2010年04月30日

少年公式戦、8人制に移行

 明日ベガルタは、ユアテックでセレッソと対決。あの幸せな一日以来の対戦だ。積極的補強をした先方だが、チームの基盤は今のところ大きな変化はない。当方も上積みはあるのだし、ここ3連敗の失態をしっかり反省し、敵の「嫌がる事」をしっかり遂行する事で、勝ち点3は十分に可能なはず。楽観は許されないが、よい結果を期待したい。
 このような報道を見ると、「ベガルタはうまく行っている」と、改めて実感する。大丈夫だ。

 で、今日のお題は結構本質的なお話。
 日本協会が小学生世代の公式戦を、従来の11人制から8人制に移行する事を決定したと言う。これは、日本サッカー界にとっては「代表チームやJリーグがどうしたこうした」よりも大事かもしれない。
 総論としては賛成だが、各論をどうさばくかはこれから現場がいかに消化するかどうかと言う事になるな。

 以前述べた事があるが、少ない人数の試合は、少年指導をしている立場からすると「下手な子供でもかなりプレイに参加できる」と言う利点がある。実際、少人数の大会だと、得点までは行かずとも、アシストくらいは、多くの子が達成できる。
 普段、ほとんどボールに触れないA君が、うまくアシストでもしてくれればしめたもの。当方は「A!サンキュー!」と声を張り上げる(気分は大熊清だな)。普段はその子に厳しいチームメート達も、「皆で盛り上がれば愉しい」とはわかっているから、「A!ナイス!」と盛り上がる。そうなると、A君自身も胸を張って、ますますプレイに参加する。試合終了後、A君のアシストを受けて得点したエース君は、さすが日本人「今日はAのおかげで得点できた」みたいなクサい台詞を吐く。かくして、ポジティブフィードバックが成立する。そのような連鎖が続き、A君は地味だが、しっかりと自分のゾーンを守ったり、丁寧に味方にボールをつなげる選手になる。
 もちろん上記は理想論だが、そのようなきっかけで自信をつけ、取り組む姿勢が一層よくなり、堂々と中学校までサッカーをするようになった少年が、現実の世界にそれなりにいるのだ。少人数公式戦の増加を歓迎するものである。
 ただし、今後難しくなるのは、11人制と比較して「公式戦に出場機会が減る子供が増えるリスク」である。このあたりは、子供達を指導していて、非常に難しいところ。上記した「総論賛成だが、各論どうする」問題はここにある。「少年時は勝たなくてもよい」事は間違いないと確信しているが「勝とうとしない事は正解か」と言う問いに対する回答は中々難しい。シビアな試合となると、控えの子供は「僕は出なくてもいいから、とにかく勝ちたい」と言い出す事も多いのだ(これを日本人的と言うステレオタイプで議論すると、おかしくなる)。もっとも、この問題に対する解は、11人だろうが8人だろうが同じ事なのだが。

 また、日本協会の上記方針の意図は「普及よりもエリート育成」にあるような気もする。より質の高い選手を育てるためには、小学生時代は少人数のサッカーの方が(よりボールに触る機会が多く)適切と言う意見(特に、「西欧や南米では、小学生年代で11人制の試合は稀」と言う報告をしばしば聞く、事実かどうかはよくわからないが)は、それなりに正論だろう。
 そして、現実的に「サッカーをやる少年」の比率は、現在既に相当なレベルにある。もちろん、努力を怠るべきではないだろうが、量的な拡大は容易ではないところに来ているのだ。今後必要なのは、質的な向上である事は間違いない。
 もちろん、限界を極める事とは縁が遠いが、サッカーを愉しむ人の量的向上は、それはそれでものすごく重要。そのためには、上記した「サンキュー」は、とてもとても大事なのだ。さらには、これらの質量両面での向上で、かなり重要なポイントは女子人口の増大となるが、これはこれで別な方策が必要だろう。

 そうこう考えた時に、私が述べた底辺拡大と、協会が意図する質的向上において、「8人制への転換」は適切な策なように思える。もちろん、上記の「公式戦に出場機会が減る子供が増えるリスク」など、別問題へのウォッチは必要なのは言うまでもないが。
 まずは、この日本協会の決定に敬意を表し、現場でうまく運用する事が肝要と見る。まずはやってみる事だな。
posted by 武藤文雄 at 23:28| Comment(9) | TrackBack(0) | 底辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月21日

4級審判員e-learning更新2010

 色々とコメント欄で語って下さる方がいらっしゃるのはありがたい限り。私と異なる意見でも、しっかりと私の文章を読んで下さって、書いていただいた反論は大変勉強になる。以前からお詫びしているが、個別のご意見にはとてもではないが返答する時間がないのはご容赦いただきたい(本来ブログのおもしろさは、双方向性を活かしたやりとりかもしれないが、そこまで私は余力がなく、申し訳ない限り)。
 また、今回もメールでいわゆる「荒し」的コメントは削除して欲しいとの意見も寄せられたが、以前から述べている通り削除の基準判断が非常に難しいので、原則コメント削除はしない事としている。明らかに私の文章を読んでいないコメントや、同一の方(だと推測する、同じIPアドレスだから)からのコメントなども、それはそれで1つの感想なので、今のところ削除は行おうとは思っていない。色々な観点から不愉快に思われる事はあろうが、ご容赦いただきたい。
 そして、様々な感想を寄せて下さった方々に改めて感謝したい。

 で、今日は全然関係ない話題、4級審判の更新について。
 以前から何回か書いているが、私は底辺の4級審判員。小学生の試合とは言え、公式戦で笛を吹いたり、旗を振ったりするためには、資格の継続が必要で、年に1回更新が必要。一昨年までは、講習会の受講+テスト合格がノルマだったのだが、昨年からe-learing、つまりインタネットでの受講更新が可能になった(資格を新たに取得するためには、従来通り講習会受講が必要)。
 この変更は極めて的確なものだ。3級審判員以上はある種の認定試験が必要だが、現実的には4級審判員はそうではなく、「審判になる」と意思を決めた人ならば誰でもなれる資格だ(これはサッカーの普及と言う観点では極めて重要な視点だ)。しかも、更新については過去も現実的には、上記したテストと言っても全員合格的な予定調和に過ぎなかった。そう考えると、e-learningは非常に有効だ。
 日本協会の審判に対する方針やその年のルール変更は一方的に伝えてもらえばよい事なので、必ずしも集まった講習会での伝達は必要ない。と言って、文書による通達では、読む人が少ないと言う事もあるし、何より頭に定着しづらい。しかし、「よし審判資格を更新するか」と決心してパーソナルコンピュータ画面を眺めれば、ある程度の定着は期待できる(もちろん、「まあ、仕方がない、面倒くさいが」と言う気持ちもありますけれど)。
 また、しばしば話題になる、「パスが出された瞬間の位置取りがオフサイドか否かを決める」と言う概念も、映像を使えば十分に理解可能。しかも自分でパーソナルコンピュータに向かっていると、納得できなければ幾度も再生可能。
 と言う事で、無事審判資格の更新が終了した次第。

 いくつか感想。
 このe-learning教材を、もっと一般に公開したらよいのではないか。特に、「オフサイドか否か」とか「反則になるプレイ」については、映像と共に、判定基準が示されるので、非常に理解しやすい。したがって、審判のみならず、一般のサッカー観戦者にとっても、とても勉強になるはず。「パスを出した瞬間の受け手の場所が問題」と言うオフサイドの原則を、複数種類の映像で要領よく説明している映像、「ヘディングのタイミングが遅れての反則」と「ヘディングのタイミングが早過ぎての反則」を説明している映像など、多くのサポータにとっても、よい勉強になると思う。もうすぐ、4級審判の更新期限が終了するが、その後ならばこの教材を一般公開しても問題なくなるだろう(来期は来期で新しい教材を作るのだろうから)。たとえば、Jの各クラブのサイトからリンクできるようにすればどうだろう。そして、各クラブの主将から「より試合を愉しむために見て欲しい」とメッセージを入れてもらう。
 反則の実例映像がいささか大胆過ぎるのには驚いた。「ボールを狙っているように見せかけて、敵選手を傷付けようとする悪質な反則」として、Jリーグの映像が実例として利用されているのだ。素朴な疑問かつ余計なお世話だが、「その反則行為の当該クラブなりご本人なりから『名誉毀損』で訴えられたらどうするのか」と心配になった。また、件の選手が「典型的知的選手」なのが味わい深い。そうか、この選手は審判達から嫌わ(以下略)。
 そして一般論なのだが、しっかりとした4級審判を増やしたい。近年、日本協会は若年層大会のリーグ戦化を強く推進している。その際、大きな問題の1つになるのは、審判を揃える事である。日本協会の構想では、「副審なしの主審方式」が推進されている。それはそれで、1つのやり方だと思う。でも逆の発想もあるのではないか。たとえば、20歳前後の若い方々に審判資格を取得いただき、中学生、高校生の副審を務めていただく仕掛け作りなどは、非常に有効だと思うのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 底辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月20日

32/32

 前回の続きです。コメントで、ナナシさんがメンバの並びを記述して下さいました。ありがとうございます。実際のところは
 前進意欲 大柄主将
無口強気   ラガー息子
   センス抜群
   中盤将軍
度胸坊主   猪突猛進
 頑健俊足 沈着冷静
   三男坊GK
と言う並びです。本エントリに登場する固有名詞はこちらを参照ください。で、ベンチにIT社長、元ラガー、講釈師がいると言うことで。

 中央大会。
 元ラガーの調査によると、初戦の相手はかなりの強豪。チーム員も200人近くを数え、非常に堅固な組織で運営されているクラブとの事。指導陣にも学生時代全国制覇の経験がある方が複数名いるらしい。「いや、俺はワールドカップの決勝を生で観た事がある」と元ラガーには切り返したのだが。いずれにせよ、このようなチームと公式戦で対戦する権利の獲得そのものが「中央大会進出」の意義なのだ。さらに、もし次に進めれば何とJリーグの下部組織チームとやれると言う。
 IT社長と私は、バクスター氏ではないが「勝負は切替」だと捉えていた。秋口以降、守備から攻撃への切替は中々素早くなり(守備陣の押し上げにせよ、中盤の展開にせよ)、よい攻め込みの頻度が増えた。しかし、攻撃から守備への切替は簡単ではない。子供たちにはいつも「周りを見て狙いがあれば、ドリブルでもパスでもOK」としか指導していない。相手が強いからと言って守備的に戦うとか、特別な作戦などこなせる訳がないし、いつも通りボールを大事にしたサッカーをするしかない。それでも、相手のレベルは相当高いから、それなりにボールを奪われるリスクも高い。攻撃から守備への切替が遅れれば、逆襲速攻の餌食となり、大差負けの恐れがある。逆襲速攻からのやらずもがなの失点さえなければ、勝負に持ち込めるだろう。
 IT社長は練習のたびに「40分間集中を切らさず120%の力を出せば1回戦の突破も可能だ」と言い続けた。そして、試合前日も「攻撃から守備への切替」を強調し「最後の指導」を終えた。

 1試合前がJリーグ下部組織の試合だった。ところがPK戦で(我々とやる前に?!)敗退してしまった。開始早々に、ナショナルトレセン選手だと言う10番が、ひざがよく曲がり、ボールタッチが非常に細かいドリブルでペナルティエリアに進出、3人を抜き去り、そのこぼれ球からJリーグが先制。その後もJリーグペースで試合は進むが、相手チームもよく守り、時には人数をかけた速攻をかける。Jリーグもリードはしているから無理をしないまま時計は進んだ。そして、後半終了間際Jリーグのちょっとしたミスもあり、相手チームが同点に追いつきPK戦に持ち込んだのだ。そのPK戦ではJリーグは凝り過ぎたキックでミスを連発し敗退。相手チームもレベルは相当高かったのは間違いないが、子ども達、親御さん達の喜びようはすごかった。いや、羨ましい。お見事でした。

 さて我々の試合。
 序盤から押し込まれるが守備陣がすばらしかった。頑健俊足が大声で指示を飛ばし、沈着冷静が見事な出足で敵の攻撃に対応する。度胸坊主と猪突猛進の位置取りがまた見事。相手ボールならば絞り、マイボールになるや必ずMFのサポートに入る。三男坊GKがまた落ち着いており、DFラインの裏へのボールは判断よく飛び出して押さえるし、捕球も安定。
 しかし、相手も中々強いのでせっかくボールを奪っても、中々トップには収まらない。そこで光ったのが、センス抜群と中盤将軍だった。上記した通り攻撃から守備への「切替」がとにかく早い。ボールを奪われるや、見事な集中で位置取りを修正、敵の仕掛けに絡み、頑健俊足と沈着冷静と声をかけあう。速攻によるピンチはほとんどなかった。
 守備が落ち着けば少しずつ反攻できるようにもなる。中盤将軍が結構厳しいプレスでも持ち出せるのは期待していたが、驚いたのはセンス抜群。小柄な子で今までは相手の当たりに飛ばされる事が多かった。しかし、どうやらブロック大会で自分の間合いを完全につかんだようで、相手のすばやいプレスを落ち着いてかわし、左右に丁寧にさばく。自分の間合いをつかんでくれた上で中学校に渡せるのは嬉しい。そして、無口強気とラガー坊主が上下に、前進意欲と大柄主将が左右に、それぞれよく動く事で少しずつボールが収まるようになり、当方の有効な攻め込み頻度が増えてくる。特に戦う姿勢あふれる前進意欲が豊富な運動量で前線をかき回し、再三猪突猛進が判断のよい攻撃参加をする事で厚い攻めを展開する。
 そして前半半ば、丁寧につないだ攻め込みから、中盤将軍が浮き球で敵DFを飛ばす好パス(こいつは本当に周りが見られるようになってきた)を左サイドの無口強気に。無口強気はGKとDFの間に正確なスルーパス(これまで再三縦に抜きに行くプレイを見せていただけに、この場面の変化が利いた、正に強気の突破狙いの面目躍如)。的確な走り込みをした大柄主将が敵DFともつれながら抜け出し、正確なボールコントロールから落ち着いて流し込み先制に成功!
 前半それ以降は先制して焦る相手の攻撃を、頑健俊足を軸によくラインを上げる事で防ぎ、裏を狙うロングボールは三男坊が相変わらず的確に対応。1−0で前半を終えた。
 後半に入っても相手の攻撃は焦りからか単調。相手のボール保持時間は長いが、むしろペースは当方。相手陣のスローインを、大柄主将がロングスローで狙おうとするや、最後尾から沈着冷静が判断よくトップスピードで最前線に飛び出し空中戦を狙う。前進意欲がボールをキープし、その大外に中盤将軍が絶妙なフリーランを見せ、相手守備陣を引き付けたところで、前進意欲が中央にドリブル突破を狙うと言うアイデアあふれる攻撃。そして、センス抜群の縦パスが相手DFと交錯したところを巧みに抜け出した大柄主将が、落ち着いて持ち直し狙い済ましたシュートを左足で放つが惜しくもポストを叩く、惜しい(この子が、冷静にGKを見て狙ったシュートを打てるようになったのはすばらしい)。
 と、よいペースで試合をしていのだが、好事魔多し。後半半ば、相手の右サイドからの攻め込み、苦し紛れのセンタリングで、うまく絞っていた度胸坊主がクリア、と思ったらコントロールミスから自殺点。同点に追いつかれてしまった。
 以降、落ち着きを取り戻した相手と、全く気を落としていない当方がガップリ四つの戦い。そして終盤、CKを与える。これまでニア狙いできていた相手が、初めてファーに蹴ってきて飛び込んできたCBに見事なヘディングシュートを許してしまった。敵ながら見事なアイデアだった。
 それでも当方の選手たちはあきらめない。幾度となく攻め込み好機を作るが攻めきれず、悔しい敗退となった。

 次の試合の副審を行う必要があったため、試合直後は彼らと会話は叶わなかった。しかし、副審をしながら、改めて感慨にふけった。目の前の攻防はまごう事なき県のトップレベルの少年サッカー。そして、うちの子ども達の試合振りは、これらのチームと何ら遜色のないものだったのだ。彼らがここまで育ってくれたのだと思いながらの副審は心地よい快感だった。
 帰りの車はコーチ陣と度胸坊主とラガー息子が一緒だった。度胸坊主が振り返る。「う〜ん。つなぐのは危ないと思ったからクリアしようとしたのだけれど、軸足に当たっちゃったんだ」これだけ冷静に自分のプレイを説明できるのだから、たいしたものだ。一方のラガー坊主はおとなしかった。ブロック大会では好プレイで危機を救ってくれたのだが、この日は相手の厳しい守備にほとんど何もできなかった。2人はこの悔しさを糧に、同級生や下級生を引っ張り、再びこの地に立つ努力をしなければならない。

 時間を戻す。副審を終えて皆のところに戻る。多くの連中はまだ目を真っ赤にしている。自分達の努力でここまで来られたからこそ流せる涙だ。これだけの悔しさを味わってくれたのだ、もう私達の仕事はおしまい。後は、彼らはこの悔しさを糧に、勝手にサッカーと言う比類ない玩具と戯れ続けてくれる事だろう。





 と思っていたら、終わりませんでした。続きます。
posted by 武藤文雄 at 23:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 底辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月24日

32/442

 先日の日曜日、坊主が町民駅伝大会に出場、ジャンケンで負けた坊主は箱根駅伝5区を髣髴させる山間コースを担当すると言う(他の子は比較的平坦なコース、中学校のサッカー部で駅伝に出るから、駅伝のチームメートは皆かつての私の教え子ね)。距離は箱根駅伝の1/6程度ではあるが。しかし、坊主の苦闘を眺めるよりも格段に重要なイベントがあったため、坊主の応援はパスする事にした。我が少年団の高学年チーム(6年生、5年生で構成)の神奈川選手権のブロック大会の準決勝、決勝があったのだ。

 1月になり年度末が近づいてきた。サッカー少年団においては、我々コーチ陣と毎週末遊んでくれた少年達との別れの日が近づいてきたと言う事になる。そして、1月には最後を飾るように毎年神奈川選手権が行われる。全県から442チームが参加、10チームちょっとずつ32ブロックに分割し、それぞれでトーナメント戦を実施。ブロックで優勝すれば中央大会に出場できるスキームだ。
 中央大会までは4連勝しなければならない。我が少年団はブロック大会で1回戦を勝った事すらほとんどなかった。元々、対して強いチームではないから当然なのだが、それ以外にも原因はあった。通常は近隣にしか遠征しない子ども達だが、県大会は広範な地域で行われるため、長距離の遠征となり、それだけで舞い上がってしまう。また、強豪にもまれている?他地域のチームとやると、「試合慣れ」と言うのだろうか立ち上がりのまずさやセットプレイでやられる事が多かった。
 とは言え、今年の6年生は、まとまりがあり最後のこの時期まで途中でやめた子が非常に少なく、運動能力の高い子が揃っているだけに、「幸運に恵まれれば」との思いもあって大会に臨んだ。
 私は今年は低学年を担当しているのだが、残念ながら異国に出張しているうちに早期敗退。この準決勝、決勝は帯同審判が不足している事と、生来の出しゃばり精神で、同行する事にした。高学年の監督は、サッカー指導歴は10年を越え、私とも長い付き合いの男、本業はIT会社の社長のただの酔っ払いだ。もう1人のコーチは、学生時代はラグビーをやっていた。彼のご子息が1年生で入団直後に練習を見学している様子を見て「この男は飲めるやれる」と判断して、少年団のコーチ陣に誘い込んだゼネコン社員。これまたただの酔っ払いだ(どうでもいいが、この2人は時々拙ブログのコメント欄にも登場してくれる、あ、当時1年生だった元ラガーのご子息は5年生になり、後から登場します)。今年の高学年チームは、この2人が4年間かけてじっくり育ててきたチームなのだ。

 もう1週前には1回戦と2回戦が行われた。この日私は、出張からの帰国直後と言う事もあり、審判もせずベンチにも入らず、サポータとして参戦。
 初戦。チーム全体のボール扱いでは当方がやや上回るものの、攻守の切り替えなど試合運びは先方が上。やや押し気味ながら攻め切れず苦しい試合となった。ともあれ、後半にトップの大柄な主将(170cmあり非常にふところが深い、大柄な身体をもてあまし気味で伸び悩んでいたが、ここに来てトラップが正確になり能力が開花)が決勝点を決め辛勝。
 続く2回戦の相手は、技術的には非常にレベルが高く苦戦が予想された。開始早々、複数回の決定機を許すが、幸運にも恵まれて失点を免れる。前半半ばから、当方もよくパスが回るようになる。そしてトレセン選手でもある中盤の将軍が落ち着いたキープから、浮かした高精度のボールを左オープンに展開、左MFの細身で小柄で無口だがチームで一番気の強いレフティがワントラップから、強烈な左足シュートを決め先制。見事な揺さぶりからの崩しによる得点だった。これにより、それまで出足のよかった相手守備陣が引き気味になり、押し込む事に成功。その後、大柄主将の連続得点、さらにもう1人のトップのドリブルが巧く前進意欲抜群小僧が4点目を決めて快勝した。
 上出来の2回戦突破に、いよいよ「幸運に恵まれれば」の意が強くなり、準決勝を迎えたと言う事。

 さて準決勝。
 元ラガーの偵察によると、大柄で前に出てくるスピードが抜群に速い子と、主将で技術レベルの高い2トップが強力なチーム。守備も読みのよいスイーパとボランチが利いていると言う。この2トップを、当方のCBコンビ(頑健で俊足で元気のよい小僧と、小柄だが瞬発力抜群で沈着冷静な小僧)がどこまで押えられるかが鍵と思われた。
 ところが開始早々、動きがにぶいうちに、この2トップに破られ失点。これで、舞い上がってしまった当方の守備陣、ボールを奪った後の上がりも遅いし、つながず単調な攻めになるため、次々にボールを拾われ猛攻を許す。そして、3分には2失点目。その後も、いつ3点目を奪われてもおかしくないピンチの連続、GK(2人の兄も我々の教え子で、兄達同様運動神経がよいのだが、判断力がもう1つでポジションが決まっていなかったがGKをさせたらうまくはまってくれた)のファインプレイや幸運にも恵まれ、かろうじて守る。結果的には、この悪い時間帯に3点差とされなかったのは、1つの分岐点だった。
 10分過ぎから、ようやくボールがつながるようになり、相手陣近くまで持ち込むが、焦りからラストパスやシュートが雑で、とても点が入る雰囲気はない。しかし、15分頃(試合は全て20分ハーフです)、逆襲から2トップが相手DFの裏を取る。しかし、守備範囲の広い相手GKの飛び出しに防がれてしまう。ところが、このこぼれ球が、右MFの5年生の元ラガーのご子息の前にこぼれる。ラガー坊主は、必ずしもよい体勢ではなかったが、約35m先の無人のゴールに冷静にサイドキックでボールを流し込んだ。このラガー坊主の冷静さにより、前半のうちに1点差にできた事は大きかった。
 このあたりから当方守備陣も、2トップの裏を突く攻めへの対応が落ち着いてくる。上記のCBコンビに加え、右バックの猪突猛進型ドリブラ(これも三男坊)と左バックの度胸抜群のレフティ5年生(この日帯同していなかったが酔っ払いコーチ仲間のご子息、全然関係ない話だが、この父親が過日一緒に仕事したコンパニオンが、某有力若手Jリーガの彼女だったんだそうだ)と4人のゾーンディフェンスが決まり始める。サイドバックの片方が攻め上がっても、残り3人でバランスを取りながら強力2トップを見張り巧く押えられるようになってきた。僅か10数分間、相手の猛攻を受けて必死に防いでいるうちに、この4人は自らの「サッカー能力」を向上させてくれたのだ。
 ハーフタイム。IT社長が檄を飛ばす。「技術的には負けていない。今までやってきた事を信じて戦えば、必ず勝てる。」追いついて勢いに乗っている子ども達は元気にフィールドに飛び出した。
 そして後半開始早々、きれいな組立から2トップが攻め込み、最後は前進意欲が決めて同点に追いつく。
 「よし、このままの勢いで行けば勝てる」と思ったが、そうは問屋がおろさなかった。相手が攻め方を変えてきたのだ。これまでは、2トップが裏を突く攻めに終始していたのだが、大柄な方の子が中盤に引いてよくボールを回し両翼から攻め込んできた。単純に裏を狙ってくる攻撃ならば、しっかりとゾーンの網を張れば何とかなるが、この攻撃は厳しい。それでも当方守備陣は全員が抑えるべき相手とボールをよく視野に入れ、粘り強く守る。
 一方で当方攻撃陣も黙ってはいない。小柄ながらサッカーセンス抜群でボールを散らすのが巧い小僧と中盤将軍がよくボールをさばき両翼から攻め込む。ラガー坊主と猪突猛進、無口強気と度胸坊主がそれぞれ連動的な動きで仕掛けるが、相手の守備陣がまたギリギリで2トップへのボールを押える。またGKが非常に落ち着いていて崩せない。両軍の子ども達の「何としてでも勝ちたい」と言う正に手に汗握る熱戦が継続した。
 元ラガーがPK戦を意識して準備を始めた後半16分、逆襲を仕掛けた前進意欲がハーフウェイラインを少し越えたところで相手DFと交錯、やや幸運なFKを得る。ヘディングが得意な子達が相手ペナルティエリアに走る。ところが中盤将軍が長めの助走、IT社長が「あいつ、狙っていやがる、おい、やめろ、無理するな」とつぶやいたが、将軍は右足を一閃、グラウンダのボールは両軍の密集を抜け出し、そのままゴールネットを揺らした。一番大声を出して歓喜したのがIT社長であるのは言うまでもない。
 しかし、ロスタイム含めて残り5分。相手は萎えていなかった。執拗に両翼から幾度と無く攻め込む。「絶対勝とう」と言う執念が伝わってくる猛攻、2列目、3列目の子のシュートが我が陣を再三襲う。ここで、ゆっくりボールをキープしたり時間稼ぎする知恵も経験もない我が子ども達は、必死に正面きって守る。そして、三男坊GKが再三の好セーブでチームを救ってくれた。
 タイムアップ。全力疾走で歓喜する子ども達。絶叫するサポータ席の親御さん達。いや、一番見苦しかったのは、ベンチで抱き合いながら喜ぶ3人の酔っ払いだったように思うが。

 1試合おいての決勝戦。相手が勝ち抜いた準決勝の副審を元ラガーと私が務めたので、特徴はよくわかっていた。全員の技巧がしっかりしている。3FWと2人の攻撃的MFは皆フェイントが巧く個人突破ができるドリブラ、しかも2列目の押し上げも早く攻めが厚い。攻撃的MFはスルーパスが、トップの子はそれに呼応して裏を突くのが、それぞれ巧い。CBは大柄頑健でガッツもあり、守備も相当堅い。セットプレイも早く行うなど、試合経験も中々。相手の特徴はよくわかっていたのだが、そんな細かい事を指示しても、試合前に消化する事はできない。IT社長は、セットプレイへの対応だけ注意。後は一般論として、裏を狙ってくる敵FWへの対応を丁寧に指示した。
 さらに頑健俊足が試合前に「頭痛がする」と言い出す。どうも風邪気味だったようだ。本人が「どうしても出る、やれる。」と言うから、とりあえずスタメンで行かせる事にした。IT社長は、周囲にショックを与えないため、沈着冷静と猪突猛進に「状況によっては、頑健俊足を代えて、お前らのCBコンビに切り替えるかもしれない」とだけ伝えた。
 立ち上がり、見事に裏を突く攻撃をされてしまい、完全に崩され、いきなりゴールネットを揺らされてしまった。ところが、これがオフサイド。非常に微妙な判定で、当方としては「ラッキー」としか言いようがなかった。さらに「ラッキー」だったのは、ここで崩された事で4DFそれぞれが前の試合で学習した「裏を突く攻め」への対応を完全に思い出してくれた事。ある程度身についた身体の動きが、この失敗経験と言う反省で、完全に身についた感があった。以降は見事な対処を見せてくれた。
 けれども敵の攻撃は鋭い。裏を突けないと見るや、トップの子がよくクサビを受けてMFに落とし、丁寧に攻め込んでくる。しかし、当方の守備網もすっかりたくましくなっており、落ち着いて対応する。特に猪突猛進は敵の隙を見るや迷わず大胆に攻め上がり敵を押し下げる。一方逆サイドの度胸坊主は見事な位置取りで敵の強力ウィングを押える。この両翼の攻防は試合の大きな分岐点となる。
 当方も攻め返す。相手が前掛りと言う事は、当方も攻め返せると言う事だ。中盤将軍とセンス抜群の2人を軸に、丁寧にボールをつないでヒタヒタと攻め込む。「こいつらここまでできたんだ」と思わせてくれる程、意図のある攻撃で敵陣を襲う。
 相手の守備陣をさすがだ。大柄主将をマークするCBは必死の形相で食い下がり、全員が忠実な位置取りで隙を見せない。幾度も揺さぶるが崩せない。
 そうこうして迎えた前半15分。CKを中盤将軍が蹴り、大柄主将が見事な打点の高さで折り返す。攻撃参加していた沈着冷静が全くのフリー、冷静に狙い済ましたサイドキックで決めてくれた。見事な先制。
 前半の残りが苦しかった。敵の攻撃的MFが2枚、マイボールになるや素早い動き出しで前進、自陣前で再三数的優位を作られ危ない場面が連続した。しかし、体調が心配された頑健俊足が見事な守備を披露。さらにパートナの体調不良で自覚を持ったのか、沈着冷静が堂々たるプレイで相手の仕掛けを読み切る。沈着冷静は得点も決めてくれたが、本業の守備が完璧だった。
 ハーフタイム。IT社長が今度は落ち着いて「いい試合だ。落ち着いてつなぐ事、出足を負けずに絶対に待たない事、この2つを守れば勝てる」と指示。その後、私に何かないかと振ってきた。難しい戦術指示は小学生にはご法度だが、彼らならばわかってくれるだろうと思って、センス抜群と中盤将軍に指示をした。「ボールを奪われたら、すぐ切り替えて守備を考えろ。そこで最初の攻撃をはね返せば、逆にお前らが攻める事ができる。」それを受けてIT社長が「上下動は、体力的にとてもつらいけれど、強い相手にはそのくらい頑張らなければ勝てないぞ」と檄を飛ばし、子ども達は目を輝かせてフィールドに戻った。
 子ども達はまた格段と成長した。攻守の切り替えが一段と早くなったのだ。強い相手と戦う事で、能力がまた向上したと言う事だろう。センス抜群と中盤将軍が、素早い下がりからボールを奪うと、落ち着いたドリブルで前進後丁寧に展開する。ラガー坊主と無口強気が技巧を活かして両翼を破り、大柄主将と前進意欲にラストパスを出す。時に猪突猛進が右サイドを強引にえぐる。そうして迎えた12分、前進意欲の突破から、大柄主将が敵の執拗なマークを破り、見事なシュートを突き刺し、とうとう2点差にした。
 そして、そのまま押し気味に試合を進める。相手も必死に攻め込もうとするが、焦りから前に出る事を急ぎ過ぎ、有効な攻め込みは少ない。さすがにあの状況でテンポを落として冷静に攻め込むのは、小学生には難しかったのだろう。
 そして時計は回り、遂に歓喜の中央大会出場と相成った。結果もすばらしかったが、内容もまたすばらしかった。

 いくつも幸運があった。
 準決勝で守備がガタガタしていた時に3点目を決められていたら、とてもではないが反発は難しかっただろう。開始早々に連続失点した事で、相手が裏を狙う攻撃ばかり狙ってきたのも、逆に幸いしたかもしれない。序盤から両翼を使った攻撃を仕掛けられたら、こちらも思うように攻められなかったかもしれない。準決勝で裏を突く攻めを経験したからこそ、決勝でも巧く守れたのも確かだ。決勝は大柄なタレントを持つ有利さで、セットプレイから先制できたが、それがなければ相手もそうは前掛りに来なかっただろうから、これまたどう展開したかはわからない。もちろん、決勝立ち上がりの得点がオフサイドでなければ、展開は全く異なったものになっていた事だろう。
 ただし1つだけ言えるのは、当方の子ども達も、勝ち抜くだけの能力、可能性は十分持っていたと言う事だ。そして、彼らの努力が、ほんのちょっとの幸運を呼び出し、歓喜とあいなったと言う事だ。
 準決勝も決勝も試合終了後、相手チームの子ども達は皆ボロボロと大泣きしていた。
 準決勝の相手。2−0でリードした時は、まさかこんな展開になるとは思わなかっただろう。いや終盤猛攻を仕掛けている時も、「必ず逆転できる」と思い戦っていたに違いない。すばらしい敢闘精神だった。
 決勝の相手。試合終了後、我々ベンチに挨拶に来た彼らは、涙を流しながら、我々3人に「中央大会がんばって下さい」と言ってくれた。
 相手の子ども達もすばらしかったが、指導陣の見事さにも感心させられた。
 このような尊敬すべき人々と戦えた事を誇りに思う。そして、勝った後では不遜に聞こえるかもしれないが、勝った子ども達も負けた子ども達も、この死闘を通して着実に成長したはずだ。彼らのサッカー人としての生活は、これからなのだから。

 決勝戦に戻る。後半15分過ぎ、2−0でリードし、よいペースでの試合が継続。優勝が少しずつ見えてきた。先ほどまで隣で指示を飛ばしていた元ラガーが何かしら静かだ。「おかしいな」と思って隣を見ると、目を真っ赤にして、まぶたを押えている。お前なあ、大人が試合中に泣いてどうするんだ。
 試合終了後、親御さん達が待つ控えスペースに戻る。「歓喜のまとめ」をするはずの2人の酔っ払いがいない。「あれっ」と思って探すと、隅っこで下を向いている。呼びに行くと、元ラガーはもちろん、IT社長まで目を真っ赤にして、私の方に×サイン。
 「そうか、そうか。『歓喜のまとめ』は私の担当か」...って言う訳にはいかないので、子ども達に「着替えろ。寒いんだから、すぐに暖かい服装しろ」と場をつないだ。2人が戻ってくるまでの、ほんの数分間の幸せな事。
 その晩の酒は、本当に美味かった。あれだけおいしい酒は、2002年6月14日、森島スタジアムでの森島の一撃を反芻しながら、ミナミで歓喜した以来ではなかったか。

 みんな、本当にありがとう。酔っ払いたちは「君たち」と言う最高の酒の肴を堪能させてもらったよ。中央大会、これまで以上に厳しい難敵相手だけど、がんばろうな。
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2008年05月13日

また中学生の成長を愉しむ

 さて、中学校は県大会が始まった。
 前日来の大雨でグラウンドコンディションが心配されたが、水はけのよいグラウンドを会場校が丹念に整備してくれたため、ほぼ問題なく試合ができた。ちなみに会場校は、先日地域大会の準決勝を争った地域きっての強豪校。彼らからすれば、自分たちが戦うつもりだった試合だったのだ。その彼らに整備してもらったグラウンドで戦える事を、我らが中学生はどのくらい理解してくれたか。
 
 劣勢を覚悟していたが、前半はほぼ互角の展開だった。初戦と言う事や、雨上がりの不安定さを気にし過ぎたのか、敵が単調に長いボールを使ってきたのだ。これならば、4DFは跳ね返しやすい。特にこの日は、フィジカルのCBが絶好調、読みも冴え渡る。さらに大黒柱は精力的に上下動を繰り返し、将軍は早めにパスをさばき、大エースをサポートする。皆調子がいい。と、言うよりこいつらは、一連の試合を重ねる事で成長したんだな。調子がいいのではなくて、巧くなったのだ。ただ、敵守備陣も大エースと2トップを執拗にマーク。こちらも崩しきれずに前半を終えた。
 後半は様相が一変した。敵の監督が修正を指示したのだろう。敵が落ち着いて中盤でボールを回し始めたのだ。こうなるとつらい。押し込まれて、思うように逆襲も適わない時間帯が継続した。さらに後半半ば、当方の将軍が敵ともつてバランスを崩した際に、当方の別な選手と交錯、負傷退場してしまった。当方は大エースを後方に下げ、さらに守備的に戦う。押し込まれて、ほとんど好機すらつかめないまでも0−0で試合は推移する。そして終了間際、久々にハーフウェイラインからやや敵陣に入ったところで、大エースが前を向いてボールを持てた。その瞬間、判断力の右サイドバックが果敢にオーバラップ(あれだけ攻め込まれていながら「ここぞ」と言う場面で長躯前進した判断、勇気、体力、いずれもすばらしい)、落ち着いてキープから好クロス、そこに突破力抜群が飛び込みシュートを放つが、ほんの数十cm枠を外してしまった。さらにストライカのポストプレイから大エースが打つもこれまた僅かに枠を外れ、ついに試合は延長戦に。
 延長(5分ハーフ)では、大黒柱は見るからに足がつりそうで厳しそう。彼が中盤で機能しなくなると相当苦しいと心配していたが、走り切ってくれた。そして、後方に引いた大エースとフィジカルを軸に全員で守りきり、またもPK戦に持ち込んだ。。
 PK戦、敵の2番手キッカの選択に驚いた。大変技術的にはレベルの高いFWで当方の脅威となっていた選手なのだが、傍で見ていてわかるほど気の弱いタレントなのだ。案の定、彼のキックはコースが甘く、絶好調の当方主将のセーブの餌食となってしまった。主将はさらにもう1本止め、またもPK戦を制し、歓喜の2回戦進出となった。
 何とまあ、粘り強い連中なのだ。

 しかし、残念な事も。実は先日は書かなかったのが、先日の地域大会の準決勝の延長戦、当方の俊足は転倒した際に手を骨折してしまった。さらにこの日の試合後、将軍も足を骨折していた事が判明。サッカーには負傷がつきものなのだが残念。
 残りの連中は、彼らの分も頑張るのだ。
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2008年04月29日

続々中学生の成長を愉しむ

 さて中学校の大会。今日は準決勝と決勝を1日で行うレギュレーション。とは言え、決勝に残れば県大会進出なので、とにかく準決勝に勝つ事が何よりも重要。

 準決勝の相手は地域最強との噂がもっぱらのチーム。主将のトップ下の10番が抜群の能力を持ち、センタバック2枚が強力。チーム全体のレベルも高く、速くて丁寧なボール回しは鋭い。
 我がチームの監督は、敵主将に当方の大黒柱をマンマークでつけた。大黒柱は本当によくやった。敵主将はドリブルも巧いし、パスも正確。この1年年上の難敵に対し、丹念にしつこくアプローチする事で、自陣から遠い場所でプレイさせる事に成功した。あの幼少時のハナ垂れ小僧が、ここまでサッカー選手として成長してくれた事が素直に嬉しい(ほかの選手もそうだけど...逆に今少年団のハナ垂れ小僧達と毎週遊んでいると、こいつらが将来あんなに立派になっていくのかと、これまた一層感慨深い)。
 相変わらずバック4は、安定して機能。大黒柱が敵主将を押し出す事で、敵がロングボールを蹴ってくると、おちついて第1波をはね返す。大エース、俊足、将軍の3人はこのはね返したボールに執拗に絡み、第2波を許さない。この攻撃ならば防げる。
 一方、(それほどの頻度ではないが)大黒柱が敵主将を止め切れず、前向きにボールを持たれて仕掛けてくると、サイドを崩され、ゴール前での勝負に持ち込まれてしまう。もう1つ怖いのはセットプレイ。セットプレイだけは敵エースは、大黒柱の妨害なしで精度の高いボールを入れてくる。この日はフィジカルCBが抜群の安定感を見せ、主将GKの果敢な飛び出しと合わせ、何とか押えきる。とにかくこのような攻撃の回数をできるだけ少なくできれば。
 では、どうやって点を取るか。突破力抜群とストライカの2トップがよい体勢でボールを渡せるように、大エースをどのくらいの頻度前を向かせられるかと言う事になってくる。しかし、敵もそのあたりはよくわかっていて、大エースへのマークは執拗を極める。それでも、前半終了間際にこの3人で攻撃を仕掛け、最後は突破力からストライカに強いパス、ストライカは敵ストッパを背にしながら見事なターン、振り向きざまにファーサイドに強く低いシュートを放ちGKを破った。「釜本か!」と言いたくなるほどの見事なストライカの個人技で先制してしまったのだ。
 3月に卒業した連中が多数応援に来ていたのだが、あまりの妙技に皆「うわ〜〜〜!すげ〜〜〜!」と大騒ぎだ。中でもストライカの兄貴は「おかしい、これは何かの間違いだ、あいつがこんなに巧い訳はない」と語り、友人達に「弟の方がもう巧い事を素直に認めろ」とやり込められていた(兄貴の名誉のために言っておくが、あくまでもこれは言葉の綾、彼は昨年の中盤のエースで、近くの強力高校に加入しがんばっている)。

 後半、敵の圧力が高まる。GKが大当たりと言う事もあり、1−0のまま時計が進むが、次第に危ない場面が増えてくる。我がチームは、俊足、将軍に代えて、大柄脚力とスーパーサブを起用し、中盤の運動量を確保する。あと10分になって、いよいよ敵は後方の選手が前掛りで猛攻を仕掛ける。結果的に当方の大エースへのマークが甘くなる、たちまち大エースは見事な展開から絶好機を作り、スーパーサブが絡んで最後は大柄脚力が狙い済ましてシュートを放つが、敵GKに超美技で防がれた。惜しい。
 好事魔多し。直後のCK、敵はフィールドプレイヤ1人を残して全員が前線に進出、混戦から押し込まれ、とうとう同点に追いつかれてしまった。
 感心したのは、それ以降。「あと僅かを守り切れなかった」とのショックを引きずらず、全員が集中したプレイを継続。5分ハーフの延長も、ひるむ事なく戦い続け、危ない場面もあったが、当方もチャンスをそれなりに作るなど、ほぼ互角の攻防。勝負はPK戦に。
 PK戦では先蹴の当方の4人目までは全員が成功する息詰まる展開。そして敵の4人目、主将GKが見事な反応、こぼれたボールはバーに当たり、外へ転がった。歓喜に飛び跳ねる主将。踊り続ける彼に、センタサークルからチームメートが「次はお前だ!」と声がかかる。どうやら5人目に蹴る事を忘れていたらしい。思い出した彼は「おお、任せろ!」と胸を張ってペナルティスポットに。ところが、人工芝に滑ったのか、転倒しながらのキックとなり「うわあ」と一瞬思ったが、敵GKは逆を取られボールはネットに突き刺さった。
 見事に県大会出場を決めてくれた。すごい。

 決勝戦は、準決勝終了後のインタバルが長かった当方が、体力的に圧倒的に有利となった。大エースへのマークが甘く、序盤から再三決定機を掴む。そして前半半ば過ぎ、右サイドを大エースが突破し低いセンタリング、ニアで突破力抜群がつぶれ、ファーに走りこんだストライカが先制弾。これでストライカは、2年生ながら5試合で6得点、堂々の得点王だ(と思うのだが)。以降も押し気味に試合を進め、終了間際に逆襲から突破力抜群が決め、突き放し優勝。

 「伸び盛りのチームが試合ごとに力をつけて行く」そのものの快進撃だった。長い事サッカーを見ているが、ここまで短期間に成長する事例は記憶にないくらい。こんないい経験をさせてくれた選手たちに多謝。
 今までも君達には、幾度も喜びを提供してもらったが、まただね。本当にありがとう。
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2008年04月26日

続中学生の成長を愉しむ

 と言う事で、中学校は準々決勝。これが素晴らしい試合を演じてくれたのです(以下、各人の特長についてはこちらを参照)。

 敵は技巧に優れたチームとの情報どおり。しかし、開始早々から我がチームは運動量で押し込みペースを掴む。4人のバックラインは出足が素晴らしく敵FWより早くボールに触り(特に勇気あるCBと判断力の右バックの2人の前に出る動きは絶好調、おかげでフィジカルのCBは余裕も持ってカバーリングに回れた)、大黒柱と将軍がよくボールを散らし、大エースと俊足を走らせる。突破力抜群とストライカは息の合った動きで再三敵陣に迫る。CKを何度も掴み、幾度か決定機を掴むもどうしても決めきれない。
 敵もこの地域では屈指の強さを誇る少年団出身の選手が多く、CB(高さと速さを兼備)、サイドバック(主将で10番ながらSB、足も速く対応も柔らかい)ボランチ(技巧も正確、身体も頑健)、トップ(裏に出る速さが抜群)と能力の高い選手を並べているだけに、最後のところがどうしても破れず0−0で前半終了。
 当方が相当数の好機を掴んだのに対し、敵の好機は1回だけ。これは、当方のDFがインタセプト狙いが球足が予想より速く(普段土のグラウンドでしかやっていないのだが、準々決勝以降は人工芝のグラウンドでやれるのだ)敵FWと入れ替わってしまい、そこから崩されてGKと1対1とされてしまった場面(主将GKが見事な飛び出しではじき出して事なきを得た)だった。
 当方の運動量に敵が圧倒された感のある前半だったが、後半には落ち着いてつないで来る事が予想され、決して予断を許さないハーフタイムだった。

 後半、予想通り敵はボランチを軸に丁寧につないで来る。当方のフォアチェックがかわされ、中盤で回せされるとつらい。敵ボランチに当たるのは当方の将軍なのだが、体重差は歴然としており、よほど巧く身体を入れないと飛ばされてしまう。この苦しい時間帯を4DFはよくしのいだ。特に敵の裏に出るのが速いトップを、当方の左DFが押えたのが大きかった。
 苦しい局面を打開するためにベンチは俊足に代えてスーパーサブを送り出す。これが成功した。スーパーサブの強引な前進により、また押し込む事に成功したのだ。
 そして、迎えた後半10分、大黒柱が見事に敵ボールを奪取し、低く正確なフィードを将軍に。将軍は左サイドの大エースにつなぐ。大エースは1度縦に出るそぶりから、右サイドのスーパーサブにサイドチェンジ。フリーのスーパーサブは、ニアにアーリークロスを上げると、突破力抜群(跳躍力も凄い)が見事に飛び込んでよくひねったヘディング、しかし惜しくもバー。ところが、ふわりと浮いたボールをよく見ていたストライカが落ち着いたヘッドでネットに突き刺した。1−0。このストライカ君は、大柄だが空中戦には課題があったのだが、この場面は見事だった(本人曰く「生涯初めてのヘディングによる得点」らしい)。
 以降、敵は前掛かりに来るが、無理攻めはまだ仕掛けてこない。例の10番の主将がSBからトップにポジションを変えてくるが、先方の監督はバランスを崩すのは嫌うタイプらしく、FWを1枚後方に下げたので、FWの人数は変わらないので、当方は同じ守備体系で対応。また敵のボランチが前に出てくると怖いなと思っていたのだが、相変わらず後方でボールをさばいてくる。それでも2度ほど好機を掴まれたが、主将が思い切りのよい飛び出しと好反応で防ぐ。そうこうしている間に、残り10分。
 中盤に2年生が多い我がチームにとって終盤の守備は厳しいものになると思われた。ところが、敵が無理に攻めてこない。例のボランチもCBも後方に留まっている。よく見てみると、2人とも疲労が顕著になっていた。一方、当方の将軍は2年生ながら(ガキの頃から持久力が大したものだったのだが)足が止まらない。いや、彼だけではない、当方は皆がまだよく走っている。冬場の走り込みの差が出たのだ。最後の10分、当方は2トップが居残り速攻を仕掛け、決定機を2度掴む。ストライカのシュートを敵GKが伸び切りのセービングで防ぎ、大エースの強シュートがバーを叩く。
 最後の5分はさすがに敵が前に選手を残す。大黒柱もバックラインに下がり、敵の攻撃をはね返す。バック4は3年生で、スタミナは皆残っていたが、この日大活躍だった大黒柱はやはり2年生、最後に来て足が半分つっているようで、クリアの後ラインを上げるのもつらそう。しかし、全員でこの苦しい時間帯も出足で負けず、敵に好機すら作らせず、逃げ切った。

 とにかくベスト4。あと1つで県大会。準決勝の相手は、もっと強いと評判のチームだが、がんばれ。
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2008年04月22日

中学生の成長を愉しむ

 19日に中2になった坊主の中学校の公式戦が開幕した(坊主はまだベンチだけど)。32チームのトーナメント戦で決勝に残った2チームが県大会に出場できる。昨年は堂々の県大会初出場を果たした。しかし、レギュラの3年生が大量に抜けたが、新3年生は中学からサッカーを始めた選手たちを含め、非常にまとまりのよい学年で、着実に力をつけている。久々の応援だが、どこまでやれるか期待して参戦した。

 初日の日程は厳しく、1日で2試合2回戦までを消化する。

 まず初戦、出足も技巧を我がチームが上回る。2度ほど好機を逸してイヤな予感が漂ってきたところで、こぼれ珠を右サイドバックが遠目から思い切りよくシュート。ドライブがかかったボールを敵GKが抑え切れず先制。このサイドバックは中学から始めたのだが、判断力が非常によい、この得点も判断力の賜物だろう。
 続いて、3年のセンタバック(少年団時代からフィジカルが強かった)が前線をよく見て、3年の突破力抜群のFW(これは中学から始めた、運動能力と取り組む姿勢が素晴らしい)に正確で低いフィード。このセンタバックは縦に急ぎすぎる傾向があったが、この冷静さは見事。突破力抜群は球足の速さに止め切れなかったが、その裏に2年のストライカが入り込み裏に抜け出してGKと1対1になり、落ち着いてサイドネットに流し込んだ。彼は早くも170cmを越えフィジカルで負けなくなり、後方からのボールが収まるようになり、自信をつけている。
 バックラインは皆3年生、少年団出身は件のセンタバックだけだが、上記の右バックを含め忠実によく守る。もう1枚のセンタバックは非常に勇気のあるタレント、左バックはいつも冷静な対応と大胆な攻撃参加が武器。去年までは、しばしばラインがボコボコになりどうなる事かと思っていたが、今日は整然かつ組織的な守備で安心して見ていられた。
 その後も攻勢を継続、終わってみればストライカはハットトリック、突破力抜群も幾度もよい突破を見せ終盤に1点決め5−1。終盤にはスーパーサブの3年生(非常に明るい性格で度胸十分、彼の起用で幾度も流れを変えてきている)が幾度も突破に成功、と理想的な完勝だった。

 そして第2戦。これは厳しい戦いになった。運動量も技巧も敵を上回っていたが、敵は分厚く守っているだけに崩せない。前半こそある程度両翼から攻撃できていたが、後半は相当疲労していたのだろう、中盤でパスを受ける動きが減ってしまい、裏を狙って蹴るだけの単調な攻撃になってしまった。監督(顧問の先生)は3年の中盤の大エース(少年団時代から高速ドリブルが武器だったが、ここに来て長いパスも蹴れるようになってきた)のサイドを変え、最後はポジションを前に上げてボールを引き出そうとさせたが、中盤の2年生トリオが単調な攻撃に終始してしまった。
 で、中盤の連中。1人は小柄だが抜群の俊足で少年団時代からサイド突破が武器。まだ体重が軽いから一発目のトラップで前を向くのが肝心なのだが、2試合目は疲労も相当なようでキープが精一杯のようだった。ここに大柄で脚力のある左利きの3年生を起用するオプションもあるが、敵がベタ引きしていると起用しづらかったのか。ドイスボランチは少年団時代、中盤の将軍だった奴と守備の大黒柱だった奴。ほとんどのチームがこのポジションには強さもある3年生を起用しているが、監督は新チーム結成以来「先を見据えて」この2人を使っている。将軍の方だが、スタミナはある方で苦しい2試合目もよく押し上げてはいた。しかし、これまた体重が軽いから寄せられると突破し切れない。もっと早い判断で自分から仕掛けて欲しいところ。大黒柱の方は、粘り強くボールをキープ、片方のサイドが詰まると落ち着いてターンして逆サイドを狙う。ただ疲労の色は濃く、最初の展開で仕事が終わってしまい、彼のパスを受けた選手は縦に急ぐしかなくなってしまった。
 かくして、どうしても攻め切れず0−0のままPK戦に。ここで主将のGKが大活躍。去年の夏の大会でもPK戦を勝ち抜いているのだが、PKによほどの自信を持っているのだろう。いきなり最初の1本を止め、プレッシャを受けた敵の2人目は腰の引けたキックで外し、勝負あり。当方は4人全員が確実に決めてくれた。このあたりは主将の面目躍如たるところか。

 26日の準々決勝は相当強力な相手との事。冬の走り込みは十分だった模様で、全員が気持ちで負けなければ(これは一番大事だな)運動量ではやられないはず。攻撃は大エースにいかによい体勢でボールを渡せるかがポイントか。そのためには、3年生に遠慮せずにいかに2年生が戦えるかだな。皆ボールをもらう前に周囲を見て判断するところまではできているのだから、パスした後にすぐに次のプレイを考えて、動く事ができるかどうか。皆後一歩で殻が破れそうな所まで来ているのだ。がんばれ。
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2007年04月30日

若者達の成長

 坊主が中学校のサッカー部に入り、父親は晴れてコーチ業を卒業しサポータへ昇格?できた。

 で、春の地域大会の応援を堪能させていただいた。もちろん、坊主はまだ1年生だから1軍の公式戦には出る事ができずベンチの後ろでお茶出しなどして観戦しているだけ。当然ながら、主役は中学3年、2年の「かつての教え子達」である。大会は完全なトーナメント方式。決勝に進出できた2チームが県大会に出場できると言うレギュレーション。今年の我が中学は例年になく強力な陣容が揃い、初めての県大会出場の可能性も高いと言う事で、選手達も(父兄達も?)燃えていた。彼らは時々少年団の練習に顔を出してくれていたので、個々の連中の技巧と戦術眼がよく進歩しているのは知っていたが、チームをじっくりと観るのは久し振りだった。
 これが、見事なチーム力なのだ。若くて精力的な顧問の先生を中心に、ここまでよほどの努力を積んできたのだろう。前線に俊足で頑健な2トップを配し長いボールで突破を狙うやり方なのだが、パスの出し手と前線の動き出しがよく同期しており、チームとしてよく反復練習を積んでいる事がよくわかる。また、選手達の攻守の切替の早さがすばらしい。特に「攻から守」の早さは絶品で、ボールを奪われてすぐにプレスをかけ分厚く守る。これも、相当厳しいトレーニングと意識付けの賜物。そして、最後まで足が止まらない。よく走り込んでいる。

 そして、それらの鍛錬の成果を活かして、苦戦を重ねながらも準決勝進出を決めて今日の準決勝と相成った訳。勝てば県大会出場、負ければ何もなし。この厳しい難関に「かつての教え子達」が挑戦するのだ。これは観ない訳にはいかない。と言う事で、日本代表やベガルタの試合同様の緊張感で試合に臨む事になった。
 試合は開始早々にCKから攻め上がっていたストッパが難しいボレーシュートを決めて先制に成功。小学校の時は本能的なストライカだった男が、その得点感覚を大事なところで発揮してくれた。私の前で観戦していた、ストッパと同じ顔をしている小学5年の弟(現在の少年団の教え子)は大騒ぎだ。ちなみにこのストッパ君、人工芝のグラウンドは不慣れなためか、この得点後自陣前で複数回空振りをしてピンチを招いていた。試合後「ミスばっかりでやばかったすよ」と言っていたが、いいじゃないか一番肝心なところで難しいボレーキックを決めたのだから。その後は両軍の選手の「何としても勝つんだ」と言う気迫が前面に出た肉体戦が継続し前半終了。
 後半早々から、敵は気力を振り絞って前掛りに来る。ガップリそれを受け止める我が選手達。そして、逆襲からエースストライカが強引に敵DF2人を振りちぎり、ペナルティエリアに入ったところで強烈なインステップでのシュートを二アサイドに叩き込んだ。小学生の時から大柄で頑健だったが、順調にエースに成長してくれたもの。それにしても、あの体勢からニアにインステップで決められる下半身の柔らかさと強さには驚かされた。横で応援していたお母上の嬉しそうな事。
 どのチームにも言えることだが、2点差になると負けている方は精神的にガクッと来る傾向があるようだ。30分ハーフの短い時間では、確かに後半の2点差を引っくり返すのは少々辛いのは確かなのだが。そこを見逃さなかった我がチーム、中盤の技巧派が巧いボールキープから敵守備ライン後方へ完璧なスルーパス。先ほどのエース君が今度は落ち着いてGKを破った。3−0。勝負は決した。見事な試合振りで、県大会初出場。

 午後に行なわれた決勝戦は、前半にCK崩れから先制される。後半、前掛りで攻め込もうとしたところ、守備の連携ミスから2点差となり、力尽きてしまった。2点を追加され0−4で完敗(この試合では「2点差」が我が軍に重くのしかかった訳だ)。試合後はさすがに皆落ち込んでいた。
 しかし、それでも県大会出場権を獲得したのだ。むしろ、決勝で完敗した事も彼らの糧となるはずだ。本当によくやってくれたと思う。

 私が出会った時、彼らは小学校の2、3年生。まともに日本語も喋れない(笑)鼻たれ小僧達だった。それが6年も経つと、ここまで成長するのだ。
 彼らがピッチ上で見事なプレイを見せてくれる事は嬉しい。でも、もっと嬉しいのは彼らと「サッカーの話」ができるようになっている事だ。私の顔を見るとGKは「位置取りの修正」について尋ねてきてくれた。ボランチとは、味方のセンタリングの場面で攻め上がるべきだったか否かを議論できた。センタバックとは、3DFの時と4DFの時の敵をマークする際の身体の向きについて語り合った。何と前向きな連中なのだ。
 彼らならば決勝の1点目の失点を繰り返さないだろう。あの場面、自陣左サイドからのCKを1度GKがパンチで左サイドにはじき出したが、拾われてファーサイドにセンタリングを上げられ、フリーにしてしまった敵にヘディングを決められてしまった。「センタリングをしのいだ後は首を振る事」、この失敗経験を通じて彼らはそれを体得してくれる事だろう。

 坊主もよいクラブに加入できたものだ。
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2007年02月12日

さらば友よ3

 過日、「今シーズンの少年サッカーの試合はこれでお終い、優勝できてよかったよかった」と自慢話を書いたのですが、再度自慢話にお付き合い下さい。

 あの大会終了後、少し離れた地域のミニタイトルマッチに招待されたのだ。既に22回の歴史を持つこの大会。手渡されたプログラムには地域の商店や飲食店などが多数スポンサとして参加しており、初日には地元クラブのお母さん方が美味しい豚汁まで準備してくれると言う歓待振り。日本のサッカー界がこのような地域に密着して努力を重ねている方々で支えられている事を改めて認識できる素晴らしさ。このような大会は各地で行われており、我がクラブも年に複数回招待していただける事がある。いずれの大会も広範囲な地域からチームが集まるためレベルが高く、我がクラブは過去中々よい成績を収める事ができなかった。ところがこの大会、我が教え子達が見事なプレイを見せてくれたのだ。



 大会には12チームが参加、初日には3チームずつ4組に分かれたグループリーグを戦う。上位2位に入ると翌日の2次トーナメントに出場できるレギュレーション。

 まず初日の1次リーグはよく試合をする隣町のクラブ。最近相性がよかった事に加え、先方は負傷者が多かった事もあり、後半立ち上がりまでに3−0と大きくリード。「主将のストライカ」が敵守備ラインの裏を、しつこく突いたのが奏効した。ところが、ここから敵の5年生のエースが機能。逆襲から3点を奪われて、一時は4−3まで追い上げられるも、終了間際に当方の「中盤の将軍」が20mのミドルシュートを決め、5−3と突き放した。

 続く2試合目は相当な強豪チーム。この試合では、当方の「守備の大黒柱(地域トレセン選手)」が敵のエースストライカ(前の試合ではハットトリックを演じた)に対し、1対1でことごとく勝利。我が軍の「俊足ウィング」が中盤に引いて前線に絶妙なスルーパスを出し、「来年のエース」となるはずの5年生のFWが巧く抜け出して先制して前半終了。「俊足ウィング」は、これまで抜群の足の速さを生かした突破とシュート、センタリングを武器にしていたのだが、このような気の利いた変化技もできるようになっていたのは嬉しかった。後半も敵の攻撃を巧くつぶし敵にペースを渡さず、「将軍」が見事なドリブルで3人抜きの後スルーパス、再び「来年」が抜け出して2点目。2−0で快勝した。



 2日目の2次トーナメント。最大の問題は昨日中盤に引いたプレイを見せ新機軸を開いてくれた「俊足ウィング」が、柔道の試合で不参加な事だった。

 準々決勝の相手は、この招待大会の主催チーム。地元のチームゆえ、サポータであるお母さん方がたくさん見えていていて、典型的なアウェイゲーム。最終ラインを思い切り押し上げ、速い展開で攻め込んでくる厄介なチームだった。ところが、「俊足」不在を「主将」と「来年」が奮起してカバーくれた。「主将」は、運動能力の高さが売り物で、インステップキックの強さと精度は抜群。普段はただのいたずら小僧だが、責任感も中々で、他のチームにとって大変な脅威だった。ところが、その責任感の強さが災いしてか、肝心の勝負どころで、もう1つその能力を発揮しきれないでいた。一緒に指導している仲間が彼の父親で、そのあたりもプレッシャになっていたのかもしれない。ところが、この試合で彼が大ブレークしたのだ。名コンビの「俊足」の不在が、逆によい刺激になったのかもしれない。開始早々に角度の無いところから強シュートを放つと、敵GKは足でかろうじてブロック。その後、ハーフウェイラインを超えたあたりで思い切りよくロングシュート。枠は外れたもののこの2発で敵GKは、弱気になったようだ。そのゴールキックをあろう事か「主将」の正面に蹴ってしまった。落ち着いてトラップした「主将」は3度目の正直と言わんばかりにドライブがかかった強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。この一撃で勢いに乗った我がチーム、「主将」がハットトリック、「来年」が2点と、5−0で快勝に成功した。

 準決勝の相手は、実力的にはこの大会トップかもしれないと言う難敵。子ども達も「まず守備から入ろう」と考えたのだろう。慎重な試合振りで中盤戦を演じ、前半0−0で終了。ハーフタイムにドイスボランチの「将軍」と「坊主」に指示をした。「ここぞと言う時には前進して攻撃に参加しろ。その後戻るのはつらいだろうが、楽をしては勝てないぞ。」親譲りの単純な性格をしている「坊主」は、後半開始早々敵ボールを自陣で奪い取るや、無骨なフェイントで2人を外して勇気を持って前進、丁寧にルックアップして前線で抜け出した「来年」にスルーパス。ところが敵のスイーパがよくその動きについてくる。「来年」はここでよく粘り、逆サイドでフリーになっていた「主将」に正確な横パス。フリーの「主将」が狙い済ましたシュートを決めると言うビューティフルゴールで先制。さらにその直後、ゴールまで30mはあろうかと言う位置で掴んだFKを「主将」が直接シュート、敵GKがこぼす所を「来年」が詰め2点差に。終盤にFKから1点差とされるが、危なげなく逃げ切った。

 決勝戦は、前日2試合目で戦った相手との再戦。さすがに2日間で5試合目となると、双方疲労が目立ち、お互い攻め切れないままに前半終了。ここまで来ると、ハーフタイムにはどうしても精神論になる。「勝つ気持ちが強い方が勝つのだ。このメンバで試合するのはこれが最後だ。勝ちたかったら死に物狂いで一歩目を早くしろ。そうすればボールが取れる。そこから慌てずにつなげ。」そして後半開始早々、「守備の大黒柱」が敵ボールをインタセプトし、そのまま攻撃参加。落ち着いて前線をルックアップし、敵DFの裏を狙う巧妙な浮き球のパス、意図をよく読んでいた「主将」が抜け出し、GKの頭越しにロブのシュートを決め先制に成功。ここからは、お互い疲労しているため、完全に蹴り合いになってしまった。これはハーフタイムの私の指示が拙かったと反省。「1につなげ、2に出足を負けるな」と指示をすべきであったが、子ども達は「出足」に専念してしまった。ここで我が軍の「無口で小柄だが最高到達点でボールをキャッチできるGK」が活躍。苦し紛れの敵シュートを、実に冷静なポジショニングでことごとく押え切ってくれる。そして、歓喜の優勝。



 優勝チームには豪華なクリスタル風の優勝カップ。大きな盾。そして1人1人には金メダルが授与される。子ども達の誇らしげな笑顔。一方で勝てなかった敵チームの子ども達の悔しそうな表情。サッカーと言う至高の玩具を通じ、歓喜と痛恨を味わう事で彼らは成長するはずだ。

 このような大会では、他のクラブの指導者との情報交換も愉しみの1つ。この大会では、攻撃的なサッカーで優勝できた事もあり、我がクラブの評判はすこぶるよかった。「土日だけで、あそこまでテクニックのある子を育てられるのですね」とか「大柄な子もパワーに頼らず技巧を活かしたプレイをするのはいいですね」とか「どの子も顔を上げて回りを見ようとするのは見事ですね」とか。エヘン。

 とにもかくにも、6年生の子ども達には、曲がりなりにも「周囲のルックアップと自立的なドリブル」を伝えて中学校に送り出す事ができた。5年生の子ども達は、これらの基本を身に付けつつ「勝つ喜びと自信」を身につけてくれた。そして何よりも皆サッカーを大好きになってくれた。

 まあ、指導の素人なりに自分でもよくやったかなと。



 もっとも、こうやって毎週末子ども達とサッカーで遊んできて学んだものは、子ども達よりも自分の方が大きかったのかもしれない。一介のサッカー狂として、子ども達がサッカーを身につけていく過程を観察するのは、本当に勉強になった。何度も語ってきた事だが、彼らには感謝してもしきれない思い出がたくさんある。

 そして、最後の最後に私に優勝と言う歓喜を提供してくれたのだ。



 さらに...

 閉会式も終盤、突然進行役が全く意表をついた発言。「では恒例の最優秀監督表彰です。」

 齢46歳。サッカーに浸って約35年。個人表彰を受け、盾までもらったのは初めてでした。皆、本当にありがとう。
posted by 武藤文雄 at 23:41| Comment(6) | TrackBack(0) | 底辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする