乗っている時の能力は素晴らしいが、大ポカが多過ぎると思うのだが。と、マリノスベンチのGKコーチを見て、そう言えばこの人の80年代の不安定さも酷かったと思い出したりして。

 マリノスは、上記したGKへの疑問、隼磨の調子がもう1つな事、ロペスの使い方(と言うか、いい選手だと思うし、大好きな選手なのだけれども、J1のトップを目指そうと言うチームの「将軍」ではないと思うのだが)など疑問が多いのだが、戦闘能力は抜群だし、桑原氏の手腕も疑いない。これらの問題が修正され、それなりの所まで行くだろう。山瀬が完全に確立すれば「久々」もあると思う。
 ヴェルディは、ようやく体制が整備された。フッキと言う爆弾は存分に機能するのはもうわかっている事、最大の問題は後方のベテラン達が夏場にどこまで戦えるかだろうか。
 何にしてもはっきり言える事は、この両チームが強い方がリーグ戦が面白いと言う事だな。 
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2008年05月02日

西村主審暴言問題

(一部わかりづらい部分を修正しました 2008年5月3日)

 最初から最後まで、何ともがっかりする話だ。「死ね」発言があったと言う話にも、日本協会の収拾策にも。

 「犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛むとニュースになる」と言うけれど、そのような類の話と言えるのだろうか。選手が審判に暴言を吐いて「ハイ、サヨナラ」は、それはそれで残念だが、しばしば見受けられる場面である。しかし、審判が選手に暴言と言うのは...
 学生時代の事だから25年くらい前になるだろうか、社会人の相当レベルの高いチームに練習試合をしてもらった事があり、先方のチームから主審が出た。チームメートがハンドと判定されPKを取られたので、主審にしつこく文句を言った。すると、その主審は「うるせえ、ガキは黙ってろ!」とフィールド中に響き渡る大声で恫喝?してきた。若い学生に色々言われたので、単に腹が立ったのだろうが。横から見ている限りでは、直後のチームメートの腰の引け方が面白くて笑いをこらえるのに苦労したのだが。まあ、しょせん田舎の練習試合ならば、このように愉しい思い出になるのだが、今回はJリーグの主審だからねえ...
 しかし、本当に「死ね」と言ったのだろうか。私の感覚からすれば、「死ね」と言う表現は、1対1で口論になり相手を罵る場合にはあまり使わない気がする。この表現が取られるのは、殺し屋が人を殺そうとする瞬間が典型に思えるのだが(つまり発言者が殺人行為をする場合)。自分が直接手を下さずに相手の死を望む場合は、普通「死んでしまえ」と言うように思う。もっとも、この表現はインタネットが普及して、ポピュラに使われるようになったのかもしれないから、私が古いのだろうか。それとも西村氏は、インタネットの巨大掲示板を愛好しているのだろうか。
 大体、「死ね」と言われた選手は主審の指示にしたがわなかったのだが、それはそれで警告されないのかと心配したりして。

 と、バカを言っている場合ではないな。

 本件については、日本協会もすぐに動き、正式なリリースを発表した。田嶋氏によると
「西村主審は、抗議した選手に対して『うるさい。黙ってプレーして』と注意を促したが、『死ね』とは言っていないと否定している。映像や調査からも、主審がそう発言するほどの状況だったとは思えない。
との事である。
 日本協会としては、(性善説から評して)証拠不十分な告発は無罪としか判断しようがないだろうし、(性悪説から評して)証拠不十分な告発なので臭いものには蓋をしたいのだろうし、ある意味で予想された処理である。実際に確かめようもない事だし、上記に述べた小理屈で「死ね」と言う発言には不自然なものを感じる事も否定はしない。ただし、是非、田嶋氏にはテレビの前で「うるさい。黙ってプレーして」を代演いただき、「死ね」と視聴者が聞き違えるかどうか実験する事を期待したい。

 しかし、状況把握が決定的にずれている。

 問題は「死ね」と言ったか、言わなかったかではないだろう。
 主審が「死ね」と言うのは論外だ。しかし、「うるさい」と言うのだって十分問題ではないか。「うるさい」と言う日本語は親しい者同士に使われる分にはそれほど失礼な表現ではないし、冷静な会話内でも使われる。しかし、それほど親しい間柄ではない者同士に使われる場合は、主に恫喝的に使われるのが普通だ。西村主審と当該選手がある程度以上に親しいならば、元々今回のようなトラブルにはなっていないだろう。そう考えれば「うるさい」と恫喝したとしか思えず、西村主審はその時点で相当興奮していたとしか推定できないではないか。
 本質的な問題は、西村主審が試合中に相当興奮していた事にあるのだ。

 サッカーの試合中に、選手が興奮し冷静さを欠く状況になるのは、誉められた事ではないが、仕方がない事だ。サッカーとはそのような競技なのだ。その興奮した選手を諌めるのは、チームメートであり、ベンチであり、審判であるはずだ。そして、サッカーと言う競技は、どのような混乱があっても、その最終決定は「審判、それも主審が行う」と言う約束で行われているのだ。だからこそ、審判は冷静である必要がある。
 それでも審判だって人間である。何かしら不運があって、ついつい感情的になってしまう事あるかもしれない。それは褒められた事ではないが、人間である以上はそのようなミスが起こる可能性は常にある。だからこそ、そのような感情的な状態になってしまったら、審判として「不出来であった」と猛省してもらわなければ困る。そのために、日本協会は「不出来の審判」に対して、厳しい態度で臨む必要があるのだ。そして、「うるさい。黙ってプレーして」と言った主審は極端に不出来だったのだ。不出来だった以上は何がしかの叱責が必要になるのではないか。
 ただし繰り返すが、人間なのだから完璧は望めないと言う事。1試合出来が悪かったと言って、審判に致命的な厳罰を処するのは違う。スター選手だって不出来の試合があるのと同じだ。不出来な試合があったから、「スペシャルレフェリーをクビにしろ」とか「J1の笛を金輪際吹かすな」は飛躍に過ぎる。もちろん、あまりに1人の審判が、そのような大トラブルを重ねたるならば、その審判の素材的な能力を問われる事になるけれど(そして、そう指摘したくなる主審がいる事が悩ましいのだが、それはそれとして)。
 だからこそ、日本協会は「審判の不出来」を議論するのを避けるべきではない。そしてこれだけ、メディアが発達しているのだから、それは内部の議論に留めるのではなく、オープンな議論をすべきである。「審判はミスをしない」とか「何があっても審判が正しい」と後知恵で語れる時代ではない事を理解していないのではないか。
 簡単な話だ。「西村主審は『死ね』と発言ていない模様」で留めてはいけないのだ。「ただし、西村氏はいささか神経質だった。改善を期待したい。」と添えて反省を促した事を公開すればよい。同様に相当の問題があった時や、問題を起こす頻度が高い審判に対して、審判する事を休ませる措置をを公開するのも躊躇すべきではなかろう。

 先日私はアルビレックス−サンガ戦の佐藤隆治主審の不出来を酷評した。当該エントリでUZ氏が「佐藤氏がよい笛を吹いた試合もある」と指摘してくれた(このようなコメントは本当にありがたい)。また、佐藤氏の前節のマリノスージェフ戦での笛がよかったと複数の友人から聞いている。
 西村氏だって、この時のように「これ以上難しい試合はない」程の試合を巧く吹いた実績もある。

 日本協会は「臭いものに蓋をする」措置を継続する事で、日々努力している審判諸兄への不信感を自ら高めている事に気がついて欲しい。
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2008年04月30日

西野監督について(上)

 ガンバとアントラーズが思うように勝ち点を伸ばせないでいる。いずれのチームも、先週のACLの疲労が抜けていないのだろう。黄金週間ゆえ継続する過酷なスケジュールを西野氏とオリベイラ氏はどうさばくのか。

 と言う事で、今日は(自分で宿題としていた)西野氏について語りたい。

 西野氏の事を私は嫌いだ。理由は単純な話だ。過去何回も書いた事がある。さらに興味のある方は、左側の検索窓に「西野」と入力し、記事のボタンを押して検索すれば、偏見と屈折に満ち溢れた西野氏評を愉しんでいただけるであろう。「嫌い」と書くものだから、過去も再三コメント欄でお叱りをいただいた事がある。しかし、嫌いなものはどうしようもないし、「嫌い」と書いておけばお読みになる方も、「ああバイアスがかかっているな」と読んでいただけると思うのだが。
 ともあれ、このような偏見に満ちた私ではあるが、西野氏が紛れもなくここ最近日本で最も実績を挙げてきた監督である事は否定できない。そして、氏自身2度目のアジアチャンピオンズリーグへの挑戦となる今シーズンは、ガンバフロントの努力で揃った質量ともに強力な陣容で、氏がどのような戦いを見せてくれるか、多いに愉しみである(私にとっては屈折した愉しみだが)。

 西野氏はガンバ監督に就任前にも存分な実績を残しているのは言うまでもない話。まず、アトランタ五輪出場、今でこそ日本は95年以降、ワールドカップ、五輪、ワールドユース、いわゆるプロが出る世界大会は毎回皆勤している(実際、のワールドユース以降これら3大会に日本が出場しなかった事はない、ブラジル、アルゼンチン、韓国!でさえワールドユース予選ではドジを踏むのだ。13年間予選突破率10割なんて、世界中で日本くらいなのではないか...と、少し統計を調べてみたのだが、完全には調べ切れていません、誰か調べてください)。しかし、当時は「日本が予選を突破する」と言う概念そのものが薄かった。実際日本がアジアの予選を突破できたのは、直前のワールドユース(その主力だった田中誠、松田、中田らがそのままアトランタのこのチームにも参画していた)を除けば、あのメキシコ五輪まで遡らなければならなかったのだ。そのアトランタ予選を突破した事は高く評価されよう。
 アトランタ本大会でもブラジルに見事な勝利を収めている(あの勝利について、「守備的で情けない戦い方」と言う評価はあり得ない)。準々決勝進出には失敗したが、あれはナイジェリア戦の「鈴木秀人の歴史的珍プレイ」によるもの。監督は結果責任を負うのは仕方がないが、どう考えても鈴木秀人の責任は重い。
 ただし、当時私は2つの点で西野氏に不満だった。
 1つはオーバエージを使わなかった事。当時は井原とカズの全盛期この2人に加え、代表で地位を獲得しつつあった名波か森島あるいは手薄な右DFの名良端、柳本、ミニラ中村あたりを、アトランタに連れて行けば格段に強力なチームになっていただろうし、翌年のフランス予選にもよい準備となった。そもそも、当時のA代表加茂監督は、攻撃の切り札である前園を「五輪優先」で自由に使えなかったのだから、ひどい話だ(このあたりはこちらを参照ください)。
 もう1つは、三浦淳、平野と言ったJで格段に実績を残した選手を起用しなかった事。三浦淳は当時フリューゲルスで完全な中心選手、同じチームの前園との連携も期待できた。平野もグランパスでの評価は小倉よりも高いくらい、95−96シーズン天皇杯決勝はピクシーの指揮の下、平野はA代表でもレギュラを獲得するのではないかと思わせる質の高いプレイを見せていたのだが。

 西野氏はアトランタ後、レイソルの監督に就任。これはかつての中心選手がそのチームの監督を務めると言う、当時としては珍しくない人事だった。
 そこでも、西野氏は見事な実績を挙げる。生え抜きの渡辺毅、加藤望、即戦力として獲得した洪明甫、薩川、期待の若手の明神、北島、南、大野、酒井(負傷による早過ぎる引退が本当に残念な選手だった)と言った選手をまとめ、99年にはナビスコ優勝。さらに00年シーズンには黄善洪が加入し一層チームは強力に、通期での勝ち点はトップながら、前後期共に制せずリーグ制覇を逸した(後期優勝を争うアントラーズとの最終戦での直接対決はJリーグ史に残る名勝負だったが、勝ちが必要なレイソルは攻め切れず涙を飲んだ)。
 翌シーズン、充実したメンバにさらに柳想鉄が加わり、磐石のチーム力と思われたが、開幕からチームは不振。前期を中位に終えたところで、解任されてしまった。

 アトランタ五輪にしても、レイソルにしても、相応の結果を出していた西野氏。選手に恵まれた部分もあったが、よい選手を並べれば勝てると言う訳ではない事は言うまでもない。ただその割に、もう1つ高い評価を得られなかった。
 1つは、常に硬直した采配を批判された。フォーメーションは3−5−2に常に固定。それも、2ストッパにスイーパの3DF、ボランチ2枚にトップ下、2トップの1枚はポストプレイヤが要求される、と固定したやり方に選手を当てはめる事に拘泥し続けたからだ。アトランタで平野や三浦淳を選考しなかったのもそのためだと思われた(もっとも、三浦淳は3−5−2のサイドMFが本職なので、なぜ西野氏に嫌われたのかは不明)。
 選手がしばしば造反するのも目立った。アトランタでの前園、中田らが離反した事(短期的なタイトルマッチで、そのような態度を取る選手も、それを抑えられない監督も、それぞれ情けないと思うが)は有名だが、レイソルでもA代表に選ばれるようになった北嶋が出場機会について不満を顕わにした。

 そして、西野氏はガンバの監督に就任する。

(以下続く)
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2008年04月27日

負けて感じたグランパスの強さ

 あるグランパスサポータの友人が、ヴェルディへの敗戦後に「グランパスの今までの相手が強かっただけ。弱いチームとやれば当然負けるってことよ。」と悔しがっていたが、負ける時って言うのはこういうものなのだろう。

 とは言え、グランパスがヴェルディの注文相撲にはまってしまった一戦だった。前半からヴェルディの出足のよさに苦戦気味のグランパス。特に中村、小川の中盤の新2枚看板(「新」と言うには、中村はもうよい年齢だが)が、ヴェルディの厳しいプレスを抜け出すのに大変苦労していた。このあたり、福西、菅原と経験豊富なボランチが利いていた。
 もっとも、シーズン序盤よりヴェルディのチームのバランスは決して悪くなかった。ただフッキの加入でバランスが崩れたところで(フッキが入れば点は入るようになるが、その独善性からバランスが崩れる)、フッキが出場停止になり、バランスが崩れて点も入らない状況に陥っていた(前節のレイソル戦は酷かった)。しかし、柱谷哲二氏もさすがに修正を加えてきて、バランスを取り戻してグランパス戦に臨んだと言う事だろう(そう言う意味では、02年でコンサドーレの監督を務めた時よりは、格段に監督としての能力は高まったと言えるのではないか)。
 ただし、これもでも悪いなりに勝っていたところもあり、0−0のまま後半にもつれた所で、何となくグランパスが勝つのかなと雰囲気も漂っていた。その雰囲気を断ったのが、老獪な服部のセンタリングだった。巧い仕掛けでフリーになった所で、浅めの角度から、ディエゴの反転力を信頼し、戻し気味の絶妙なコースに蹴り入れたもの。一般にセンタリングはFWがゴールに向かう向きで受ける事ができるボールの方が得点につながる確率が高いもの。ところが、このボールは全く逆を狙った。ちょうど湿ってすべりやすい芝と言う事もあり、グランパスの若いDF達はしゃにむに自陣に向かって戻る事になったため、ディエゴが後方に向いて細工する動きと逆になり対応ができなかった。ここの所急成長を見せている吉田も、全く読みきれないコースに対応が遅れた(この若者には最高クラスの失敗経験と言えるのではないか)。
 さて、先制されたグランパスは早々に杉本を投入し仕掛ける。が、小川と中村が分断されている事もあり、どうにもバランスが悪い。そうこうモタモタしているうちに、ヴェルディの河野がFKに合わせ、はるか後方から挙動を開始し、マーカの竹内を完全に出し抜いてヘッドを決め突き放してしまった。竹内には非常に厳しい言い方になるが、「持って生まれたもの」の差を感じる場面と思えた。竹内が謝罪の機会を提供してくれる事を強く期待したい。

 ただ、展開が悪かったが故に、逆にグランパスの「個」の凄みを感じ、ここまでの好成績に納得させられる試合だった。このあたりの「個」を巧く発揮させているのが、ピクシーの強みなのだろうか。
 ヨンセンがバックパスをするフリからターンして放ったシュートは、なるほどこの晩熟のストライカが欧州の代表チームのエースとして活躍するはずだと思わせるプレイ。阿部と(さきほど酷評した)竹内は、攻め上がり敵に巧く守られても、諦めず僅かな隙を見つけて見事なクロスを上げる。杉本の再三の前進には相変わらず興奮させられる(もっとも、すっかりスピードのなくなった服部が最初のワンタッチに勝負を賭けて杉本を止めに行くのは面白かった)。
 そして玉田。今シーズンは往時の切れが戻り、代表にも復帰した。そしてこの日のように、チームのリズムが悪くなると、とたんにこの男は後方に下がり多数の選手を強引に抜こうとしてはつぶされる。瞬発力やその後のシュートの素晴らしさ、最初のボールタッチが雑で抜け切れない事は、以前も指摘した事。その長所、短所については、相変わらず変わりないようだ。しかし、瞬間の魅力は、他の日本人ストライカにはないものがあるこのタレント。極論すれば、最前線で得点を狙えば有用で、ボールが来なくて後方に引いて無理をすると何の役にも立たないタレント振りは、ロナウドと類似性がある。
 ピクシーと岡田氏は、この難しいタレントをどう使いこなしていくのか、今シーズンの玉田の活躍を期待して待ちたい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ

2008年04月24日

関塚氏の早期復活を祈る

 フロンターレ監督関塚氏が、病気のために辞任をした。非常に残念。何より早期の回復を祈りたい。

 過日も述べたが、氏は現役時代も不運な病魔に襲われ、全盛期に大きなブランクを経験した。あそこでのブランクは、何より選手関塚隆にとっては痛恨の極みだったろう。そして、もし関塚が病魔に襲われずにソウル五輪予選の日本代表に加わる事ができていれば(ソウル五輪までは、アジアの国はフル代表チームは五輪に出場できた)、日本サッカー史も変わっていた可能性すらあると思っている。
 そう考えてみると、今回の病気による辞任は、栄光に包まれた氏の経歴を通じて、2度目の痛恨事と言えるだろう。監督に就任して5シーズン目を迎えた関塚氏。昨シーズンには、これ以上考えられないほどの痛恨の経験を積む事を余儀なくされた。そして、着実に戦闘能力を整備して迎えた今シーズン、関塚氏は思うところがあったはずだ。シーズンの立ち上がりこそ今一歩の成績だったが、次第にチームは安定感を増していった所だったのだが。

 何と不運な男なのだろうか。

 しかし、今回の痛恨は22年前と異なる事がある。選手生活は短い。20代半ばの戦線離脱は、その選手の経歴に挽回不能な損害となる。しかし、監督は違う。復讐戦の機会は残されている。
 まずは健康回復に専念して欲しい。体調を戻して、再度の挑戦を。

(余談)
 憲剛に改めて期待したい。
 恩師の不運を乗り越えて欲しい。より完璧な選手に成長する事が関塚氏への最高の見舞いとなるはずだ。そして、氏の指導なしでも、真の創造者として、フロンターレはもちろん日本代表でも君臨する事を。
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2008年04月20日

赤札無情

 アルビレックス−サンガ戦。例のレッドカード3発と言う試合の判定について。
 昨日も触れたが、この試合は、鈴木淳対加藤久と言う、私にとってあまりに深い思いの対決である。したがって、試合内容そのものや2人に対する思いを対比して文章を書きたかった。しかし、久さん本人まで大爆発してしまって退席処分を食らう試合について、冷静なフリをして文章を書く訳にもいくまい。これは後期の対決での宿題としたい。

 と言う事で、3選手退場、久さん退席について。
 結論から言って、私は主審の佐藤隆治氏が相当不出来だったと思う。典型的な主審が壊してしまった試合と言えるだろう。
 この主審の不出来については、テレビで野々村芳和氏が非常にクリアな解説をしおり、その内容を中坊さんが要領よくまとめているので参照して欲しい。以下の私の講釈も、この野々村解説を参考に語らせていただく。

 実はこのようにVTRで判定振りを評価されるのは、主審としてはつらいものがあると思っている。試合はものすごいスピードで動き主審は常に瞬時の判断を要求される。VTRならばスロー再生も可能だし、何回も見直す事も可能。さらに主審から見えない角度や距離で行われたプレイが、複数の角度のカメラで映された映像の1つにきれいに映される。それで誤審濃厚と後から判断されると「見る角度が悪いから主審ダメ」と言われる。中坊さんが孫引き的に指摘しているが、
イタリアではカルチョで疑問符がつく判定に対し、その日のTVで徹底的に取り上げ、この判定がどうおかしいのか、どこが問題なのかを解説する番組がある。日本ではタブー視されているのか、ないけれどこういう番組や姿勢は日本でも必要だと思う
は、正論であり、その方向に進む事が日本サッカーにとってプラスになるのは間違いないと思う。しかし、上記の理由で、その方向化にいささか複雑な気持ちもある。
 また、よく日本の主審はカードを切り過ぎ、試合の興趣をそぐと言う指摘がある。多くのケースで私はそれに同意する。つい最近もこんな試合があった。しかし、その時も述べたが、主審が適切にカードを切らないと、ようにとんでもない試合になる事もあるのも、また確かなのだ。したがって、カードがたくさん切られたから、大量の退場者が出たから、主審の出来のみがよくなかったと判断するのは危険だとも思っている。

 しかし、今回のアルビレックス−サンガ戦に関しては、議論の余地はない。主審の佐藤氏が悪い。個別の判定の是非ではなく、主審として本質的にダメだったのだ。これは赤紙を3枚出したからの判断ではない。
 増嶋が食らった1枚めのイエローカード、ファウルを取られて悔しがった増嶋の態度に対して出されたものの模様だったが、野々村氏は
厳密に言えばカードだすかもしれないけど、コミュニケーションがうまくとれていれば、あそこで「増嶋、ちょっとおいで」「今のダメだよ」って言えば済むシーン。
として「コミュニケーション不足」と断罪している。ただし、このような選手に対してのコミュニケーション不足、あるいは尊大に過ぎる態度での、主審のヘマは日本で結構多い。
 ところが、佐藤氏はもっとまずい行為をしていた。序盤、アルビレックスのDFとサンガのFWが交錯したプレイで、アルビレックスDFが転倒し、ボールがゴールラインを割る。すぐそばにいた副審がCKと判定したが、佐藤氏はサンガFWの反則を取った。
このシーンに関しては、副審はコーナーキックを指している。(中略)ところが、この画面にも映っていない主審が(遠くの位置から)「あれは反則です」と言っているわけです。
と、さらに厳しく指摘している。つまり、佐藤氏は選手とのみならず、試合序盤から副審ともまともなコミュニケーションを取れていなかったのだ。

 佐藤氏は77年生まれと非常に若い主審で、JFAレフェリーカレッジ出身との事。昨シーズンあたりよりJリーグの笛を吹き始めたとの事。やや古い感覚なのかもしれないが、30歳でトップリーグの主審と言うのは随分若い印象がある。もちろん「若い」からダメだなどというつもりは毛頭ないが、「部下」である副審の多くは10歳以上年上だろうから、やりづらさもあるだろう。もちろん、ある種の飛び級的な処置はあったのかもしれないが、J1で笛を吹く権利を獲得するまでには、J2以下で相応に高い評価を受けてきたはず。
 そのような主審が、なぜにこのようなヘマを演じてしまったのか。日本協会の冷静な対応を期待したい。

 しかし、久さんも自分が日本代表に選ばれた年に生まれた若者に退席処分を食らうとは思わなかっただろうな。
posted by 武藤文雄 at 21:50| Comment(10) | TrackBack(1) | Jリーグ