2007年01月25日

不愉快な選手

 月曜の朝の事だった。隔日の出勤の友であるエルゴラッソ。見開きの2ページにJ2の上位4クラブ(と言っても上位3クラブはJ1から降格組だったが)の戦力検討が載っていた。「おお、よい企画だ」と思って、私のベガルタを探す。しかし、ない。載っているのは、アビスパ、セレッソ、サンガ、そしてサガン。しばらく悩んだ後、ハタと気が付いた。「そうだ、去年はサガンに抜かれて5位だったのだ。」と当たり前の事を思い出した。悔しい。

 確かにサガンの昨シーズンの躍進は凄かったなと。横浜FCの見事さにやや消された感はあったが、優秀な経営者を迎え、観客動員も順調に増加中。ピッチ上で展開されるサッカーの質も攻守のバランスがよく取れて見事なもの。しかも何が悔しいと言えば、他クラブと比較された際に、唯一ベガルタサポータが誇り得るスタジアムについても、サガンは最も強力なライバルと言える。様々に思いをはせると、「サガンって厄介なライバルになってきたなあ」と感心し、「でも予算規模は当方の方がずっと大きなはずなのに」と悔しさを再確認した。



 その日の帰宅後、インタネットを冷やかしていたら、サガンに所属していたシュナイダー潤之介が、ベガルタに移籍したとの由を発見。高桑を解雇した後のGKの補強だ。さっそく、入団記者会見をのぞきに行った。正直言って、まず違和感、そして不快感を感じた。

 まず違和感から。一言で語れば、同じJ2クラブ同士の移籍なのに、本人があたかあもステップアップしたかのような言い草なのだ。そりゃ私はベガルタのサポータだから「今シーズンはサガンとの試合は最悪でも2勝2敗ペース」と思っているよ。だからと言って、我がベガルタはサガンと比較して、そこまで偉そうな態度を取る事ができるクラブなのだろうか。ちょうど、この日の朝にエルゴラを読んで、悔しい思いをした後だったから、一層そのような思いを感じたのかもしれないが。



 そして不快感。不快感を感じた部分を転載する。
「『シュナ潤』と呼ばれていたとも聞きましたが。」「それは鳥栖に置いてきました。できれば誰か、いい呼び名をつけて下さい。募集しています。」
 今まで「シュナ潤」と呼び、サポートしてきてくれたサガンのサポータ達が、この発言を聞いた時にどう感じるか、この男は何もわかっていないのだ。何たる想像力の欠如か。

 私もよい年で、長い間ビジネスの世界で生きてきた男だ。そして、最も信用できないビジネスパーソンの典型の1つを述べたい。お互い業界で競合関係にあるA社とB社を担当している営業担当者がいたとする。その営業担当者が、A社に対して「私はB社さんよりもA社さんが大事です。」と語ったとしよう。しかし、A社の購買担当者が優秀ならば、その営業担当者の発言を全く喜ばない。何故ならば、A社に対してそのような発言をする人間は、間違いなくB社に対しても「私はA社さんよりB社さんが大事です。」と発言するに決まっているからだ。

 まあ、これは本業が染み付いているビジネスパーソンとしての不快感だな。



 しかし、もっと不快に感じたのはサッカー人としての不快感。

 このセリフは、9年前にカズがしぼり出したあのあまりに重いセリフの、下手なパロディのつもりだろうか。シュナイダー選手が、友人と居酒屋で飲んでいる時に、この重いセリフをパロディにして愉しむのは何ら問題はない。しかし、公的な場で言うか?!!!カズと岡田氏と言う日本屈指のサッカー人を愚弄する態度ではないか。



 もっとも...

 愛するクラブに嫌いな選手がいるのは悪い事ではない。よいプレイを見せてくれて、ベガルタサポータの友人達がニヤニヤと「シュナイダーが活躍しましたよね。」と私をからかう事を祈念するものである。
posted by 武藤文雄 at 23:25| Comment(70) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月22日

今西和男氏引退

 マツダ、サンフレッチェを通じて、所謂GMとして獅子奮迅の活躍をし、実績を残してきた今西和男氏が、とうとうサンフレッチェを退社すると言う。もっとも、03年からは顧問に就任し最前線からは退いていたのだが、おそらく今回の人事で完全にサンフレッチェ(そして東洋工業、マツダ)から、完全に去ると言う事なのだろう。もっとも、大学教授としてのポストを確保されており、各方面からサッカー界の重鎮として引き合いは絶えないだろうから、まだまだお元気に日本サッカー界には貢献いただけるのだろうから、「引退」と言う表題は妥当ではないかもしれないが。



 選手今西は、JSL黎明期黄金時代を築いた東洋工業のディフェンダ。さすがに私はプレイ面での記憶は一切ない。私が「今西」と言う単語を知るのは80年代に入ってからだった。

 83年、60年代栄華を誇り、サッカーどころとして幾多の名選手を生んだ広島にホームを持つ、マツダ(旧名、東洋工業)がとうとうJSL2部に陥落した。いささか、ショッキングではあったが、当時のマツダの戦闘能力を考慮すれば仕方が無いかなとも思える事態だった。一方で、当時日本代表の中核を担っていた金田喜稔や木村和司が広島出身でありながら、マツダには加入しなかった事は、プロフェッショナリズムが導入されつつあった当時の日本サッカー界の1つの断面と呼んでも過言ではなかった。Jリーグが始まる10年近く前から、事実上「カネがないクラブは勝てない」構造ができあがりつつあったのだ。

 もっとも、その2部落ちしたマツダの監督に就任した今西氏の噂がすこぶるよかったのだ。論理的な思考力に加え、実行力もある御仁だとして。当時から今西氏は、明確に強いチームを作るための方法論を具体的に述べていた。そして、その持論をマツダで着実に実現していたのだ。

 86−87年シーズンに久々に1部に復帰したマツダの主要メンバは、今なお日本サッカー史上最高のゴールキーパをセレッソのジウマールと争うのではないかと思わせるディド・ハーフナー。その他、信藤克義、高橋真一郎、小林伸二、松田浩、望月一瀬と、今日の日本サッカー界を支えている人材が多数。そして、彼らを率いていたのはハンス・オフト氏だったのだ。今西氏は現場をオフト氏に任せ、総監督(所謂ジェネラルマネージャ)に就任していた。しかもその間天皇杯ではかなり成果を上げている、85−86年シーズンはベスト4、86−87年シーズンには決勝進出を果たしている。

 その後も今西氏の手腕は冴え渡る。JSLがJリーグに発展的解消を遂げる最中に、バクスター氏のような名伯楽の招聘に成功、加えて風間八宏、高木琢也のようなトッププレイヤを巧みに移籍で獲得する。さらに次々と無名の好素材をトッププレイヤに育て上げていく。森保一、前川和也、森山佳朗、柳本啓成、片野坂知宏、上村健一などである。そして、94年のJリーグでは、当時猛威を振るっていた高木を中軸に前期リーグ制覇。これは、必ずしも予算規模に恵まれない、この地方クラブとしてみれば大変な快挙だった。そして、高木や森保のような当時の選手達が、早くもトップレベルの指導者として活躍しているのだから、恐れ入る。

 さらに、サンフレッチェユースの充実した強化については言うまでもあるまい。完全に日本代表に定着した駒野を筆頭に、幾多の名選手が輩出されている。最近のユース代表チームの中心選手には、常にサンフレッチェユースのタレントが挙げられるのだから凄い。1つの高校にユースの選手を所属させるやり方には賛否両論あるだろうが、地方クラブの利点を活かす1つの発想である事は間違いない。



 今西氏は、これらのサンフレッチェのサッカーシステムを作り上げた。システムのみならず、人材も育て上げた。大変な人物である。その今西氏が、サンフレッチェを去る事に感慨を禁じ得ない。



 今西氏のあまりに見事な実績を汚すようで申し訳ないが、一言言いたい。昨年、日本協会会長が居座った際に、その居座りを擁護する不可思議な理論があった。「では、他に誰がいるのだ?」と。

 今西氏の経歴を振り返れば、そのような理論は全くもって、通用しない屁理屈である事がわかるだろう。



 今西さん、お疲れ様でした。でも、大変申し訳ないのですが、日本サッカーはまだまだ貴兄を必要としています。もう少し、働いていただけますか。
posted by 武藤文雄 at 23:17| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月18日

久保と大久保

 今シーズンオフは「大物」の移籍が多い。先日講釈を垂れた阿部の移籍が発表された前後に、久保と大久保の移籍も発表された。小柄な方に「大」と言う字がつくのがややこしいが、いずれも潜在能力からすれば日本最高クラスと思われるFWで、ここのところ思うような活躍ができていないところに共通点がある。もっとも、不振の要因については微妙に異なる。久保は度重なる負傷と本人の再発への恐怖症?のため、ベストフォームを崩してしまった。ワールドカップ代表に残れなかった事が尾を引いたのか、マリノスでも出場時間も少なく残念なプレイ振りだった。一方、大久保はスペインへの移籍がどうも水に合わなかった模様で、すっかり試合勘がなくしてしまったようだ。結果的にセレッソに復帰後も、思うような活躍ができなかった。

 この2人は、03年の東アジア選手権で2トップを組んだ。特には、タイプの違う2人が仕掛ける攻撃で、中国を子ども扱いし、久保の2得点で快勝した(もっとも、中国を子ども扱いする事そのものは、この試合に限った事ではないが)。

 久保はトルシェ氏の最初の采配となった98年のエジプト戦で代表デビュー、幾度と無くチャンスをもらうもどうしても代表で点を取る事ができなかった。しかし、件の中国戦で鮮やかな2得点を決めた以降、すっかりと代表での働き場を見出し、あの埼玉オマーン戦の決勝弾、チェコ戦の衝撃的一発を含め、面白いように点を取った。もっとも、04年半ばのアジアカップ前に負傷で代表を離脱した以降は、ほとんど活躍できなくなってしまうのだが。考えてみれば、この選手は代表ではこの3年前の約半年間で猛威を振るった以外は、全く点を取っていない。しかし、その間の猛威だけで「歴史的な記憶」に残るストライカになってしまったのだ。

 一方の大久保。04年に入り、主体の活動が五輪代表に移った。UAEラウンドではメンバから外れた大久保だったが、国内待機していていたために「謎の大量下痢事件」の影響を受けず、東京ラウンドでは大活躍。その後、五輪本大会でも猫の目メンバで惨敗した日本だったが、大久保は2得点するなど、存分に活躍。セレッソでもよく点を取り、スペインに向かった。

 この2人の2トップは上記中国戦で見事に機能。「個の力」で点を取ってしまうFWが組み合わされたと言う意味では、釜本、杉山以来ではないかとの雰囲気もあった。しかし、このコンビは結局この東アジア選手権の3試合で実現したのみで、しかも3試合目の韓国戦は大久保が定番の退場劇を演じてしまった。その後、2人が連携を見せたのは、サッカー場ではなく、鹿島のキャバクラのみだったのは誠に残念な事だった。



 この2人が共にクラブを変えた。「出る」事になった経緯は色々だろうが、復活のためには河岸を変えるのは有効な考えではあろう。そして、偶然にも2人が選んだのはJ2から昇格を決めたクラブ。復活を目指す2人としては、非常によい選択に思える。他クラブと比較して、決して戦闘能力に恵まれてはいないため、「この2人に点を取らせる」と言う狙いを持ったチーム作りになる事が期待されるからだ。

 オシム氏が選んでいるFW達は皆とても良い選手だし、ドイツでは高原が活躍している。だからと言って、久保と大久保への期待が低くなる訳ではない。
posted by 武藤文雄 at 23:41| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月11日

阿部勇樹移籍問題

 毎シーズンオフの常であるが、選手の移籍に関する騒動が喧しい。宮本とアレックスの海外同クラブ移籍にもビックリしたし(これはこれで後日述べます)、大量の選手を解雇したマリノスからは久保の離脱も噂されている(これまた興味深い話題だが)。そんな中で、最大の注目は、阿部勇樹の去就であろう。一部の報道によると、レッズへの移籍が決定的との事だが、FC東京やグランパスも相当な好条件を出して勧誘していると言うし、祖母外氏が移ったグルノーブルからの話もあるらしく、さらに当然ながらジェフも何とか慰留してるだろうから、最終的結論はまだわからない。



 阿部と言う選手は非常に面白い選手で、日本には珍しく高いレベルで汎用性の高い選手だ。展開力、長いボールの精度、身体の強さ、空中戦、守備でのしつこさ、いずれもトップレベル。基本的には守備的MFが適任だが、DFもできるし、局面によっては前でも使える選手だ。阿部にとって不運だったのは、得意とする守備的MFのポジションに、やや年上に豊富なタレントがおり、中々代表での出場機会が回ってこなかった事。それでも、一昨年のアンゴラ戦や昨年のUSA戦では、後半から起用されるや抜群の展開力でチームの流れを変えるなど、見事な存在感を見せていた。

 オシム氏就任以降は、完全に代表でもレギュラに定着した阿部だが、主に最終ラインを務める事が多い。現在の日本代表で一番目立つのは闘莉王かもしれないが、まあ闘莉王はアレだから、事実上のチームリーダは今後阿部と今野が務める事になる可能性が高い(このあたりは異論も多かろうと思いますが)。

 そう考えると、もし阿部が国内の他チームへの移籍するとしたら、現役バリバリの代表チームの中心選手の移籍と言う事になり、ここ最近ない戦力移動になる。これはJSL末期チーム再編時代の堀池や柱谷哲二の移籍以来の大事となるかもしれない。その事自体は、欧州南米の先進国同様、強クラブが移籍による補強を重視するようになったと解釈すればよかろうが。



 では阿部はどうすべきなのだろうか。そのあたりの余計なお世話を考察するのが、今日の講釈の目的である。

 まあ一言で語れば、今の阿部ならばどのクラブでも相当な活躍をするに決まっている。むしろ、問題は阿部の加入によってはじかれる選手になるのではないか。

 例えばレッズ。闘莉王、坪井、啓太、長谷部と代表選手が並び、さらに小野も山田もいるこのクラブに、阿部が加わる事を考える。確かにアジアチャンピオンズリーグを戦い抜くためには、相当な選手層が必要だろう。しかし、レッズが抱えている選手は、本当の意味で日本のトッププレイヤ。これは補強と言うよりは、破綻に近い現象となるのではないか。

 FC東京でも問題は同様だ。今野は別格としても、茂庭、伊野波、徳永、さらには梶山と、阿部とはスタイルが異なるがポジションがかぶりそうなタレントが多数いる。間違いなく阿部の加入は補強になろうが、チームは混乱するだろうと思う。

 グランパスならば、すっきり収まりそうだ。昨年はやや冴えなかったが中村直もいるし、老獪な藤田との連携も面白そう。隠れ代表候補の杉本が阿部のロングボールで抜け出したり、ヨンセンが阿部のクロスを決めるのを見るのは愉しそうだ。ただし、それならばジェフで君臨を継続するのとそうは変わらないようにも思えるのだが。

 そう考えてくると、今シーズン阿部がどこのクラブでプレイしようが、阿部にとっては変わらないような気がする。むしろ、大事な事は、早々にそのクラブで地位を確立し君臨し、代表で中核として活躍してアジアチャンピオンを目指す事だろう。つまり、悩んでいる(らしい)本人には失礼だが、今の阿部の能力ならば、(海外に出るというなら別だが)国内ならばどのクラブでも問題はなく、環境の選択は彼にとって本質的な問題ではないのではないと思う。



 私の意見は、こちらのレッズサポータの方に一番近い事になる。

 表現を変えれば、一番カネを積んでくれるクラブに行くべきではないか。阿部クラスの選手にとっては、オファーしてくるクラブの誠意はカネであるはず。そして、もしそのカネに差がないならば、ジェフに残留しリーグタイトルを目指すのが一番よいと思う。環境が変わらなければ、一番活躍しやすいはずなのだ。



 阿部が目指すべきはアジア最高の名手なのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:49| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月04日

皆が「勝者」を目指さなくとも −天皇杯決勝(下)−

 何のかの言って、ガンバは圧倒的な攻勢を取った試合だった。遠藤を軸にマグノ・アウベスとに二川が融通無碍に動き回り、次々と好機を演出。家長と加地の両翼がレッズの両サイドを押し込む。時に明神が前線に進出する。播戸は最前線で常に守備ラインの裏を狙う。次々と好機を掴むガンバなのだが、レッズの最終ラインの執拗な粘りに、完全には崩し切れない。

 そして後半半ば過ぎには、やや攻め疲れが見え始めた。一方でレッズの攻撃も迫力がなかった。よい位置でボールを奪っても、攻撃に絡む選手は最前線の3人だけ。普段ならば強烈に押し上げる啓太は足の負傷が癒えていないのか無理をせず、山田はサイドのカバーリングに追われ後方に引いたまま。

 かの状況下では、ガンバがするべき事は、バランスを崩さずに攻撃に変化をつけ、勝負を決めに行く事だった。ところが、西野氏は動かない。ややもすればレッズの守備網は、ガンバの攻撃に「慣れて」きているにも関わらず。

 確かに、ガンバの控えの攻撃タレントは、中山、前田、寺田、皆悪くない選手であるが、西野氏としてはスタメンで猛攻を仕掛けている名手達を代えてまで起用するかとなると迷うところ。やや攻め疲れが見えたとしても、チームのバランスを考えると、交代のカードは切りづらかったかもしれない。しかし、あれだけ攻勢を取り点が取れない以上は、何か動くべきではなかったか。ベンチには、シジクレイと橋本と言う飛び切りの後方タレントはいたのだ。少なくとも、シジクレイを起用して空中戦を強化する事、橋本をいずれかのポジションに起用して家長や加地の守備の負担を軽減したり挙動開始点をより前方に押し出す手段はあったはずだ。

 一部報道によると、西野氏は延長戦でより攻撃的なフォーメーションに組み替えて、勝負を賭けるつもりだったとの事。結果論だが、やや膠着し始めた試合展開を考えると、やはりそのようなカードがあるならば、レッズを休ませないためにも、もっと早めに切るべきだったと思うのだが。あの終盤、足を痛めてフラフラになっていた啓太を見ながら、どうして様子を見る必要があったのか。ガンバはレッズを殺しに行くべきだっただ。

 さらに、ガンバにはフェルナンジーニョと言う飛び切りの攻撃兵器がいた。しかし、彼はリーグ戦の最中、起用法に不満を持ち、事実上チームから離脱した。西野氏はフェルナンジーニョの不満を掌握しきれなかった。チームの中心選手が起用法に不満を持ち離脱していく事、これもまた幾度と無く聞いた西野氏独特の問題だ。具体的には、中田英寿、北嶋秀朗、吉原宏太、新井場徹。これらの全てが西野氏の責任と言う気はない。しかし、ブッフバルド氏が多くの控え選手のモチベーションを保ってこのシーズン終盤を迎えたのに比較して、西野氏はフェルナンジーニョ1人すら説得できなかった事は大きい。そして、この「掌握力」の差が、この決勝戦の差となって現れてしまったように思えるのだ。



 話は変わる。

 皆様ご存知の通り、以前より私は西野氏が嫌いだった。その理由は実に単純な(あるいはバカらしいとしか言いようがない)事。現役時代に素晴らしい素質を持ち日本代表の攻撃の中核になる事が期待されながら、周囲に遠慮したかのプレイ振りでその素材を活かしきれず、それでも監督になってからは柔軟性に欠いた不遜な態度を取り続けるからだった。そのような態度を取るならば、現役時代に取って欲しかったのだ。そして、傲慢なリーダである選手として日本代表を率いて欲しかったのだ。そして、その夢をかなえてくれなかった西野氏が、傲慢なリーダである監督として働くのが、いやでいやで仕方がなかったのだ。

 嫌いな監督がヘマをするのは愉しい。以前から西野氏の采配ミスを見つける度に、ニヤニヤと講釈を垂れるのが愉しみだった。けれども、昨シーズン西野氏率いるガンバが堂々のリーグ制覇。それも苦しみに苦しみぬいて、大混戦を制したのだから、西野氏の監督手腕を認めざるを得ない状況になった。こうなるとどうしても筆が鈍ってしまっていた。

 さて天皇杯決勝。昔の私ならば大喜びで西野氏批判の講釈を垂れるような展開となってしまった。ただ、不思議な事に、渋々ながらも1度監督としての手腕を認めてしまうと、何かこうイヤミって書きづらいものなのだ。

 

 結局、監督してのスタイルの問題なのだろう。西野氏は、様々な迷走はあったものの、「美しいチーム」を作るところまでは成功したが「勝てるチーム」ではなかったと言う事ではないか。そして、その「美しいチーム」を作る最中に、フェルナンジーニョへのフォローが仕切れなかったと言う事だ(もっとも西野氏が常に「美しいチーム」を作ろうとしていたかについては議論は分かれよう、つい数年前まではマグロン、マグロンでハイクロスばかりだった時代もあったのだから)。そのように考えてくると、役割の違いなのではないかと思ったりもする。ブッフバルド氏のチーム作りとと、西野氏のチーム作りは違うのだ。そして、全てのJのトップクラブの監督が「勝者のメンタリティ」を目指す必要はないのではないかと。

 西野氏が今後日本代表の監督を務めたり、リーグを数連覇するような事態は起こらないだろう。しかし、西野監督は日本サッカーの発展のために重要な存在である事は間違いない。その貢献が、反面教師であろうが、理想を追って現実に敗れる指揮官であろうが。
posted by 武藤文雄 at 23:07| Comment(17) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月02日

勝者のメンタリティ −天皇杯決勝(上)−

 不思議な試合だった。レッズのチームコンディションは相当酷かったのだろう。前半から圧倒的に押し込むガンバ。最終ラインで我慢するレッズ。試合は終始そのペースで進んだ。

 レッズは守備的MFの啓太と山田が、両翼のカバーに追われ、結果的にガンバの遠藤が再三フリーでボールに触れるので、猛攻が継続する。たまにレッズがボールを奪い逆襲を仕掛けても、小野が明神に押えられており、さらに後方の押し上げが遅く攻め上がるのは前線の3人だけと言う状況で、すぐにガンバに攻め返される。

 ただし、レッズの最終ライン、特に内舘の読みが冴え、GK都築も大当たりでガンバはどうしても最後で崩し切れない。この展開が約85分間継続した。

 レッズは劣勢を立て直すべく、長谷部、岡野を投入するも、状況はそう好転しない。さらに啓太が足を引きずり始め、ポンテの運動量も目に見えて落ち出し、いよいよ憂色が濃くなってくる。一方で、このような展開にありがちだが、ガンバはガンバで攻め疲れと言うかチーム全体の運動量が落ちてきた。

 そして迎えた運命の瞬間、長谷部が見事なボール奪取から右に流れながら、素早く前線の岡野へ展開。圧倒的に攻勢を取っていたためか、ガンバの守備陣の反応がやや鈍い。岡野独特の縦に出る動きの陽動動作から、鋭角のセンタリング、緩いボールに永井が見事な反応から決勝点を決めた。時間帯がまた絶妙だった。もし、これよりも5分以上早ければ、ガンバは人数をかけての無理攻めも可能だったろうが、あまりに残り時間がなかった。

 正直言って、あまり爽快感を感じる試合ではなかった。私は守備的なサッカーを否定はしない。インテルナショナルがバルセロナを仕留めた試合などは拍手喝采ものだった。けれども、この日のレッズの守備網と駆け引きが見事だったとは思えない。守備組織は崩され、最終ラインの都築と内舘でかろうじて守り切った試合。上述したが、点が入る直前の終盤、啓太が足を引きずったあたりでは、「もう絶望」と言う雰囲気すら漂っていたのだ。

 それでも、レッズは勝利した。



 これはブッフバルド氏の勝利である。

 交代で起用された長谷部と岡野が唯一機能したのがこの場面。また永井にしても、必ずしもワントップを張るタイプではないが、ワシントン不在となってからブッフバルド氏は辛抱強く起用を継続、この日も少ない好機からガンバ最終ラインの隙を突く努力を継続していた。この3人で得点してしまうのだから恐れ入る。ブッフバルド氏の下、永井、相馬、都築そして小野と言った国内屈指のタレントたちは控えに甘んじても、モチベーションを切らさなかった。文句無くここ2シーズン国内のトッププレイヤとしてプレイしてきた長谷部も、このビッグゲームで控えの座を了解し、終盤に勝負どころで活躍した。あり余る選手達1人1人のモチベーションを切らさずに、彼らが必要な時に戦わせる事に成功したのだから凄い。

 さらには、逆襲からの一撃の期待すら難しい圧倒的な劣勢に陥りながらも、都築、内舘を中軸に辛抱に辛抱を重ね、守り切った。既にリーグ優勝と言う最高の栄誉を獲得してしまっており、レギュラメンバの多くを欠き、ただでさえモチベーションを保ちづらい天皇杯。この状況にも関わらず、選手達を最後まで辛抱させ切ったのだから、ブッフバルド氏の指導力はやはり凄い(この天皇杯制覇でレッズは08年シーズンのアジアチャンピオンズリーグの出場権を獲得できた。けれども、ここのところタイトルを連取しており、07年シーズンアジア制覇を「本気で」狙っているレッズイレブンに、その権利獲得への意欲が「必勝のモチベーション」になったとは考えづらい...それはそれとして、この「天皇杯優勝クラブが翌々シーズンのACL出場権を獲得する」と言う制度はもうやめられないものなのか)。

 試合終了後、ブッフバルド氏は「勝者のメンタリティ」と自慢したと言う。あり余る選手達1人1人のモチベーションをシーズン中維持しきった事、集中しづらい状態のタイトルマッチで苦しい展開に陥っても選手達のモチベーションが落ちなかった事。なるほど、おっしゃる通り「勝者のメンタリティ」なのかもしれない。そして、紛れも無く西ドイツ全盛期の代表戦士だった男から、その「勝者のメンタリティ」を啓太、闘莉王らレッズの選手達が伝授された事は、日本サッカー界にとっても非常に貴重な財産になるようにも思う。



 ブッフバルド氏就任時点で、レッズは確かに強力なメンバを揃えていた。しかし、レッズを常時優勝を争うチームにし、さらにタイトルを多数奪取したのは、紛れも無くブッフバルド氏だ。以前は、時に策に走り過ぎて墓穴を掘る事も多かったが、今シーズンはそのような悪癖も消えて来た。

 ブッフバルド氏は、監督としてのキャリアをレッズからスタートした。ドイツに帰国後も経歴を積み上げていくに違いない。ドイツ代表監督が、日本でキャリアをスタートしたとすれば、それはそれで嬉しいではないか。
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2006年12月30日

2006年ベストイレブン

 2006年のベストイレブンを編もうとすると、どうしてもあの消化不良のワールドカップへの複雑な想いに捉われてしまう。実に献身的にワールドカップを闘いながらサッカー界を去ってしまった中田。この1シーズン半あのワールドカップの期間中のみ調子を崩していた中村。過去3回のワールドカップで最も印象の薄いプレイしか残さなかった小野。PKストップを含め獅子奮迅の活躍をしながら肝心の場面でロングスローを取り損ねた川口。1人1人の選手のもがくような戦いは感動的ではあったが、チームとしてはおよそ感動的な戦いを見せてくれなかった。

 ベストイレブンを組もうとすると、あの大会でのジーコ、そして大会後の川淵両氏への怒りが沸いてくるのを押さえる事ができないのだ。



菅野孝憲

 横浜FCのJ1昇格の立役者。1対1への対応、ロングシュートへの対処、ロングボールへの的確な判断、主審の気持ちを読み切った時間稼ぎ、GKの技術面で文句の付けようのない選手となった。末長く、西川とA代表の守護神を争うのではなかろうか。もちろん、まずは川口を抜く事であるが。



阿部勇樹

 ジーコ時代の代表戦で、後半半ばに阿部が起用され長いボールで組み立て始めると、日本の攻撃が落ち着く事が再三あった。当然のようにオシム氏が代表監督に就任した以降は完全に代表のレギュラとなっている。闘莉王がアレな以上、今後日本代表の名実ともに中核的存在になるのは、やはり阿部なのかなと言う気がする。あの札幌サウジ戦の2点目の加地に通したサイドチェンジ(その後、加地と今野のダブルオーバラップ、今野のクロスから我那覇が決めたヤツ)にはシビれたね。来期の所属問題が喧しいが、個人的にはジェフに残って欲しいと思っているのだが、そのあたりは別途。



闘莉王

 何のかの言ってレッズリーグ制覇の立役者。特に最終ラインであれだけ強さと読みのよさ(強さだけでは、ああも敵の攻撃をはね返す事はできない)を見せてくれたのだから、昨シーズンの中澤の域に近づいている事は確か。あれだけ読めるのだから、もう少し守備の組織化を意識して欲しいところだ。さらに得意の攻撃参加だが、「突然、敵陣に登場する」方が効果的なのだから、もう少し静かに前進したらいかがだろうか。無理か。



中田浩二

 スイスのトップクラブで守備ラインの中核として活躍している。03、04年は代表に起用される度に見事なプレイを見せながら、ジーコの序列が全く上がらなかった。ワールドカップでも、中田浩二をもう少し巧く使っていればと思うのは私だけか。ジーコが無意味に代表試合の度に日本に呼ばなくなった以降、順調に活躍している選手の代表として選考しておきたい。



本田圭佑

 最近の本田圭佑はやはり凄い。唯一の問題は、どのポジションでプレイしていくかだ。



鈴木啓太

 オシム氏が最初に選考したメンバには入っていなかったが、今野の負傷と言うチャンスを見事に活かし、代表の定位置を確保した。レッズのリーグ制覇への貢献は言うまでもない。もっとも、今後水本あたりが代表に定着すると、今野が最終ラインから中盤に移って来るだろう。そうなった時の啓太と今野のポジション争いが愉しみなのだが。



中村憲剛

 憲剛を初めて認識したのは、04年シーズンのJ2だった。ベガルタ戦で鮮やかな個人技から得点を決めた後、ご丁寧にベガルタサポータに向けてガッツポーズを見せてくれたのが忘れ難い。あの頃から随分と出世したものだ。アジアカップ3連覇のカギを握る選手と見る。中村俊輔や松井が代表に戻った場合、本田や水野が代表に加わった場合、様々な状況で色々な仕事ができる能力はあるはず。



水野晃樹

 ナビスコカップ決勝戦に。



野沢拓也

 小笠原去りしアントラーズを見事に支えた。この選手に魅力を感じるのは、ミドルシュートの精度と巧さ。ワールドカップの列強と比較して、どうしても日本のシュートレンジは狭い。それを打ち破れる期待を持たせてくれるタレントだ。



前田遼一

 この男はFWでプレイすべき。これほど大柄で敵のプレッシャに持ちこたえながら、優雅な技巧でボールをさばけるFWは珍しい。ジュビロの前監督が、五輪代表時代に前田を執拗に中盤で(時にはあろう事かボランチで)起用して、良さをつぶそうとしていたが、よくもまあ耐え切ったものだ。この技巧を持ちながら、巻クラスの献身ができるようになれば。



播戸竜二

 やはり今年に関して言えば寿人ではなく播戸かなと。そして、現在の代表選手で腕章が一番似合いそうな雰囲気を持つ。
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2006年12月29日

重厚な天皇杯決勝

 少々興奮している。

 戦力が充実し、Jリーグでも優勝を争ったチーム同士の重厚な決勝戦になったからだ。これほどの組み合わせになるのは、91−92年、92−93年シーズン2年連続で優勝を争った読売−日産(ヴェルディ−マリノス)以来ではなかろうか(この2つの決勝戦はいずれとも日本サッカー史に残る名勝負となった)。



 元々、天皇杯の決勝戦と言うのは、JSL時代も含め、必ずしも時のトップクラブ同士の決勝になる例は少なかった。これは一発勝負のトーナメント戦ゆえに強いクラブが必ずしも決勝に残るとは限らない事による。

 さらにJリーグ開幕以降、契約失効タイミングの関係で、多くのクラブは天皇杯開催中にも関わらず外国人選手が帰国するなど、ベストとは言えないメンバでの戦いを余儀なくされていた。そのため、一層番狂わせが発生する可能性が増えたのみならず、何かしら天皇杯決勝戦の格付けが落ちてしまった印象すらあった。

 結局、天皇杯の権威や盛り上がりをどうするかと言う問題は、天皇杯のみならず日本サッカー界全体の日程問題であり、これについて書き始めるとキリがないので別な機会に。ただ私の意見は、決勝の元日開催にこだわるのは、もうやめるべきだと言う事だ。日本の天候事情を考慮するとサッカーシーズンは春−秋(冬)制を採るげきだが、その場合元日の決勝は年間日程を非常に窮屈にしてしまうのが1つ目の理由。元日と言う日は多くの日本人が故郷で過ごす日でありタイトルマッチの決勝を行うには不適切な日である事が2つ目の理由。さらには当日のTV番組は正月特番であり、翌日は新聞休刊日である事から天皇杯優勝報道のマスコミ露出が非常に少なくなる事が3番目の理由だ。伝統やノスタルジーと言う観点から、元日の決勝開催を推す意見もあるようだが、非常に根拠の薄い考え方だと思う。



 さて、準決勝。

 レッズ−アントラーズ。煮詰まったタイトルマッチらしく、両軍守備を固めての攻防。それぞれ敵陣をこじ開けたのは、小野、ポンテ、野沢と言った卓越した個人技の持ち主だったのが、いかにもタフなタイトルマッチらしかった。ワシントン、闘莉王、アレックスと3枚も大駒を欠きながらも、小野とポンテと言う大駒で勝ち抜くのだから恐れ入る。小野については、ボールの触る頻度にはまだまだ不満が残るが、相当体調は戻ってきたようだ。あの先制点を見せられては注文の付けようがないではないか。この天皇杯が「小野が復活した大会」と呼ばれるかどうか、決勝を待ちたい。

 アントラーズは野沢の成長が大きい。同点弾のFKを含め、本人も攻撃のリーダとして相当自信をつけており、小笠原不在を感じさせなかった。本山も元気だし、岩政、内田、深井、田代、新井場、増田(この日増田を使っていれば、もう少し野沢が前を向いて楽にプレイできていたように思うのだが)など日本人選手の質は、相変わらずリーグのトップレベルだろう。けれども、このクラブの最近のブラジル人がほとんど今一歩なのだ。ジーコ招聘以来、ブラジルとのコネクションは強いと思うのだが。そういう意味ではアレックス・ミネイロは久々のヒットだったのだけれども。



 ガンバ−コンサドーレ。試合運びの巧拙で勝負がついてしまった。

 ガンバの先制弾は、自陣前でコンサドーレに好位置での直接FKを与えてしまった直後の事。砂川のFKを壁で跳ね返した直後の速攻。マグノ・アウベスと前田の前進の速さ、さらに後方から長躯する加地。まさに攻守の切替の早さの差が出た場面だった。また2点目はどう考えてもオフサイドだろうけれど、あそこは笛が鳴っていないのだから冷静にプレイを続けた宮本を褒めるべきだろう。いずれの場面も、セットプレイ直後のほんのちょっとした隙に対する対応が1部と2部の差と言う事か(同じような差を、拡大トヨタカップのインテルナショナルとアル・アハリにも感じたのだが)。



 ガンバはシジクレイが控えに下がっているが(体調不良だろうか)、実質的には決勝にはベストメンバで臨める。一方のレッズはワシントン、闘莉王、アレックス不在にも関わらず、決勝では長谷部が復活する事で中盤の選手選考に嬉しい悩みを抱える程の選手層を誇る。宮本とブッフバルド氏それぞれの最後の試合となると言う両軍の思い入れを含め、舞台は整った。

 ガンバはレッズからある程度得点は期待できると思う。遠藤、二川が好調で、播戸、マグノ・アウベスの得点力は相当だからだ。勝負は、宮本、明神が網を張る守備網と、ポンテ、小野の技巧と発想による攻撃と、いずれが上回るかで決まるのではなかろうか。

 歴史的な名勝負を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:25| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月09日

06年入替戦に感動して

 凄い試合だった。



 後半60分の先制点。三浦アツのクロスが3本続いた。(ヴィッセルから見た)右サイドのFK。その直後の左サイドからのCK。そして、そのCK直後のクロス。ゴール前には北本と近藤の2人だけ。アビスパのDFは4人。北本はよいジャンプをしたが、3人のDFが北本にまとわりつき、一歩前に出てクリア。ところが、そのクリアが近藤のところに飛んでしまった。3回続いたクロスボール、DFの数は揃っていたのだが、ヴィッセルの連続攻撃への対応のため、バランスが崩れてしまった。それにしても、クリアがちょうど近藤のところに飛んでしまったのは、序盤から戦いまくった近藤へのプレゼントだったのだろうか。



 その後のアビスパの連続攻撃。古賀と田中の福岡出身の両翼が左右をぐる猛攻。人数をかけた分厚い攻め。さらにこぼれたボールをキッチリと拾うホベルトの知性。完全にラインを押し下げられてしまい、アビスパの猛攻にさらされながらも、忠実なポジショニングで跳ね返すヴィッセルの守備。もうこうなって来ると、「何がよい、何が悪い」の世界ではない。「誰が勝つ、誰が負ける」と言うか、いや「何が起こるか、起こらないか」と言う域であろうか。

 あの終盤のアビスパの猛攻が、ゴールに入るか入らないかについて、どうこう論評しても意味がないだろう。結果として入らなかったのだ。



 両軍の死力振り絞った死闘、主審の西村雄一氏もよく試合をまとめたと思う。

 ただ、疑問が残ったのは唯一、後半81分の朴康造時の見苦しい交代劇。見事としか言い様のない180分間で、あの場面だけは残念だった。朴は時間稼ぎするならば、もっと巧くやらなければ。交代が指名された後に、フィールド内で靴紐を結び直し、その後全く走らないで退場する見苦しさ。あそこまで演劇性のない振る舞いには、ガッカリさせられた。あまりにレベルの低い時間稼ぎは、この心打たれる180分間の最大の汚点となった。あのような質の低い時間稼ぎに対しては、西村氏は朴を退場させるべきだった。靴紐の結び直しを始めた時にまず警告。その後の明らかな遅延行為にもう1つ警告。



 このような試合を体験した両クラブの関係者に感謝、そして羨望。



 ともあれ、ヴィッセルは全てを掴み、アビスパは全てを失った。この不公平さがたまらない。
posted by 武藤文雄 at 23:51| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月05日

入替戦展望

 ベガルタのサポータとしては、昨シーズンは羨ましくて羨ましくて仕方が無かった入替戦なのだが、今期は早々に可能性がなくなってしまったので、何か醒めた目で見てしまう。まあ、一方で大変残念な結果に終わったリーグ戦だった訳だが、長い人生1回くらいは入替戦を心底から体験してみたい気持ちに変わりない。うん、やはり悔しい。

 私の愛知県在住の友人は、今でも77年シーズン終了後のトヨタ−読売の入替戦について懐かしそうに自慢してくれる。70年代半ばJSLの1部と2部の入替は、自動ではなく、全て入替戦によるものだった、そしてJSL2部の強豪読売クラブは74年から3年連続で入替戦敗退で昇格失敗を繰り返した。一方トヨタは74年シーズンから、常にJSL1部で圧倒的弱さで毎シーズン最下位を独走し続けたが、3年連続で入替戦だけは勝ち1部残留を繰り返した。そしてついに77年シーズン、読売は4度目の挑戦でトヨタに完勝し、1部昇格を決めた。まあ、グランパス−ヴェルディも、そのような因縁をアタマの片隅に入れて観ると面白いかもしれない、もっとも次にリーグ戦でこの両クラブが戦う事が、いつ訪れるのかは疑問なのだが。



 ともあれ、アビスパ−ヴィッセル。



 各方面で話題になっているが、監督の入れ替わり現象が起こってしまっているのが興味を引かれるのは確か。しかも、お互いに相手がクビになった後のチームを引き継いでいる経験があると言うのだからややこしい。加えて、この2人の監督のスタイルが対照的なのだから面白い。

 現在ヴィッセルを率いる松田氏は、組織的なサッカーを好む。これは氏の出身クラブであるサンフレッチェ(あるいは前身の東洋工業)の伝統を引き継いでいると言えよう。さらに松田氏は、現役末期(と言うかコーチみならい時代と言うか)に、バクスター氏の「ディシプリン」指導を綿密に受けているだけに、正に「組織」派の指導者の典型と言えよう。

 一方の川勝氏は、選手個々の判断力をベースにチームを組もうとする。守備を重視するのは確かだが、チームの作り方が根本的に異なる。これまた氏の出身クラブであるヴェルディ(こちらは明確に前身の読売クラブと言う方がよいな)の伝統を引き継いでいると言えよう。いや、選手川勝自体が、読売クラブの伝統と言うかチームカラーの構築に一役買っている部分もあるしな。川勝氏の指導力には(アビスパのサポータを中心に)疑問を投げかける向きも多いが、少なくとも99年後期、00年前期は、当時戦闘能力に恵まれているとは言えないヴィッセルをリーグ中位にまで引き上げた実績は中々のものだと思う。また、今シーズンのアビスパにしても、ある程度戦力を把握した後にそれなりに立て直して、自動降格から入替戦にこぎつけた事は評価されてよい(まあ、どう考えても松田氏のままで戦っていた方が格段にマシだったと思うが、これは川勝氏の問題ではなく、アビスパフロントの問題だ)。

 かくも指向が対照的で、因縁ある2人の対決と言うのは、やはり面白い。



 また、面白いのは両軍の精神状態。通常は1部入りを目指す方が「よし入替戦に出られる!これで1部昇格だ!」と盛り上がり、残留を目指すほうが「う〜ん、入替戦になっちゃった、いやだなあ」と言う心理になりがちなのだが、今回は逆。アビスパは下位3チームの混戦を抜け出した感があるので、「よし入替戦に出られる!」と前向きで、ヴィッセルは上位3チームの混戦を抜け出し損ねたので、「う〜ん、入替戦になっちゃった」と後ろ向き。ちょっと奇妙な精神状態になっているのではないか。



 いずれにしても、90分ハーフの厳しい試合となるだろう。お互い、守備をベースにしたチームだけに、慎重につぶし合いが続く陰惨な180分。ここまで厳しい戦いを1年間戦い抜いてきた両チーム、お互い粘り合って、勝負は2試合目の終盤までもつれるのではないか。そして、本当の終盤、根負けした方か、スターが「スーパー」なプレイをした方が歓喜するように思えてならない。と言う事で、大変陳腐だが、アビスパは飯尾とホベルト、ヴィッセルは三浦淳と朴あたりがカギになると思う。三浦淳が出場停止の初戦を、ヴィッセルがどう捉えるか。「(ホームではあるが)エースが休養できて後半90分に全てを賭けられる」と割り切る事ができるかどうかが、大きなポイントになるように思える。

 少々の悔しさを思いながら、野次馬として両軍の陰惨な戦いを堪能したい。
posted by 武藤文雄 at 23:13| Comment(3) | TrackBack(2) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする