2015年05月05日

井原正巳監督への期待

 Jリーグには無限の魅力が詰まっている。その全てをしゃぶり、味わい、語り尽くしたいのは山々なのだが、ベガルタの七転八倒を愉しむだけで、ほとんどの時間が過ぎていく。それでも、隙を見て浮気を愉しみたいのは男の常。で、どうせならば、あれこれ手を出さず、唯一の愛人と愉しむのがよかろう。と、言う事で、今シーズンに関しては井原正巳監督が率いるアビスパ福岡だ。いや、もとへ。言い換えよう、ベガルタ以外の時間は、いよいよJの監督に就任した井原正巳氏を見守る事に費やしているのだ。

 私は井原正巳選手が大好きだった。
 88年10月26日の日韓定期戦。筑波大学3年生だった井原が、日本代表の守備の中核として、崔淳鎬を軸とした韓国に対して、ほぼ完璧な守備を見せてくれた。あの晩の興奮は今でも忘れられない。そして、あの晩の期待通り、井原は幾多の喜び(もちろん涙も)を私に与えてくれた。92年の広島ビッグアーチ、93年のドーハ、そして97年のあのジョホールバル、98年のトゥールーズ、ナント、そしてリヨン。
 井原は1988年1月27日、敵地でのUAEとの親善試合に20歳で起用され、すぐに中心選手として活躍を期待され、常にレギュラとして活躍を継続した。つまり122試合の代表戦のほとんどを、いや違う、すべてを中心選手として戦ったのだ。そして、上記のUAE戦以降93年のUSAワールドカップ1次予選タイ戦で退場になるまでに、B、C代表戦を含め88試合、7958分フル出場を継続した。さらに、その後同予選のスリランカ戦に復帰以降、97年の2月11日のキングスカップルーマニア戦にバックアップ(秋田、小村、斉藤の3DF)のテストを行うまで、52試合のA代表戦4,706分(93年10月4日国立のアジアアフリカ選手権、つまりドーハ直前、コートジボワール戦はカズのVゴール勝ちで延長の26分を戦っている)にフル出場している。その後、幾度かバックアップテストで抜ける事があったが、負傷で戦列を離れたのは、98年4月1日ソウルでの日韓戦での途中交代が初めて(この時井原は30歳になっていた)。つまり、20代の10年間、井原は壊れる事すら一切なく、常に日本代表の大黒柱として活躍してくれたのだ。今日のように、A代表戦が年間15〜20試合行われていたならば(たとえば88年のA代表戦は5試合、90年は6試合、91年は何とたったの2試合!、USAワールドカップが行われた94年ですら9試合に止まっている)、代表出場記録はどこまで伸びていたのだろうか。
 しかも、井原が活躍したのは、日本代表戦でもスタンドに閑古鳥が鳴いていた80年代から始まり、全国民がその勝敗に熱狂するあのフランスワールドカップまで続いたのだ。幾度か書いたが、この日本サッカー界が経験した(おそらく日本を除くいずれの国も経験していない)「超右肩上がり」時代のすべてを、井原は経験したのだ。
 現実的に、井原は日本サッカー史上最高の守備者であった事も間違いない。いや、日本代表選手としても、井原は史上最高の存在だと確信している。井原が活躍していた当時と比較し、国際試合における日本代表の相対的地位は間違いなく高くなった。しかし、苦しい試合になればなるほど、「今、ここに井原がいてさえくれれば」と嘆息する経験が増えていく。06年のドイツでも、昨年のブラジルでも、同じ思いを抱いたのは私だけではないのではないか。
 選手、井原正巳には、いくら感謝してもし切れない思いばかりがある。

 その「日本代表史上最高の巨人」であり、「超右肩上がりの全ての体験者」である井原正巳氏が、アビスパ福岡で、とうとうJリーグの監督に就任した。
 輝かしい実績から考慮すると、あまりに遅すぎた感もある。これは2つの要因があると思っている。1つには、レイソルでのコーチ(ネルシーニョ氏の補佐官)が、あまりに板につき過ぎた事があるだろう。ネルシーニョ氏からすれば、かつてのライバルチームの大黒柱が守備組織構築を担当してくれるのは、とてもありがたかったに違いない((95年のJリーグプレイオフではヴェルディのネルシーニョ氏と、マリノスの守備の要井原の虚々実々の駆け引きは実におもしろかった)。今1つには日本においては「名選手必ずしも名監督ならず」が定着しており、名選手の監督登用に、クラブも相当慎重になっている事が挙げられるのではないか。
 そして、井原氏はいきなり開幕戦から3連敗を喫する。このあたりの映像を見ていると、特に守備ラインでの球際の当たりの不安定さが目についた。よい時はよいのだが、90分の中で、何人かの選手が突然当たりが甘くなってしまっていたのだ。けれども、連敗を脱した4節あたりから、そのような不安定さがなくなり、守備ラインの各選手が粘り強く90分間戦いを継続できるようになってきた。守備が安定した試合が続けば、攻撃も安定してくる。前節、フォルランを軸に猛攻を仕掛けるセレッソ戦は、セットプレイから先制すると粘り強く守り、時に効果的な速攻を繰り出し、見事な勝利を収めた。アビスパが、ジュビロ、ジェフ、セレッソ、アルディージャと言ったクラブと、J2の上位争いを完全に争える戦闘能力を持っていることを示す試合となった。
 アビスパのメンバを見ると、中村北斗、堤、濱田、鈴木惇と言った、かつて若年層代表チームに選考されながらも、伸び切れていなかった選手が目につく。彼らは能力は非常に高いのだが、90分間の集中継続、あるいはシーズンを通しての集中継続と言った課題を克服できずに、ここまで来てしまった感がある。そして、序盤の3連敗時代は、彼らもそのようなプレイ、つまり90分間の中で「抜けてしまう」場面が散見されていた。けれども、ここ最近は、特に堤と濱田に関しては、そのような姿をほとんど見なくなってきた。これは井原氏の薫陶が大きいのではないか。
 選手井原は、判断力、ボール扱い、肉体能力と言った他者に見える能力は、もちろん格段のものがあった。けれども、その格段のプレイを常時継続し、10年以上も日本代表の大黒柱として君臨し続ける事ができたのは、そう言った格段の能力を常に発揮する精神力を具備していたからのはずだ。アビスパの序盤低迷からの脱出は、その自らの精神力を、選手達に的確に伝授できたからではないかと思えるのだ。そう考えると、アビスパの選手はベテランを含め、この偉大な監督から学べる事は非常に多いはず。そして、その指導が的確に遂行されれば、J1復帰も現実的な目標となってくるはずだ。
 もちろん、井原氏の監督経歴は始まったばかり、これから艱難辛苦を乗り越えない限り成功はない。そしてJ2からJ1に昇格する難しさは、今さら繰り返すまでもないだろう。
 けれども、上記したような選手として究極の経験を持った井原氏が、アビスパで監督として成功を築いてくれたとしたら、これは日本サッカー界にとっても、非常に重要な事となる。井原氏は手倉森誠氏と同級生。手倉森氏と異なり監督としてはこれからだが、(ベガルタサポータとしてはちょっと悔しいが)井原氏は手倉森氏が現役時代に積む事ができなかった経験を、あふれるほど持っている。そう、何より井原氏は1億3千万国民に歓喜を提供してきたのだ。
 ちょっとは夢を持っても構わないだろう。

 以下余談。
 井原を称える「イハラー、イハラー、イハラー」と言う歌は、私が歌い始めたものだ。個々の選手を称える歌としては、この「イハラー、イハラー、イハラー」は、植田朝日氏が始めた「オー、ナカヤマ」と並び、日本サッカー界で初めてのものだったと自負している。そして、いつか井原が日本代表監督に就任した際に、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌うのを密かなる夢としてきた。でも、ちょっと待ちきれない自分がいる。
 で、もしこの文書を読まれたアビスパサポータの方がいれば教えてください。アビスパが勝った時、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌ったりしているのでしょうか。もし「Yes」ならば、こっそりと偽アビスパサポータとして、ゴール裏に忍び込み、一緒に歌わせていただきたいのですが。
posted by 武藤文雄 at 01:21| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月03日

苦闘続くベガルタ

 ベガルタは敵地でサンフレッチェに0-2で敗戦。疲労が溜まっている連戦下、攻守の弱点を森保氏に的確に突かれての完敗となった。4連敗と言うつらい結果に加え、守備の大黒柱鎌田が負傷、さらにCBでコンビを組む渡部が次節出場停止。何とも重苦しい結果となってしまった。

 双方とも連戦のため、身体が重い。そのため、前半は無理をしない手堅い試合を狙ってきた。その中で、サンフレッチェは大きなサイドチェンジでスライドするベガルタのサイドバックの外を狙う。そして、ベガルタのブロックにギャップを作ろうとしてきた。その策にはまり、野津田にミドルシュートのスペースを与え先制を許した。この一撃の前にも、柴崎のミドルシュートがバーに当たり事なきを得た場面もあった。森保氏としては狙い通りと言う事だったのだろう。サンフレッチェの強みの1つは、相手の守備組織がしっかりしている状況でも巧みな位置取りで僅かな隙を逃さずに点を狙える寿人がいる事。したがい、センタバックは寿人との位置関係に相当神経を使う必要があり 、どうしてもバイタルのカバーが遅くなる。この攻撃を防ぐためには、サイドチェンジをさせぬように前線から厳しいプレスを仕掛けるか、ミドルシュートを打たれないように中盤選手が几帳面にスペースを埋める必要がある。しかし、連戦で各選手に疲労が蓄積しているだけに前者はあまり現実的ではない。したがって、後者が重要となり、渡邉氏もそれを考慮して、ボランチにフレッシュな武井を起用したのだろう。ところが、この野津田の一撃時、対応した武井がスリップし野津田を止められなかったのだから皮肉なものだ。
 ベガルタとしては、お互いが慎重に戦った前半に速攻で活路を開きたいところだったが、サンフレッチェの水本と塩谷の2ストッパがウイルソンを押さえる。ウイルソンとこの2人の攻防は見ごたえがあったが、とにかく当方の負け。これはこれで悔しいけれど仕方がない。もう少し、金園がウイルソンの近くでプレイし、サポートを密にしたいところだったが、このあたりの連係の熟成はこれからの課題と言う事か。

 リードされた事もあり、後半は序盤から前線に人数をかけ攻めに出るが、分厚く守るサンフレッチェを崩せない。ちょっとチグハグだったのは交代のタイミング。64分に野沢と茂木の2枚を同時交代して勝負に出た訳だが、そうするならば後半頭からあそこまで前掛かりに出る必要はなかったのではないか。せっかくフレッシュな選手を2枚入れた時間帯にもかかわらず、ベガルタの後方の選手達は後半立ち上がりからの攻勢に一息つく時間帯となってしまった。現実的に、連敗している状況で先制を許したのだ。どの選手も同点を狙いに前に行こうとするはず、それならば後半の最初から、ベテランの梁に代えて若い茂木を入れてグッと攻めに出るのも一手段だと思ったのだが。
 そうこうしているうちに、人数をかけた攻めの精度がちょっと悪くボールを奪われ、青山の鮮やかなロングボールを、(寿人に代わって入った)前進速度豊かな浅野に決められ引導を渡される。完全にサンフレッチェの注文相撲にはまってしまった。その後も、ベガルタはいつものように諦めず丁寧に攻め込んだのだが、崩し切れず。

 今年のチームに始まった事ではないが、ベガルタのサッカーは豊富な運動量と球際の強さを軸にしたものだから、連戦や夏場は苦手としている。そして、このサンフレッチェ戦はその難しさが完全に出た試合となってしまった。ナビスコを含め、ここまでの全試合にフル出場していた鎌田が負傷したのも疲労の蓄積からだろう。
 確かに状況は重苦しい。けれども、私は楽観的だ。丁寧に修正を加え、チームとしての戦闘能力を積んで行けばよいのだ。むしろ、新しいチームが早い段階で問題を明確に把握できたと、考えるべきだろう。
 次節以降、中3日で、ホームに強豪FC東京とレッズを迎える。非常に難しい試合となろうが、調子が悪いときは強豪と当る方がよいのだ。対策が絞り込めるから。鎌田と渡部が不在なのはつらいが、上本と多々良がいるのだから、連係面はさておき陣容としては問題ない。昨シーズンの序盤や連敗時と異なり、控えには若い藤村、山本、金眠泰ら実効的な選手も控えているから、様々なトライも可能だ。序盤に勝ち点を積んでいたから、勝ち点計算で短期的に追い込まれる事もない。
 オロオロ、イライラを堪能しつつ、よいチームに成長していく事をじっくりと愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 00:21| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月01日

茂木と渡邉氏が若さを露呈

 ベガルタはユアテックでアントラーズに1対2で苦杯。前半こそ好機を多数つかんだものの、40分過ぎ先制されてからは、終始しっかりと引いてボールを回すアントラーズペース。スコアから見ると1点差だが、当方の得点はアディショナルタイム。試合運びと言う意味では完全に圧倒されており、今シーズン最悪の試合内容と言っても過言ではなかった。
 そして、その敗因は、茂木と渡邉監督の若さにあった。

 先制点はCKから、アントラーズ昌子のヘディングを許したもの。これは完全に茂木のミスだった。ベガルタはゴール前のセットプレイをゾーンで守る。セットプレイ守備がゾーンがよいかマンツーマンがよいかの議論は、とても愉しい知的遊戯。ただ、ゾーンを採る以上は常にボールの落下点への出足を怠ってはいけない。今シーズンのベガルタの守備のよさは、正にそこにあり、いずれの選手も格段の集中力でそれを完遂しているところにあった。しかし、この場面茂木は完全に昌子の後手を踏み、昌子に走りながらジャンプせずともよい高さのヘッドを決められてしまった。高さでやられたのではなく出足でやられた(実際出遅れた茂木は弱々しく足を出していたのだが)。流れの中で「消えられた」訳でも、駆け引きでしてやられたのでもない(ゾーンで守っているのだから、なおさらの事だ)。単に集中が切れ、出足で負けたのだ。直前、ゴール前のもみ合いで、昌子は完全に茂木を明らかに押し、茂木のアピールで主審に注意されていた。茂木は若いものの、このようなしたたかさをしっかり身につけている、と思ったら直後にこれだ。主審が昌子を注意した事で、逆に気が抜けてしまった訳だ。これも経験である。経験なのだが、これを繰り返してはいけない。絶対にいけない。このような事をしていたら、リオは夢と消え去ってしまう事を、強く自覚して欲しい。

 前半、4-1-4-1気味の配置でベガルタは攻勢をとり、多くの決定機を掴む事ができた。梁や野沢のシュートが決まっていれば試合展開は全く異なったものになっていたに違いない、と言いたいところだが、そうだったろうか。正直そうは思えないのだ。と、言うのは、後半立ち上がりからはアントラーズに圧倒されたからだ。これは、先制されて後方のリスクヘッジが弱くなったからではない。老獪な小笠原のサポートを受けた柴崎の挙動開始を、ベガルタの中盤選手が押さえ切れなくなったからだ。要は、前半から飛ばし過ぎたのだ。だから、前半で先制できていたとしても、そのまま1点差をしっかり守り、丁寧にクローズする試合に持ち込めたかとなると、相当疑問なのだ。
 2点目は、そうやってアントラーズペースが続いた時間帯だった。富田が見事なインタセプトを見せ前線をルックアップするも出しどころがない、そこで後方の菅井に戻したところ、ミスパスとなりカイオに拾われ、そのまま失点。厳しい連戦で、中盤で止め切れず苦しい時間帯。闘将が中盤で拾ったにもかかわらず、前線の選手が呼応できず、後方の選手が一息ついたところでミスが出た。もちろん一義的な責任は富田と、明らかに集中を欠いていた菅井にある。
 特に菅井には一言言いたい。押し込まれた場面での投入、久々の試合、普通の選手であれば「難しい時間帯、入りづらい時間帯での投入」と言えるかもしれない。けれども、菅井なのだ。菅井なのだから、そのような普通の選手に対するコメントを述べさせないで欲しいものだ。菅井なのだのだから。いや、菅井らしいか。でも違う、菅井ならば、あのようなミスはご愛嬌だが、反対側のゴールに鮮やかな得点を決めてもらわなければ。菅井なのだから。
 話を戻そう。一義的には富田と菅井のミスだが、あのような状況に持ち込んでしまったのは、やはり渡邉氏の采配の拙さが最大要因だ。あれだけ、ペースが落ちているのだから、前々節のフロンターレ戦同様に選手交代で中盤を活性化させるべきだった。このあたり、フロンターレ戦の反省が足りない。ただ、フロンターレ戦とは異なり、敵監督が奇策を弄してきた訳でもなかった。むしろ、連戦下で前半からあそこまで攻勢をとるべきだったのか、と言う議論にさかのぼるべきなのではないか。
 2点差となって金園を投入。一見、押し返したように見えるが、フロンターレ戦や山雅戦同様、敵エンドには入っているが、前半よかった時間帯のようにサイドに起点を作る事ができず。右サイドを起点にウイルソンの妙技から梁がフリーとなた場面と、敵DFのミスを金園が引っ掛けウイルソン経由で金園が掴んだ2つの絶好機を除くと、それ以外の攻撃はアディショナルタイムの金園の得点を含め、偶然から掴んだチャンスに止まった。アントラーズが落ち着いて引いているのだから、まともに行っては好機を多数作るのは難しい。金園投入と前後して、中盤にフレッシュな選手を投入していれば、中盤が活性化し改めてサイドに起点を設け、効果的な遅攻も可能になったと思うのだけれども。ベンチには、独特の技巧を持つ藤村、強さと展開力を具備する金眠泰、経験豊富な武井らが控えていたのだが。そして、この試合の藤村の起用は88分。2点差で負けているのだ、あまりに遅過ぎる。主将の富田、機動力で好機を作れる梁、信じ難いラストパスを操れるの野沢、この3人に拘泥する気持ちはわかるのだが、せっかく良好な控え選手を保有しているのだから。後は決断だ。あるいは、梁や野沢をフレッシュな状態で勝負どころで投入するやり方だってあるはずだ。このあたり、渡邉氏はまだまだ若い、いや青い。
 渡邉氏の手腕に疑いはない。前節の山雅戦での拙攻を反省し、ちょっとしたフォーメーションの切り替えで良好な攻撃を再三見せてくれた。気が付いてみたら、上記の控え選手含め、選手層も相当分厚くなっている。堅牢な守備も、中盤の運動量が落ちなければ健在だ。氏の巧みな指導により、チームの質は日増しに向上しているのだ。ただ、唯一残念な事は、その見事な指導を、本番で活かし切れない事。もっともっとやれるはずなのに、何とも、もどかしい。

 渡邉氏が名監督となるまでの「もどかしさ」と言う最高級のディナーを堪能できるなんて、何と素敵なシーズンだろうか。そこに茂木が大選手となるまでの「経験と苦闘」と言う最上級の葡萄酒まで加わっているのだ。正にサポータ冥利に尽きると言うもの。諸事情で中々現地参戦できない己の愚かしさを反省する毎日である。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月26日

ベガルタ渡邉監督が迎えた壁

 アディショナルタイム、少々単調だが強引に攻め込み同点を狙ったベガルタだが、田中隼磨に対しウイルソンがファウル。直前の場面で、何やらもめていたこの2人だが、隼磨の挑発にウイルソンが乗せられてしまったと言う事だろう。そして無意味にボールを失ったこの瞬間、ベガルタの連続攻撃が途切れ敗北が確実となった。
 ベガルタは敵地で山雅に完敗。リーグ戦は前節のホームフロンターレ戦に続き連敗、公式戦としては水曜日のエスパルス戦を含め3連敗、一時期の勢いがすっかり薄れてしまった。まあ、贅沢を言ってはバチが当たるのだが。

 開幕戦から組織的で厳しい当たりを軸にした堅実な守備と、ウイルソンを軸にした速攻で上々の成績を収めていたベガルタがおかしくなったのは、前節フロンターレ戦の後半だった。
 まず前々節の敵地マリノス戦は、アディショナルタイムに追いつかれたものの、今シーズン最高の内容と言っても過言ではなかった。堅実な守備はそのままに攻撃もよかったのだ。ナビスコカップでよいプレイを見せ、マリノス戦で右バックに起用された多々良が前進のたびに丁寧なファーストタッチ、ふてぶてしいボールキープを見せる茂木とよい連係を見せる。そこに梁、ウイルソン、奥埜らが絡み、いわゆる「3人目の動き」で幾度も好機を作った。元々左サイドは石川直樹と野沢の連係で崩す形は昨シーズンより確立しており、両翼から「行ける」状態となったのだから、期待は広がった。
 フロンターレ戦の前半は上々の内容。中村憲剛と大島を軸に高精度のパスを回してくるフロンターレに対し、前節に確立した両翼からの速攻が機能、ウイルソンの先制弾の他にも、好機の数はベガルタの方が多かった。これは、今シーズン序盤より好調な守備に加え、前々節のマリノス戦から機能し始めた右サイドの攻撃がよかったからだ。
 ところが、後半フロンターレが前に選手を増やし攻めかけてきた60分以降、完全に押し込まれ逆襲が全くできなくなった。渡邉氏はその状況を放置し、押されるがままで様子を見ようとした。大変な愚策だった。あれだけ押し込まれたらいつかやられる。あえなく逆転されてしまった。悔しいのは、その後フレッシュな金園を投入し、押し返す事ができた事だ。敵が無理を仕掛けてきたのだから、落ち着いて対応さえしていればよかったのに。
 そして、点の取り合いとなれば、流れはフロンターレのもの、バタバタした内容となり守備へのしつこさがなくなり、さらに押し込まれた時間帯が長かった事で後方の選手の疲労も顕著で、一度同点に追いついたが突き放されて2対3での敗北となった。
 采配ミスは、常に一種の結果論。しかし、あそこまで押し込まれて事態を放置したのだから、この敗戦については、渡邉氏の責任としか言いようがなかった。
 続くナビスコのエスパルス戦は、ゴールデンウィークの過密日程を考慮して、完全なターンオーバ。CBの渡部と鎌田を除き、すべてのメンバを代えて臨んだ。負けたと言う結果、蜂須賀、二見の両サイドバックのボール扱いが不安定だった事、開幕から中盤の控え一番手の杉浦が消極的だった事など残念な事も多かった。一方で、ようやく金園が得点した事、3年目の藤村が独特のボール扱いで変化をつけた事、負傷で出遅れいた金眠泰が強さと展開力を見せた事など、よい内容も多かった。

 そして、迎えた山雅戦。ウイルソンがベストでないとの事で、スタメンは金園。控えにも藤村、金眠泰が入るなど、上記エスパルス戦で好調な選手を重要視する渡邉氏らしい布陣に期待は高まった。
 しかし。全然ダメだった。
 反町氏にしてやられたと言えばそれまでだが、完全に蹴り合いに巻き込まれ、サイドバックが思うように上がれない。最前線で金園がよく頑張るが、中央突破に終始し、上記したサイドからの気の利いた攻撃がほとんど繰り出せない。結果、押し込んでいる時間帯も、攻撃に変化が乏しく、フロンターレ戦の前半やマリノス戦のように好機を作れない。
 失点場面は、山雅の岩上に「恐れ入りました」と言うしかない。渡部も石川も的確に位置取りしていたのだが、スクランブルから見事にターンされてしまった。攻撃は機能しない試合だったが、守備は相変わらず粘り強く丁寧に行われていたのだけれども。
 失点後、ウイルソンを投入したが、反町氏は3DF を固め、梁と富田へのプレスを強化する。だからこそ、多々良と石川を上げてサイドに起点を作らなければならないのだが、中央突破に拘泥し崩せない。「ここは、藤村なり金眠泰の投入か」と思っていたら、多々良に代えて蜂須賀。これはビックリした。おそらく、「富田と梁のベテランボランチはいじりたくない、しかし攻撃を活性化したい」と悩んだ渡邉氏の苦渋の決断だったのではないか。けれども、その決断はうまくはたらかなかった。蜂須賀には一層の努力を期待したい。
 そして冒頭のウイルソンと隼磨の絡みへと続く。反町氏と隼磨だ、大したものですよ。くそぅ。

 渡邉監督のここまでの実績はすばらしい。昨シーズンの残留も見事だったが、今シーズン新しい選手を次々に機能させ、よいチーム作りをしているのは間違いない。我々は、「格段な監督」になり得る最高級の素材を手にしているのだ。
 だからこそ、氏には、フロンターレ戦の失敗、そこから始まった消極性による今日の苦杯を反省して欲しい。幸いに、次節からアントラーズ、サンフレッチェ、FC東京、レッズ、と強豪との対戦が続く。敵が強い以上は、得意の守備の充実と速攻を磨けばよいのだから。

 決して裕福とは言えない愛するクラブが、若い監督の苦闘や失敗と共に成長する。数年前に味わった最高の快感を、また味わえる。何と幸せな事なのか。
posted by 武藤文雄 at 00:52| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月06日

ホーム2勝、アウェイ2分け、最高のスタートだが

 ベガルタはアディショナルタイムの渡部の劇的ゴールで、エスパルスに勝利。勝ち点を8に積上げる事に成功した。ここまでの4試合、ホーム2勝、アウェイ2分け、理想的な展開だ。

 しかしながら、エスパルス戦の内容は、とてもではないが褒められた内容ではなかった。
 エスパルスの先制点は、見事な速攻からの分厚い攻めにやられたもの。序盤からエスパルスの厳しいプレスに悩まされていたところ、何とかそれを凌いで攻め込もうとしたがパスの精度が悪い。左サイドの攻め込みから中央ウィルソンへのパスを狙われ、速攻を許す。4対5と数的不利になり、かろうじてそれをはね返すものの、野沢が拾いきれず、右サイド村田にえぐられ、ファーサイドから進出された白崎に見事に決められてしまった。その後も試合は完全にエスパルスペース。失点時と同様の速攻はもちろんだが、大前の巧みなポジショニングを押さえ切れず幾度も好機を許す。いくばくかの幸運、六反のファインセーブがなければ、2点差とされ、ホームで痛恨の敗戦を喫していてもおかしくなかった。
 エスパルスもベガルタも、前線から厳しいプレスを仕掛け、敵を自由にさせない激しい守備をベースに戦っている。お互い僅かなスペースを許さなれないため、丹念に身体を入れ、そこにガッチリと当たりが入る。流行り言葉で言えば「インテンシティ」あふれる試合、そう言った中で選手1人1人がアイデアを発揮する。個人的にはこのような戦いは大好きだ。

 後半に入り、エスパルスのプレスが緩むと、ベガルタもそれなりにペースを取り戻す。60分過ぎには、CKから鎌田がすらしたボールを、ウイルソンが「さすが!」としか言いようがない反応で同点に追いつく。
 余談。このオフにベガルタは20周年記念DVDを発売、その表示がベガルタの歴代得点者ベスト6だった。1位は梁、続いてマルコス、赤嶺、菅井(笑)、阿部良則、そして中島裕希だった。「あれ、ウイルソンは?」と思って調べたら(いや、裏表紙に歴代得点者リストが出ているのですが)、4位の菅井が39、5位の阿部が32、6位の中島が31、そしてウイルソンは30で7位だった。つまりだ、ウイルソンは今シーズン3得点。阿部と中島を抜いて、堂々の5位に進出した。是非今シーズンは得点王を獲得し、菅井、いや赤嶺(44点)を抜いて、歴代3位に上がってください。マルコス(55点)を抜いてくれてもよいですが。あ、ちなみに梁は71点です。
 その後もタフな当たり合いが続く。ホームのベガルタとしては、何としても勝ち切りたいところで、同点直前に投入した金園の引き出しと奥埜の豊富な運動量で攻め込もうとするが、野沢の溜めと梁の配球に今一歩噛み合わない。そうこうしているうちに、速攻を仕掛けた奥埜をヤコビッチが引っ掛け、2枚目のイエローで退場。カナダ代表からの帰国直後との事で、疲労が切れを失わせていたのかもしれない。
 10人になったエスパルスに対し、ベガルタは必死に攻め込むが崩し切れない。梁の見事な右サイド進出からのウイルソンのシュートは決定的だったが、五輪予選帰りの櫛引に見事に防がれる。そうこうして、迎えたアディショナルタイム。ヤコビッチ退場に伴い、大前に代わって起用されていた河井が、ウイルソンに対し足裏アタック、一発退場。非常にタフな当たり合いが続く試合、突然起用された事で流れに入らず、魔が差したのだろうか。驚いたのは、エスパルス大榎監督の態度。明らかな一発退場のプレイに対し、主審を口汚く罵るのがテレビ桟敷でもよくわかった。シビアに戦っていたエスパルスの選手達にとって、この監督の場をわきまえない態度はつらいものだったろう。チームメートの明らかな失態を、監督が強引に正当化しようとする姿勢は、選手達を戦いづらくしたはずだ。
 終了間際、ベガルタは逆転に成功した。敵監督の愚行により拾った勝利だった。

 勝つ可能性が非常に低かった試合を幸運にも勝利できた。長いシーズン、このような事もある。
 けれども、内容は悪かった。敵プレスが厳しい際の凌ぎ方、大前のような知的な受けができる選手の押さえ方、終盤点を取りたい時のフォーメーション。理想の勝ち点積上げでよい入りをしたこのシーズンだが、課題はまだまだ多い。大事に大事に戦い続けたい。
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2015年03月14日

痛恨の引き分けにも明るい展望

 ベガルタは敵地でレイソルに対し完璧に近い内容の試合を展開しながら、試合終了間際に関のミスで失点し、1対1で痛恨の引き分けに終わった。

 前半からベガルタは見事な組織守備。DF、MF8人の整然としたブロックは、浅いラインを保ちながら的確に左右にスライド。金園、ハモンの2トップが、レイソルのDFなりアンカーの茨田に絡み始めるタイミングも絶妙で、隙を作らない。この日の対戦相手のレイソルから移籍してきた渡部は定評のある強さを存分に発揮、守備ラインの中核として地位を確立した。しかも、この日は先制点も決めた。レイソルで定位置を確保し切れなかった渡部だがベガルタでのこの機能振り、この移籍は大成功と言えるだろう。元々、ベガルタの最大の強みは、この組織守備にあるが、新しい選手が多く加入したシーズン早々に、これだけの連係の冴えを見せてくれるのだから素晴らしい。
 ボールを奪うや、梁の落ち着いたキープを起点に、効果的な速攻。ハモンも金園も迷いなく前進し、奥埜が2トップをよくフォローするので、少人数でも有効な攻撃ができる。奥埜は飛び出す場所が的確で、トップスピードでも正確にボールを受けてくれる。そして、何より嬉しかったのが、茂木のロングパスの精度が高い事。前節ホームで攻撃的に戦った際は、この若者のふてぶてしいボールキープに感心させられた。そして、この日は守備的に戦った事もあり、射程距離の長いボールを蹴る場面が増え、その能力も格段の事を見せてくれた。

 一方、レイソルの吉田新監督のチーム作りの意図もよく理解できる。茨田をアンカーに置き、その前に大谷と栗澤を配置する4-3-3。茨田をアメリカンフットボールのクォータバックのように機能させようと言う狙いなのだろう。この育成で定評あるクラブが、若年層を長年指導していたコーチをトップチームの監督に抜擢し、ユース出身の茨田と言うパスの名手を活かそうとするフォーメーション。練度はこれから上がってくるのだろうが、この攻撃を完璧に止めたのだから、ベガルタの守備の質の高さは相当なものとなる。
 さらにベガルタにとって幸運もあった。レイソルはCBの増嶋、サイドバックの輪湖が負傷退場。負けているのに守備選手の交代にカードを2枚切らざるを得なくなったのだ。

 かくして、順調に試合は進んでいた。ところが。
 75分過ぎにハモンが微妙な判定でイエロー2枚で退場。いずれのイエローも妥当な判定だったが、「これは警告だ!」とは言い切れない反則に見えただけにちょっと残念。ともあれ、ハモンが軽率だっとのは間違いない。ともあれ、これも経験だ。
 それでも、ベガルタは整然と守る。工藤が引いて空いたスペースを大谷や大津がいやらしく狙うが、それも押さえる。このまま時計を進めて1-0のままで試合を終えられるかと思われた時間帯。金昌洙の単調なクロス、勢いよく飛び出した関がファンブル。敢え無く同点に追いつかれてしまった。完全に手中にしていた勝ち点がこぼれてしまう、過去幾度も味わったサッカーの魔力。
 こう言う試合もある。小柄ながら丹念な努力で今日の地位を築いた関、今シーズンは六反と言う強力なライバルも加入した中、ほんの僅かに意欲が空回りしてしまったのだろう。関は29歳、GKとしてはまだこれからの年齢だけに、この痛恨をどのように活かしてくれるか。

 先の展望は明るい。奥埜と茂木がここまで機能すると、野沢に負担をかけずに済むようになる。金園とハモンの連係はこれからだし、何よりも開幕戦で格段の得点力を発揮したウィルソンが体調を上げてくる。昨シーズンと異なり、平均年齢も真っ当になったチームだけに、90分間戦い抜くのも問題ないはずだ。
 もちろん、不安もある。茂木は近々ボールの受け方を研究され壁に当たるだろう。負傷の多い菅井が離脱した際に蜂須賀がカバーできるレベルまでに達しているか。そして何より、オフにアジアカップを戦ったにもかかわらずシーズン当初から梁の体調が良好過ぎるのが気になる。
 まあ、こうやって楽観悲観組み合わせて思いをはせるのがまた愉しいのだ。いずれにせよ、ここまで短期に新しい選手で守備組織を機能させた渡邉監督の手腕に疑いはない。新しいベガルタをじっくりと堪能し、近い将来の大成功を愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 20:16| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月12日

あれから4年

 3月11日。私の故郷があの災禍に襲われてから4年の歳月が流れた。
 未曾有の自然災害の大きさも衝撃だった。しかし、その後の対応の難しさに、改めて嘆息している。全体最適と部分最適の妥協点をどう見つけるのか。私利私欲のために復興を阻害する言動を行う人の多さ。「50歳を過ぎたオッサンがウブな事を言うな」と笑われるかもしれないが。
 私事ながら、あの震災で受けた被害対策をようやく昨年完了させる事ができた。近親者を亡くした方々、生活基盤を大きく失った方々と比較すれば、私が受けた被害など僅少なものだが、とにかく一息つく事ができたのは確かだ。
 大きな被害を受けた方々にとって、復興への道のりは気が遠くなるほどなのだが、己のできる事を粛々と行っていきたい。

 何を考えても重苦しい気持ちになるこの4年間だったが、少なくとも私にはサッカーがあった。
 
 震災直後から、多くのサッカー人が私の故郷を救うために戦ってくれた。震災直後の支援活動はもちろんの事、今日に至っても、サッカー人による多くの活動が行われている。大変抽象的で申し訳ないが、「サッカーと地域密着と言う共通言語は、苦しいときこそ頼りになる仲間を作ってくれるのだな」と再認識する事ができた。当たり前の話だが、サッカー界だけが地域支援を丁寧に実施している訳ではない。しかし、Jリーグを軸とするサッカー界と言う社会集団が、仲間が身が引き裂かれるような苦境にある時に、大きな助けとなる活動をしっかりと行った事は確かなのだ。
 そしてベガルタ。
 もし、タイムマシンがあって、2011年3月10日の俺に会い、今の俺が「昨2014年シーズンのベガルタは、33節にかろうじて残留を決めた。」と伝えたとしよう。すると、4年前の俺は、喜びながら、こう答えると思う。「そうか、とにかく一度もJ2に落ちる事なく、2015年の開幕を迎える事ができたんだ。何と素晴らしい。」と。
 4年前の俺は、この4年間のベガルタの上下動を予想だにできなかった。J1の上位に進出し、ACLの場で戦う権利を得て、列強と堂々と渡り合う。さらにピークを過ぎたチームは急降下し、かろうじてJ1残留を果たす。たった4年の間に、我々はこれだけの戦いを堪能できたのだ。この上下動を堪能した俺は、昨シーズン末に歓喜した。「J2陥落を免れ、2015年の開幕を迎える事ができるんだ。何と素晴らしい。」と。
 4年前の俺と、今の俺の差。これが歴史だ。

 思うに任せぬのが人生。自然の猛威の前に、その後の事後処理の難しさに、あまりに無力な私たち。
 今日、手倉森氏は日本屈指のエリート達を率い、上々の試合を見せてくれた。少しずつ、少しずつ、歴史は流れて行く。無力ではあろうが、やれる事はある。これからも丁寧に生きて行きたい。
posted by 武藤文雄 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月10日

ベガルタ、まずは順調なスタート

 キックオフ直後、両チームとも様子見を兼ねて、最終ラインどうしの蹴り合い。落ち着かない展開が続く中、モンテディオDFが跳ね返したボールを奥埜が的確なスクリーンプレイで、右サイドフリーの茂木に落とす。茂木は、正対するDFの詰めが甘いのを素早く判断、正確なトラップの後、強引に内側に切れ込む。たまらず、モンテディオの伊東がファウルで止める。そのFKから、梁が高精度のクロス、こぼれを奥埜が思い切りよいドライブシュート、わずかに枠を外れた。ベガルタはこの流れからペースをつかんだ。
 若返りを図る新しいベガルタを象徴する奥埜と茂木の2人が、好プレイで開始早々の混戦を制するプレイ。素直にうれしかった。

 ベガルタは開幕戦、モンテディオに2対0で快勝。
 上記した奥埜と茂木のプレイからペースをつかんだベガルタ。その後の時間帯、モンテディオの大ベテラン山崎の狡猾な動きに苦しむ場面もあったが、前線からのプレスが機能し攻勢をとる。特に奥埜の広範な運動量と受けの巧さは絶品で、モンテディオDFを引き付ける事で、パートナのハモン・ロペスもよい体勢でボールを受ける事ができる。富田の刈り取り、菅井、鎌田、渡部、石川の4DFの強さとスライド、野沢、梁、茂木のパスワーク、上々のバランスで攻勢を取り続けた。
 しかし、モンテディオの守備は厚い。崩しきれずに前半終了。

 そして63分、野沢が軽率なスライディングで2枚目の警告をとられ退場。状況は一転した。
 まあ、勝った今だから笑い話だが、55分のモンテディオ金範容のプレイは、菅井の顔を殴り、その直後に茂木を削った。一連のプレイで1.5回退場になってもよいのではないかと言うもの(笑)。ついでに、70分過ぎに菅井を削ったプレイで、もう1警告、2回退場になってもよかったのでは(笑)。野沢の退場そのものは適切な判定だったと思うが、この金に対する判定には少々不満が残った。もっとも、菅井も茂木も臆せずに結構やり返していたな。
 1人少ないだけに、攻め込んでも、跳ね返されるとこぼれを拾い切れず逆襲を許す場面が増える。同様に守備ラインが跳ね返しても、バイタルを止め切れない場面も増える。茂木に代えて杉浦を起用し、サイド守備の強化は奏功しているが、中央の甘さはカバーできない。私はここで、「ハモンなり奥埜なり梁に代えて、武井を投入し中央を固め、無理をせずに引き分けを狙うべきでは」と考えた。しかし、渡邉氏はそのような消極策には与しなかった。ハモンに代えてウィルソンを投入。あくまでも勝ちを狙ってきた。そして、その勝とうとする姿勢が奏功したのだから恐れ入りました。

 先制点を振り返る。関のロングボールを、ウィルソンがうまく受け、さらに奥埜がよい身体の入れ方で菅井に落とす。菅井はいやらしいカーブがかかったボールを前線に。モンテディオDFがかろうじて跳ね返したボールを富田がヘッドで前線に。そこに見事なロングランを見せた梁が飛び込む。梁はマークするモンテディオの渡辺高大を振り切り、好クロス。ウィルソンが敵マークをわずかに振り切り、丁寧なボレーで流し込んだ。梁とウィルソンを所有する幸せを改めて噛み締める美しい得点だった。梁の突破を許した広大の反応の遅さは今に始まった事ではないが、少々複雑な思い。
 その後はモンテディオは無理攻めをしかけてくるが、ベガルタは鎌田と渡部を軸に何とかしのぐ。そして88分のモンテディオCK。山の神、山岸が上がってきた。そのCKを跳ね返したベガルタ、逆襲から菅井が敵DFのクリアを引っかけ、そこからのパスを受けたウィルソンがゴールにかろうじて戻っていた山岸を抜き去り勝負を決めた。あのジュビロ戦とは全く異なる状況で、山岸が上がってきたのは正しかったのだろうか。いや、文句を言う筋合いではないのですが。

 野沢の退場と言うアクシデントがありながら、難しい開幕戦でライバルに勝利できたのはまことに喜ばしい(まあベガルタが10人になったので、中途半端にモンテディオが前に出てきたとも考えられるが)。負傷明けのウィルソンがきっちり2点を奪い、存在感を発揮してくれたのも大きい。得点場面に直接絡んだのが若手ではなく、梁と菅井のベテランだったのはちょっと残念だが贅沢を言ってはいかんな。
 まずは素直に初戦快勝と、奥埜はもちろん、茂木が存分に機能した事を喜ぼう、うん。
posted by 武藤文雄 at 01:27| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月07日

新しいベガルタ

 新しいシーズンがいよいよ開幕しようとしている。特に今シーズン、ベガルタサポータとしては、例年の開幕時の期待感を超えたワクワク感で一杯だ。理由は明白で、優秀で若い選手が大量に加入したからだ。まあ、実際は「ここ数シーズンクラブとして明らかに目を背けていた若返りに、ようやく着手した」と言うところだが、そこを単なる期待感にすり替えて愉しむのも、サポータ冥利と言うもの。
 もちろん、それによりACL進出と言う快挙に貢献してくれた多くの名手がこのオフでクラブを去る事となった訳で、大いなる寂しさを感じているのも事実。しかし、寂しいが仕方がない。過去幾度も語ってきたが、ベガルタの老齢化は限界に達していた。昨シーズンの戦い振りは見事だったが、多くの試合で終盤足が止まりガタガタにもなっていた。2012年シーズンJ制覇まで後一歩まで進んだ我が軍は、すり減ってしまったのだ。もはや、若返りは急務だった。
 ベガルタのベテラン選手達は、いずれも元々能力が高いのに加え、戦う姿勢も素晴らしい。したがって、監督も安心して起用できる。と言うより、監督は良好な選手を選択するのは当然の事。1人1人は皆J1のトップ選手なのだから。ところが、そのベテラン達が相当数ピッチにいると、チームは90分間戦い切れない。サッカーとはそう言うものなのだ。優秀なベテラン達による老齢化の限界到達。もはや、若返りは、監督に委ねられる問題ではなく、フロントの問題となっていた。と言う事で、このシーズンオフ、ベガルタは格段の能力を誇る選手幾人かを、手放さざるを得なかったのだ。中原、赤嶺、太田、角田、佐々木、それぞれの新天地での活躍を祈りたい。ベガルタ戦を除いてだが。
 ちなみに広大と武藤は、上記のベテラン放出にはあたらない。しかし、この2人はベガルタで定位置を確保していたわけではない。オファーによっては新天地に向かうのはプロとして当然の事。特に広大は、名将石崎氏に乞われての移籍とのもっぱらの噂。よりによって開幕ダービーで戦うのかとの感慨も大きいけれどもね。武藤も河岸を替える事を検討するタイミングだったのは確かだ。瞬間的なスピードと縦に出ながら強烈なシュートを打てる素材は間違いないが、ベガルタではとうとう動き出しのタイミングを身に着ける事ができなかった。おそらくこの選手は、武藤に合わせた布陣を引くチームでないとフル機能は難しいのかもしれない。したがいレッズと言う新天地選択が正しかったのかは判断が難しいところだが。

 元々過去の歴史を振り返ってみても、ベガルタは若手選手をうまく育てた歴史に乏しい。ブランメル初期の放漫経営時代は言うまでもないが、90年代後半の縮小経営体制時はチーム作りそのもが機能せず。清水氏時代は若手云々ではなく再生工場としての自転車操業。J2降格時代に梁や菅井をうまく育てた事になってはいるが、実際は怪しい。特にJ2降格直後の3シーズンは、ベルデニック、算数都並、ジョエル・サンタナの各氏と監督が毎シーズン交代し、強化方針も定まらず迷走(まあ、これはこれでとっても愉しかったけれどもね)。梁や菅井や富田は、「ベガルタが育てた」ではなく「ベガルタが混迷していたにも関わらず立派に育ってくれた」と解釈すべきだろう。J1復帰後は、「育ってくれた」梁らを軸に、鎌田、上本、石川、角田、太田、赤嶺、そしてウィルソンと言った格段の中堅選手を移籍で獲得し、ACLまで上り詰めたのは、皆様ご記憶の通り。

 そうこう考えると、今シーズンは正にクラブとしての実力を問われる事となる。
 奥埜はベガルタユース出身だがトップ昇格は時期尚早と判断され、提携している仙台大で強化後加入。さらにVファーレンにレンタルし実戦経験をたっぷり積んでの復活となった。しかも、副主将にも就任。ベガルタと言うクラブが時間をかけて育ててきたこのタレントにかかる期待は大きい。そして茂木。こちらはベガルタユース史上最高傑作との噂も高く、本人も明確に開幕スタメンを意識した発言。この2人がどこまで活躍してくれるか、期待は高まるばかりだ。他にも、奥埜同様レンタルで経験を積んできた山本、韓国学生界屈指の実力者として名高い金眠泰、全国制覇経験のある西村。よい若手選手が多数加入している。さらに渡部、金園と言った(ベガルタ得意の)良好中堅選手の獲得。そして彼らを率いるのは、(昨シーズン、あの絶望的状況からチームを建て直しJ1残留に成功した格段の実績を誇る)若き渡邉監督。うん、例年になくワクワクしてくるな。
 その開幕に迎えるのは永遠のライバルモンテディオ。名将石崎氏、山の神山岸。そして、ディエゴ、中島、萬代、広大と言ったかつての戦友達。観客動員面から考えると、開幕戦でこのカードはもったいないと思うが、イベントとして最高なのは間違いない。
 このワクワクするシーズンの最初のオーラの肴として、試合後の広大の憮然とした表情を愉しめるかと思うと最高だ。
posted by 武藤文雄 at 08:41| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月04日

2015年開幕が近づく、Jリーグの本質的変化

 諸事多忙を言い訳に更新をサボって申し訳ありません。開幕も近づき、少しは真面目に更新したいと思っています。と言う事で、きょうは最近のJリーグについて。

 Jリーグは本質的な変化の時代を迎えている。

 変化と言っても、くだらないプレイオフ制度の導入のような些末な変化ではなく、もっと本質的な話だ。
 強いクラブの要件が明らかに変わり始めているのだ。従来リーグの上位を占めるクラブのほとんどは、強力な親会社の支援を受け、Jリーグ黎明期あるいは前身の日本リーグ時代からの歴史の積み上げを持っていた。しかし、ここ数シーズン、そう言った状況が変わりつつある。
 その先鞭を切ったのは我々ベガルタだった。我々は2012年シーズンJ1で準優勝し、ACLに出場に成功した。過去ACLに参加権を得たのは、90年代までにJリーグに参画したクラブ以外では、潤沢な資金に恵まれたFC東京のみ。そこに楔を打ち込んだのが我々だったのだ。
 加えて、最近はJ1に経営規模が小さい地方都市をホームとするクラブが定着するのは当たり前になってきている。2シーズン続けて優勝争いに参画したサガン、粘り強くJ1で戦い続けるヴァンフォーレ、我々の永遠のライバルであるモンテディオのJ1復帰。仙台ほど都市規模が大きくないライバル達が堂々とJ1で戦うのが、当たり前の時代となっている。
 さらに、2002年ワールドカップ地元開催以降に、本格強化に乗り出したクラブの進境が著しい。山雅が、全国リーグが3段階となった後に、初めて地域リーグからステップアップを重ねJ1昇格に成功したのがその典型だ。また、クラブライセンスの関係でJ2挑戦権を得る事はできなかったが、ギラヴァンツがJ2の5位となったのも新しい時代の現れだろう。
 一方で、J1で優勝争いを期待されるようなクラブがJ2に降格する事例や、経営規模が大きく歴史にも富んだクラブが、J2に陥落した以降、中々J1に復帰できず苦しむ事例も散見される。

 この現象は欧州では全く見受けられないものだ。
 今日の欧州においては、一部のトップクラブにトッププレイヤと富が偏在。欧州チャンピオンズリーグの上位進出国、あるいは西欧のトップ国の各リーグの上位進出国は固定化してしまっている。これは言うまでもなく、テレビマネーを軸とする大量のキャッシュが、国際的注目度の高いトップクラブのみに流れ込んでしまっているからだ。
 もっとも、欧州においてはチャンピオンズリーグが充実する前も、過去数十年、今日ほどの偏在は見受けられずとも、上位クラブは偏在していた。スペインではレアルとバルサが、イングランドではユナイテッドとリバプールが、イタリアではユーベとミランとインテルが、ドイツではバイエルンが、それぞれリーグを席巻していた。ただ、当時はもう少し牧歌的ではあった。スペインではソシエダやビルバオが、イタリアではカリアリが、イングランドではフォレストやアストンビラが、それぞれ優勝する事があった。また、セルティックやステアウアのような小国のトップクラブが欧州を制覇した事もあった。確かに、そのような愉しい事例は見受けられなくなった。けれども、そのような「番狂わせ」を見る機会は、昔から少なかったのだ。
 要は、欧州のトップ国は、ここ最近25年の変化を抜きにしても、一部トップクラブが圧倒的に強い構図だったのだ。
 もちろん、ブラジルやアルゼンチンにはここまでの寡占化はない。しかし、いわゆる老舗のクラブ、ブラジルにおけるコリンチャンズ、サンパウロ、フラメンゴ、フルミネンセ、グレミオ、インテル等が、同様にアルゼンチンのボカ、リーベル、インデペンディエンテ、サンロレンソあたりが常時安定した成績を残している。
 思い切り、乱暴に語ってしまえば、サポータの支援が厚く、経済規模の大きなクラブが、ずっと格段に強いのだ。
 
 そう考えると、今日のJの混戦は誠に興味深い。もちろん、一般的には裕福なクラブが強いのは確かだ。しかし、あまりに例外事象が多すぎる。FC東京が、ガンバが、ジュビロが、セレッソが、誰もが羨む裕福なクラブが、毎年毎年2部リーグに降格しているのだ。
 その要因の一つは、日本のトッププレイヤの多くが、欧州でプレイするようになっている事、あるいは日本の相対的経済力が他国と比較して落ち込み、格段の外国人選手を連れてこれなくなっている事、それらにより裕福なクラブが、圧倒的戦闘能力差を発揮しづらくなっている事にあるのだろう。
 けれども、それだけだろうか。そうは思えないのだ。むしろ…

 Jリーグは日本の津々浦々に浸透したと言う事ではないか。そして、日本中すべてのクラブが、的確な強化を行えば上位進出が可能となる時代が到来した。いずれのクラブも、一つ間違えば下位リーグに降格するだろうし、的確な施策を採れば上位を伺いアジアを狙える。
 そう言う時代になったのだ。他国のサポータがここまで愉しいリーグを所有しているのだろうか。私は、そのような情報を今のところ入手していない。うん、どこのクラブが上位に行くか、下位に沈むのか。誰も予想できない。そのくらい素敵なリーグを、我々は所有しているのだ。何と素晴らしいことか。この幸せをじっくりと噛み締めて愉しんでいきたい。
posted by 武藤文雄 at 00:47| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする