2007年08月15日

42年目の危機

 ジェフは敵地とは言え、アントラーズに1−3で完敗。

 押され気味の展開から、水野(だと思ったのだが)の好FKからファボンの自殺点で先制したところまでは順調。しかし、前半のうちに、水野の寄せの甘さから新井場にミドルシュートを決められる。さらに、後方から巧みに前進してきた小笠原に水本が寄せ切れずきれいなグラウンダのミドルシュートを決められる。小笠原は見事だったが、南アフリカを目指そうという水本なのだからもう少し何とかして欲しかったのだが。
 その後、当然のように後方を固めるアントラーズに対し、ジェフが攻勢を取る。佐藤勇人の上下動と下村の正確なパスで素早く前線にボールを運ぼうとするのだが、守る気になった時のアントラーズの守備は固く、思うように崩せない。そうこうする間に試合は終盤に進み、内田の巧技を楽山がファウルで止めたPKで2点差となり勝負はついた。

 アントラーズは、小笠原が腕章を巻き攻守両面で機能、得点場面はもちろんだが、相変わらず正確なパス、いやらしい守備など、渡欧前の実力そのまま。イタリアで起用されなかった原因はさておき、相変わらず日本屈指のMFである事を自ら証明した。
 ただ、小笠原、野沢、本山と攻撃面で力を発揮するタレントが中盤に並ぶのに加え、両サイドバックも攻撃が持ち味なため、守備面でのバランスを危惧していた。しかし、この日の分厚い守備は、往時のアントラーズを彷彿させるもの。終盤の中後の左コーナフラッグでの時間稼ぎなど、昔の相馬を思い出した。最前線での得点力の問題が解決されれば、アントラーズはガンバ、レッズに追いつく可能性を持っているのではないか。

 この日のジェフは羽生が負傷離脱と言う事でレイナウドがスタメン、これで水野と2枚前線でボールを持てる選手が増えた事になるが、レイナウドの切れ味は今一歩で分厚いアントラーズ守備網を突破するには至らない。
 こうなると水野の「ビッグプレイ」に期待がかかる。水野はこの日も意欲は満々で、再三カーブのよくかかった好クロスを蹴り、時に左サイドに回り好機を演出し、角度のない所から決定的なシュートを狙い、右サイドに押し出され2人の守備者に守られながらも見事な突破を見せ、2点差となった終盤には分厚い守備網を前に見事な切り返しから左足で強シュートを狙うなどした。しかし、いずれも後一歩で得点には結びつかなかった。それぞれの決定機に至るプレイは確かに見事だったのだが、まだこの若者は何かが足りない。
 この日、改めて感じたのは、突破を狙えない時にチームでキープするためのパスの精度の悪さ。ラストパスを狙う時にあれだけ気の利いたキックを見せるのに、キープのパスを再三アントラーズに奪われていた。ただのつなぎに凝り過ぎるのも悪癖だが、それ以上に展開時の集中が足りないのだ。このようなミスパスの多さにより、チーム全体の信頼を未だ勝ち得ていないのではない事が最大の問題ではないのか。だから、勝負どころのラストパスでもチームメートが水野を信頼し切って「ここに来る」と言う感覚で飛び込めないのではなかろうか。

 J1はまだ14節も残っており、やや時期尚早かもしれないが、残留争いを考えてみた。
 現状最も苦しいのは、シーズン半ばを過ぎてようやくベテラン選手中心のメンバ構成を切替え、戦いながら連動を作る横浜FC。失礼な言い方になるが、このままでは高木氏がよほど神業のようなチーム作りをしない限り、J2落ちは決まりだろう。
 その他の座を、アルディージャ、トリニータ、ジェフ、ヴァンフォーレ、サンフレッチェ、FC東京あたりが争う。
 このうち、トリニータはここに来てホベルト、エジミウソン、前田、梅崎と実に効果的な補強に成功、戦闘能力を格段に上げる事に成功している。西川の負傷離脱と言う誤算はあるが、シャムスカ氏の手腕を考えると、抜け出しそうに思う。またサンフレッチェは、何とストヤノフ獲得に成功、槇野の成長と合わせ最大の課題だった守備力を格段に上げる事に成功した。守備の問題が解決すれば攻撃力はリーグ屈指、むしろ中位から上位を伺う存在になる可能性すらある(もっとも、監督批判を行なったストヤノフが、ジェフを1度解雇され、新たにサンフレッチェに雇用されたのだが、移籍料などはどうなるのだろうか。直接のライバルクラブへの移籍の形でもあり、何か釈然としない)。
 そう考えると、ジェフがアルディージャ、ヴァンフォーレ、FC東京と残留争いを繰り広げる事になるのではないか。FC東京は戦闘能力では優勝を争ってもおかしくない陣容だが、相変わらずチーム力が揃わない。原氏がどうにもチームをまとめきれずにいる。アルディージャは、勝ち点が思うように積みあがっていない時期でも、ロバート前監督のチーム内での評判は悪くなかったと聞くが、監督交代が奏効するかどうか。ヴァンフォーレは他のチームと異なり、チーム力としてのまとまりは抜群だが、個々の選手の能力が今一歩の感がある。このクラブに関しては、2部落ちを怖れずに現状通り攻撃的に戦い続ける事ができれば、残留できると思うが。
 その中で、ジェフの現状は決して明るいものではない。ジェフは中断期間中も多くの代表選手を輩出した関係で、チームの再調整が思うようにできなかった事もあり、レイナウドの加入はあったものの、もう1つチームはピリッとしていない。昨シーズンからの巻の「慢性疲労」も心配だ。さらに活動量を前面に押し出すチームの特色は、この暑さでは発揮しづらい。
 そして、何より五輪代表予選があり、中心選手の水野、水本が再三離脱する。しかも今回の五輪予選は
(1)先日の中国遠征を日本協会が花相撲優先で台無しにした事
(2)反町氏がメンバ固定の試合と新メンバテストの試合を完全分離した事でチーム作りが遅れている事
の2点から、96年以降の予選では最も苦しい戦いが予想され、選考された選手はJリーグに非常に集中しづらい状況になる可能性がある。FC東京も同じ問題があり、楽観を許さないが、伊野波、梶山、平山に対するチーム依存度は、ジェフにおける水野、水本への依存度よりは格段に小さい。
 そうこう考えると、ジェフの状況は相当苦しい。

 「古河電工−ジェフ」と言うクラブは、JSLが創設された1965年より、常に日本のトップリーグでプレイしてきた名門中の名門。かつて古河電工は、78−79年シーズンのJSL1部で最下位になったが、当時は最下位のチームでも2部のチームとの入替戦があった。入替戦の相手は本田技研(現ホンダFC)だったが、古河は当時日本代表の大黒柱だった前田秀樹をスイーパに下げ、ひたすら守備を固めてこの難戦を乗り切った。また、90年代後半J2が組織化されJ1からの降格制度ができてからはしばしば陥落の危機を迎えたが、かろうじて残留を継続した時代もあった。
 そのような危機を乗り切り、常にトップリーグの座を守ってきたジェフ、全国リーグ創設42年目に迎えた危機をどのように乗り切るのだろうか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月14日

日産スタジアムの惨劇

 夏休みに入ったのだが、さすがに徳島に行く余裕はなく、坊主とマリノス−横浜FC戦を観に行った。横浜ダービーと言う事もあり、マリノスが相当精力的に販売促進を実行していた試合だ。試合中の公式発表によると、53916人の入場。大観衆の見守る中のダービーマッチの雰囲気は中々だった。もっとも、誰もあのような試合展開になるとは予想はしていなかっただろうが。
 また、多くの観衆がダービーマッチにも関わらずマリノスを応援していたのも興味深かった。このあたりは、「マリノスは横浜で圧倒的な大衆支援を受けているため」なのか「マリノスの知名度が横浜FCと比較して圧倒的に高いため」なのか「両軍を比べる限り『過去よりも現在あるいは未来がピーク』のスター選手はマリノスが圧倒的に多いため」なのか「80年代半ばからプロ化を推進した日産の努力の蓄積のため」なのか「マリノスが販売促進した事による事そのもののため」なのか、色々な事情が考えられるのだろう。
 ただし、この両クラブの何とも言いようがない過去のいきさつを考えると、この試合の情宣に用いられてた下品なキャッチはいかがかと思うのもまた事実。クラブの地域立地から高揚するライバル意識が、ダービーマッチの最大の面白さ。その高揚に、いささか芝居じみた煽りを全否定する気はない(ただし、あまりに幼児性を前面した対立の煽りは勘弁して欲しいものだが)。しかし、この両クラブだけは、過去のいきさつがいきさつだけに、煽れば煽るほど、何か言いようのない寂しさを感じたのだ。まあ、1つの見方だと思っていただければ。

 フィールド上で繰り広げられた惨劇を振り返る。

 前半の1点目はあろう事かGK菅野のミス。思うように勝ち点を積み重ねられない中断前の各試合でも見事なプレイを見せていたこのGKがよりによってこのようなミスをするとは。何か、このプレイだけでこの日の横浜FCは悲惨な事になるのではないかと言う予感がした。横浜FCは、直後の決定機を奥がボールを収めきれず逸機、代表経験のあるベテランのミスは痛い。そして、後半終了間際、横浜FCの難波が負傷。この場面、遠い2階席から見ても大変な状況だと思えたのだが、不可解な事に横浜FCは交代選手の準備が遅れる。結果的に10人で戦っている時に2点目を奪われてしまった。負傷が相当深刻でフィールド内での治療に時間がかかった事もあり、負傷直後に準備を始めれば11人で戦う事ができたと思うのだが。余談ながら、私にはこの場面、難波が急に進路を変えた事でマリノスDFに激突したように見えたのだが、横浜FCが試合後「極めて悪質なラフプレイ」として提訴したと言う。裁定を待ちたい。
 それにしても横浜FCの前半は、大黒柱とベテランと監督が決定的ミスを犯し0−2、この時点ではこれ以上悪い事は無かろうという印象だった。

 しかし、横浜FCは後半それ以上の地獄を見る事になる。後半早々の3点目。山瀬が独特の抑揚の利いたドリブルで右から持ち込み横浜FC守備ラインが引き付けた上で左へ展開、これにより全くのフリーになった小宮山はよくルックアップしてペナルティエリアに進出した山瀬にグラウンダのセンタリングを通した。左右に振られたとは言え、敵のエースMFをあそこでフリーにしてしまうとは。確かに山瀬と小宮山は巧かったが、守備を基盤にするチームがあの程度の揺さぶりに崩れては話にならない。もし、山口素弘がいれば、このように揺さぶられても易々と山瀬をフリーにはしなかっただろう。しかし、もし山口がいたとすれば、スタミナと守備能力の衰えから別なところで破綻をきたしただろう。これは大ベテランを駆使してJ1昇格した横浜FCの言わば構造的問題なのだ。逆に言えば、衰えが顕著になった山口を軸にJ1に突入してしまった横浜FCが、山口の代わりを見出せずにもがいているとも言えるのではないか。この日守備の中央を固めた早川、太田、呉範錫、マルコス・パウロの4人の能力は、十分にJ1で戦かえるレベルに達していると見たが、短い時間で厳しいリーグを戦いながら連携面で存分に機能するチームを作る事ができるか。現実的にJ1残留は相当厳しい勝ち点勘定だが、ようやく人材は揃った感がある。もし残留を果たせなくともチームの基盤を再構築できれば、J2でまた強さが発揮できるはず。昨期J2で見事な手腕を見せた高木氏の手腕を見守りたい。

 以降は、吉田、山瀬弟が巧みに作るスペースに隼磨、小宮山が自在に進出、サイドで数的優位を作っての揺さぶりを繰り返し、面白いように得点を重ねた。特に小宮山の成長は見事なもので、ドゥトラの穴を存分に埋めた感がある。得点力ある大島、坂田の2トップ、J屈指の攻撃的MF山瀬を軸にした攻撃ライン、後方を中澤と松田が締める守備ライン。マリノスはいずれのチームをも破る戦闘能力を確保していると言えるだろう。
 いささか個人的な戯言、吉田、山瀬は代表でも十分使えるタレントだと思う。吉田はボールの引き出しとスペースメークが得意で、得点能力も高い。山瀬は最近でこそ配球も巧みになったが、元々は羽生同様豊富な活動量と裏へ抜けるタイミングがよい選手。パスを出すタレントが豊富な今の代表だが、MFの前方でボールを引き出すタレントとして2人共面白い存在だと思う。山瀬はオシム爺さんがチーム結成時に召集されていたのだが、どのような評価なのだろうか。
 また小宮山も人材不足気味の左DFのタレントとして興味深い。とにかくボールを持った時のふてぶてしさがよい。課題は強力な攻撃タレントとの守備面での応対能力か。加地、駒野と大きく差を付けられた感のある隼磨と共に奮闘を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月03日

酒井友之の移籍

 レッズのMF酒井友之がヴィッセルに移籍した。
 
 この選手は、高校時代にジェフでトップチームにデビュー、豊富な活動量、正確な技術、落ち着いた展開、バランスの取れたMFとして将来を嘱望された。
 ナイジェリアワールドユースの予選のアジアユース大会。当時の清雲監督は、中盤を稲本、酒井、小野、本山で固定。中田浩二、遠藤、小笠原は控えに回り、ほとんど出場機会はなかった。この時点で酒井の評価は彼らよりも高かったのだ。ナイジェリア本大会で清雲氏に代わってこのユースチームの采配を任されたトルシェ氏は、氏独特のフラット3の3−5−2システムに優秀なタレントを次々に当てはめる。中田浩二は左DF、遠藤は1ボランチ、小野はいわゆるゲームメーカ、本山は左MF、小笠原は攻撃MF、そして酒井は右サイドMFに回った(この大会稲本は不調で控え)。酒井のサイドでの起用は、最初驚かされたが、献身的な上下動、正確な右足でのクロス、ドリブルでの1対1の仕掛けもそれなりにこなし、時には中に絞って遠藤の守備をフォロー、実に見事なサイドMF振り。特に準々決勝メキシコ戦の開始早々には、逆サイドの本山に見事なクロスをピタリと合わせたのはいいプレイだった。
 余談、以前から何度か書いているが、私は86−87年シーズンアジアチャンピオンズカップを制した清雲監督の手腕を極めて高く評価しており、80年代日本最高の監督だと思っている、が、かくも結果が出た後となっては、アジアユースでの清雲氏の采配はやはり拙かったと言うしかないだろう。

 ナイジェリアユースの選手達は、そのままシドニー五輪に向けたチームに組み込まれた。トルシェ氏は、当初復調した稲本と遠藤をドイスボランチに、さらに右MFには明神を起用し、酒井はベンチを暖める事になった。
 順調に予選を勝ち進んだ日本は、最終予選の国立カザフ戦1試合を残して引き分ければシドニー本大会出場権を得る状態になっていた。中田と中村を軸に序盤から押し気味に進めた日本だが、前半半ばの敵FK時に宮本が敵のフェイクに引っ掛かりオフサイドトラップを賭け損ねて先制を許した。その後、宮本と遠藤がパニック状態に陥り、日本はピンチの連続となる。トルシェ氏はこの苦境時、前半から遠藤に代えて酒井を投入、酒井を右サイドに明神をボランチに移す。これでチームがすっかり落ち着いた。そして酒井は、時間差をおいて後半アタマから左サイドに起用された本山と共に、両翼から執拗に突破を狙う。かくして疲労したカザフ守備陣は終盤ガタガタに崩れ日本は3−1で快勝する。以降酒井はシドニー五輪代表のレギュラを獲得。一方遠藤はこの試合後は控えに甘んじ、シドニーの最終メンバにも入れない事になった。
 シドニー本大会でも酒井は順調に活躍。右サイドMFとしてほぼフル出場した。唯一、1次リーグ2試合目のスロバキア戦のみは、スタメンをオーバエージの三浦淳に譲った。しかし、この試合の後半0−0のところで、酒井は柳沢に代わって起用された(三浦淳は左サイドに、左サイドの中村がトップ下に、トップ下の中田が高原と2トップを組む)。前半からペースを掴んでいた日本は、この交代以降さらに圧力を強め、中田、稲本の連続得点でリード、終盤1点差にされたが危なげなく逃げ切った。この試合は、酒井の重要性を如実に示したものだった。
 準々決勝の合衆国戦、酒井はますます好調。幾度か右サイドを巧く抜け出し好機も演出。この試合あたりから、右サイドを縦に抜け出す型をつかみかけたように思えた。試合も日本は2−1でリードしロスタイムを迎える。合衆国FWの強引なドリブル突破を酒井は見事なスライディングタックルで止めた。「よしこれで準決勝進出」と皆が思った瞬間、主審がPKを宣した。まあ日本人の私から見ればミスジャッジとしか言いようの無い判定(つまり合衆国から見れば当然のPKと言う事になるのだろうが)、酒井は非常に不運だった。その後のPK戦、中田のPK失敗で日本は敗れた。

 このシドニー五輪以降、トルシェ氏は多くの選手をA代表に引き上げる。しかし、酒井には声はかからなかった(厳密に言うと、この年の12月に行われた国立韓国戦で酒井はA代表に召集され、後半明神に代わって起用されている、この韓国戦は現時点まで酒井が出場した唯一のA代表試合になる、トルシェ氏は酒井には期待していたのだろう)。
 その後、酒井はジェフからグランパスに移籍。グランパスでもそれなりの活躍を見せたが、代表入りするほどの活躍は見せられず。さらにレッズに移籍した以降も、悪くないプレイ振りなのだが、長谷部、啓太と言ったより若い有力なMFが台頭するにつれ、出場機会は激減。起用されれば、よいプレイを見せるだけに、何かもったいない気がしていのだが。

 結局、酒井と言う選手は、あのシドニー五輪準々決勝ロスタイムの不可解な判定で、運命が狂ってしまったと言う事なのだろうか。

 その酒井がヴィッセルに移籍する。よい移籍だと思う。もっとも、ヴィッセルにはボッティと言う非常によいボランチがおり、さらに金泰ヨン、田中のような優秀な若手、さらに純マーカスが加入している。酒井が確実に定位置を確保できる保証はない。そう言った刺激も酒井にとっては、そう悪いものではあるまい。是非定位置を確保し、あのバランスの取れたプレイを愉しみたいところだ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

もっと早く仕掛てはダメですか?

 マハダビキアと李天秀の死闘を眺めながらこの文章を書いている。トーナメント戦で何が愉しいかと言うと、当方は次ラウンドに出場を決めている状態で、ライバル同士が削り合っている試合を眺める事だ。

 とお気楽な気持ちで、昨日からは一転した冷静モードに切替えて豪州戦を振り返ってみたい。

 豪州は前半の半ばこそ、豊富な運動量で日本を押し込んだ。特にエマートンとカーニーの後方からゴリ押しで上がってくるドリブルへの対応に苦戦し、そこから押し込まれてしまった。しかし、あの暑さと日本の巧みな中盤のプレスにより、彼らの前線進出の頻度が少なくなって、再び日本ペースとなった。
 それ以外の時間帯はほぼ日本ペースで試合は推移。いずれの時間帯でも、日本はビドゥカ、アロイージへのクサビについては中澤、阿部の見事な位置取りと啓太、憲剛の忠実なサンドイッチで完封し、豪州に攻撃のきっかけさえ掴ませなかった
 攻撃については、遠藤が後方に引く事でできたスペースを憲剛が前進する事で使う策が有効。特に中村が巧みな仕掛けで憲剛を前向きに進出させる事で複数回の好機を掴んだ。丁寧にボールをつなぎながら両翼から崩しを狙う攻撃と、上記の憲剛の前進による中央突破、試合ごとにチームの仕掛けが高度化してくるのは、さすが爺さん。
 ただし、最終ラインの強さは、ここまでのチームの比ではなかった。タイ戦で露呈した素早い動きに対する弱さは、5人を守備ラインに並べ稠密にスペースを調整する事で対応。中盤に人手をかけるため、どうしてもゴール前の人数が足りない日本の攻撃をよく押えた。それでも、日本のボール回しに動かされるため、後半10分を過ぎたあたりから各選手に消耗の色が濃くなってきた。
 ここで豪州監督アーノルド氏はビドゥカを外し、キューエルを起用。「このままでは勝てない、流れを変えよう」と言う意図が痛いほどわかる大胆な采配(どうでもいいけど、さすがにアーノルド氏と駒野は面識はないのだろうな)。
 このあたりで私は寿人の投入を期待した。ビドゥカが外れた事でセットプレイでの不安はやや軽減した。巻の代わりに寿人を投入すれば、瞬間の速さは疲労した豪州の守備ラインを悩ませるだろう。これだけ攻勢を取れるのだから、一気に勝負をつけに行くべきではないかと思ったのだ。
 などと思っていたら、痛恨の失点。さすがに2試合続けてニアに蹴られたCKから失点するとなると、考え込んでしまう。ただ、昨日も書いた通り、失点直後の川口の絶叫を見て(う〜ん、絶叫って見るものだっけ)、負ける気はしなかったのだけど。
 高原の同点弾は見事だったが、失点−同点の間のブレシアーノからケーヒルへの交代は結構微妙だった。ケーヒルが準備しているのは失点前から、TVで報道されたいた。問題は豪州は先制したにも関わらず、この交代をすべきだったのか。ケーヒルの投入準備は、あくまでも劣勢の局面打開だったはず。せっかくリードを奪ったのだから、まずは落ち着いて守備を固めるべきだったのではないか。いや、別に不満はないですけれど。
 さらに試合をややこしくしたのは、同点劇直後のグレッラの退場。これも文句を言う筋合ではないけれど。ここでアーノルド氏は開き直った。アロイージオに代えて守備のできるカールを投入。残り約40分間を守り抜こうと決心したのだろう。こうなると、それをこじ開けるのは結構つらい。ある意味では、この退場が無い方が日本は攻めやすかったかもしれない、と終わってみれば余裕のコメント。

 ここからは日本が執拗に豪州守備ラインを崩そうとする努力の時間帯となった。
 「いよいよ寿人を入れましょうよ」と短腹の私は思うのだが、爺さんはじっと動かない。丁寧に丁寧に豪州を締め上げようとする魂胆か。それにしても、爺さんの采配は常に慎重極まりないものだった。まず負傷した加地に代えて今野を投入。さらに延長前半も押し詰まったところでようやく寿人の投入。疲労した豪州守備陣は寿人の短いが速い動き出しに相当苦労する。延長後半に掴む幾多の好機。でも崩し切れない。そして最後の最後に矢野を投入しパワープレイに。これはこれで効果的で、豪州は右往左往。終了直前の中村のシュートは決まったと思ったのだが。
 交代の早い遅いは多くの場合結果論であり、試合終了後も酒の肴となる典型的な話題である。上記したように、私は少なくとも寿人投入はもっと早く行なわれるべきだったと思う。(私から見れば)爺さんの交代は遅すぎたように思われるが、一方で爺さんの切ったカードは確実に有効に機能したのもまた事実。もっと早く切ればより長時間有効だったのか、待ったからこそ短い時間で利いたのか。

 ただ1つだけ間違いない事がある。寿人があのドリブルシュートを浮かさず決めていれば、PK戦前に勝ち切る事ができたのだ。寿人よ、もっと鍛錬を。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(23) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月19日

J1昇格のために何が足りないのか

 アジアカップの録画消化に忙しい中、ベガルタが敵地でアビスパを下した映像を、ようやく見る事ができた。
 第3クールに入って、ベガルタはいきなり初戦のヴェルディ戦にホームで1−4で完敗した。そのためこのアビスパ戦は、勝ち点勘定から言っても、J1昇格争いライバルとの直接対決と言う意味でも、最悪でも引き分けに持ち込みたい試合だった。それが台風で1日順延すると言う準備が難しい敵地の試合で、勝ち点3を獲得できたのだから非常に嬉しい事態となった。

 勝ち方がまたよかった。敵地にも関わらずいつもの攻撃的サッカーを展開、幾度か好機を掴みながら攻め続ける。守備については、とかく問題になりがちのサイドバックの攻撃参加後方へのカバーをジョニウソンと富田がよくこなす事ですっかり安定。アビスパの逆襲に対して危ない場面がなかった訳ではないが(幸運も結構あったけどね)何とかゼロに押える。そして、お互いが疲労してくる終盤に、この日警告累積で出場停止の菅井に代わって起用された右サイドバック中田洋が、巧みな攻め上がりから上げたクロスをロペスが決めた。終盤アビスパの無理攻めに危ない場面もあったが、何とか試合をクローズした。
 2試合前のセレッソ戦の勝利もこの日のアビスパ戦に近いものだった事を思い出した。ほぼ互角の戦闘能力のJ1昇格争いのライバルに対し、常に攻撃的に戦い、終盤何とか1点を取り、1−0で勝ち切る。このような勝ち方ができるのは、チーム力が安定してきた証左と言えるだろう。
 富田が中盤に加わった事で、千葉がCBに下がり木谷と共に安定したプレイを見せているのがこの試合も目立った。上記したように、サイドバックが攻撃参加した後方のカバーも決まってきたし、守備もあるレベルまでは計算できる。チーム全体で連動した攻撃もシーズン半ばでいよいよ意思統一ができてきており、チーム全体のバランスはいよいよ熟成してきた。

 けれども、J1昇格には課題も大きい。今期、どうしても勝てないがコンサドーレ(1分け2敗)、ヴェルディ(1分け1敗)、サンガ(2敗)(実際、それ以外の今期の敗戦は9人で戦う羽目になった人災のヴォルティス戦(ホーム)と、その3日後疲労困憊出場停止負傷離脱多数のサガン戦(アウェイ)の2連戦だけなのだ)。言い換えれば、この3チームとの残り5試合をいかに戦うかが、昇格争いにおいては重要になってくる。
 何故、この3チームに勝てないのだろうか。答えは簡単、敵の長所との相性の悪さにつきるのだ。
 まずコンサドーレ。ここはやはり守備が堅い。そして、現状のベガルタの攻撃力(連携、個人能力共に)では破りきれない。そして、頻度は少ないが、巧みな逆襲やセットプレイにやられてしまっている。このあたりのいやらしい鍛えられ方は、さすが三浦俊也氏である。
 次にヴェルディ。これはもう個人能力の差。ベガルタの組織守備は敵FWより1枚人数を増やして対応するのが原則だが、悔しいがそれではフッキらの個人技を前面に出した攻撃は止められない事が出てくる。さらに先に点を取られると、ベガルタの選手たちは真面目に逆転を狙い前掛りになるから、自陣前の数的不利(正確に言うと「数的優位なのだがフッキを止め切れない状況」)を作られる頻度が増えてしまう。
 さらにサンガ。このチームは真っ当にプレスの掛け合いになった場合、ベガルタよりもしっかりとボール回しができる唯一のチーム。そこに単に実力負けしていると言う事だ。もちろん、敵に巧く回されたとしても我慢を重ねて、敵の隙をつければよいのだが、今のベガルタのレベルはそこまで行っていない。

 これらの改善がJ1昇格のポイントになる。
 コンサドーレやヴェルディを上回るためには、ある程度「個の力」が重要になっていくる。これは2つの側面がある。萬代、中島、中原、関口、富田、広大のような20代前半の選手の成長。もう1つは補強と言う事になる。どうやら以前アルビレックスに所属していたファビーニョを獲得すると言う噂だが、対コンサドーレで述べた「攻撃力増強」を短期的に狙おうと言うものだろう。
 もっとも個人的には補強に関しては、強いセンタバックではないかと思っていた。しかし、今外国人の守備者を獲得しても連携面の問題もあるので、現実的ではないとフロントは判断したのかもしれない。
 そして、補強より本質的に重要なのは、サンガのところで述べた「つなぎ合いの我慢」が、今シーズン終盤までにどこまで熟成できるかだろう。この重要性は、サンガに勝つと言う事に止まらない。来シーズンはサンガ以上にボールを巧く回してくるチームたちと戦う必要があるのだから。
posted by 武藤文雄 at 20:50| Comment(3) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

アジアカップここまでの雑感

 アジアカップ今大会は、4カ国共催と言う凄まじい方式で行なわれている。そして、明日決戦を戦うベトナムを初め、各地元国の奮闘は見事なものだ。
 常識的に考えて日本がベトナムに勝ち点を奪われる状況は考えづらい。しかし、UAEにだって意地があるだろうから、日本に負けてもベトナムは十分に勝ち残れる可能性はある。もちろん、当方だって油断禁物だけれども。
 タイはオマーンを下し、イラクと見事な引き分け。オマーンにせよ、イラクにせよ、豪州と互角以上の攻防を見せているのだから、戦闘能力は相当充実していると言って間違いないから、タイのここまでの戦い振りは多いに評価されるべきだろう。タイは豪州に引き分ければ準々決勝進出だ。
 さらにインドネシア。バーレーンを破り、サウジとも後一歩と言う勝負を見せた。ところで、今さっき、このグループは、韓国がバーレーンに逆転負けし、自力での準々決勝進出の可能性が絶たれると言う大事件が起こったところ。こう考えると、インドネシアは最終戦の韓国に勝利するのは不可能ではないだろう。
 ところが、一国だけ蚊帳の外と言う風情がマレーシア。中国にもウズベキスタンにも5点奪われての完敗。それも、前半比較的早い時間帯に失点し、チームが混乱しているうちに追加点を許し、そのままサンドバック状態で失点を重ねる完敗。70年代、いや80年代半ばまで、日本は中々マレーシアに勝つ事はできなかった。いや日本だけではない。ミュンヘン五輪予選、モスクワ五輪予選で、日本のみならず、当時からアジア屈指の強豪だった韓国もマレーシアの後塵を拝したのだ。そのマレーシアがここまで落ち込んでいるのを見るのは、物凄く複雑な思いになる。

 さて、ライバルたち。
 日本としては、直接対決でもっともイヤな印象のある韓国は上記の通り自力上位進出の目はなくなった。韓国にとってつらいのは、サウジ−バーレーンでサウジは無理に勝つ必要がない事(サウジは決勝狙いだろうが、1位抜けだと準々決勝はジャカルタに居座れるが準決勝はハノイで苦手の日本と戦う必要がある、それよりは2位抜けでも準々決勝、準決勝とクアラルンプルで連戦し日本を回避するのもそう悪くはない)。もし、これが引き分けてしまえば、韓国はインドネシアに何点差で勝っても、当該成績でバーレーンを追い抜けない。
 豪州もイラクやオマーンの逆襲速攻に対する守備の甘さには愕然。ただ豪州は韓国ほど悲惨な状況にはない。タイに勝ちさえすれば、オマーンがイラクに勝たない限りは、タイより上位に出られる。しかし、ここまでのタイを見た限りは相当厄介な相手。単純なパワープレイを90分間継続するのが1つの手段だろうが、逆に単調な攻撃をしているうちに攻め疲れ、逆襲への備えの甘さを突かれる可能性も高い。むしろ、昨年のイタリア戦のようにビルドアップしてタイの疲労を誘いたいところだが、このように追い込まれた試合はズドーンに走って苦戦してしまうものだ。
 さすがにサウジ、イランは堅実に勝ち点を積み上げ、ほぼ準々決勝進出を決めつつある。また、豪州を仕留めた試合でのイラクの攻撃力は相当警戒を要する。やはり、この国の潜在能力はアジア最高レベルだろう。それにしても2連勝国がないのだから面白い大会だ(あそこでカタールに同点にされていなければ、2連勝だったのだろうが、逆に考えれば序盤からあまり目立つのはいかがとも思うので、これでよしとしておきましょう)。

 明日のベトナム戦。上記した通り常識的には勝てると思う。遅攻から確実に得点を期待できるのは、我々とイラク、イランくらい。さらに中澤、阿部、啓太の中央の守備は相当強い。カタールやUAEに1失点ずつしているが、敵に与えた好機は、ほんの数えるほどなのだ。中東勢独特の鋭い速攻を、日本守備陣はほとんど芽のうちに刈り取ってしまっているのさから。
 おそらくベトナムは序盤に攻勢をかけてきて先制を狙ってくるだろう。ここをしのいだとして、逆に守備を固め日本の疲労を待ち、最悪でも1点差で試合を進め、終盤に仕掛けてくるだろう。幸い準々決勝までは中4日以上日が空くのだから、少々体力的には無理をしてよいはず。
 そろそろアジアとの戦いにも慣れたであろう憲剛に、大爆発を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:55| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月14日

能力で圧倒、不思議な失点、凄い審判団

 試合そのものは順当過ぎる内容と結果。

 試合前に強がりを語っていたメツ氏も、現実がわかっていたのだろう。立上りに思い切り仕掛けて先制点を狙ってきた。先制する事で、初戦終盤に星を落とした日本の焦りを誘おうとしたのだろう。終わってみれば、UAEが勝利を収めるためには、先制逃げ切りは唯一の手段だったように思える。
 しかし、立上り約15分のUAEの無理攻めをしのいだ日本が、セットプレイから先制して勝負は事実上ついてしまった。ショートコーナーのトリックプレイから中村が左をえぐったプレイだったが、UAEも警戒はしていたのだろうが、少々集中した守備でも、あの中村と高原の動きは捕まえられないと言う事か(さらにその外にフリーで巻も入り込んでいたな)。先制してすっかり落ち着いた日本のボール回しはUAEを完全に圧倒。2点目はきれいだった。、憲剛の展開を受けた加地が、外に走りこんだ啓太をおとりに使って、好クロスを上げる。高原が正確なボールコントロールから完璧なシュート。3点目のPKはやや微妙な判定ではあったが、遠藤がフリーでボールを受けたところで勝負ありと言う事か。
 後半も開始早々に敵の退場があり、日本は左右を広く使った展開でペースを掴む。ところが、ほとんど危ない場面なく迎えた後半半ばに日本は突然の失点を食らう。この失点については後述したい。
 その後、高原、中村の両エースに代えて羽生、水野を投入するが、ちょっと選手同士の意図が揃わず、バタバタしてしまった。しかし、遠藤が全軍をスローテンポに落とし、3−1のまま試合をクローズした。
 一言で語れば、戦闘能力で単純に圧倒した試合だった。

 以下雑感を。

 3−1で勝った事で総得点数により、次の試合地元ベトナムと引き分けでもベトナムより上位に立てる。現実的に日本がベトナムと引き分ける状況はあまり想像できないが、同時刻に行なわれるカタール−UAEの進捗によっては、「無理をしない」と言う選択肢も取る事ができると言うもの。皆が、暑さと湿気でほとんど動けなくなっていた事を考えれば、終盤無理をしない判断をした遠藤はさすがだ。この日の遠藤は、いよいよ中村、憲剛との連携も円滑化し、見事な活躍。終盤アップになった時の表情は、暑さで本当に苦しそうだったが、いよいよ中心選手としての風格も漂ってきた。
 唯一交代出場した水野はアピールをしたがっていたが、自分のクロスを叩き込むべき巻があそこまで消耗していたのではどうしようもなかった。オシム氏としては、終盤消耗した巻を代える予定だったのかもしれないが、啓太の負傷で最後まで引っ張る事になったのかもしれない。それにしても、あれだけ高温多湿で、準備期間も少なく、ピークを大会終盤に持っていかなければならないのだから、厳しい大会だ。
 エースの高原は凄いね。2点目のトラップの見事さには、本当に恐れ入った。カズ以来、釜本以来と言う表現が聞こえてきた。高原については、大会後半にじっくりと書く事にしたい。

 失点場面。
 起点は中村俊輔、チーム全体のボール回しから右サイド全くフリーで抜け出した中村、中に切れ込んでシュートを打つ事も、深くをえぐる事も可能だった。そして、中村の選択は、大きく逆に展開しさらにUAE守備陣を揺さぶる事だった。これが「過ぎたるは猶及ばざるが如し」だった。
 僅かにコースが狂ったボールを逆サイドのUAE選手がかろうじてヘディングで触る。そして後半から起用されていたA・モハメドがUAE陣を向いてボールをキープしようとしたところで、憲剛が厳しいプレッシャをかける。TV映像で見ている分には「よく守備をしているよいプレイ」に見えた。しかも場所もUAE陣の結構深いところだった。ところが、A・モハメドは鋭いターンで憲剛を一気に抜き去ると突然加速。「おー、さすが後半から出てきた元気な選手だ」とノンビリ見ていたのだが、日本は誰も彼を追いかけない。「ん?」と見続けていると、3対3になっている。日本の守備は阿部、中澤、啓太の3人が敵の2FWを見ていたのだから、誰も戻らなきゃそりゃ3対3になるよな。かくして失点。実に珍しい失点だった。
 中村が逆サイドに展開した時に、逆サイドになった加地は絞っていなければいけなかったのだろうが、あれだけ暑くて中盤を制している状況で、そこまで要求すべきなのか。憲剛も確かに軽率だった。またも国際経験の浅さと言う事か(今回の経験も幸いにして大怪我にはならなかったし、アジアカップ、アジアチャンピオンズリーグ両制覇に向けて、着実に国際経験を積んでいると言っておこう)。やはり、中村が凝り過ぎたのがいけなかったと言う事か。う〜ん。繰り返すが、実に珍しい失点だった。

 で、審判。
 まず主審。相も変らぬアジアモードの主審。Jリーグでは杓子定規な笛を吹きカードを乱れ飛ばす主審に悩むのだが、このような主審を見ると改めてJリーグの主審がありがたく思えてくるから怖い。不公平だとか、ラフなタックルを取らないとかの問題ではない。むしろ、この日の主審は両軍に対して公平な笛だったし、危険なプレイには厳しく対処しようとしていた。しかし前半、駒野が削られた場面が典型だが、タックルの足がボールに行っているのか、足に行っているのかを見極める技術がないのだ。それでも、日本選手が幾多のラフプレイで削られた判定については「審判能力の低さ」でまだ我慢できる。しかし、PKのボールを好みの位置に置き直した中村へのイエローカードには、怒りや笑いを通り越して脱力した。少なくともこの警告に対しては日本協会は抗議すべきなのではないか。でも、あのPKを提供してくれたしなあ。しかし、マタルは3回くらいレッドカードを食らうプレイをしていたし。
 そして、凄かったのは第1副審。複数回に渡るオフサイドに対する見間違えや、直前での危険なタックルを見落としは許そう。しかし、縦に走るのに専心し、中央を見ないのには、はっきり言って感動した。我々4級審判員がいつも悩む「複数の角度をどう見るか」と言うレベルの副審を、アジアカップで見る事ができるとは。

 とは言え、戦闘能力で圧倒した第2戦。暑かろうが、敵が汚かろうが、審判がおかしかろうが、何があろうが勝つのだ。我々が一番強いのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:45| Comment(13) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

小笠原の復帰

 小笠原のアントラーズ復帰が決まったと言う。何とも微妙な出来事ではある。

 元々、同世代のMFが次々と欧州に旅立つ中、小笠原はずっと国内でプレイを継続。常にJリーグ屈指のプレイヤとして君臨してきた。代表でも、01年ワールドカップ予選では、埼玉北朝鮮戦で見事な直接FKを決めたり、マナマバーレーン戦で鮮やかな個人技の後ミドルシュートで決勝点を決めるなどの実績を上げる。そうこうしているうちに、ジーコ氏の信頼も獲得。直後のコンフェデブラジル戦での活躍もあり、以降はジーコジャパンが4DFを組み際には、中村と並んで(小野を追い落とし)攻撃的MFのレギュラとして活躍した。昨年のワールドカップでも、それなりに活躍。特にブラジル戦の前半、日本が優位に試合を進めた要因の1つは、小笠原が(少々ラフな守備ではあったが)ロナウジーニョをよく止めていた事があった。まあ、後半はどうしようもなくなったけれど。
 その小笠原がイタリアに旅立った。序盤こそ鮮やかな初得点決めたり、結構な活躍をしてくれたが、どうやらリーグ終盤には、監督の構想外になったらしく、出場機会すらほとんど得られずに、帰国となった。日本のトップ選手が欧州で活躍できるかどうか(あるいは「順応できるかどうか」と言う表現が適切なのかもしれないが)には、サッカー選手としての能力以外に、語学力、チームとの相性、生活への対応など、様々な要素があると思うが、小笠原には「何か」が不足していて、思うような活躍ができなかったと言う事なのだろう。
 余談ながら、日本協会の技術委員会にとっては、このような「日本選手の欧州での順応」は重要な研究課題ではないかと思う。

 アントラーズにとっては「補強」と言う意味では適切だろうが、メンバ構成はどうなるのかは興味深い。言うまでもなく、小笠原去りし後に野沢が大きな成長を遂げ、Jリーグを代表する攻撃的MFとして活躍している。野沢の横には、長らく小笠原とコンビを組んでいた本山が健在。ここにどう小笠原をはめ込む(割り込ませる)かは、オリヴェイラ監督の腕の見せ所だろう。もっとも、上位を争うガンバやレッズは、代表選手でさえ控えに回せる選手層の厚さを誇っているので、アントラーズが豪華絢爛化する事自体はおかしな事ではないのだが。
 
 欧州のクラブに短期的に所属し、あまり出場機会には恵まれなかったものの、その経験を活かした選手としては、何と言っても名波が思い起こされる。ヴェネチアからジュビロに復帰直後の名波の2000年アジアカップの輝きといったら。
 小笠原にもそのような経験値を加えたプレイを期待したいところだ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月02日

ベガルタ第2クール終了

 ベガルタについて書きたい、書きたいと思っているうちに、諸事情あってズルズルと日が経ってしまった。そうこうしているうちに、ベガルタは第2クールを終えた。総勝ち点は44、得失点差+16。ベガルタだけが1節早く第2クールを終えたので、第2クール最終順位は曖昧なところだが、まあ悪くない位置取りだろう。もっとも昨シーズンも今頃までは、順調な位置にいたのだけれど。

 さて、ホームで終了間際ロペスのPKで勝利したセレッソ戦はとてもよい試合だった。
 まず感心したのはセレッソの充実振り。前田と江添のセンタバックはさすがJ1でも個人能力が通用していたコンビ、後方で落ち着いたセービングを見せる吉田(J1でベスト11を取った事もある男だな)、安定した宮元、アレーのドイスボランチ。中央は実に強い。さらに柳沢、ゼ・カルロスの強力な攻撃参加。濱田のゲームメークでベガルタ陣を襲う古橋と金信泳の2トップ。期待の苔口は今一歩の出来だったが、非常にバランスの取れたチームになっていた。この状態でも、柿谷、藤本ら、負傷者の多さに悩んでいると言うし、若森島と香川をユース代表に供出しているのだから、このクラブの層の厚さは見事なものだ。正直なところ、J1昇格争いの競合としては、セレッソがシーズン序盤の強化に失敗し、現在勝ち点30に止まっているのは非常に幸運だと考えるべきだろう。
 そのセレッソに対し、終始ボールをキープ、常に攻撃的な姿勢で戦い続け、最後に攻めきったのだから素晴らしかった。それも、終盤の85分に、敵のミスを引っ掛けた中原のプレイ以降丁寧に攻め、最後は遅攻から、ロペスのサイドチェンジを受けた関口がドリブル突破を狙いPKを奪取したのだから、もう最高。我慢して攻め続け最後に敵を崩す事は、なかなか偶然ではできない。ベガルタのチームとしての成長振りを示すものと言ってもよいだろう。
 今後の課題は、中原を起用した際にどの程度までえぐる事に拘泥すべきか不正確でもよいからアーリークロスを上げるかのチームとしてのコンセンサスを作る事か。そこが決まれば、現行メンバにおいては戦術的な修正点はもうあまりないように思う。そうなると残るは20代前半の若者達が、1試合1試合の経験と反省を活かして反復練習を繰り返し、「個」の能力をどこまで上げる事ができるかどうかがポイントになってくる。
 守備については、金信泳と古橋に手を焼きながらも丁寧に守り切った。まだ中盤の受け渡しには改善の余地があるし、田ノ上が攻撃参加以降も前に居続ける事の是非(と言うよりは得失と言うのが正しいか)の検討が必要だと思う。しかし、木谷とジェニウソンを軸にした守備の連動もどんどん向上してきている。第2クールに入り、ようやく1−0での勝利を刻む事ができるようになったのも、その証左だろう。

 チーム構成としては、ボランチに富田が出てきたのが何とも嬉しい。この小柄な3年目の若者は、加入初年度の開幕からサイドバックとしてレギュラに抜擢されて話題になった。しかし、サイドバックとしては守備に課題があり、散々な出来の試合が多く、当時の抜擢は失敗としか言いようがない出来だった。しかし、そのシーズンの終盤の天皇杯マリノス戦において(リーグ戦真っ盛りのために、J2クラブのベガルタがJ1のトップクラブのマリノスに対し、2軍で臨むと言う奇妙な戦いとなった)本来の中盤に起用されて、よいプレイを見せたのは印象的だった。昨期も時々起用されていたが、ここに来てレギュラを確保しつつある。技巧的で、最初のトラップが正確なため、つなぎで常に前に向こうとするプレイが非常に効果的な選手、ジョニウソンとの組み合わせの整合も非常によい。これで運動量をもう少し増やしてくれれば、先日ユース代表が戦ったスコットランドの監督アーチー・ゲミル氏のような選手に成長してくれるのではないかと。

 J1昇格争いについての楽観は禁物だろう。コンサドーレとの勝ち点差は大きいし、ベガルタ以上に戦闘能力に優れていると思われるサンガもジリジリと勝ち点を上げてきた。アビスパもようやくチーム力が落ち着いてきたようだ。さらに毎シーズンリーグ中盤で落ちていくベルマーレが今期は戦闘能力通りの実力を継続して発揮しそうだ。モンテディオとサガンが粘ってくるのは毎期の事だし、何より上記したようにセレッソが復活の狼煙を上げ始めている。
 単純に楽観する気はないが、上記したようにチームは着実に上昇している。厳しい戦いの中、若い選手たちが着実に能力を向上させ、秋には歓喜を味わえる。そのイメージが具体化してきたこの頃である。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月20日

冴え渡る明神、復活した松田直樹

 朝の出勤電車でエルゴラッソを読んでいたら、「マリノス−ガンバ戦に松田が出場濃厚」との記事を発見。「これは見なければならない」と思い立ち、定時退社して三ツ沢に向かった。最寄のバス停についたのがキックオフ5分前、急ぎ足で入場する。三ツ沢のメインスタンドは、一箇所の入り口からスタンド下の廊下?を通ってスタンドへに上がれる階段に進む構造になっている。その廊下中央部の売店はビールを買う客で混雑しており、気ばかり焦る。その混雑をようやく突破すると、もうキックオフまで時間がない。ダッシュだ。すると、反対方向に進む集団の先頭の人とぶつかりそうになり、慌ててブレーキ。先頭の人と私は向かい合う形で静止した。
 かくして、190cmを越える長身のボスニア・ヘルツェゴビナ人と、160cmの中年太りの日本人が、僅か50cmの距離で、お互いにらみ合いながら道を譲り合うと言う奇妙な状況が生まれた。一瞬、握手をしようかとも思ったが、中年男と握手しても、先方は何もうれしくないだろうから、丁重な会釈の後に右手をやや上げて道を譲った。先方は僅かに左手を上げて前進。後はもうお互い、試合を観たい思いでひたすら前進とあいなった。
 と言う事で、キックオフには僅かに間に合わなかった。もちろん後悔はない。

 前半はガンバが圧倒する展開となった。
 マリノスは坂田を中心とした前線でのチェイシングを守備の基盤としているようだ。このチェイシングはガンバが最終ラインでボールを回す時は非常に有効。しかし、明神と橋本は中盤でボールを絡め取るや否や素早く展開、加地と安田の両サイドバックは動き出しが早い攻撃参加で、サイドで素早く2対1を作り、次々と好機を演出。さらに最前線では、播戸がバレーをおとりに使いながら再三変化のある動きで裏に抜け出す動きを見せ、マリノス守備網を悩ませる。言い換えれば、マリノスのチェイシングは、明神、橋本の展開には効力を発揮しない。何か別の手を考えなければ。
 結果的に押し込まれたマリノスは、前線に正確なボールを出せずに明神に刈り取られる悪循環が継続。ガンバの猛攻を許した。中澤とこの日当たっていたGK榎本を軸に、マリノスはかろうじて0−0で前半を終了した。前半を見る限りでは、このまま後半に突入すれば、ガンバが何点取るかわからないと言う雰囲気すら感じられた。
 一方のマリノスの攻撃だが、明神、橋本のところで攻めの速さが1度落ちてしまうので、隼磨なり小宮山なりが押し上げても数的優位が作れず、苦しい体勢からのクロスを上げるのを余儀なくされ、中々有効な攻撃にならなかった。
 ちなみに安田の着実な成長は嬉しい。攻撃に関しては評価が定まった感がある若者だが、この日気に入ったのは守備。逆説的だが、隼磨へのタックルで警告を食らった場面に感心した。押されっぱなしのマリノスが前半で唯一ペースを掴んでいた時間帯、よい体勢でこぼれ球を拾った隼磨が突破を深いタックルで止めようとした。僅かに対応が送れファウルとなったが、寄せからタックルに行くまでの動きの素早さと思い切りがよかった。明らかに正当なタックルを狙いながらもファウルになってしまったもの。確かに激しいタックルだったが、ファウルは当然としてあれでイエローはなかろうと思うのだが。

 後半アタマから両軍が動いた。ガンバは安田、播戸に代えてマグノ・アウベスと家長を投入。あれだけ攻勢をとりながら点を取りきれなかったので、西野氏にしては珍しく早めに動いたのだろう。さらに、ローテーション的な起用を行なう事で、連戦の疲労を回避する狙いがあったのかもしれない。押し気味の試合に、強力なドリブルを武器にする2人を投入し、一挙にマリノスを殲滅する狙いは納得できるものだった。一方、マリノスは山瀬弟に代えてマイク・ハーフナー。トップの吉田孝行が2列目に下がった。これは後方からのフィードの目標を入れたと言う事だろうが、「このままではやられるからとにかく何か手を打った」と言う印象もあった。
 ところが、これらの選手交代が全てマリノスに有利にはたらくのだから面白い。まずマリノスの選手はマイクが入った事で、やや不正確ながら長いボールを入れて、押し上げようとする。不正確でも明神のラインを超えてボールが入れば、とりあえず押し込む形にはなり、そこを坂田のチェイシングが襲う。そのため遠藤が下がる事になり、二川との距離が開く。結果的にガンバの攻撃頻度は下がり、その分マリノスの時間帯が増える。さらに明神のところで止まらないと、必ずしもガンバのセンタバック、シジクレイと山口は磐石ではない。後半開始早々、センタバック2人が同サイドに寄ったところで、吉田とマイクがそれぞれフリーでペナルティエリアに進出しシュートする好機を掴んだ。さらにガンバのミスパスを拾った河合?からのパスを受けた吉田が鮮やかな巧技から、シジクレイと山口が抜いた場面は惜しかった。
 これだけマリノスが前掛りになる以上は、ガンバの逆襲にさらされるのは当然の事。ある意味では、その逆襲を効果的にするために、西野氏の交代劇があったのかも。ところが、このガンバの逆襲速攻が予想外の展開にはまり込む。まず家長が全くの不調。ドリブルの名手が、思うように足にボールが付いていなかった。試合前に私とにらみ合ったお方の心証は相当悪くなったのではないか。さらに西野氏の誤算は、前半播戸に散々悩まされていた松田が後半から突然に冴え渡った事だろう。
 前半の松田は褒められた出来ではなかった。播戸の短い距離をスピードの変化をつけてボールを受けるランニングに再三逆を取られ苦闘していた。ところが、後半開始早々強引に縦を突破しようとしたマグノ・アウベスを止めた以降は、完全に乗ってきた。と言うか、あの一発で持ち味の思い切りを取り戻したというべきなのかもしれない。
 ガンバは再三逆襲から3対3、いや4対3の場面を作るが、それらを松田と中澤がことごとくはね返した。

 試合終盤、上野と山瀬がすっかり疲労してしまい、マリノスはガンバの猛攻を許す。それらをまた中澤と松田が全て止めてしまう。野次馬の私が見ていても興奮する攻防だったのだから、両軍のサポータ達はさぞ面白かった事だろう。
 かくして試合は0−0の引き分け。実に面白い試合だった。

 この日自由席は売り切れ。仕方がなく大枚4000円を投資した訳だが、存分に元を取る事ができた試合だった。相変わらず冴え渡る明神智和と、復活した松田直樹を堪能できたのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(7) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする