ワールドカップが近づいてきた。
中3日の試合、直前の準備期間がほとんどない、欧州はシーズン真っ只中を中断、現地が観光の魅力に乏しい(これはピッチ上は関係ない自己都合、でも重要)など、過去にないワールドカップ。非常に展開が読みづらい。さらには、次回から出場チーム数が増大するから、「もしかしたら本質的に楽しいワールドカップはこれが最後かもしれない」などの思いもある。
とは言え、わからないことや悪いことばかり考えても意味がない。近づきつつある世界最大のお祭りを自分自身が楽しむためにも、少しずつ代表チームのことを書いていこうと思う。
先日の東アジア連盟E-1選手権、韓国に3-0で快勝したのは嬉しいし、従来代表経験が少ないJリーグのトップスターが活躍したのは、まことにめでたかった。とは言え、見事に活躍した各選手だが「カタールへの道」は遠い。今の代表チームは過去4年間の強化が奏功し、いずれのポジションも既に相当分厚い選手層となっているからだ。
右サイドバックとしてすばらしいプレイを見せた小池龍太、このポジションには酒井宏樹、山根視来と予選で実績を残した選手が2人いる。さらに、森保氏に再三招集された実績ある室屋成、オランダでかなりの評価を受けている菅原由勢、東京五輪でこのチームの中心選手の多くとプレイ経験ある橋岡大樹も控える。既に実績があり海外経験が豊富な選手が5人いるポジションで、小池が「カタールへの道」を獲得するのは、非常に難しい。
水沼宏太は知性あふれる位置取りと全軍を奮い立たせるリーダシップを発揮、優勝に大いに貢献した。しかし、右FWは伊東純也・堂安律がいて久保建英の選考も危ういほど。これまた相当苦しいと言わざるを得ない(水沼宏太については、あまりに思い入れが大きい選手だけに別に講釈を垂れたい)。
もちろん、ポジションによって状況は異なる。左FWの有力候補は、三笘薫と南野拓実の2人のみだった。だからE-1で大活躍しMVPを獲得したドラミ相馬勇紀はこの2人に割り込む可能性がある。
既に実績ある選手が多数いるところに加えて新しい選手が候補として出てくるのは結構なこと。ただ現実的には、多くのポジションでは、負傷がなければおおむね誰が選ばれるか、ある程度予想はついている。
ところが、現時点でまったく誰が選考されるかわからないポジションがある。センタフォワードである。
言うまでもなく、このチームのこのポジションは大迫勇也が起用されることが多かったが、ここのところ体調を崩している。そのため、今年6月のブラジル戦を中心とした連戦に選考されたのは、浅野拓磨・古橋亨梧・前田大然・上田綺世の4人。4人とも起用されれば、そこそこのプレイを見せているが、他の選手より決定的に優位に立つ活躍を見せていない。その他に過去、森保氏は、北川航也・オナイウ阿道・鈴木武蔵らを呼んだこともあったが、最近は選考外。そして、先日町野修斗がE-1で活躍して、候補に名乗りを上げた。町野はよく点をとったのみならず、韓国戦で敵DFの詰めが甘いと見るや強烈なミドルシュートを枠に飛ばし、前線でしっかりボールを収めた。欧州クラブ在籍選手不在の韓国とは言え、このアジアの宿敵相手に、これだけのパフォーマンスを見せたのだ。町野の能力は、国際試合でも存分に期待できると言ってよいだろう。
これほど多士済々のCF候補から誰かを選ばなければならない状況など、過去のワールドカップではまったく考えられなかった。まずは素直に優秀な候補選手が多数いることを喜びたい。
しかし一方で、事前準備試合はUSA戦・エクアドル戦とあと2試合しかない。ここに至っても、攻撃の中心のこのポジションに誰が選ばれるかまったくわからない。さすがに間に合うのか心配になる。繰り返すが、準備試合はあと2試合しかないのに。
そもそも森保氏の謎の一つは、大迫不在時にどのような攻撃を狙おうとしているのかがよくわからないことだ。大迫は後方からのボールを収めるのが格段にうまいから、チームはそれを基軸に攻撃をしかけることができる。しかし、そのようなタイプではないCF、例えば浅野や前田を起用しても、森保氏は周りの選手に戦い方を変えるような指示をしているようには見えない。加えて、大迫とは別なタイプのCFと周囲の選手の連係を積極的に築こうとしているようにも見えない。ただ、自チームで好調なCFを連れてきて試合に出しているだけに思えてならないのだ。
森保政権初期に大迫のバックアップとしてよく選考されていた北川は、アジアカップ前の準備試合で南野や堂安のような攻撃の中心選手とプレイする機会がほとんど与えられなかった。そのため、大迫が負傷したアジアカップでは、得意の鋭い動き出しを見せてもよいパスがもらえず、中々機能しなかった。
先日のE-1中国戦に起用された売り出し中の細谷真大。この試合で細谷は、周囲の選手と中々連係がとれなかった。それでも、後半に入り、ようやく脇坂や野津田と呼吸が合いはじめ、幾度か好機をつかめるようになった。そうやって得点の匂いを感じせてくれたところで交代となってしまった。ここで交代するならば、何のために、この大会に細谷を呼んだのだろうか。
これまで森保氏率いる日本代表が追い込まれた試合を振り返ってみる。具体的には、W杯予選の敵地サウジ戦・先日のチュニジア戦が挙げられる(W杯予選ホームオマーン戦は先方に先制されたのが試合終了間際だったので、どうしようもなかったので、これには含まない)。この2つの試合で、森保氏は終盤選手交代を行うが、ベンチに残っている攻撃タレントをただ並べ変えているようにしか見えず、終盤攻撃を活性化できなかった。そもそも、森保氏の公式戦での逆転勝利はアジアカップのトルクメニスタン戦とウズベキスタン戦くらいしか記憶にない。そしてこの両試合とも後半の比較的早い時間帯に(特に選手交代せずとも)逆転したのだから、スタメンの戦闘能力差で勝ち切った試合だ。
もっとも、森保氏が率いているのはアジア屈指の強豪国、常識的には守備を固め、先制したら確実に勝ち切る試合運びが主体となる。どうしても逆転したい試合などは、中々遭遇しない。逆転勝利が少ないのは、リードを奪われた頻度が少ないからで、むしろ評価すべきかもしれないので、そこは誤解しないでいただきたい。だからこそ、「ホームベトナム戦はしっかり逆転しろよ」と言いたくなるが、まあそれはそれ。うまく行かないから、サッカーはおもしろいのだし。
森保氏に批判的な文章を続けてきたが、逆転ではないがW杯予選のホーム豪州戦の交代策を述べなければ、森保氏への批評としてはフェアではなかろう。直前に敵地でサウジに苦杯し、勝点3が必達だったこの試合、70分に同点とされた後、前線に伊東・古橋・浅野を並べ(同点前に大迫→古橋と交代、同点後南野→浅野と交替)、疲労気味の豪州DF陣の粉砕に成功した。これは、森保氏の試合終盤の冴えた采配と評価すべきだろう。言い方を変えると、本当に追い込まれると、この監督は冴えるのかもしれないな。本大会でも期待しよう、できればコスタリカ戦やスペイン戦ではなく、2次ラウンド以降で。
繰り返すが、これまでの森保氏の采配を見ていると、CFと言うポジションに誰を置き、その選手の特長を活かした攻撃をどのように行うか、まったくわからない。逆でもいい、例えば中盤の中核は田中碧、攻撃の突破口は伊東として、この2人が作った好機を活かすために、他のポジションあるいはCFをどうするか、と言う思考がまったく見えてこないのだ。
思い起こせば、森保氏は広島の監督時代は佐藤寿人という格段なCFを所有し、全選手が寿人に点を取らせることで意思統一がとれているチームを作った。森保氏は、前任のペトロビッチ氏が作った寿人に点をとらせるチームの守備を大幅に改善、具体的には、ボールを奪われてからの切り替えを早くした上で、不用意に大量の選手が前線に上がるのを修正。その結果、守備は格段に改善され、一方で寿人は点を取り続け、森保氏はJ1の複数回制覇に成功した。そして日本代表監督としての森保氏は、チーム黎明期の大迫や、広島監督当時の寿人のような確固たるCFが登場するのを、ただただ待っているようにしか見えない。自らは何の工夫も行わずに。
私なりの妄想を語る。例えば、敵が中央を固めており、伊東と三笘を両翼に配して彼らの個人技によるサイド突破から点を取ろうとするならば、短い距離の速さで中央のDFを出し抜ける前田や、屈強な欧州や南米のDFにマークされても身体を利かせられるオナイウが有用だろう。例えば、敵にリードを許し、8人なり9人で後方を完全に固められてしまったら、上田や町野のように持ち堪えられるCFを起用し、その後方で狭いスペースでボールを扱える南野や堂安(先日E-1で活躍した西村拓真でもいい)に支援させて、敵陣近くで拠点を作るのが有効だろう。何より上田と町野は僅かな空間をもらえれば強シュートがあり、敵CBを引き付けることができる。また、田中や堂安や鎌田大地の才気、伊東や三笘の個人技で好機を作るから、とにかくネットを揺らす選手が欲しいと言うならば、大ベテランの小林悠と言う選択肢もあるかもしれない、小林ならば田中や三笘との連係も期待できる…
もちろん、以上は私の妄想に過ぎません。何回でも言うが、ドイツ戦より前に、森保氏にはUSA戦とエクアドル戦の2試合しか残されていない。この2試合で選手個々の特性の新しい組み合わせを作り込むのは現実的ではなく、今さら、オナイウや小林の選考は現実的ではないだろう。
カタールのCF候補は6月に選考された浅野・古橋・前田・上田、それに復調すれば大迫、そしてE-1の韓国戦で猛威を奮った町野の6人のいずれかだろう。先日の4連戦を見た限りでは、森保氏は浅野と古橋を高く評価しているようだ。予選の敵地豪州戦、6月連戦初戦パラグアイ戦、最終戦チュニジア戦で浅野をスタメンに起用している。一方、古橋は一番重要なセレソン戦のスタメン、苦戦に陥ったチュニジア戦で後半浅野に代えて起用された。浅野が再三単身で豪州守備網を切り裂きかけたこと、ブラジル戦の古橋は守備に奔走していたが強豪相手に機能したことは、それぞれ間違いないし。ただ、森保氏が浅野や古橋を起用して、この2人の特長を活かすような布陣を敷いたことも、田中や伊東ら中軸の特長を活かすようにこの2人を動かしたことは記憶にない。これまでクドクドと講釈を垂れてきた通り。
いずれにしても、森保氏は、この2連戦前に、候補選手を3人程度に絞らなければならない。「絞る」という言葉を言い換えると「捨てる」と言うことだ。9月シリーズ前に、森保氏は誰を捨てる決断をするのだろうか。
改めて語るが、過去の日本代表を振り返っても、これだけ有為なタレントが揃ったワールドカップは初めてだ。同時に、カタールに向けてCFに誰を起用するか目鼻が付いていないのも、また確かだ。森保氏には、自分の眼力に自信を持ち、最適と判断する選手を絞り込んでほしい。その絞り込みに、森保氏なりの強い意志があればあるほど、ドーハの超歓喜が近づくはずだ。森保氏にはこの街で29年前の悲劇の復讐を果たしてもらわなければならないのだ。
2022年08月21日
2022年08月13日
ベガルタJ1復帰への道筋
J2も全42試合中30試合を終え、あと12試合。終盤戦に入ろうとしている。
首位横浜FCが勝点57、得失点差+13、2位のアルビレックス新潟が勝点56、得失点差+24、そして我がベガルタ仙台が勝点55、得失点差+20で3位。4、5、6位のファジアーノ岡山の勝点・得失点差が48・+12、Vファーレン長崎が47・+6、ロアッソ熊本も47・+4。このあたりまでが自動昇格権の2位以内に入れる可能性があるチームだろうか。
ベガルタとしては、残り12試合粛々と勝点と得失点差を積み上げ、2位以内に入ることに向け全力を尽くすこととなる。何とも重苦しい残り2ヶ月半の間、胃が痛くなるような週末を、ライバルクラブ関係者と共に楽しむことになる。正にサポータ冥利に尽きる充実した日々ではないか。
もっとも、勝とうが負けようが、調子がよかろうが悪かろうが、毎シーズン「サポータ冥利に尽きる」と講釈を垂れている私が言っても、説得力がないかもしれないがw。
簡単に今シーズンのベガルタのこれまでの戦いを振り返ってみる。
まずは、ベガルタ強化部門の慧眼。
降格した昨シーズンのメンバから、スウォビィク、アピアタウィア、上原、関口、西村と言った中心選手が抜けた。一方で降格し予算も厳しかろう状況で、杉本、若狭、金大鉉、内田、デサバト、大曽根、名倉、鎌田、遠藤、中山と実効的な選手の補強に成功し、それらの選手がみなチームに貢献している。さらにリーグ開幕後に中島も獲得。加えて、先日若狭が重傷を負った直後に佐藤瑶大を獲得。もはや中島はチームの大黒柱だし、佐藤もすぐCBとして出場している。今シーズンの強化部門の手腕は見事しか言いようがない。
もちろん、原崎監督の手腕も讃えられるべき。
4–2-2-2あるいは4-2-3-1の並びでサイドMFが中央に絞りサイドバックを前に出すのが基本布陣。前線からの組織守備で中盤でボールを刈り取り、ショートカウンタを仕掛ける。序盤戦はこう言った速攻が目立ったが、シーズンも1/4過ぎたあたりから少しずつ、最終ラインから執拗にボールを回し敵DFのズレを誘った遅攻も有効になってきた。
昨21年シーズンのベガルタ。序盤戦の守備崩壊や外国人選手補強失敗などもあり、攻撃の道筋を作り込むことができず、J2降格。選手の入れ替わり以前に、チームの基盤から再構築しなければならない状態だった。したがって、J2の上位争いに加わるまでには相当時間がかかるのではないかと、私は危惧していた。実際、開幕戦のホーム新潟戦は0-0だったが、チームの成熟度の差は著しく、引き分けは幸運と言う内容だった。ところが、その後のチームの進歩はすばらしく、上記のように組織的な速攻と遅攻を使い分けることのできるチームを比較的短時間で作り上げることに成功した。
しかも、序盤戦から、目先の結果にとらわれることなく、ローテーション気味に選手を起用。現状の登録選手でまとまった試合出場がないのは、第4GKの井岡と、このオフに重傷を負った松下のみ。登録選手ほとんどを戦力化することに成功、結果的に負傷者や疫病感染者が出ても、決定的な影響なく試合に臨めている。リーグ序盤から、シーズン終了時点の歓喜を目指す姿勢が貫かれてきたのだ。
夏季の移籍期間では上記の佐藤以外に新規獲得はなかったが、これも現状の選手層が充実している賜物。実際いずれのポジションも穴はない。もし補強するとしたら現状の選手を凌駕した能力の選手を求めることになる。そのような選手と言うと、J1で中核を担っているようなタレントとなり、現実的ではない。それよりは、シーズン終了後に、J1復帰祝いとして各選手やスタッフにボーナスを提供する方がよほど健全なカネの使い方と言うものだ。
ではここから、いかに抜け出し、J1自動昇格を目指すか。
陳腐な言い方になるが、このまま1試合ずつ丁寧に戦いを続ければよい。既に我々の攻撃力はJ2最高だ。総得点60がトップと言う結果もそうだが、手変え品変え、多くの選手が関与する攻撃内容は相当なレベルに達している。もちろん、勝負ごとだから相手がある。先方も、スカウティング、当方準備を外す工夫、試合中の駆け引きなど、様々な手を打ってくる。だからこそ、シーズン序盤から原崎氏が指向していた、多士済済のタレントを併用させるやり方は、一層有効になってくるはず。いずれのポジションにもタイプの異なる交替要員がいるのは効果的だ。
そして何より、もうすぐ松下が戻ってくる。これ以上の補強があろうか。松下の復帰により、一気にオプションが広がる。フォギーニョ(あるいはデサバト)と中島のドイスボランチが現状のチームの基軸。ここに松下が加わり融通無碍の変化あふれる展開や前線へのラストパスが加わる。もちろん中島を一列上げる選択肢が増えるから、攻撃面で最も頼りになる遠藤の疲弊を防ぐこともできる。
とは言えちょっと気になるのは、原崎氏が「残りすべての試合を全勝する」的な発言をしているような報道を散見することだ。そりゃ、残り12試合勝点36とれば、昇格は間違いないですよ(新潟との直接対決も残っているし)。けれども、常識的に考えれば全勝せずとも優勝あるいは2位の獲得は決して不可能ではなく、ここから大事なのは徹底したリアリズムのはずだ。もっとも、原崎氏が選手達に向かって、「絶対全勝!」的な精神論を語るのも「勢い付け」と言う意味では有効だろうし、そもそもマスコミ受けしそうな発言をすることも監督の責務かもしれない。原崎氏自身も本気で12戦全勝が昇格ラインとは思ってもいないだろうが。
リアリズムの徹底と言う視点から言うと、チームとして疲労が重なり、中盤で敵を止められなくなった場合の戦い方にもう一工夫ほしい。そのような展開となったら、もう少し後方でゆっくりとボールを回せないだろうか。
例えば、敵地町田戦。攻守のバランスがよく、セットプレイをしっかり決めたこともありアウェイながら3-0とリード。ところが、交代策が遅れたこともあったが、中盤のバランスが崩れた終盤、ボールキープもままならなくなり、3-2に追い込まれかろうじて逃げ切った。大量リードしていたのだから、DFとMFは後方に引いて落ち着いてボールキープしたいところだった。
例えば、敵地琉球戦、前半リードし2点差以上に突き放す好機もつかみながら決めきれず。結果的に同点で終盤を迎えた。守備を固めた琉球に対し、終盤突き放そうと無理に攻め込もうとして、逆に全軍が間伸び、再三逆襲速攻から決定機を与えてしまった。GK杉本のファインセーブがなければ勝点ゼロに終わってもおかしくなかった。敵が引いて待ち構えていたのだから、引き出す工夫が欲しかった。
例えば、敵地山口戦。おそらく疫病の影響だろうか、控えにユースの山田をいれなければならない厳しい布陣。先制を許すも前半のうちに逆転に成功。その後2点差にできそうな好機もあったが決めきれずに迎えた終盤戦。後から投入した控え選手も体調がよくないようで、ノーガードの攻め合いにしてしまった。再三のピンチも杉本の候補でしのいだが、アディショナルタイムに(よりによって!)渡部博文に同点とされ、その後も危ない場面が再三、「勝点1を獲得できてよかった」と言う試合にしてしまった。控え選手の体調も今一歩だったのだから、後半半ばで無理をせず引いてリードを守りに行く手段もあったのではないか。
要は状況が難しくなったら、無理をせずにボールを回し、前に出て行かない勇気を持ちたいと言うことだ。双方が疲弊した試合終盤だ、敵の前線でのプレスも甘くなるはず。それでも敵が前線でボールを刈り取りに来たら、フォギーニョやデサバトのさばきから、金太鉉や中島や蜂須賀そして松下の精度高いロングボールで裏を狙えばよい。そのような展開下でベンチに温存していた皆川を起用すれば一発の裏抜け狙いはもちろん、オープンでの拠点も作ってくれるだろう。終盤苦しい時間帯に自陣で多くの時間を費やすやり方は精神的には楽ではないが、今のベガルタ各選手の判断力があれば十分にこなせると思う。
そうやって、勝点も得失点差も丹念に丹念に積み上げていく。極端な言い方をすれば、結果的に勝点3が取れなくとも負けるよりは引き分けの方がずっとよい、負けたとしても点差を詰める、冷静に冷静に考え、少しでも少しでも勝点と得失点差を積み上げる。残り12試合、1試合あたり約95分と考えれば約1140分、この約1140分間をそうやって綿密に綿密に戦い抜けば、J1復帰は必ずついてくる。
首位横浜FCが勝点57、得失点差+13、2位のアルビレックス新潟が勝点56、得失点差+24、そして我がベガルタ仙台が勝点55、得失点差+20で3位。4、5、6位のファジアーノ岡山の勝点・得失点差が48・+12、Vファーレン長崎が47・+6、ロアッソ熊本も47・+4。このあたりまでが自動昇格権の2位以内に入れる可能性があるチームだろうか。
ベガルタとしては、残り12試合粛々と勝点と得失点差を積み上げ、2位以内に入ることに向け全力を尽くすこととなる。何とも重苦しい残り2ヶ月半の間、胃が痛くなるような週末を、ライバルクラブ関係者と共に楽しむことになる。正にサポータ冥利に尽きる充実した日々ではないか。
もっとも、勝とうが負けようが、調子がよかろうが悪かろうが、毎シーズン「サポータ冥利に尽きる」と講釈を垂れている私が言っても、説得力がないかもしれないがw。
簡単に今シーズンのベガルタのこれまでの戦いを振り返ってみる。
まずは、ベガルタ強化部門の慧眼。
降格した昨シーズンのメンバから、スウォビィク、アピアタウィア、上原、関口、西村と言った中心選手が抜けた。一方で降格し予算も厳しかろう状況で、杉本、若狭、金大鉉、内田、デサバト、大曽根、名倉、鎌田、遠藤、中山と実効的な選手の補強に成功し、それらの選手がみなチームに貢献している。さらにリーグ開幕後に中島も獲得。加えて、先日若狭が重傷を負った直後に佐藤瑶大を獲得。もはや中島はチームの大黒柱だし、佐藤もすぐCBとして出場している。今シーズンの強化部門の手腕は見事しか言いようがない。
もちろん、原崎監督の手腕も讃えられるべき。
4–2-2-2あるいは4-2-3-1の並びでサイドMFが中央に絞りサイドバックを前に出すのが基本布陣。前線からの組織守備で中盤でボールを刈り取り、ショートカウンタを仕掛ける。序盤戦はこう言った速攻が目立ったが、シーズンも1/4過ぎたあたりから少しずつ、最終ラインから執拗にボールを回し敵DFのズレを誘った遅攻も有効になってきた。
昨21年シーズンのベガルタ。序盤戦の守備崩壊や外国人選手補強失敗などもあり、攻撃の道筋を作り込むことができず、J2降格。選手の入れ替わり以前に、チームの基盤から再構築しなければならない状態だった。したがって、J2の上位争いに加わるまでには相当時間がかかるのではないかと、私は危惧していた。実際、開幕戦のホーム新潟戦は0-0だったが、チームの成熟度の差は著しく、引き分けは幸運と言う内容だった。ところが、その後のチームの進歩はすばらしく、上記のように組織的な速攻と遅攻を使い分けることのできるチームを比較的短時間で作り上げることに成功した。
しかも、序盤戦から、目先の結果にとらわれることなく、ローテーション気味に選手を起用。現状の登録選手でまとまった試合出場がないのは、第4GKの井岡と、このオフに重傷を負った松下のみ。登録選手ほとんどを戦力化することに成功、結果的に負傷者や疫病感染者が出ても、決定的な影響なく試合に臨めている。リーグ序盤から、シーズン終了時点の歓喜を目指す姿勢が貫かれてきたのだ。
夏季の移籍期間では上記の佐藤以外に新規獲得はなかったが、これも現状の選手層が充実している賜物。実際いずれのポジションも穴はない。もし補強するとしたら現状の選手を凌駕した能力の選手を求めることになる。そのような選手と言うと、J1で中核を担っているようなタレントとなり、現実的ではない。それよりは、シーズン終了後に、J1復帰祝いとして各選手やスタッフにボーナスを提供する方がよほど健全なカネの使い方と言うものだ。
ではここから、いかに抜け出し、J1自動昇格を目指すか。
陳腐な言い方になるが、このまま1試合ずつ丁寧に戦いを続ければよい。既に我々の攻撃力はJ2最高だ。総得点60がトップと言う結果もそうだが、手変え品変え、多くの選手が関与する攻撃内容は相当なレベルに達している。もちろん、勝負ごとだから相手がある。先方も、スカウティング、当方準備を外す工夫、試合中の駆け引きなど、様々な手を打ってくる。だからこそ、シーズン序盤から原崎氏が指向していた、多士済済のタレントを併用させるやり方は、一層有効になってくるはず。いずれのポジションにもタイプの異なる交替要員がいるのは効果的だ。
そして何より、もうすぐ松下が戻ってくる。これ以上の補強があろうか。松下の復帰により、一気にオプションが広がる。フォギーニョ(あるいはデサバト)と中島のドイスボランチが現状のチームの基軸。ここに松下が加わり融通無碍の変化あふれる展開や前線へのラストパスが加わる。もちろん中島を一列上げる選択肢が増えるから、攻撃面で最も頼りになる遠藤の疲弊を防ぐこともできる。
とは言えちょっと気になるのは、原崎氏が「残りすべての試合を全勝する」的な発言をしているような報道を散見することだ。そりゃ、残り12試合勝点36とれば、昇格は間違いないですよ(新潟との直接対決も残っているし)。けれども、常識的に考えれば全勝せずとも優勝あるいは2位の獲得は決して不可能ではなく、ここから大事なのは徹底したリアリズムのはずだ。もっとも、原崎氏が選手達に向かって、「絶対全勝!」的な精神論を語るのも「勢い付け」と言う意味では有効だろうし、そもそもマスコミ受けしそうな発言をすることも監督の責務かもしれない。原崎氏自身も本気で12戦全勝が昇格ラインとは思ってもいないだろうが。
リアリズムの徹底と言う視点から言うと、チームとして疲労が重なり、中盤で敵を止められなくなった場合の戦い方にもう一工夫ほしい。そのような展開となったら、もう少し後方でゆっくりとボールを回せないだろうか。
例えば、敵地町田戦。攻守のバランスがよく、セットプレイをしっかり決めたこともありアウェイながら3-0とリード。ところが、交代策が遅れたこともあったが、中盤のバランスが崩れた終盤、ボールキープもままならなくなり、3-2に追い込まれかろうじて逃げ切った。大量リードしていたのだから、DFとMFは後方に引いて落ち着いてボールキープしたいところだった。
例えば、敵地琉球戦、前半リードし2点差以上に突き放す好機もつかみながら決めきれず。結果的に同点で終盤を迎えた。守備を固めた琉球に対し、終盤突き放そうと無理に攻め込もうとして、逆に全軍が間伸び、再三逆襲速攻から決定機を与えてしまった。GK杉本のファインセーブがなければ勝点ゼロに終わってもおかしくなかった。敵が引いて待ち構えていたのだから、引き出す工夫が欲しかった。
例えば、敵地山口戦。おそらく疫病の影響だろうか、控えにユースの山田をいれなければならない厳しい布陣。先制を許すも前半のうちに逆転に成功。その後2点差にできそうな好機もあったが決めきれずに迎えた終盤戦。後から投入した控え選手も体調がよくないようで、ノーガードの攻め合いにしてしまった。再三のピンチも杉本の候補でしのいだが、アディショナルタイムに(よりによって!)渡部博文に同点とされ、その後も危ない場面が再三、「勝点1を獲得できてよかった」と言う試合にしてしまった。控え選手の体調も今一歩だったのだから、後半半ばで無理をせず引いてリードを守りに行く手段もあったのではないか。
要は状況が難しくなったら、無理をせずにボールを回し、前に出て行かない勇気を持ちたいと言うことだ。双方が疲弊した試合終盤だ、敵の前線でのプレスも甘くなるはず。それでも敵が前線でボールを刈り取りに来たら、フォギーニョやデサバトのさばきから、金太鉉や中島や蜂須賀そして松下の精度高いロングボールで裏を狙えばよい。そのような展開下でベンチに温存していた皆川を起用すれば一発の裏抜け狙いはもちろん、オープンでの拠点も作ってくれるだろう。終盤苦しい時間帯に自陣で多くの時間を費やすやり方は精神的には楽ではないが、今のベガルタ各選手の判断力があれば十分にこなせると思う。
そうやって、勝点も得失点差も丹念に丹念に積み上げていく。極端な言い方をすれば、結果的に勝点3が取れなくとも負けるよりは引き分けの方がずっとよい、負けたとしても点差を詰める、冷静に冷静に考え、少しでも少しでも勝点と得失点差を積み上げる。残り12試合、1試合あたり約95分と考えれば約1140分、この約1140分間をそうやって綿密に綿密に戦い抜けば、J1復帰は必ずついてくる。
2022年05月18日
続 赤鬚のフォギーニョ
最近作文をサボり過ぎていたと少し反省しました。短くてもよいから少しは頻度を上げるようにします。
さて、ここのところ好調なベガルタ。前節はツエーゲン金沢に4-1で快勝、自分のクラブの大勝、それだけで最高だったのは、言うまでもない。
加えて嬉しかったのは、私の大好きな赤鬚のフォギーニョが来日初得点、それもいきなり2得点を決めてくれた。もちろん、贔屓選手の連続得点は喜びも格段。しかも、2つの点の取り方が、タフファイトを得意とするこの赤鬚らしいものだったのだから、堪えられなかった。
前半互角の攻防ながら、35分過ぎ自陣からの遅攻で崩して得たFKを中島が強烈に決めて先制。
そして迎えた後半、圧力を加えてきた金沢の猛攻をかろうじてしのいだ49分。左DF内田が自陣でボールを奪い、中島が左サイドで前進する氣田へ。氣田は中央富樫につなぎ、富樫が見事なターンで逆サイド加速して前進する名倉へ。この富樫の展開で、ベガルタは手薄な逆サイドからの速攻スタートに成功した。少し前進した名倉は、落ち着いて中央遠藤にラストパス。遠藤は、いかにもこの男らしい優しいボールコントロールから、ターンして得意の左足シュート。しかし、惜しくも敵DFのブロックに防がれる。そのボールがこぼれ、帰陣しつつあった金沢MF2人の中間にこぼれたところに、我らがフォギーニョが襲いかかる。いかにも、この赤鬚らしい加速でボールを確保し、ペナルティエリア内に進出。敵DFのカバーが遅れるとみるや、やや外側の自分のシュートレンジに1歩ドリブル(と言うよりは「ボールを丁寧に置き直した」と言う表現が正確か)、立ち足の左足を鋭角に踏み込んで低いインステップキックで逆サイドネットに蹴り込んだ。トラップからシュートの流れは見ていて気持ちよいくらい、本人の意図を感じた。決して足が速い訳でも、精妙なボール扱いを誇る訳でもないこの守備的MF。長駆前進力と丁寧なボール扱い、本人の特長を完璧に活かした得点だった。シュートが決まった時、攻めに絡んだ氣田・富樫・名倉・遠藤の4人がペナルティエリア内外に進出、金沢の4DFはその4人を捕捉中。一方帰陣した金沢MFは3人いたが、フォギーニョの勢いに完全に置いていかれ何もできなかった。フォギーニョは5対7の数的不利を打ち破ったのだ。
続く60分過ぎ。ベガルタ陣内で金沢右DF松田陸から中央でパスを受けたボランチ藤村に、フォギーニョが襲いかかる。そしてボール奪取に成功、10mほど前に位置取りしていた冨樫に縦パスし、ダッシュで前進。冨樫は落ち着いた溜めから、左サイドを疾走する氣田に好パス。この時点でベガルタは、氣田と遠藤が残っていた金沢の2DF(松本と庄司)に対して、2対2の形を作ることに成功した。正にボランチボール奪取から、トップの好ターンと言う絵に描いた速攻。フォギーニョの前進開始時に、松田陸も藤村も同様に高速で帰陣しようとしたが、冨樫の溜めにつられ、2人とも減速してしまった。そのため、フォギーニョは藤村より数m敵陣に近いところを疾走する状態となった。ここで勝負あり。トップに残っていた遠藤は、フォギーニョの高速前進を見て、左サイドに流れ氣田の縦パスを受ける。この時点で、氣田について外に流れた松本は無力化。残るは遠藤とフォギーニョ対庄司の2対1。中央をルックアップした遠藤は、もうこの時点で全身に喜びを表したかのような雰囲気で、強く正確なグラウンダのラストパス。庄司は何もできない。赤鬚はゴール前4mの距離で左足インサイドキックで誰でも決められるようなシュートを決めた。シュートそのものは簡単だったが、ボール奪取力と躊躇せず高速前進を継続した決断力、これまたこの守備的MFの卓越した特長が完璧に発揮された得点だった。
2得点とも、この大好きな赤鬚の高速長駆の前進が活きたと言う意味では共通点がある。しかし、発揮した持ち味は、上記の通り異なる得点。贔屓選手(最近の流行り言葉では「推し」と言うのかな)の能力をじっくり堪能できた快勝。まこと、サポータ冥利に尽きる試合だった。ああ、現地にいたかった。
ついでに言うと、いずれの得点も遠藤と赤鬚によるもの。この2人のボール扱いの精度を比べると、遠藤の方が格段に上なのは言うまでもない。格段に上手な日本人の演出で、タフで頑張るブラジル人が見事な得点を相次いで奪った。よい時代になったものだ。日本サッカーの向上と、ブラジルサッカーの奥深さ。
この2人の連係を思いながら、6月6日はセレソン戦を堪能できる。繰り返すが、よい時代になったものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2G2MK9w6HcE
さて、ここのところ好調なベガルタ。前節はツエーゲン金沢に4-1で快勝、自分のクラブの大勝、それだけで最高だったのは、言うまでもない。
加えて嬉しかったのは、私の大好きな赤鬚のフォギーニョが来日初得点、それもいきなり2得点を決めてくれた。もちろん、贔屓選手の連続得点は喜びも格段。しかも、2つの点の取り方が、タフファイトを得意とするこの赤鬚らしいものだったのだから、堪えられなかった。
前半互角の攻防ながら、35分過ぎ自陣からの遅攻で崩して得たFKを中島が強烈に決めて先制。
そして迎えた後半、圧力を加えてきた金沢の猛攻をかろうじてしのいだ49分。左DF内田が自陣でボールを奪い、中島が左サイドで前進する氣田へ。氣田は中央富樫につなぎ、富樫が見事なターンで逆サイド加速して前進する名倉へ。この富樫の展開で、ベガルタは手薄な逆サイドからの速攻スタートに成功した。少し前進した名倉は、落ち着いて中央遠藤にラストパス。遠藤は、いかにもこの男らしい優しいボールコントロールから、ターンして得意の左足シュート。しかし、惜しくも敵DFのブロックに防がれる。そのボールがこぼれ、帰陣しつつあった金沢MF2人の中間にこぼれたところに、我らがフォギーニョが襲いかかる。いかにも、この赤鬚らしい加速でボールを確保し、ペナルティエリア内に進出。敵DFのカバーが遅れるとみるや、やや外側の自分のシュートレンジに1歩ドリブル(と言うよりは「ボールを丁寧に置き直した」と言う表現が正確か)、立ち足の左足を鋭角に踏み込んで低いインステップキックで逆サイドネットに蹴り込んだ。トラップからシュートの流れは見ていて気持ちよいくらい、本人の意図を感じた。決して足が速い訳でも、精妙なボール扱いを誇る訳でもないこの守備的MF。長駆前進力と丁寧なボール扱い、本人の特長を完璧に活かした得点だった。シュートが決まった時、攻めに絡んだ氣田・富樫・名倉・遠藤の4人がペナルティエリア内外に進出、金沢の4DFはその4人を捕捉中。一方帰陣した金沢MFは3人いたが、フォギーニョの勢いに完全に置いていかれ何もできなかった。フォギーニョは5対7の数的不利を打ち破ったのだ。
続く60分過ぎ。ベガルタ陣内で金沢右DF松田陸から中央でパスを受けたボランチ藤村に、フォギーニョが襲いかかる。そしてボール奪取に成功、10mほど前に位置取りしていた冨樫に縦パスし、ダッシュで前進。冨樫は落ち着いた溜めから、左サイドを疾走する氣田に好パス。この時点でベガルタは、氣田と遠藤が残っていた金沢の2DF(松本と庄司)に対して、2対2の形を作ることに成功した。正にボランチボール奪取から、トップの好ターンと言う絵に描いた速攻。フォギーニョの前進開始時に、松田陸も藤村も同様に高速で帰陣しようとしたが、冨樫の溜めにつられ、2人とも減速してしまった。そのため、フォギーニョは藤村より数m敵陣に近いところを疾走する状態となった。ここで勝負あり。トップに残っていた遠藤は、フォギーニョの高速前進を見て、左サイドに流れ氣田の縦パスを受ける。この時点で、氣田について外に流れた松本は無力化。残るは遠藤とフォギーニョ対庄司の2対1。中央をルックアップした遠藤は、もうこの時点で全身に喜びを表したかのような雰囲気で、強く正確なグラウンダのラストパス。庄司は何もできない。赤鬚はゴール前4mの距離で左足インサイドキックで誰でも決められるようなシュートを決めた。シュートそのものは簡単だったが、ボール奪取力と躊躇せず高速前進を継続した決断力、これまたこの守備的MFの卓越した特長が完璧に発揮された得点だった。
2得点とも、この大好きな赤鬚の高速長駆の前進が活きたと言う意味では共通点がある。しかし、発揮した持ち味は、上記の通り異なる得点。贔屓選手(最近の流行り言葉では「推し」と言うのかな)の能力をじっくり堪能できた快勝。まこと、サポータ冥利に尽きる試合だった。ああ、現地にいたかった。
ついでに言うと、いずれの得点も遠藤と赤鬚によるもの。この2人のボール扱いの精度を比べると、遠藤の方が格段に上なのは言うまでもない。格段に上手な日本人の演出で、タフで頑張るブラジル人が見事な得点を相次いで奪った。よい時代になったものだ。日本サッカーの向上と、ブラジルサッカーの奥深さ。
この2人の連係を思いながら、6月6日はセレソン戦を堪能できる。繰り返すが、よい時代になったものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2G2MK9w6HcE
2022年01月15日
2022年サッカーはどこまで正常化するか
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。最近筆が重くなって、なかなか更新できませんが、ゆるゆると講釈を垂れていこうと思います。
約2年間、疫病禍に襲われたこの世界。国内外、関係者の多大な努力で何とかサッカーを楽しむことができていた。幾度も語ってきたが、関係者の丹念な努力の賜物、改めて感謝したいと思う。
残念ながら、年が明け新変異したオミクロン株により、状況が再び悪化したようだ。高校選手権準決勝関東一高の出場辞退、ラグビーリーグワンの開幕戦中止。日本国内での陽性者増加も悩ましいが、欧州主要国では10万人オーダの日次新規陽性者増加とのこと、「だったらマスクぐらいしろよ」とも言いたいが。声を出して応援できる環境に羨望しているだけかな。
そもそもCOVID-19対応は科学的に何が正しいのかよくわからないのが厄介。ここ最近の陽性者増加が、我々の正常な生活に対してどのくらい深刻なリスクなのか、それを客観的に示してくれるマスコミ報道がどれなのか判別し難いのが大きな悩みとなっている。
先ほど「関係者の努力」と簡単に述べたけれど、すべてのサッカー人の「努力」には感謝の言葉もない。
国内の若年層の公式戦、Jリーグを頂点とする国内のトップレベルの試合、各種国際試合、それぞれのレベルで、それぞれのリソースを駆使しながら異なる対策が行われてきた。
国際試合での帰国時の「バブル対応」、ACL奮闘直後にJの各クラブが相当な苦労をしていたのは記憶に新しい。また月末に行われるワールドカップ予選のバブル対応について、先日ヴィッセル神戸の実質オーナの三木谷氏が噛み付いたのもごもっとも。
国内トップレベルの試合で陽性者が出た場合の適正対応、何か起こる度にマスコミがおもしろおかしく語る中での難しい対応だった。Jリーグ当局が早々に立ち上げたプロトコル。プロ野球との連係を早々に立ち上げた政治的手腕もすばらしかったが、早々に明確なルールを作り、丸々2年運用継続をおこなった手腕は尊敬に値する。もっとも、その延長で湘南対浦和を無効試合にしてしまった痛恨時も表裏一体なのかもしれない。賞賛するしかない業績と、非難するしかない業績。
上記した今年の高校選手権の準決勝の悲劇ほどではないが、約1年前の高校選手権でチームメートが競技場ではなく学校での応援を余儀なくされたのも残念だった。いや、それ以上に大きな大会でもやむを得ず中止の判断が行われたケースも多かった。それでもサッカーは、相応の組織力があり、多くの人々の献身的努力により、他競技よりは中止の悲劇を防ぐことはできた。
グッとレベルは下がるが、底辺の少年団でも本当に大変だった。中でも大事な少年団最後の大会が中止になった時の子供たち、そしてずっと自分の子供とその大会に向けて準備を進めてきた父親コーチの失望を見るのは、それぞれつらかった。それでも子供たちは小学校を卒業した以降も無限のサッカーライフが待っているが、父親コーチには次はない。14年前の私とは異なり、彼らは人生の歓喜を味わえなかったのだ。
また幾度か語ったことがあるが交代人数が増えた新ルールは、サッカーを大きく変えた。活動量が激しいポジションは交代を行うのが前提の戦い方が当たり前になっている。長期のリーグ戦でも、短期決戦一発勝負でも、監督の作戦と駆け引きがやたら複雑になったこのルール変更。年寄りとしては抵抗感もあるが、サッカーの新しい側面を見せてくれている。もっとも、このルール変更にまったく対応することができてない代表監督を抱えているスリルも中々なのだが。
そして、サッカー観戦で声を出せないつらさは格段だ。
そうこうしながら2年近い月日が流れた。
冨安健洋、遠藤航、田中碧、伊東純也らがいるだけに、どんなに代表監督が愚行を重ねても出場権獲得はまったく問題ないと思っている。
しかし、俺はカタールに観客として行けるのだろうか。我々は、あと約10ヶ月でノンビリと観光旅行を楽しめる世界を取り戻すことができるのだろうか。
約2年間、疫病禍に襲われたこの世界。国内外、関係者の多大な努力で何とかサッカーを楽しむことができていた。幾度も語ってきたが、関係者の丹念な努力の賜物、改めて感謝したいと思う。
残念ながら、年が明け新変異したオミクロン株により、状況が再び悪化したようだ。高校選手権準決勝関東一高の出場辞退、ラグビーリーグワンの開幕戦中止。日本国内での陽性者増加も悩ましいが、欧州主要国では10万人オーダの日次新規陽性者増加とのこと、「だったらマスクぐらいしろよ」とも言いたいが。声を出して応援できる環境に羨望しているだけかな。
そもそもCOVID-19対応は科学的に何が正しいのかよくわからないのが厄介。ここ最近の陽性者増加が、我々の正常な生活に対してどのくらい深刻なリスクなのか、それを客観的に示してくれるマスコミ報道がどれなのか判別し難いのが大きな悩みとなっている。
先ほど「関係者の努力」と簡単に述べたけれど、すべてのサッカー人の「努力」には感謝の言葉もない。
国内の若年層の公式戦、Jリーグを頂点とする国内のトップレベルの試合、各種国際試合、それぞれのレベルで、それぞれのリソースを駆使しながら異なる対策が行われてきた。
国際試合での帰国時の「バブル対応」、ACL奮闘直後にJの各クラブが相当な苦労をしていたのは記憶に新しい。また月末に行われるワールドカップ予選のバブル対応について、先日ヴィッセル神戸の実質オーナの三木谷氏が噛み付いたのもごもっとも。
国内トップレベルの試合で陽性者が出た場合の適正対応、何か起こる度にマスコミがおもしろおかしく語る中での難しい対応だった。Jリーグ当局が早々に立ち上げたプロトコル。プロ野球との連係を早々に立ち上げた政治的手腕もすばらしかったが、早々に明確なルールを作り、丸々2年運用継続をおこなった手腕は尊敬に値する。もっとも、その延長で湘南対浦和を無効試合にしてしまった痛恨時も表裏一体なのかもしれない。賞賛するしかない業績と、非難するしかない業績。
上記した今年の高校選手権の準決勝の悲劇ほどではないが、約1年前の高校選手権でチームメートが競技場ではなく学校での応援を余儀なくされたのも残念だった。いや、それ以上に大きな大会でもやむを得ず中止の判断が行われたケースも多かった。それでもサッカーは、相応の組織力があり、多くの人々の献身的努力により、他競技よりは中止の悲劇を防ぐことはできた。
グッとレベルは下がるが、底辺の少年団でも本当に大変だった。中でも大事な少年団最後の大会が中止になった時の子供たち、そしてずっと自分の子供とその大会に向けて準備を進めてきた父親コーチの失望を見るのは、それぞれつらかった。それでも子供たちは小学校を卒業した以降も無限のサッカーライフが待っているが、父親コーチには次はない。14年前の私とは異なり、彼らは人生の歓喜を味わえなかったのだ。
また幾度か語ったことがあるが交代人数が増えた新ルールは、サッカーを大きく変えた。活動量が激しいポジションは交代を行うのが前提の戦い方が当たり前になっている。長期のリーグ戦でも、短期決戦一発勝負でも、監督の作戦と駆け引きがやたら複雑になったこのルール変更。年寄りとしては抵抗感もあるが、サッカーの新しい側面を見せてくれている。もっとも、このルール変更にまったく対応することができてない代表監督を抱えているスリルも中々なのだが。
そして、サッカー観戦で声を出せないつらさは格段だ。
そうこうしながら2年近い月日が流れた。
冨安健洋、遠藤航、田中碧、伊東純也らがいるだけに、どんなに代表監督が愚行を重ねても出場権獲得はまったく問題ないと思っている。
しかし、俺はカタールに観客として行けるのだろうか。我々は、あと約10ヶ月でノンビリと観光旅行を楽しめる世界を取り戻すことができるのだろうか。
2021年11月21日
私はベガルタ仙台の将来を楽観視している
J2降格が決定した。
今の感情を日本語化すると、どうなんだろう。空虚感と言うのだろうか。
類似の感情は幾度か経験ある。2009年シーズンの入替戦の磐田、2003年シーズンの降格決定、1993年のドーハのアルアリスタジアム。もちろん悔しいし悲しい、胸が張り裂けそうだ。でも、胸は張り裂けそうだが、物理的に何かを失ったわけではない。誰かが肉体的に傷ついたり、もちろん命を落としたりもしていない。多額の資産を失ったわけではない。
改めて思う。それでもここまで感情が揺さぶられるのだ。改めてサッカーのすばらしさを感じている。
今シーズン、ベガルタ仙台にとって最も重要な活動は、将来に渡りクラブとして存続できる体制再構築だった。そして、クラブは昨シーズンの債務超過問題を1年前倒しで来年度までに解決する目鼻を立てた。佐々木社長以下、ベガルタ仙台はその最大目標はしっかりこなしてくれた。また地味ながら、スポンサの増加や、広報活動の充実など、過去思うように進められなかった活動も、一定以上の成果を出している。
そして今シーズン、2番目の目標はJ1残留だった。残念ながらそれに失敗したわけだ。
J2降格は、クラブとしては衝撃的な出来事だが、クラブを未来永劫存続させるための、最優先とされる活動は成功しつつあることは忘れてはいけない。もちろん、この降格に伴い、直接ベガルタに関与している方々の収入などに残念な影響がある恐れはある。そのような方々に一介のサポータが無責任なことは語れないが、もっとも重要なのはクラブの永続的存続なのだ。
元々、J1クラブの中では経営基盤の小さいクラブ。戦闘能力が優れた選手を集められているわけではない。また、上記した債務超過問題もあり、前向きな投資(特に補強面)が行いづらい状況もあった。数年前より改善されているとは言え若年層チームからの選手補強も、まだまだ不十分だ。
その中で、約10年前に我がクラブで格段の成果を残し、五輪代表監督としても成果を見せた手倉森氏に託した今シーズン。結果は出なかった。
J1残留に失敗したチーム戦略での失敗要素は、いくつも挙げられる。
4-2-2-2を基本布陣としたが、いわゆる攻撃的サイドMFは、関口大老と新人の加藤以外のタレントは機能しなかった。移籍加入した氣田と秋山、シーズン中チームを去ったクエンカとマルチノス、潜在力は高そうだが負傷ばかりのオッティ。今シーズンも目立った活躍できなかったユース出身の至宝佐々木匠。シーズン前期待したタレントの多くが機能しなかった。終盤、中原や西村をこの位置に起用し機能させるに成功したのは確かだが、あまりに泥縄だった。湘南に先制点を許した場面、敵主将の右MF岡本がまったくフリーで前線進出しているのに、左サイドMFの西村は遥か彼方に位置取りしていたのが典型だった。
中盤戦で、引き分けられる試合にもかかわらず、試合終盤に無理に勝ちを狙いに行き勝ち点を失ったのも痛かった。敵地札幌戦や、ユアテック福岡戦、清水戦がその典型。開幕直後は、様々な要因でチーム力が上がらず惨敗を繰り返す時期があったが、4月以降はいずれのチームと相応の戦いができるようになっていた。この3試合の終盤を丁寧に戦い、1試合でも勝ち点1を拾うことができていれば終盤戦の様相は随分と変わっていたはずだ。
終盤、残留争いチームとの直接対決にことごとく敗れたわけだが、一方で神戸や名古屋など上位を争うチームとは相応の戦いができていた。これは最近の潮流となっているスカウティングによる各試合の対策が不十分だったとしか言いようがない。
しかし、上記のような戦略不備は、一方で将来を見据えた各選手の成長・チームとしての基盤戦闘能力向上に寄与した可能性もある。来シーズンはJ2での戦いを余儀なくされるし、今シーズン経験を積んだ中心選手をどこまで保持できるかの問題もあるのだが。
J2の戦いは非常に厳しいものがあるだろう。J1経験あるクラブがJ3に降格する事例もあるし、短期のJ1復帰が容易ではないことは自明のことだ。またCOVID-19影響で、基盤観客動員数が大幅に減ってしまった回復からの再スタートとなる。クラブ経営、若年層育成、補強、やらなければならないことは無数にあるだろう。、多くの企業の合同経営体制、曖昧な責任体制など、経営の根底にかかわる問題も山積している。多くのサポータが、悲観的な発言をしているのは理解できなくもない。
けれども、私は楽観的だ。何故ならば、上記した通りベガルタ仙台の経営層は、今シーズン最大の難題を解決しつつあるからだ。直近の問題に対し、優先度をつけた実績を挙げている経営陣は信頼できる。
ともあれ、サッカーなのだ。目先の試合に勝つことが重要なのは言うまでもない。まず今シーズンのまずは残り2試合、どのような戦いを行い、結果を出せるか。まずはそこに注目したい。この2試合をしっかり戦うことができるかどうかは、来シーズン、いや将来のベガルタにとって重要なはずだ。
改めて、12年に渡りJ1を維持し、ACLも経験させてくれたすべてのベガルタ関係者に感謝したい。
今シーズンも、ここまで結果も内容も思わしくない試合が多かったが、私としてはサポータ冥利に尽きる経験を積むことができた。残り2試合を丹念に戦うベガルタを楽しみにしている。そして来期は来期で、じっくりとベガルタを楽しめる。
故郷にプロサッカークラブがあり、毎週末その奮闘を楽しむことができる。どんなに空虚感に襲われても、私は幸せだ。
今の感情を日本語化すると、どうなんだろう。空虚感と言うのだろうか。
類似の感情は幾度か経験ある。2009年シーズンの入替戦の磐田、2003年シーズンの降格決定、1993年のドーハのアルアリスタジアム。もちろん悔しいし悲しい、胸が張り裂けそうだ。でも、胸は張り裂けそうだが、物理的に何かを失ったわけではない。誰かが肉体的に傷ついたり、もちろん命を落としたりもしていない。多額の資産を失ったわけではない。
改めて思う。それでもここまで感情が揺さぶられるのだ。改めてサッカーのすばらしさを感じている。
今シーズン、ベガルタ仙台にとって最も重要な活動は、将来に渡りクラブとして存続できる体制再構築だった。そして、クラブは昨シーズンの債務超過問題を1年前倒しで来年度までに解決する目鼻を立てた。佐々木社長以下、ベガルタ仙台はその最大目標はしっかりこなしてくれた。また地味ながら、スポンサの増加や、広報活動の充実など、過去思うように進められなかった活動も、一定以上の成果を出している。
そして今シーズン、2番目の目標はJ1残留だった。残念ながらそれに失敗したわけだ。
J2降格は、クラブとしては衝撃的な出来事だが、クラブを未来永劫存続させるための、最優先とされる活動は成功しつつあることは忘れてはいけない。もちろん、この降格に伴い、直接ベガルタに関与している方々の収入などに残念な影響がある恐れはある。そのような方々に一介のサポータが無責任なことは語れないが、もっとも重要なのはクラブの永続的存続なのだ。
元々、J1クラブの中では経営基盤の小さいクラブ。戦闘能力が優れた選手を集められているわけではない。また、上記した債務超過問題もあり、前向きな投資(特に補強面)が行いづらい状況もあった。数年前より改善されているとは言え若年層チームからの選手補強も、まだまだ不十分だ。
その中で、約10年前に我がクラブで格段の成果を残し、五輪代表監督としても成果を見せた手倉森氏に託した今シーズン。結果は出なかった。
J1残留に失敗したチーム戦略での失敗要素は、いくつも挙げられる。
4-2-2-2を基本布陣としたが、いわゆる攻撃的サイドMFは、関口大老と新人の加藤以外のタレントは機能しなかった。移籍加入した氣田と秋山、シーズン中チームを去ったクエンカとマルチノス、潜在力は高そうだが負傷ばかりのオッティ。今シーズンも目立った活躍できなかったユース出身の至宝佐々木匠。シーズン前期待したタレントの多くが機能しなかった。終盤、中原や西村をこの位置に起用し機能させるに成功したのは確かだが、あまりに泥縄だった。湘南に先制点を許した場面、敵主将の右MF岡本がまったくフリーで前線進出しているのに、左サイドMFの西村は遥か彼方に位置取りしていたのが典型だった。
中盤戦で、引き分けられる試合にもかかわらず、試合終盤に無理に勝ちを狙いに行き勝ち点を失ったのも痛かった。敵地札幌戦や、ユアテック福岡戦、清水戦がその典型。開幕直後は、様々な要因でチーム力が上がらず惨敗を繰り返す時期があったが、4月以降はいずれのチームと相応の戦いができるようになっていた。この3試合の終盤を丁寧に戦い、1試合でも勝ち点1を拾うことができていれば終盤戦の様相は随分と変わっていたはずだ。
終盤、残留争いチームとの直接対決にことごとく敗れたわけだが、一方で神戸や名古屋など上位を争うチームとは相応の戦いができていた。これは最近の潮流となっているスカウティングによる各試合の対策が不十分だったとしか言いようがない。
しかし、上記のような戦略不備は、一方で将来を見据えた各選手の成長・チームとしての基盤戦闘能力向上に寄与した可能性もある。来シーズンはJ2での戦いを余儀なくされるし、今シーズン経験を積んだ中心選手をどこまで保持できるかの問題もあるのだが。
J2の戦いは非常に厳しいものがあるだろう。J1経験あるクラブがJ3に降格する事例もあるし、短期のJ1復帰が容易ではないことは自明のことだ。またCOVID-19影響で、基盤観客動員数が大幅に減ってしまった回復からの再スタートとなる。クラブ経営、若年層育成、補強、やらなければならないことは無数にあるだろう。、多くの企業の合同経営体制、曖昧な責任体制など、経営の根底にかかわる問題も山積している。多くのサポータが、悲観的な発言をしているのは理解できなくもない。
けれども、私は楽観的だ。何故ならば、上記した通りベガルタ仙台の経営層は、今シーズン最大の難題を解決しつつあるからだ。直近の問題に対し、優先度をつけた実績を挙げている経営陣は信頼できる。
ともあれ、サッカーなのだ。目先の試合に勝つことが重要なのは言うまでもない。まず今シーズンのまずは残り2試合、どのような戦いを行い、結果を出せるか。まずはそこに注目したい。この2試合をしっかり戦うことができるかどうかは、来シーズン、いや将来のベガルタにとって重要なはずだ。
改めて、12年に渡りJ1を維持し、ACLも経験させてくれたすべてのベガルタ関係者に感謝したい。
今シーズンも、ここまで結果も内容も思わしくない試合が多かったが、私としてはサポータ冥利に尽きる経験を積むことができた。残り2試合を丹念に戦うベガルタを楽しみにしている。そして来期は来期で、じっくりとベガルタを楽しめる。
故郷にプロサッカークラブがあり、毎週末その奮闘を楽しむことができる。どんなに空虚感に襲われても、私は幸せだ。
2021年10月09日
四半世紀振りのヒリヒリ感
正直言います。腹が立ってしかたがないが、久々に心底興奮しています。
埼玉スタジアム豪州戦。24年ぶりに我々に帰ってきたこのヒリヒリ感。何があっても、同格の相手から勝ち点3獲得が必須のワールドカップ予選。
1993年10月25日カタールドーハはカリファスタジアムでの韓国戦(1-0で快勝しUSAへのチケットを確保したように思えたのだが…)、あるいは1997年10月26日国立競技場でのUAE戦(1-1で引き分け、自力でのフランス大会出場権は消えてしまったが、当のUAEがその後ウズベキスタンと引き分け、日本は生き返りジョホールバルへと…)。ここまで追い込まれ、ヒリヒリする予選は四半世紀振りではないか。
私は試合直後に、当然田嶋会長は森保氏を更迭すると思っていた。あるいは森保氏が自ら辞任すると思っていた。けれども、今のところ、そのような動きはないようだ。
おかげさまで、我々は豪州戦で最高のエンタテインメントを楽しむことができる。すべては、森保氏と、森保氏をクビにしない田嶋幸三氏のおかげである。
それにしても、森保氏の学習しない能力には感心する。
このサウジ戦、高温多湿の敵地戦ゆえ難しい試合となることは自明だった。守備重視の試合をしたのは正しい選択だったと思う。長友も酒井も無理に前に上がらず、落ち着いて試合を進めた。序盤のセットプレイで許したピンチを除けば、ほとんどサウジに好機を与えない。前半半ばで主審の癖をつかみ、自陣近い場所でのファウルもあまり取られなかった。各選手の知性の顕われと言えるだろう。
しかし、後半序盤から柴崎の不振は明らかだった。幾度もボールを奪われ、サウジに好機を提供し続ける。体調の問題もあるだろうし、年齢的な問題もあるだろうし、最近のプレイ環境から強度が落ちている可能性もある。何より、ロシアで見せてくれた世界屈指の射程の長いパスは、もうほとんど見せてくれなくなっている。ともあれ、守備的に戦う試合で、柴崎に拘泥する理由がわからなかった。ボール奪取力と言う意味では守田が、飛ばすパスでの展開では田中碧が(いや田中碧の方がプレイ強度も柴崎より高いな)、明らかに柴崎を上回る。もちろん、柴崎の豊富な経験は守田や田中碧を凌駕するところはあるのだが。
そして…
驚いたのは失点直後の交代劇だ。すぐに柴崎に代えて守田の投入。失点直前に守備能力に長けた守田の交代を準備していたのだろう。これは引き分けでも構わない展開だったのでおかしくはない。しかし、リードされてしまったのだ。状況は変わったのだ。点を取りにいかなければならないのだ。ここは田中碧だろう。
森保氏は、局面の修正能力が低いだけではない。一度決めた交代が、状況が変わったのにかかわらず修正できないのだ。五輪でも類似の下手くそな采配を見たのを思い出した。
完勝した中国戦に指摘した通りのことが再現されただけだ。執拗だが繰り返す。
失点以降も各選手は知恵の限りを尽くして崩しを狙った。しかし、守田、遠藤航、原口、古橋、阿道、大迫では崩すパスや変化をつけるタレントに欠けた。落ち着いたキープも叶わなかった。試合終了直後、DAZNが田中碧を映していたのは、高額の放映権料を支払ったこの企業からの、せめてもの森保氏に対するイヤミだろう。
森保氏は監督として全面的に無能なわけではない。
選手を見る目はあり、丹念に準備してチームの選手層を厚くしてきた。また、このサウジ戦各選手にリスクを避けた試合を指示する判断力は持っている。
けれども、選手の個性の組み合わせ、選手の体調の見極め、試合の機微を見た判断、そう言った能力が格段に低いのだ。これは今更、私が指摘するまでもなく、五輪からこのワールドカップ予選までのこの3ヶ月の真剣勝負で、田嶋氏を除くすべての人々に明らかになっている。ここまで明確になると、選手達にも森保氏の欠陥が明確に伝わってしまっていることだろう。
10月12日、埼玉スタジアム2002、19時10分キックオフ、日本対豪州。
日本サッカー史上最高級の選手達。
そして彼らはまったく信頼できない監督と共に勝ち点3を獲得しなければならない。もちろん、我々サポータは全力を尽くし、選手達を支えなければならない。この疫病禍下、声は出せなくても、選手達を支えなければならない。繰り返すが、何があっても、選手達を支えなければならない。
もう2度とこんなヒリヒリ感を味わう機会はないと思っていた。
サッカーを愛していてよかった。
埼玉スタジアム豪州戦。24年ぶりに我々に帰ってきたこのヒリヒリ感。何があっても、同格の相手から勝ち点3獲得が必須のワールドカップ予選。
1993年10月25日カタールドーハはカリファスタジアムでの韓国戦(1-0で快勝しUSAへのチケットを確保したように思えたのだが…)、あるいは1997年10月26日国立競技場でのUAE戦(1-1で引き分け、自力でのフランス大会出場権は消えてしまったが、当のUAEがその後ウズベキスタンと引き分け、日本は生き返りジョホールバルへと…)。ここまで追い込まれ、ヒリヒリする予選は四半世紀振りではないか。
私は試合直後に、当然田嶋会長は森保氏を更迭すると思っていた。あるいは森保氏が自ら辞任すると思っていた。けれども、今のところ、そのような動きはないようだ。
おかげさまで、我々は豪州戦で最高のエンタテインメントを楽しむことができる。すべては、森保氏と、森保氏をクビにしない田嶋幸三氏のおかげである。
それにしても、森保氏の学習しない能力には感心する。
このサウジ戦、高温多湿の敵地戦ゆえ難しい試合となることは自明だった。守備重視の試合をしたのは正しい選択だったと思う。長友も酒井も無理に前に上がらず、落ち着いて試合を進めた。序盤のセットプレイで許したピンチを除けば、ほとんどサウジに好機を与えない。前半半ばで主審の癖をつかみ、自陣近い場所でのファウルもあまり取られなかった。各選手の知性の顕われと言えるだろう。
しかし、後半序盤から柴崎の不振は明らかだった。幾度もボールを奪われ、サウジに好機を提供し続ける。体調の問題もあるだろうし、年齢的な問題もあるだろうし、最近のプレイ環境から強度が落ちている可能性もある。何より、ロシアで見せてくれた世界屈指の射程の長いパスは、もうほとんど見せてくれなくなっている。ともあれ、守備的に戦う試合で、柴崎に拘泥する理由がわからなかった。ボール奪取力と言う意味では守田が、飛ばすパスでの展開では田中碧が(いや田中碧の方がプレイ強度も柴崎より高いな)、明らかに柴崎を上回る。もちろん、柴崎の豊富な経験は守田や田中碧を凌駕するところはあるのだが。
そして…
驚いたのは失点直後の交代劇だ。すぐに柴崎に代えて守田の投入。失点直前に守備能力に長けた守田の交代を準備していたのだろう。これは引き分けでも構わない展開だったのでおかしくはない。しかし、リードされてしまったのだ。状況は変わったのだ。点を取りにいかなければならないのだ。ここは田中碧だろう。
森保氏は、局面の修正能力が低いだけではない。一度決めた交代が、状況が変わったのにかかわらず修正できないのだ。五輪でも類似の下手くそな采配を見たのを思い出した。
完勝した中国戦に指摘した通りのことが再現されただけだ。執拗だが繰り返す。
選手の体調を見極められないこと、選手交代について計画性がないこと、勝っている試合のクローズが稚拙なこと。そして、五輪での最大の失敗である選手の消耗対応を反省していないこと。要は森保氏は、1試合ずつ丁寧に勝ち切る用兵が決定的にお粗末なのだ。
失点以降も各選手は知恵の限りを尽くして崩しを狙った。しかし、守田、遠藤航、原口、古橋、阿道、大迫では崩すパスや変化をつけるタレントに欠けた。落ち着いたキープも叶わなかった。試合終了直後、DAZNが田中碧を映していたのは、高額の放映権料を支払ったこの企業からの、せめてもの森保氏に対するイヤミだろう。
森保氏は監督として全面的に無能なわけではない。
選手を見る目はあり、丹念に準備してチームの選手層を厚くしてきた。また、このサウジ戦各選手にリスクを避けた試合を指示する判断力は持っている。
けれども、選手の個性の組み合わせ、選手の体調の見極め、試合の機微を見た判断、そう言った能力が格段に低いのだ。これは今更、私が指摘するまでもなく、五輪からこのワールドカップ予選までのこの3ヶ月の真剣勝負で、田嶋氏を除くすべての人々に明らかになっている。ここまで明確になると、選手達にも森保氏の欠陥が明確に伝わってしまっていることだろう。
10月12日、埼玉スタジアム2002、19時10分キックオフ、日本対豪州。
日本サッカー史上最高級の選手達。
そして彼らはまったく信頼できない監督と共に勝ち点3を獲得しなければならない。もちろん、我々サポータは全力を尽くし、選手達を支えなければならない。この疫病禍下、声は出せなくても、選手達を支えなければならない。繰り返すが、何があっても、選手達を支えなければならない。
もう2度とこんなヒリヒリ感を味わう機会はないと思っていた。
サッカーを愛していてよかった。
2021年10月02日
ベガルタまだまだ大丈夫だ
ベガルタはこの文章を書いた直後にガンバに3-2で勝利。「シメシメ、俺様の言った通り」と思っていたら、エスパルスに1-2、ヴォルティスに0-1で苦杯。いよいよ尻に火がついた状態になってしまった。
この連敗は、順位が近く僅かに当方より上位にいるクラブとの直接対決での敗戦。どんどん残留争いが苦しくなってくるわけで、勝ち点勘定的には本当に痛い。特にヴォルティス戦については、ホームで慎重に戦い、先方にほとんど好機を提供せずに戦い続け、何とか得点奪取を目指しもがき続けたところで、アディショナルタイムにCKから失点し苦杯。何とも味わい深い敗戦を味わうことができてしまった。
いや、サポータ冥利に尽きるのですがね。
このヴォルティス戦の失点は、先方に加入したばかりと言うノルウェー人ストライカのムシャガ・バケンガを福森がマークしきれずフリーでヘディングを許し、こぼれを第ベテランの石井秀典に決められたもの。先方はさぞや盛り上がるだろうなと思いに加え、さすがに「ここまでキッチリとバケンガは押さえてきたではないか」と愚痴を言いたくなるような失点だった。
いやエスパルス戦の失点も中々だった。前半、エスパルスは鋭いフォアチェックが鋭く、サイドバックが押し下げられ、思うようにボールをキープできない。こうなると我慢するしかないのだが、焦りからかサイド攻撃の起点の蜂須賀が無理に持ち出そうとしては裏を突かれ、結果的にCKを与えての失点。「大事な試合で、どうして前半から無理をするのだ!」と言いたくなるものだった。
さらに後半序盤に、守護神スウオビィクが無理なボールキープをひっかけられ追加点を許してしまった。我らが名手は、少々足下が怪しいところはあるが、ここまで明らかなミスは珍しい。ここまで幾多のピンチを救ってきてくれたクバに不満を唱えるつもりは一切ない。しかし、どうしてこの名手がこんなミスをしてしまったのか。
結局のところ「勝ちたい、絶対に勝ち点3を獲得したい」と言う焦りが、守りを固めるべき時間帯に、攻めることまで考慮してしまい、空回りしてしまったと言うことだろう。
もう済んだことだ。しかたがない。改善すればよいのだ。組織守備は十分に機能している。守らなければならない時は、そこに専念すれば大丈夫だ。
もちろん攻撃には改善の余地がある。思うように好機を作れない、点が取れない、そのような焦りが上記の守備での不備を産んでいるのだし。
苦しいのは攻撃的MF(言い換えればサイドMF)の層が薄いことだ。大ベテランの関口老と新人の加藤以外決定的なタレントがいない。残念ながら今年切り札として補強した秋山と氣田、ユース出身の佐々木、いずれも思ったように機能しないようだ。けれども、視野を広げれば、状況は改善する。例えばサイドバックでずっと起用されている真瀬や石原を1列前に使う手段もある。幾度か成功しているが中原をサイドMFで使う手もある。フォギーニョを起用し上原、松下をいわゆるインサイドMFに起用する4-3-3も有力な選択肢になるだろう
幸い前線のタレントは揃っている。F・カルドーソはエスパルス戦でようやく点をとってくれたが、後方からの低いボールの受けは格段にうまい。今夏に補強した富樫はシューターとしての魅力は十分。赤崎は体質的に仕事の連続性に課題はあるが、最前線のどこにおいても知的なプレイを見せてくれる(西村をトップ下に下げ、赤崎にひたすらゴールを狙わせるのも有力なやり方もあると思うのだが)。
そして、西村が豊富な運動量、長駆後にも仕事ができるフィジカル、他の選手へのスペース作りなど、J屈指のFWであることも間違いない。後はこの苦しい状況の中、屈指のFWから、屈指のストライカに化けてくれるだけでよいのだ。
以上、ここ2試合連敗したベガルタを分析した。大丈夫だ。手倉森氏が前線の交通競位を適切に行い、後方の選手がいたずらに焦りをなくせば。
無意味に楽観論を語るつもりはない。
けれども、チームとしての練度は十分に整理されてきた。後は結果を出すだけなのだ。我々サポータは、それを信じて応援すればよいのだ。
この連敗は、順位が近く僅かに当方より上位にいるクラブとの直接対決での敗戦。どんどん残留争いが苦しくなってくるわけで、勝ち点勘定的には本当に痛い。特にヴォルティス戦については、ホームで慎重に戦い、先方にほとんど好機を提供せずに戦い続け、何とか得点奪取を目指しもがき続けたところで、アディショナルタイムにCKから失点し苦杯。何とも味わい深い敗戦を味わうことができてしまった。
いや、サポータ冥利に尽きるのですがね。
このヴォルティス戦の失点は、先方に加入したばかりと言うノルウェー人ストライカのムシャガ・バケンガを福森がマークしきれずフリーでヘディングを許し、こぼれを第ベテランの石井秀典に決められたもの。先方はさぞや盛り上がるだろうなと思いに加え、さすがに「ここまでキッチリとバケンガは押さえてきたではないか」と愚痴を言いたくなるような失点だった。
いやエスパルス戦の失点も中々だった。前半、エスパルスは鋭いフォアチェックが鋭く、サイドバックが押し下げられ、思うようにボールをキープできない。こうなると我慢するしかないのだが、焦りからかサイド攻撃の起点の蜂須賀が無理に持ち出そうとしては裏を突かれ、結果的にCKを与えての失点。「大事な試合で、どうして前半から無理をするのだ!」と言いたくなるものだった。
さらに後半序盤に、守護神スウオビィクが無理なボールキープをひっかけられ追加点を許してしまった。我らが名手は、少々足下が怪しいところはあるが、ここまで明らかなミスは珍しい。ここまで幾多のピンチを救ってきてくれたクバに不満を唱えるつもりは一切ない。しかし、どうしてこの名手がこんなミスをしてしまったのか。
結局のところ「勝ちたい、絶対に勝ち点3を獲得したい」と言う焦りが、守りを固めるべき時間帯に、攻めることまで考慮してしまい、空回りしてしまったと言うことだろう。
もう済んだことだ。しかたがない。改善すればよいのだ。組織守備は十分に機能している。守らなければならない時は、そこに専念すれば大丈夫だ。
もちろん攻撃には改善の余地がある。思うように好機を作れない、点が取れない、そのような焦りが上記の守備での不備を産んでいるのだし。
苦しいのは攻撃的MF(言い換えればサイドMF)の層が薄いことだ。大ベテランの関口老と新人の加藤以外決定的なタレントがいない。残念ながら今年切り札として補強した秋山と氣田、ユース出身の佐々木、いずれも思ったように機能しないようだ。けれども、視野を広げれば、状況は改善する。例えばサイドバックでずっと起用されている真瀬や石原を1列前に使う手段もある。幾度か成功しているが中原をサイドMFで使う手もある。フォギーニョを起用し上原、松下をいわゆるインサイドMFに起用する4-3-3も有力な選択肢になるだろう
幸い前線のタレントは揃っている。F・カルドーソはエスパルス戦でようやく点をとってくれたが、後方からの低いボールの受けは格段にうまい。今夏に補強した富樫はシューターとしての魅力は十分。赤崎は体質的に仕事の連続性に課題はあるが、最前線のどこにおいても知的なプレイを見せてくれる(西村をトップ下に下げ、赤崎にひたすらゴールを狙わせるのも有力なやり方もあると思うのだが)。
そして、西村が豊富な運動量、長駆後にも仕事ができるフィジカル、他の選手へのスペース作りなど、J屈指のFWであることも間違いない。後はこの苦しい状況の中、屈指のFWから、屈指のストライカに化けてくれるだけでよいのだ。
以上、ここ2試合連敗したベガルタを分析した。大丈夫だ。手倉森氏が前線の交通競位を適切に行い、後方の選手がいたずらに焦りをなくせば。
無意味に楽観論を語るつもりはない。
けれども、チームとしての練度は十分に整理されてきた。後は結果を出すだけなのだ。我々サポータは、それを信じて応援すればよいのだ。
2021年09月12日
ベガルタ残留プラン
ベガルタ8月の再開後2分4敗と思うように勝ち点を積み上げられず、現状残り11試合、勝ち点19、得失点差マイナス25の18位。17位までが降格の厳しいレギュレーションで、15、16位クラブの勝ち点は26、13、14位の勝ち点は30。J1残留には相当厳しい状況となっている(これらの数字は前節完了時点)。残留ラインをどう予測するかだが、40と見ると5勝6分0敗の勝ち点21、35と見ても4勝4分3敗ペースの勝ち点16の獲得が必要。不可能な数字ではないが、これまでベガルタは3勝しかしていないのだし、簡単に実現できると言ったら嘘になる。
上記再開後の試合を振り返ってみると、何かしら運もない。大差をつけられ完敗したのはマリノス戦のみ。このマリノス戦は後半立ち上がりまで粘り強く守っていたが、水沼とレオ・セアラの妙技に2点目を許し、前に出たところで大量失点を食らったもの。
それ以外の負け試合はなんとも言えない微妙な負け方ばかり。8月再開初戦のガンバ戦とこの代表ウィーク中断直前のサガン戦は、セットプレイによる失点をどうしても返せず0-1の敗戦。FC東京戦はアディショナルタイム、敵の明らかなダイビングをPKとされると言う主審の個性的な判定での敗戦(そうは言っても試合は審判に任せなければ成立しないからしかたない)。引き分けたセレッソ戦と横浜FC戦は、相応に好機をつかんだがポストに嫌われた。まあ、長いシーズンだ。ツキがない時とはそう言うもの。ここは割り切って粘り強く戦うしかない。
幸い上記した通り、守備網はかなりのレベルで整備されている。そして後述するが、手倉森氏が守備の再構築を主眼にチームを整備している構想は正しいと思っている。
けれども、どうにも点が入らないのは頭が痛い。何せ上記8月以降の6試合、奪えた得点は僅かに1点なのだから。
多産系の点取屋がいないから得点力不足に苦しんでいるわけで、まずは月並みだが好機を増やすべく努力するしかない(「いや攻撃力が貧困だから大量に点を稼ぐストライカがいない」との禅問答の講釈を垂れるのもおもしろいが、今は置いておく)。
そのためには、勝負どころで人数をかけた攻撃を行うことに尽きる。
どうしても守備的に戦うやり方をしている以上、攻撃の頻度は少ない。しかし、よい形でボールを奪った時に人数をかけて攻められるかどうか、これは選手個々の守備から攻撃への切替の判断(チームとしての意思統一)にかかっている。逆説めくが、有効な多人数速攻がしかけられない状況ならば、無理に前に行かずボールを保持した遅攻に切り替える判断も重要だ。相手が守備ブロックを固めても、松下佳貴や上原力也ならばそのブロックを崩すパスを出すことができるから、人数をかけた攻め直しもしかけられる。この意思統一が8月シーズンはまだまだ成熟していなかった。この代表ウィークでどこまで改善できたか期待したい。
人数をかけた攻撃をしかける以上、ボールを奪われた後の敵の速攻にどう備えるかも重要だ。幸い、ベガルタの組織守備は整備されており、8月シーズンを見てもそのリスクはかなり小さかった、このあたりの整備は手倉森氏はさすがと言えるだろう。点がとれないからこそ守備を強化した手倉森氏のやり方は正しかったのだ。地味ながら夏のオフの補強の大ヒットと言える福森直也と周囲の連係も次第に成熟していくだろうから、逆襲の備えはますます充実するだろう。
もちろん、失敗はあった。マリノス戦は敵の強力なプレスに耐えているうちに2点差とされてしまった。FC東京戦は、永井謙祐と高萩洋次郎の老獪な2トップの受けと位置取り、試合終盤にMFに起用された森重真人の格段の守備力で、速攻後の連続攻撃を許しピンチの連続だった。とは言え、マリノスのような強力な前線守備や、FC東京のような高度な判断力を備えたベテランを並べられるようなチームは、そう多くはない。また上記した守備組織の一層の成熟があれば、速攻をしのいだ後のつなぎで敵プレスをもっと上手に外せるようになるはず。だから、大胆に人数をかけた攻撃を整備するのは十二分に可能なはずだ。
もう一つ改善を期待したいのは、もっと個々の選手の特長を活かすことだ。
例えばフェリペ・カルドーゾ。後方からの高いボールについては収めることはもちろん、ヘディングの競り合いに勝つことも滅多にない。したがって、後方からのロビングを前線にいれてもほとんど意味はない。しかし、足元に入ったボールターンは格段にうまい。五輪オフの直前の札幌戦、押し込まれた前半たった1回よいグラウンダのパスを受け見事なターンから、真瀬の得点につなげた場面は忘れ難い。押し込まれる時間帯にDFがロングボールで逃げる局面はさておき、ボールを回して敵プレスをかいくぐった時に縦パスを入れる後方の選手達には工夫が欲しい。
例えば氣田亮真。前を向いた状態でボールを受ければ、鋭いドリブル突破を見せてくれる。しかし、敵の組織守備下で後ろを向いた状態でボールを受けてもほとんど機能しない。そのため消えてしまうことが多い。氣田自身の位置取りの向上も必要だが(もうシーズンも2/3過ぎたのだから、そろそろ自ら解決して欲しいのだが)、手倉森氏ももう少し采配に工夫できないか。例えば左右対称ではないフォーメーションをとり、大胆に氣田のベースポジションを大外にして、福森や蜂須賀にサイドチェンジを狙わせるとか。
余談ながら、サイドMFには(もう若手とは言えなくなってしまったのが寂しいが)ユース育ちの佐々木匠、今シーズンの補強の切り札と期待された秋山陽介らがいるのだが、ベンチ入りの機会もほとんどない。手倉森氏の彼らへの評価が、現状の氣田未満なのは残念なことだ。
このあたりはネガティブに考えるとキリがない。一方で百点満点ではないかもしれないが、個別に武器を持ったタレントは揃っているのだ。色々文句を言ったが、F・カルドーゾのターン、自分の間合いでの氣田の突破、佐々木の中盤からの抜け出すドリブル、秋山の左クロスなどレベルの高い攻撃兵器は揃っている。後は手倉森氏が、それらの特長をいかに組み合わせるかなのだ。
約10年前にACLに出場した時の手倉森サッカーの魅力は、後方から一気に(一揆に?)多くの選手が攻撃にからむ速攻、湧き出る速攻だったのだ。各選手の意思統一、特長が異なる選手の組み合わせの妙。
2021年の手倉森氏の課題は、いかにそれを再現するかにある。基盤は完成しているのだ、絶対にやれるはずだ。
確かに状況は苦しい。
正にサポータ冥利に尽きるシーズンではないか。積み上がらない勝ち点、しかも参戦しても声を出すことができない疫病禍。(自粛とは言え)移動にも制限がかかり、思うように競技場にも行かれない。
切歯扼腕が継続し稀に歓喜雀躍が訪れるのが、サッカーの最大の魔力。半世紀近くサッカーに浸り切ってきたが、ここまでその魔力そのものを体験できるシーズンも珍しい。最終節終了時には(遠隔なのか、アクリル板ごしなのか、ワクチン完了してのオープン居酒屋方式なのかはさておき)「いんや苦しいシーズンだったっちゃね」と、サポータ仲間と共に祝杯を上げられることを確信している。
上記再開後の試合を振り返ってみると、何かしら運もない。大差をつけられ完敗したのはマリノス戦のみ。このマリノス戦は後半立ち上がりまで粘り強く守っていたが、水沼とレオ・セアラの妙技に2点目を許し、前に出たところで大量失点を食らったもの。
それ以外の負け試合はなんとも言えない微妙な負け方ばかり。8月再開初戦のガンバ戦とこの代表ウィーク中断直前のサガン戦は、セットプレイによる失点をどうしても返せず0-1の敗戦。FC東京戦はアディショナルタイム、敵の明らかなダイビングをPKとされると言う主審の個性的な判定での敗戦(そうは言っても試合は審判に任せなければ成立しないからしかたない)。引き分けたセレッソ戦と横浜FC戦は、相応に好機をつかんだがポストに嫌われた。まあ、長いシーズンだ。ツキがない時とはそう言うもの。ここは割り切って粘り強く戦うしかない。
幸い上記した通り、守備網はかなりのレベルで整備されている。そして後述するが、手倉森氏が守備の再構築を主眼にチームを整備している構想は正しいと思っている。
けれども、どうにも点が入らないのは頭が痛い。何せ上記8月以降の6試合、奪えた得点は僅かに1点なのだから。
多産系の点取屋がいないから得点力不足に苦しんでいるわけで、まずは月並みだが好機を増やすべく努力するしかない(「いや攻撃力が貧困だから大量に点を稼ぐストライカがいない」との禅問答の講釈を垂れるのもおもしろいが、今は置いておく)。
そのためには、勝負どころで人数をかけた攻撃を行うことに尽きる。
どうしても守備的に戦うやり方をしている以上、攻撃の頻度は少ない。しかし、よい形でボールを奪った時に人数をかけて攻められるかどうか、これは選手個々の守備から攻撃への切替の判断(チームとしての意思統一)にかかっている。逆説めくが、有効な多人数速攻がしかけられない状況ならば、無理に前に行かずボールを保持した遅攻に切り替える判断も重要だ。相手が守備ブロックを固めても、松下佳貴や上原力也ならばそのブロックを崩すパスを出すことができるから、人数をかけた攻め直しもしかけられる。この意思統一が8月シーズンはまだまだ成熟していなかった。この代表ウィークでどこまで改善できたか期待したい。
人数をかけた攻撃をしかける以上、ボールを奪われた後の敵の速攻にどう備えるかも重要だ。幸い、ベガルタの組織守備は整備されており、8月シーズンを見てもそのリスクはかなり小さかった、このあたりの整備は手倉森氏はさすがと言えるだろう。点がとれないからこそ守備を強化した手倉森氏のやり方は正しかったのだ。地味ながら夏のオフの補強の大ヒットと言える福森直也と周囲の連係も次第に成熟していくだろうから、逆襲の備えはますます充実するだろう。
もちろん、失敗はあった。マリノス戦は敵の強力なプレスに耐えているうちに2点差とされてしまった。FC東京戦は、永井謙祐と高萩洋次郎の老獪な2トップの受けと位置取り、試合終盤にMFに起用された森重真人の格段の守備力で、速攻後の連続攻撃を許しピンチの連続だった。とは言え、マリノスのような強力な前線守備や、FC東京のような高度な判断力を備えたベテランを並べられるようなチームは、そう多くはない。また上記した守備組織の一層の成熟があれば、速攻をしのいだ後のつなぎで敵プレスをもっと上手に外せるようになるはず。だから、大胆に人数をかけた攻撃を整備するのは十二分に可能なはずだ。
もう一つ改善を期待したいのは、もっと個々の選手の特長を活かすことだ。
例えばフェリペ・カルドーゾ。後方からの高いボールについては収めることはもちろん、ヘディングの競り合いに勝つことも滅多にない。したがって、後方からのロビングを前線にいれてもほとんど意味はない。しかし、足元に入ったボールターンは格段にうまい。五輪オフの直前の札幌戦、押し込まれた前半たった1回よいグラウンダのパスを受け見事なターンから、真瀬の得点につなげた場面は忘れ難い。押し込まれる時間帯にDFがロングボールで逃げる局面はさておき、ボールを回して敵プレスをかいくぐった時に縦パスを入れる後方の選手達には工夫が欲しい。
例えば氣田亮真。前を向いた状態でボールを受ければ、鋭いドリブル突破を見せてくれる。しかし、敵の組織守備下で後ろを向いた状態でボールを受けてもほとんど機能しない。そのため消えてしまうことが多い。氣田自身の位置取りの向上も必要だが(もうシーズンも2/3過ぎたのだから、そろそろ自ら解決して欲しいのだが)、手倉森氏ももう少し采配に工夫できないか。例えば左右対称ではないフォーメーションをとり、大胆に氣田のベースポジションを大外にして、福森や蜂須賀にサイドチェンジを狙わせるとか。
余談ながら、サイドMFには(もう若手とは言えなくなってしまったのが寂しいが)ユース育ちの佐々木匠、今シーズンの補強の切り札と期待された秋山陽介らがいるのだが、ベンチ入りの機会もほとんどない。手倉森氏の彼らへの評価が、現状の氣田未満なのは残念なことだ。
このあたりはネガティブに考えるとキリがない。一方で百点満点ではないかもしれないが、個別に武器を持ったタレントは揃っているのだ。色々文句を言ったが、F・カルドーゾのターン、自分の間合いでの氣田の突破、佐々木の中盤からの抜け出すドリブル、秋山の左クロスなどレベルの高い攻撃兵器は揃っている。後は手倉森氏が、それらの特長をいかに組み合わせるかなのだ。
約10年前にACLに出場した時の手倉森サッカーの魅力は、後方から一気に(一揆に?)多くの選手が攻撃にからむ速攻、湧き出る速攻だったのだ。各選手の意思統一、特長が異なる選手の組み合わせの妙。
2021年の手倉森氏の課題は、いかにそれを再現するかにある。基盤は完成しているのだ、絶対にやれるはずだ。
確かに状況は苦しい。
正にサポータ冥利に尽きるシーズンではないか。積み上がらない勝ち点、しかも参戦しても声を出すことができない疫病禍。(自粛とは言え)移動にも制限がかかり、思うように競技場にも行かれない。
切歯扼腕が継続し稀に歓喜雀躍が訪れるのが、サッカーの最大の魔力。半世紀近くサッカーに浸り切ってきたが、ここまでその魔力そのものを体験できるシーズンも珍しい。最終節終了時には(遠隔なのか、アクリル板ごしなのか、ワクチン完了してのオープン居酒屋方式なのかはさておき)「いんや苦しいシーズンだったっちゃね」と、サポータ仲間と共に祝杯を上げられることを確信している。
2021年09月02日
ワールドカップ予選ホームオマーン戦前夜2021
いよいよワールドカップ3次予選(事実上の最終予選)が始まる。五輪代表の苦闘、再開後のJリーグ、さらにはブラインドサッカーの惜敗など、ただでさえお腹いっぱい状態のところ。そこに長期戦のホーム&アウェイの予選が絡んでくるのだから、贅沢なものだ。
明日のオマーン戦はパナソニックスタジアム吹田、疫病禍下の折、さすがに参戦は断念した。このような折々に、世の中の正常化を願わずにはいられない。
最終予選初戦と言うのは、色々思い出深いものがある。あのフランス予選、ウズベキスタン戦のカズの大爆発(今思えばこの稀代のストライカが日の丸をつけて光り輝くのは、この試合が最後となるのだが…もっともあれから24年経ってまだ現役って何なのだろうか)、ドイツ予選は北朝鮮相手に小笠原の先制と大黒のアディショナルタイム(終盤の中村俊輔を軸にした猛攻はいかにもジーコ氏のチームらしかった)、南アフリカ予選は敵地でバーレーンに3-2の勝利(3-0から闘莉王のミスなどで1点差にされたのはご愛嬌だった)、ブラジル予選は(明日と同じ)オマーンに3-0で快勝(この勝ちっぷりは日本サッカー史に残る完勝、前田遼一の完成がすばらしかった)、そして前回のUAE戦は酒井宏樹と長谷部のミスから1-2の逆転負け(ハリルホジッチ氏の岡崎→浅野、清武→宇佐美、大島→原口の交代はそれぞれ合理的だったが、ことごとく裏目に出たのが味わい深かった)。
さて明日はどのような試合を見ることができるだろうか。
過去色々森保氏には文句を言ってきた。しかし、何のかの言っても、今我々が所有しているチームは、各ポジション穴がほとんどなく、史上最強感も漂っている。ややゴールキーパと左バックの層が薄い感もあったが、先日の五輪での谷晃生と中山雄太の活躍で埋まりつつある。
などと思っていたら、相変わらずおもしろい人選を行うのが森保氏だ。まず両サイドバックを酒井宏樹、山根視来、室屋成、長友佑都、佐々木翔、中山雄太とそれぞれ3人選抜。3DFを試したいのではないかとの報道もあったが、その場合原口元気と伊東純也もサイドMF候補となるから、サイドプレイヤは余剰気味。
一方で中盤後方のタレントは遠藤航、守田英正、柴崎岳の3人だけ。森保氏はこのポジションの人数が足りなかったことによる失敗を、つい最近の五輪で犯しているのだが。例えばここには川辺駿、橋本拳人、稲垣洋などを最近選考しているし、谷口彰悟をこのポジションで試している。そして何より田中碧もいる。消耗の激しいポジションなのだから、厚めに選んでおいて損はないと思うのだが。まあ、森保氏としては、五輪同様板倉滉を中盤要員と考えているのかもしれないが。
などとと思っていたら、冨安健洋と守田が来日できず、板倉が負傷離脱とのこと。守備的MFどころかCBまで足りなくなってしまった。3DFのトライどころではなく、CBは吉田麻也と植田直通、守備的MFは遠藤航と柴崎のみ、控えすらいない。急遽昌子源を呼び戻したとのことだが、昌子は今日のルヴァンカップをフル出場している。何とまあ段取りの悪いことだ。せめて1日前に決断していれば状況はましだったのだろうが。少なくともこのオマーン戦については、比較的近隣で今日ルヴァンがなかった神戸から、ベテランの山口蛍や売り出し中の菊池流帆を呼ぶような方策もあったのではないか。
それにしても、森保氏は、よほど現役時代の自分と同じポジションの遠藤航を消耗させるのが、お好きなようだ。
勝ち点勘定からすれば、開幕のホーム戦だからキッチリと勝ち点3を確保したいところ。いや次節の中立地中国戦と合わせて勝ち点6をとっておきたい(3節は灼熱のサウジでのアウェイゲーム、4節は地元とは言え難敵豪州だから)。
そこに対する最大の不安は、上記散々嫌味を言ったように、CBと守備的MFに控えすらいない惨状が挙げられる。麻也、植田、遠藤航、柴崎の誰かが負傷したり消耗した場合、中山や佐々木が使われる可能性が高いが(今日試合をしている昌子よりは体調がよいだろうから)、ぶっつけ感が満載だなこれは。
また、豊富な攻撃ラインのタレントを、森保氏が使いこなせるのかも不安。五輪でも特定の選手に拘泥して選手の消耗を招いたことは記憶に新しい。しかも得点について、最も期待できる南野拓実が本調子でないと言う情報もある。
立ち上がりにうまくチームがはまり、早々に点がとれれば、オマーンを前に引き出すことができるだろう。そうなれば、鎌田大地と大迫勇也を軸にした速攻から好機を大量に作れる流れを作ることもできそうだ。しかし、常識的にはオマーンは後方を固めてくるだろうから、前半は相手を疲れさせるべくボールを回し、後半勝負となる可能性もある。その際に、先日の五輪ニュージーランド戦のように、森保氏が采配機能不全を起こさないでくれればよいのだが。
などと不安を語るのも、代表戦の楽しみだ。選手の個人能力では圧倒しているのだし、前線の選手の知性や技巧でオマーン守備網を再三切り裂くのを楽しみにキックオフを待つのが、正しい楽しみ方と言うものか。
明日のオマーン戦はパナソニックスタジアム吹田、疫病禍下の折、さすがに参戦は断念した。このような折々に、世の中の正常化を願わずにはいられない。
最終予選初戦と言うのは、色々思い出深いものがある。あのフランス予選、ウズベキスタン戦のカズの大爆発(今思えばこの稀代のストライカが日の丸をつけて光り輝くのは、この試合が最後となるのだが…もっともあれから24年経ってまだ現役って何なのだろうか)、ドイツ予選は北朝鮮相手に小笠原の先制と大黒のアディショナルタイム(終盤の中村俊輔を軸にした猛攻はいかにもジーコ氏のチームらしかった)、南アフリカ予選は敵地でバーレーンに3-2の勝利(3-0から闘莉王のミスなどで1点差にされたのはご愛嬌だった)、ブラジル予選は(明日と同じ)オマーンに3-0で快勝(この勝ちっぷりは日本サッカー史に残る完勝、前田遼一の完成がすばらしかった)、そして前回のUAE戦は酒井宏樹と長谷部のミスから1-2の逆転負け(ハリルホジッチ氏の岡崎→浅野、清武→宇佐美、大島→原口の交代はそれぞれ合理的だったが、ことごとく裏目に出たのが味わい深かった)。
さて明日はどのような試合を見ることができるだろうか。
過去色々森保氏には文句を言ってきた。しかし、何のかの言っても、今我々が所有しているチームは、各ポジション穴がほとんどなく、史上最強感も漂っている。ややゴールキーパと左バックの層が薄い感もあったが、先日の五輪での谷晃生と中山雄太の活躍で埋まりつつある。
などと思っていたら、相変わらずおもしろい人選を行うのが森保氏だ。まず両サイドバックを酒井宏樹、山根視来、室屋成、長友佑都、佐々木翔、中山雄太とそれぞれ3人選抜。3DFを試したいのではないかとの報道もあったが、その場合原口元気と伊東純也もサイドMF候補となるから、サイドプレイヤは余剰気味。
一方で中盤後方のタレントは遠藤航、守田英正、柴崎岳の3人だけ。森保氏はこのポジションの人数が足りなかったことによる失敗を、つい最近の五輪で犯しているのだが。例えばここには川辺駿、橋本拳人、稲垣洋などを最近選考しているし、谷口彰悟をこのポジションで試している。そして何より田中碧もいる。消耗の激しいポジションなのだから、厚めに選んでおいて損はないと思うのだが。まあ、森保氏としては、五輪同様板倉滉を中盤要員と考えているのかもしれないが。
などとと思っていたら、冨安健洋と守田が来日できず、板倉が負傷離脱とのこと。守備的MFどころかCBまで足りなくなってしまった。3DFのトライどころではなく、CBは吉田麻也と植田直通、守備的MFは遠藤航と柴崎のみ、控えすらいない。急遽昌子源を呼び戻したとのことだが、昌子は今日のルヴァンカップをフル出場している。何とまあ段取りの悪いことだ。せめて1日前に決断していれば状況はましだったのだろうが。少なくともこのオマーン戦については、比較的近隣で今日ルヴァンがなかった神戸から、ベテランの山口蛍や売り出し中の菊池流帆を呼ぶような方策もあったのではないか。
それにしても、森保氏は、よほど現役時代の自分と同じポジションの遠藤航を消耗させるのが、お好きなようだ。
勝ち点勘定からすれば、開幕のホーム戦だからキッチリと勝ち点3を確保したいところ。いや次節の中立地中国戦と合わせて勝ち点6をとっておきたい(3節は灼熱のサウジでのアウェイゲーム、4節は地元とは言え難敵豪州だから)。
そこに対する最大の不安は、上記散々嫌味を言ったように、CBと守備的MFに控えすらいない惨状が挙げられる。麻也、植田、遠藤航、柴崎の誰かが負傷したり消耗した場合、中山や佐々木が使われる可能性が高いが(今日試合をしている昌子よりは体調がよいだろうから)、ぶっつけ感が満載だなこれは。
また、豊富な攻撃ラインのタレントを、森保氏が使いこなせるのかも不安。五輪でも特定の選手に拘泥して選手の消耗を招いたことは記憶に新しい。しかも得点について、最も期待できる南野拓実が本調子でないと言う情報もある。
立ち上がりにうまくチームがはまり、早々に点がとれれば、オマーンを前に引き出すことができるだろう。そうなれば、鎌田大地と大迫勇也を軸にした速攻から好機を大量に作れる流れを作ることもできそうだ。しかし、常識的にはオマーンは後方を固めてくるだろうから、前半は相手を疲れさせるべくボールを回し、後半勝負となる可能性もある。その際に、先日の五輪ニュージーランド戦のように、森保氏が采配機能不全を起こさないでくれればよいのだが。
などと不安を語るのも、代表戦の楽しみだ。選手の個人能力では圧倒しているのだし、前線の選手の知性や技巧でオマーン守備網を再三切り裂くのを楽しみにキックオフを待つのが、正しい楽しみ方と言うものか。
2021年08月20日
ありがとう島尾摩天
ベガルタの島尾摩天(シマオ・マテ)の退団が発表された。2019年シーズンに加入したモザンビーク代表の屈強のセンタバック。主将も務めるなどリーダシップやサポータへの発信力も格段だった。まずはエウゼビオを産んだ国から来てくれたこのすばらしい守備者に大いなる感謝の言葉を捧げたい。ありがとうございました。
ただ、今シーズンは、体調が上がらず出場機会を失っており、復調が待たれるところでの退団発表。帰国の検討、他のJクラブへの移籍希望など報報が錯綜しているが、定位置を失った現状を鑑み、新たな道を求めたと言うことだろう。
もちろん、私たちベガルタサポータにとって格段の思い出を残してくれた選手だった。特に絶頂だった19年シーズンは、他クラブのサポータにも相当な印象を残したのではないか。そのくらい格段の守備能力を見せてくれたから。
そう絶頂時の島尾は最高の守備者だった。
敵フォワードに対し、自分の間合いに入るや否や、体重が乗った激しいスタンディングタックルでボールを奪う(もちろん、ボールにのみ当たるフェアなタックル)。あるいは、フォワードとボールの間に強引に身体を入れボールキープしてしまう。
鍛え抜かれたフィジカルが島尾の武器だったのは、皆さんご存知の通り。しかし、肉体的に強いセンタバックの多くとは一線を画した強みを誇っていた。普通の強靭なセンタバックは前線に差し込まれたボールのはね返しや敵フォワードを振り向かさないプレイを得意とする。絶頂時の島尾は、もちろんはね返し力も、振り向かさない守備も見事だった。しかし、島尾の武器は、そこにとどまるものではなく、自ゴールに向かってくるフォワードからのボール奪取が格段にうまかった。足がそれほど速いとは言えないだけに、その奪取力の鮮やかさは光った。そして、島尾のその長所は「よし取れる、よしマイボールにできる」との判断、選択、決心の適切さにあった。決断力に富む守備能力とでも言おうか。言い換えると、速くはないが早い守備者だったとでも言おうか。
日本サッカー界にとっても、島尾のプレイは示唆に富むものだった。島尾のようなボールを奪取し自分のものにする能力に特化したセンタバックは、最近中々出てこないように思うのは私だけか。Jリーグ黎明期には薩川了洋、大森征之のように敵FWを止めるのが滅法うまいセンタバックが結構いたのだが。ただでさえ、最近のサッカー界はセンタバックに期待される能力は複雑化、多岐化しているので、対人守備能力に特化した選手は出てきづらいのかもしれない。
いずれにせよ、島尾は古典的な対人守備能力に特化したセンタバックだった。もっとも、ベガルタ加入直後は少々怪しかったラインコントロールも最終ラインからのつなぎも、着実に上達してくれたけど。
今シーズン、島尾の体調は中々上がらなかった。そうなると、格段の決断力も裏目となり、簡単に逆をとられたり、ファウルから決定的な失点にからむことも増えてくる。
その典型が4月のヴィッセル神戸戦だった。ベガルタが中盤でボールを失うや否や、守備ラインの裏に飛び出す古橋亨梧。島尾は気鋭のこのストライカへ後手を踏み。敢えなく裏をとられ開始早々に失点してしまう。さらにコーナキックから売り出し中の神戸センタバック菊池流帆に完全に振り切られ追加点を許した。島尾本人にとっても屈辱的な失点だったと思う。このあたりから、島尾はスタメン落ち、ベンチに入ることも少なくなっていた。冒頭に述べたように、島尾本人が異なる道を考えることにしたのだろう。
改めて、ベガルタへの貢献に感謝。ありがとうございました。カニマンボ。
次の活躍の場所と機会が早々に見つかることを期待したい。そして、あの鮮やかなボール奪取を、私は絶対に忘れない。
ただ、今シーズンは、体調が上がらず出場機会を失っており、復調が待たれるところでの退団発表。帰国の検討、他のJクラブへの移籍希望など報報が錯綜しているが、定位置を失った現状を鑑み、新たな道を求めたと言うことだろう。
もちろん、私たちベガルタサポータにとって格段の思い出を残してくれた選手だった。特に絶頂だった19年シーズンは、他クラブのサポータにも相当な印象を残したのではないか。そのくらい格段の守備能力を見せてくれたから。
そう絶頂時の島尾は最高の守備者だった。
敵フォワードに対し、自分の間合いに入るや否や、体重が乗った激しいスタンディングタックルでボールを奪う(もちろん、ボールにのみ当たるフェアなタックル)。あるいは、フォワードとボールの間に強引に身体を入れボールキープしてしまう。
鍛え抜かれたフィジカルが島尾の武器だったのは、皆さんご存知の通り。しかし、肉体的に強いセンタバックの多くとは一線を画した強みを誇っていた。普通の強靭なセンタバックは前線に差し込まれたボールのはね返しや敵フォワードを振り向かさないプレイを得意とする。絶頂時の島尾は、もちろんはね返し力も、振り向かさない守備も見事だった。しかし、島尾の武器は、そこにとどまるものではなく、自ゴールに向かってくるフォワードからのボール奪取が格段にうまかった。足がそれほど速いとは言えないだけに、その奪取力の鮮やかさは光った。そして、島尾のその長所は「よし取れる、よしマイボールにできる」との判断、選択、決心の適切さにあった。決断力に富む守備能力とでも言おうか。言い換えると、速くはないが早い守備者だったとでも言おうか。
日本サッカー界にとっても、島尾のプレイは示唆に富むものだった。島尾のようなボールを奪取し自分のものにする能力に特化したセンタバックは、最近中々出てこないように思うのは私だけか。Jリーグ黎明期には薩川了洋、大森征之のように敵FWを止めるのが滅法うまいセンタバックが結構いたのだが。ただでさえ、最近のサッカー界はセンタバックに期待される能力は複雑化、多岐化しているので、対人守備能力に特化した選手は出てきづらいのかもしれない。
いずれにせよ、島尾は古典的な対人守備能力に特化したセンタバックだった。もっとも、ベガルタ加入直後は少々怪しかったラインコントロールも最終ラインからのつなぎも、着実に上達してくれたけど。
今シーズン、島尾の体調は中々上がらなかった。そうなると、格段の決断力も裏目となり、簡単に逆をとられたり、ファウルから決定的な失点にからむことも増えてくる。
その典型が4月のヴィッセル神戸戦だった。ベガルタが中盤でボールを失うや否や、守備ラインの裏に飛び出す古橋亨梧。島尾は気鋭のこのストライカへ後手を踏み。敢えなく裏をとられ開始早々に失点してしまう。さらにコーナキックから売り出し中の神戸センタバック菊池流帆に完全に振り切られ追加点を許した。島尾本人にとっても屈辱的な失点だったと思う。このあたりから、島尾はスタメン落ち、ベンチに入ることも少なくなっていた。冒頭に述べたように、島尾本人が異なる道を考えることにしたのだろう。
改めて、ベガルタへの貢献に感謝。ありがとうございました。カニマンボ。
次の活躍の場所と機会が早々に見つかることを期待したい。そして、あの鮮やかなボール奪取を、私は絶対に忘れない。