2015年04月06日

ホーム2勝、アウェイ2分け、最高のスタートだが

 ベガルタはアディショナルタイムの渡部の劇的ゴールで、エスパルスに勝利。勝ち点を8に積上げる事に成功した。ここまでの4試合、ホーム2勝、アウェイ2分け、理想的な展開だ。

 しかしながら、エスパルス戦の内容は、とてもではないが褒められた内容ではなかった。
 エスパルスの先制点は、見事な速攻からの分厚い攻めにやられたもの。序盤からエスパルスの厳しいプレスに悩まされていたところ、何とかそれを凌いで攻め込もうとしたがパスの精度が悪い。左サイドの攻め込みから中央ウィルソンへのパスを狙われ、速攻を許す。4対5と数的不利になり、かろうじてそれをはね返すものの、野沢が拾いきれず、右サイド村田にえぐられ、ファーサイドから進出された白崎に見事に決められてしまった。その後も試合は完全にエスパルスペース。失点時と同様の速攻はもちろんだが、大前の巧みなポジショニングを押さえ切れず幾度も好機を許す。いくばくかの幸運、六反のファインセーブがなければ、2点差とされ、ホームで痛恨の敗戦を喫していてもおかしくなかった。
 エスパルスもベガルタも、前線から厳しいプレスを仕掛け、敵を自由にさせない激しい守備をベースに戦っている。お互い僅かなスペースを許さなれないため、丹念に身体を入れ、そこにガッチリと当たりが入る。流行り言葉で言えば「インテンシティ」あふれる試合、そう言った中で選手1人1人がアイデアを発揮する。個人的にはこのような戦いは大好きだ。

 後半に入り、エスパルスのプレスが緩むと、ベガルタもそれなりにペースを取り戻す。60分過ぎには、CKから鎌田がすらしたボールを、ウイルソンが「さすが!」としか言いようがない反応で同点に追いつく。
 余談。このオフにベガルタは20周年記念DVDを発売、その表示がベガルタの歴代得点者ベスト6だった。1位は梁、続いてマルコス、赤嶺、菅井(笑)、阿部良則、そして中島裕希だった。「あれ、ウイルソンは?」と思って調べたら(いや、裏表紙に歴代得点者リストが出ているのですが)、4位の菅井が39、5位の阿部が32、6位の中島が31、そしてウイルソンは30で7位だった。つまりだ、ウイルソンは今シーズン3得点。阿部と中島を抜いて、堂々の5位に進出した。是非今シーズンは得点王を獲得し、菅井、いや赤嶺(44点)を抜いて、歴代3位に上がってください。マルコス(55点)を抜いてくれてもよいですが。あ、ちなみに梁は71点です。
 その後もタフな当たり合いが続く。ホームのベガルタとしては、何としても勝ち切りたいところで、同点直前に投入した金園の引き出しと奥埜の豊富な運動量で攻め込もうとするが、野沢の溜めと梁の配球に今一歩噛み合わない。そうこうしているうちに、速攻を仕掛けた奥埜をヤコビッチが引っ掛け、2枚目のイエローで退場。カナダ代表からの帰国直後との事で、疲労が切れを失わせていたのかもしれない。
 10人になったエスパルスに対し、ベガルタは必死に攻め込むが崩し切れない。梁の見事な右サイド進出からのウイルソンのシュートは決定的だったが、五輪予選帰りの櫛引に見事に防がれる。そうこうして、迎えたアディショナルタイム。ヤコビッチ退場に伴い、大前に代わって起用されていた河井が、ウイルソンに対し足裏アタック、一発退場。非常にタフな当たり合いが続く試合、突然起用された事で流れに入らず、魔が差したのだろうか。驚いたのは、エスパルス大榎監督の態度。明らかな一発退場のプレイに対し、主審を口汚く罵るのがテレビ桟敷でもよくわかった。シビアに戦っていたエスパルスの選手達にとって、この監督の場をわきまえない態度はつらいものだったろう。チームメートの明らかな失態を、監督が強引に正当化しようとする姿勢は、選手達を戦いづらくしたはずだ。
 終了間際、ベガルタは逆転に成功した。敵監督の愚行により拾った勝利だった。

 勝つ可能性が非常に低かった試合を幸運にも勝利できた。長いシーズン、このような事もある。
 けれども、内容は悪かった。敵プレスが厳しい際の凌ぎ方、大前のような知的な受けができる選手の押さえ方、終盤点を取りたい時のフォーメーション。理想の勝ち点積上げでよい入りをしたこのシーズンだが、課題はまだまだ多い。大事に大事に戦い続けたい。
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2015年03月14日

痛恨の引き分けにも明るい展望

 ベガルタは敵地でレイソルに対し完璧に近い内容の試合を展開しながら、試合終了間際に関のミスで失点し、1対1で痛恨の引き分けに終わった。

 前半からベガルタは見事な組織守備。DF、MF8人の整然としたブロックは、浅いラインを保ちながら的確に左右にスライド。金園、ハモンの2トップが、レイソルのDFなりアンカーの茨田に絡み始めるタイミングも絶妙で、隙を作らない。この日の対戦相手のレイソルから移籍してきた渡部は定評のある強さを存分に発揮、守備ラインの中核として地位を確立した。しかも、この日は先制点も決めた。レイソルで定位置を確保し切れなかった渡部だがベガルタでのこの機能振り、この移籍は大成功と言えるだろう。元々、ベガルタの最大の強みは、この組織守備にあるが、新しい選手が多く加入したシーズン早々に、これだけの連係の冴えを見せてくれるのだから素晴らしい。
 ボールを奪うや、梁の落ち着いたキープを起点に、効果的な速攻。ハモンも金園も迷いなく前進し、奥埜が2トップをよくフォローするので、少人数でも有効な攻撃ができる。奥埜は飛び出す場所が的確で、トップスピードでも正確にボールを受けてくれる。そして、何より嬉しかったのが、茂木のロングパスの精度が高い事。前節ホームで攻撃的に戦った際は、この若者のふてぶてしいボールキープに感心させられた。そして、この日は守備的に戦った事もあり、射程距離の長いボールを蹴る場面が増え、その能力も格段の事を見せてくれた。

 一方、レイソルの吉田新監督のチーム作りの意図もよく理解できる。茨田をアンカーに置き、その前に大谷と栗澤を配置する4-3-3。茨田をアメリカンフットボールのクォータバックのように機能させようと言う狙いなのだろう。この育成で定評あるクラブが、若年層を長年指導していたコーチをトップチームの監督に抜擢し、ユース出身の茨田と言うパスの名手を活かそうとするフォーメーション。練度はこれから上がってくるのだろうが、この攻撃を完璧に止めたのだから、ベガルタの守備の質の高さは相当なものとなる。
 さらにベガルタにとって幸運もあった。レイソルはCBの増嶋、サイドバックの輪湖が負傷退場。負けているのに守備選手の交代にカードを2枚切らざるを得なくなったのだ。

 かくして、順調に試合は進んでいた。ところが。
 75分過ぎにハモンが微妙な判定でイエロー2枚で退場。いずれのイエローも妥当な判定だったが、「これは警告だ!」とは言い切れない反則に見えただけにちょっと残念。ともあれ、ハモンが軽率だっとのは間違いない。ともあれ、これも経験だ。
 それでも、ベガルタは整然と守る。工藤が引いて空いたスペースを大谷や大津がいやらしく狙うが、それも押さえる。このまま時計を進めて1-0のままで試合を終えられるかと思われた時間帯。金昌洙の単調なクロス、勢いよく飛び出した関がファンブル。敢え無く同点に追いつかれてしまった。完全に手中にしていた勝ち点がこぼれてしまう、過去幾度も味わったサッカーの魔力。
 こう言う試合もある。小柄ながら丹念な努力で今日の地位を築いた関、今シーズンは六反と言う強力なライバルも加入した中、ほんの僅かに意欲が空回りしてしまったのだろう。関は29歳、GKとしてはまだこれからの年齢だけに、この痛恨をどのように活かしてくれるか。

 先の展望は明るい。奥埜と茂木がここまで機能すると、野沢に負担をかけずに済むようになる。金園とハモンの連係はこれからだし、何よりも開幕戦で格段の得点力を発揮したウィルソンが体調を上げてくる。昨シーズンと異なり、平均年齢も真っ当になったチームだけに、90分間戦い抜くのも問題ないはずだ。
 もちろん、不安もある。茂木は近々ボールの受け方を研究され壁に当たるだろう。負傷の多い菅井が離脱した際に蜂須賀がカバーできるレベルまでに達しているか。そして何より、オフにアジアカップを戦ったにもかかわらずシーズン当初から梁の体調が良好過ぎるのが気になる。
 まあ、こうやって楽観悲観組み合わせて思いをはせるのがまた愉しいのだ。いずれにせよ、ここまで短期に新しい選手で守備組織を機能させた渡邉監督の手腕に疑いはない。新しいベガルタをじっくりと堪能し、近い将来の大成功を愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 20:16| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月12日

あれから4年

 3月11日。私の故郷があの災禍に襲われてから4年の歳月が流れた。
 未曾有の自然災害の大きさも衝撃だった。しかし、その後の対応の難しさに、改めて嘆息している。全体最適と部分最適の妥協点をどう見つけるのか。私利私欲のために復興を阻害する言動を行う人の多さ。「50歳を過ぎたオッサンがウブな事を言うな」と笑われるかもしれないが。
 私事ながら、あの震災で受けた被害対策をようやく昨年完了させる事ができた。近親者を亡くした方々、生活基盤を大きく失った方々と比較すれば、私が受けた被害など僅少なものだが、とにかく一息つく事ができたのは確かだ。
 大きな被害を受けた方々にとって、復興への道のりは気が遠くなるほどなのだが、己のできる事を粛々と行っていきたい。

 何を考えても重苦しい気持ちになるこの4年間だったが、少なくとも私にはサッカーがあった。
 
 震災直後から、多くのサッカー人が私の故郷を救うために戦ってくれた。震災直後の支援活動はもちろんの事、今日に至っても、サッカー人による多くの活動が行われている。大変抽象的で申し訳ないが、「サッカーと地域密着と言う共通言語は、苦しいときこそ頼りになる仲間を作ってくれるのだな」と再認識する事ができた。当たり前の話だが、サッカー界だけが地域支援を丁寧に実施している訳ではない。しかし、Jリーグを軸とするサッカー界と言う社会集団が、仲間が身が引き裂かれるような苦境にある時に、大きな助けとなる活動をしっかりと行った事は確かなのだ。
 そしてベガルタ。
 もし、タイムマシンがあって、2011年3月10日の俺に会い、今の俺が「昨2014年シーズンのベガルタは、33節にかろうじて残留を決めた。」と伝えたとしよう。すると、4年前の俺は、喜びながら、こう答えると思う。「そうか、とにかく一度もJ2に落ちる事なく、2015年の開幕を迎える事ができたんだ。何と素晴らしい。」と。
 4年前の俺は、この4年間のベガルタの上下動を予想だにできなかった。J1の上位に進出し、ACLの場で戦う権利を得て、列強と堂々と渡り合う。さらにピークを過ぎたチームは急降下し、かろうじてJ1残留を果たす。たった4年の間に、我々はこれだけの戦いを堪能できたのだ。この上下動を堪能した俺は、昨シーズン末に歓喜した。「J2陥落を免れ、2015年の開幕を迎える事ができるんだ。何と素晴らしい。」と。
 4年前の俺と、今の俺の差。これが歴史だ。

 思うに任せぬのが人生。自然の猛威の前に、その後の事後処理の難しさに、あまりに無力な私たち。
 今日、手倉森氏は日本屈指のエリート達を率い、上々の試合を見せてくれた。少しずつ、少しずつ、歴史は流れて行く。無力ではあろうが、やれる事はある。これからも丁寧に生きて行きたい。
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2015年03月10日

ベガルタ、まずは順調なスタート

 キックオフ直後、両チームとも様子見を兼ねて、最終ラインどうしの蹴り合い。落ち着かない展開が続く中、モンテディオDFが跳ね返したボールを奥埜が的確なスクリーンプレイで、右サイドフリーの茂木に落とす。茂木は、正対するDFの詰めが甘いのを素早く判断、正確なトラップの後、強引に内側に切れ込む。たまらず、モンテディオの伊東がファウルで止める。そのFKから、梁が高精度のクロス、こぼれを奥埜が思い切りよいドライブシュート、わずかに枠を外れた。ベガルタはこの流れからペースをつかんだ。
 若返りを図る新しいベガルタを象徴する奥埜と茂木の2人が、好プレイで開始早々の混戦を制するプレイ。素直にうれしかった。

 ベガルタは開幕戦、モンテディオに2対0で快勝。
 上記した奥埜と茂木のプレイからペースをつかんだベガルタ。その後の時間帯、モンテディオの大ベテラン山崎の狡猾な動きに苦しむ場面もあったが、前線からのプレスが機能し攻勢をとる。特に奥埜の広範な運動量と受けの巧さは絶品で、モンテディオDFを引き付ける事で、パートナのハモン・ロペスもよい体勢でボールを受ける事ができる。富田の刈り取り、菅井、鎌田、渡部、石川の4DFの強さとスライド、野沢、梁、茂木のパスワーク、上々のバランスで攻勢を取り続けた。
 しかし、モンテディオの守備は厚い。崩しきれずに前半終了。

 そして63分、野沢が軽率なスライディングで2枚目の警告をとられ退場。状況は一転した。
 まあ、勝った今だから笑い話だが、55分のモンテディオ金範容のプレイは、菅井の顔を殴り、その直後に茂木を削った。一連のプレイで1.5回退場になってもよいのではないかと言うもの(笑)。ついでに、70分過ぎに菅井を削ったプレイで、もう1警告、2回退場になってもよかったのでは(笑)。野沢の退場そのものは適切な判定だったと思うが、この金に対する判定には少々不満が残った。もっとも、菅井も茂木も臆せずに結構やり返していたな。
 1人少ないだけに、攻め込んでも、跳ね返されるとこぼれを拾い切れず逆襲を許す場面が増える。同様に守備ラインが跳ね返しても、バイタルを止め切れない場面も増える。茂木に代えて杉浦を起用し、サイド守備の強化は奏功しているが、中央の甘さはカバーできない。私はここで、「ハモンなり奥埜なり梁に代えて、武井を投入し中央を固め、無理をせずに引き分けを狙うべきでは」と考えた。しかし、渡邉氏はそのような消極策には与しなかった。ハモンに代えてウィルソンを投入。あくまでも勝ちを狙ってきた。そして、その勝とうとする姿勢が奏功したのだから恐れ入りました。

 先制点を振り返る。関のロングボールを、ウィルソンがうまく受け、さらに奥埜がよい身体の入れ方で菅井に落とす。菅井はいやらしいカーブがかかったボールを前線に。モンテディオDFがかろうじて跳ね返したボールを富田がヘッドで前線に。そこに見事なロングランを見せた梁が飛び込む。梁はマークするモンテディオの渡辺高大を振り切り、好クロス。ウィルソンが敵マークをわずかに振り切り、丁寧なボレーで流し込んだ。梁とウィルソンを所有する幸せを改めて噛み締める美しい得点だった。梁の突破を許した広大の反応の遅さは今に始まった事ではないが、少々複雑な思い。
 その後はモンテディオは無理攻めをしかけてくるが、ベガルタは鎌田と渡部を軸に何とかしのぐ。そして88分のモンテディオCK。山の神、山岸が上がってきた。そのCKを跳ね返したベガルタ、逆襲から菅井が敵DFのクリアを引っかけ、そこからのパスを受けたウィルソンがゴールにかろうじて戻っていた山岸を抜き去り勝負を決めた。あのジュビロ戦とは全く異なる状況で、山岸が上がってきたのは正しかったのだろうか。いや、文句を言う筋合いではないのですが。

 野沢の退場と言うアクシデントがありながら、難しい開幕戦でライバルに勝利できたのはまことに喜ばしい(まあベガルタが10人になったので、中途半端にモンテディオが前に出てきたとも考えられるが)。負傷明けのウィルソンがきっちり2点を奪い、存在感を発揮してくれたのも大きい。得点場面に直接絡んだのが若手ではなく、梁と菅井のベテランだったのはちょっと残念だが贅沢を言ってはいかんな。
 まずは素直に初戦快勝と、奥埜はもちろん、茂木が存分に機能した事を喜ぼう、うん。
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2015年03月07日

新しいベガルタ

 新しいシーズンがいよいよ開幕しようとしている。特に今シーズン、ベガルタサポータとしては、例年の開幕時の期待感を超えたワクワク感で一杯だ。理由は明白で、優秀で若い選手が大量に加入したからだ。まあ、実際は「ここ数シーズンクラブとして明らかに目を背けていた若返りに、ようやく着手した」と言うところだが、そこを単なる期待感にすり替えて愉しむのも、サポータ冥利と言うもの。
 もちろん、それによりACL進出と言う快挙に貢献してくれた多くの名手がこのオフでクラブを去る事となった訳で、大いなる寂しさを感じているのも事実。しかし、寂しいが仕方がない。過去幾度も語ってきたが、ベガルタの老齢化は限界に達していた。昨シーズンの戦い振りは見事だったが、多くの試合で終盤足が止まりガタガタにもなっていた。2012年シーズンJ制覇まで後一歩まで進んだ我が軍は、すり減ってしまったのだ。もはや、若返りは急務だった。
 ベガルタのベテラン選手達は、いずれも元々能力が高いのに加え、戦う姿勢も素晴らしい。したがって、監督も安心して起用できる。と言うより、監督は良好な選手を選択するのは当然の事。1人1人は皆J1のトップ選手なのだから。ところが、そのベテラン達が相当数ピッチにいると、チームは90分間戦い切れない。サッカーとはそう言うものなのだ。優秀なベテラン達による老齢化の限界到達。もはや、若返りは、監督に委ねられる問題ではなく、フロントの問題となっていた。と言う事で、このシーズンオフ、ベガルタは格段の能力を誇る選手幾人かを、手放さざるを得なかったのだ。中原、赤嶺、太田、角田、佐々木、それぞれの新天地での活躍を祈りたい。ベガルタ戦を除いてだが。
 ちなみに広大と武藤は、上記のベテラン放出にはあたらない。しかし、この2人はベガルタで定位置を確保していたわけではない。オファーによっては新天地に向かうのはプロとして当然の事。特に広大は、名将石崎氏に乞われての移籍とのもっぱらの噂。よりによって開幕ダービーで戦うのかとの感慨も大きいけれどもね。武藤も河岸を替える事を検討するタイミングだったのは確かだ。瞬間的なスピードと縦に出ながら強烈なシュートを打てる素材は間違いないが、ベガルタではとうとう動き出しのタイミングを身に着ける事ができなかった。おそらくこの選手は、武藤に合わせた布陣を引くチームでないとフル機能は難しいのかもしれない。したがいレッズと言う新天地選択が正しかったのかは判断が難しいところだが。

 元々過去の歴史を振り返ってみても、ベガルタは若手選手をうまく育てた歴史に乏しい。ブランメル初期の放漫経営時代は言うまでもないが、90年代後半の縮小経営体制時はチーム作りそのもが機能せず。清水氏時代は若手云々ではなく再生工場としての自転車操業。J2降格時代に梁や菅井をうまく育てた事になってはいるが、実際は怪しい。特にJ2降格直後の3シーズンは、ベルデニック、算数都並、ジョエル・サンタナの各氏と監督が毎シーズン交代し、強化方針も定まらず迷走(まあ、これはこれでとっても愉しかったけれどもね)。梁や菅井や富田は、「ベガルタが育てた」ではなく「ベガルタが混迷していたにも関わらず立派に育ってくれた」と解釈すべきだろう。J1復帰後は、「育ってくれた」梁らを軸に、鎌田、上本、石川、角田、太田、赤嶺、そしてウィルソンと言った格段の中堅選手を移籍で獲得し、ACLまで上り詰めたのは、皆様ご記憶の通り。

 そうこう考えると、今シーズンは正にクラブとしての実力を問われる事となる。
 奥埜はベガルタユース出身だがトップ昇格は時期尚早と判断され、提携している仙台大で強化後加入。さらにVファーレンにレンタルし実戦経験をたっぷり積んでの復活となった。しかも、副主将にも就任。ベガルタと言うクラブが時間をかけて育ててきたこのタレントにかかる期待は大きい。そして茂木。こちらはベガルタユース史上最高傑作との噂も高く、本人も明確に開幕スタメンを意識した発言。この2人がどこまで活躍してくれるか、期待は高まるばかりだ。他にも、奥埜同様レンタルで経験を積んできた山本、韓国学生界屈指の実力者として名高い金眠泰、全国制覇経験のある西村。よい若手選手が多数加入している。さらに渡部、金園と言った(ベガルタ得意の)良好中堅選手の獲得。そして彼らを率いるのは、(昨シーズン、あの絶望的状況からチームを建て直しJ1残留に成功した格段の実績を誇る)若き渡邉監督。うん、例年になくワクワクしてくるな。
 その開幕に迎えるのは永遠のライバルモンテディオ。名将石崎氏、山の神山岸。そして、ディエゴ、中島、萬代、広大と言ったかつての戦友達。観客動員面から考えると、開幕戦でこのカードはもったいないと思うが、イベントとして最高なのは間違いない。
 このワクワクするシーズンの最初のオーラの肴として、試合後の広大の憮然とした表情を愉しめるかと思うと最高だ。
posted by 武藤文雄 at 08:41| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月04日

2015年開幕が近づく、Jリーグの本質的変化

 諸事多忙を言い訳に更新をサボって申し訳ありません。開幕も近づき、少しは真面目に更新したいと思っています。と言う事で、きょうは最近のJリーグについて。

 Jリーグは本質的な変化の時代を迎えている。

 変化と言っても、くだらないプレイオフ制度の導入のような些末な変化ではなく、もっと本質的な話だ。
 強いクラブの要件が明らかに変わり始めているのだ。従来リーグの上位を占めるクラブのほとんどは、強力な親会社の支援を受け、Jリーグ黎明期あるいは前身の日本リーグ時代からの歴史の積み上げを持っていた。しかし、ここ数シーズン、そう言った状況が変わりつつある。
 その先鞭を切ったのは我々ベガルタだった。我々は2012年シーズンJ1で準優勝し、ACLに出場に成功した。過去ACLに参加権を得たのは、90年代までにJリーグに参画したクラブ以外では、潤沢な資金に恵まれたFC東京のみ。そこに楔を打ち込んだのが我々だったのだ。
 加えて、最近はJ1に経営規模が小さい地方都市をホームとするクラブが定着するのは当たり前になってきている。2シーズン続けて優勝争いに参画したサガン、粘り強くJ1で戦い続けるヴァンフォーレ、我々の永遠のライバルであるモンテディオのJ1復帰。仙台ほど都市規模が大きくないライバル達が堂々とJ1で戦うのが、当たり前の時代となっている。
 さらに、2002年ワールドカップ地元開催以降に、本格強化に乗り出したクラブの進境が著しい。山雅が、全国リーグが3段階となった後に、初めて地域リーグからステップアップを重ねJ1昇格に成功したのがその典型だ。また、クラブライセンスの関係でJ2挑戦権を得る事はできなかったが、ギラヴァンツがJ2の5位となったのも新しい時代の現れだろう。
 一方で、J1で優勝争いを期待されるようなクラブがJ2に降格する事例や、経営規模が大きく歴史にも富んだクラブが、J2に陥落した以降、中々J1に復帰できず苦しむ事例も散見される。

 この現象は欧州では全く見受けられないものだ。
 今日の欧州においては、一部のトップクラブにトッププレイヤと富が偏在。欧州チャンピオンズリーグの上位進出国、あるいは西欧のトップ国の各リーグの上位進出国は固定化してしまっている。これは言うまでもなく、テレビマネーを軸とする大量のキャッシュが、国際的注目度の高いトップクラブのみに流れ込んでしまっているからだ。
 もっとも、欧州においてはチャンピオンズリーグが充実する前も、過去数十年、今日ほどの偏在は見受けられずとも、上位クラブは偏在していた。スペインではレアルとバルサが、イングランドではユナイテッドとリバプールが、イタリアではユーベとミランとインテルが、ドイツではバイエルンが、それぞれリーグを席巻していた。ただ、当時はもう少し牧歌的ではあった。スペインではソシエダやビルバオが、イタリアではカリアリが、イングランドではフォレストやアストンビラが、それぞれ優勝する事があった。また、セルティックやステアウアのような小国のトップクラブが欧州を制覇した事もあった。確かに、そのような愉しい事例は見受けられなくなった。けれども、そのような「番狂わせ」を見る機会は、昔から少なかったのだ。
 要は、欧州のトップ国は、ここ最近25年の変化を抜きにしても、一部トップクラブが圧倒的に強い構図だったのだ。
 もちろん、ブラジルやアルゼンチンにはここまでの寡占化はない。しかし、いわゆる老舗のクラブ、ブラジルにおけるコリンチャンズ、サンパウロ、フラメンゴ、フルミネンセ、グレミオ、インテル等が、同様にアルゼンチンのボカ、リーベル、インデペンディエンテ、サンロレンソあたりが常時安定した成績を残している。
 思い切り、乱暴に語ってしまえば、サポータの支援が厚く、経済規模の大きなクラブが、ずっと格段に強いのだ。
 
 そう考えると、今日のJの混戦は誠に興味深い。もちろん、一般的には裕福なクラブが強いのは確かだ。しかし、あまりに例外事象が多すぎる。FC東京が、ガンバが、ジュビロが、セレッソが、誰もが羨む裕福なクラブが、毎年毎年2部リーグに降格しているのだ。
 その要因の一つは、日本のトッププレイヤの多くが、欧州でプレイするようになっている事、あるいは日本の相対的経済力が他国と比較して落ち込み、格段の外国人選手を連れてこれなくなっている事、それらにより裕福なクラブが、圧倒的戦闘能力差を発揮しづらくなっている事にあるのだろう。
 けれども、それだけだろうか。そうは思えないのだ。むしろ…

 Jリーグは日本の津々浦々に浸透したと言う事ではないか。そして、日本中すべてのクラブが、的確な強化を行えば上位進出が可能となる時代が到来した。いずれのクラブも、一つ間違えば下位リーグに降格するだろうし、的確な施策を採れば上位を伺いアジアを狙える。
 そう言う時代になったのだ。他国のサポータがここまで愉しいリーグを所有しているのだろうか。私は、そのような情報を今のところ入手していない。うん、どこのクラブが上位に行くか、下位に沈むのか。誰も予想できない。そのくらい素敵なリーグを、我々は所有しているのだ。何と素晴らしいことか。この幸せをじっくりと噛み締めて愉しんでいきたい。
posted by 武藤文雄 at 00:47| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月31日

村井チェアマンは、なぜ我々サポータをいらだたせるのか

 以前から述べてきたが、自分の考えを明確に語っておく。私はプレイオフ導入には反対だ。シーズンを通しての七転八倒の結果、じわじわと決定される順位争いこそ、最高の至福と確信しているからだ。いや、過去数十年間体感してきたからだ。
 しかし、サッカービジネスが完全なグローバル競争の最中におり、岡崎慎司や内田篤人のような日本人トップスタアの多くは欧州でプレイし、スポーツファンの注目の多くが欧州に向いている事。一方で日本の経済状況は長期低落状況から抜け切れず、少子化によりパイも減っていく事。さらに、日本人の余暇の選択肢の多様化は華やかで、競合となる娯楽は無数に存在する事。これらを考慮すれば、Jリーグを取り巻く状況は非常に厳しいのは確かだ。サッカーよりも娯楽として先行して社会注目が大きいプロ野球の地上波視聴率の低迷は、娯楽の多様化の現れの典型だろう。そのような、難しい状況下で、日本にもっともっとサッカーが普及し、たくさんの方々がサッカーを愉しむ環境が準備されるならば、プレイオフ導入のような劇薬投入を全否定はしない。ただし、その手段が熟慮されたものであれば。
 そして、残念な事に過去幾度も危惧した通り、浅慮の結果としか思えない悲しい日程が発表されてしまった。先日も散々突っ込んだが、シーズンで一番盛り上がるはずの終盤を、Jリーグ及び日本協会当局が、自ら貶めるような行為は、とにかくとにかく悲しい。

 せめて、このような悲しい日程にするのだから、それによってJが格段に盛り上がるのならば救われるのだが、肝心の導入責任者のチェアマンの村井氏の歯切れが悪いのだ。

 先日の毎日新聞でのインタビューを抜粋する。
 サポーターにとっては、1ステージ制が一番分かりやすいし理想だと、僕も理解しています。
 ただ、日本のみなさんにアンケートをとると、Jリーグに関心があると答えているのは3割ぐらい。残り7割は、おそらく一つのクラブをずっと熱心に見てくださるような人ばかりではない。そこで前期優勝、後期優勝、チャンピオンシップでの年間総合優勝と、いくつかヤマ場を分散することによって、サッカーに触れる機会が増えると思うのです。
 1ステージ制の場合は、いつ、どこの試合で優勝が決まるか分かりません。その点、チャンピオンシップは、間違いなくその試合で年間王者が決まります。そうすれば、その試合に注目してくださる人が増えるのは間違いありません。
 国際サッカー連盟(FIFA)ランキング上位50カ国の中で、1ステージ制を行っているのは6割ぐらい。残り4割はシーズンを分けたり、シーズンの後にポストシーズンを設けたりして、ヤマ場を増やしています。例えばアルゼンチンやメキシコも2ステージ制で、最後にポストシーズンで戦っています。
 そこで日本も、2ステージ制に再度チャレンジさせてほしいと思い、踏み切りました。Jリーグの選手たちも、短期決戦で一発勝負という大舞台で、最高に緊張感のある試合をしてくれればと思います。

 氏は、ここでプレイオフの必然性を説明しようとして、データを持ち出しているのだろう。他人を説得するためには、データを根拠に語る事が必要だ。しかし、データを並べるだけでは十分ではなく、そのデータが論理的説得性を持たなければならない。そして、ここで村井氏が提示しているデータには説得性がない典型例だ。それは最初に「1ステージ制が一番分かりやすいし理想だ」と言い切ってしまっているからだ。最初に負の結論を述べてしまって、「残り7割は、残り4割は」と、いくら語っても迫力は全くない。
 どうしても、数字で説得したいのならば、損益計算書でも貸借対照表でも資金繰り表でもよいから、プレイオフを導入する事で「もっと儲かる」と言うに尽きるのだが。

 もう1つ。2ヶ月以上前の話だが。10月19日のNHKの日曜日のスポーツニュースに、村井チェアマンが登場し、懇切丁寧にJリーグを批判、糾弾した。曰く「選手が頑張っていない」、「審判が下手くそだ」、「技術レベルが低い」云々。その上で、村井氏は「だから来シーズンからはプレイオフを導入します。」と締めた。大が、ちtwitterで当毒づいた。
 村井氏の意図を忖度する。公共放送で「Jの改善必要性」を強調し、「プレイオフ導入」の必然性を語りたかったのだろう。そして、ビジネスの世界で、改善提案を周囲に納得させるためには「悪さ加減を明らかにする」のは有効な手段の一つだ。だから、氏は公共放送に出演の機会を活かし、「悪さ加減」を滔々と述べ続けた訳だ。けれども、これが逆効果だったのは言うまでもない。あれを見た一般の方々(サッカーに格段の興味を持たない方々)は、「Jリーグの総責任者であるチェアマンが『つまらない』と言うのだから、Jリーグってつまらないんだ」と思った事だろう。そして、愛するJリーグを愚弄されたのだから、我々サポータは激怒した。
 だいたい、商売の総責任者が、公の席で嬉しそうに自分の商材を非難してはいけない。これは商売の鉄則である。「悪さ加減」を語る必要があるのは、内々の打合せにしておけばよいのだ。

 つまるところ、村井氏は商人ではないのだろう。
 この人の経歴(Wikipediaより)を見ると、リクルートで要職を務めたとの事だが、人事畑が長かったらしい。いわゆる管理系の仕事が得意分野なのだろう。だから、生真面目に「悪さ加減」をデータを用いて語ろうとするのではないか。

 トップが管理畑の人である事を示した典型事例が、今シーズン最終節でのアルビレックス対レイソルの大雪中止試合の処置。リンク先のドメサカ氏のコメントがすべてを表している。
(前略)カシマスタジアムが選ばれたのは大方の予想通り、日程と管理体制の面からだそうです。
カシマスタジアムは、アントラーズの運営会社である株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーが指定管理者として直接運営管理を行っているので、スピーディな対応が可能だったのでしょうね。
最初からこの理由を明かしていたらもっとよかったと思います。
 リーグ最終節での自然条件による試合中止。少しでも早く選手たちにオフを提供したい思い、直後に控えるJリーグアウォーズ。現実的には的確な対応だったのかもしれない。けれども、最終節をじっくりと味わいたい両軍のサポータ達に対する営業的配慮は足りなかった。Jリーグを支えるのは、1つ1つの充実した試合のはず。その現場重視の姿勢があれば、ドメサカ氏が語る通り、しっかり事前説明が行われたはずなのだが。

 話を戻そう。
 村井氏の今の仕事は管理だけではないのだ。Jの魅力を多くの人々に伝える事も重要なのだ。

 たとえば。
 地上波のスポーツニュースや一般紙のインタビューにおいては。
 「これほど、魅力あふれる組織的サッカーが行われているJリーグは欧州からも尊敬されている。」とか何とか言って、オシム爺さんなり、ベンゲル氏なり、プラティニ氏なりのコメントを添える。その上で「この宝石のようなJリーグの喜びを少しでも多くの人に知って欲しい。そのために、プレイオフを導入させる事とした。」と胸を張ればよい。また「本来は1ステージ制であるべきでは?」と言う質問に対しては、「まだ20年ちょっとの歴史しかないJリーグ、いつか世界最高のエンタティンメントを目指し、今はアルゼンチンやNFLからの学びが重要。特に『スーパーボウルへの道』は勉強になる」とでも答えれば十分だろう。

 一方、Jのコアサポータ達には浪花節である。「皆様の気持ちはよくわかる。しかし、霞を食っては生きていけない。皆様の宝物を維持し、ますます発展させるために、今はキャッシュが必要なのだ。皆様の愛する選手の待遇を、もっともっとよくしたい、プロ野球には絶対に負けたくない。悪魔に魂を売り渡した責任はすべて私がとる。」と、まず掴む。その上で「プレイオフ導入により、各クラブはこれだけ儲かるのだ。私は広告代理店から、これだけカネを引っ張ってくる事を約束する。」と堂々とカネの話をすればよい。また「94年のラモスのループシュートの美しい弾道、95年の井原の完璧な守備、99年の沢登の直接FKの美しさ、そして04年のマリノスとレッズの死闘。確かに邪道かもしれない。でも、あのような戦いをまた見たいという誘惑を、どう考えるか。」と言う切り口も有効だろう。サッカーダイジェストやエルゴラッソあたりの専門誌で丹念な説明を行うのも重要だ。その場合、聞き手に大住良之氏や宇都宮徹壱氏のような生真面目な人を選んではいけない。後藤健生氏や大島和人氏のようなリアリズムを好むインタビュアを選択すべきだろう。

 ところで。
 村井氏はわかっているのだ。Jの集客増は結局のところ、地道な活動の積み上げが必須という当たり前の事を。
 たとえば氏は、「ホーリーホックの地道な努力こそ本質」と大本営発表で語っている。さらに、中長期的な本質として「劇場としてのスタジアムを改善、いや改革していく事」の重要性も。一部を抜粋しよう。
 部屋の反対側の壁には夢のスタジアムプランが10枚以上貼られている。キーワードは、「駅前、街なか、4面屋根付き、多機能型、フットボールスタジアム」だ。今後、スポーツで地域を元気にしていくためには、その環境整備は重要だ。サッカーに限らず、様々なイベントが開催でき、近隣のショッピングモールやホテルなどとも併設される施設の整備は私の重要なミッションでもある。雨にも濡れず、トイレがきれいで、フードコートが広く、ショッピングモールに近ければ彼女をデートに誘えるはずだ。そんな夢を毎日のように広げている。
 いや、おっしゃる通りだと思う。
 せめて少なくとも、氏が語れば語るほど状況が悪くなる現状は、何とかすべきではないか。氏は営業と言うか広報と言うか、未来を代弁できる幹部を持つべきだろう。たとえば。中山雅史さんはいかがだろうか。
posted by 武藤文雄 at 01:23| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月23日

Jの来シーズン日程を見ての大いなる不安

 来期のJリーグ及び天皇杯の日程が公表された。J1チームの10月以降の日程を書き下してみた。

 悲しい。

J1後期第13節 10月3日(土)
ナビスコ準決勝第1戦 10月7日(水)
ナビスコ準決勝第2戦 10月11日(日)
天皇杯3回戦 10月10日(土)、11日(日)、14日(水)
J1後期第14節 10月17日(土)
J1後期第15節 10月24日(土)
ナビスコ決勝 10月31日(土)
J1後期第16節 11月7日(土)
天皇杯4回戦 11月11日(水)、14日(土)、15日(日)
J1後期第17節 11月22日(日) 
 ここで多くのクラブはおしまい
プレイオフ1回戦 11月25日(水)
プレイオフ準決勝 11月28日(土)
プレイオフ決勝第1戦 12月2日(水)
プレイオフ決勝第2戦 12月5日(土)
拡大トヨタカップ?
天皇杯準々決勝 12月26日(土)
天皇杯準決勝 12月29日(火)
天皇杯決勝 1月1日(金)

 ここでは敢えてプレイオフの是非については語らない。また、毎年一番リーグ戦が盛り上がる11月にたった2試合しか試合が準備されず、観客動員に悪影響を与えそうな事も置いておこう。

 何が悲しいかと言えば、J1チームが固定して約束された試合は11月22日に完了するのに対し、勝ち残ったチームが、その後40日間の活動を要求される事だ。クラブごとに、あるいはトッププレイヤごとに、ここまで公式戦が行われる期間が異なる事に矛盾を感じずに、日程を策定するJリーグ及び日本協会の関係者の鈍感さは、何なのだろうか。
 ここ最近、日本のトップレベルのサッカー界を悩ませ続けているのは、日程問題に尽きる。日本代表の強化(特に欧州と日本を行き来する選手の消耗対策)と、健全なJ1の日程確保を両立させるために、他のすべての日程は犠牲にされてきた。ACLで苦杯を続ける各チームの敗因の1つに、中国韓国勢と比較して過酷な日程がある事は言い古されている。また、天皇杯もナビスコカップも、決勝戦以外の試合を無理に消化する事で、観客動員も一般の注目も阻害してしまっている。この来季日程を見れば見るほど、日程を策定するJリーグ及び日本協会の関係者に、そのような反省がない事が理解できてしまうではないか。これは、観客動員面でも、社会的注目面でも、選手達の能力向上面でも、マイナスばかりなのにもかかわらず。
 11月25日から1月1日までの約40日間、シーズンは継続するがプレイオフにも天皇杯にも勝ち残らなかったクラブはオフに入る事を余儀なくされる。これらのクラブは金儲けの機会を失ってしまう。勝ち残れなかったのは各クラブの責任であるが、1シーズンは約10ヶ月300日である事を考えると、13%(40日÷300日)も稼働日が失われてしまう。同時に、それらの敗退クラブのサポータは13%も娯楽の機会を奪われるのだ。顧客の多くに愉しむ機会を提供しない事は、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。
 一方で勝ち残ったクラブ(特に天皇杯に勝ち残ったクラブ)の選手達も難しい状況を迎える事になる。昨シーズンまでは、これらの時差は拡大トヨタカップ+天皇杯でまだ20数日程度だったが、来年は40日。何よりも休暇が格段に短くなってしまう。トップレベルの選手達は、私たちサッカー好きの大切な大切な資産。彼らに少しでも長く健全に良好なプレイを継続してもらうためにも、オフでしっかりと精神的にも肉体的にも休んでもらう事は必須なはずではないか。貴重な資産を大事にしない事は、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。
 さらに言えば、リーグ戦終了と同時に(実際はもっともっと早くから動いているのだろうが)、各クラブは翌シーズンの編成を行う。しかし、オフに入ったクラブの選手と、戦闘を続けているクラブの選手は、まったく精神状態が異なる。またオフに入ったクラブと、入っていないクラブでは、スタッフの時間的な余裕が全く異なる。これで翌シーズンに対する健全な編成が可能とはとても思えない。例えば、今シーズンは天皇杯決勝をリーグ戦終了の翌週としたため、全クラブが完全にオフに入っている。だから、あちらこちらで見受けられる「選手を取った、取られた」報道も、これはこれでシーズンオフの1つの娯楽となっている(取られてばかりいるクラブのサポータが言うのだから、説得力があるでしょ)。しかし、これらはオフだから公平に扱えるのだ。「取った、取られた」がシーズンを残しているクラブと残していないクラブで、的確に行えるのだろうか。元々、サッカービジネスは各クラブの経済力や歴史力等で各クラブのビジネス能力は全く異なる事を前提としている。だからこそ、編成準備期間のように極力公平にすべき材料を揃えない事は、、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。

 プレイオフ導入によって、Jリーグの本質的な面白さが損なわれる事はとてもとても残念だ。しかし、私が言うところの「本質的な面白さ」は主観の問題であり、意見が異なる人もいるのかもしれない。そしてプレイオフにより多くのキャッシュがJリーグに入ってくると言うならば、私のような年老いたサッカー狂の意見は重視されなくても構わないと思う(これについてはまた別に講釈を垂れます)。
 けれども、来シーズン予定されている、(私から見たら)とても残念な日程を見ると、総合的なキャッシュインも、サッカーに対する社会的注目も、選手達の能力向上も、健全な競争も、すべてがマイナスになるのではないかと思えてくる。いや、杞憂ならばよいのですが。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(9) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月13日

宇佐美と遠藤爺と石崎氏による証明

 天皇杯決勝、ガンバがモンテディオに3対1で快勝。国内タイトル3冠を達成した。

 正直言って試合前の気持ちは複雑だった。ガンバが3冠をとっても嬉しくもなんともない。と言う事で、典型的日本人である私は判官贔屓気質はあるが、それでもモンテディオが、我々ベガルタより先にビッグタイトルを取るのには抵抗があった。典型的日本人である私は心が狭いからね。ゴール裏のモンテディオサポータを見ると、その気持ちは一層格段になった。いや、単に羨ましかっただけです。

 モンテディオは、立ち上がり最前線からのプレスで攻勢をかける。戦闘能力が劣るチームが、開始早々仕掛けるのは有効策の1つ。ところが、ガンバの最初の攻め込から失点してしまう。敵陣深くのフリーキックから東口が高精度のロングボール、パトリックに競り負け、宇佐美が芸術的胸トラップから鋭いシュート、GK山岸は反応するのが精一杯で、宇佐美が鋭く詰めたもの。モンテディオとしては、序盤のリスクテークが裏目に出た。先制されたのは仕方がないが、その後も攻撃的に前線からプレスをかけ続けたのには疑問が残った。先制したガンバが後方を分厚くして、宇佐美とパトリックを残した速攻を狙うのは自明。先制された以上は、まず前半は2点差にされない戦い方をすべきだった。案の定、CK崩れから速攻を許し、宇佐美とパトリックの連係から2点目を許してしまった(この場面、左サイドからカットインするパトリックの左大外への倉田の走り込みが絶妙)。過去日本の単身突破ストライカは、釜本、福田、久保、(挙動開始点がやや後方だが)本田と、体幹の強さを活かすタイプの選手ばかりだったが(柿谷や原口もそうだが)、細見で技巧を活かした突破力で得点を決めてしまうタイプのFWが登場してきているのは、真にめでたい事だ。「やれ、ネイマールやハメが20歳そこそこで」と文句を言いたい人は言っていればよい。「宇佐美は時々集中を欠くのがケシカンラン」と言う指摘する人には「集中を欠かずに戦いそれだけで90分終えるストライカと、たまに集中を欠くが天皇杯決勝で3点に絡むストライカと、どちらを評価しますか」と問う事にしよう。
 それでもモンテディオは果敢に戦い、早め早めの交代で、ディエゴの使い方を切り替えながら、幾度となく仕掛ける。それにしても、石崎のオッサンは凄いな。あのディエゴを「献身的な選手」と飼い慣らし、鮮やかなチームを作り、再びJ1に登場するのだから。そして、石崎氏はプレイオフ決勝で好プレイを見せた林を投入し、前線に起点を増やす。そして、モンテディオイレブンは、皆ここぞと言う時間帯に集中して人数かけて押上げる。この短い時間帯に集中するやり方は、J1時代にも見せたこのクラブの特長と言えるのかもしれない。そして老獪な守備を見せていた石川の前進からのクロスが、こぼれる所をロメロ・フランクが、とっさの反応で合わせた。ここまで幾度となく好捕を見せていたGK東口だが、ロメロのアウトサイドキックによるタイミングが外されたキックには反応が遅れた。少々偶然が重なった感もあったが、「タイミングのずれ」が得点の秘訣の1つである事を示す一撃だった。
 追いつかなければならない石崎氏はさらに仕掛ける。3枚目の交代に中島ユーキが出てきた際に、思わず「頑張れユーキ」とつぶやいたのは秘密だ。ところがその直後に山田が足をつり、モンテディオは一時10人に。その瞬間を逃さないから、遠藤爺には恐れ入る。人数が少なくバイタルを押さえづらくなっていたモンテディオ守備陣に対し、ちょっとした陽動動作で溜めを作った直後に、シュートレンジを獲得した宇佐美に正確なラストパス。そして、宇佐美のズドーン。シーズン最後に、遠藤爺の知性を堪能させていただいた。勝負はついた。

 シーズン当初、あの脆弱だったベガルタより、さらに冴えなかったガンバ。しかし、長谷川健太氏は粘り強く強化を重ね、強力なチームを作り上げた。東口、岩下、丹羽、そして今野が中央を固める守備陣は、(岩下が冷静さを保っている限りでは)極めて強力。後方から今野の、側面から精力的に動き正確な技術を誇る大森と倉田、それぞれのサポートを受け、悠然と組み立てる遠藤爺。そして、強力な2トップ。よいチームだ。長谷川氏は「強いチームをしっかりと勝たせる」監督として、堂々とした実績を積む事に成功した。49歳の長谷川氏は、3歳年下の森保一氏と並び、国内最高の実績を積んだ監督となった事となる。

 よい決勝戦だった。
 来年天皇杯決勝は、また1月1日に戻されると言うが、やめて欲しい。今年のようにJの最終節前後にすればよいのだ。理由は過去述べた通り(天皇杯そのものの大会方式見直しを含め)。天皇杯決勝を元日にしないだけで、破綻している日本サッカー界の日程を僅かながらも改善できるのだ。とにかく、明日から全てのJリーガが休暇に入れるのだ。私たちに、毎週毎週歓喜と落胆と言う最高級玩具を提供してくれる戦士達に、適切な休息を提供するのがいかに重要な事か。
 元日決勝は、Jリーグ開幕前、サッカーが多くの国民の注目を集める前は意味があった。しかし、Jリーグが開幕し、多くの国民がサッカーを知るようになり、もう20年が経過した。正月に拘泥する必要はない。年末年始にサッカーを見たいならば、高校サッカーがある。元日くらいは休めばよいのだ。
 宇佐美と遠藤爺と石崎氏が証明してくれた。もう、元日決勝は終わりにしよう。
posted by 武藤文雄 at 23:35| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月04日

山岸範宏の準備

 お盆休みに実家でスポーツニュースを肴にダラダラと飲んでいた折、「楽天イーグルス敗戦」映像が流れてきた。母が「おやまあ、また負けたか、今年は弱いねえ。」と嘆く。調子だけはよい息子が「田中マーがいなくなったのだし、仕方がないでしょ。則本もいるし、松井が出てくればまた強くなるよ。」等と慰めたら、「野球は2部落ちがないからいいねえ。ところでベガルタは大丈夫なのかい。」と切り返されて動揺したのは秘密だ。

 29日、ヴォルティスに辛勝し、エスパルス、アルディージャの両ライバルが苦杯を喫し、ベガルタのJ1残留が決まった。試合後の歓喜の宴。うん、盛り上がりました。先日クドクドと講釈を垂れたが、本当に苦しいシーズンだった(いや、来年はもっともっと苦しいシーズンとなるような予感もありますが、まあそれはそれ)。
 こうなると、肴は「J1への残留争いと昇格争い」となる。正に、他人の不幸は蜜の味。さらに宴に仙台出身在住の謎のセレ女が参加してくれた事もあり、盛り上がりは最高に。「誰を強奪しようか」と。レアルマドリード、バイエルンミュンヘン、浦和レッズ、FC東京。あの晩だけは、気分は金満クラブのサポータ、だった。
 一夜明け、素面になって現実を思い起こすと、来期の事を考えて早くも胃が痛くなるのだが、それはそれ。

 と、バカを語るのはさておき。上位リーグからの降格、下位リーグからの昇格は、見世物としては本当におもしろい。いや、サッカーの醍醐味と言っても過言ではないだろう。
 そして、先日のジュビロ対モンテディオは、野次馬にとっても、忘れ難い試合になった。

 どうしても点を取らなければならない終盤、CKに対応しGKが上がるのは珍しい事ではない。けれども、それがうまく行くかどうかは全く別な話。裏目に出る事もあるし。少なくとも、国内においては、デビュー直後の川口が公式戦でヘディングをポストに当てた記憶はある。しかし、海外を含めてトップレベルの試合でこのような得点が生まれたのは思い起こせない。「いや、お見事!」としか言いようがない。
 ともあれ、技術面から整理しておこう。CKのキッカーは大ベテランの石川竜也。若い頃から左足の精度には格段の定評があった男だ。その石川がニアに入り込んだ山岸にピタリと合わせた。山岸のジャンプのタイミングは良好で、マークしていたのは岡田(だったと思う)にしっかりと競りかけられたものの、上背の差でヘディングを取る事に成功した。しかし、岡田がしっかり飛んでいたため、山岸も当てるのが精一杯、どこにボールが飛ぶかは想定していなかっただろう。ところが、ジュビロGK八田は、ほどよくミートしたボールにタイミングを取る事ができず反応できない。ボールはゆるやかにファー側のサイドネットを揺らした。
 山岸はこのような事態を想定して、ちゃんとヘディングの練習をしていたと言う。それが岡田との競り合いを制した要因なのだろう、恐れ入りましたそして、石川のクロスの精度は言うまでもない。実際、ゴール裏のサポータ達に向かった石川のガッツポーズは、何とも言えず味わい深かった、大したものです。
 しかし、石川の精度、山岸のタイミング。そこまではモンテディオ側の準備の成果だが、そこから先は「神の領域」だったのだ。

 名波氏は語った。「奇跡を呼ぶ力が山形にはあって、僕らにはなかった。」その通りだと思う。ピッチ上で日本サッカー史屈指の視野の広さを誇った名波氏が、この悲劇から何を学ぶのか。この日のジュビロイレブンには、日本サッカー史上、個人責任としては最大の痛恨を演じた駒野友一もいた。駒野は、この悲劇から何を学ぶのか。かつてアジアを制したこの歴史あるクラブに訪れたこのドラマ。改めて、日本サッカーの歴史の厚みを感じる事のできる試合だった。

 美しい試合を提供してくれた、両軍のイレブン、サポータを含めた関係者に、感謝、尊敬、そして羨望の想いを伝えたい。

 そして。いや、しかし。
 山岸が試合後に語ったように、モンテディオはまだ何も掴んではいない。全てはジェフとの決戦次第。これまたよい試合を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 01:30| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする