2021年01月05日

‪ルヴァンカップ決勝2020-2021年

 ルヴァンカップ決勝、FC東京2-1柏レイソル。
 多くの関係者が苦労に苦労を重ね、この決勝戦が成立した。
 延期となったこのルヴァン杯決勝だけではない、Jリーグ、天皇杯、そしてACL。この疫病禍の下、よくもまあ、シーズンすべてを無事終えられたものだと思う。すべての関係者の皆さんに感謝したい。
 サポータを含む両軍の関係者、Jリーグ当局、それぞれの方々にとっては、COVID19で延期し苦労を重ねた決勝戦と記憶される試合となるのかもしれない。それはそれで貴重で大切な記憶となるだろう。
 一方で私はこの試合を「レアンドロと森重の決勝戦」と長く記憶することとしたい。
 
 レアンドロの先制点。
 まず左オープンに飛び出すすばらしいオープンへの走り込みから始まった。自軍左サイドに飛んだロビング、左サイドバック小川が競り勝つと信じ、左サイドに開いて、見事に受ける。この受けが格段で、利き足の右でキープに成功、右インサイドでグッと縦に出し、マークしているヒジャルジソン〈だったと思う)を振り切り、ペナルティエリアに進出。応対したCB大南と山下には直前の縦突破の残影があったのだろう。大南は明らかに縦を警戒し、山下も縦をカバーに入る。ところがレアンドロは、今度は右アウトサイドで中に切り返す。この切り返しが絶妙、大南をカバーした山下も一気にはずし、右足で振りが速いグラウンダのシュート。必ずしも強いシュートではなかったが、振りの速さとコースが絶妙、ボールはネットを揺らした。「レアンドロの個人技」と言うのは簡単だが、受けのうまさ、縦突破の精妙なボールタッチ、横突破で2人を外す、正確なグラウンダのシュート、4つ見事なプレイを連続したのだから恐れ入る。
 テレビ桟敷で愉しんでいた立場としては、解説していた内田篤人氏が、「レアンドロは乗ると本当にすばらしい、ただ性格が…」と語ったのが、この美しい得点への一層の彩りとなったわけだが(でも、この内田氏の蘊蓄を聞くことができたことよりも、このレアンドロのシュートを現地で見られて方々への羨望の方が強いな)。

 前半早々にリードした東京は、4-5-1でブロックを組み丁寧に守備を固める。リードした東京は、1トップの永井の高速かつ広範なフォアチェック、アンカーの森重を軸にインサイドハーフの東と安部が何とも気の利いたプレイで、柏のエース江坂への有効ボール提供をさえぎる(長駆の後、しっかり仕事ができる安部は、今シーズンJリーグ最大の発見の1人と言ってもよいかもしれない)。江坂にボールが入った瞬間の森重がまた絶妙、江坂にシュートや突破を許さず、オルンガやクリスティアーノへのパス供給もさえぎる。
 加えて、右ウィングの原大智が機能した。いわゆる4-5-1あるいは今風の4-3-3の右ウィング、守備に回っては数十メートルの疾走を繰り返し、攻撃に入った時はスペースを巧みに活かし、いやらしいところに飛び込みシュートを狙う。大柄で強さのあるフォワードが、献身的に攻守に貢献する。そう言われてみると、30数年前に同じ名字の献身的で得点力あふれるストライカがいたのと言うことを思い出した。ただ、30数年前の原は、今の原ほどボール扱いはうまくなかったし、身長も10cmくらい低かったけれどヘディングはずっと強かった。今の原は、もっとヘディングの鍛錬は必要だな。
 かくして、柏はほとんど好機をつかむことができず前半を終える…はずだったが、試合は予想外の展開となる。

 柏の同点ゴール。
 CK崩れのこぼれ球が浮き球になったところで東京GK波多野に対して、柏主将の大谷が体を寄せる。波多野はこの大谷の狡猾なプレイに惑わされたのだろう。難しいフィスティングではなかったはずだが、目測をあやまったか、ボールに的確に触れず。バーに当たったボールを、瀬川が落ち着いて決めて同点となった。この手のビッグゲームでは、滅多に見られないミス、若いゴールキーパーの経験不足と言うにはあまりにも軽率だった。ベテランGK林の負傷離脱がこういうところに聞いてくるとは。
 もっとも、FC東京が優勝した今となっては、このミスは波多野にとっては最高の失敗経験となったかもしれない。波多野の大成を期待したい。

 同点に追いついた後半、柏は有効な攻撃が増える。
 オルンガが左右に動いて、東京の4DFを揺さぶり、江坂もよく動きボールを引き出す。セットプレイから決定機をつかむなど、攻撃の質は格段に上がった。
 一方で、森重がすばらしかった。特に江坂が巧みにサイドに開いてボールを受けても、無理な追い込みはせずに、丁寧にディレイ。江坂は工夫を重ねるが、オルンガに有効なパスは出せない。
 長谷川監督は65分過ぎに東→三田、原→アダイウトンと交替。これだけの大駒をベンチに残しておけるのは、選手層の暑さの賜物か。
 アダイウトンの決勝点。偶然に上がったロビングが微妙に守備ラインの裏へ飛ぶ。狙いすましたラストパスではなかったことが、東京に幸いした。柏の左サイドバック古賀は的確に対応していたのだが、偶然のボールゆえボールへのアプローチが一瞬遅れた。アダイウトンのすばやいトーキックを褒めるしかあるまい。

 考えてみれば、この日の3得点は、いずれも微妙なDFの対応不首尾によるものだった。J終了後の2週間と言う微妙な間隔が、選手の守備感覚に影響したのかもしれない。

 東京にリードされたところで、ネルシーニョ氏が3枚替え。大谷から三原、瀬川から神谷、この2つは、元気な選手の投入と言う意味で理解できるが、エースの江坂に変えてストライカ呉屋の起用は驚いた。たしかに、森重を軸にした見事な守備に、江坂はここまで沈黙していた。老獪なネルシーニョ氏は「今日は江坂ではない」と考えたのだろうか。このあたりの、果断な決断はいかにもこの老監督らしいなと思った。しかし、あくまでも結果論に過ぎないが、この江坂の交替は失敗だった。結局、柏はオルンガに高いボールを入れるしかなくなり、森重が固める守備を崩すことはできなかった。

 レアンドロの鮮やかな得点と、森重の知的守備を愉しめた決勝戦だった。
 改めて、この決勝戦を実現し、今シーズンの全日程を終えることができたことに感謝したい。そして、来シーズンは、降格もW杯予選も(やれるのかわからんが五輪も)こなさなければならず、もっと厳しくなる。
 などと、今から悩んでもしかたがないな。まずは、皆で休みましょう。
posted by 武藤文雄 at 23:46| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月01日

2021元日、天皇杯決勝

  あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 天皇杯決勝2021年元日、病禍禍下にもかかわらず、幸運にもチケットを入手、天皇杯決勝を堪能した。

 試合そのものは、フロンターレがガンバを圧倒。多彩な攻撃で幾多の決定機をつかみ、後半55分に先制。その後も多くの好機をつかみながら決め切れず。最後の15分にガンバが反攻したものの、鄭成龍、ジェジエウ、谷口の中央は揺るがず。きっちりと、フロンターレが1-0で逃げ切り、堂々と日本一を獲得した。

 フロンターレのすばらしさは、全選手に徹底している勤勉さ。他チームと比較して、技巧に優れた選手たちが皆丹念に動き続け、パスコースを作り丁寧につなぎ続ける。さらに、味方がボールを奪われた瞬間の切り替えの早さが格段、全選手がボール奪取に動き、敵のボールキープを妨害し絡めとる。相手チームからすれば、下手にボールを奪い、味方がキープするために位置取りを変えた瞬間に、フロンターレ選手複数がボール奪取に絡んでくるのは悪夢だろう。真っ当にフロンターレがキープしていてくれた方が安全と思えるほどだ。
 かくして、ほとんどの時間帯、試合内容はフロンターレが圧倒した。
 さらに、ガンバの状況を悪化させたのは、宇佐美の使い方。前半はいわゆる4-4-2の左サイドMFを務めたが、家長、山根、時に田中碧が参画するフロンターレの右サイドの攻撃に対して、長駆の追い込みができないため、ほとんど抵抗ができなかった。後半、ガンバ宮本監督は宇佐美をトップに変更、倉田を左サイドMFに移した。倉田の粘り強い対応により、フロンターレの右サイド攻撃をある程度止めることはできたものの、逆にアンカーに位置する守田へのプレスが弱まり、一層事態は悪化した感もあった。体調が悪いのか、指示が不適切なのか、それ以外の要因があるのかはさておき。
 また今シーズン左DFを務めた登里が負傷したとのことで、フロンターレはこのポジションに新人の技巧派の旗手を起用。旗手は格段の技巧で、変化を演出はしたが、右利きのため攻撃の幅を結果的に狭めてしまった感もある。左ウィングの三苫が右利きの技巧派であることを含め、ここは来シーズンの課題かもしれない。いや、これ以上フロンターレが強くなっても困るのですけれども。
 それでも、終盤まで1点差を維持できたことで、ガンバは反撃を開始。渡辺千真を起用し、パトリックとの2トップで幾度か好機をつかみ、試合を盛り上げてくれた。フロンターレの各選手が75分までの猛攻でやや一息感があったこともあり、ドイスボランチを組んだ矢島と倉田がよくボールを散らし、フロンターレを慌てさせたのだが。
 フロンターレはチーム状態が良すぎることもあり、よいリズムで攻守のバランスがとれていた。そのため、終盤選手が疲弊し始めたところでの交替起用のタイミングが難しかったのかもしれない。あり余る控え選手の適切な起用ができず、終盤慌てることになった感もあった。
 持ち味の美しいボールキープを軸にした変幻自在の攻撃を見せてくれたフロンターレ、粘り強く戦いあと一歩まで持ち込んだガンバ。新年早々、楽しい試合を見せてくれた両軍関係者、それを演出した鬼木、宮本両監督に感謝するものである。

 結果的に、中村憲剛大帝は最後の公式戦に出場せず。ちょっと、いや相当残念なのですが、贅沢を言ってはバチがあたるのだろう。
 でも、もう1回憲剛を見たかった…

 以下余談。
 自分にとっては、はじめての新国立競技場。陸上トラックが邪魔だとか、色々な議論があるようだが、大きな問題を2つ感じた。

 まず1個目は、滅茶苦茶でかいから、自分の席に着くまで最寄り駅到着以降、最低30分くらいを見ておかなきゃいけないこと。その割に、入場口やスタンド入口が少ないように思えた。それでも、今日は入場可能者も少なかったら、何とかなったが疫病問題が解決後、チケットが売り切れ状態時にどのように混乱があるか、ちょっと心配。
 2つ目。噂通りなのだが、前後の隙間がなさすぎる。普通に座ると、前の席の背もたれ後方に足が密着する。なので、移動する人がいると相当難儀する。今日は、1人おきの配席で隣が不在だったこともあり、移動する人がいたとしても、男の私は足を広げて、その人を通すのは問題なかった。しかし、これが満員御礼状態だったとしたら、相当混乱するだろうな。
 他にも、メインから見て右側のバックスタンドが分離されているなど、基本設計で気になることが多々あるが、まあ別途議論するか。
 
 もう1つ。試合前の国歌。さすがに疫病禍下、我々は歌えない。自衛隊の歌の上手いお姉さんが朗々たる独唱、場内アナウンスが「心の中で歌ってください」と言っていたのには少し笑った。それはそれでよいのですが、その独唱下、オーロラビジョンに中村憲剛大帝を大映しにしても、バチはあたらないだろう、と思ったは私だけだろうか。
posted by 武藤文雄 at 22:30| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月31日

2020年10大ニュース

 今年の10大ニュースをどうまとめるべきか。何を語ってもCOVID19の影響を抜きには語れないように思えてくる。ただ、この疫病禍の前に起こったことは、記憶から薄れつつあるし、独立して起こった事件もある。そのあたりを自分なりに整理してみた。1位から6位はこの疫病禍に関するもの。7位は少し疫病禍に関連するもの。8位から10位は疫病禍と直接関係ない事案となっている。


1位 とにかくJリーグ完結
 この難しい疫病禍下でとにもかくにもJリーグが無事日程を終了できたことに関係者に敬意を表したい。中断が決まって早々に下位リーグ陥落がないことを決定、さらに再開に向けて、リーグ戦の成立条件や、試合中止の基準を設けるなどの規定を明示化。これらの規定の具体性や現実性には感心した。そして、下記する他の大会との調整、度々襲ってくる疫病禍にも屈せず、全日程を完了したわけだ。
 加えて、ACL(無茶苦茶な日程だったが、これまたとにかく大会を完了したことを評価するしかないか、ともあれテレビ桟敷で見た試合はいずれもおもしろいものだった、VARを除いては)も曲りなりに3チームが出場。天皇杯も幾多の議論を経ながら、J1から2チーム、J2、J3から1チームと言う奇策で帳尻を合わせた(中村憲剛の最後の公式戦として盛り上がり的にも最高の舞台となった)。さらに、ルヴァンカップも、決勝は疫病の影響で延期を余儀なくされ、片方の決勝進出クラブFC東京がACL出場し日程調整が厳しい中で、1月4日決勝と何とか形をつけた。
 もちろん、「帳尻を合わせた」とか「何とか形をつけた」と言う表現は、創意工夫を凝らして日程調整をした方々(各クラブ都合、会場調整など検討しなければならない事項は無数にあったはず)、厳格な管理下で健康状態維持に努力した選手やスタッフなど現場の方々、いずれに大変失礼かもしれない。しかし、このような表現をとらざるを得ないほど、今シーズンの日程をほぼ完全に消化しつつあることは実に見事な業績だったと思っているのだ。
 ただし、本当に大変なのは来シーズンだ。J1は20チーム総当たりで4チームが降格する過去にないタフなシーズンを迎える。後述するがワールドカップ予選も入ってくる。残念なことにCOVID-19の影響もまだまだ続き、突然の中止などの混乱も起こるだろう。それでも、今年の経験を生かし関係者が知恵を絞り、無事来シーズンもこなせることを期待したい。
 とにかく、皆さん、お疲れ様でした。

2位 縮小経済と日本サッカー
 何とかシーズンを無事終えようとしている日本サッカー界だが、経済的状況が深刻なのは言うまでもない。
 当たり前の話だが、この疫病禍の中、J各クラブの観客動員が大幅に減少している。入場可能観客の人数が制限されているのみならず、試合直前までチケットの発売を待たねばならず、思うような販売促進もかなわない。サッカークラブの支出の多くは固定費(そのほとんどは、現場の選手やサポートスタッフ、フロントの人々の人件費)であり、観客動員が少なくなれば自然と収入が下がり、状況が悪ければ赤字化する。
 今シーズンはその打撃が直接各クラブの経営を襲った。頭が痛いのは、来シーズンも同様の事態が起こることだ。また、これは日本協会も同じことで、貴重な収入源である日本代表の試合が思うように行わなれない。Jクラブにしても、日本協会にしても、出資者やスポンサへの還元や、良好な関係作りを行ってきただろうから、ここからの収入が短期的には減らないかもしれない。これども、疫病禍により世界中の景気が後退している状況。出資、スポンサ企業の経営も苦しいのだ。こう言っては身も蓋もないが、サッカー界に入ってくるカネがしばらく減少傾向となるリスクは高い。
 加えて、気になるのは西欧サッカー界でここ30年来続いていた異常な経営拡大基調だ、バブルと言ってもよいかもしれない。最近ではとうとう選手価値の債権化、若年層選手の人身売買的扱いを皆が隠さなくなっている。建前論からもしれないが、人権確保促進や個人情報保護に特に厳しい欧州で、これらの活動が放置されているからくりは、よく理解できていない。そのような状況で、西欧各国は直接的な疫病被害は甚大なものになっている。この状況下で、西欧のサッカー界はどのように収入を確保し、選手達の高給を維持するのだろうか。もし、それが叶わなくなり経済的縮小を余儀なくされた時、西欧サッカー界はどうなってしまうのだろうか。
 悩んでもしかたがないことかもしれない。日本で私たちができることは、それぞれの立場で知恵を絞り、サッカーを楽しみ、そこでキャッシュが回る工夫をすることしかないのだが。

3位 声が出せない観戦
 50年近くサッカーを堪能してきたわけだが、自分にとっては未曾有のつらいシーズンだった。観戦時に、大声を出せないことが、これほどしんどいこととは、思いもしなかった。
 サッカーを見るという行為はうんうんと黙って首を縦に振ってれば良いものではない。相手チームの素晴らしいプレーに悲鳴をあげ、一方で(あくまで主観的だが)審判の不適切な判定に対し野次を飛ばす。これらはこれで、サッカー観戦には得難い楽しみの1つだが、まあこれらは我慢ができる。しかし、何が我慢できないというかと言えば、自分のチームの選手の素晴らしいプレーに対する、歓喜や賞賛や感嘆の叫び声を出せないことだ。これらを我慢するのは極めて難しい。
 再開以降、ユアテックで2試合だけ観戦をしたが歓声を上げられないのは本当に辛いものだと思った。自宅でDAZNしながら絶叫した方が、どんなに気持ちよいことか。余談ながら、指導しているサッカー少年団の試合ならば、ベンチからの指示は許されているので、このようなストレスはない(もっとも、少年サッカーのベンチでコーチがすることは、子供達に「いいぞ、いいぞ」とひたすら褒め続けることだけなのだが)。
 もちろん私はサッカー狂だから、生観戦に勝る楽しみはない。サッカーが見られるならば、大声を出すのを我慢しよう。けれども、多くのサポーターは声を出して一生懸命チームを応援するのは大きな楽しみになっているはずだ。現実的に声を出せないからユアテックには行かないことにしてるんですと語っている人に何かあった。仕方がないこととは言え、つらいところだ。

4位 ワールドカップ、日本代表チームへの不安
 一方で、ワールドカップはどうなるのだろうか。そもそも、22年に計画通りカタールでワールドカップがやれるのだろうか。
 今回の疫病禍となる前の話だが、もともとカタールと言う国でワールドカップ本大会をすることそのものに多くの疑問が寄せられていた。他地域にない高温多湿から11月開催となったのも異例だが、面積の小さな国で観光資源も乏しく、また宗教的な制約から酒も楽しみづらい。ワールドカップと言うお祭りを通じ、私のようなサッカー狂からキャッシュを巻き上げることを生業としているFIFAらしくない開催国選択なのだw。
 そこに加えてこの疫病禍。何がしか合理的な予選を構築し、2022年の春くらいまでには出場国を確定しなければならない。例えば南米では予選が再開しているが、アジア予選は停止したまま。あまりに多くのキャッシュが動く世界最高のお祭りだが、合理的にも、経済的にも、みなが納得する予選形態を、今から構築できるのだろうか。たとえば、大陸をまたがる所属クラブの選手をどのように集め、どのように選手の体調管理を行えるのか。たとえば、選手の所属クラブが、疫病関連で選手の招集を拒絶した場合、どのようなルールでそれを制御するのか。
 日本代表を例にとってみよう。アジアでのアウェイゲーム、欧州クラブ所属選手とJの選手を当該国で適切に隔離管理して準備と試合を行い、それぞれのクラブに戻す必要がある。少々乱暴な言い方をするが、アジア各国のサッカー協会がこれらの管理を適正に行う見極めがつかなければ、欧州のクラブが選手派遣を認めないのではないか。一方で、そのような混乱で、監督が選ぶベストメンバを選考できなければ、日本はもちろんだが、韓国、豪州など欧州クラブでプレイする選手を多数持つ国は対応できなくなる。
 もう1つ、先日欧州でメキシコやカメルーンなどと親善試合ができたのは、1つの成果だし、日本協会関係者の尽力のたまものだと思う。また、欧州クラブ所属選手だけの招集で、曲りなりにもメンバがそろったのも感慨深かった。ただし、代表チームと言うものは、自国、他国いずれのリーグでもプレイしている選手を、監督が自在に選考できなければベストとは言えない。疫病禍と言うのは、この当たり前のことを実現することを難しくしてしまうものだ。厄介なことだ。

5位 交代制限の緩和
 疫病禍で大きく変わったことに、交代選手の人数がある。
 あくまで暫定措置だが、試合間隔が短くなることによる選手の消耗を考慮して、従来の3人から5人の交代が認められた。これは結構大きな影響を与えることになった。とにかく選手層の厚いチームが圧倒的に有利となる。これだけの過密日程で5名交代となると、よほど特殊な監督でなければ、ローテーション的に選手起用を行う。そして、中心選手は休養試合にも貴重な交代要員として試合終盤に登場してくる。
 (選手層が厚いとは言えない)ベガルタサポータからすると、敵が試合終盤にフレッシュな強力なタレントを起用してくると、「う〜ん、勘弁してください」と言いたくなることが再三あった。まあ、しょうがないのですがね。
 もともと、連戦となれば物を言ってくるのが選手層なのは言うまでもない。サッカーは11人しか同時に使えないので、潤沢に選手を保有していても宝の持ち腐れとなることも多い。さらに言えば、能力は高いが出場機会に恵まれない選手が何人かいると、よほど監督がマネージメントをうまく行わないと、そこからチーム全体の調子が崩れることもあった。弱者としてはw、そこを突くこともできた。
 もっとも、この傾向は西欧では、ここ20年間先行して見てきた光景ともいえる。いわゆる西欧の金満メガクラブは、トップレベルの選手を20名以上集め、自国リーグと欧州チャンピオンズリーグにローテーション的選手起用を行ってきた。結果的に、疫病禍下での交代人数増の今回のルール変更が、Jにも類似の事態を起こした感がある。
 この交代選手数の制限が、どうなっていくかはわからないが、今後のサッカーの変化の1つの要素として注目したい。

6位 若年層の無観客試合の妥当性
 疫病禍下で気になることがある。それは若年層の大会の観戦が極端に制限され、家族ですら観戦が許されないケースが散見されることだ。ここで若年層大会と言っているのが、高校選手権県予選のように比較的メジャーな大会でも、絵に描いたような草サッカーである私が指導している少年団の大会でも、同じような状況となっている。
 大会主催者が、観戦制限をする気持ちも理解できる。万が一陽性者が出た場合、関与した人々を追跡可能とする必要がある。選手、審判、指導者、運営など試合開始に必須の人の関与を最小にすることで、試合前後の管理の手間を小さくしたいのだろう。ただでさえ、衛生管理や上記必須の人々の記録など、通常よりやることが増えるのだから。
 ただ、親御さんの観戦まで制限がかかるのはいかがだろうか。そもそも若年層のサッカーの最大のサポータは親御さん達であり、サッカーを通して子供の成長を親が楽しむと言う文化は、世界中のサッカーの景色である。もちろん、親による過干渉や、日本テレビ風の美談化には気をつけなければならないが。そして、親御さんの観戦ならば、主催者の管理の手間も極端には増えないはずだ。疫病禍がしばらく継続するにしても、善処を期待したい。
 余談ながら、ラグビーやサッカーのように肉体接触系競技でない、屋外競技の開催制限もよく理解できない。野球で感染増のリスクはほとんど感じないし、テニスなどは適切な管理さえ行えれば、感染増のリスクなど一切ないと思うのだが。

7位 フロンターレ強かった
 とにかく今シーズンのフロンターレは強かった。
 もともと、よい選手をバランスよく集めているこのクラブ。17年、18年と連覇し、昨シーズンも開幕前は優勝候補筆頭と言われていたが、調子が上がらず4位でリーグを終えていた。これは、選手層が厚くなりすぎベストメンバが固められないあたりも鍵に思えていた。さらに今シーズンについては、三苫、旗手と言った五輪代表候補を加え、どのような交通整理をするのか、鬼木監督の手腕が注目されていた。
 しかし、今シーズンのレギュレーションでは、この選手層の厚さをフルに活かし、圧倒的な強さを見せた。特に中盤は、守田、田中碧、大島、家長、脇坂、三苫と誰がベスト11に選ばれてもおかしくない布陣に、重症から復帰した中村憲剛大帝が加わる。そして、ワントップは小林悠とレアンドロ・ダミアンを併用。そして特筆すべきは、これらの名手がボールを奪われた瞬間に一斉に切り替えボール奪取に入るところ。
 この素早い攻撃から守備への切替は、相当な脅威だった。敵からすれば自陣ですら思うようにボールキープできないのも厄介だった。加えて、敵陣でこのようなデュエル合戦に巻き込まれるとボールを奪われるや否や、視野の広い田中碧や大島あたりのロングパスからの速攻にさらされるリスクも高い。攻撃面で強みを発揮する中盤選手を多く保有するチームが、組織的な攻撃から守備への切替を身に付けると、いかに強力なチームができあがるかと言うことを見事に示してくれた実例と言えよう。
 このまま中心選手の保持に成功すれば、来シーズンのACLが楽しみである。

8位 静岡学園(決勝の逆転、井田対古沼の準決勝)
 ちょうど1年前のことになるけれども、今年の高校選手権はとても面白かった。
 決勝戦は名門中の名門青森山田大静岡学園。静学が前半早々に0-2でリードされた時は、76-77年シーズンの首都圏移転大会の再来かと思ったりしたw。しかし、当時同様に個人技でヒタヒタと攻め込む個人技で逆襲に転じた静学は、当時とは全く異なるセットプレイのうまさや時折高速化する変化から、山田を押し込み3-2と逆転。終盤、ロングスローの飛び道具を繰り出した山田の猛攻をかわし、初の単独全国制覇に成功した。個人技に長けた選手を多数披露した上記決勝で敗れて以来43年、遂に井田前監督の執念が実ったのは感動的だった。
 ちなみに準決勝の静岡学園対矢板中央戦も忘れ難い。静学の変幻自在の攻撃を、矢板が組織守備で止める。終了間際、変化あるパスワークから、エースの松村優太が抜け出しPKを奪って勝ち切った。正に、井田勝通対古沼貞雄と言う戦いだった(元帝京高監督古沼氏は、矢板ベンチに入り指導を重ねていたとのこと)。昭和世代の老人には堪えられない一戦だった。

9位 五輪代表メンバ不明問題
 残念ながら疫病の影響で東京五倫は中止された。失礼延期された。21年東京五倫が開催されるかどうかは私にはわからないが。ただ、サッカー五輪代表の準備が、まったくうまく進んでいかなかったことを、ご記憶だろうか。
 19年11月に広島で行われたコロンビア戦。堂安と久保をはじめ欧州クラブの選手を冨安以外ほとんど呼んだ試合で完敗。さらに1月にタイで行われたU23選手権では、グループリーグでいきなり2連敗してトーナメント出場失敗。それも、選手に戦う気持ちが見られない残念な試合振りだった。
 予選がなく、多くの選手がJで実績を残す前に欧州に出て行ってしまうという未曾有の状況ではある。また、森保氏も、A代表監督兼任で多忙を極めているのも厳しいところだ。しかし、過程はどうあれ本大会半年前になっても、ここまでチーム作りがほとんど進んでいなかったのは残念だった。
 ただし、森保氏にとって五輪の延期は幸運だったかもしれない。ユース世代と大人の強化が分離しがちの日本サッカー界は、どうしても20歳前後の選手の成長には時間がかかる。この1シーズン、田中碧、三苫、上田らを筆頭に多くの選手が、Jでも定位置をつかむのみならず、中心選手として経験を積んだ。冨安は日本サッカー史上最高の選手への道を着々と歩んでいる。欧州に出た選手も出場機会を増やしている。手段をあやまたなければ、よいチームが作れる材料は十二分にそろっている。

10位 よく理解できないWEリーグ構想
 女子のプロサッカーリーグ構想が発表された。しかし、理解に苦しむことが多い。
 そもそも、女子サッカーの集客にとって最大の競合は男子サッカーがあり、観客動員が容易でないのは言うまでもない。女子サッカーの最強国のUSAでは、独自の観客動員に成功しているとの報道もみかけたこともあるが、それらの工夫を織り込んだリーグ戦運営が準備されているという情報は聞いたことがない。どのような方策でプロフェッショナリズムを導入した収入を得ようとするのだろうか。
 また、秋から春にかけて試合をすると言うが正気だろうか。真冬の厳寒期の観戦が相当な障害になることは、既に議論され尽くされているのだが。
 もう1点気になっていることがある。女子日本代表の試合振りから、過去の颯爽とした情熱をあまり感じられなくなっていることだ。世界一となった前後約10年間、女子代表の戦いぶりからは、常に心揺さぶられる「何か」を感じることができた。具体的に言えば、勝利を渇望した知性の発揮とでも言おうか。しかし、19年のワールドカップは、五輪向けに無理な若手起用を行ったためか、そのような「何か」を感じることができなかった。今日の女子代表の礎を築いた立役者である高倉麻子監督への厳しい批判は、つらいものがあるのだが。今の女子代表が、急ごしらえのプロリーグの支えとなれるだろうか。一方で、先日の皇后杯決勝のベレーザ対浦和や準々決勝のベガルタ対セレッソのような、技巧的、知的、情熱的な試合を見ることができるのだから、心配はいらないのかもしれないけれど。
 余談ながら。そもそも女子サッカーを男子と同じレギュレーションでやることにも疑問がある。筋力の関係でゴールキーパーの高さや、角度のあるキックの強さ、キック前のバックスイングの必要性など、男子との肉体能力の差はいかんともしがたい。ゴールの大きさ(特に高さ)や、人数や、ピッチの広さを工夫すれば、娯楽としてはもちろん、プレイする人々のおもしろさは一層広がるように思うのだが。もう、ここまで男子と同じレギュレーションが定着してしまった今となっては、もうどうしようもないのかもしれないが、

番外 中村憲剛と佐藤寿人引退
 別に作文します。
 1つだけ。この2人は、Jリーグでの輝かしい実績の割に、日本代表ではその実力をフルに発揮する機会を得られなかった。2人のプレイを存分に堪能することはできたが、それがちょっと悔しい。
posted by 武藤文雄 at 23:25| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年ベストイレブン

 疫病禍下で、日本代表の活動も極端に低調。そのためもあり、選考するベストイレブンは例年とは随分異なるものとなった。まあ、それはそれで、今年の記録になるだろう。

GK 東口順昭
 ガンバのJ2位に貢献。とにかく、破りづらいゴールキーパ。敵がシュートするギリギリまで我慢し、適格な判断で対応する鮮やかさ。30代半ばとなり、安定感は増々磨きがかかっているのではないか。代表のゴールキーパはさらに年上の川島がいるが、東口の復帰も議論されてよいのではないか。

DF 山根視来
 ベルマーレの超攻撃的CBの山根が、フロンターレのサイドバックとして格段の輝きを見せてくれた。ベルマーレでCB経験により、敵と正対した際の守備能力を高めることに成功。さらに中央から無理なく攻め上がる経験を活かしたことから、サイドバックとしての攻撃力も格段になった。トップレベルのサイドバック育成の1つの指標となるかもしれない。このままの勢いで、日本代表での活躍も期待したい。

DF 谷口彰悟
 フロンターレの強さの1つに、敵が中盤のボール保持を外し強引な縦攻撃を狙ってきた際に、しっかりと谷口がそれを押さえ切ってしまうことがある。単純なクロスや、精度の低いロングボールは、まったく谷口には通用しない。また、落ち着いた前線のフィードも中々のもの。もう1回代表で見てみたいプレイヤ。

DF 冨安健洋
 着々とセリエAの中堅どころで実績を積み、西欧のメガクラブの中核を目指す。順調な成長ぶりだ。

DF 山本脩斗
 若い永戸勝也と杉岡大暉の加入もあり、今シーズン定位置を確保できていなかった山本の選考は、ご本人に失礼かもしれない。しかし、リーグ終盤、若い二人が欠場した際に登場した山本のプレイはすばらしかった。落ち着いた守備、適格な攻撃時の選択。この難しいシーズンで終盤まで体調を整え、終盤チームを支えた山本にプロフェッショナルを見た。

MF 守田英正
 最終ラインに下がった組み立て、技巧派ぞろいの中盤選手がボールを奪われた瞬間の強烈な守備能力、時に見せる前線への迫力ある進出。今シーズンのMVPと言ってよいだろう。2年前のアジアカップ前に負傷しなければ、そのまま代表の中心選手となり、日本にトッププレイヤになっていたかもしれない。ポルトガルの辺地の小クラブへの移籍が噂されるが、代表への定着に最善の道を選択してほしい。

MF 遠藤航
 先日の代表シーズンで圧倒的な存在感を見せた。シュツットガルトでも中心選手として活躍。今の日本代表に不可欠の存在となった。ベルマーレ時代からの知性と献身が、いよいよ本格化したと言うことか。しばらく日本代表の中盤は遠藤抜きで語れなくなるだろう。

MF 田中碧
 正確な技巧と、適切なプレイ選択が、いよいよ充実してきた。フロンターレ相手となると、敵はあれこれ守備を工夫してくるが、田中が正確に長短のパスを操り、敵守備ラインを上下させることで、大島と家長にスペースを提供できる。まずは一層技術の精度を極め、五輪代表の大黒柱として、世界を驚かせるのが国際キャリアのスタートとなるか。

FW 伊東純也
 中堅どころだが、着々と欧州でも代表でも地位を築いている。感心するのは、代表で起用される度に特長をしっかりと活かすプレイを見せてくれること。代表の右サイドの攻撃ポジションは、堂安、久保と言ったより若いライバルが控えるが、タイプの異なる伊東は彼らと異なる持ち味があり、ワールドカップでも貴重な存在になり得るはず。

FW 上田綺世
 日本人としては体格にも恵まれているが、本質的には技巧派、いやタイミングで勝負するストライカ。また、スペースを作ったり活用するのにも長けている。守備のタスクや戦術的なボールの受けをしっかりこなすのは当然だが、攻撃時にはチャンスメークはあまり関与せずにフィニッシュに専念すれば、もっともっと得点できるようになるのではないか。先日亡くなった、イタリアの名ストライカ、パオロ・ロッシを目指してほしい、古いか、だったら、フィリッポ・インザーギ。

FW 三苫薫
 フロンターレに入り大化けした。今は大島や家長や田中碧に「使われる選手」としての地位を確立してほしい。そして、20代後半になり、周囲が見えるようになった時に、本当の中村憲剛の後継者としての道を歩み始められるか。余談ながら、あのすりぬけるドリブルに、70年代後半フランスで活躍したドミニク・ロシュトーを思い出したのは私だけか(こちらも古いが、他に思いつかないw)。
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2020年10月24日

悲しい事件

 あまりに悲しい事件だ。

 本稿では、この悲しい事件について、会社としてのベガルタ仙台の活動が妥当だったかどうかを、サポータの立場から論評したい。
 第一報を聞いた時(20日昼頃)、正直何が何だか、まったく理解できなかった。関連の文章、クラブの公式発表を読み、自分の知見と組み合わせても整合がとれなかった。その後(20日夜)、少しずつ信頼できる情報源を調べ、うっすら状況がつかめてきた。そして、昨日(21日)、ベガルタが公表した記者会見議事録を読み、自分なりに全貌が理解できた。
 まず結論から申し上げる。ベガルタは、この事案について何も間違ったことはしていない、と、私は判断している。

 加えて語っておく。
 ベガルタの渡辺取締役(当該記者会見にも、事実上の主役として登場)は、高校大学のサッカー部の先輩だ。ただただ楽しかった大学サッカー部時代、苦楽を共にし、心底お世話になった。渡辺さんはセンタバック。出足の鋭さを活かし、知性の限りを尽くして敵エースに喰らいつくプレイは忘れられない。大事な試合にサイドバックとして抜擢され、渡辺さんに怒鳴られながら90分間守備の位置取りを修正し続けし、勝利に貢献したのは飛び切り甘美な記憶だ。渡辺さんが今の立場になられた後、じっくり話をする機会もあった。かなり勝手なことを語らせていただいた。過去の私の文章についてもご存じだ。先週14日、本当に久しぶりにユアテック詣でをした際、寄付金募集を行っていた渡辺さんに挨拶することもできた。しかし、この事件発覚後渡辺さんとはコンタクトをとっていない。
 当該記者会見にも出席しているサッカーライターの板垣晴朗氏は親しい友人だ。そして、私が最も信頼するライターの1人だ。当該記者会見については、いくつか板垣さんから詳細情報をいただいた。そのような意味では、私は一般の方々よりは多くの情報を持っている。
 また、(Jリーグ開幕より前からの)30年来のサッカー狂でもある弁護士の友人(もちろん今回の事案にはまったく関係していない)に、本件についてはいくつか助言をもらった。
 以上をクドクド説明するのは、一般に公開されている情報以外に私が持っている情報を明示しておいた方がよいと考えたからだ。

 愛するクラブのスタア選手が極めて残念な行為をしたことが、何より悲しい。とにかく悲しい。表現しようもないが悲しい。
 生業にはしていないが、それなりにサッカーの世界で生きてきた。現場がきれい事だけでないことは熟知しているつもりだ。不器用な選手が起こしたトラブルは枚挙に暇ない。ただ、今回はその中でも最悪に近いものだ。
 上記記者会見議事録を読んだ上で私が理解した状況は単純なものだ。残念な行為をした選手がトラブルについてベガルタに虚偽報告をした。一方で、被害者の方は示談に納得していなかった。
 トラブルの対応は当該選手の弁護士(ほぼ間違いなく代理人会社の弁護士だろう)と、被害者(報道によると芸能事務所に所属されていたとのこと、したがい示談は当該事務所の弁護士が対応したと推測される、ただし信頼できる情報源がないので断定は危険かもしれない、もしそのような背景がない個人の方だった大変失礼なことを語っていることになる)間で行われた。ベガルタは、当該選手の弁護士から「示談成立」と伝えられた。このやり方においては、ベガルタは、被害者の方が納得していないことを知りようがない。

 とは言え。100%状況を理解したわけではないが、ベガルタの本件への対応の疑問を列記してみる。ただ、読んでいただければわかると思うが、私は本件についてベガルタがとってきた施策に対し細かに文句を言っているものの、総論としては正しいと思っている。


(1)被害者の方との関係
 本件で一番重要なことは被害者の方の回復に尽きる。今からでもベガルタやJリーグ当局がそのお手伝いができるならば、できる限りのことをしてほしい。

 とは言え、当該記者会見を読んで一番気になったのが、被害者の方と当該選手の示談について、明快な説明がないことだ。
 上記した通り、報道によると被害者の方は芸能事務所に所属していた模様。だとしたら、示談は本人たちではなく、代理人(それぞれの弁護士)同士で行われたことになる。けれども、ベガルタの発表からはその旨が読み取れない。
 そのため、代理人会社の弁護士と被害者の方が直接対峙して、示談交渉を行ったようにも読めてしまうのだ。もし、そうだとしたら被害者の方は大変お気の毒なことになる。ベガルタは、そのあたりを正確に説明する必要があるのではないか。
 もちろん、示談の条件にそのあたりの不提示があるとしたらどうしようもない。もし、そうだとしても、可能な限り正確で具体的な情報提示は必要だと思うのだが。

(2) 議事録提示の遅さ
 10/20(火)朝に当該選手の処分を含めたリリースを流し、同日午後に記者会見実施。その後、議事録公開は10/22(木)午後。これはあまりに遅い。その丸2日間に、あいまいな情報を基礎に根拠ない報道が出回ることになった。危機管理としては、結果的に「お粗末」と言うことになってしまった。
 事態発覚後、当該議事録で語られたような情報を速やかに提示できていれば、ここまで状況はこじれなかっただろう。もっと早く、情報開示はできなかったものか。
 しかし、現状のベガルタの事務処理能力を考えれば精一杯だったのだろう。文句を言うのは簡単だ。けれども、ベガルタは、小さな会社なのだ。むしろ、事態発覚後に、ここまでスピーディにリリース→記者会見→議事録、と進めてきたのは大したものだと思う。
 しかし、非常事態だったのだ、このスピード感では遅かったのだ。例えば、思い付きだが、ベガルタには仙台を本社とする多数の出資団体がある。この非常事態、それらの協力を求めることはできなかったのだろうか。

(3) 弁護士の使い方 
 当該議事録を読んで気になるのは、記者会見にベガルタの顧問弁護士が同席していないことだ。 
 話がややこしいが、本事案には3者の弁護士が登場するはずだ。ベガルタの顧問弁護士、当該選手の弁護士(おそらく当該選手の代理人の所属会社)、被害者の方の弁護士(上記した通り、おそらく存在してたのだと推測している)だ。議事録を読んでいても、いずれの弁護士の発言なのか、わかりづらいところが多々ある。
 それだけではない。本件については、任意同行、逮捕、釈放など、法律用語が並ぶことになったが、それについて法律面で専門とは思えない記者の方々とベガルタの経営陣が語り合うのは、あまり生産性が高いものとはとても思えない。補足する弁護士が同席していれば、用語解釈の混乱を的確にさばいてくれたと思うのだが。

 まあ現実を語ると見も蓋もないのだろう。
 (2)で述べた議事録整備にせよ、(3)で述べた顧問弁護士の同席にせよ、少ないスタッフでやりくりするから、そこまで対応できないと言うこと、要は今のベガルタにはカネが足りないと言うことだろう。

(4)Jリーグ当局との関連
 もう一つ気になるのはJリーグ当局との関連だ。
 当該記者会見を読んでいると、「ベガルタは適切なタイミングでJ当局に連絡した」と言う事項が、一種の免罪符になってしまっている印象を受けた。しかし、本当にそれだけでよかったのだろうか。
 なぜ、このようなことを語るかと言うと、本件に限らずJ当局の役割とは何なのか、私にはわからなくなっているのだ。今回のケースで言えば、上記してきた通り、ベガルタは適切なタイミングでJ当局に本件を連絡している。10月20日の時点で一部報道があった時点で、一部のメディアが「ベガルタの隠蔽」的な(今思えば)誤った情報をかなりの勢いで流すことになった。けれども、22日の時点では当該議事録の公表もあり、そのような情報は間違いだったと確認されたはずだ。また8月の時点でベガルタはJ当局に本件を連絡していた。
 だったら、それらの誤情報の是正を、J当局も語ってはくれないのか。「本件についてベガルタの対応に落ち度はなかった」とリリースしてくれるだけもよい。いや、議事録を公表するのに四苦八苦しているベガルタに対し、スタッフを一時貸してくれるだけでも随分助かったと思うのだが。
 J当局に、そのような期待を持つことそのものが間違っているのだろうか。もし間違っているならば、このような不運な事案時の「J当局の役割」について、誰か教えてください。何か最近のJ当局には「仲間としての全体発展」ではなく「上位権威者としての君臨」、「不適切な行為の場合の罰則提示者」を感じるのは私だけだろうか。


 ちょっと余談。
 今回の一連の話を聞いていると、個人事業主としての選手の権利がかなり強いもので、選手とクラブが相対した際に、決してクラブの意向ばかりが重視されないことが確認できた。これはよいことだと思う。私たちに歓喜を与えてくれる選手たちが。クラブのエゴに左右されない状態になっているのだから。
 言い換えれば、所属クラブと独立した形態で、選手の権利がかなり高いレベルで守られていると言うことなのだろう。Jが開幕して、今年で28年。これまでの蓄積で代理人制度が機能し、よい意味で選手がクラブと対等に渡り合えている現状、これは素直に喜びたい。たとえ、それが今回の事案では仇になってしまったとしても。

 以上、ちまちまとベガルタに対して文句を言ってきた。粗探しである。しかし、これら粗探しを含めても、今回の不運な事案について、ベガルタは適切な活動をしてきてくれたと思う。
 安心した。

 そして、今回の議事録で嬉しかったことがある。それは、「当該選手が過去にもDV事案でトラブルを起こしていたがが今回の判断にそれを加味しなかったのか」との問いに対する、渡辺取締役が語った以下の意見だ。
2度目という事を私たちが常に念頭に置かなければならないのか。「この人は犯罪者であったから、また犯罪を犯すのか」というように見ながら暮らす社会がよろしいのかという事です。2 度目という事で、通常より重い処罰を下すということは選択しませんでした。

 まったくその通りだと思う。私はそのようではない社会で生きていきたい。そして、そのようではない社会を作っていきたい。
 今回ベガルタは正しかったのだ。

 悲しい事件ではあった。しかし、繰り返すがベガルタは正しかった。私の愛するクラブは正しい判断を行ってくれたのだ。

 今私ができることは1つだけだ。
 今日のグランパス戦、勝ち点3を目指す私たちの選手たちを必死に応援する事。生観戦は叶わない以上、DAZN経由で必死に念を送ることだ。
 必ずグランパスに勝つのだ。

 最後に。
 道渕諒平さん。
 過ちは誰にでもあります。それが複数回となると残念ですが、それでも人生は長いのです。挽回の機会は訪れます。あなたは、天分に恵まれ、果てしない努力を重ねることでたどりつける場所に到達することができた稀有の人なのです。その地位を失ってしまったのは残念ですが、あなたはそこまでの努力を積むことができた人なのです。
 お願いです。立ち直ってください。あれだけの努力ができるあなたです、必ずや立ち直れるはずです。
 あの颯爽とした突破、献身的な守備、美しい弾道のミドルシュート。思い出はいくつもあります。それらの思い出、私は小さな胸の痛みと共に忘れません。
 ありがとう、さようなら。
posted by 武藤文雄 at 02:09| Comment(6) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月04日

声を出さずにサッカーを愉しめるか

 まあ60歳となり、改めてこれまでの人生を実り豊かにしてくれたサッカーに感謝し、これまで以上にサッカーを愉しみたいと考えた次第。

 とは言え、最近真剣に悩んでいるのです。Covid-19下の世界で、どのようにしてサッカーを愉しんだらよいのかと。さらにその悩みを具体的に説明すれば「いつになったら、絶叫してサッカー観戦できるのだろうか」と言うことになる。

 7月にJリーグが再開して以降、私は1試合も生観戦していない。正確に言えば、生観戦は辞退してきた。理由は簡単だ。「Jリーグ 新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン_9月24日更新版」を守る自信がまったくないからだ。ガイドライン曰く
禁止される行為は以下の通りです
 声を出す応援(禁止理由:飛沫感染につながるため)
 例:指笛・チャント・ブーイング
 例:トラメガ・メガホン・トランペットなど道具・楽器を使うことも当面不可

 そう、私は声を出さずにサッカーを観戦する自信がないのだ。 上記禁止事項には「指笛・チャント・ブーイング」と記載されており、「野次」はない。だが世論を伺うに、Covid-19下の世界下でのJリーグは野次を飛ばすのは歓迎されない模様だ。
 まあね、Covid-19云々とは別問題だが、野次と言うのは今日のサッカー界ではあまり有効ではない。数千人以上入っている競技場で、いくら辛辣な野次を飛ばしても、ピッチ上の選手や監督や審判に聞こえる可能性は低いのだから。でも、サッカーを見ていると、何かを吠えたくなるではないですか。卑怯なプレイをした相手選手、納得できない笛や旗を操った審判、ただの八つ当たりだが納得いかない協会やJリーグ当局への批判。サッカー観戦と言う究極の至福を味わいながら、これらの野次を飛ばすのはとても幸せなことなのだ。たとえ、先方には聞こえなくとも。
 もっともそうは言っても、相手選手や審判や当局批判、これらは我慢できる。けれども、絶対自分で我慢する自信がないことがある。それは、味方への賛辞だ。もし眼前で、ベガルタの選手や日本代表選手が、知性や妙技で素晴らしいプレイを見せてくれた時。私は絶叫し称えたい。そして、その絶叫を我慢する自信はない。
 なので、関東在住の私は、7月復活後のJリーグ敵地でのベガルタ観戦を控えてきた。ベガルタが敵地で戦う際に、ベガルタの好プレイに快哉を叫ぶわけにはいかないから。

 で。
 10月14日のユアテックでの横浜FC戦、諸事案を片付けるため、当日の晩私は仙台にいる。久しぶりの生観戦の絶好機だ。チケット購入手段など、複雑怪奇でよくわからないが、何とかユアテックにたどりつきたいと思っている。たとえ、ベガルタ選手への絶賛にせよ、できる限り絶叫は自粛したいとは思っている。できる限り。
posted by 武藤文雄 at 22:12| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月07日

再開戦の快勝

 Jリーグが再開した。
 ベガルタは開始3分の幸運な得点を守り切り、ベルマーレに敵地で1-0での勝利。結果もよかったが、内容も上々だった。木山新監督に変わった今シーズン、中断前は、ルヴァンの敵地レッズ戦、リーグ初戦のホームグランパス戦、いずれも芳しい試合内容ではなかっただけに、まずはめでたしめでたしである。
 
 勝負を分けたのは開始3分間に代表される右サイドの攻防だった(以降、左右はすべてベガルタから見て)。
 開始早々、ベルマーレは、左足のクロスが魅力的な売り出し中のサイドバック鈴木冬一がかなり高い位置取り。落ち着いたボールキープからの崩しから右サイドのCKを奪われる。そこからショートコーナ絡みで強シュートを打たれるが、ユース出身で抜擢された18歳のGK小畑裕馬が冷静にさばく。
 その直後、ベルマーレGK富井大樹の甘いフィードを関口訓充がカットし、右オープンに展開。ジャーメイン良が、前掛かりの鈴木と(昨シーズンまでベガルタに所属していた)大岩一貴の間隙を付いて突破。余裕をもって上げたクロスが、よい方向に飛び逆サイドのゴールネットを揺らした。強風が幸いしたのだろうか。ベガルタにとって幸運と言ってしまえばそれまでだが。

 とは言え、敵地で先制したベガルタは、余裕をもって試合を進めることができた。3DFをとるベルマーレに対して、右のジャーメイン、左の欧州帰りの西村拓真の両翼が大外に開いてボールを受けることで、幾度も好機を作る。一方で、ベルマーレとした自慢の両サイドMFの鈴木と主将を務める岡本拓也を前に進出させてペースをつかみたいところ。しかし、早々に先制して余裕が出たこともあり、ベガルタはボールを奪われるや否や、アンカーの椎橋慧也が的確に位置取りを修正し、ベルマーレにペースを渡さない。それでも、20分過ぎに鈴木が左サイドから好クロスを上げ、タリクにヘディングに合わされるが、幸運にもボールは枠に飛ばなかった。タリクはノルウェー代表主将経験もあると言うストライカ、ベガルタDFの間に飛び込む感覚は中々のものがあった。
 その後もベガルタは、ジャーメインが鈴木の後方を再三突いて好機を演出。ジャーメインは、ボールを受ける位置取りとトラップの方向が格段に上達した感がある。従来は敵DFに密着されると収めきれない欠点があったが、いわゆるアウトサイドFWに起用されれば、相当やれそう。もちろん、この日は対面の鈴木が攻撃ばかり考えて、後方への備えが甘かったことは割り引かなければならないだろうし、4DFのチームに対してどこまでやれるか、まだまだこれからなのだが。ちなみにジャーメインがサッカーを始めたのは、この日の会場BMWスタジアム近隣の厚木市の小さな少年団。少年時の指導者達がジャーメインの晴れ姿を生で見ることができなかったのは、何とも残念だったが。
 一方でベルマーレ監督浮嶋氏は、55分ついに鈴木をあきらめ交代。冒頭に述べたように、この右サイドの攻防が勝敗を分けたと言うことになる。
 その後の時間帯も、椎橋の安定した中盤守備が奏功、吉野恭平と平岡康裕のCBがベルマーレの単調な攻撃をしっかりとはね返しシマオ・マテの負傷離脱の不安を払拭。さらにユース出身で抜擢されたGK小畑祐馬が安定した守備と球出しを披露。最少得点差の1-0ではあったが、ベガルタとしては快勝と言ってよい内容だった。

 何より、椎橋がアンカーで、完璧に近いプレイを見せたのが嬉しい。椎橋は、一昨シーズン定位置を確保し天皇杯決勝進出貢献。昨シーズンは完全な中心選手と期待されながら、序盤の負傷やシーズン半ばの軽率な退場劇などがあり、シーズンのほとんどを控えとして過ごした。開幕戦もスタメンから外れ心配していたのだが、この日はすばらしかった。五輪代表のライバルとも言うべきベルマーレの斉藤未月を圧倒できたのも重要。元々五輪代表は中盤後方の有力選手の多くが伸び悩んでおり、椎橋がこのレベルのプレイを継続できれば、大いに期待できる。
 いわゆるCFタイプと言われていた新外国人アレクサンドレ・ゲデス。後半から起用され、いわゆるトップ下で起用され、守備のタスクをキッチリとこなしながら、上々の球さばきを見せてくれた。この新外国人選手を含め、すべての選手が90分間組織的な守備を演じ切ったのはすばらしかった。
 唯一の不安は、中盤で見事なパス展開を見せ主将を務めた松下佳貴が、後半半ば過ぎに複数回自陣でミスパスからショートカウンタのピンチを招いたことか。このあたりは、いわゆる試合勘もあろうし、やむを得ないこともあるだろう。ゲデスやこの日ベンチ入りしなかった道渕諒平、佐々木匠の2人、さらに長期離脱中のイサック・クエンカを含め、今後どのような併用がなされるのか期待したい。
 また、シーズン当初から期待されていた新外国人パラの体調が整わず、急遽柳貴博を補強した左DF。ここには、いわゆる攻撃的アウトサイドのドリブラ石原崇兆が抜擢され上々のプレイを見せてくれた。終盤守備固めに起用された飯尾竜太郎を含め、4人による定位置争いも楽しみとなる。

 考えてみれば、4か月の長きにわたる中断期間だった。
 トレーニングもままならない中、木山新監督のやり方が各選手に徹底され、渡邉前監督時代とは異なるやり方がほぼ定着した快勝は、本当に嬉しい。豊富な攻撃陣がそれぞれの特長を活かしながら、忠実な組織守備を見せてくれた。新監督の手腕への期待も、ますます高まろうと言うもの。
 COVID-19禍の中、クラブの経営状態は相当厳しいものがあろうが、再開戦で、現場がこれだけすばらしい質のサッカーで結果を出してくれたことを、まずは素直に喜びたい。
posted by 武藤文雄 at 00:05| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月26日

サガン鳥栖の経営危機問題

 サガン鳥栖の昨年度の経営情報が公開されたが、衝撃的な赤字額だ。このままでは、サガン鳥栖がなくなってしまうのではないか。covid-19で試合が行えず、未曾有の危機にあるJリーグにとっては、さらなる頭痛が加わったことになる。極めて深刻な事態だ。

 公開されている「経営情報」は、おおよそ昨シーズンの損益計算書と推定した。26億円の売上に対して、支出が46億円で約20億円の赤字と言うことになる。この報道によると、今シーズンは人件費を約24.3億円から約11.6億円に圧縮したと言うが、大幅な赤字を垂れ流しているのには変わりない。また、同じ報道によると、債務超過には至っていないとのことだが、純資産は約0.2億円で単年赤字総額の約1/100であり、これは極めて債務超過に近いと言うことだ。そもそも、負債総額はいったいいかほどのなのだろうか。
 貸借対照表も資金繰表も公開されていないので、即断はできないが、経営継続は相当厳しいとしか言いようがない。そうなると、最も重要なのは、短期的な資金投入と言うことになるが、この赤字体質に加え、再開の目途が中々立たないJリーグなのだ。赤字の見通しの上に計画通りの売り上げも立たないリスク下で、快く融資をする金融機関があるとは思えない。
 そうなると、Jリーグ当局からの支援が必要と言うことになる。けれども、Jリーグ当局は、既にcovid-19で各クラブがダメージを受けており、それらのクラブの経営を支えること手一杯のはずだ。Jリーグを合理的に再開させ、経営規模の小さなクラブの経営破綻(特にキャッシュ不足)を防ぎ、関係者(選手や職員)の収入を維持するのだけでも、未曾有の難題なのだ。健全な経営のクラブだって危機的状況なのだ、まずは彼らの救済が優先されるのが常識と言うものだろう。
 さらに言えばこの未曾有の難題の被害を最小限にすることに、J当局の事務方のエネルギーは相当費やされているはずだ。それに加えて、サガン鳥栖の経営破綻を防ぐ手だてを検討する余裕があるのだろうか。

 サガン鳥栖の経営陣も、何か腹案はあったのかもしれない。順調にJの試合が行われれば、新規のスポンサがつき赤字幅を圧縮できる目鼻があったのかもしれない。しかし、残念ながらその道は絶たれてしまったのだろう。
 サッカークラブが赤字を減らす最も有効な手段は、選手の売却である。そうすれば、支出の最大費目である人件費を減らすことができる。しかし、リーグ戦が中断している今、たとえJ当局が移籍を手伝う手立てを講じても、今から短期的な人件費を上げる意思決定をするクラブは少ないだろう。
 キャッシュが足りなくなれば、以前とは同じ条件で企業は活動を継続できない。成り行きで行けば、我々は大切な仲間を失うギリギリのところにいるのだ。何とかしたい、何とかしたいのだが。

 打ち手が限定される中、まずやるべきことは貸借対照表と資金繰りの明確化だろう。その上で、J当局でも関係者でもよいから、より小規模なクラブも納得可能なサガン鳥栖に対する救済案を作れるか。
 今さらの愚痴であるが、ここまでの赤字幅であれば昨シーズン終了時には、ある程度明らかだったはずだ。せめて、この危機の公開がもっと早ければ、より穏当な打ち手があったように思えてならない。
 まずは、一層の情報開示、それに尽きる。
 フリューゲルスの消滅から20年以上の月日が経った。あの時の友の涙など、もう2度と見たくないのだ。
posted by 武藤文雄 at 17:41| Comment(4) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月08日

大野忍引退。


 もう先月の話となるが、大野忍の引退が報道された。
 女子選手では、一番好きな選手だった。男女含めて、日本サッカー界が育んだ最高の知性派選手と呼んでも過言ではないと思っている。

 元々、大野は格段の得点力を誇る純正のストライカだった。技巧も確かだが、何よりすばらしいのは、その狡猾な位置取りと駆け引きの巧みさだった。
 ところが、当時の代表監督佐々木則夫氏は、大野を中盤に起用することが多かった。中盤に起用された大野は、一番肝心な敵ゴール前で息切れし、再三決定機を外すことが多かった。あの2011年初戦でニュージーランドを振り切った試合後に、私は佐々木氏の大野の中盤起用に疑問を呈した。
そう言う意味で鍵を握るのは、大野だと思う。大野は、開始早々敵陣でボールを奪うや、美しいロブのパスで永里の得点をアシストしたのは見事だった。けれども、その後幾度も好機をつかみながら、ことごとくシュートを枠に飛ばすの失敗。これは、小柄で必ずしもフィジカルに恵まれているとは言えない(本来最前線でプレイする)大野が、相当後方から疾走する事で最後のフィニッシュまで体力が残っていないと言う事だと思う。
 しかし、私の視点はあまりに狭く、佐々木氏は正しかった。あの決勝戦の前半、アメリカ合衆国が澤穂希と阪口夢穂のボランチ2人に強烈なブレスをかけてきたことで、日本は完全に押し込まれる。しかし、大野が強引かつコース取りが絶妙なドリブルで、幾度も単身攻め込むことで、日本は苦境を脱した。
ここで苦境を救ったのは大野だった。他の中盤の3人が、合衆国のプレスに押し込まれる中、忠実に守備をこなしつつ、幾度も前進し好機を演出した。判断のよい素早い前進と、正確なファーストタッチと、加速のよいドリブルを駆使して。安藤に通したスルーパスが、もう数10センチ内側に通っていたら、日本は前半に先制できるところだった。もちろん、合衆国の守備陣の網が、その数10センチを許してくれなかったのだが。この大野の奮闘があったからこそ、合衆国の序盤の猛攻は、30分過ぎにとだえた。最も得点が期待できる大野の中盤起用には再三疑問を述べてきたが、佐々木監督の慧眼に脱帽。これはワールドカップの決勝戦、大野のプレイに78年のアルディレス、94年のジーニョを思い出した。
 サッカーの常識では、点をとれる選手に「いかに点をとらせるか」がメインの課題となる。しかも、中盤には澤穂希と宮間あやと言う飛び切りのタレントがいたのだ。しかし、佐々木氏はこの2人を抱えながらも、格段のストライカだった大野の知性と言う格段の能力を、得点以外の機能に活用し、世界一を我々に提供してくれた。それにしても、あの大野の単身ドリブル。今でも目をつぶれば思い出がよみがえってくる。
 こうなってくると、大野の知性を楽しむのは最高だ。例えば、世界制覇直後の皇后杯決勝。この試合の後半、大野が几帳面に味方守備ラインの後方を埋めるのを見ているのだけで、最高だった。

 世界一を獲得したのだ。そして、大野のプレイは見るのは、本当に楽しかったのだ。澤穂希と言う完璧なサッカー選手、宮間あやと言う究極の技巧派、この2人と同時代に、ここまで知性に優れたタレントが出た幸運に、感謝すべきなのだろう。
 冒頭にも述べたが、男子選手を含め、ここまで知性を感じさせてくれる選手は、そうはいない。いや、男子選手の場合は、肉体的な強さ、格段の技巧、屈しない精神力など、別な要素を知性でまとめることとなる。大野のように、その知性が圧倒的に前面に出るタレントが登場することそのものが、女子サッカーの特徴なのかもしれないな。
 でも、ほんのちょっと思うよね。世界のトップレベルとなった日本代表で、ストライカとしての大野忍が丁々発止するのを見たかったかなと。そう言う叶わなかった思いを考えるのがまた楽しい。

 大野は指導者の道を志し、INACの首都圏の育成世代の指導者からキャリアを積んでいくとのことだ。あれだけの知性的なプレイを見せてくれた選手だ。格段の指導者になってくれることを期待したい。それもトップレベルの選手を、さらに高めることのできる指導者になってほしい。たとえば、堂安律や相馬勇紀の域に達した選手を、さらにもう一段、いや二段、三段さらに高めるような指導者に。
 あの知性あふれるプレイを思い起こせば、ついついそのような期待を抱いてしまうのは、私だけだろうか。
posted by 武藤文雄 at 00:30| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月08日

名手たちとの別れ@2019-20

 毎年、毎年のことでもあるけれど。このオフにも、ベガルタに貢献してきてくれた幾多の名手たちが仙台を去った。まとめて講釈を垂れ、惜別の辞としたい。


 石原直樹は、2017年シーズンにベガルタに加入した。加入当時既に32歳、前所属のレッズでは負傷のため僅かなプレイにとどまっていたこともあり、どこまで活躍してくれるのか不安もあった。今思えば、そのような不安を感じることそのものが、大変失礼だったと深く反省しています。

 石原は、ベガルタに加わるや否や、完璧なエースストライカとして活躍してくれた。持ち前のボールの受けのよさと、巧みな前進。もちろん、シュートのうまさは往時と変わらない。肝心な場面できっちり敵ゴールネットを揺らしてくれた。

 さらには、豊富な経験からくる老獪な判断も格段になっていた。敵がボールポゼッションしている時間帯、マークする敵DFと駆け引きしながら、したたかに自陣に引き、ボールを奪ったベガルタDFからのフィードを丁寧に受け、着実にマイボールに。ファーストディフェンスの巧みさと併せ、相手がボールを保持している時のプレイが魅力的になっていたのだ。冗談抜きに、1年前のアジアカップ、大迫勇也のバックアップに石原直樹を推薦したい思いがあったくらいだ。

 ブランメル時代を含めたベガルタの歴代のFWを考えてみても、チームへの貢献と言う意味では、石原は最高クラスだったのではないか。あのマルコス、ウイルソン、赤嶺真吾と、同等に評されると言っても過言ではなかろう。

 19年シーズンは負傷がちで出場機会が減ったこともあり、退団を迎えた形。ベガルタから見れば35歳と言う年齢も、長期契約は難しいと判断し、石原側と話がまとまらなかった可能性もあろう。ただ、負傷が癒えた終盤戦、起用されれば当然のように、最前線でいやらしいキープで攻撃に変化をつけ、ベガルタに貢献してくれた。昨シーズンの終盤、幾度か愚痴を語ったこともあるが、渡邉晋前監督には「もう少し大事なところで、石原を使って欲しかったな」との思いもあった。まあ、このあたりの隔靴掻痒が、サポータ冥利に尽きるのですが。

 石原はJデビューを果たした古巣のベルマーレに復帰する。35歳になったとは言え知性あふれるプレイはまだまだ健在。ベガルタから離れることは残念だが、石原のプレイを楽しむ機会が継続することを喜びたい。


 大岩一貴は、4シーズンに渡りベガルタで活躍、18年シーズンからは主将も務め、天皇杯決勝進出の立役者となった。落ち着いたカバーリング、単純にはね返す強さ、リーダシップ、中央もサイドもこなせる多様性、持ち上がりもフィードも上々の攻撃など、頼りになるDFだった。

 ただ、俊敏で加減速のよいFWに対する応対が極端に苦手で、中島翔也、武藤雄樹、仲川輝人などと相対すると、見事なくらい簡単に抜かれるのがご愛敬でもあった。

 19年シーズンは、当然のように中心選手として期待されたが、開幕直後より1対1の弱さが目立つようになり、定位置を失い期待にこたえられず、チームを去ることとなった。

 天皇杯決勝進出に、直接的な貢献したことから、他の金満クラブから強奪の恐れもあるのではないかと危惧し、早々に契約延長が報道され安堵したのは、ほんの1年ちょっと前のことだ。まだ30歳でもあり老け込む年齢でもないはず。新天地のベルマーレで適切なトレーニングを積むことでの再起を期待したい。


 ドイツ、韓国を含む幾多のクラブを転々としてきた阿部拓馬。2シーズンにわたりベガルタに在籍。独特のボールを縦横に大きく動かすドリブルで、貴重な控えFWとして活躍してくれた。特にDFに疲労が出てくる終盤での交代出場は有効だった。

 19年シーズン後期の名古屋戦、1-0の状況下で交代出場、直後にしたたかにPKを獲得してくれた場面は忘れ難い。

 あの天皇杯決勝、「阿部のミドルシュートが、もう少しよいコースに飛んでくれていれば」と、今でも嘆息したくなる。

 19年シーズンは負傷がちで、若手のジャーメインの成長もあり、出場機会が限定され、琉球への移籍が発表された。32歳となったが、負傷さえなければ、J2クラブでは完全な中心選手として活躍できる能力は間違いない。


 何よりあの強烈な左足が魅力のハモン・ロペスは、ベガルタサポータには特別な存在だ。

 来日前の経歴が、少々怪しいのが楽しい。ブラジル国内での活躍は少なく、東欧(ウクライナ、ブルガリア)でプレイし、2014年シーズン途中、唐突に中盤選手として加入した。

 入団当初は、ツボにはまった時の左足の一撃は格段だが、ボールの受けも、位置取りも、戦術的な動きも、ヘディングも、いずれもうまくこなせなかった。しかし、渡邉前監督の指導の賜物か、いずれもどんどん上達し、気がついてみたら、16年シーズンは最前線でポストプレイを巧みにこなす得点力あふれるストライカに成長してしてくれた。

 そのような成長もあり、17年シーズンレイソルに移籍。しかし、翌18年シーズン途中で、レイソルの他外国人選手獲得もあり、早々にクビとなってしまった。

 しかし、同年、西村拓真をシーズン半ばでロシアへの移籍で失ったベガルタは、急遽ハモンと再契約。復帰したハモンは、再びエースとして活躍してくれた。今でも悔しいが、あの天皇杯決勝に、ハモンが起用できていれば歴史は変わったのではないか(レイソルで天皇杯に出場していたため、出場権利がなかった)。

 マークする相手のレベルが高いと沈黙するが、ちょっとレベルが低いと圧倒する能力。J2で比較的経済的に余裕があるクラブに移籍すれば、相当光り輝く可能性があると思っていたのだが。そうか、君はドバイに行くのか。あの左足が見られなくなるのは、ちょっと寂しい。


 永戸勝也は大卒で3シーズンベガルタで戦い、鹿島への移籍を決めた。悔しい思いもあるが、見事なステップアップだ。おそらくそれなりの違約金も残してくれたのだろうから、ここは快く送り出したい。

 言うまでもなく、永戸の最大の武器はその左足の精度。ハモンの「当たれば凄い」とは異なり、それなりの頻度で精度高いキックができるのがw、ありがたかった。そして、その精度はセットプレイでいかんなく発揮された。特に魅力的なのは、振りが非常に速いため、球足が非常に読みづらいこと。例えば、昨シーズン残留を決めた大分戦のCK、通常の高いクロスを予想させるスイングから、グラウンダで低い球足の速いキックを、バイタルで待つ道渕諒平へ通したアシストが、その典型。いや、見事なキックだった。また、切り返しての右足でも振り足の速いキックを持つことから、敵DFへの応対で優位に立てるのも特長となっている。

 19年は、シーズン途中からベガルタが4DFを採用したことで、最も得意な4DFの左バックに完全に定着、課題だった後方から進出してくる選手への応対も上達し、気が付いてみればセットプレイの精度と合わせ、国内屈指の左DFと言われるに至った。

 残る課題は、縦に強引に出ての左足クロスのタイミング、球足の速さは申し分ないのだが、中央の選手へ中々合わない。ベガルタ最前線の中央では、石原直樹や長沢駿と言った合わせの巧みな選手がいたのだから、もう少し流れの中からのアシストが増えてもよかったように思うのだが。

 要は、いつパスを出すかと言うほんの僅かな「タイミング」に課題があるのだ。そこを習熟できるかどうか。これが改善されれば、3バック時のサイドMFも、もっとうまくこなせるようになるだろう。22年のカタール行きは、そこにかかっていると思う。まあ、がんばれ。


 正直言います。このシーズンオフ、梁勇基の退団、そして渡邉晋監督の退任。衝撃が多過ぎました。

 この2人がいなくなることばかりに捉えられ、上記ベガルタに幾多の貢献をしてくれた名手たちへの感謝が、おろそかになっていたと反省しています。

 石原、大岩、アベタク、ハモン、そして永戸。長い間、どうもありがとうございました。そして、新天地でも見事なサッカーを見せてください、とても楽しみにしています、もちろん、ベガルタ戦以外で。

posted by 武藤文雄 at 16:55| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする