2016年08月19日

ベガルタ史に残る試合

 8月13日ユアテックスタジアム。ベガルタはレイソルに4対2で快勝。勝ったことも何よりだったが、若手の活躍と言う意味で、ベガルタの歴史に残るような一戦となった。
 実は、自分自身、久々のユアテック詣で。本当に嬉しい夜だった。

 前節に、平岡、石川、梁が負傷。元々、金園、野沢、金久保、蜂須賀も負傷離脱。その結果、ユース出身1年目の小島雅也が左サイドバックで初スタメンとなるなど、相当厳しいメンバ編成となった。もっとも、小島はユース代表の常連、五輪代表のスパーリングパートナとしてリオに帯同したタレント。試合に出るのが当たり前になってくれなければ困るのだが。
 ともあれ、小島の抜擢はチームのバランスを崩していた。(梁の代わりで起用された)左サイドハーフの藤村が、後方の小島を気にし過ぎた感もあり、仕掛けようとせず、球離れを早くするばかりで、攻撃が右サイドに偏る。
 「いかんな」と思っていたら、どうしてどうして。藤村のCKを、ハモン・ロペスが高い打点のヘッドを決めて先制。さらに敵DFのミスパスを藤村が拾い、ウイルソンにラストパス。ウイルソンが、いかにも彼らしい両足使いの特長を存分に発揮する技巧から決め追加点。いきなり藤村の2アシストで、2点差としてしまった。藤村は盛岡商時代から、正確な技術と落ち着いた展開力が評価され、リオ五輪候補にも選ばれたことのある5年目のタレント。昨シーズンから、少しずつ試合出場機会を増やし、今シーズンのベガルタには、不可欠の選手となっている。本来のポジションはボランチだが、FWもサイドバックも攻撃的MFもこなす。その藤村の大活躍でいきなりの2対0。これはこれで、ベガサポとしては涙が出そうな展開である。
 ところが、ベガルタのバランスの悪さはそのまま。2点差になって、引き気味になったところで、藤村と小島の連係ミスを突かれ、PKをとられて2対1とされる。さらに後半。レイソルは、この連係の悪い左サイドを執拗に突いてくる。そして、レイソルの俊足右ウィングの伊東に、小島が突破を許し、同点とされる。
 ここで、ベガルタ渡邉監督は決断する。小島に代えて茂木を起用したのだ。茂木はベガルタユース出身の2年目。ふてぶてしいほどの、ボールキープから色々な仕事ができるタレントで、昨シーズンは新人ながら開幕からスタメンに抜擢された。しかし、敵のマークが厳しくなるにつれ、起用の機会が減り、シーズン途中から、J2のツェーゲンにレンタルされた。ツェーゲンでも、ボールの引き出しに課題があり、中々起用されなかったと聞く。今シーズンオフ、突然アイスランドリーグに挑戦するとの報道があった。欧州とは言え、必ずしもレベルが高いとは思えない欧州極北国のチームに厳寒期にjトライアルと聞き、茂木本人なのか代理人なのかはさておき、相当アレな活動と心配したものだった。そんなこんながあり、今シーズンは序盤からベンチ入りするも少なく心配していた。ただ、前節のアントラーズ戦の終盤に、負傷した梁に代わって起用され、よいプレイを見せてくれていた。
 この交代により、茂木は右サイドMFに。奥埜が左サイドMFに回り、藤村が左サイドバックに。これがうまくいった。茂木は、昨シーズンでは見られなかった質の高い動き出しを再三見せ、ボールをよく引き出し、右からの崩しを演出する。一方、狙われていた左サイドは、奥埜の豊富な運動量と、藤村の落ち着いた位置取りで、攻守ともに大幅に改善された。結果として、ウイルソン、ハモンの2トップを、両翼から奥埜と茂木がサポートする形となり、試合は一気にベガルタペースになった。 
 そして、圧倒的に攻勢をとり、CK崩れからPKを奪い、勝ち越し。反転して攻め込んでくるレイソルの攻撃に耐えながら、速攻から自殺点を誘発し、2点差に、そのまま押し切っての快勝となった

 小島にとっては、ほろ苦い一夜となった。いきなり2失点に絡んでしまったのだ。でも、これも経験だ。とにかく、勝ったのだ。
 もっとも小島自身は、切り替えや押し上げも的確だし、視野も広く絞り開きの位置取りの修正も上々、攻め上がって思い切りよくシュートを放ったし、一度左サイド奥深くに進出し上々の低いクロスも上げた。ただ、DFとして一番肝心な守備で、対面の伊東を止め切れなかったのだ。確かに不合格だった。
 まず目先で改善すべきは、仕掛けてくる相手に対し、もっと勇気を持ち厳しく当たることだろうか。いや違う。そんなこと以上に重要なのは、チームメートからの信頼獲得だ。少なくとも、この日は、藤村、三田、富田、渡部、大岩と周囲を固める選手が、みな小島をカバーしようとしていた。いや、選手達だけではない、サポータも小島が何でもないクリアをする度に「マサヤ!マサヤ!」コールで称える。リーグ戦に起用され、当たり前のプレイをしているだけで、周囲に評価されているうちは、まだまだだ。小島よ、内田篤人はアントラーズ加入直後からスタメンを務めたのだよ。

 ともあれ。この試合はベガルタの歴史に残る試合となった。
 ベガルタは2010年にJ1に復帰したが、それ以降、ほとんど生え抜き(新卒)の選手の育成に成功していなかった。梁、菅井、富田ら生え抜きの選手はみな00年代半ばに加入した選手。そのほかは、上手に獲得した移籍選手をステップアップさせてチーム強化を行ってきた。加入した移籍選手の多くが、ベガルタ加入以降、前所属クラブよりも格段な活躍を見せてくれたことは、サポータとして誇り高いのだが。
 ようやく昨シーズン、ベガルタユース出身の奥埜が、仙台大を経て12年に加入し、Vファーレンへのレンタル経験を加え、中心選手に成長してくれたのが、久々の成功例だった。そのように生え抜きのタレントの育成に苦労してきたベガルタなのだが、このレイソル戦は藤村、茂木、小島が、それぞれ活躍したのだ。
 今シーズン、ベガルタは苦労しながらも、攻撃的なサッカーを指向し、何とか中位から上位をうかがう位置につけている。そこに次々と、前途有為な野心的な若者が多数登場し、結果を出す試合を見せてくれた。しかも、私自身がその試合に参戦できた。忘れ難い一夜だった。
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2016年07月24日

FC東京は何のために城福氏を起用したのか

 J2ジェフ対エスパルスをノンビリ映像観戦する日曜の夕刻。ふと、気が付いた。両軍の監督は、関塚隆と小林伸二、何と2人とも私の同級生ではないか。考えてみれば、歴史、予算規模、ホームタウン、スタジアム、いずれも相当なレベルにあるが、過去のほんのちょっとした不運から、J2での戦いを余儀なくされている両クラブ。早期のでのJ1復帰を目指し、国内で実績屈指の名監督を招聘しているわけだ。
 試合そのものも、スリリングな点の取り合いでおもしろかった。両軍関係者の悲喜こもごもを想像すると、何とも言えないが。

 さて、その試合中に飛び込んできた情報。FC東京が、城福監督を解任したと言う。おお、この人も、同級生ではないか。いや、同級生かどうかは、何ら本質的な問題ではないのですが。

 FC東京は現在勝ち点26の13位、確かに代表選手やそれに準ずるスタアを多く抱え、昨シーズンは4位に食い込んだクラブとしては、非常に不満がある成績だろう。特にACLの影響がなくなりリーグ戦に専念できるようになった6月以降に、中々勝ち点が上がらないのも印象が悪かった。
 もっとも、ACLでは1次ラウンドを突破、1/16ファイナルで敗退したわけだが、「最後のアディショナルタイムを守り切れなかった」のは、采配云々よりは不運と語られる語られるべきだろう。現実的に、ガンバとサンフレッチェが1次ラウンドで敗退したことを考えると、そう悪い成績ではなかった。

 しかしながら、今回の解任劇については、ここ最近のFC東京の不振だけで議論できないのは言うまでもない。城福氏がFC東京から解任されるのは、2回目なのだから。しかも、前回の解任劇では城福氏の采配の下、FC東京は低迷し、氏を解任した後も成績は上がらずJ2陥落してしまっていた。
 さらにFC東京は昨シーズン上々の成績を収めたフィッカデンティ氏を解任し、敢えて過去J2ア降格を誘引した城福氏を呼び戻している。フィッカデンティ氏を解任した背景は、野次馬にはわかりづあらいが、どうもFC東京のフロントはフィッカデンティ氏の守備的なサッカーがお気に召さなかったらしい。
 ところが、城福氏が以前FC東京の監督を務めていた折は、守備的なやり方をしてナビスコカップを制するなど上々の成績を収めたが、「ムービングフットボール」と言うモットーで志した攻撃的サッカーを、あまり見せることはできなかった。また、FC東京解任後に務めたヴァンフォーレでは、必ずしも恵まれない戦闘能力ながら、リアリズムに富んだ采配でJ1昇格、残留を演じている。つまり、城福氏は、必ずしも攻撃的なサッカーで成果をあげた監督ではないのだ。
 そうこう考えると、野次馬にとって、FC東京のフロントが、何を考え、何を目指し、何を期待して、城福氏を再招聘したのかが、さっぱりわからなかった。それでも、我々が知り得ない何かを望み、氏を呼んだのだろうかと推測していたのだが、シーズン半ばでのこの解任。いよいよ、理解できない。ここでクビにするならば、最初から呼ばなければいいんじゃないの?
 繰り返そう。いったい、FC東京のフロントは、何を求めて、城福氏を再度呼んだのだろうか。

 帝都東京をホームタウンにし、多くのスタアを抱え、カップ戦を複数回制覇し、幾度かACLにも参戦したFC東京。このクラブが、真の強豪を目指し、もがいている。そして、このもがきものが、Jリーグの、あるいは日本サッカーの歴史なのだろう。
 ついでに言うと、城福氏をすぐ招聘しそうなクラブが、中部地方に(以下自粛)。
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2016年07月18日

扇原貴宏と山村和也

 セレッソの扇原貴宏が、グランパスに移籍したと言う。色々なことを考えさせてくれる移籍劇だ。

 扇原は、ロンドン五輪代表選手。正確なパスを武器にチームの中核として活躍した。しかも、184cmの大柄な体躯、左利きと言う特長も備えている。ロンドン大会準決勝のメキシコ戦で決定的な失点につながるミスをしたものの、そのような失敗経験をプラスに活かし、大成するのではないかとの期待も大きい選手だった。
 その後、2013年の東アジア選手権ではA代表にも選考されたこともあったが(海外クラブ所属選手不在のタイミングだったが)、自クラブのJ2陥落を止めることはできず、もう一つ明確な活躍が見受けられずに、今日に至っている。上記のメキシコ戦のように、時々いわゆる「抜けた」プレイをする悪癖が、なかなか改善されないのが課題に思える。たとえば、昨シーズン肝心かなめのJ1昇格決定戦のアビスパ戦では、ベテランの橋本にスタメンを譲ったのも残念だった。さらには、この大一番の終盤、セレッソがリードした時間帯に、扇原は橋本と交替して起用された。ところが、セレッソはその時間帯にアビスパに同点とされ、J1昇格を逸することになる。その失点の要因の1つが、中盤を老獪に引き締めていた橋本の不在だった印象もあり、いっそう扇原の伸び悩みを印象づけるものとなった。
 今シーズンは、セレッソでもロンドン五輪代表でも、ボランチでコンビを組んでいた山口蛍が、欧州に移籍。扇原にとっても、チームの中核としての自立が期待されたシーズンにもかかわらず、定位置を失ってしまった。
 扇原にとって、新たな場を求めて移籍は、有効な選択と言えよう。グランパスは勝ち点勘定、チーム作りいずれの面でも、苦しい状況にあるようだ。不運にも、加入早々に負傷離脱となってしまったようだが、新加入の扇原にかかる期待は大きいはず。ここで活躍することで、まだ24歳のこのタレントが、再度A代表を目指す道が開かれるかもしれない。活躍を期待したい。

 その扇原がポジションを奪ったのが、山村和也。これまた186pと言う身長に加え、技巧も運動量も優れたタレント。しかも、扇原と同じロンドン五輪代表選手だ。その山村は、前所属のアントラーズでは定位置を獲得できず、セレッソに移籍してきた。
 山村は、ロンドン五輪代表チームがスタートした際は、主将を務め、中核として期待されていた。けれども、傍から見ていて、「気持ちが前面に出てこない」 タイプと言うこともあり、活躍の印象は薄い。結果的に、予選半ばから、扇原に定位置を奪われた形となった。ロンドン本大会でもメンバには入ったものの、中盤の控え選手として、やはり「気持ちが出てこない」プレイに終始。結果的に、同じポジションの山口蛍と扇原を休ませづらい状況となり、大会終盤に勝ち切れなかった要因の1つとなった。正直なところ、「ほかの選手を連れていくべきだったのではないか」と言う印象だった。
 その後、アントラーズでも、思うような活躍ができずにいた山村。昨シーズンオフにセレッソに移籍、シーズン序盤から、扇原からポジションを奪い、そこそこの活躍をしていた。「この好素材が、ようやく本物になってきたか」と雰囲気が出てきている。もっとも、山村は山村で、山口蛍がセレッソに復帰するや否や、 定位置を奪われてしまったのだが。

 選手の成長と言うのは難しいものだと思う。
 そもそも五輪代表の最終メンバに入ることのできる選手は、正にエリート中のエリート。しかも、五輪本大会と言う修羅場を経験することで、一層の成長(すなわちA代表)が期待される存在だ。
 けれども、そのように順調に成長する選手もいるが、伸び悩む選手も少なくない。アトランタ五輪後の前園真聖と中田英寿の明暗がその典型。そこまで極端ではないが、ロンドン五倫のボランチも、山口蛍は代表に定着し(ここに来て、やや壁に当たった感もあるが)、一方で扇原と山村はもがいている。
 選手の成長は、その環境(所属チーム)に左右されるとよく言われる。出場機会がどの くらい得られるか、戦術的にその選手の特長が活かせるか、などが重要だからだ。けれども、扇原と山村については、従来の所属チームが、その成長に不適切な環境だったとは考えづらい。扇原はセレッソユース育ちでそのままセレッソでプレイしていた、チームとの相性が悪いなどの、外部環境問題は少なかったはずだ(もちろん、フォルラン騒動など、チームそのものの不安定感はあったのは確かだが)。山村は、新人選手や移籍選手のスカウト、その後の成長に定評があるアントラーズに所属していた。これまたチームコンセプトと、山村のプレイが合わなかったとは思えない(もちろん、アントラーズにはチーム内の激烈な競争はあるのだが)。

 そもそも、我が国は、180cmを超える中盤でプレイする代表選手を、ほとんど輩出していない。メキシコ五輪の英雄、小城得達は、大柄で技巧に優れていたが178cm(釜本と同じサイズ、180cm未満ではあったが、当時は超大型選手と言う印象はあった)。70年代後半に大器として期待された西野朗は、とうとう代表には定着できなかった。そして、日本サッカーの質が格段に上がった90年代以降も、180cmを超える代表に定着した中盤選手は数えるほどしかいない。90年代前半の浅野哲也、2000年代の福西崇史と稲本潤一、そして本田圭佑くらいだろう。
 世界的に見ても、GK、CB、ストライカ以外でも、185cmを超えるタレントが当たり前になってきている。これは、アフリカ系の選手が各国の代表に増えていること、トレーニング技術が発達し体格のよい少年への技術指導が定着したことなどが要因に思える。中盤の選手に高さがあるのは、セットプレイや敵の放り込みへの対処に有効なだけではない。偶然巻き起こる中盤でのちょっとした空中戦を制することで、思わぬ好機が演出されることもあるのだ。日本協会にしてもJの各クラブにしても、積極的に大柄な少年選手の育成に力を入れているようだが、中々結果に結びついていないのが現実だ。リオ五輪世代を考えてみても、遠藤航でさえ178cm。180cmを超えるタレントはGK、CB、最前線に留まっている。そう考えると、扇原と山村の「タッパ」は、それだけで魅力なのだ。
 扇原も山村も20代半ばとなった、けれども選手の成長曲線はまちまちだ。特に大柄な選手は、20歳を超えたあたりで、身体が大人になったところで、少年時代にできていた動きができなくなるケースが、よくあると言う。2人がそれにあたるかどうかは別な議論となるが、いずれにしても、丹念にコンディショニングを高め、経験を活かして判断力を磨けば、まだまだ「化けられる」可能性はあるはず。粛々と努力を積み、成長を期待したいところだ。
posted by 武藤文雄 at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

続関憲太郎の矜持

 65分のことだった。左サイドに流れてきたアルビレックスのエース山崎に裏をとられ、石川の対応が遅れる。慌てた石川は明らかなプッシング。主審がPKスポットを指差す。
 直前にセットプレイから1対1に追いつかれていたベガルタ。ここでPKを決められると相当苦しくなる。5連敗が頭にちらつく。

 しかし、我々には関憲太郎がいた。
 
 前半立ち上がりに、守備ラインの左から右へのスライドが遅れたところを、レオ・シルバに狙われ、中央を崩され、ラファエル・シルバが抜け出す。しかし、関が鮮やかな飛び出しで、シュートブロックで防いでくれた。この場面の関が素晴らしかったのは、その位置取り。ラファエルの前進を的確に把握し、反応可能な距離を置きつつ前進していたことにあった。六反から定位置を取り返した関、その充実振りを如実に示すビッグセーブだった。
 そして、冒頭の場面のPKストップ。
 ここまで4連敗と苦しんできたベガルタを救う、いや生き返らせる、2つのビッグセーブだった。関と六反の、非常にレベルの高い戦い。ありがたいことだ。

 上記した開始早々のアルビレックスの決定機を関が防いだ以降は、重苦しい展開となる。ベガルタ、アルビレックス共に、相手の組織的な中盤守備を抜け出すことができなかったからだ。共に連敗しているだけに、「何としても負けたくない」 意識も高かったからだろう。

 後半、ベガルタは、チーム全体を引き気味に修正し、アルビレックスを引き出しておいて、逆襲をねらうやり方に修正。これが当たった。奪った2得点とも、ようやく体調が整ったウイルソンが、長駆を繰り返せるようにになったことがカギとなった。
 先制点は、ベガルタ陣から左サイドに持ち出したウイルソンが、ハモンの左への流れも利用したカットインで敵DFを抜き去って、振りの非常に速いグラウンダのミドルシュートをニアに決めたもの。何とも鮮やかな一撃だった。持ち出しと言い、振りの速いシュートといい、ウイルソンに往時の切れが戻ってきたのが、何ともうれしい。
 上記関のPKストップ直後の奥埜の決勝点は、ウイルソンがまた異なる魅力を発揮してくれたもの。前の場面と同じように左から持ち出したウイルソンは、ハーフウェイラインを越えたあたりから、逆の右サイドに前進している奥埜にピタリとロングパスを通した。完全に敵DFの裏をとった奥埜は、正確なトラップから落ち着いて中央に切り返し、左足で正確なシュートをファーサイドに叩き込んだ。
 2点とも、美しい逆襲からの、見事な得点だった。

 2対1になった後は、アルビレックスが手替え品替え攻め込んで来るが、渡邉監督もいつになく、早め早めに選手交代。菅井、藤村、二見を起用、終了間際は両サイドにサイドバックを2枚ずつ並べる分厚い守備布陣で、何とか逃げ切りに成功。貴重な勝ち点3獲得に成功した。
 もともと、運動量を基盤に戦うベガルタは、夏場は中々勝ち点を伸ばせない傾向があった。しかし、この日は水曜日に試合をしながら、最後まで戦い続けるタフファイトを継続し、勝ち切ったことは、とても重要だ。

 もちろん、まだまだ課題は大きい。
 短期的に気になるのは、石川の調子が落ちていること。同点弾も、マークしていた舞行龍に、石川が完全に振り切られたものだった(ちなみに、前々節のガンバ戦の先制点も、石川がマークしていた米倉に振り切られたものだった)。さらに冒頭のPKも、山崎に裏を取られた反応の悪さも問題だったが、慌てて不用意なプッシングをしたのも感心しなかった。まずは体調を整えて欲しい。
 また、これからさらに気温が上がる盛夏となる。富田、梁、ウイルソンと言ったベテラン達がいかに、体調を整え継続的に活躍してくれるか。これも、渡邉氏以下のコーチングスタッフの課題となる。

 しかし、連敗中もブレずに積み重ねてきたサッカーは、いずれのチームにも通用する組織力を持つ。そして、敵に最も脅威を与えられるウイルソンが帰ってきた。
 丁寧に、丁寧に、勝ち点を積み上げていきたい。
posted by 武藤文雄 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月09日

ベガルタは完敗だったけれど

 2016年7月9日、敵地ガンバ戦、84分。1対2で負けていたベガルタは、佐々木匠を起用した。
 ベガルタユース時代から、若年層代表で、常時定位置に近いところにいた技巧派、いわゆるスタア候補。正直言って、ベガルタサポータとしては、もっと早くからの登場を期待していた若者である。
 アディショナルタイムを含めて、約10分のプレイ。匠は、軽妙なボール扱いで、ベガルタの攻撃に変化をつけるのには貢献したが、はっきりとガンバ守備陣に脅威を与えることはできなかった。
 匠には、はっきり伝えておきたい。「中村俊輔や小野伸二は、デビュー戦でもっと格段にインパクトのあるプレイを見せてくれたよ」と。このままではダメだ。頑張れ。

 ベガルタは、その後パトリックに追加点を奪われ、1対3で完敗。4連勝のあと、3連敗。しかも、3試合連続で、3失点。何とも、味わい深い難しい状況の落ち込んでしまっている。

 けれども、今日のガンバ戦、内容はよかった。

 序盤から、ハードワークでガンバを押し込む。押し込めば、速攻のスペースを与えるため、一度藤春の突破から好機を許すが、これは仕方がない。ところが、遠藤のFKから、米倉のヘディングシュートを決められ、敢え無く先制を許してしまった。遠藤の精度、米倉の飛び出し、一方当方の石川の対応遅れ。このような詳細を丁寧に詰めなければやられてしまうのだ。
 しかし、このFKの判定には、大きな不満を感じた。ガンバの中盤がボールを回した場面、ガンバのトップのアデミウソンが、ボールよりはるかにベガルタゴール寄りで、マークしていたベガルタDF渡部をスクリーンした。渡部は、ボールに向かい、途中で妨害するアデミウソンに接触しながら前進し、ボールにアプローチ。そのアデミウソンへの接触をファウルにとられのだ。
 これは、アデミウソンの、オブストラクションではないのか。アデミウソンはまったくボールに関係ない地点で、渡部のプレイを妨害していたのだ。

 先制を許した以降しばらく、ガンバに押し込まれる。あのような不可思議なフリーキックをとられたため、腰が引けてしまったためだった。
 それでも、少しずつ冷静さを取り戻し、前半終盤には激しい当たりを思い出し、ペースを再びつかみ直す。
 後半に入っても、ベガルタの良さは継続する。全員が厳しい圧力を継続。幾度も好機をつかむ。そして、55分、CKからハモンがフリーでたたきつけるヘッド。コースは今一歩で、GK正面だったが、これを名手東口がファンブル。幸運にも恵まれ、同点に追いつく事に成功した。

 当然ながら、ガンバは圧力をかけ直してくる。渡部を中心に厳しく守り、この日久々に起用されたGK関の落ち着いたプレイもあって、よく防いでいたのだが。
 結果的に、アデミウソンと交代したパトリックにやられてしまった。強敵に追いついた後、いかにしのぐかは1つの課題。交代の使い方を含め、もっとやりようがあるのではないか。負傷者が多いとは言え、それがサイドバックの交代(今日は大岩から菅井)だけでは、ないように思うのだが。まあ、それはそれとして。
 突き放されたベガルタは、再度攻め直す。菅井でけではない、ウイルソンと匠を起用。圧力をかけ直し、幾度も好機をつかみかける。梁のシュートが、東口に好捕された場面は惜しかった。
 そして、無理攻めを仕掛けたアディショナルタイム、パトリックに決められ、2点差とされ、勝負は決まった。

 悔しい。
 でも、内容は悪くなかった。それなりに攻め込みながら、攻撃に変化が乏しいうちに、速攻から大量点を奪われた、ジュビロ戦、フロンターレ戦と比較すると、格段によかった。守備も安易に逆襲を許さなかった。攻撃も変化をつけることができた。
 たとえ、負けが込んでも、今のよさを伸ばすことを考えるべきだろう。

 匠がようやくピッチに立った。西村もいる。藤村も長時間機能した。ウイルソンも菅井も復帰した。パブロ・ジオゴと言う新ブラジル人も加入した。個人的にずっと期待している、高卒2年目の茂木もいる。
 選手層は格段に厚くなったのだ。渡邉氏の手腕に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月01日

ユアテック、最低の試合を満喫

 今日は今シーズン初めてのユアテック詣で。いつものことだが、地下鉄が泉中央に近づくにつれ高まるワクワク感は堪えられない。そして、梁勇基の復活。最高の雰囲気で試合は始まった。

 ひどい試合だった。

 まず、石川が退場になった豊田のPKについて。
 右サイド(ベガルタから見て)のクロスに対し、石川と豊田が交錯。豊田が転倒した瞬間、主審の池内氏が元気よく笛を吹く。「おお、豊田のシミュレーションか」と思ったら、池内氏の手はペナルティスポットを指差していた。
 考えてみれば。この日の、主審の池内氏の判定基準は、序盤から明確で、かつブレがなかった。両軍の手を使ったファウルにはかなり寛容。ただし、豊田が転倒すると、すべてベガルタのファウル。この判定基準で40分以上試合が行われていたのだから、理に適っている。実際、このブレのない基準は90分間継続。後半、攻め上がった大岩が敵DFに押されて転倒した場面も、心の弱い主審ならば当然PKだろうが、しっかりと流していた。
 感心しなかったのは、カードの出し方。黄と赤のカードを、連続して素早く嬉しそうに高々と差し出した。あれを残念そうに出しさえすれば、随分と印象が違ったものになった。中々の自己顕示欲、サッカー向きの性格だ。もっとも、主審向きではなく、ストライカ向きではあるが。
 誤解しないで欲しいが、私は「この場面がPKでない」とは断定しない。少なくとも、私が見ていた場所からはPKには見えなかった。また、実家に帰宅後見たスポーツニュースの映像でも、PKには見えなかった。そして、上記したように、池内氏の判定基準はブレていなかった。それだけだ。
 私は、豊田と言う選手は結構好きなのです。モンテディオ時代から。そして、今シーズン、あまり調子が上がってきてないのを密かに心配していた。ちょっとだけ不安なのは、今日の池内氏の判定基準により、かえって調子を崩すのではないかと言うことだ。敵DFが厳しい対応をしてきても倒れないのが魅力の選手なのだから。

 しかし、それにしてもベガルタの試合内容、特に前半の試合内容は悲惨だった。
 ベガルタのCBの渡部、平岡は、ロングフィードの精度は、あまりよろしくない(一方、強さ、高さ、粘り強さ、カバーリングなどはレベルが高いが)。当然のように、敵FWはこの2人にプレスをかけてくる。特に前半、敵FWの体力が十分な時間帯は、それだけでベガルタは前線に有効なボールが入らず、攻めあぐむ。これは、ここ最近の試合で再三見受けられた展開だ。
 そのような展開では、よい体勢でボールを受けて能力を発揮する野沢や金久保は、あまり活きない。ボランチから高精度のボールを出せる三田も、積極的なフリーランをするのが奥埜だけでは、出しどころが見つけられない。
 結果として、精度の低いロングボールがウイルソンに出るだけの展開となった。サガンのCB谷口は素晴らしい出足でそれをはね返す。ベガルタサポータとしては、「豊田が倒れたら必ずファウルをとるのだから、ウイルソンが倒れてもファウルをとってくれよ」と言いたくはなったが。
 渡邉氏の意地っ張りも相当なものだが、前線やサイドMFにもっと活動量を期待できる選手を使うのも一手段ではないか。西村とか茂木とか差波とか。もちろん、究極のおっちょこちょいの金眠泰も。彼らは、今のレギュラよりも下手かもしれないし、軽率なプレイもするだろう。でも、意欲をもってボールを引き出す動きはできるはずだ。彼らを行けるところまで引っ張って、終盤に老獪な野沢を起用するのは一手段だと思うのだが。あ、もちろん、匠でもよいです、ちょっとスタイルは違うけれど。
 な〜んてことは、渡邉監督だってわかっているはずだ。頼むよ。

 審判団へも不満はあるし、メンバ選考を含めた試合内容にも疑問はある。
 けれども、それがサッカーだ。40年余、サッカーを堪能し続けてきたが、今日くらいフラストレーションのたまる試合は、そうは経験できない。ありがたいことだ。55歳にして、また新しい経験を積むことができたのだから。
 いつもいつも語っているけれど、このようなひどい試合こそ、サポータ冥利につきるものなのだ。
 この無様な試合内容、積み上がらない勝ち点。ベガルタサポータ界隈には、降格のリスクを真剣に語り始める向きも多いようだ。気持ちはわかるが、まだまだシーズンは序盤。良好な若手も多数いるのだし、悲観論を騒ぐのは早すぎる。厳しく、温かく、サポートしていこうではないか。

 しかしだ。
 黄金週間に入って2日目。おだかやかなよい気候。
 それにもかかわらず、この日ユアテックに来戦したサポータは15,000人に満たなかった。これはまずいよ。雨や槍が降った訳でもない。それなのに、この観客動員はどうしたことだろうか。
 ベガルタの営業部隊の努力は聞いている。しかし、これはビジネスなのだ。結果がすべての世界なのだ。
 審判がどうだとか、選手のプレイ振りがどうだとかは関係ない。サッカーと言う究極の玩具を、いかに観客動員に結びつけるか。改めて、ベガルタの営業部隊の努力に苦言を呈しつつ、成果の発揮に期待したい。

 とは言え。
 やはり、生観戦は堪えられない。踊らぬ踊り子へのフラストレーション。目立ちたがりの黒子への怒り。こんな理不尽な状況への絶叫。
 「ああ、俺は幸せなのだ」と改めて認識し、Jリーグの素晴らしさを堪能した2時間であった。
posted by 武藤文雄 at 00:37| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月22日

梁勇基負傷、私は茂木に期待する

 先日のグランパス戦で負傷退場した梁。案外の重傷で4、5週間の離脱となったとの事。今シーズンもここまで、精力的な前後への移動と、巧みなパスワークを見せてくれたいただけに、ベガルタとしては痛いこと極まりない。とは言え、起こってしまったことは仕方がない。しっかりと療養してほしい。

 梁の長期離脱は、あの2012年シーズンの冒頭以来か。もっとも、当時の私の懸念は外れ、その負傷回復以降、梁は以降4シーズン、ACLを含め、元気に活躍してくれた。やはり「鉄人」だったのだ。
 ただし、梁にとって、昨シーズンは相当過酷なものだった。北朝鮮代表としてアジアカップに出場し、ほとんどオフなくリーグ戦に突入。何のかの言って、ほぼフル出場してくれた。さらに天皇杯にも勝ち残っていたため、12月末までシーズンが続き、非常に短いオフでの今シーズン入りだった。つまり、梁はほぼ2シーズン休みなしで戦ってきてくれたのだ。
 そうこう考えると、今回の負傷離脱は、天の配剤と考えるべきなのかもしれない。梁はまだ34歳、モチベーションが続く限りは、あと何年も何年もベガルタのためにプレイしてくれるはずだ。梁勇基と言う選手は、我々にとって、そのような存在なのだ。
 休むときはじっくり休み、少しでも、少しでも、長く我々に歓喜を提供してほしい。ずっと、ずっと、リャンダンスを踊り狂いたいのだから。

 だからこそだ。私は茂木に期待する。
 次節以降のスタメンは、奥埜を中盤に下げ、金園かハモンがトップに使われるのが常識的な予想か。いや、ベテランの野沢や水野、中堅の藤村や椎橋も、定位置確保に意欲満々だろう。いずれの選手も、私たちにとって貴重で重要な選手たちだ。でも、梁が倒れた際に、昨シーズン序盤のように奥埜と茂木が並んで戦ってくれたら、とにかく嬉しいではないか。特に、茂木にとって純粋なライバルである後輩の佐々木匠が、U19の遠征で不在。茂木はここで目立たなくて、どうすると言うのだ。
 昨シーズン開幕からスタメンをつかみ、技巧とふてぶてしさを活かしたプレイを見せながら、次第に地位を失った茂木。ツェーゲンにレンタルされた直後は、そこそこ活躍したものの、課題のボールの受けが改善されたなかったのか、次第に出場機会を失ってしまった。
 そして、このオフには、意味不明のアイスランドのクラブチームへの練習参加。代理人が間抜けなのか、本人がナニなのかやよくわからないが、真冬にアイスランドはないだろう(笑)。加えて、(アイスランドのサッカー関係者には甚だ失礼ではあるが)アイスランドリーグは、たとえ暖かい時期だとしても、18歳でJ1にデビューできた若者が1年後に挑戦すべきリーグとは思えない。欧州に行けばいいというものではないのだ。

 まあ、いいさ。茂木は我々の元に帰ってきた。そして、梁不在。頼むよ。
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2016年03月19日

ベガルタ、内容はよかっただけに悔しい

 ベガルタは敵地でグランパスに1対2で苦杯。古めかしい言葉だが、「ほろ苦い」勝ち点ゼロの試合となった。

 前半は「敵地」と考えれば上々の展開だった。引き気味に戦うが、3ラインがコンパクトな距離を保ち、グランパスにほとんど決定機を与えない。速攻から有効な攻撃の頻度を上げたいところだったが、敵地で相手も引き気味の前半に無理をする必要もないので、仕方のないところ。
 ところが、前半アディショナルタイムに失点。ハーフウェイライン手前右サイドでボールを奪い、前線に起点を作って中盤戻したところで、ボールを受けた三田が逆サイドに展開を狙う(左右はすべてベガルタから見て)。通っていれば、好機が始まりそうな場面だった。ところが、そこをグランパス田口に狙いすました当たりでボールを奪われる。田口はそのまま前進して、シモビッチに当ててリターンを受けて、左に展開。前進してきた古林が対応した石川が当たりに来る前にアーリークロス。CBの渡部と平岡の間に入ったシモビッチに丁寧なヘディングを決められてしまった。
 この速攻そのものは、田口に「恐れ入りました」としか言いようのないものではあった。また、田口のボール奪取に呼応したグランパス各選手の前進も見事だった。一方で、ベガルタの切り替えも悪くはなく、最初にボールを奪われた三田もすぐに反応していたし(しかし、田口とシモビッチの細工の早さが一枚上だったが)、失点の瞬間も渡部、平岡、富田がペナルティエリア内に戻っていた。
 ただ、渡部の対応は少々残念だった。シモビッチがヘディングした瞬間、その外側には松田が入ってきていたが、平岡はマークについていた。石川が古林に対応もしていて、縦は押さえていた。また、石川が古林に対応していたのだから、えぐられる恐れも少なかった。そうこう考えると、渡部は左サイドのカバーを意識するよりは、シモビッチに付いていて欲しかったところだ。
 まあ、三田も渡部も今ごろ大いにこの場面を悔やんでいることだろうし、このような悔しい場面を丁寧に修正して、シーズンの戦いを積み上げていけばよいのだとは思う。

 後半のベガルタの入りは上々。失点に慌てることなく前半同様に守備的に入り、少しずつ攻めの圧力を増していく。梁の負傷交替はショックだったが(退場後自力で歩いていた、軽傷であることを祈るのみ)、ハモン、水野、野沢を順次投入し、攻勢をとる。65分以降は完全に押し込み、複数回好機を掴み、82分にとうとう追いついた右サイドを水野が突破しクロス(欧州移籍前の往時を思い起こさせてくれる縦突破だった)、そのクロスが流れたところで富田が拾い、左に展開。ハモンが飛び込んで決めてくれた。左右の揺さ振りで完全にグランパスDF陣がマークを見失い、ハモンの他に2人が飛び込んでおり、完全に崩し切ることに成功。嬉しい得点だった。
 ところが、その後がいけない。ホームで追いつかれたグランパスが、前に出てくるのは自明なのだから、しっかりとボールをキープすべきなのに、同点前同様にどの選手も「前に前に」行ってしまった。結果、こぼれ球をドンドン拾われ、完全に押し込まれてしまう。そして、右を崩されてのクロスが左に流れ、それを石川がはね返したこぼれを矢野に拾われてズドン(もしかしたら野田に触られたのか、ベガルタの自殺点かもしれない)。
 試合運びの稚拙さも極まれり。敵地で、同格以上の相手を押し込んでの同点。あと10分。サッカーの常識を考えれば、落ち着かなければいけない時間帯。繰り返すが、敵地で80分過ぎまでリードされていたのだ、どう考えてもまずは同点を目指すべきだろう。しかも、この日ピッチにいたベガルタの選手は、皆20代半ば以上、若手と言える選手は誰もいなかったのに、あまりに残念だった。

 内容はよかったと思う。
 田口の好プレイがなければ、無失点で後半に入り、勝てた可能性もあったかもしれない。好守共に内容はよかった。これは、昨シーズンと比較して、明らかな進歩が見られる。
 渡邉監督が昨季から織り込もうとしているサイドに人数をかける攻撃がかなり機能するようになってきた。渡部と平岡の守備の固さ、特にはね返す力は、ここ2シーズンのベガルタには全くなかったものだ。三田の加入で攻撃は格段に厚くなっている。間違いなく、昨シーズンよりもサッカーの質は上がっている。
 だからこそ、終盤の稚拙さが残念だ。中上位を目指していくからには、常識的な駆け引きを駆使して、少しでも勝ち点を拾っていく必要があるのだ。攻撃や守備の連係は、ある程度戦いながら作り込む必要があるが、勝ち点を少しでも積み上げる努力は、日々怠ってはいけない。
 まあ、このように前向きに嘆くことができるのだから、結構なシーズンの入りと言えるのだろう。
 Jリーグは愉しい。
posted by 武藤文雄 at 18:08| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月13日

関憲太郎の矜持

 70分過ぎだったか。ベガルタのクリアを拾った柴崎がペナルティエリア右側に進出(以下の左右はすべてベガルタから見て)。それを受けた金崎?が振り向きざまのシュートを狙う。それが当たり損ねとなった事で、ベガルタDFは完全に逆をつかれ、カイオが全くのフリーとなる。PKのようなシュート、「やられた!」と思ったその瞬間、関がすばらしい飛び出しで完璧なブロック。
 前半を1対0で折り返したベガルタだが、後半はアントラーズに押し込まれる時間帯が継続。粘り強く守ってはいたが、あれだけ押し込まれたら「いつかは崩れるのではないか」と言う後半半ば過ぎの時間帯。そこで許した決定的ピンチを関が防いでくれた。
 このファインプレイがこの試合の分岐点となった。いやそれだけではない、この好守はベガルタ仙台と言うクラブの歴史にとっても、大きな分岐点になるのではないか、と愉しい想像にとらわれたのだ。

 ベガルタの先制点。開始早々に左サイドを人数をかけ、アントラーズ守備陣を引き付け、ウイルソンの巧みなセンタリングを、ファーサイドから進出した金久保が、ボールを浮かさないよう丁寧なシュートを決めたもの。速攻が決まらない時、トップの選手が開いて前線で拠点を作り、そこにサイドハーフとサイドバックが押し上げて人数をかけ、さらにボランチが進出しパスコースを増やす攻撃は、昨シーズンから幾度か狙っていたものだが、この得点はその意図が奏功したものだった。
 その後約15分間、攻勢に出てきたアントラーズの猛攻を受ける。この時間帯は、いわゆる「悪いベガルタ」。押し込まれたところで、中盤選手が引き過ぎて、敵の中盤選手を自由にし過ぎてしまった。左サイドのスローインを、遠藤にまったくのフリーで受けられて、バーに当たるシュートを打たれた場面がその典型だった。
 しかし、我慢を続けながら、30分以降はベガルタがペースを取り戻す。ウイルソンと奥埜の距離感がよく、三田がボールをさばけるようになり、石川、大岩の両サイドバックがよく押し上げる。先制点の場面同様、速攻後の分厚い攻めが成功し、幾度も好機をつかみかけた。

 後半は開始早々からアントラーズが圧力を高め、攻勢に出てくる。ベガルタは前半の悪い時間帯とは異なり、中盤選手が最終ラインに吸収されず、組織的に守る。10分間、完全に押し込まれたが、丹念に守り続ける。
 そして、速攻から10分過ぎにウイルソンが左サイドを突破し、奥埜に合わせる好機をつかむ。以降は、アントラーズに押されて危ない場面を作られながらも、最終ラインが頑健にはね返し、幾度か速攻を成功させかける時間帯が続いた。ウイルソンも奥埜も、昌子や植田と言った強いDFの厳しいマークを受けても、後方からのフィードから巧みに反転することができる。だから後方の選手が、敵の攻撃を止めた後、しっかりとつないで、前方をルックアップしてトップの2人を見つけられれば、有効な攻撃に持ち込めるのだ。
 しかし、アントラーズは強かった。冒頭に述べた一番危なかった場面を含め、小笠原と柴崎を軸に、幾度となく猛攻を仕掛けてきた。それでも、ベガルタの各選手、特に最終ラインの4人と、後方に控える関は、最後まで激しく厳しく戦い続け、1点差を守り抜き、勝ち点3を獲得してくれた。

 見事な勝利だった。

 昨シーズン、ベガルタは上位6クラブ、サンフレッチェ、レッズ、ガンバ、FC東京、アントラーズ、フロンターレに対し、2分け10敗。まったく、歯が立たなかった。
 そう考えると、今シーズンの序盤3試合、マリノス、FC東京、アントラーズの強豪3クラブと戦い、勝ち点6を獲得したのは、悪くない結果だ。そして、この3試合目の内容がよかったのが嬉しい。もちろん、課題はまだまだあるが、激しい守備と意図的な攻撃が、高いレベルで機能したのは確かなのだから。
 そう考えると、この試合はベガルタ仙台と言うクラブにとって、大きな分岐点となる試合だったのではないかと期待したくなるのだ。必ずしも経済的に潤沢でなく、また歴史も浅いベガルタ仙台。そのような地方の小さなクラブが、12年シーズンにJ1で2位となり、13年シーズンにはACLで戦うことに成功した。その成功そのものは、日本サッカー史に残る「偉大なおとぎ話」だ。しかし、その成功以降、中核選手の老齢化に苦しみ、ようやく昨15年シーズンに大胆な若返りを指向。そして、今シーズンに入り、ようやく反転上昇の準備が整ったように思えるのだ。
 小さなクラブが大きなクラブに対抗する手段は色々ある。戦闘能力差を割り切り、後方を分厚くしたうえで、敵の攻撃を引き出し、逆襲速攻で喉元に食らい付くのは一手段だ。J1に復帰した10年シーズンや、渡邉監督が采配を引き継いだ14年シーズンは、ベガルタもそのような手段を採用していた。
 しかし、上位進出に成功した11、12年シーズンは、それに加えて、速攻で攻め切れなかった場面で分厚い遅攻も機能していた。それがあったからこそ、我々は上位に進出できたのだ。昨シーズン、渡邉氏は幾度もそのような試みを行っては失敗していた。けれども、今シーズンは、その狙いに成功しつつある。
 もっとも、後半はその狙いは機能しなかった。したがって、いたずらな楽観をするつもりはない。以降の試合も、幾多の苦しみを味わうことは確かだろう。しかし、それでも、このアントラーズ戦、最終ラインの激しさ、知的な速攻、その後に続く効果的な遅攻。昨シーズンとは異なる質の高さを感じることができたのだ。我々は、もっともっと上を目指せるのだ。

 そして、この試合、間違いないMVPは、関憲太郎だった。冒頭に述べたファインプレイ以外にも、冷静な位置取り、果敢な飛び出し。GKとしては小柄ながら、小柄な故の持ち味を存分に発揮した鮮やかな守備。前節試合終盤での六反の不運な負傷による交代起用。そして今節の久々のスタメン。それぞれ、難しい状況ながら、堂々たるプレイを見せてくれた関。出場機会に中々恵まれない状況下においても、よいトレーニングを積んできたのだろう。第2キーパがこれだけよいプレイを見せてくれることそのものが、今のベガルタのチーム状態のよさを示すと共に、関憲太郎と言うプロフェッショナルのアスリートの矜持を示している。
 「今シーズンのベガルタは一味違う」と期待させてくれる試合だった。
posted by 武藤文雄 at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月02日

ペトロビッチ氏の自滅

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年は、何とか更新頻度を上げていきたいと思っているのですが。
 さて、今年の初講釈は、2015-16年天皇杯決勝戦。レッズ対ガンバ、国内屈指の強豪対決を、実家のテレビ桟敷で堪能させていただきました。

 ガンバは準決勝で負傷した柏木を使えない。柏木の代わりには青木を起用、阿部を一枚前に使う。そして、準決勝で劇的な決勝点を決めた李忠成が先発、2シャドーに興梠と武藤を並べ、右アウトサイドには関根ではなく梅埼を起用した。この布陣変更が、前半の綾となる。
 立ち上がり、ガンバがつかんだ2回の決定機は宇佐美が起点となった。これは、宇佐美を止めるのが、森脇なのか梅崎なのかがはっきりしなかったため。さらに、ガンバの先制点は、レッズの攻撃が、柏木不在により単調になり、前掛かりとなったところで、中盤でボールを奪われた直後の速攻からだった。まあ、これは、ボールを奪った直後に躊躇せずに縦パスを通したのは倉田と、格段の脚力で突破したパトリックを褒めるべきにも思う。レッズのような攻撃的サッカーを志向するチームは、常にこのような失点のリスクを負わなければならないものだ。
 一方で、レッズの布陣が奏功したことも多かった。まず阿部を一枚上げたことにより、直接遠藤との対峙が可能になり、自在な展開を許さなかったこと。加えて、森脇と梅崎の分業が確立した後は、梅崎の前進により、宇佐美を後方に押し下げることにも成功。レッズの同点弾は、梅崎の狡猾な突破に対して宇佐美の対応が軽かったことが起点となった。直後の梅崎の絶妙なクロスに李が飛び込み、ポストに当たったこぼれを興梠が鮮やかに詰めた。ペトロビッチ氏苦心の布陣が、見事に当たったわけだ。それ以降、レッズが押し込む時間帯が続いた。

 後半に入ってもレッズペースが続く。
 ところが、ガンバの速攻から後半初めて許したコーナキックから、ガンバに突き放されてしまう。この場面は、完全な槙野の失態。ガンバ今野に妨害され、マンマークしていたパトリックに完全に振り切られてしまった。マンマークの駆け引きで、攻撃側の選手が他の選手を利用してマークを振り切ろうとするのは、いわゆる基本技。これだけのビッグゲームで、このような初歩的な駆け引きで得点が生まれてしまうとは。
 槙野と言う選手は、センタバックとしての能力は日本屈指のものがあると思っている。この日の前半も、パトリックや倉田の飛び出しに対し、落ち着いた粘り強い対応でしっかり止めていた。けれども、どうして肝心な場面で、「抜けて」しまうのだろうか。
 
 リードしたガンバは、宇佐美とパトリックをトップに残した4-4-2に切り替え、守備を固める。
 ここでペトロビッチ氏は不可解な采配を行う。武藤と梅崎に代え、ズラタンと関根を起用したのだ。これは攻撃の圧力を高める効果はあったが、変化は少なくしてしまう。実際、前半梅崎が中央に絞って作ったスペースに森脇が進出、逆サイドの宇賀神を狙う攻撃は効果的だった。李と武藤が中央にいれば、高いクロスと、低く速いクロスと、複数の選択肢があり得るが、ズラタンと李ならば、高いボールしか選べなくなる。さらに宇賀神に代えて高木を起用。レッズの攻撃の最大の強みの1つは、宇賀神が外に引き出しておいて、槙野が進出してくるやり方になるが、若い高木にはこのような仕掛けは難しい。何より、常に敵が困るいやらしい選択を考える宇賀神がピッチからいなくなってしまった。
 結果的に、レッズの攻撃は若い関根と高木が、両翼から個人技の限りを尽くして突破を狙い、それにレッズの強力な3トップが飛び込むだけの単調な展開となった。いや、後半半ば過ぎからは、槙野も最前線に進出。言わば2-2-6のフォーメーションで、強引に押し込む展開となった。
 ガンバの中央は強い。東口と丹羽と金正也が、関根と高木のクロスをはね返し続け、試合はそのまま終了した。確かに、あれだけクロスを上げ続ければ、結果的に好機を作ることはできる。けれども、レッズ本来の魅力である、変化あるパスワークによる崩しはほとんど見られなかった。
 むしろ、トップに残った遠藤の妙技と、「明神2号」を思わせる井手口の刈り取りが目立ち、決定機はガンバの方が多い展開が続き、試合終了。ガンバの歓喜とあいなった。

 どうして、ペトロビッチ氏は、後半序盤にリードされただけで、自ら大事に育て上げた、鮮やかなパスワークによる攻撃を放棄してしまったのだろうか。
 好調時のレッズの攻撃の変化は鮮やかだ、たとえ柏木が不在だとしても。興梠がちょっとしたキープで作ったスペースに、武藤や梅崎が絡む。森脇のサイドチェンジからの宇賀神の個人技。宇賀神と槙野の連係による崩し。そして美しい阿部の展開。
 このような変化あふれるパスワークがあるからこそ、関根や高木の個人技が効果を発揮する。ズラタンや李のシュート力も活きる。 
 これらの輝きは、すべてペトロビッチ氏が作り上げたものだ。それなのに、ペトロビッチ氏は、大事な試合で、大事な勝負になる度に、その輝きを自ら放棄してしまう。
 上記した槙野の失態も深刻な問題に思える。ペトロビッチ氏は、槙野がサンフレッチェでトップデビューした折からの師匠。槙野も28歳になった。それでも、この甘さはなくならない。槙野自身の問題もあるが、それを許すペトロビッチ氏の問題も大きいのではないか。
 まあ、いいんです。私はレッズサポータではないですから。

 ともあれ。新年早々、内容も豊富で、色々思索可能な試合を堪能させていただきました。
 ここは1つ、近々行われる五輪予選で、井手口が輝き、我々に歓喜を提供してくれることを。
posted by 武藤文雄 at 00:31| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする