2016年03月13日

関憲太郎の矜持

 70分過ぎだったか。ベガルタのクリアを拾った柴崎がペナルティエリア右側に進出(以下の左右はすべてベガルタから見て)。それを受けた金崎?が振り向きざまのシュートを狙う。それが当たり損ねとなった事で、ベガルタDFは完全に逆をつかれ、カイオが全くのフリーとなる。PKのようなシュート、「やられた!」と思ったその瞬間、関がすばらしい飛び出しで完璧なブロック。
 前半を1対0で折り返したベガルタだが、後半はアントラーズに押し込まれる時間帯が継続。粘り強く守ってはいたが、あれだけ押し込まれたら「いつかは崩れるのではないか」と言う後半半ば過ぎの時間帯。そこで許した決定的ピンチを関が防いでくれた。
 このファインプレイがこの試合の分岐点となった。いやそれだけではない、この好守はベガルタ仙台と言うクラブの歴史にとっても、大きな分岐点になるのではないか、と愉しい想像にとらわれたのだ。

 ベガルタの先制点。開始早々に左サイドを人数をかけ、アントラーズ守備陣を引き付け、ウイルソンの巧みなセンタリングを、ファーサイドから進出した金久保が、ボールを浮かさないよう丁寧なシュートを決めたもの。速攻が決まらない時、トップの選手が開いて前線で拠点を作り、そこにサイドハーフとサイドバックが押し上げて人数をかけ、さらにボランチが進出しパスコースを増やす攻撃は、昨シーズンから幾度か狙っていたものだが、この得点はその意図が奏功したものだった。
 その後約15分間、攻勢に出てきたアントラーズの猛攻を受ける。この時間帯は、いわゆる「悪いベガルタ」。押し込まれたところで、中盤選手が引き過ぎて、敵の中盤選手を自由にし過ぎてしまった。左サイドのスローインを、遠藤にまったくのフリーで受けられて、バーに当たるシュートを打たれた場面がその典型だった。
 しかし、我慢を続けながら、30分以降はベガルタがペースを取り戻す。ウイルソンと奥埜の距離感がよく、三田がボールをさばけるようになり、石川、大岩の両サイドバックがよく押し上げる。先制点の場面同様、速攻後の分厚い攻めが成功し、幾度も好機をつかみかけた。

 後半は開始早々からアントラーズが圧力を高め、攻勢に出てくる。ベガルタは前半の悪い時間帯とは異なり、中盤選手が最終ラインに吸収されず、組織的に守る。10分間、完全に押し込まれたが、丹念に守り続ける。
 そして、速攻から10分過ぎにウイルソンが左サイドを突破し、奥埜に合わせる好機をつかむ。以降は、アントラーズに押されて危ない場面を作られながらも、最終ラインが頑健にはね返し、幾度か速攻を成功させかける時間帯が続いた。ウイルソンも奥埜も、昌子や植田と言った強いDFの厳しいマークを受けても、後方からのフィードから巧みに反転することができる。だから後方の選手が、敵の攻撃を止めた後、しっかりとつないで、前方をルックアップしてトップの2人を見つけられれば、有効な攻撃に持ち込めるのだ。
 しかし、アントラーズは強かった。冒頭に述べた一番危なかった場面を含め、小笠原と柴崎を軸に、幾度となく猛攻を仕掛けてきた。それでも、ベガルタの各選手、特に最終ラインの4人と、後方に控える関は、最後まで激しく厳しく戦い続け、1点差を守り抜き、勝ち点3を獲得してくれた。

 見事な勝利だった。

 昨シーズン、ベガルタは上位6クラブ、サンフレッチェ、レッズ、ガンバ、FC東京、アントラーズ、フロンターレに対し、2分け10敗。まったく、歯が立たなかった。
 そう考えると、今シーズンの序盤3試合、マリノス、FC東京、アントラーズの強豪3クラブと戦い、勝ち点6を獲得したのは、悪くない結果だ。そして、この3試合目の内容がよかったのが嬉しい。もちろん、課題はまだまだあるが、激しい守備と意図的な攻撃が、高いレベルで機能したのは確かなのだから。
 そう考えると、この試合はベガルタ仙台と言うクラブにとって、大きな分岐点となる試合だったのではないかと期待したくなるのだ。必ずしも経済的に潤沢でなく、また歴史も浅いベガルタ仙台。そのような地方の小さなクラブが、12年シーズンにJ1で2位となり、13年シーズンにはACLで戦うことに成功した。その成功そのものは、日本サッカー史に残る「偉大なおとぎ話」だ。しかし、その成功以降、中核選手の老齢化に苦しみ、ようやく昨15年シーズンに大胆な若返りを指向。そして、今シーズンに入り、ようやく反転上昇の準備が整ったように思えるのだ。
 小さなクラブが大きなクラブに対抗する手段は色々ある。戦闘能力差を割り切り、後方を分厚くしたうえで、敵の攻撃を引き出し、逆襲速攻で喉元に食らい付くのは一手段だ。J1に復帰した10年シーズンや、渡邉監督が采配を引き継いだ14年シーズンは、ベガルタもそのような手段を採用していた。
 しかし、上位進出に成功した11、12年シーズンは、それに加えて、速攻で攻め切れなかった場面で分厚い遅攻も機能していた。それがあったからこそ、我々は上位に進出できたのだ。昨シーズン、渡邉氏は幾度もそのような試みを行っては失敗していた。けれども、今シーズンは、その狙いに成功しつつある。
 もっとも、後半はその狙いは機能しなかった。したがって、いたずらな楽観をするつもりはない。以降の試合も、幾多の苦しみを味わうことは確かだろう。しかし、それでも、このアントラーズ戦、最終ラインの激しさ、知的な速攻、その後に続く効果的な遅攻。昨シーズンとは異なる質の高さを感じることができたのだ。我々は、もっともっと上を目指せるのだ。

 そして、この試合、間違いないMVPは、関憲太郎だった。冒頭に述べたファインプレイ以外にも、冷静な位置取り、果敢な飛び出し。GKとしては小柄ながら、小柄な故の持ち味を存分に発揮した鮮やかな守備。前節試合終盤での六反の不運な負傷による交代起用。そして今節の久々のスタメン。それぞれ、難しい状況ながら、堂々たるプレイを見せてくれた関。出場機会に中々恵まれない状況下においても、よいトレーニングを積んできたのだろう。第2キーパがこれだけよいプレイを見せてくれることそのものが、今のベガルタのチーム状態のよさを示すと共に、関憲太郎と言うプロフェッショナルのアスリートの矜持を示している。
 「今シーズンのベガルタは一味違う」と期待させてくれる試合だった。
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2016年01月02日

ペトロビッチ氏の自滅

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年は、何とか更新頻度を上げていきたいと思っているのですが。
 さて、今年の初講釈は、2015-16年天皇杯決勝戦。レッズ対ガンバ、国内屈指の強豪対決を、実家のテレビ桟敷で堪能させていただきました。

 ガンバは準決勝で負傷した柏木を使えない。柏木の代わりには青木を起用、阿部を一枚前に使う。そして、準決勝で劇的な決勝点を決めた李忠成が先発、2シャドーに興梠と武藤を並べ、右アウトサイドには関根ではなく梅埼を起用した。この布陣変更が、前半の綾となる。
 立ち上がり、ガンバがつかんだ2回の決定機は宇佐美が起点となった。これは、宇佐美を止めるのが、森脇なのか梅崎なのかがはっきりしなかったため。さらに、ガンバの先制点は、レッズの攻撃が、柏木不在により単調になり、前掛かりとなったところで、中盤でボールを奪われた直後の速攻からだった。まあ、これは、ボールを奪った直後に躊躇せずに縦パスを通したのは倉田と、格段の脚力で突破したパトリックを褒めるべきにも思う。レッズのような攻撃的サッカーを志向するチームは、常にこのような失点のリスクを負わなければならないものだ。
 一方で、レッズの布陣が奏功したことも多かった。まず阿部を一枚上げたことにより、直接遠藤との対峙が可能になり、自在な展開を許さなかったこと。加えて、森脇と梅崎の分業が確立した後は、梅崎の前進により、宇佐美を後方に押し下げることにも成功。レッズの同点弾は、梅崎の狡猾な突破に対して宇佐美の対応が軽かったことが起点となった。直後の梅崎の絶妙なクロスに李が飛び込み、ポストに当たったこぼれを興梠が鮮やかに詰めた。ペトロビッチ氏苦心の布陣が、見事に当たったわけだ。それ以降、レッズが押し込む時間帯が続いた。

 後半に入ってもレッズペースが続く。
 ところが、ガンバの速攻から後半初めて許したコーナキックから、ガンバに突き放されてしまう。この場面は、完全な槙野の失態。ガンバ今野に妨害され、マンマークしていたパトリックに完全に振り切られてしまった。マンマークの駆け引きで、攻撃側の選手が他の選手を利用してマークを振り切ろうとするのは、いわゆる基本技。これだけのビッグゲームで、このような初歩的な駆け引きで得点が生まれてしまうとは。
 槙野と言う選手は、センタバックとしての能力は日本屈指のものがあると思っている。この日の前半も、パトリックや倉田の飛び出しに対し、落ち着いた粘り強い対応でしっかり止めていた。けれども、どうして肝心な場面で、「抜けて」しまうのだろうか。
 
 リードしたガンバは、宇佐美とパトリックをトップに残した4-4-2に切り替え、守備を固める。
 ここでペトロビッチ氏は不可解な采配を行う。武藤と梅崎に代え、ズラタンと関根を起用したのだ。これは攻撃の圧力を高める効果はあったが、変化は少なくしてしまう。実際、前半梅崎が中央に絞って作ったスペースに森脇が進出、逆サイドの宇賀神を狙う攻撃は効果的だった。李と武藤が中央にいれば、高いクロスと、低く速いクロスと、複数の選択肢があり得るが、ズラタンと李ならば、高いボールしか選べなくなる。さらに宇賀神に代えて高木を起用。レッズの攻撃の最大の強みの1つは、宇賀神が外に引き出しておいて、槙野が進出してくるやり方になるが、若い高木にはこのような仕掛けは難しい。何より、常に敵が困るいやらしい選択を考える宇賀神がピッチからいなくなってしまった。
 結果的に、レッズの攻撃は若い関根と高木が、両翼から個人技の限りを尽くして突破を狙い、それにレッズの強力な3トップが飛び込むだけの単調な展開となった。いや、後半半ば過ぎからは、槙野も最前線に進出。言わば2-2-6のフォーメーションで、強引に押し込む展開となった。
 ガンバの中央は強い。東口と丹羽と金正也が、関根と高木のクロスをはね返し続け、試合はそのまま終了した。確かに、あれだけクロスを上げ続ければ、結果的に好機を作ることはできる。けれども、レッズ本来の魅力である、変化あるパスワークによる崩しはほとんど見られなかった。
 むしろ、トップに残った遠藤の妙技と、「明神2号」を思わせる井手口の刈り取りが目立ち、決定機はガンバの方が多い展開が続き、試合終了。ガンバの歓喜とあいなった。

 どうして、ペトロビッチ氏は、後半序盤にリードされただけで、自ら大事に育て上げた、鮮やかなパスワークによる攻撃を放棄してしまったのだろうか。
 好調時のレッズの攻撃の変化は鮮やかだ、たとえ柏木が不在だとしても。興梠がちょっとしたキープで作ったスペースに、武藤や梅崎が絡む。森脇のサイドチェンジからの宇賀神の個人技。宇賀神と槙野の連係による崩し。そして美しい阿部の展開。
 このような変化あふれるパスワークがあるからこそ、関根や高木の個人技が効果を発揮する。ズラタンや李のシュート力も活きる。 
 これらの輝きは、すべてペトロビッチ氏が作り上げたものだ。それなのに、ペトロビッチ氏は、大事な試合で、大事な勝負になる度に、その輝きを自ら放棄してしまう。
 上記した槙野の失態も深刻な問題に思える。ペトロビッチ氏は、槙野がサンフレッチェでトップデビューした折からの師匠。槙野も28歳になった。それでも、この甘さはなくならない。槙野自身の問題もあるが、それを許すペトロビッチ氏の問題も大きいのではないか。
 まあ、いいんです。私はレッズサポータではないですから。

 ともあれ。新年早々、内容も豊富で、色々思索可能な試合を堪能させていただきました。
 ここは1つ、近々行われる五輪予選で、井手口が輝き、我々に歓喜を提供してくれることを。
posted by 武藤文雄 at 00:31| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月29日

明日なき死闘を満喫するも

 チャンピオンシップ準決勝、ガンバが延長終了間際にレッズを振り切った。
 両軍とも疲労困憊した延長終盤、これまで見事な強さと気迫でレッズの猛攻をはね返し続けていたガンバ丹羽が信じ難いバックパスミス。ここまで奇跡的なセーブで再三チームを救っていた東口が「間に合わない」と判断し、自暴自棄なオーバヘッドキックを試みるも空振り。「この見事な試合が、こんな終わり方をするのか」と誰もが思った瞬間、ボールはポストを叩いた(東口が触ってポストに当たったという説もあるが)。直後、東口は素早く前線にフィード。その逆襲速攻から藤春の得点が生まれた。
 40年以上サッカーを見ているけれど、こう言った展開は記憶にない。決定機が双方に相次いで訪れて、劇的に勝負が決まるのは幾度か体験しているけれども、あれほど間抜けな自殺点もどきが起点になるとは。まあ邪推すれば、レッズイレブンがこの「棚からぼた餅」による決定機にぬか喜びしてしまい、わずかに切り替えが遅れたとも言えるかもしれない。
 けれども、このような試合で、このような講釈を垂れることは野暮と言うものだろう。
 あの丹羽のあり得ないミスも相当だったが、一方でガンバの先制点もレッズの那須の軽率なミスパスからだった。これ以外にも、両軍のゴールのポストやバーの活躍が幾度もあり、さらに東口と西川は再三のファインプレイを見せてくれた。また、ガンバ阿部のシュートを防いだ宇賀神の対応は鮮やかだったし。さらに、そのガンバ阿部はレッドカードを出されてもおかしくなかった。また、レッズはズラタン、関根が、ガンバは藤春が、ペナルティエリアで倒されたが、主審の松尾氏は笛を吹かなかった。
 まあ、サッカーと言うことなのだろう。見事な試合を堪能させてくれた両チーム関係者に感謝したい。

 と言うことで、改めてチャンピオンシップと言う制度について、講釈を垂れたい。
 以前から述べているように、私はチャンピオンシップ導入には反対だ。年間の真のチャンピオンは、総当たりのリーグ戦で一番勝ち点を獲得したクラブに与えられるべきだと考えているからだ。このレッズ対ガンバがそうだったように、これほど偶然に左右されるサッカーと言う競技においては、総当たりで得られた勝ち点数で決められる順位が最も価値のあるものだ。ガンバがこれから行われるH&Aのチャンピオンシップ決勝でサンフレッチェを破ったとしたら、2015年シーズンは、1シーズンかけて積み上げた勝ち点で11低かったチームが年間王者を誇ることになる。さすがに、これには抵抗がある。
 しかし、短期的な観客動員やキャッシュインの増加を目指すなり、中長期的な世間のJリーグ注目を高めるために、このような方式導入を行うことを否定する気はない。たとえば、北米のプロスポーツが、様々に工夫したプレイオフで大きな人気を獲得していることを参考にするのは、客商売と言う視点でも重要なことだろう。そして、我々はレッズとガンバのおかげで、実際にすばらしい試合を観ることができたのは確かだ。
 そして、このような試合が演じられたのは、「明日なき戦い」と言う舞台だったからなのは間違いない。毎週行われるリーグ戦とは、まったく異なった魅力が、このような試合にはある。
 けれども、この柏木たちの前に東口らが立ち塞がったような凄絶な120分間の死闘は、チャンピオンシップでなければ見られないのだろうか。言うまでもなく、そうではない。別な機会はあるのだ。このような死闘は、カップ戦と言う環境があれば、見ることは可能なのだ。実際、過去も条件に恵まれれば、天皇杯でもナビスコカップでも、私たちはこのような死闘を堪能してきたのだ。
 リーグ戦の試合を毎週じっくり堪能するのと、カップ戦の「明日なき死闘」を堪能するのは、それぞれ異なる愉しさがある。そして、後者の刺激は、あまりに素敵であるが故に、再現なく増やしていくことは自重されなければならないのではないか。残念なことに、チャンピオンシップの導入により、そのバランスは崩れようとしている。
 今シーズンについては、チャンピオンシップ終了後、クラブワールドカップをはさみ、天皇杯が残っている。シーズン終盤、後から後から、特定チームのみが登場する「明日なき死闘」を期待するレギュレーションは、健全なものとは思えない。もし、Jリーグ当局が、チャンピオンシップを継続したいと思うのならば、ナビスコカップや天皇杯を含め、その他の大会の全面的な交通整理をすべきであろう。過去幾度も述べてきたが、18チームによる1部リーグと、ACLの上位進出と、複雑で2週にわたるチャンピオンシップと、クラブワールドカップの自国開催と、元日の天皇杯決勝と、すべてを総取りしながら、真っ当な日程を構成することは不可能なことは認識すべきだ。繰り返すが、シーズン終盤に、後から後から「明日なき死闘」を期待した大会を複数組むことで、1つ1つの試合の価値を下げてしまっては本末転倒なのだ。
 遠藤爺のように、それらすべてを愉しもうとする偉人がいることに、感謝しつつも。
posted by 武藤文雄 at 23:05| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月13日

ベガルタ久々の勝利

 ベガルタはユアテックで、山雅に3対1の逆転勝ち。前半は絶望的な酷い内容だったが、後半よい攻撃が復活し、幸運にも恵まれた勝利。ともあれ、実に久々の勝ち点3、素直に喜びたい。

 それにしても、ベガルタの前半の戦いは酷かった。言い方を変えると、山雅がとてもよかったと言う事になるのだが。
 山雅は、ベガルタに後方からの高精度ロングボールを入れさせない事を狙い、ベガルタDFのみならずGKの六反にまで前線から極端なフォアチェックを仕掛けてくる。ベガルタが自陣奥深い所で得たスローインにも、マンマーク気味に投げ手を囲む。さらにCBの石川、鎌田、ボランチの金眠泰がパスの相手を探し、ボールの動かしが小さくなった瞬間を狙い、後方あるいは側方厳しいプレス(と言うよりはタックル)を仕掛ける。ベガルタ、特に金眠泰はこの山雅の厳しい前線守備に完全に浮き足立ち、前半は完全に山雅ペース。まあ、阿部吉朗のチェーシングと、身体を巧みに入れてのいやらしいキープ。このようなベテランの妙技には感心させられたけれど。
 山雅の攻撃もさすが。精度が悪くても、前に出てくる菅井と、軽率な二見(後述します)の両サイドバックの裏に、精度が欠けてもロングボールを放り込み、ベガルタ陣深くのスローイン獲得を狙う。そのスローインからの攻撃が多彩。岩上のロングスロー、あるいはそれをフェイントにして後方に投げてのダイレクトクロス、逆に岩上に近づいた選手に低く速いスロー。その課程は様々だが、いずれも最終的な狙いはセットプレイ時のベガルタのゾーン守備網の外側、そこに長いクロスを入れて、折り返しで揺さ振る。失点時もその典型。ベガルタ右サイド(以下、左右はすべてベガルタから見て)、上記したロングスローを装い後方に投げられたボールを左サイドにクロス。そのクロスへの二見の稚拙な対応から崩され、起点のスローインを投げた岩上(つまり右サイドから進出してきた)にフリーで決められた。
 さすが、反町康治。この2週間、丹念にこの試合に向けて準備を重ねてきたのだろう。そして、この陰々滅々とした采配を行う名将の指示を的確に実行する山雅イレブンの見事な事。「いや、敵ながらあっぱれ」とは感心するが、ベガルタイレブンの情けなさはどうだ。「あの用意周到な監督が率い、敵地では完全に作戦負けを喫したクラブと、下手をすれば降格争いに巻き込まれる難しい直接対決を戦う」と言う自覚があったのか。山雅が執拗に当方の長所を消し、弱点を突いてくるのは、わかり切った事ではないか。それを、ただただオロオロして前半45分間を終えるとは。

 後半、さすがに修正が行われた。敵のフォアチェックが厳しいと言う事は、それを外せばフリーの味方を見つけやすい、と言う事になる。そのためには、Think before を徹底し、素早くボールを回す事が肝要。ハーフタイムに渡邉監督に叱られたのだろうか、前半ガタガタだった金眠泰が積極的にボールに触る。これにより富田も楽になる。そして、奥埜がよく右サイドに斜行し頻繁に梁に絡み、右前方に張る菅井を使い、右サイドで数的優位を作り、崩す形が出てくる。その結果、山雅守備陣が右に寄ると、老獪な野沢が左サイドで落ち着いたキープを見せ、金園、二見を使って崩す。そうやって両翼に起点ができると、クロスを上げるフェイントから、ペナルティエリア内に走り込む奥埜を使った中央突破も有効になる。
 そうこうしているうちに、石川のグラウンダのフィードを二見がスルー、その結果野沢がフリーでボールを受け、ニアへの低い好クロス。山雅のGKとDFの連係ミスからこぼれたボールを丁寧に金園が押し込み同点。
 その後も、攻勢をとるベガルタだが崩し切れない。逆に、中盤での混戦から、身体を張り切れずにボールを奪われ、山雅の速攻にも悩まされる。オビナに完全に抜け出された事もあったが、六反が落ち着いて防いでくれた。ベガルタが上位を伺おうと言うならば、どんな相手にも球際の競り合いは負けないにしなければ。
 終盤、野沢に代わって起用されたばかりの金久保が、左サイドから、いかにも彼らしい鋭い切り返し後、右足でファーサイドに好クロス、DFと競り合った後の金園の強引なシュートが敵自殺点を招き(公式記録は金園の得点)、とうとう逆転に成功した。さらに前掛かりになった山雅の裏を突いたハモンの強烈なミドルシュートが決まり、3対1。苦労を重ねた試合だったが、逆転勝利を収める事ができた。

 実際、前半を0対1で終えられたのは、ベガルタとしては幸運だったとしか言いようがない。たとえば、石川が山雅のチェックでボールを奪われ、抜け出そうとした山雅のFWを鎌田が倒した場面は、退場とされてもおかしくなかった。まあ、六反の的確な位置取りを中心に、悪いなりに各選手が自陣でよく身体を張った成果とも言えるけれど。
 一方で、前半あまりにベガルタが酷過ぎたため、山雅はやりたい事がすべてできたように見えた。ところが、その結果、山雅の策が前半で出尽くしてしまったのではないか。そのため、後半ベガルタが攻勢をとりやすくなった。たまには、このような幸運が訪れると言う事かもしれないな。
 また、二見の起用はいよいよ考えどころ。1つのプレイが切れた後に、動きを止めてしまい、修正が遅れるのがこの選手の大きな欠点。失点時はその典型で、右サイドからのサイドチェンジで数的不利となり振り切られた直後、富田がカバーリングに入る。ところが、二見は棒立ちになり、富田のカバーが遅れる。その結果、山雅に精度の高いクロスを上げられてしまった。たとえば、左CBの石川の後方にロングボールが入り、石川は自陣に向けてそのボールを追う。当然山雅のFWは石川を追走する。二見は左タッチ沿いを戻る訳だが、石川からのパスを受けやすい(石川がパスを出しやすい)ように、石川に近い深さまで後退しなければならないのに、途中で止まってしまう。そのため、石川は追走してきた敵FWのプレッシャを感じながらのパスを余儀なくされ、展開が遅くなってしまう。このような小さな配慮の積み重ねが、よい展開を作る事につながるのだが。ファウルが多いのも、修正の遅さによるものだ。こう言った欠点は、昨シーズンの入団以来、残念ながら改善はあまり見られない(もちろん、この日は執拗に狙ってくる反町氏が故に、弱点が目立ったのだが)。幸い、蜂須賀が左サイドで機能(いや、利き足でない左を意識しなければならないためか、蜂須賀は右サイドより左サイドの方が機能するようにすら見える)している事もあり、二見に拘泥する必要もないようにも思えるのだが。ぜひ、二見には、私に謝罪の機会を提供して欲しい。
 逆転したものの攻撃面の改善点もまだまだ多い。同点、逆転それぞれの金園は見事だったが、相手のミスが関与していた。3点目は敵守備の前掛かりを突いたもの。いずれも、敵守備を能動的に崩し切ったものではなかった。攻撃にはもっともっと変化が必要だ。ポイントになるのは、奥埜の使い方だと思っている。奥埜は後方に下がりながらターンもできるし、トップスピードで前進しながら正確にパスを受ける事もできる。両サイドに起点を作り、奥埜にペナルティエリア内で前向きにボールを受けさせるパタンを充実させる事がポイントではないか。そう言う意味では、勝負どころの77分に奥埜をハモンと交代した渡邉氏の采配も、個人的には不満だ。

 と、色々文句を言ったけれど、文句を言い続けられるのもサポータ冥利と言うもの。次節は強敵アントラーズとアウェイゲームか。簡単な試合にはならないだろうが、間違いなく上向きのチーム状況。粘り強く戦い、勝ち点奪取を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 16:13| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月29日

結果は悩ましいが、内容は悪くない、このままでよい

 ベガルタはユアテックで、レイソルに痛恨の敗戦。ホームグラウンドで3連敗、折り返し以降獲得した勝ち点は僅かに1。何とも悩ましい。
 とは言え、この敗戦は、年に1回あるかどうかと言う不運が訪れたものだった。それなりの時間帯で攻勢をとり、少ないながらも好機の数で上回り、0対0で試合を進めながら、87分にCKから失点したのだから。確かに、このような敗戦はつらいものだ。しかし、内容は悪くなかった。こう言う時こそ、ブレずに良質な内容を継続する努力を積むことが肝要だ。
 試合間隔が1週あいた事もあり、前節のヴィッセル戦とは異なり、運動量も相応に復活し、前線からの組織守備もよく機能した。よい準備が行われれば、今のベガルタはよいサッカーをする事ができる。前半は良好な中盤守備で攻勢をとり、セットプレイを軸に幾度か好機をつかむ。後半の序盤こそレイソル大谷の気の利いたキープから劣勢を余儀なくされた。けれども、後半半ば過ぎからはレイソルの中盤が疲労した事もあり、再度攻勢を取り返した。しかし、どうにも崩し切れぬまま終盤となり、上記87分を迎える事となった。まあ、こういう試合もある。

 両サイドバックが代わったも大きかった。左サイドは石川が負傷癒えて復活。右には久々に多々良が起用された。石川はチームの大黒柱で、野沢や富田との的確な連係で好機を演出すると共に、守備ラインの安定をもたらした。多々良も久々の起用だったが、己の地域を丁寧に守ると共に、前線に上がれば的確な判断で攻撃を組み立て、上々のプレイだった。
 前節までの蜂須賀、二見は、それぞれ大卒3、2年目。共に昨シーズン大きな負傷から復活し、近い将来のベガルタを支えて行く事を期待されている選手達だ。2人とも、日本のサイドバックとしては大柄で、体幹の強さも上々、前進しながら 角度のあるクロスを蹴る事ができる。しかも二見はロングスロー、蜂須賀は両足での強く角度のあるキック、とそれぞれ他にはない長所も持っている。ただ、2人とも判断力に課題がある。守備面では時々強く前に行き過ぎてあっけなく敵に外されてしまう事があるし、攻撃面でも敵がしっかり守備を固めてきた時に落ち着いて回し直せばよいのに焦りから軽率なミスパスでボールを失う事が再三。この2人に切歯扼腕し、成長を期待するのも今シーズンの大きな愉しみの1つだが、このレイソル戦に関しては、石川と多々良の好プレイを素直に喜ぶ事としよう。

 確かに、セットプレイでいくつか掴んだ好機を当方がしっかり活かせていれば勝てていた事だろう。一方で、それなりに攻勢をとりながらも、思うように好機を作れなかった。レイソルの守備がよかったが、当方の攻撃には、まだまだ変化が足りないのだ。

 ここから渡邉氏はどう積上げて行くか。
 1つは攻撃の人数を増やす事。これについては、菅井がベストコンディションを取り戻せば一瞬で解決する。しかし、菅井もそれなりの年齢になった。となれば、やはり金眠泰に期待したい。このスケールの大きな、(しかし少々オッチョコチョイの)タレントには、菅井に学び、もっともっと大胆に飛び出す時は飛び出して欲しい。あるいは、渡邉氏はもっともっと金に、そのような指示を与えて欲しい。金眠泰と言う上下動を苦にしない中盤後方の逸材が、菅井と言う飛び出す事に格段の才を持つ天才と、同じチームで戦う機会を得た事、そしてその場が私のクラブである事を素直に喜びたい。
 野沢の使い勝手の悪さも悩みの1つだ(あるいは最高の思考実験だ)。前節のヴィッセル戦のCKなど、セットプレイの駆け引きや精度は、今なお日本屈指。さらに時折見せる、独特のタイミングで敵の隙を突くパスは、精度といいタイミングといい絶妙だ。レイソル戦の前半、石川と見せた左サイドでの組み立てなど、ほれぼれする物だった。しかしながら、この選手は短い時間で爆発的に能力を発揮するタイプではなく、プレイを継続しながら突然ヒラメくところに妙味がある。したがって、スタミナに課題がある事がわかりながらも、できるだけ長い時間ピッチに置いておきたいので、スタメン起用するのが有効と言う事になる。終盤の勝負どころでこの鬼才を、「切り札」として使えれば、これほど嬉しい事はない。渡邉氏はこの課題にも取り組んで欲しいのだが。
 終盤、ハモン・ロペスや金久保を起用して、崩し切る事を狙うのは、渡邉氏が好む終盤の戦い方だ。ただ、2人とも真面目に前に前に行こうとし過ぎる。そのため、終盤の攻めが単調となっている。前の方にフレッシュな選手を使うのもよいが、中盤後方の活性化も必要なのだ。先日も述べたが、梁と富田に拘泥し過ぎるのはいかがだろうか。ここには、ベテランで色々な使い方ができる武井も、後方からいやらしいキープや変化技を使える若い藤村もいる。当然ながら、梁も富田も我々の宝だ。だからと言って、彼らにすべての無理を負わせるのはいかがなものか。特に梁は、今シーズン前のオフ、アジアカップに出場していた事もあり、十分な休養をとり、鍛錬を積み切れていないはずだ。梁を大事に使い、シーズンを通してフル出場してもらう事、いやそれよりも少しでも長くユアテックに君臨してもらう事、それぞれはベガルタと言う小さなクラブにとって、そして我々サポータの歓喜にとって、とてもとても大切な事なのだから。
 一方で、奥埜については限界まで挑戦して欲しい。渡邉氏は、動き回り消耗気味の奥埜を、終盤交替するのがお好みのようだ。確かに、試合終盤の奥埜の疲労感は中々ののものがある。それでも、どんなに疲労していても、奥埜は常に引出し、ボールを受けるや有効に戦ってくれる。そう、交替させる意味はない。そして、まだ20代半ばの奥埜だ、梁や富田のように休養も考慮する必要はない。渡邉氏が奥埜に、タフで厳しい戦いを強要すればするほど、奥埜にロシアが近づくのだから。

 など考えながら、明日の敵地FC東京戦に思いをはせるのは愉しい。ただ、問題は本業都合で、明日味の素に行く時間を獲得できそうにもない事なのだが。相変わらず、人生の目的と手段を取り違えた情けない男だ。
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2015年07月20日

杓子定規まで師匠に似とる

 ベガルタはホームユアテックでヴィッセルに1対2で完敗した。不可解なPKを奪われた事もあり、一見不運な逆転負けに見えたが、内実は完敗。連戦の疲労、高温多湿を何ら考慮せず、漫然と試合に臨んだ渡邉監督の責任は重い。

 前半から酷い内容。各選手の動き出しは遅いわ、運動量は少ないわで、後方から苦し紛れの縦パスばかりの攻撃で、全く形にならない。たまに奥埜の粘りで形になりかけるが、後方からのサポートがないため、単発に終わる。金園もよく頑張るが、明らかに切れがない。
 それでも、前半を0対0に終える事ができたのは、ヴィッセルがベガルタのひどさに合わせてくれたかのような単調な攻撃に終始したから。鄭又栄、三原が反応鈍いベガルタMFを出足で圧倒、結果ベガルタDFは遊弋する森岡を捕まえられない。そして、両翼の高橋と相馬がタッチ沿いで再三フリーとなる。しかしながら、マルキーニョスとレアンドロの2トップの運動量が少なく、高橋と相馬も単調なクロスを上げるのみ。おかげで、ベガルタは前半を無失点で終える事ができた。相当な高温多湿の悪環境、相手の出来が悪過ぎたため、ヴィッセル選手にもその悪さが伝染してしまったのだろう。

 後半、ベガルタは先制に成功する。野沢がCKを2本連続でニア狙いを続け、3発目をGK前に蹴り、飛び込んだベガルタ選手がすらしたボールを金眠泰が押し込んだのだ。このあたりのセットプレイの野沢の巧みさはすばらしい。
 おもしろいもので、先制を許した事でヴィッセル選手の反応がガクッと落ち、ベガルタが中盤を制せるようになる。そこで、ネルシーニョ氏は小川と渡邉千真を2枚替えで起用。スピードあふれる小川が再三ベガルタDFラインの裏を突いてくる。ただし、小川のプレイに疲労した他選手が呼応できず、ベガルタDFは何とか守り切る。
 ここで渡邉氏は不思議な采配を行う。リードして、ヴィッセルの選手も疲労気味、しかし小川に裏を突かれてイヤな時間帯。常識的には守備を強化する策をとるべきだっただろう。けれども、最前線で奮戦する奥埜に代えてハモン、先制弾の演出以外ほとんど消えていた野沢に代えて金久保。ハモンも金久保も意欲満々攻撃を仕掛けるが、後方からのサポートが足りず、空回りを続ける。
 そして、中盤で鄭又栄を捕まえ損ね、小川にまたも裏を突かれる。「やられた」と思った瞬間、渡部が見事にスライディングタックルで防ぎ「やれやれ」と安堵したら、東城主審はペナルティスポットを指さした。まあ、このようなミスジャッジはたまにある事だし仕方がない。裏を突かれたベガルタが悪いのだ。
 さらにその直後、CK崩れから速攻を許し、高橋の一撃で逆転される。これはレアンドロ、小川、高橋の連係が見事でちょっと防ぎようがなかった。
 残念だったのはその後。もう富田も梁も消耗しきっており、攻めを焦る金園、ハモン、金久保に有効なボールを提供できず。好機すら作る事ができなかった。終了間際に、金眠泰に代えて山本を起用したが、ボールが出ない状況の改善には全くつながらず。せめて、中盤に藤村を起用して展開を改善する発想はないものか。

 結果的には、ミスジャッジによるPK込みの逆転負け。何となく不運に思えるが、落ち着いて考えると、高温多湿の連戦に特別な対処をしなかったが故の完敗だった。敗因は渡邉氏の采配そのものだったのだ。
 ベガルタの強みは、運動量を活かした組織的な攻守にある。そして、それはスタメンも交代選手も固定化されては、この高温多湿下では実現できないのだ。
 この連戦、菅井の負傷、二見の回復があり、サイドバックだけは菅井、二見、蜂須賀が2試合ずつの起用。しかし、それ以外のスタメンは完全固定。富田、梁、金園は一切交代なし。元々運動量に課題ある野沢と、若い奥埜と金眠泰に代えてハモン、金久保、山本が機械的に投入される交代劇。前線にいくらフレッシュな選手を投入しても、そこにボールが配球されなければ意味はない。上記したが、藤村なり(ようやく控えに入った)石川直樹を投入するなりすれば、状況は改善された可能性はあったと思うのだが。
 私は渡邉氏の監督としての素質を高く評価してきた。けれども、ここまで杓子定規に教条的な采配をされてしまうと、さすがにつらい。

 と、こう書いてきて、何かしら既視感が。たとえば、この試合。疲労困憊の千葉直樹と、今日の富田、梁に、何かしら共通点を感じたのは私だけだろうか。
 己の思い通りにしか試合が展開しないと杓子定規に考えるところまで、師匠を真似る必要はないと思うのだけれども。まあ、よい監督を獲得するためには、相応に失敗経験を積んでもらう必要があると言う事かな。
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2015年06月29日

上々の折り返し

 ベガルタはホームでグランパスに2-0で快勝。7位、6勝5分け6敗、得失点差プラス7と、そこそこの成績でリーグ戦を折り返す事になった。途中、暗黒の5連敗があった事を思えば、上々の折り返しと言えるだろう。

 グランパスは闘莉王、田口、ダニルソン、矢野ら、経験豊富な選手の多くが負傷離脱中。3-4-3のフォーメーションで守備的な布陣を敷いてきた。とは言え、最前線にはノヴァコビッチ、永井、小屋末と癖のあるタレントが並んでいる。そして、前節は少ないチャンスを活かしてノヴァコビッチの一撃でレイソルに勝利している。ベガルタとしても、慎重な戦いが必要だった。
 ベガルタは金園と奥埜の2トップのチェーシングがよく、それに呼応し最終ラインが的確に押し上げ、ペースをつかむ。グランパスの守備ラインが3DFと言うよりは、5DFと呼ぶのが適切な感じで引き過ぎている事もあり、両翼で数的優位を作れる。左は野沢と蜂須賀、右は梁と菅井。それに加えて、2トップのいずれかが絡み、3人の連係が効果的。金園、奥埜、梁が決定機を掴みながら決め切れず、ちょっと嫌な雰囲気が漂った39分、奥埜が見事な動き出しから右サイド前線でボールを受ける。金園がよい位置に入り込んでいたので、クロスへの対応を意識したグランパス守備陣に対し、奥埜は意表をついたドリブルで内側に切れ込み、走り込んだ野沢にラストパス。梁の陽動動作もあり、全くのフリーとなった野沢が正確にサイドネットを打ち抜き先制。きれいなゴールだった。
 直後左サイドの崩しから、梁がミドルシュート。先ほどの野沢とほぼ同じ場所からだったが、僅かに枠を捉えられず。これが決まっていれば、一方的な展開になっていたかもしれないのだが。
 正直言って、グランパスの引き過ぎは疑問だった。上記の通り、後方の中核選手の多くが離脱しているチーム事情はわかるが、あそこまで引き過ぎるのはいかがだろうか。逆に最終ラインのタレントの個人能力の弱さが前面に出てしまうリスクもあるし、梁や野沢に自由なスペースを与えてしまう事にもなっていた。

 後半、西野氏は動いてきた。DFの竹内に代えて、川又を起用。4-2-4に切り替えたのだ。そのため、グランパスの中盤が薄くなり、野沢と梁の抜け出しが容易になり、ベガルタはさらに攻勢をとれるようになる。ところが、そうなると野沢と菅井が凝り過ぎた軽いプレイを行い始め、攻撃に人数をかけた状況でボールを奪われ、速攻を食らい、再三危ない場面を作られる。幸い、鎌田と渡部の出来が素晴らしく、さらに六反の好セーブもあり、何とかしのぐ。
 「これを続けると、いくら何でも危ない。野沢か菅井を代えるべきではないか」と思い始めた70分あたり、菅井が魅せてくれた。富田の好パスで右オープンに抜け出すや、ダイレクトのサイドボレーで正確に後方から走り込む梁に鮮やかなラストパス。梁は教科書通りの完璧なファーストタッチでボールを受け、ファーサイドに強シュート、「これは決まった!」と思ったものの、楢崎が驚異的な反応を見せる。しかし、さすがの楢崎もCKに逃げるフィスティングまではできず、ボールはピッチ内にこぼれる。そこに奥埜がいた。まあ、菅井の魔術は、凡人の守備的姿勢を遥かに超えていると言う事だな。
 2点差となり、グランパスの動きはガクッと落ちた。ベガルタは野沢→金久保、奥埜→山本と交代し、丁寧に試合をクローズ。贅沢を言えば、もう1点欲しかったし、藤村を使って欲しかったが(3枚目の交代はアディショナルタイムでの菅井→多々良だった)、贅沢を言ってはいかんな。

 完勝を堪能した一夜だったが、楢崎の鮮やかなセービングに切歯扼腕する快感も素晴らしかった。
 的確な位置取り、当方のシュートぎりぎりまで動かない姿勢、老獪な読み。楢崎がゴールマウスにいなければ、大量得点が奪えたはずなのに。しかし、最高級のゴールキーパにありとあらゆる手段で妨害されながらの完勝。もう最高です。
 楢崎のプレイ1つ1つは、日本中のサッカー狂にとっての宝物だ。若いゴールキーパにとってこれ以上の教科書はないのだし。今後も節制を重ね、美しいプレイを見せ続けて欲しい。ベガルタ戦を除いて。

 リーグ戦の折り返し。5連敗しながら、相星に戻しての7位と言う成績は悪くない。
 何より、六反、渡部、金眠泰、奥埜、金園と、新しい選手が完全な中軸として機能している。茂木が調子を崩しているのは残念だが、若さ故の苦闘と前向きに捉えておこう。一方で、ここに来て金久保が試合ごとによくなっている。多々良、山本、藤村も起用されれば相応に活躍している。すっかり選手層が厚くなってきた。
 また、この日何より嬉しかったのは、蜂須賀がよかった事だ。今シーズン、蜂須賀は幾度か守備固めに起用されながら、軽率なプレイで期待を裏切ってきた。ところが、前節左DFに起用されよいプレイを見せてくれた。利き足の右が活かせない左サイドで起用されると、ファーストタッチを強く意識する事になるのが大きいようだ。自分が蹴りやすい位置にボールを置く事を強く意識し丁寧にプレイしてくれた。蜂須賀が左サイドで機能すれば、負傷離脱中の二見にも格段の刺激となる事だろう。
 ベガルタフロントの手腕を高く評価する。もちろん、渡邉監督の手腕にも。昨シーズンの老齢化から脱却する事に成功しつつあるからだ。このまま、全てがうまく行くと思うほど、私はウブではない。でも、これだけ若手、中堅どころが機能しているのだ。楽観的になる私を許してほしい。

 もう1つ。今シーズン、梁勇基が素晴らしいのだ。33歳になった梁、さすがに瞬間加速は往時に比べて衰えてきた。しかし、ファーストタッチの精度が格段で、そこから様々な攻撃が生まれるのだ。上記の2点目はその典型だ。中村俊輔とも、遠藤保仁とも、小笠原満男とも、中村憲剛とも、それぞれ異なるベテランMFとして、梁勇基は格段の輝きを見せてくれようとしている。

 うん、私は幸せだ。
posted by 武藤文雄 at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月05日

井原正巳監督への期待

 Jリーグには無限の魅力が詰まっている。その全てをしゃぶり、味わい、語り尽くしたいのは山々なのだが、ベガルタの七転八倒を愉しむだけで、ほとんどの時間が過ぎていく。それでも、隙を見て浮気を愉しみたいのは男の常。で、どうせならば、あれこれ手を出さず、唯一の愛人と愉しむのがよかろう。と、言う事で、今シーズンに関しては井原正巳監督が率いるアビスパ福岡だ。いや、もとへ。言い換えよう、ベガルタ以外の時間は、いよいよJの監督に就任した井原正巳氏を見守る事に費やしているのだ。

 私は井原正巳選手が大好きだった。
 88年10月26日の日韓定期戦。筑波大学3年生だった井原が、日本代表の守備の中核として、崔淳鎬を軸とした韓国に対して、ほぼ完璧な守備を見せてくれた。あの晩の興奮は今でも忘れられない。そして、あの晩の期待通り、井原は幾多の喜び(もちろん涙も)を私に与えてくれた。92年の広島ビッグアーチ、93年のドーハ、そして97年のあのジョホールバル、98年のトゥールーズ、ナント、そしてリヨン。
 井原は1988年1月27日、敵地でのUAEとの親善試合に20歳で起用され、すぐに中心選手として活躍を期待され、常にレギュラとして活躍を継続した。つまり122試合の代表戦のほとんどを、いや違う、すべてを中心選手として戦ったのだ。そして、上記のUAE戦以降93年のUSAワールドカップ1次予選タイ戦で退場になるまでに、B、C代表戦を含め88試合、7958分フル出場を継続した。さらに、その後同予選のスリランカ戦に復帰以降、97年の2月11日のキングスカップルーマニア戦にバックアップ(秋田、小村、斉藤の3DF)のテストを行うまで、52試合のA代表戦4,706分(93年10月4日国立のアジアアフリカ選手権、つまりドーハ直前、コートジボワール戦はカズのVゴール勝ちで延長の26分を戦っている)にフル出場している。その後、幾度かバックアップテストで抜ける事があったが、負傷で戦列を離れたのは、98年4月1日ソウルでの日韓戦での途中交代が初めて(この時井原は30歳になっていた)。つまり、20代の10年間、井原は壊れる事すら一切なく、常に日本代表の大黒柱として活躍してくれたのだ。今日のように、A代表戦が年間15〜20試合行われていたならば(たとえば88年のA代表戦は5試合、90年は6試合、91年は何とたったの2試合!、USAワールドカップが行われた94年ですら9試合に止まっている)、代表出場記録はどこまで伸びていたのだろうか。
 しかも、井原が活躍したのは、日本代表戦でもスタンドに閑古鳥が鳴いていた80年代から始まり、全国民がその勝敗に熱狂するあのフランスワールドカップまで続いたのだ。幾度か書いたが、この日本サッカー界が経験した(おそらく日本を除くいずれの国も経験していない)「超右肩上がり」時代のすべてを、井原は経験したのだ。
 現実的に、井原は日本サッカー史上最高の守備者であった事も間違いない。いや、日本代表選手としても、井原は史上最高の存在だと確信している。井原が活躍していた当時と比較し、国際試合における日本代表の相対的地位は間違いなく高くなった。しかし、苦しい試合になればなるほど、「今、ここに井原がいてさえくれれば」と嘆息する経験が増えていく。06年のドイツでも、昨年のブラジルでも、同じ思いを抱いたのは私だけではないのではないか。
 選手、井原正巳には、いくら感謝してもし切れない思いばかりがある。

 その「日本代表史上最高の巨人」であり、「超右肩上がりの全ての体験者」である井原正巳氏が、アビスパ福岡で、とうとうJリーグの監督に就任した。
 輝かしい実績から考慮すると、あまりに遅すぎた感もある。これは2つの要因があると思っている。1つには、レイソルでのコーチ(ネルシーニョ氏の補佐官)が、あまりに板につき過ぎた事があるだろう。ネルシーニョ氏からすれば、かつてのライバルチームの大黒柱が守備組織構築を担当してくれるのは、とてもありがたかったに違いない((95年のJリーグプレイオフではヴェルディのネルシーニョ氏と、マリノスの守備の要井原の虚々実々の駆け引きは実におもしろかった)。今1つには日本においては「名選手必ずしも名監督ならず」が定着しており、名選手の監督登用に、クラブも相当慎重になっている事が挙げられるのではないか。
 そして、井原氏はいきなり開幕戦から3連敗を喫する。このあたりの映像を見ていると、特に守備ラインでの球際の当たりの不安定さが目についた。よい時はよいのだが、90分の中で、何人かの選手が突然当たりが甘くなってしまっていたのだ。けれども、連敗を脱した4節あたりから、そのような不安定さがなくなり、守備ラインの各選手が粘り強く90分間戦いを継続できるようになってきた。守備が安定した試合が続けば、攻撃も安定してくる。前節、フォルランを軸に猛攻を仕掛けるセレッソ戦は、セットプレイから先制すると粘り強く守り、時に効果的な速攻を繰り出し、見事な勝利を収めた。アビスパが、ジュビロ、ジェフ、セレッソ、アルディージャと言ったクラブと、J2の上位争いを完全に争える戦闘能力を持っていることを示す試合となった。
 アビスパのメンバを見ると、中村北斗、堤、濱田、鈴木惇と言った、かつて若年層代表チームに選考されながらも、伸び切れていなかった選手が目につく。彼らは能力は非常に高いのだが、90分間の集中継続、あるいはシーズンを通しての集中継続と言った課題を克服できずに、ここまで来てしまった感がある。そして、序盤の3連敗時代は、彼らもそのようなプレイ、つまり90分間の中で「抜けてしまう」場面が散見されていた。けれども、ここ最近は、特に堤と濱田に関しては、そのような姿をほとんど見なくなってきた。これは井原氏の薫陶が大きいのではないか。
 選手井原は、判断力、ボール扱い、肉体能力と言った他者に見える能力は、もちろん格段のものがあった。けれども、その格段のプレイを常時継続し、10年以上も日本代表の大黒柱として君臨し続ける事ができたのは、そう言った格段の能力を常に発揮する精神力を具備していたからのはずだ。アビスパの序盤低迷からの脱出は、その自らの精神力を、選手達に的確に伝授できたからではないかと思えるのだ。そう考えると、アビスパの選手はベテランを含め、この偉大な監督から学べる事は非常に多いはず。そして、その指導が的確に遂行されれば、J1復帰も現実的な目標となってくるはずだ。
 もちろん、井原氏の監督経歴は始まったばかり、これから艱難辛苦を乗り越えない限り成功はない。そしてJ2からJ1に昇格する難しさは、今さら繰り返すまでもないだろう。
 けれども、上記したような選手として究極の経験を持った井原氏が、アビスパで監督として成功を築いてくれたとしたら、これは日本サッカー界にとっても、非常に重要な事となる。井原氏は手倉森誠氏と同級生。手倉森氏と異なり監督としてはこれからだが、(ベガルタサポータとしてはちょっと悔しいが)井原氏は手倉森氏が現役時代に積む事ができなかった経験を、あふれるほど持っている。そう、何より井原氏は1億3千万国民に歓喜を提供してきたのだ。
 ちょっとは夢を持っても構わないだろう。

 以下余談。
 井原を称える「イハラー、イハラー、イハラー」と言う歌は、私が歌い始めたものだ。個々の選手を称える歌としては、この「イハラー、イハラー、イハラー」は、植田朝日氏が始めた「オー、ナカヤマ」と並び、日本サッカー界で初めてのものだったと自負している。そして、いつか井原が日本代表監督に就任した際に、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌うのを密かなる夢としてきた。でも、ちょっと待ちきれない自分がいる。
 で、もしこの文書を読まれたアビスパサポータの方がいれば教えてください。アビスパが勝った時、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌ったりしているのでしょうか。もし「Yes」ならば、こっそりと偽アビスパサポータとして、ゴール裏に忍び込み、一緒に歌わせていただきたいのですが。
posted by 武藤文雄 at 01:21| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月03日

苦闘続くベガルタ

 ベガルタは敵地でサンフレッチェに0-2で敗戦。疲労が溜まっている連戦下、攻守の弱点を森保氏に的確に突かれての完敗となった。4連敗と言うつらい結果に加え、守備の大黒柱鎌田が負傷、さらにCBでコンビを組む渡部が次節出場停止。何とも重苦しい結果となってしまった。

 双方とも連戦のため、身体が重い。そのため、前半は無理をしない手堅い試合を狙ってきた。その中で、サンフレッチェは大きなサイドチェンジでスライドするベガルタのサイドバックの外を狙う。そして、ベガルタのブロックにギャップを作ろうとしてきた。その策にはまり、野津田にミドルシュートのスペースを与え先制を許した。この一撃の前にも、柴崎のミドルシュートがバーに当たり事なきを得た場面もあった。森保氏としては狙い通りと言う事だったのだろう。サンフレッチェの強みの1つは、相手の守備組織がしっかりしている状況でも巧みな位置取りで僅かな隙を逃さずに点を狙える寿人がいる事。したがい、センタバックは寿人との位置関係に相当神経を使う必要があり 、どうしてもバイタルのカバーが遅くなる。この攻撃を防ぐためには、サイドチェンジをさせぬように前線から厳しいプレスを仕掛けるか、ミドルシュートを打たれないように中盤選手が几帳面にスペースを埋める必要がある。しかし、連戦で各選手に疲労が蓄積しているだけに前者はあまり現実的ではない。したがって、後者が重要となり、渡邉氏もそれを考慮して、ボランチにフレッシュな武井を起用したのだろう。ところが、この野津田の一撃時、対応した武井がスリップし野津田を止められなかったのだから皮肉なものだ。
 ベガルタとしては、お互いが慎重に戦った前半に速攻で活路を開きたいところだったが、サンフレッチェの水本と塩谷の2ストッパがウイルソンを押さえる。ウイルソンとこの2人の攻防は見ごたえがあったが、とにかく当方の負け。これはこれで悔しいけれど仕方がない。もう少し、金園がウイルソンの近くでプレイし、サポートを密にしたいところだったが、このあたりの連係の熟成はこれからの課題と言う事か。

 リードされた事もあり、後半は序盤から前線に人数をかけ攻めに出るが、分厚く守るサンフレッチェを崩せない。ちょっとチグハグだったのは交代のタイミング。64分に野沢と茂木の2枚を同時交代して勝負に出た訳だが、そうするならば後半頭からあそこまで前掛かりに出る必要はなかったのではないか。せっかくフレッシュな選手を2枚入れた時間帯にもかかわらず、ベガルタの後方の選手達は後半立ち上がりからの攻勢に一息つく時間帯となってしまった。現実的に、連敗している状況で先制を許したのだ。どの選手も同点を狙いに前に行こうとするはず、それならば後半の最初から、ベテランの梁に代えて若い茂木を入れてグッと攻めに出るのも一手段だと思ったのだが。
 そうこうしているうちに、人数をかけた攻めの精度がちょっと悪くボールを奪われ、青山の鮮やかなロングボールを、(寿人に代わって入った)前進速度豊かな浅野に決められ引導を渡される。完全にサンフレッチェの注文相撲にはまってしまった。その後も、ベガルタはいつものように諦めず丁寧に攻め込んだのだが、崩し切れず。

 今年のチームに始まった事ではないが、ベガルタのサッカーは豊富な運動量と球際の強さを軸にしたものだから、連戦や夏場は苦手としている。そして、このサンフレッチェ戦はその難しさが完全に出た試合となってしまった。ナビスコを含め、ここまでの全試合にフル出場していた鎌田が負傷したのも疲労の蓄積からだろう。
 確かに状況は重苦しい。けれども、私は楽観的だ。丁寧に修正を加え、チームとしての戦闘能力を積んで行けばよいのだ。むしろ、新しいチームが早い段階で問題を明確に把握できたと、考えるべきだろう。
 次節以降、中3日で、ホームに強豪FC東京とレッズを迎える。非常に難しい試合となろうが、調子が悪いときは強豪と当る方がよいのだ。対策が絞り込めるから。鎌田と渡部が不在なのはつらいが、上本と多々良がいるのだから、連係面はさておき陣容としては問題ない。昨シーズンの序盤や連敗時と異なり、控えには若い藤村、山本、金眠泰ら実効的な選手も控えているから、様々なトライも可能だ。序盤に勝ち点を積んでいたから、勝ち点計算で短期的に追い込まれる事もない。
 オロオロ、イライラを堪能しつつ、よいチームに成長していく事をじっくりと愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 00:21| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月01日

茂木と渡邉氏が若さを露呈

 ベガルタはユアテックでアントラーズに1対2で苦杯。前半こそ好機を多数つかんだものの、40分過ぎ先制されてからは、終始しっかりと引いてボールを回すアントラーズペース。スコアから見ると1点差だが、当方の得点はアディショナルタイム。試合運びと言う意味では完全に圧倒されており、今シーズン最悪の試合内容と言っても過言ではなかった。
 そして、その敗因は、茂木と渡邉監督の若さにあった。

 先制点はCKから、アントラーズ昌子のヘディングを許したもの。これは完全に茂木のミスだった。ベガルタはゴール前のセットプレイをゾーンで守る。セットプレイ守備がゾーンがよいかマンツーマンがよいかの議論は、とても愉しい知的遊戯。ただ、ゾーンを採る以上は常にボールの落下点への出足を怠ってはいけない。今シーズンのベガルタの守備のよさは、正にそこにあり、いずれの選手も格段の集中力でそれを完遂しているところにあった。しかし、この場面茂木は完全に昌子の後手を踏み、昌子に走りながらジャンプせずともよい高さのヘッドを決められてしまった。高さでやられたのではなく出足でやられた(実際出遅れた茂木は弱々しく足を出していたのだが)。流れの中で「消えられた」訳でも、駆け引きでしてやられたのでもない(ゾーンで守っているのだから、なおさらの事だ)。単に集中が切れ、出足で負けたのだ。直前、ゴール前のもみ合いで、昌子は完全に茂木を明らかに押し、茂木のアピールで主審に注意されていた。茂木は若いものの、このようなしたたかさをしっかり身につけている、と思ったら直後にこれだ。主審が昌子を注意した事で、逆に気が抜けてしまった訳だ。これも経験である。経験なのだが、これを繰り返してはいけない。絶対にいけない。このような事をしていたら、リオは夢と消え去ってしまう事を、強く自覚して欲しい。

 前半、4-1-4-1気味の配置でベガルタは攻勢をとり、多くの決定機を掴む事ができた。梁や野沢のシュートが決まっていれば試合展開は全く異なったものになっていたに違いない、と言いたいところだが、そうだったろうか。正直そうは思えないのだ。と、言うのは、後半立ち上がりからはアントラーズに圧倒されたからだ。これは、先制されて後方のリスクヘッジが弱くなったからではない。老獪な小笠原のサポートを受けた柴崎の挙動開始を、ベガルタの中盤選手が押さえ切れなくなったからだ。要は、前半から飛ばし過ぎたのだ。だから、前半で先制できていたとしても、そのまま1点差をしっかり守り、丁寧にクローズする試合に持ち込めたかとなると、相当疑問なのだ。
 2点目は、そうやってアントラーズペースが続いた時間帯だった。富田が見事なインタセプトを見せ前線をルックアップするも出しどころがない、そこで後方の菅井に戻したところ、ミスパスとなりカイオに拾われ、そのまま失点。厳しい連戦で、中盤で止め切れず苦しい時間帯。闘将が中盤で拾ったにもかかわらず、前線の選手が呼応できず、後方の選手が一息ついたところでミスが出た。もちろん一義的な責任は富田と、明らかに集中を欠いていた菅井にある。
 特に菅井には一言言いたい。押し込まれた場面での投入、久々の試合、普通の選手であれば「難しい時間帯、入りづらい時間帯での投入」と言えるかもしれない。けれども、菅井なのだ。菅井なのだから、そのような普通の選手に対するコメントを述べさせないで欲しいものだ。菅井なのだのだから。いや、菅井らしいか。でも違う、菅井ならば、あのようなミスはご愛嬌だが、反対側のゴールに鮮やかな得点を決めてもらわなければ。菅井なのだから。
 話を戻そう。一義的には富田と菅井のミスだが、あのような状況に持ち込んでしまったのは、やはり渡邉氏の采配の拙さが最大要因だ。あれだけ、ペースが落ちているのだから、前々節のフロンターレ戦同様に選手交代で中盤を活性化させるべきだった。このあたり、フロンターレ戦の反省が足りない。ただ、フロンターレ戦とは異なり、敵監督が奇策を弄してきた訳でもなかった。むしろ、連戦下で前半からあそこまで攻勢をとるべきだったのか、と言う議論にさかのぼるべきなのではないか。
 2点差となって金園を投入。一見、押し返したように見えるが、フロンターレ戦や山雅戦同様、敵エンドには入っているが、前半よかった時間帯のようにサイドに起点を作る事ができず。右サイドを起点にウイルソンの妙技から梁がフリーとなた場面と、敵DFのミスを金園が引っ掛けウイルソン経由で金園が掴んだ2つの絶好機を除くと、それ以外の攻撃はアディショナルタイムの金園の得点を含め、偶然から掴んだチャンスに止まった。アントラーズが落ち着いて引いているのだから、まともに行っては好機を多数作るのは難しい。金園投入と前後して、中盤にフレッシュな選手を投入していれば、中盤が活性化し改めてサイドに起点を設け、効果的な遅攻も可能になったと思うのだけれども。ベンチには、独特の技巧を持つ藤村、強さと展開力を具備する金眠泰、経験豊富な武井らが控えていたのだが。そして、この試合の藤村の起用は88分。2点差で負けているのだ、あまりに遅過ぎる。主将の富田、機動力で好機を作れる梁、信じ難いラストパスを操れるの野沢、この3人に拘泥する気持ちはわかるのだが、せっかく良好な控え選手を保有しているのだから。後は決断だ。あるいは、梁や野沢をフレッシュな状態で勝負どころで投入するやり方だってあるはずだ。このあたり、渡邉氏はまだまだ若い、いや青い。
 渡邉氏の手腕に疑いはない。前節の山雅戦での拙攻を反省し、ちょっとしたフォーメーションの切り替えで良好な攻撃を再三見せてくれた。気が付いてみたら、上記の控え選手含め、選手層も相当分厚くなっている。堅牢な守備も、中盤の運動量が落ちなければ健在だ。氏の巧みな指導により、チームの質は日増しに向上しているのだ。ただ、唯一残念な事は、その見事な指導を、本番で活かし切れない事。もっともっとやれるはずなのに、何とも、もどかしい。

 渡邉氏が名監督となるまでの「もどかしさ」と言う最高級のディナーを堪能できるなんて、何と素敵なシーズンだろうか。そこに茂木が大選手となるまでの「経験と苦闘」と言う最上級の葡萄酒まで加わっているのだ。正にサポータ冥利に尽きると言うもの。諸事情で中々現地参戦できない己の愚かしさを反省する毎日である。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする