2014年12月31日

村井チェアマンは、なぜ我々サポータをいらだたせるのか

 以前から述べてきたが、自分の考えを明確に語っておく。私はプレイオフ導入には反対だ。シーズンを通しての七転八倒の結果、じわじわと決定される順位争いこそ、最高の至福と確信しているからだ。いや、過去数十年間体感してきたからだ。
 しかし、サッカービジネスが完全なグローバル競争の最中におり、岡崎慎司や内田篤人のような日本人トップスタアの多くは欧州でプレイし、スポーツファンの注目の多くが欧州に向いている事。一方で日本の経済状況は長期低落状況から抜け切れず、少子化によりパイも減っていく事。さらに、日本人の余暇の選択肢の多様化は華やかで、競合となる娯楽は無数に存在する事。これらを考慮すれば、Jリーグを取り巻く状況は非常に厳しいのは確かだ。サッカーよりも娯楽として先行して社会注目が大きいプロ野球の地上波視聴率の低迷は、娯楽の多様化の現れの典型だろう。そのような、難しい状況下で、日本にもっともっとサッカーが普及し、たくさんの方々がサッカーを愉しむ環境が準備されるならば、プレイオフ導入のような劇薬投入を全否定はしない。ただし、その手段が熟慮されたものであれば。
 そして、残念な事に過去幾度も危惧した通り、浅慮の結果としか思えない悲しい日程が発表されてしまった。先日も散々突っ込んだが、シーズンで一番盛り上がるはずの終盤を、Jリーグ及び日本協会当局が、自ら貶めるような行為は、とにかくとにかく悲しい。

 せめて、このような悲しい日程にするのだから、それによってJが格段に盛り上がるのならば救われるのだが、肝心の導入責任者のチェアマンの村井氏の歯切れが悪いのだ。

 先日の毎日新聞でのインタビューを抜粋する。
 サポーターにとっては、1ステージ制が一番分かりやすいし理想だと、僕も理解しています。
 ただ、日本のみなさんにアンケートをとると、Jリーグに関心があると答えているのは3割ぐらい。残り7割は、おそらく一つのクラブをずっと熱心に見てくださるような人ばかりではない。そこで前期優勝、後期優勝、チャンピオンシップでの年間総合優勝と、いくつかヤマ場を分散することによって、サッカーに触れる機会が増えると思うのです。
 1ステージ制の場合は、いつ、どこの試合で優勝が決まるか分かりません。その点、チャンピオンシップは、間違いなくその試合で年間王者が決まります。そうすれば、その試合に注目してくださる人が増えるのは間違いありません。
 国際サッカー連盟(FIFA)ランキング上位50カ国の中で、1ステージ制を行っているのは6割ぐらい。残り4割はシーズンを分けたり、シーズンの後にポストシーズンを設けたりして、ヤマ場を増やしています。例えばアルゼンチンやメキシコも2ステージ制で、最後にポストシーズンで戦っています。
 そこで日本も、2ステージ制に再度チャレンジさせてほしいと思い、踏み切りました。Jリーグの選手たちも、短期決戦で一発勝負という大舞台で、最高に緊張感のある試合をしてくれればと思います。

 氏は、ここでプレイオフの必然性を説明しようとして、データを持ち出しているのだろう。他人を説得するためには、データを根拠に語る事が必要だ。しかし、データを並べるだけでは十分ではなく、そのデータが論理的説得性を持たなければならない。そして、ここで村井氏が提示しているデータには説得性がない典型例だ。それは最初に「1ステージ制が一番分かりやすいし理想だ」と言い切ってしまっているからだ。最初に負の結論を述べてしまって、「残り7割は、残り4割は」と、いくら語っても迫力は全くない。
 どうしても、数字で説得したいのならば、損益計算書でも貸借対照表でも資金繰り表でもよいから、プレイオフを導入する事で「もっと儲かる」と言うに尽きるのだが。

 もう1つ。2ヶ月以上前の話だが。10月19日のNHKの日曜日のスポーツニュースに、村井チェアマンが登場し、懇切丁寧にJリーグを批判、糾弾した。曰く「選手が頑張っていない」、「審判が下手くそだ」、「技術レベルが低い」云々。その上で、村井氏は「だから来シーズンからはプレイオフを導入します。」と締めた。大が、ちtwitterで当毒づいた。
 村井氏の意図を忖度する。公共放送で「Jの改善必要性」を強調し、「プレイオフ導入」の必然性を語りたかったのだろう。そして、ビジネスの世界で、改善提案を周囲に納得させるためには「悪さ加減を明らかにする」のは有効な手段の一つだ。だから、氏は公共放送に出演の機会を活かし、「悪さ加減」を滔々と述べ続けた訳だ。けれども、これが逆効果だったのは言うまでもない。あれを見た一般の方々(サッカーに格段の興味を持たない方々)は、「Jリーグの総責任者であるチェアマンが『つまらない』と言うのだから、Jリーグってつまらないんだ」と思った事だろう。そして、愛するJリーグを愚弄されたのだから、我々サポータは激怒した。
 だいたい、商売の総責任者が、公の席で嬉しそうに自分の商材を非難してはいけない。これは商売の鉄則である。「悪さ加減」を語る必要があるのは、内々の打合せにしておけばよいのだ。

 つまるところ、村井氏は商人ではないのだろう。
 この人の経歴(Wikipediaより)を見ると、リクルートで要職を務めたとの事だが、人事畑が長かったらしい。いわゆる管理系の仕事が得意分野なのだろう。だから、生真面目に「悪さ加減」をデータを用いて語ろうとするのではないか。

 トップが管理畑の人である事を示した典型事例が、今シーズン最終節でのアルビレックス対レイソルの大雪中止試合の処置。リンク先のドメサカ氏のコメントがすべてを表している。
(前略)カシマスタジアムが選ばれたのは大方の予想通り、日程と管理体制の面からだそうです。
カシマスタジアムは、アントラーズの運営会社である株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーが指定管理者として直接運営管理を行っているので、スピーディな対応が可能だったのでしょうね。
最初からこの理由を明かしていたらもっとよかったと思います。
 リーグ最終節での自然条件による試合中止。少しでも早く選手たちにオフを提供したい思い、直後に控えるJリーグアウォーズ。現実的には的確な対応だったのかもしれない。けれども、最終節をじっくりと味わいたい両軍のサポータ達に対する営業的配慮は足りなかった。Jリーグを支えるのは、1つ1つの充実した試合のはず。その現場重視の姿勢があれば、ドメサカ氏が語る通り、しっかり事前説明が行われたはずなのだが。

 話を戻そう。
 村井氏の今の仕事は管理だけではないのだ。Jの魅力を多くの人々に伝える事も重要なのだ。

 たとえば。
 地上波のスポーツニュースや一般紙のインタビューにおいては。
 「これほど、魅力あふれる組織的サッカーが行われているJリーグは欧州からも尊敬されている。」とか何とか言って、オシム爺さんなり、ベンゲル氏なり、プラティニ氏なりのコメントを添える。その上で「この宝石のようなJリーグの喜びを少しでも多くの人に知って欲しい。そのために、プレイオフを導入させる事とした。」と胸を張ればよい。また「本来は1ステージ制であるべきでは?」と言う質問に対しては、「まだ20年ちょっとの歴史しかないJリーグ、いつか世界最高のエンタティンメントを目指し、今はアルゼンチンやNFLからの学びが重要。特に『スーパーボウルへの道』は勉強になる」とでも答えれば十分だろう。

 一方、Jのコアサポータ達には浪花節である。「皆様の気持ちはよくわかる。しかし、霞を食っては生きていけない。皆様の宝物を維持し、ますます発展させるために、今はキャッシュが必要なのだ。皆様の愛する選手の待遇を、もっともっとよくしたい、プロ野球には絶対に負けたくない。悪魔に魂を売り渡した責任はすべて私がとる。」と、まず掴む。その上で「プレイオフ導入により、各クラブはこれだけ儲かるのだ。私は広告代理店から、これだけカネを引っ張ってくる事を約束する。」と堂々とカネの話をすればよい。また「94年のラモスのループシュートの美しい弾道、95年の井原の完璧な守備、99年の沢登の直接FKの美しさ、そして04年のマリノスとレッズの死闘。確かに邪道かもしれない。でも、あのような戦いをまた見たいという誘惑を、どう考えるか。」と言う切り口も有効だろう。サッカーダイジェストやエルゴラッソあたりの専門誌で丹念な説明を行うのも重要だ。その場合、聞き手に大住良之氏や宇都宮徹壱氏のような生真面目な人を選んではいけない。後藤健生氏や大島和人氏のようなリアリズムを好むインタビュアを選択すべきだろう。

 ところで。
 村井氏はわかっているのだ。Jの集客増は結局のところ、地道な活動の積み上げが必須という当たり前の事を。
 たとえば氏は、「ホーリーホックの地道な努力こそ本質」と大本営発表で語っている。さらに、中長期的な本質として「劇場としてのスタジアムを改善、いや改革していく事」の重要性も。一部を抜粋しよう。
 部屋の反対側の壁には夢のスタジアムプランが10枚以上貼られている。キーワードは、「駅前、街なか、4面屋根付き、多機能型、フットボールスタジアム」だ。今後、スポーツで地域を元気にしていくためには、その環境整備は重要だ。サッカーに限らず、様々なイベントが開催でき、近隣のショッピングモールやホテルなどとも併設される施設の整備は私の重要なミッションでもある。雨にも濡れず、トイレがきれいで、フードコートが広く、ショッピングモールに近ければ彼女をデートに誘えるはずだ。そんな夢を毎日のように広げている。
 いや、おっしゃる通りだと思う。
 せめて少なくとも、氏が語れば語るほど状況が悪くなる現状は、何とかすべきではないか。氏は営業と言うか広報と言うか、未来を代弁できる幹部を持つべきだろう。たとえば。中山雅史さんはいかがだろうか。
posted by 武藤文雄 at 01:23| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月23日

Jの来シーズン日程を見ての大いなる不安

 来期のJリーグ及び天皇杯の日程が公表された。J1チームの10月以降の日程を書き下してみた。

 悲しい。

J1後期第13節 10月3日(土)
ナビスコ準決勝第1戦 10月7日(水)
ナビスコ準決勝第2戦 10月11日(日)
天皇杯3回戦 10月10日(土)、11日(日)、14日(水)
J1後期第14節 10月17日(土)
J1後期第15節 10月24日(土)
ナビスコ決勝 10月31日(土)
J1後期第16節 11月7日(土)
天皇杯4回戦 11月11日(水)、14日(土)、15日(日)
J1後期第17節 11月22日(日) 
 ここで多くのクラブはおしまい
プレイオフ1回戦 11月25日(水)
プレイオフ準決勝 11月28日(土)
プレイオフ決勝第1戦 12月2日(水)
プレイオフ決勝第2戦 12月5日(土)
拡大トヨタカップ?
天皇杯準々決勝 12月26日(土)
天皇杯準決勝 12月29日(火)
天皇杯決勝 1月1日(金)

 ここでは敢えてプレイオフの是非については語らない。また、毎年一番リーグ戦が盛り上がる11月にたった2試合しか試合が準備されず、観客動員に悪影響を与えそうな事も置いておこう。

 何が悲しいかと言えば、J1チームが固定して約束された試合は11月22日に完了するのに対し、勝ち残ったチームが、その後40日間の活動を要求される事だ。クラブごとに、あるいはトッププレイヤごとに、ここまで公式戦が行われる期間が異なる事に矛盾を感じずに、日程を策定するJリーグ及び日本協会の関係者の鈍感さは、何なのだろうか。
 ここ最近、日本のトップレベルのサッカー界を悩ませ続けているのは、日程問題に尽きる。日本代表の強化(特に欧州と日本を行き来する選手の消耗対策)と、健全なJ1の日程確保を両立させるために、他のすべての日程は犠牲にされてきた。ACLで苦杯を続ける各チームの敗因の1つに、中国韓国勢と比較して過酷な日程がある事は言い古されている。また、天皇杯もナビスコカップも、決勝戦以外の試合を無理に消化する事で、観客動員も一般の注目も阻害してしまっている。この来季日程を見れば見るほど、日程を策定するJリーグ及び日本協会の関係者に、そのような反省がない事が理解できてしまうではないか。これは、観客動員面でも、社会的注目面でも、選手達の能力向上面でも、マイナスばかりなのにもかかわらず。
 11月25日から1月1日までの約40日間、シーズンは継続するがプレイオフにも天皇杯にも勝ち残らなかったクラブはオフに入る事を余儀なくされる。これらのクラブは金儲けの機会を失ってしまう。勝ち残れなかったのは各クラブの責任であるが、1シーズンは約10ヶ月300日である事を考えると、13%(40日÷300日)も稼働日が失われてしまう。同時に、それらの敗退クラブのサポータは13%も娯楽の機会を奪われるのだ。顧客の多くに愉しむ機会を提供しない事は、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。
 一方で勝ち残ったクラブ(特に天皇杯に勝ち残ったクラブ)の選手達も難しい状況を迎える事になる。昨シーズンまでは、これらの時差は拡大トヨタカップ+天皇杯でまだ20数日程度だったが、来年は40日。何よりも休暇が格段に短くなってしまう。トップレベルの選手達は、私たちサッカー好きの大切な大切な資産。彼らに少しでも長く健全に良好なプレイを継続してもらうためにも、オフでしっかりと精神的にも肉体的にも休んでもらう事は必須なはずではないか。貴重な資産を大事にしない事は、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。
 さらに言えば、リーグ戦終了と同時に(実際はもっともっと早くから動いているのだろうが)、各クラブは翌シーズンの編成を行う。しかし、オフに入ったクラブの選手と、戦闘を続けているクラブの選手は、まったく精神状態が異なる。またオフに入ったクラブと、入っていないクラブでは、スタッフの時間的な余裕が全く異なる。これで翌シーズンに対する健全な編成が可能とはとても思えない。例えば、今シーズンは天皇杯決勝をリーグ戦終了の翌週としたため、全クラブが完全にオフに入っている。だから、あちらこちらで見受けられる「選手を取った、取られた」報道も、これはこれでシーズンオフの1つの娯楽となっている(取られてばかりいるクラブのサポータが言うのだから、説得力があるでしょ)。しかし、これらはオフだから公平に扱えるのだ。「取った、取られた」がシーズンを残しているクラブと残していないクラブで、的確に行えるのだろうか。元々、サッカービジネスは各クラブの経済力や歴史力等で各クラブのビジネス能力は全く異なる事を前提としている。だからこそ、編成準備期間のように極力公平にすべき材料を揃えない事は、、Jリーグのようなサービス産業には非常に痛手になる。

 プレイオフ導入によって、Jリーグの本質的な面白さが損なわれる事はとてもとても残念だ。しかし、私が言うところの「本質的な面白さ」は主観の問題であり、意見が異なる人もいるのかもしれない。そしてプレイオフにより多くのキャッシュがJリーグに入ってくると言うならば、私のような年老いたサッカー狂の意見は重視されなくても構わないと思う(これについてはまた別に講釈を垂れます)。
 けれども、来シーズン予定されている、(私から見たら)とても残念な日程を見ると、総合的なキャッシュインも、サッカーに対する社会的注目も、選手達の能力向上も、健全な競争も、すべてがマイナスになるのではないかと思えてくる。いや、杞憂ならばよいのですが。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(9) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月13日

宇佐美と遠藤爺と石崎氏による証明

 天皇杯決勝、ガンバがモンテディオに3対1で快勝。国内タイトル3冠を達成した。

 正直言って試合前の気持ちは複雑だった。ガンバが3冠をとっても嬉しくもなんともない。と言う事で、典型的日本人である私は判官贔屓気質はあるが、それでもモンテディオが、我々ベガルタより先にビッグタイトルを取るのには抵抗があった。典型的日本人である私は心が狭いからね。ゴール裏のモンテディオサポータを見ると、その気持ちは一層格段になった。いや、単に羨ましかっただけです。

 モンテディオは、立ち上がり最前線からのプレスで攻勢をかける。戦闘能力が劣るチームが、開始早々仕掛けるのは有効策の1つ。ところが、ガンバの最初の攻め込から失点してしまう。敵陣深くのフリーキックから東口が高精度のロングボール、パトリックに競り負け、宇佐美が芸術的胸トラップから鋭いシュート、GK山岸は反応するのが精一杯で、宇佐美が鋭く詰めたもの。モンテディオとしては、序盤のリスクテークが裏目に出た。先制されたのは仕方がないが、その後も攻撃的に前線からプレスをかけ続けたのには疑問が残った。先制したガンバが後方を分厚くして、宇佐美とパトリックを残した速攻を狙うのは自明。先制された以上は、まず前半は2点差にされない戦い方をすべきだった。案の定、CK崩れから速攻を許し、宇佐美とパトリックの連係から2点目を許してしまった(この場面、左サイドからカットインするパトリックの左大外への倉田の走り込みが絶妙)。過去日本の単身突破ストライカは、釜本、福田、久保、(挙動開始点がやや後方だが)本田と、体幹の強さを活かすタイプの選手ばかりだったが(柿谷や原口もそうだが)、細見で技巧を活かした突破力で得点を決めてしまうタイプのFWが登場してきているのは、真にめでたい事だ。「やれ、ネイマールやハメが20歳そこそこで」と文句を言いたい人は言っていればよい。「宇佐美は時々集中を欠くのがケシカンラン」と言う指摘する人には「集中を欠かずに戦いそれだけで90分終えるストライカと、たまに集中を欠くが天皇杯決勝で3点に絡むストライカと、どちらを評価しますか」と問う事にしよう。
 それでもモンテディオは果敢に戦い、早め早めの交代で、ディエゴの使い方を切り替えながら、幾度となく仕掛ける。それにしても、石崎のオッサンは凄いな。あのディエゴを「献身的な選手」と飼い慣らし、鮮やかなチームを作り、再びJ1に登場するのだから。そして、石崎氏はプレイオフ決勝で好プレイを見せた林を投入し、前線に起点を増やす。そして、モンテディオイレブンは、皆ここぞと言う時間帯に集中して人数かけて押上げる。この短い時間帯に集中するやり方は、J1時代にも見せたこのクラブの特長と言えるのかもしれない。そして老獪な守備を見せていた石川の前進からのクロスが、こぼれる所をロメロ・フランクが、とっさの反応で合わせた。ここまで幾度となく好捕を見せていたGK東口だが、ロメロのアウトサイドキックによるタイミングが外されたキックには反応が遅れた。少々偶然が重なった感もあったが、「タイミングのずれ」が得点の秘訣の1つである事を示す一撃だった。
 追いつかなければならない石崎氏はさらに仕掛ける。3枚目の交代に中島ユーキが出てきた際に、思わず「頑張れユーキ」とつぶやいたのは秘密だ。ところがその直後に山田が足をつり、モンテディオは一時10人に。その瞬間を逃さないから、遠藤爺には恐れ入る。人数が少なくバイタルを押さえづらくなっていたモンテディオ守備陣に対し、ちょっとした陽動動作で溜めを作った直後に、シュートレンジを獲得した宇佐美に正確なラストパス。そして、宇佐美のズドーン。シーズン最後に、遠藤爺の知性を堪能させていただいた。勝負はついた。

 シーズン当初、あの脆弱だったベガルタより、さらに冴えなかったガンバ。しかし、長谷川健太氏は粘り強く強化を重ね、強力なチームを作り上げた。東口、岩下、丹羽、そして今野が中央を固める守備陣は、(岩下が冷静さを保っている限りでは)極めて強力。後方から今野の、側面から精力的に動き正確な技術を誇る大森と倉田、それぞれのサポートを受け、悠然と組み立てる遠藤爺。そして、強力な2トップ。よいチームだ。長谷川氏は「強いチームをしっかりと勝たせる」監督として、堂々とした実績を積む事に成功した。49歳の長谷川氏は、3歳年下の森保一氏と並び、国内最高の実績を積んだ監督となった事となる。

 よい決勝戦だった。
 来年天皇杯決勝は、また1月1日に戻されると言うが、やめて欲しい。今年のようにJの最終節前後にすればよいのだ。理由は過去述べた通り(天皇杯そのものの大会方式見直しを含め)。天皇杯決勝を元日にしないだけで、破綻している日本サッカー界の日程を僅かながらも改善できるのだ。とにかく、明日から全てのJリーガが休暇に入れるのだ。私たちに、毎週毎週歓喜と落胆と言う最高級玩具を提供してくれる戦士達に、適切な休息を提供するのがいかに重要な事か。
 元日決勝は、Jリーグ開幕前、サッカーが多くの国民の注目を集める前は意味があった。しかし、Jリーグが開幕し、多くの国民がサッカーを知るようになり、もう20年が経過した。正月に拘泥する必要はない。年末年始にサッカーを見たいならば、高校サッカーがある。元日くらいは休めばよいのだ。
 宇佐美と遠藤爺と石崎氏が証明してくれた。もう、元日決勝は終わりにしよう。
posted by 武藤文雄 at 23:35| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月04日

山岸範宏の準備

 お盆休みに実家でスポーツニュースを肴にダラダラと飲んでいた折、「楽天イーグルス敗戦」映像が流れてきた。母が「おやまあ、また負けたか、今年は弱いねえ。」と嘆く。調子だけはよい息子が「田中マーがいなくなったのだし、仕方がないでしょ。則本もいるし、松井が出てくればまた強くなるよ。」等と慰めたら、「野球は2部落ちがないからいいねえ。ところでベガルタは大丈夫なのかい。」と切り返されて動揺したのは秘密だ。

 29日、ヴォルティスに辛勝し、エスパルス、アルディージャの両ライバルが苦杯を喫し、ベガルタのJ1残留が決まった。試合後の歓喜の宴。うん、盛り上がりました。先日クドクドと講釈を垂れたが、本当に苦しいシーズンだった(いや、来年はもっともっと苦しいシーズンとなるような予感もありますが、まあそれはそれ)。
 こうなると、肴は「J1への残留争いと昇格争い」となる。正に、他人の不幸は蜜の味。さらに宴に仙台出身在住の謎のセレ女が参加してくれた事もあり、盛り上がりは最高に。「誰を強奪しようか」と。レアルマドリード、バイエルンミュンヘン、浦和レッズ、FC東京。あの晩だけは、気分は金満クラブのサポータ、だった。
 一夜明け、素面になって現実を思い起こすと、来期の事を考えて早くも胃が痛くなるのだが、それはそれ。

 と、バカを語るのはさておき。上位リーグからの降格、下位リーグからの昇格は、見世物としては本当におもしろい。いや、サッカーの醍醐味と言っても過言ではないだろう。
 そして、先日のジュビロ対モンテディオは、野次馬にとっても、忘れ難い試合になった。

 どうしても点を取らなければならない終盤、CKに対応しGKが上がるのは珍しい事ではない。けれども、それがうまく行くかどうかは全く別な話。裏目に出る事もあるし。少なくとも、国内においては、デビュー直後の川口が公式戦でヘディングをポストに当てた記憶はある。しかし、海外を含めてトップレベルの試合でこのような得点が生まれたのは思い起こせない。「いや、お見事!」としか言いようがない。
 ともあれ、技術面から整理しておこう。CKのキッカーは大ベテランの石川竜也。若い頃から左足の精度には格段の定評があった男だ。その石川がニアに入り込んだ山岸にピタリと合わせた。山岸のジャンプのタイミングは良好で、マークしていたのは岡田(だったと思う)にしっかりと競りかけられたものの、上背の差でヘディングを取る事に成功した。しかし、岡田がしっかり飛んでいたため、山岸も当てるのが精一杯、どこにボールが飛ぶかは想定していなかっただろう。ところが、ジュビロGK八田は、ほどよくミートしたボールにタイミングを取る事ができず反応できない。ボールはゆるやかにファー側のサイドネットを揺らした。
 山岸はこのような事態を想定して、ちゃんとヘディングの練習をしていたと言う。それが岡田との競り合いを制した要因なのだろう、恐れ入りましたそして、石川のクロスの精度は言うまでもない。実際、ゴール裏のサポータ達に向かった石川のガッツポーズは、何とも言えず味わい深かった、大したものです。
 しかし、石川の精度、山岸のタイミング。そこまではモンテディオ側の準備の成果だが、そこから先は「神の領域」だったのだ。

 名波氏は語った。「奇跡を呼ぶ力が山形にはあって、僕らにはなかった。」その通りだと思う。ピッチ上で日本サッカー史屈指の視野の広さを誇った名波氏が、この悲劇から何を学ぶのか。この日のジュビロイレブンには、日本サッカー史上、個人責任としては最大の痛恨を演じた駒野友一もいた。駒野は、この悲劇から何を学ぶのか。かつてアジアを制したこの歴史あるクラブに訪れたこのドラマ。改めて、日本サッカーの歴史の厚みを感じる事のできる試合だった。

 美しい試合を提供してくれた、両軍のイレブン、サポータを含めた関係者に、感謝、尊敬、そして羨望の想いを伝えたい。

 そして。いや、しかし。
 山岸が試合後に語ったように、モンテディオはまだ何も掴んではいない。全てはジェフとの決戦次第。これまたよい試合を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 01:30| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月02日

渡邉晋監督を称えて

 ベガルタが1節残して、J1残留を決めた。嬉しい。
 残留が決まった今だから正直な胸の内を吐露する。私は今期のJ1残留は、奇跡に近い事態だと思っている。

 元々平均年齢が高い選手を集め連係を作り込む事で、2011年、12年と望外の好成績を残したチーム。ために、貢献した選手の多くに比較的高給を提供し、良好な若手が少なくなっていた(ここ最近、ユース育ちはもちろん新卒選手を成長させ損ねているのも痛い)。さらに、昨シーズンオフに、GK林が移籍、後継となった関も守備範囲の広いよいGKだが、小柄ゆえクロスへの対応、読みが外れた際の跳躍距離の限界もあり、穴を埋め切れなかった感がある。さらに同じくオフに獲得したマグリンティ、武井、二見も、不運も負傷もからみ、3人とも従来の選手は凌駕するには至らなかった。
 さらにアーノルド前監督の失敗。私はこの氏を新監督に選択した判断は適切だと今でも考えている。しかし、残念な事に氏は豪州外で采配を振るうのは初めてで、Jリーグそのものへの解釈違いがあり、残念な結果しか残せなかった。上記したようにただでさえ、平均年齢が高く新陳代謝に乏しいチームが、序盤に連敗を重ねてしまったのだ。加えて、我が軍は元々夏場はあまり強くない(これは活動量と連係を主体にするチームのやり方の宿命みたいなもの)。

 そうこう考えれば、渡邉晋氏が監督に就任した時点で、J1残留は絶望的に近い状態だったのだ。

 それでも、我々は残留に成功した。渡邉晋監督の功績は言葉にするも難しい。
 もちろん、幸運もあった。サッカーの勝敗は常に相対的なもの。より状態の悪いチームが多いほど、順位が上がる可能性は高まると言うもの。確かに、アルディージャの低迷はこのクラブの宿唖のようなものかもしれない。しかし、エスパルスのゴトビ氏更迭と、セレッソのポポビッチ氏採用などは、およそ常人には思いつかない悪手。さらにヴォルティスに出資している製薬メーカ殿が、名将小林伸二氏に良好な補強を提供しなかったのも幸いした。

 しかし、だからと言って渡邉氏の功績が差し引かれるものではない。
 ここで、いかに我々の戦闘能力が低かったか、いくつかデータで語っておこう。まず今期ベガルタが先制されて、逆転勝ちは前期のヴィッセル戦、点の取り合いに持ち込んだバカ試合のみ。いや、先制されて引き分けに持ち込んだのも、先日のガンバ戦だけ。先制しなければ勝利はおろか、勝ち点1もままならかったのだ。さらに、ワールドカップ中断後、ベガルタが11人相手のチームに勝ち点3を獲得したのは、先般のヴォルティス戦が初めてだったのを皆様お気づきだろうか。8月のエスパルス戦、10月のFC東京、レッズへの連勝、いずれもかなり幸運な判定で敵選手が退場し最後は10人との戦いとなっていた。相手が11人そろった他の試合では、先制しても逃げ切れなかったのだ。ベガルタサポータならご承知の通り、いずれの試合も選手は組織的に忠実に戦い続けたにもかかわらず。
 以前も述べたが、ベガルタは老齢化してすり減っていたのだ。老齢化した守備ラインは、終盤押し上げられなくなる。では前線の赤嶺とウィルソンは、序盤から猛烈なプレスに走り回っており、終盤は引いた味方に合わせて動き回りボールを引き出すのは相当きつい。スタメンの中盤のうち3人は30を過ぎた梁、野沢、太田だ。試合終盤に押し込まれ、崩されるのも当然ではないか。
 それでも渡邉氏が就任した第7節の26試合で、「これはどうしようもありません、完敗でした」と言う試合は、前期のサンガ戦、FC東京線、後期のマリノス戦、アントラーズ戦の4試合だけ。後の試合は、負けようが、分けようが、相当な抵抗をしながら、僅かの差で悔しい思いをする試合ばかりだった。

 渡邉氏は、ベテラン選手の成熟を存分に活かし、現有戦闘能力から考えられる最上の引き出しを発揮してくれたのだ。
 まず、きわめて短い時間で、崩壊していた守備組織を回復させるのに成功した事。「去年までのやり方に戻す」と言ってしまえば簡単だし、老獪で経験豊富な選手が揃っていた事も確かだ。だからと言って、あのレッズに0対4でズタズタにされたチームを短期間で立て直した手腕は鮮やかだった。
 今思えば、ワールドカップ休暇前の4連勝が大きかった。特にその後半2試合、監督選考の誤りで崩壊しつつあったセレッソと、ACLの敵地戦で苦杯し疲労困憊のサンフレッチェに、それぞれきっちりと1対0で連勝した渡邉氏の勝負勘は中々だった。長いシーズン、敵の戦闘能力が揃わない時があるものだ。そこで対決できた幸運を、しっかり掴めるかどうかが、長いリーグ戦の成績を左右するのだ。
 8月から9月にかけての、あの重苦しい5連敗を耐え抜いたのも見事だった。ベテランの多いチームは、大崩れはしないものだが、一方で負けが込むと「仕方がないな」的な感覚に陥りがちなもの。ところが、当時のベガルタは、あの苦しい期間も、いずれのベテラン選手も前向きに試合に取り組み、ついには連敗の悪循環を脱してくれた。これは、渡邉氏が選手達に的確にモチベーションを吹き込み続けるのに成功した事の証左と言えよう。
 梁勇基と野沢拓也の美しい連係を堪能できたのも、渡邉氏の功績だろう。選手同士の邂逅は偶然の賜物。たまたま、編成の都合で共にプレイする機会を得た複数の選手がどのような連係を見せてくれるかどうかは、永遠のサッカーの愉しみ。そして、アジア屈指の判断力と知性に恵まれた2人のベテランMFが、仙台の地で出会ってくれた。そして、梁をボランチに、野沢を左サイドMFに起用する事で、この2人は鮮やかな芸術を再三見せてくれた。FC東京戦の梁の突破からのラストパスを、どう形容したらよいのだ!!!
 もちろん、渡邉氏にも失態もあった。最近では、前節のセレッソ戦。2対1でリードしている時間帯、敵よりも早く動き、太田に代えて武藤を起用。前掛かりで来るセレッソの裏を狙う魂胆だったのだろうが、武藤は相変わらずの判断の悪さを発揮してしまい機能しなかった。また先般のヴォルティス戦、アディショナルタイムのパワープレイでの無理攻めを食らった時間帯、アディショナルタイムに梁と武井を交代させたのも疑問。あそこまで煮詰まった時間に選手交代をしても、主審は残り時間を延長するから、あまり意味がないはずなのだが。このあたりは、若さと言うものか。

 ただでさえ、老齢化が進み、来期の目鼻は立っていない。
 いかに鬼に笑われようとも、来シーズンは今年以上の艱難辛苦となりそうだ。他チームで経験を積んだ奥埜、山本の復帰を含め、いよいよ若手の起用が重要視されるだろうが、ここ最近ベテランに頼ったチームだけに、本当にうまく行くものなのか。
 それでも、上記したように、今期の渡邉氏の監督として手腕は最高のものがある。苦しい来シーズンを、ここまで大きな期待をいだける優秀な若手監督と戦えることそのものに感謝したい。
 そして、丹治強化部長との別れが近づいている。ベガルタ仙台と言う小さなクラブは、歴史も浅く財政的に豊かでもないが、一昨シーズンのJ1での2位獲得それに伴うACL出場と言う、信じ難い成功体験を積む事ができた。以前も述べたが、この成功は日本サッカーの歴史でも屈指のものだ。その成功を現場指揮したのが手倉森前々監督であり、後方でプロデュースしたのが丹治氏だった。言い換えれば、丹治氏は日本サッカー屈指の実績を挙げた強化責任者と言える。他の財政的余裕があるクラブからの引き抜きの声がかかってもおかしくないし、丹治氏自身が新たなな経歴を積もうとするのも不思議ではない。
 改めて、丹治氏に感謝すると共に、氏の今後の成功を祈りたい、ただしベガルタとの試合以外で。
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2014年10月30日

忘れたいが、忘れてはいけない過去2014

 またこの日がやってきた。横浜フリューゲルス消滅発表から、丸16年、4ワールドカップが経った事になる。
 来期以降のプレイオフ導入など、Jリーグが曲がり角に来ている現状で、4ワールドカップ前の惨事を振り返るのは、それなりに意味がある事にも思える。

 あの時、散々毒づいたが、あの悲劇において、事実上の撤退を表明した親会社側の責を問うのは違っていると思っている。もちろん、当時の親会社に不満はある。しかし、彼らは彼らでビジネスを行っているのであり、ビジネスの原理から投資や出資は避ける選択肢は否定できない。問題はそれを甘んじて受け入れてしまったサッカー側にあったのだ。あくまでも、サッカーにはサッカーの文脈がある。撤退を決意したい親会社がライバルクラブの出資者に期間限定でなるスキームは、サッカーの常識に反していたのだ。サッカーには無限の愉しさがある。愛するクラブが経営に失敗し、七転八倒しながら勝ち点を失い、下位に沈んでいく事そのものも、最高の至福の1つだ。それを否定し、トップクラブにしがみつこうとする姿勢をとられては、それはサッカーではないのだ。
 だから、サッカー側が彼らの提案を拒絶すればよかった。それだけの事だったのだ。しかし、サッカー側がそれを認めてしまい、トップクラブの消滅が現実となった。やってはいけない唯一の禁忌を冒してしまったのだ。おそらく、今後を含め日本サッカー史最悪の愚行と言う事になるだろう(これ以上の愚行が行われない事を祈りつつ)。

 あの消滅騒動の余波として、私たちは横浜FCと言う「ある意味において明確にフリューゲルスと言うクラブの後継クラブ」を入手した。しかし、今更言うまでもなくフリューゲルスと横浜FCは全く異なるクラブだ。それはレッズが三菱重工あるいは三菱自動車であり、サンフレッチェが東洋工業あるいはマツダであり、ヴェルディが読売クラブである事とは、全く違う。
 その横浜FCも4ワールドカップの長きに渡り丁寧に生をはぐくみ、1度はJ1にも登場した事を含め、Jクラブの中で美しい彩りを放っている。これもまた歴史だ。

 そして、私たちは今とても素敵なサッカー界を所有している。

 ワールドカップでは苦杯を喫し、多くの一般国民に失望を与えてしまった。
 Jリーグは、観客動員で苦戦している。
 若年層代表チームがアジアでの苦闘に思い悩む人が多い。

 でも、冷静に現状を見据えよう。

 ブンデスリーガやセリエAの得点王を争おうとする日本人スタアがいる。
 Jリーグは、毎週毎週知性にあふれた選手達が創意工夫を重ね、見事な戦いを演じてくれている。
 若年層育成の失敗を標榜されても、後から後から次々と優秀な若手スタアが登場している。

 ゆっくり、ゆっくりであるが、我々は常に前進しているのだ。わかる人が見れば、着実な前進は容易に理解できる。

 10ワールドカップ以上、サッカーに浸り切っているが、やはり今ほど幸せな時代はなかった。もちろん、日本代表の戦闘能力が頭打ちになる時はいつか来るだろう。いや、もう来ているのかもしれない。けれども、そんな事は些末な事だ。サッカーがサッカーとして今日ほど愉しまれた時代はなかった。インタネットや有料テレビの発達にも助けを受け、ほんの数年前では考えられないほどのサッカーに関する情報を得る事が可能となる、皆がありとあらゆる形態で、これまで以上にサッカーを愉しんでいる。そして、毎年毎年、皆がサッカー経験を積み、どんどんと新たな愉しさを発見し、それが深堀されて行く。この駄文を読まれている方1人1人に、己のサッカーに関する愉しみを振り返っていただきたい。いずれの方々にも、この魅力あふれる玩具の愉しさが、年齢を重ねると共に次第次第に深まってきた事に同意いただけると思う。その愉しさを、少しずつでも多くの人に展開すれば、長い目で見れば必ず友は増えていく。
 ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、イタリアなどとの本質的な差は、ネイマール、メッシ、ラーム、ピルロではないのだ。いや、我々は遠藤や岡崎や本田を抱えており、この分野の差は着実に埋まっている(もちろん、埋まっているがまだまだ決定的に差はありますがね)。本質的な差は、ブンデスリーガとJ1の観客動員であり、換言すれば、この愉しさを把握している友の質と量なのだ。
 この質と量の差を埋めるのは大変な仕事だし、容易には叶わない。しかし、4ワールドカップ前にこれほどの大愚行を犯しても、我々の進歩は止まらなかった。粘り強く丁寧に進んで行けばよいのだ。時には後退を余儀なくされる事もあるだろう。現実的に悲しいチェアマンを抱いているのは、典型的な後退劇だ。けれども、このような過ちも、あのフリューゲルス消滅に比べれば小さなことに過ぎない。我々が皆で丹念に積み上げてきたものは、3つのお願いやプレイオフ導入やさらなる日程破綻推進くらいでは揺らがない。
 我々は、サッカーと言う、少々理不尽だが、汲めども尽きぬ魅力に満ち溢れた玩具を愛し続ければよいのだ。
 だからこそ、愛するものを守るために、執拗に執拗に繰り返す。私はあの悲劇を絶対に忘れない。
posted by 武藤文雄 at 01:06| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月05日

ベガルタ復活の狼煙

 ベガルタはFC東京をホームに迎え、難しい試合を勝ち切って久々の勝ち点3を獲得。考えてみれば、己が生参戦した8月16日のエスパルス戦以来、50日振りの勝利。自宅のテレビ桟敷で久々の歓喜を堪能できた。乾杯。

 前節ベガルタは終了間際に追いつかれ悔しい引き分け。久々の勝ち点獲得と言う結果もやれやれだったが、試合内容も上々だった。ハイプレスが奏功、再三右サイドから好機を作り、前半終盤に先制に成功。後半は後方に引き、憲剛と大久保を軸にした猛攻を丁寧に抑えた。この5連敗は相応に内容のよい試合をしながら、攻め手に欠け、肝心の所で守り切れない試合を続けてしまっていた。しかし、この日は攻守それぞれに渡り、大きな改善がなされ、しかも勝ち点を獲得できた。最後に勝ち点2をこぼしたのは悔しかったが、憲剛にあの精度のクロスを入れられてしまってはしかたがない(この失点については守り方に課題はあったのだが、それは後述する)。
 フロンターレ戦の攻撃。序盤からラインを浅く保ち、高い位置からのプレスをかけ、再三右サイドの太田を走らせ好機を作り続ける事に成功した。そして前半終盤に、太田を追い越した菅井が速く低いクロスを赤嶺に合わす。赤嶺は巧みなスクリーンから、後方でフリーになったウィルソンに落とす。ウィルソンは、詰めてくるジェシをよく見て、ジェシを外すべくカーブをかけたシュートでGKを破った。ここまでの時間帯、太田も菅井も高いクロスを狙っていたが、この場面の菅井は低く強いボールを入れ変化を加えたのがよかった。執拗に類似した攻撃を継続し、ちょっと変化を加えるのは得点パタン確立の王道だ。ウィルソンが久々にシュート能力の高さを見せてくれたのも大きかった。ウィルソンは、2試合前のサガン戦でPKを外すなど「ドン底」状態の感も呈していた。しかし、それ以降も健全な姿勢で戦い続けたこのストライカが、ようやく結果を出してくれた。そして、ウィルソンは今日の東京戦でも素晴らしいプレイを見せてくれた。
 一方、フロンターレ戦の守備。前節のアントラーズ戦を典型に連敗中に幾度か散見されたCB2人のラインコントロールがずれる場面がほとんどなかったのがよかった。前線からのプレスはよくかかっていたので、ラインコントロールがしっかりすれば滅多に裏を突かれない。ただ、アーリークロスへの対処に甘い場面が多かった。先制直前にレナトのシュートがポストを叩いた場面はその典型(あれが決まっていれば全く異なる展開になっていた)。若森島に決められた同点弾も、クロスを上げた憲剛への詰めの甘さ(これは致し方ない所もある、鋭く動く憲剛を止めるためには、それ以上の守備者の判断の冴えが必要なのだし)と、若森島に競りかけたのが小柄な村上だった事(終盤、ベガルタは鎌田を起用し、上本、角田、鎌田の3人がフィールドにいたのだから、適切な受け渡しができたはず)は残念だった。

 かくして迎えた今日の東京戦。前節までの課題がさらに改善されていた。
 守備については、菅井と石川の両サイドバックが常に押上げを意識する事で、東京のトレスボランチから両翼に押し上げる羽生、米本を押し下げたのが大きかった。特にベガルタから見た右サイド、Jを代表する飛び道具サイドバックの菅井対太田の戦いで、菅井が優位に立つ事ができた。これで前節課題となったアーリークロス対策が奏功した。もちろん、伸び盛りの武藤嘉紀は常に脅威。前半太田の強引なクロスを上本が処理を誤った場面(関が見事なブロック)、後半富田のミスを奪われ強引に持ち出され強烈な一撃を食らった場面は怖かったのだけれども。それでも、武藤とエドゥーを粘り強く見張り続ける事に成功、70分過ぎに米本のパスからエドゥーが抜け出しかけたのを石川が粘り強く押さえたのは、その典型だった。
 攻撃面の改善も大きかった。太田と菅井の直線攻撃を軸にする右サイドに加え、左サイドの攻撃も活性化した。老獪な野澤と梁の技巧に石川が絡み人数をかける攻撃が機能したのだ。74分の決勝点は実に美しい得点だった。ベガルタゴールキックからもつれた流れから、赤嶺が巧みなポストプレイでボールを保持、梁と野澤の技巧で確保したボールを石川が冷静にターンで保持し、中央にフリーランした梁へ。梁は慌てて寄せてきた米本を鮮やかにかわし、後方から進出した菅井に。菅井はダイレクトでウィルソンにラストパス。ウィルソンの強シュートを権田がはじいた所を、赤嶺が鋭く詰めた。6人が絡む美しい攻撃だった。このような攻撃を、狙い澄ましてできるようになったのは、とてもとても大きい。

 この2試合、幸運も多かった。
 フロンターレは、大島がアジア大会で不在。大島が敵を引き付ける事で、憲剛が自在にスペースを獲得するフロンターレの中盤の強みが発揮されなかった。さらにレナトが前半で負傷交代し、裏に抜け出される脅威が少なかったのも幸いした。
 この東京戦は、先制直後に2本警告を食らったエドゥーが退場を食らう幸運があった。ベガルタペナルティエリア内で倒れたのをシミュレーションと判定され1枚目。さらにヘディングの競り合いで、後方から悪質な当たりで2枚目。いずれもイエローを食らっても仕方がないプレイではあったが、ベガルタサポータから見ても(不満を述べる立場ではないが)2枚出るのは何とも気の毒な判定。確かに、両軍DFが相当激しく厳しい守備を見せたこの試合はFWが倒されながらファウルを取られない場面が多かった。その度にエドゥーのみが主審にあからさまに不満を述べていたのが悪印象につながったのかもしれないけれどもねえ。
 余談ながら、(個人的に代表に定着して欲しいと期待している)米本のプレイには不満(いや、今日に限っては文句を言ってはいけないのですが)を感じた。若い頃から得意の厳しいチェックでボールを刈り取るまではよいが、持ち出した後で、サイドに開いて単身突破を狙ったり、妙に凝ったプレイをするのは何故なのか。上記したエドゥーへのパスなり、前半見せた強烈なミドルシュートなり、もっとシンプルなプレイを狙った方がよほど恐怖感があるのだが。ちなみにベガルタの決勝点場面、梁に敢え無くかわされたのも...イタリア人監督の下、タルデリとか、ディ・リービオとか、ガットゥーゾとか、目指して欲しいなと。

 ともあれ。上位を争うこの2チームと、完全に互角に戦う事ができ、ホームで勝利、アウェイで引き分ける事に成功した。決して楽観するつもりはない。しかし、どのようなチームとも対等に戦う事ができる事ができるところまで、チーム状態が向上したのは大きい。粘り強くブレずに積み上げてきた渡邉監督を高く評価するものである。残念ながら、今期の目標は残留に置かなければならないのは確かだ。そうは言っても、残り7試合をこの調子で戦えば、間違いなく結果はついてくる。苦しい戦いを、信頼できる選手達と共に演じる事ができる事を素直に喜びたい。
posted by 武藤文雄 at 23:21| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月23日

ベガルタの苦闘を堪能して

 ベガルタの苦闘が続いている。ここに来て4連敗、残留争いが現実的になり、非常に苦しい状況に追い込まれてきた。

 正直言って、4戦連続勝ち点無しと言うのは、あまり記憶にない。J1清水氏の自転車操業時代も、J2時代のベルデニック氏や都並氏のお笑い時代も、4試合もすれば、何かの幸運や偶然により勝ち点を積む事ができていたように思う。
 つらいのは、必ずしも内容が悪くない事だ。この4連敗を振り返っても、完敗と言う内容はマリノス戦くらい。そして、他の3試合は、全員の生真面目な組織的対応でそれなりに攻勢をとりながら、後半、セットプレイなり、CBの鎌田と上本のラインのずれを突かれ、失点。リードを許してから、慌てて選手交代を行い攻め返そうとするも機能し切れず敗れると言うパタンを繰り返している。総じて、試合内容にしても、前試合からの積み上げや修正にしても、そうは悪くないのだ。
 そしてこの4連敗には共通点がある。この4試合、7失点は、いずれも敵のスタアの個人能力にやられているのだ。ヴィッセル戦は、森岡のスルーパスと岩波の打点の高さ。マリノス戦は中村俊輔の悪魔のようなCK2発。アルビレックス戦はレオ・シルバのFK一閃。そして、先日のサガン戦はトヨクバの一撃と水沼宏太の位置取りの巧さ。勝負どころで、敵のスタアの舞いを止め切れないのだ。
 それに比較して、当方の攻撃は、最後の所で崩し切れない事の連続。

 そこには、隠しても隠し切れない現在のベガルタの大問題がある。選手の老齢化だ。サガン戦のスターティングラインナップを振り返ってみよう。以下となる。

選手   年齢
桜井    35
村上    33
上本    32
鎌田    29
石川    29
梁     32
富田    28
太田    31
野沢    33
ウィルソン 29
赤嶺    30
平均年齢  31

 冗談のような話だが、平均年齢はジャスト31歳。これはサッカーの常識に反している。と言うより、トップチームでこれだけ平均年齢が高いチームは、さすがの私もほとんど記憶にない(普段ならば、関、菅井、武藤が出ているから、かろうじて平均年齢は20代となるのだが、この日はこの3人がスタメン落ちして、代わりに30代のベテランが起用されたのでこうなったのだが)。
 「何故こうなってしまったか」は明確だ。
 我がベガルタは、財政基盤の脆弱さから(ありていに言えば「貧乏だから」を、きれいに言い直しているだけだが)、非常に厳しい選手運用を継続してきた。10年ちょっと前に新卒で獲得した、梁、菅井、富田らの生え抜きを丁寧に育て、彼らを20代半ばでトップレベルの選手にする事に成功した。さらに、鎌田、角田、太田、赤嶺ら、能力は格段ながらチーム事情から活躍し切れなかった、やはり20代半ばのタレントを集め、的確なモチベーションを提供し、経歴上最高と言ってよい活躍ができるように仕立てた。そして、彼ら相互の組織力を磨く事で、J1で2位となり、アジアの国際試合も堪能した。
 そうなれば、ベガルタは、各選手に相応の高額収入を提供しなければならなかった。その結果が、(精神的には極めて健全で、闘う姿勢に疑問がない)30過ぎの選手達の集合体である。
 結果として、1試合ごとに相応に修正がなされ、選手も健全に戦いながらも結果が出ない試合が続く事となっている。

 仕方がない事なのだ。
 この難しい状況だが、上記の通り渡邉監督はブレずに修正を繰り返しているし、選手達も粘り強く戦っている。真面目にこれを続ける事が、唯一の道だろう。
 この苦境を、苦楽を共にしてきた監督と選手達と戦えるのだ。まこと、サポータ冥利に尽きるシーズンである。
posted by 武藤文雄 at 11:13| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月13日

ザッケローニ氏の選択

 細貝の落選はビックリした。全く予想していなかった。
 過去5回のワールドカップメンバ発表で、一番のサプライズではないか。2002年の波戸落選にも驚いたが、このケースは「なぜフィリップは明神ではなくて、波戸を起用するのだろうか?」と言う疑問が常にあった。しかし、今回の細貝落選は全く予想していなかった。長谷部の負傷もあったから、青山の選考は驚きではないが、その場合はボランチを5人選び、センタバックかサイドバックか攻撃的MFを減らすと思い込んでいた。細貝はDFのいずれのポジションも巧みにこなせるのだし。
 私はザッケローニ氏を信頼している。しかし、本当に細貝不在で大丈夫だろうか。蛍は相当タフなプレイを継続するだろう。結果として出場停止を食らう可能性は低くない。また、遠藤爺と負傷上がりの長谷部の肉体負荷を極力減らす必要もあるはず。そうこう考えると、中盤後方で確実に計算できる細貝は非常に貴重な存在となる。青山と細貝の使いどころは全く異なるのだ。

 これも歴史だ。

 個人的には、清武よりは憲剛だろうと思っている。しかし、信頼できるイタリア人のオッサンが、ありとあらゆる経験を積んだ中村憲剛よりも、まだ20代半ばの清武を選んだのだから、それはそれでワクワクしてくる。
 大久保、エヒメッシ、原口のうち、選ばれるのは1人だと思っていた。でも、ザッケローニ氏は2人を選んだ。氏の選択もわからなくもない。大久保は万能型のストライカのみならず、南アフリカで実に知的な守備をスタメンで演じてくれた。一方エヒメッシは、敵の稠密なディフェンスを強引に切り裂くドリブルと、敵に奪われないボールキープが同居している。大久保とエヒメッシ、確かに持ち味は異なっている。

 空中戦要員の選択を、ザッケローニ氏は選ばなかった。
 確かに。日本代表の歴史を振り返っても、チーム全体の体調がよく、最前線でも中盤でも的確に刈取りができていると、高さを活かされる場面は皆無。豊田も闘莉王も選ばなかったザッケローニ氏。やり切れる自信があるのだろう。

 完全に国民的行事に昇華した代表選手発表。私はこれだけで感慨深い。サッカーが、完全に国民的関の対象となったと、認識できるからだ。80年代までの、誰も相手にしてくれなかったあの時代。いや、好事家だけで愉しむあの時期は、それはそれで愉しかったのですが。
 と実は、この週末に、自分なりの23人を妄想する遊びの文章を書きかけたのだが、どうにもおもしろい文章にならずに公開を断念した。いや、独自性が出せないと言う事だけなのですが。
 そうこう考えると、素朴な疑問がぬぐえない。なぜ、月曜日の昼間に発表したのでしょうか?平日ならばゴールデンタイムに発表するとか、土日の昼間に発表するとか。その方が、ずっとテレビの視聴率を稼げると思うのですが。まあ、いいです。


大久保が、「努力と研鑽を重ねたベテランが呼び戻された、よかった、よかった」と称えられているのはどうかねえ。私は大久保が大好き。大学2年生になった坊主にこの懐かしいエントリを読ませたら「やはり俺は優秀だ」と胸を張っているが。

 でも、でも。ブラジルで憲剛を見たかった。
posted by 武藤文雄 at 01:57| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月10日

完璧な勝利

 ベガルタは敵地でセレッソに1対0で勝利。柿谷とフォルランの強力2トップに苦しみながらも粘り強い守備で対抗。試合終盤の狙い通りの速攻で決勝点を奪う、完璧と言ってよい勝利だった。

 序盤セレッソの鋭い出足によるプレスに押し込まれる。ボールを奪っても山口蛍の刈取りと、扇原の的確な展開で攻め返される。そのため、両サイドバックが上がれず、攻め返せない。しかし、それでもDFとMFで8人のブロックを作り、修正を繰り返して粘り強く守る。中でも富田と武井の位置取りは絶品だった。さすがに柿谷とフォルランの個人技は持て余し危ない場面を作られるが、鎌田と広大は丁寧に身体を寄せて何とか防ぐ。
 そうこう我慢を続けていれば、守備にリズムが出てきて攻撃も円滑になる。サッカーと言う競技は、そのようにできているのだ。
 30分以降、ベガルタはウィルソンを軸にした逆襲が奏功し始める。中でも40分の決定機は惜しかった。左オープンで受けたウィルソンが中央に飛び込んだ武藤に強く低く入れたボール、武藤が落とし、フリーで梁が狙ったもの(シュートはGK金鎮鉉の正面を突いてしまった…金鎮鉉はワールドカップ代表に入れなかったんだ、J2時代から散々苦労されてきた男だけにすごく残念だ)。
 前節の前半、ヴィッセルに同様に押し込まれて我慢しきれず連続2失点を喫した。しかし、この日は同様の展開に陥りながら、全選手が冷静に我慢を重ねてくれた。おそらく、前節4点を奪えた経験が大きかったのだと思う。悪い時間帯は我慢する事、我慢しているうちに展望が開ける事、昨シーズンまで「やれていた事」を各選手がようやく思い起こしてくれたのだ。

 心配していたのは後半立ち上がりだった。柿谷とフォルランを最前線に押し出されると、いかに守備を固めていても崩される心配がある。当然セレッソは、ベガルタのプレスがかかり切らない立ち上がりを狙ってくるに違いない。ACLを含めて厳しい日程を戦っているセレッソは、スタミナ面でも厳しいだろうから、ハーフタイム直後が非常に重要になる。
 と、思っていたが、セレッソは漫然と後半に入ってきてくれた。文句を言う筋合いはないのだけれども。
 ベガルタがペースをつかんで後半は進む。そして、60分には予定通り?赤嶺を投入。少しずつ、攻勢をとれるようになる。そして、狙い通り赤嶺がフリーで抜け出しループで狙う決定機をつかむ(丁寧にサイドキックで狙い過ぎ、枠を外してしまった)。それでも粘り強くベガルタは戦う。80分には疲労が見えたセレッソ守備陣を突く目的で、武藤に代えて佐々木を投入。これが見事に当たる。富田の好パスを受けた佐々木は右サイド縦突破狙いのフェイントから、中央赤嶺に高精度の低く強いボールを合わせる、これでセレッソDFが赤嶺とウィルソンに引きつけられたところで、赤嶺が右後方から長駆前進してきた梁にラストパス、梁が落ち着いて金鎮鉉を破った。湧き出す速攻が帰ってきたのだ。
 終盤、セレッソの無理攻めを冷静にはね返し、タイムアップ。苦しい場面は多かったが、90分間、丁寧な守備を継続、敵に疲れが見えたところで、狙いを定めた逆襲速攻で得点しての勝利。ゲームプラン通り、完璧な勝利だった。

 余談。あ、以降は、私はポポビッチ監督の事嫌いなので割り引いて読んでくださいね(この人は、あの見事な戦いを演じた南アフリカでの日本代表を中傷したので、大嫌いなのです)。
 野次馬としてはセレッソの監督ポポビッチ氏の采配、言動には多々疑問が残った。
 実際、セレッソの攻撃は恐ろしかった。前半、南野の狡猾なクロスからのフォルランの振り向きざまの一発。フォルランがベガルタの浅いラインの裏を突き、関がペナルティエリア外で見事に胸でブロックしたこぼれ球を、柿谷が狙ったシュートは鎌田が見事にカバー。柿谷の突破を武井がたまらずファウル止めたFK、フォルランのバーを叩く優雅なシュート。後半も、序盤に扇谷の低く強いフィードからのフォルランの一撃。酒本の好クロスに南野の飛び込み。柿谷がスワーブして上げたクロスをフォルランがヘッドで狙い関が好セーブで防ぐ(この場面など、守備側から見れば「どうやって防いだらよいのだ!」と嘆きたくなる美しい連係だった)。いずれも、ベガルタが組織的にしっかりと守っているにもかかわらず、柿谷、フォルラン、南野らの個人能力で崩されかけたもの。技巧と判断に優れた選手達の即興による攻撃は、本当に恐ろしかった。
 しかし、ポポビッチ氏の采配には疑問が多かった。前半からベガルタが粘り強い組織守備を機能させているにもかかわらず、やり方を変えてこなかった事だ。特に上記した後半立ち上がり無策だったのは不思議だった。さらに交代策も疑問山積。サイドに開かせても機能しないアーリアを右サイドに起用した事そのものが不思議だった。アーリアと言う選手は、他の選手を活かすプレイを得意とはせず、自らが提供された場所で好プレイを展開するのが持ち味、「いかに、柿谷、フォルランに点を取らせるか」と言うテーマのセレッソでの働き場は中々難しいのだが。交代策も不思議、いやらしい持ち出しと菅井に対する忠実なマークで貢献していた南野の交代も、持ち味や使い所がわかりづらいミッチ・ニコルスの投入も謎だった、楽になったベガルタサポータとしては文句を言う筋合いはないけれど。しかし、一番驚いたのは、ベガルタの得点直後に柿谷を外した事、いや正直嬉しかったですけれども。
 さらに呆れたのは、試合終了後のインタビュー。「ワールドカップ代表候補選手に集中が欠けていた、自クラブで成果を出しての代表のはず」と、選手批判を行ったのだ。私の見るところ、セレッソの代表候補選手、柿谷、蛍、南野、いずれもよくやっていたと思う。むしろ問題は、彼らを存分に活かせず、我が軍のペースにはまりながら、何の修正もしなかった監督にあったのだが。まあ、いいや。ACL、頑張ってください。

 ベガルタは完全に立ち直った。
 敵のペースを許す難しい時間帯も、粘り強く我慢できるようになった。今日のベガルタの3ラインは、柿谷と扇原に散々揺さぶられても、冷静さを失わなかった。サッカーは我慢なのだ。
 そして、敵の僅かな隙を突いて、的確な逆襲速攻も仕掛けられるようになった。前節、ウィルソン、太田、武藤が得点したが、今節はとうとう大黒柱の梁勇基が美しい得点を決めてくれた。
 勝ち点もそこそこ積み上がってきた。無理に勝ち点3を狙いに行き、墓穴を掘る事ももうないだろう。いくら押し込まれても、苦しくても、これからは、「点を取られなければ勝ち点1は獲得できる」と言うスタンスで戦う事ができる。
 浅いバックラインと、関の連係も確立されつつある。上記したフォルランが抜け出した場面の関の飛び出しは中々のものだった。フォルランの執拗なシュートも関は冷静に処理してくれた。我々は、小柄だが役に立つゴールキーパを獲得しつつあるのだ。
 負傷者多数と言っても、交代策も間口が広い。今日は角田が出場停止だったが、武井のボランチは完全に機能した。赤嶺をベンチに置き体力に配慮しても、その間武藤が相応につなげるようにもなった。終盤、佐々木を投入し決勝点の起点とする事にも成功した。後は、二見、山本、マグリンティ、藤村、そして八反田らを、いかに戦力化するかだ。

 次節は王者サンフレッチェをユアテックに迎える。元々相性のあまりよくないサンフレッチェだが、幸い先方はACL遠征直後で疲労しているはず。今日のような粘り強い戦いで、是が非でも勝ち点3を獲得するのだ。
posted by 武藤文雄 at 22:57| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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