2021年07月28日

東京五輪2連勝の愚痴

 日本は1次ラウンドで2連勝。戦闘能力を相応に発揮し、上々のスタートを切ることができた。しかし、2試合とも試合のクローズが稚拙そのもの。特にメキシコ戦は、10人の相手に2-0から2-1に追いつかれると言う失態。これがなければ、3試合目のフランスに2点差で負けても、2次ラウンド進出が可能だったわけで、せっかくの2連勝を素直に喜ぶことができないことになった。
 本稿は、五輪開幕2連勝を当然と捉え、それでも細かな点で監督批判をネチネチ言える時代が到来したことを喜ぶ、老サッカー狂の屈折した感情発露である。

 初戦の南アフリカ。一部の選手がCOVID-19陽性判定となり、試合そのものの成立すら心配された。それもあったのだろう、5-4-1とガッチリ守備を固めてきた。日本はまずい奪われた方をして失点しないよう慎重に試合を進める。準備試合のスペイン戦で、再三強引な持ち出しに失敗して、敵の速攻を許した久保も無理をしない。それでも、田中碧が僅かな隙間を見つけて縦に通すパスと、堂安と酒井宏樹の連係で右に拠点を作って、左に展開する攻撃は効果的。幾度も三好が左でフリーになる。しかし崩し切れずに0-0で前半終了。
 後半に入り、日本はさらに圧力を高めるが、GKウィリアムズが大当たりでどうしてもゴールネットを破れない。それでも55分を過ぎたあたりから、日本の左右の揺さぶりに、南ア守備陣がついていけなくなってくる。そして、72分ついに日本は先制に成功。左サイドから田中碧が正確なサイドチェンジ、右サイドでフリーの久保が、見事なトラップから鋭く中に切り込み、左足でファーサイドに強烈に決めた。再三の攻撃で、敵DFを中央に寄せておいて、パス能力に優れた碧、技巧と強引な得点意欲の久保、2人の個人能力で崩すことができた。
 ここまでは完璧だったが、終盤南アの無理攻めに冷や汗をかくことになる。久保が先制する直前、日本は攻撃強化のために、林→上田、中山→旗手の交替を準備していた。ところが、待機中に先制に成功。当然作戦変更すべきだが、森保氏はそのまま交替を実施。そして、南アが無理攻めに来ているにもかかわらず、旗手と上田は漫然ともう1点をとりに行く。ここは、落ち着いてボールを回し敵を焦らすなり、敵を引き出して裏をとるなりしたいところだったのだが。事態改善のためか、森保氏は、堂安に代えて町田を左DFに起用、旗手を中盤に上げる。しかし、相変わらず上田も旗手も、さらにその前に交代起用されていた相馬も前に行きたがり、日本は前と後ろが分断された形になり、終了間際には危ないシュートを打たれる局面もあった。一体、森保氏は交代選手にどのような指示をしていたのだろうか。

 続くメキシコ戦。日本は最高の前半。立ち上がりに酒井→堂安→久保と個人能力の高い選手の技巧がつながり先制。世界中のどんな守備陣でも崩せそうな攻撃ではないか。動揺したメキシコ守備陣に対し、林の巧みなポストプレイから、相馬が独特の長駆後の加速で切り裂きPK、堂安が冷静に中央に決めて突き放す。そして、前半半ばから落ち着いて引いて守り、危ない場面を作らせず、時に速攻を繰り出す。
 そして後半、中山と酒井に完全に止められていたライネスとベガの両ウィングをメキシコが諦めた直後、日本の速攻が炸裂、フリーで抜け出しかけた堂安を倒され、バスケスは退場となる。この時点で事実上勝負は決したのだが、森保氏が稚拙な采配で事態を悪化させた。
 局面を打開したいメキシコFWは日本に時間稼ぎをさせぬためにフォアチェックを継続、当然ながら人数の少ないメキシコの中盤には隙ができるから、航と碧は余裕をもってボールをつなげる。ところが、79分に投入された上田と三笘は何を考えているのか、そこから強引に攻めかける。この2人は2-0のまま試合を終わらせることではなく、明らかに自分で得点を奪う事しか考えていなかった。その後は、前線が急いではボールを奪われ、メキシコにファウルをとられ、セットプレイで危ない場面を作られる、と言う残念な展開の連続。さらに疲労が目立つ久保を交代させないのも不思議だった(旗手や橋岡に代えれば守備強化になったはずだ、それとも森保氏はどうしても3点差にしたかったとでもいうのか)。FKから失点し1点差とされたのは結果論。過程が悲しかった。そもそも、この試合のフィールドプレイヤの控えは、橋岡、旗手、三好、三笘、上田、前田。守備要員は橋岡だけと言う体制。そもそも、スコアが劣勢でどうしても点をとりたいときに、堂安や久保は代えづらい事を考えると、これだけ攻撃ラインの控え選手を並べたのはどう言うことなのか。
 短い期間で6試合を戦い抜かなければならない大会。少しでも消耗を避けながら、試合をクローズすべきなのに、2試合続けて交替選手が点をとりに行ったのには呆れてしまう。準備試合ならば、選手のアピールも理解できなくはない。また、褒められたことではないが、開幕戦は選手も少し舞い上がったこともあったかもしれない。しかし、前の試合の反省がまったくなく、2試合続けて終盤バタバタしたのは何なのか。森保氏は何を考えているのか。

 2連勝はやれやれだが、金メダルを目指すためには芳しい状態ではない。2次ラウンド進出はかなり優位だが、フランスはに2点差で負ける訳にはいかず、ターンオーバは取りづらい。(これまでのフランスの戦い振りを見る限り、戦闘能力で日本が上なのは明らかだが)。航、碧、酒井、堂安、中山と5人も警告を食らっている。さらに冨安負傷のために、板倉をCBに起用していることもあり、チームの強さの源泉とも言える航と碧の控えは全く不明瞭。消耗が多いこのポジションの2人を一切休ませず金メダルまでたどりつくつもりなのだろうか。
 まあ、五輪の1次ラウンドで2連勝しながら、監督の采配詳細に文句を言えるのだから、幸せな時代になったものだ。そして、そのような詳細手違いがあっても、麻也とその仲間たちは粛々と勝ち進み、最高の色のメダルを獲得してくれるに違いない。
 一方で、このような七転八倒を皆で経験していく事が、将来のW杯制覇につながるのは間違いない。ただし、その道のりは決して直線にはならない。紆余曲折を繰り返しながら、少しずつ前進するしかないのだ。フランスはワールドカップ創設を主導したジュールリメ氏の下、第1回大会から出場したが世界制覇に68年かかった。スペインは第2回が初出場なので76年かかっている。我々は初出場から、まだ23年、悠々と悩み続ければよいと思う。齢60歳の私は究極の果実を食べられないだろうが、それもよし。
posted by 武藤文雄 at 00:09| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月20日

五輪代表は金メダルをとれるか

 五輪代表の強化試合が完了。スペイン相手に上々の試合ができた。ボール保有は劣勢だったが、質の高い速攻を幾度も見せることができた。先方が来日直後、チーム作りぶっつけ本番と言う点は割り引いて考える必要はあるが、当方も大会直前調整真っ盛りなのだし。
 先日のアルゼンチン戦もそうだったが、判断力、技巧、フィジカル、我らがタレント達は世界のトップ国と遜色ない個人能力を持つ。加えて、冨安健洋、田中碧、堂安律と言った傑出した個人能力を発揮できる若者達が多数。誠に結構な時代になったものだ。
 これだけタレントが揃えば、当然ながらメダル、それも最もよいい色のメダルを期待したくなる。

1.ここまでの準備
 今回の五輪代表の準備はうまく行っていなかった。19年11月に実施したコロンビアとの強化試合は、(冨安こそ不在だったが)堂安や久保建英を呼び、チーム強化の集大成的な姿勢で臨んだが、中盤後方の弱さを徹底して突かれ惨敗。さらにその後の20年1月のU23アジア選手権では、守備ラインの信じられないミスなど残念な試合振りで、散々な結果。
 この時点で、数か月後の五輪に向け、冨安以外定位置確保感のある選手がおらず、地元五輪を前に怪しげな雰囲気か漂った。予選なしでのチーム作りの難しさと言おうか。
 ところが、COVID-19により五輪は延期。この疫病禍での1年延期が、不謹慎ながら不幸中の幸いとなる。五輪世代の多くの選手がJで大活躍したのだ。特にフロンターレの田中碧、三笘薫、旗手怜央の3人は、高い技巧で自クラブのJ制覇に貢献、また上田綺世、瀬古歩夢、林大地、前田大然、橋岡大輝らの成長も耳目を集めた。同様に欧州でも菅原由勢、板倉滉が活躍。そして何より堂安律がブンデスリーガで中堅チームの完全な攻撃の中心としてフルシーズン活躍、すっかり逞しい攻撃創造主に成長してくれた。
 そして、迎えた3月のアルゼンチンとの準備試合。初戦こそ完敗だったが、出場停止だった田中碧が、第2戦起用されるや全軍指揮官として圧倒的存在感を発揮し、日本を完勝に導いた。冨安も堂安もオーバエージも抜きで、世界最強国に完勝したのだ。
 その上で、オーバエージに、吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹を選考。麻也、冨安、航、碧で構成される中央の守備ブロックの堅牢さと前線への球出しの質は、A代表を含めても日本サッカー史上最強かもしれない。期待は大いに高まってきた。

2. オーバエージ
 上記した麻也、遠藤、酒井の3人はいずれも経験豊富な強者で、この3人を軸にした堅牢な守備は大いに楽しみ。ただ、ちょっと気になっているのはゴールキーパにオーバエージを起用しなかったこと。谷晃生も大迫敬介もよいキーパだし、鈴木彩艶の素質も疑いない。しかし、このポジションは特に経験が必要なポジション。
 加えて、麻也とかぶるCBは、冨安と言う格段のタレントがいて、板倉、町田浩樹、瀬古とよい選手が多い。同様に酒井の右DFも、橋岡、菅原、岩田智輝、原輝綺など人材が揃っている。そのような視点から、麻也や酒井ではなく、川島永嗣なり権田修一をオーバエージとして選ぶ選択肢もあったかもしれないと考えたりする。
 もっとも、準備試合での麻也の圧倒的なリーダシップや、スペイン戦で右サイドで1対2を作られくずされかけた場面での酒井の鮮やかな守備を見せられると、このメンバ選考でよかったのだとも思うのですけれどw。谷、大迫の奮戦に期待しよう。
 
3. 左サイドバック
 A代表でも、選手層が最も薄いポジションは左DF。長友佑都は相変わらず元気でカタールまで活躍してくれそうだが、バックアップに決定的なタレントはいない。この五輪代表でも定位置確保感のある選手はとうとう登場せず、この世代のユース代表時代から主将を務める中山雄太(元々はCBが本職だがこの五輪代表では守備的MFでの起用が多かった)、川崎で左サイドバックに起用され無難にこなしている旗手怜央のいずれかが起用される。中山は、昨年のA代表コートジボワール戦で左DFに抜擢され、そこそこのプレイを見せた。中盤に起用されると、キープ力に自信がないためかせわしなく左右に展開を急ぎ状況を苦しくすることが多い。一方CBでは1対1が今一歩。そう考えると、脚力はあるから、左利きを活かせる左DFは向いているのかもしれない。先日のホンジュラス戦でも無難なプレイを見せていた。一方の旗手は、いかにも静岡学園出身らしい技巧が魅力。オーバラップよりも、しっかりしたキープ力から動き出しのよい中盤や前線の選手に正確なグラウンダのパスをピタリ通せるのが魅力だ。
 ユース時代から高い評価を受けていたこの2人が、それぞれ本来とは異なるポジションで五輪代表にたどり着いたのはおもしろい。ここがピタリとハマってくれるかどうかが、どの色のメダルまで到達できるかを左右するように思える。うまくいけば、カタールW杯に向けてこれほど明るい話題もないわけで。

4. 中盤後方の輝きと層の薄さ
 今回の五輪代表の最大の魅力は強力なドイスボランチにある。往時の遠藤保仁を彷彿させファルカンやピルロの域に近づいてくれないかと思わせる若き将軍田中碧。日本にもマテウスやドゥンガのようなプレイを見せる選手が登場したかと思わせてくれる遠藤航。この2人の輝きを他国に見せびらかすだけでも、今回の五輪は楽しみ。
 決勝戦の勝利まで、いかにこの2人を消耗させずに戦い抜けるか。ただでさえ消耗の激しいポジションなのだし。ところが、この2人の控えには板倉しか準備されていない。中山や旗手がいるが、どちらかは左DF。また、中山はこのチームで中盤で起用されても、あまりよいプレイを見せたことはない。もちろん、板倉はとてもよい選手で、球際の強さと常識的だが正確なパスと空中戦の強さは格段、頼りになる選手だ。昨シーズン、オランダリーグ中堅どころのフローニンゲンでフル出場した実績もすばらしい。
 森保氏としては、板倉、中山、旗手で、ここを回せると考えているのだろう。ただ疑問はどうしても残る。4-2-3-1の布陣で戦うとすると比較的消耗の少ないCBは2人枠に対し4人(加えて板倉)、対して運動量を要求される守備的MFが2人枠に対し3人と言うのは心配になってしまう。当初の18人登録時ならばさておき、たとえば、渡辺皓太、松岡大起、高宇洋あたりをメンバに入れておけば田中碧を休ませたり、敵の布陣や状況により攻撃的MFを1枚削り4-3-3に切り替えるやり方もとりやすかったと思うのだが。今更言ってもしかたがないが、アルゼンチン戦での渡辺を除き、この手のつなぎや拾うのがうまい中盤タレントがほとんど選考されず、板倉や中山のようなユーティリティ系の選手を優先して試していたのが仇とならなければよいが。まあ、この手の大会は、このように監督の選手選考に文句を言うのが楽しいのですが。
 もっとも、大会の勝負どころで、冨安を航と碧で中盤を組んで来たりしてねw。

5. 最前線
 冒頭で、不謹慎ながら1年延期が日本に幸いしたと語ったが、その最大の恩恵はFW陣だろう。
 上田綺世も前田大然も林大地も、既にJを代表するストライカだが、五輪が1年前だったら、3人ともまだまだの存在だった。それぞれ紆余曲折があったが、昨シーズンを通した活躍があって、ここまでの評価を得たのだ。
 林はホンジュラス戦もスペイン戦でも、強引にシュートに持ちだす場面と、味方を使う選択がよかった。あれだけ精力的に守備を行いながら時にシュートまで持ち込める。北京五輪後に一気に成長した岡崎慎司を思わせる活躍だ(そして技術は岡崎より上に思える、だからと言って岡崎より点をとれるかどうかはまったく別な話だが)。
 前田は、その格段のスプリントをリードした試合で前線で役立てる役割となりそうで、ホンジュラス戦の3点目のような活躍が期待できる。スペイン戦ではサイドMFに起用され、よく機能していた。
 そして、上田の低く沈む強いシュートが格段なのは言うまでもない。しかも、このストライカの魅力はそれだけではなく、位置取りの巧妙さや、ラストパスに合わせる加速のタイミングなど多岐に渡る。
 この3人は協力して金メダルを目指し、大会終了後A代表の数少ないFW枠を大迫勇也らと争うことになる。

6. 堂安律と久保建英と三笘薫
 落ち着いたキープから、読みづらいパスとシュートを操る堂安律。素早く正確なボールタッチで敵DFを抜き去り、強烈なシュートが打てる久保建英。魔術師のような緩急で敵DFを抜き去り、落ち着いたシュートを決める三笘薫。攻撃的MFには、このきらめく3人に加え、日本人には珍しく長駆した後さらに加速が利いて縦にえぐる突破が格段の相馬勇紀、鋭いドリブルを仕掛けながら正確なラストパスを繰り出せる三好康児もいる。

 一方で、堂安、久保、三苫と並べると次々と相手を崩せそうな気がしてくるが、この3人を並べたジャマイカ戦では連係の妙は見られなかった。これは、久保と三笘がまだ十分成熟していないためだ。
 三笘はフロンターレでプレイするように自分得意の間合いに入りたい選手。ところが真ん中の前田や久保がどんどん左に流れてくると得意のドリブルができない。結果前線でキープしてもはたくばかりで、あの魔術師ドリブルが発揮できない。三笘の選択肢は2つある。久保に「流れてくるな」と言うか、久保が流れたら中央に位置取りする(ジャマイカ戦で上田にスルーパスを通したように)、それを主張しなければ本当の超一流選手には届かないのではないか。
 一方の久保は、誰に何を言われても気にせず、当面は天井天下唯我独尊を貫くのだろう。久保はフィジカルも強いし守備もさぼらない。けれども、一度ボールを持つと(いや正確に言うとボールをもらう動きをする時から)、自分本位のプレイを選択する。でも、それがよい。強引に自分のリズムでドリブルし、シュートまで持ち込み、それなりの確度で決め切るのだから。最近の久保のプレイを見ていると、本田圭佑的な雰囲気を感じるw。まだ20歳、繰り返すがそれでよいのだ。もちろん、強引に行き過ぎてボールを奪われ、敵の速攻を許すリスクもあるのだが、それも経験と割り切るべきか。
 もちろん、森保氏が選手配置に工夫するやり方もあるはず。例えば、3トップにして左ウィングに三笘を起用する。板倉か旗手か冨安を中盤に起用し、右ウィングに堂安。あるいは堂安を中盤に下げ、右は相馬、前田、橋岡など。つまり、久保をベンチにおいて、勝負どころで起用するとか。

7. 結びに代えて
ホンジュラス戦後半の攻めあぐみは貴重な失敗経験となった。2-0で勝っているのだし、ゆっくりボールを回したいところだった。ところが中盤や最終ラインから中央に拘泥した縦パスが通るのだが、後方からのサポートが遅れているにもかかわらず。久保を中心に前に前に急ぎ過ぎ簡単にボールを奪われ続けた。
 高温多湿、中2日の価格な6連戦を勝ち抜くためには、押し上げが利かなくなったり、リードして無理する必要がなくなった時間帯、逆にリードを許し敵が多人数で最終ラインを固めてきた折は、ゆっくり落ち着くのが肝要。そしてこのチームには20代前半で、そのような攻守のリズムを中盤で、適正に操れそうな田中碧と堂安律がいる。2人が、あのホンジュラス戦後半の失敗経験を活かすことができるかどうか、それが金メダルに到達できるかどうかを左右する。
 厳しい環境下での大会、地元日本に圧倒的有利にはたらくはず。各選手が大会を通じ着実に成長し、最高の成績を収め、カタールワールドカップの礎を築いてくれることを期待してやまない。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月25日

酒井宏樹のJリーグ復活と五輪代表

 酒井宏樹が浦和レッズに移籍するとの報道が、もっぱらだ。さらに五輪代表オーバエージとして、酒井の他に、吉田麻也と遠藤航が確定とのこと。この移籍と五輪代表確定、野次馬としては、大いに楽しみでもり、突っ込みどころも感じる。
 まず、浦和の右サイドバックには、圧倒的な存在感を放っている西大悟がいる。西は鹿島で長年活躍し今シーズン浦和に移籍、酒井よりも年長の名手だ。もちろん、酒井も西も経験豊富なタレントで、他のポジションもこなせるから併用も可能だろうが贅沢な話ではある(そして、この2人が併用され、売り出し中の小泉佳穂に使われ、キャスパー・ユンカーにラストパスを通す場面など、想像するに楽しくなってくる、もちろん我がベガルタ戦以外でだが)。
 一方五輪代表も、このポジションはよい人材が多い、オランダで活躍する菅原由勢、昨シーズンまで浦和の右サイドで活躍していた橋岡大樹(橋岡がこのオフに欧州を志向せず浦和での活躍を選んでいたら、西や酒井がどのような選択をしていたのかは、楽しい思考実験だが)、大分から横浜Mに移籍し中盤起用などで幅を広げている岩田智輝、最近負傷離脱しているようだが新潟、鳥栖で順調に経歴を積み今期清水に移籍した原輝綺。敢えて、オーバエージをこのポジションで起用するのが、適切な策なのかどうか。
 もっとも、東京五輪のCOVID-19影響による1年延期により、五輪代表の強化は様変わりしている。この1年で、いわゆる五輪世代の選手が、次々に大化けしているからだ。冨安健洋と堂安律を別格としても、J屈指の名手に成長した川崎の田中碧と三笘薫、Jでボコボコ点をとっている前田大然や上田綺世、格段の守備を見せている瀬古歩夢、オランダで相当な活躍をしていると言う板倉滉など。そうこう考えると、いずれのポジションにも良好なタレントがいるから、ポジション的に薄いところを強化する必要はないのかもしれない。
 疫病禍となる前の五輪代表を考えると、強化の不手際でまったくチーム作りができていなかった。19年11月に実施したコロンビアとの強化試合は、堂安や久保建英を呼び戻しベストメンバ風で戦ったが、中盤後方の弱さを徹底して突かれ惨敗。その後、20年1月のU23アジア選手権は、各選手の覇気のないプレイ振りと、首脳陣の工夫のない采配で惨敗。誰が定位置をつかんでいるかもわからないほどの窮状だった。
 ところが、疫病禍による五輪の1年延期で流れが変わった。どうしても日本のサッカー界は、ユース世代(Jユースだろうが高校だろうが)と大人世代の断絶が大きい。しかも、好素材であればあるほど、J1の強豪に加入するケースが多いが、そうなると試合出場の機会が減ってしまい、伸び悩むタレントが多いのだ。本来であれば、本当の好素材は、Jのクラブユース所属時から、J2やJ3の大人のチームにレンタルされ、厳しい環境での経験を積むことが望ましいのだが。しかし、疫病禍により、皮肉なことに高卒5年目の選手の多くがJで大活躍。大学を迂回していた三笘や上田に代表されるように、多くの選手がしっかりとした大人の選手に成長した。おそらく、疫病禍がなく、2020年に五輪が行われていれば、非常に厳しいチーム作りを余儀なくされていたことだろう。しかし、森保氏と横内氏は、良好なタレントを自在に使うことが許されている。事実上、ぶっつけ本番ではあるけれど。
 そう考えると、地元五輪では、純粋に最強チームとなるべく最高のオーバエージタレントを選考するのが適切に思えてくる。なるほど、吉田、遠藤、酒井は欧州での経験も格段、精神的にも頼りになる格段なタレントだ。彼らに匹敵する好調のタレントとしては大迫勇也、南野拓実、伊東純也あたりが考えられようが、短期決戦の大会、守備の安定を考え後方のタレントを揃えるのは理解できる施策だ(ゴールキーパに経験豊富なタレントを選考すべき、と言う議論はあるかもしれないが)。中でも酒井は、歴代の日本代表選手で、中村俊輔と長谷部誠と並び欧州で最も実績を残した日本人選手だと思っている。ネイマールさえ封じた粘り強く激しい守備、柏時代から定評あった前進のタイミングと好クロス、ロシアでも記憶に新しい大柄な体躯を活かしたスペースカバー。もちろん百戦錬磨の吉田も、ブンデスリーガ屈指のMFと言われる遠藤も格段なプレイを見せてくれるだろう。
 事実上ぶっつけ本番の五輪代表は、来月ガーナとジャマイカと戦い、さらに大会直前に2試合(うち1試合はスペインとのこと)。まずはガーナもジャマイカもよい状態で来日し、よい強化試合となることを祈るとするか。まあ、ロシアワールドカップが典型だが、急ごしらえのチームがうまく行くこともある。五輪が本当に開催されるのだったら、酒井を含むこの豪華なメンバで黄金のメダルを獲得することを期待したい。先日、アルゼンチンに快勝したように、選手の能力には疑いがないのだから。それにしても、よい時代になったものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:44| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月30日

東京五輪代表チーム、めでたくアルゼンチンに快勝

 アルゼンチンを迎えての東京五輪強化試合。味の素での初戦の0-1の敗戦後、今日は3-0での快勝。
 何より、この難しい疫病禍下に、よい準備試合を企画した関係者に敬意を表したい。いわゆるインタナショナルマッチデイをうまく使って、本腰で金メダルをねらっている世界最強国を招聘。双方とも強化が難しい中、欧州と自国の選手を集め、2試合180分間強化試合を行えた。そして、我々サポータも、Jやアルゼンチンや欧州で世界最高峰をめざす野心的な若者たちの奮闘を楽しめた。
 初戦はアルゼンチン各選手は長旅の影響をあまり感じさせず、球際の強さを発揮。日本はアルゼンチンにかまえられると、単調なロングパスや強引なドリブルを目指すことが多く、攻めあぐんだ。加えて、アルゼンチンの4DFの粘り強さは相当なもの、スコアこそ0-1だったが完敗だった。

 ところが今日の第2戦は状況が一変。立ち上がりから、日本はハイプレスでアルゼンチンに自由を与えない。アルゼンチンもさすがで、激しいチェックを受けて立ち、球際の強さと各自の前進力で対応、見応えのある試合が展開される。
 そう言ったせわしないくらいの試合で、圧巻だったのは田中碧。22人の若者の中で、ただ一人圧倒的な存在感を見せた。アルゼンチンの寄せが厳しいと、ペアを組んだ板倉なり、両サイドDFの古賀、原に早々にはたき、巧みにリターンを受ける。フリーで前にスペースがあればスッとドリブルで前進し、追いすがるアルゼンチン選手を押さえるコースを取り、ファウルを誘う。林や久保や相馬がよい位置取りに立つと素早く正確なパスを通す。
 前半終盤の先制点。CBの瀬古がまったくのフリーで狙いすましたロングフィードから、売り出し中の林が見事な動き出しで抜け出しGKと1対1、ワンフェイントいれて見事なグラウンダの一撃。アルゼンチンは瀬古にプレッシャをかけられないだけでなく、最終ラインも中途半端に上げるでもなく、2CBのカバーリングもおかしかった。これは、その直前の田中碧がしかけた崩しがポイントだった。冴えわたる碧は、中盤で4人に囲まれながら、巧みな抜け出しから、バイタルの食野(だと思った)にいやらしい縦パスを通した。アルゼンチンDFは、この日本の攻撃をかろうじてかき出したが、それを2CBの町田と瀬古が拾ったわけだ。これだけ、中盤でバランスが崩れれば、前線のプレスも、最終ラインのラインも、そりゃうまくいかんわな。
 今日の碧のプレイで唯一不満を感じたのは、後半アルゼンチンのストライカのガイチにミドルシュートを許した場面。自陣バイタル近くで、バルガスとガイチとのからみを止め切れなかった。あそこはキッチリと守って欲しかった。かつて、ベッケンバウアーやファルカンやレドンドやピルロは、あのような局面で、絶対にやられなかったよ。
 来年のワールドカップ本大会、遠藤航、守田、田中碧のトレスボランチは確定なのではないかと思わせるプレイ振りだった。遠藤爺の再来と言うのは簡単だが、遠藤爺が日本の中盤に君臨したのは20代後半だった。碧はまだ22歳。まこと、めでたいことである。
 まあ、Jリーグでの活躍を思い起こせば、この程度のプレイは当然なのかもしれないけれど。

 碧の存在だけで、初戦とはまったく異なる展開となった。そのため、五輪に向けてのメンバ選定と言う視点では、この2試合目に起用された選手が、圧倒的に有利なことになってしまった。先制点を決めた林、原、瀬古、町田、古賀の4DFのタフな戦い、食野と相馬の献身。

 ここで注目すべきは、2試合連続スタメン起用された久保と板倉である。
 久保はプレイが雑なことが気になった。試合が終始日本ペースで進んだこともあり、アルゼンチンの守備がかなりラフ。さらにこの日お主審が手を使うプレイに甘いことはあって難しい状況だったことは理解できる。しかし、プレイを常にトップスピードで行おうとし過ぎるのだ。例えば、前線に残っていて後方からフィードを受ける場面で、敵DFのプレッシャからのがれようとして斜め後方に急いでダッシュし過ぎて、結果ボールがうまく収まらない。持ち前の変化あふれるドリブルやフェイント直後に、急ぎ過ぎるのか、パスが非常に雑になる。後半序盤、久保が見事に右サイドを崩し、相馬に出したラストパスの場面(直後相馬がシュートをポストに当てた)。ラストパスのボールは、相馬がトラップしやすいやや前方ではなく、僅かに後方に流れ、相馬は加速をシュートに乗せられなかった。とにかく、もっと丁寧にプレイしてほしいのだが。
 考えてみれば、スペインリーグでも同様な印象がある。右サイドで相手を見事に出し抜いた直後に、味方へのパスが決まらない場面が多い。まあ、スピードと丁寧さのバランスは、どのような選手でも永遠の課題。まして、久保はまだ19歳で、このチームの中でも若いのだからしかたないのかもしれない。
 ただし、この五輪代表でFWと攻撃的MFの議席は6枚程度だろう。そのうち1枚はオーバエージに使われる可能性がある。そして、FWは先制点を決めた林、今回もハードワークでがんばった田川。そして、負傷で選考外になったがJで実績を残している上田と前田がいる。さらに攻撃的MFは、(このチームは田中碧のチームなので、同じクラブの)三笘の選考は有力。そうなると、久保は堂安、食野、三好、相馬らと僅かな残り議席を争うことになる。
 などと文句を言っていたら、CKから板倉に見事な2アシスト。マスコミがキャーキャー騒ぐのはさておき、やはりこの男は何か持っているのだろうな。
 一方今日腕章を巻いた板倉。オランダでかなりの実績を残したとのことで相当期待していた。しかし…
 初戦は失点時に、バルガスに簡単に抜かれた淡泊な対応に失望した。さらに、時折やらかすミスパスも相変わらず。これでは、ベガルタ時代に再三見せてくれた「俺たちの板倉」と変わりないではないかと、何とも嬉しいような悲しいような何とも微妙な気持ちを抱いたものだった。
 2戦目は、すべてがうまく行った。田中碧と組んだボランチでは、碧に自由にプレイさせるように、位置取りを修正しながら、目の前の敵を刈り取ればよい。板倉はその献身を90分継続し、東京五輪本大会で田中碧と中盤を組む第一候補になってしまった。しかも、CKから2得点。セットプレイからよく点をとるのはベガルタ時代もそうだったから、やはり「俺たちの板倉」には変わりないのですけれど。

 と、まことめでたくアルゼンチンとの協会試合を終えたわけだが。では東京五輪(開催されるとしたらですが)への準備は順調と言えるかと言うと結構微妙に思う。
 元々、今回の五輪代表チームは予選がなく、さらにA代表との中途半端な混合強化を行なった事もあり、ベストメンバすら曖昧だった。そして、せっかく今回アルゼンチンを呼んだ強化試合を組んだが冨安、堂安、前田、上田らが不在。田中碧も1試合しかプレイできず、さらに今回選考外にもJで相当の活躍をしている選手がいる。このように厚過ぎる選手層から、どのように選手を取捨選択するのか。
 贅沢な愉しみだと、ここは素直に喜んでおくか。
posted by 武藤文雄 at 01:11| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月30日

五輪代表順調な強化

 五輪代表は、国内最後の強化試合、南アフリカ戦に4対1と快勝。
 このチームは、直近3階の五輪代表(アテネ、北京、ロンドン)と異なり、予選段階でしっかりとチーム作りが行われたと言う意味では、シドニー以来。したがって、いわゆるキリンチャレンジで、遠征で体調がよくないチームと戦えば、よい成績を収められるのは自明な事、快勝そのものは驚きではなかった。
 それにしても、1点目、2点目の得点はきれいだった。このチームのよさは、後方の選手が常に敵DFの裏を狙う姿勢を保ち、敵DFラインが揃わなくなったときに、この1、2点目のように、両翼をうまく使った崩しができることにある。
 守備については、植田を軸にした中央の強さは間違いないが、時に中盤守備で几帳面さが失われることが課題か。まあ、このあたりは、若さもあるし、しかたがないところもあるのだが。

 ともあれ、室屋、中島と言った、予選後に負傷した選手がよいプレイを見せたのは嬉しかった。もちろん、たった1試合よいプレイを見せたからと言って、短期決戦を戦い抜ける体調まで戻っているかは別問題だが、2人ともメンバ入りする可能性は高いのではないか。それにしても、今回のチームは負傷者の多さが、大きな悩みとなっている。1月に予選が行われたため、各選手がオフをしっかりとれなかったためだろうか。
 余談ながら、中島と言う選手は、どうしてFC東京で出場機会をほとんど得られないのだろうか。この選手は、いわゆる華があるタイプ。守備をサボるわけでもないし(もちろん、課題はあるが)、よくわからない。確かにFC東京の攻撃ラインは、優秀な選手が多数いるのは確かなのだが。

 予選で中核として機能していた植田、矢島が、この数ヶ月で一回り成長していたのも、頼もしかった。そして、この2人と、この日負傷で欠場した遠藤の3人が安定していること、CBの岩波、奈良の負傷が長引いていること、この2点を考えると、オーバエージで選考したのが、塩谷、藤春、興梠と言うのも、よく理解できる。そして、上記した室屋と中島の復活により、かなりバランスがよいチームとなりそうだ。
 あとは、いかに各選手の体調を揃えられるかだろう。特に、負傷上がりの選手や、欧州でプレイする久保と南野の状態が気になるところだ。


 一昨年のワールドカップ、昨年のアジアカップと、代表チームの苦杯が続いたこともあり、日本サッカー界全体が、「異様な自信喪失」となっている。40年以上、日本サッカーに浸り切って今なお不思議なのだが、ちょっと勝つと「ワールドカップ優勝も夢ではない」となり、ちょっと負けると「この世の終わり」となるのが、この国のサッカーマスコミの特徴なのだ。
 だからこそ、このチームには、自信回復のきっかけとなる、リオでの鮮やかな戦いを期待したいのだ。まあ、手倉森のオッサンの手腕は確かなのはわかっている。わかってはいるが、(過去から再三語っているように)凝り過ぎて失敗するのではないかとの不安が、また愉しい。
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2016年02月02日

ドーハの歓喜を振り返って

 堂々と五輪出場を決めてくれた本大会。その最後が韓国に対する勝利なのだから、こたえられない。そして、韓国への勝利が大きな快感なのは言うまでもないのだが、それも2点差をひっくり返しての逆転劇なのだから、格段の快感だった。そもそも、A代表を含めた日韓戦で、2点差の逆転劇そのものが、勝ちでも負けでも記憶にないのだし。
 誠にめでたい大会だった。

 ただ、決勝戦の試合展開はとても奇妙なものだった。
 手倉森氏は、「試合後後半開始早々に2点差とされたのは、自らの采配ミス」と語ったが、私が見るところ、その後に、それ以上の危険な采配を行い、完全に命運を絶たれるところだった。一方、申台龍氏の2点差までとするまでの采配は水際立っていたが、同点となってからの采配は愚かを通り越し、あり得ない稚拙さだった。
 いずれも最高級の歓喜を味わった今となっては、愉しい思い出ではあるのだが。

 開始早々、強烈なミドルシュートを打たれ櫛引がかろうじてはね返したこぼれ球を決められるがオフサイドに救われる。前後半問わず、序盤の守備がまずいのはこのチームの悪癖だ。ただ、この場面を典型に、この試合では、韓国FWに4-3-3の特長を活かされ、日本DFとMFの中間でボールを受けられてしまい、好機を再三作られることとなる。
 その後は日本のパスが回るようになる。しかし、久保、中島、両サイドバックの山中、室屋が、中盤を抜け出したところで、強引にラストパスを狙ってしまい、韓国の最終ラインも人数が揃っていることもあり、崩せない。久保と中島は、そう言った強引さに魅力があるのは確か。そして、山中、室屋まで同調したのは、決勝進出の「勢い」だろうか。ただ、韓国守備陣があれだけ揃っているのだから、もう少しゆっくり攻めたいところだった。実際、久々に起用された大島が、丁寧にさばいていたので、もう少しボールを集めたいところだったのだが、「大島抜き」に各選手が慣れていたせいか、やや「勢い」に乗り過ぎ、攻撃が単調になってしまった。
 そして、日本は敢え無く先制されてしまう。左サイド(以降の左右はすべて日本から見て)で、中島がやや甘い守備からサイドチェンジを許す。右サイドではよりボールに近かった室屋がマーカに気をとられ、矢島に対応を任せたことで、比較的簡単にクロスを上げられてしまう。その折り返しに、中央に残っていた岩波も植田も完全なボールウォッチャになってしまった。確かに両翼守備には問題があったが、屈強を誇る日本の2CBは欠点を露わにしてしまった。
 その後も、冒頭に述べた4-3-3対応がうまくいかず、頻度は少ないが幾度か好機を許しながら、何とかしのいで前半を終えた。遠藤も大島もしっかりと上下動して中盤守備を機能させていただけに、室屋と山中が勇気を持って敵FWへ応対していればよかったと思うのだが。

 後半開始より、手倉森氏はオナイウに替え、原川を起用、こちらも4-3-3に切り替える。敵FWを押さえると共に、攻撃の急ぎ過ぎを改善しようとしたのだろう。ところが、あろうことか遠藤が完全に敵FWに出し抜かれ、その対応に岩波が出遅れたところから、2点目を失ってしまう。
 けれども、苦しい状況になっても、気持ちが萎えないのは、このチームの良さだ。失点直後から、原川を入れた効果が次第に発揮される。大島と原川が、丁寧にさばき、日本がいやらしくボールを回せるようになったのだ。そして矢島と室屋、中島と山中が、それぞれ両翼で起点を作れるようにもなり、日本がペースをつかんだ。2点差は苦しいが、このペースでヒタヒタと攻めれば、前半ハイペースで飛ばしていた韓国は疲弊するのではないかと期待は高まった。
 ところが、その好ペースを手倉森氏は自ら崩してしまう。大島に替えて、攻撃の切り札浅野を投入したのだ。確かに、2点差である以上、早い段階で手を打つ必要があり、ズルズルと時間が過ぎてしまう状況を打破しようとするのは一案で、久保と浅野を並べる策は理解できる。では誰と替えるかだが、イラン戦でその驚異的なスタミナと終盤での能力を見せつけた中島と、ボールを引き出す能力が高い矢島を残すとずれば、消去法から大島が選択されるのはわからなくはない。ただ、全軍で一番視野が広い大島を外してよいものなのか。ともあれ、日本は大島に替えて浅野を投入、4-4-2に戻した。
 この交代劇は、大島不在以上のマイナスを日本に与えることとなった。浅野投入後の約5分間、また韓国FWを捕まえられなくなり、幾度も決定機を許すことなったのだ。櫛引の好守もあり、何とかしのいでいたが、ここで3点差にされたら、いくら何でも勝負は決まっていただろう。
 ところが、何が幸いするかわからない。日本が自らペースを崩したこともあってか、韓国の守備陣がズルズルとラインを上げ、しかも中盤のプレスが甘くなってきたのだ。それを逃さなかった矢島と浅野の狡猾な動きで、日本は1点差に追い上げる。矢島のスルーパスは、タイミングも強さも絶妙だったが、浅野の抜け出しの速さとシュートの巧みさも完璧だった。ここで韓国のDF陣は、浅野の「縦の速さ」に驚いたようで、明らかにパニックに陥る。そして、左サイドの崩しから、完全に矢島を見失う。あっと言う間の同点劇。
 まあ、典型的な「肉を切らせて、骨を断つ」作戦がうまくいった状況となった。試合終了後、手倉森氏が嬉しそうに、この場面を自慢しながら振り返るのかと思ったが、氏の発言は「もう一度相手の攻撃をしのいでから、押し出ていこうかと思っていたら、タイミングが悪くて2点目を取られた。そこから2トップに戻すまでは、ちょっとこてんぱんにやられたなと。」と言うものだった(出展はこちら)。手倉森氏は、興奮のあまり記憶が違っているのだ。「こてんぱん」状態になったのは、氏が2トップに戻してからだったのだが。
 手倉森氏がすばらしい監督であることは、ベガルタサポータの私たちは、誰よりわかっている。けれども、彼が万能の神ではないことも、私たちはわかっている。
 それでも選手達は、我慢を重ね、巧みに敵の隙を突いて追いついたのだ。この監督の采配ミスの苦しい時間帯、選手達が粘りで追いついた場面は感動的だった。

 ここで、日本に不運が襲う。テレビ朝日のピッチアナウンサ情報によると、矢島が何がしかコンディションを崩したと言うのだ。手倉森氏は2対2の状況で、韓国が1人も交替していないにもかかわらず、3枚目のカードを切ることを余儀なくされた。これは最悪の事態だ。韓国は、当方の選手の疲労を見ながら、自在に交替策を駆使して、仕掛けることができる。
 ところで。現役時代の申台龍は、技巧も判断力も優れ、とてもよい選手だった。ただ、どうにも代表運がなかった。日本で言うと、藤田俊哉的な位置づけだろうか。2-0となるまでは、申台龍氏の采配は冴え渡った。1点目は大きなサイドチェンジに対する日本CBの対応の拙さを突かれ、2点目は立ち上がりの悪さを狙われた。現役時代の忌々しさを思い起こす、最悪の快感。
 ところが。日本が3枚目の交代を切った後の、申台龍氏の采配は、正にお笑いものだった。大柄な選手を前線に起用し、パワープレイに転じてきたのだ。確かに前半からのハイペースで、韓国各選手に疲労の色は濃かった。けれども、今回の日本のCBが敵のパワープレイには滅法強いのだ。申氏の采配で、一気に日本は楽になる。
 そして、浅野。中島のパスも見事だったが、その鮮やかなターン。そして、冷静な左足シュート。

 堂々たるアジア王者に輝いた若者たちと、鮮やかな采配を見せてくれた手倉森氏に感謝したい。
 一発勝負の予選ゆえ、出会いがしらの事故による失敗が一番恐ろしかったが、手倉森氏は見事なマネージメントで、堅実に戦い切ってくれた。選手達も、その格段の高い戦術能力を見せ、手倉森氏の要求にこたえきった。
 イラン戦も、イラク戦も、確かに苦しかった。イラン戦はバーに救われた場面もあった、イラク戦も技巧あふれる攻撃に苦しむ場面は少なくなかった。けれども、選手達は粘り強く戦い、格段のコンディショニングの成果もあり、試合終盤は完全に相手を追い込み、完璧に勝ち切った。この準々決勝、準決勝、この2試合に同じ準備状況で再度試合に臨むとしても、相当な確率で日本は勝つことができるのではないか。
 そして、韓国戦。選手達に甘さも確かにあった。しかし、彼らは監督の采配ミスなどを飲み込み、堂々と勝ち切ってくれた。
 過去20年来、A代表も五輪代表も、日本はアジアで格段の成績を収めてきた。しかし、それらの歓喜は、必ずしも圧倒的な攻撃的サッカーで得たものではない。中盤を圧倒して快勝の連続で得たものでもない。苦しい試合を、各選手の秀でた判断力と精神力で粘り、敵の僅かな隙を突いて攻撃のスタアの能力で得点し、拾った歓喜は数知れない。今回のチームの歓喜もそれと同じだった。もちろん、局面局面で久保や浅野や遠藤や室屋が見せてくれた、「格段の個人能力」はすばらしかったが。
 手倉森采配の輝きも格段だったが、各選手の能力が存分に高かったことを改めて強調したい。ただし、すべての勝負がこれからなのも言うまでもない。
 このすばらしい23人は、まず本大会に向けてのサバイバルが待っている。リオ本大会出場枠は、わずか18。そこにオーバエージが加わる。さらに、今大会負傷で登録されなかった中村、喜田、野津田、金森ら、Jで実績を誇る関根、川辺、小屋松、鎌田、前田らが、その競争に加わる。
 厳しい競争を勝ち抜いた若者が、リオで美しい色のメダルを獲得し、さらにロシアでの歓喜に貢献してくれることを期待したい。
posted by 武藤文雄 at 00:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月22日

ベガルタサポータのみが味わえる快感

 結果も内容も上々に1次ラウンドを突破した五輪代表。勝負はこれからだが、手倉森のオッサンのドヤ顔を見るだけで、嬉しくなってくるのは、ベガルタサポータ特権だな。

 もちろん、贅沢を言えばキリがない。例えば、手倉森のオッサンが自慢する守備だが、結構、粗も多い。
 まず、つまらない反則や、軽率なミスパスなど、各選手が唐突にビックリするようなミスをすること。たとえば、サウジ戦後半、植田が敵FWと競ってヘッドしようとした際に手が前に出てファウルをとられた。同じく、山中がペナルティエリア内でミスパスでボールを奪われた。この他にも、この3試合、多くの選手が、自陣ゴール近くで「おいおい」と言うミスをしている。各選手が、まだまだ若いと言うことだろうか(「若さ」が故のミスについては、講釈を垂れ始めるとキリがないので、別な機会に)。
 また初戦北朝鮮戦で幾度も危ない場面を作られた。バックラインが下がってしまったのがまずかったのは確かだ。しかし、岩波と植田は、北朝鮮のロングボールはしっかりとはね返していた。問題は、引き過ぎたこともあり、両翼に数的優位を作られ、ダイレクトパスやサイドチェンジを許し、精度の高いボールを入れられたことだ。
 このオッサンがベガルタを率いていた際にも、しばしばこのような場面が見られたな。うん、懐かしい。ところが、状況が悪くなりバックラインが下がったときはサイドMFが献身的に上下動をして、対処していたのだ。まあ、梁勇基と比較すれば、南野はまだまだ未熟と言うことか。
 ともあれ。上記のような失態があっても、失点はあの愉しいPKからの1点のみ。これは、各選手の切り替えの早さが格段な事による。チームメートがミスしたら、すぐに切り替えが利くのは大したものだ。国内の各若年層育成組織が育て上げたエリート達に、この意識をたたき込んだは、このオッサンの功績だな。
 緊張感あふれる1次ラウンドの3試合の経験で、各選手は成長し「おいおい」ミスは減っていくことだろう。南野はサウジ戦の終盤は的確な守備も見せ、北朝鮮戦のダメダメから脱却した。そうこう考えると、あの切り替えの早さがあれば、守備は相当計算できそうだ。

 では攻撃。
 このチームの前線の個人能力は相当高い。久保は常に敵ゴールを狙い、狡猾な位置取りと、ふてぶてしいシュートが格段。浅野の加速からのシュートの鋭さは、毎週Jリーグで感心させられている。南野のペナルティエリア内の技巧とシュートへの持ち込みは言うまでもない。気がついてみると、攻撃は相当強力ではないか。かつての五輪のFWを思い起こす。アトランタは小倉と城、シドニーは柳沢と高原、アテネは達也と大久保、北京は豊田と岡崎、ロンドンは大津と永井。そうこう考えると、久保、浅野、南野の組み合わせは、従来と何ら遜色ない、いやこの時点での迫力は優れているように思えてくる。
 問題は彼らに前を向かせ、己のイニシアチブでプレイさせるスペースを作れるか。
 そして、これが作れるのだ。大島の視野の広さ。遠藤の責任感あふれるボール奪取とパス出し。原川の丁寧な展開と持ち出し。矢島の引き出しと狙い済ましたラストパス。井手口の格段のボール奪取と正確なつなぎ。三竿の強さと高さ。そう、当たり前に当たり前の選手選考を行えば、何も問題ないのだ。

 大会前に様々な不安が語られた。けれども、結局のところ、よいチーム、よい選手を所有できている。イランも、イラク(UAEかもしれない)も、厄介だろう。しかし、これらの難敵とに対し、従来以上に戦えるチームができあがってきた。よい素材を育成する、日本中のサッカーおじさん、おばさんの貢献も何よりだ。そして、手倉森のオッサンもさすがなのだろう。
 丹念に、丁寧に、執拗に戦えば、リオ出場権獲得の確率は相当高いはずだ。

 ただし、不安もある。手倉森のオッサンが「凝り過ぎて、策に溺れるのではないか」との不安だ。
 ベガルタ時代、おのオッサンは、少ない戦闘資源を丹念に鍛え、格段の成績を挙げてくれた。この俺たちがACLまで行けたのだよ。このオッサンには感謝の言葉もない。そして、少ない戦闘能力を存分に発揮するためには、様々な駆け引きが必要だった。
 この五輪代表チーム、このオッサンは、ベガルタ時代には夢にも思えなかった、豊富な資源からの選択の自由を堪能している。そして、この3試合、その成果を存分に見せてくれた。期待通りの手腕である。3試合で、ほとんど全選手を起用し、極端に消耗した選手もいないはずだ。よい体調で、2次ラウンドを迎える。よほどの不運がなければ、イランとイラク(UAE)を破ってくれることことだろう。
 けれども、思い起こせば、このオッサンの駆け引き倒れを、幾度経験したことだろう。スタメンで使うべき選手を控えに置き、負傷者などの思わぬ展開で、よい選手を使い切れなかったこと。「展開は悪くない」などと語りながら、豊富な交代選手を起用せぬまま、消耗した選手のミスで失点すること。
 そう、不安なのだよ。このオッサンの「すべて計算通り」と語るドヤ顔が。例えば、ローテーション起用に拘泥するあまり、今大会、浅野も南野も、まだ得点がないと言う事実。この2人が、今後つまならいプレッシャにつぶれなければよいのだが。ついつい、このような余計なお世話を語りたくなることこそ、このオッサンの愉しさなのだが。

 うん。この不安感。ベガルタサポータのみが味わえる異様な感情。どうだ、うらやましいだろう。
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2014年10月09日

手倉森ジャパン、アジア大会敗退

 ちょっと遅くなったがアジア大会について。手倉森監督率いる五輪代表候補チームは、地元韓国に苦杯、ベスト8に終わってしまった。

 考えてみれば。今大会、イラクと韓国に敗れた訳だが、両国とも日本とは異なるレギュレーションで選手を集めていた。
 イラクは、2007年アジアカップのスーパースタアのマフムードをオーバエージで起用。2007年大会で、最盛期の高原と大会トップストライカの座を争い、決勝で(日本が苦杯した)サウジを叩き潰したマフムード。このような要がいるとチームは強い。実際今回のイラクは、チーム全体が、まずマフムードにボールを集め、あるいは集める振りをして意表を突く、と言う攻撃の道筋が完全に整理されていた。例えば、今回の五輪代表候補チームに、寿人なり豊田を加えていれば、全軍の攻撃の道筋が明確になり、格段に強力なチームを作る事ができていた事だろう(そして、実績面でマフムードは寿人や豊田の上を行く)。この差は、どうしようもなかった。
 韓国は、大会規定に則り、U23+オーバエージでチームを構成。U23とU21の違いは大きい。例えば、日本が今回U23でチームを作ろうとしていれば、柴崎、宇佐美、武藤嘉紀、昌子と言った面々が選考範囲内となる。もうこれだけで、今回の日韓の戦闘能力差が「仕方がないもの」と認識される事だろう。しかも、韓国はここまでの試合で日本をよく分析。特に常時CBをしっかりと2人残し、鈴木武蔵を厳しくマーク。武蔵も無理な前進を繰り返してボールを失い続け、苦境を継続させてしまった。もう少し、判断力を磨いて下さい。
 実際、イラクも韓国も、戦闘能力では明らかに当方より、一枚上だった。そして、素直にその両国に2敗してしまった。残念と言えば残念。たとえ、いかに敵が格上だとしても、創意工夫で勝ち切るからこそ歓喜がある。いや、実際選手達はその格上相手に、相応には抵抗してくれた。イラク戦は守備の甘さはあったが、勇気あふれるパスワークで終盤、イラクを追い込んだ。韓国戦は、イラク戦の反省が活きたのだろう、最終ラインが整然と韓国の単調な無理攻めをはね返し続けた。よくはやってくれたとは思う。

 もちろん、細かい文句を言い始めればキリがない。イラク戦の終盤猛攻時に、中島や野津田のシュートの雑さは残念だった。中島の精力的なフリーランはこのチームのストロングポイントだったが、この逸材は小柄なだけに得点力を磨く事はとても重要なはずだ。野津田には「左利きの天才肌選手は過去無数にいたよ、俊輔と本田以外にも」とだけ、言っておこう。
 韓国戦の大島のPKは、笑い話と言えなくもない。しかし、少なくともこの主審は、再三同様なファウルを取っていたのも確か。大島には、もう少し冷静にプレイして欲しかった。一方で、大島にこれだけの失敗経験を積んでもらう事ができたのだから、このアジア大会は大成功と言えるかもしれない。陳腐な言い方になるが、大島には自覚して欲しい。彼からすれば「神」としか言いようがない中村憲剛が、とうとう代表の定位置を確保し切れなかった事(もちろん、憲剛の物語は終わっていないのだが)、そして2歳年上の柴崎よりも高いレベルのプレイができなければ日本代表での定着もないと言う事を。

 などと、前途有望な選手に、思いをはせるのもまた愉しい。北京五輪時に、誰が「岡崎がブンデスリーガの得点王を争う」と予想できただろうか。
 
 負けたのは悔しいが、安堵感も感じている。イラクや韓国が、我々よりも有利なレギュレーションで選手を集めておきながら、我々が簡単に勝てるとしたら、それこそ大問題ではないか。
 考えてみれば、五輪アジア予選のレギュレーションも不思議と言えば不思議。本大会に合わせ、オーバエージを加える事を許可しても矛盾はないはず。もっとも、そんなレギュレーションになれば、日程破綻している日本はオーバエージを選考できず、予選敗退のリスクが格段に高まろうが。まあ、そうなったら仕方がない。たかが五輪なのだから。

 そして何より。このチームを率いているのが、「俺たちのテグ」なのだ。テグの稠密さ、自己本位の墓穴、得点時の歓喜、苦境時の強がり。俺たちは皆、よくよくよく知っている。そして、「俺たち」の時とは、全く異なる素材の質の格段の高さ。単純な嫉妬だな。
 うん、何と、俺たちは幸せなのだろうか。
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2012年08月10日

韓国との3位決定戦を前に

 本来ならば、負ければ終わりの勝ち抜き戦、3位決定戦とは非常に微妙な存在である。ワールドカップでも、毎回何とも言えない試合が繰り返されている。ところが、五輪と言う大会は「銅メダル」と言う付加価値があり、結構な真剣勝負感が漂う。言うまでもなく、44年前には、かのクラマー氏が「銅の色もよい色だ」との名言を述べられ、釜本大御大が2連発とあいなった訳だし。

 そこに韓国である。
 この厄介な隣国の宿敵と、世界大会で戦うのは、2回目。2003年のワールドユースの1/16ファイナル以来となる。今野や川島の世代である。あ、そうそう徳永も!あの気持ちのよい勝利の後、「今後、世界で幾度もこの対戦を見ることになるのだろうな」と、感慨にふけったのが、何とも懐かしい。
 ここは素直に喜ぼうと想う。この愉しかった大会の最後に、最高の娯楽が訪れてくれたと。だって最高ではないか、勝利した時の歓喜 、敗北した時の絶望。
 いや、当面の目標である2014年を考えても、この試合は、この若いチームにとって最高の経験となる。見事なエジプト戦までの成功体験、悔しいメキシコ戦の失敗体験、それぞれの後で、究極の成功体験を積む事ができるのか。それとも…

 敵には多くのJリーガがいるし、何より監督は、洪明甫氏。さらには、ベンチには、洪氏に請われてフィジカルコーチに就任した池田誠剛氏が。確かに先方は兵役免除と言う重要な要素はあろうが、巷騒がれるような殺伐とした戦いにはならないだろう。
 余談ながら、関塚氏と池田氏は早稲田大学時のチームメート、同じ学齢だが関塚氏が浪人したので後輩となる。
 激しく、厳しく、愉しく、そしてすばらしい試合を期待したい。そして、我々の若者の歓喜の銅メダルを。
posted by 武藤文雄 at 23:28| Comment(8) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月06日

2つの準決勝を前に

 男女とも堂々とベスト4進出。まことにめだたい。
 毎試合毎試合、しっかりと講釈を垂れたいのは山々なのだが、どうにも難しい状況だ。3日に2試合のペースで試合が行われ、しかも試合が深夜に及ぶ。特に午前1時キックオフの試合で、翌日が平日の場合は、試合前の仮眠が必須となる。さらに、ついつい他の競技にも気をとられてしまって、作文の時間が失われて行く。

 
 女子。準々決勝、ブラジルに終始攻め込まれたが、落ち着いて守り切った。
 序盤に攻勢をとられ、危ない場面も多かったが、そこをしのいだ前半20分過ぎから幾度も攻め込み、連続して好機を作る事に成功。その流れから得たFKを、澤が素早く蹴り、抜け出した大儀見が、しっかりと決めて、先制に成功。
 以降は、ブラジルの攻撃を冷静にいなす。岩清水、熊谷のセンタバック、阪口、澤のドイスボランチの読みはすばらしく、押されてはいたが、ほとんど危ない場面はなかった。
 そして、後半半ばには逆襲速攻から大儀見の好クロス、大野が冷静に決めて突き放し、そのまま逃げ切った。ブラジルの攻撃精度は、日本と並んで世界屈指だろうが、その攻撃を狙い通りに押さえ切ったのだから大したものだ。また、体調もここに合わせていたのだろう、終盤にはブラジル選手の多くは疲労から一杯の状態になっていたのに対し、日本の選手はしっかり走り切った。たとえば、1次ラウンドのスウェーデン戦と比較すると、選手達の体調がよいのは明らかだ。
 気になったのは、守備ブロックがしっかりしているが、サイドバックが絞り過ぎの場面が見受けられた事。特に鮫島は(日本の右から左、つまり逆サイドから同サイドに)サイドチェンジされた際に、反応が遅れる事が再三あった。あそこの切り替え(内から外へ)が遅れると、川澄がカバーに下がる必要が出てきて、どうしてもボールを奪ってからの攻めが遅くなる。そこを修正するだけで、もっと楽に戦えると思うのだが。

 南アフリカ戦の駆け引きに関する騒動。当たり前の事を当たり前にやっただけで、騒ぎになるのだから、注目されると言う事は大変だ。しかし、かつてウェンブレイで柱谷哲二がハンドをしたり、アジアカップの1次リーグ3試合目で思いっ切り手抜きをしても、特別国民的議論?は起こらなかった。それが、今回相応の騒動になったのは、我々が着実にサッカー強国への道を歩む重要な一里塚だったと考えればよいだろう。佐々木氏の日本サッカーへの貢献に改めて感謝するものである。
 それにしても、スウェーデン対カナダが同点になった瞬間に、見事にスイッチがはいって、後方でボールを回し始めたのは、おもしろかった。あれを「おもしろい」と感じない人がいるのも、1つの発見だが。

 フランス戦は、コンディショニングと試合経験を考えれば、常識的には勝てると思う。
 ブラジル戦で見せてくれた守備の堅牢さを考えると、そうは失点しないだろう。またブラジル戦の前半20分過ぎの連続攻撃では、「攻める気になった時の凄さ」を見せてくれた。
 一部に宮間不振を心配する向きがあるようだが、私はそれも前向きに捉えている。宮間が今一歩でも、ここまで堅実に勝てると言う事だからだ。そして、宮間のように精神的にも技術的にも充実した選手が、大会最後まで不振を引きずる訳がない。
 おごる事なく、冷静に戦えば、決勝進出は相当確率で訪れるはずだ。


 さて男子。気持ち良い進撃が続いている。

 モロッコ戦。私はあのような緊迫した試合が大好きだ。
 両軍が稠密にプレスをかけ合い、僅かな隙から攻め込もうとする。序盤こそ、敵トップに裏をとられ危ない場面を作られたが、山口の忠実さと、扇原の丁寧な展開で、次第に互角の展開に。中々攻め込めない難しい時間帯でも、大津の巧妙な動きから、そこそこ攻める時間を作り、前半終了。麻也のヘディングが決まってリードできていれば最高だったが、それは贅沢と言うものだろう。
 そして後半、我慢を継続し、次第に当方の好機が増えて来て、最後にエース永井の一撃で仕留める事に成功。戦闘能力がほんの少し上回っていた差を、しっかりと出せた。同格の敵に、このような勝ち方ができるチームが本当に強いのだ。モロッコは、あの厄介だったトップを下げてくれて楽になった。おそらくスタミナに課題がある選手なのだろう。そして、先方はその後のカードがなかった。当方は向こうが2枚交代して様子をみてから、齋藤を起用できた。資源力の差が出た。サッカー力で上回っていたとも考えられる。
 ある意味では、後半10人となったスペインに勝つより、ずっと11人だったモロッコに勝つ方が難しかったはず。実に見事な戦いだった。

 ホンジュラス戦。前半は、宇佐美、山村が全くフィットしておらず、また杉本もトップで持ちこたえられず、苦しい展開となったが、麻也を軸に丁寧に守る。
 そして後半、ホンジュラスのプレスが弱まると、この3人もそこそこ順調に機能し始める。すばらしかったのは、山口と大津。この2人は出足もよいが、次の展開を考えてプレイをしているので、ファーストタッチと身体の向きが絶品で、次の展開が実にスムーズ。この大会で、完全に大化けしてくれた。また、宇佐美がレギュラクラスが周囲を固めれば、まあまあのプレイを見せてくれたのは好材料。金メダル獲得のためには、この天才肌の選手の活躍は必須なのだから。また、序盤は落ち着かなかったが、村松が自エリアをしっかり押さえる守備を見せたのも大きい。
 鈴木も褒めたかったのだが、あのアディショナルタイムのボール回し時に、最後ロングボールを蹴ってしまったので減点。

 そしてエジプト戦。序盤に一気に攻勢に立ち、清武のボール刈りから、そのまま永井が先制。守備の組織化の確立が、ボールを奪ってからの意思統一につながり、さらに永井と言う異彩を得て、このチームの長駆型速攻パタンは完成したようだ。日本のトップレベルが国際試合で、このような「長駆型速攻」を「型」として身につけたのは史上初めてではなかろうか。好事魔多し、永井の負傷が心配。メキシコ戦は難しそうだが、決勝に何間に合ってほしい。また、リードして敵が出てくれば、永井不在でも速攻が機能する事を示した斎藤はあっぱれだった。もし、永井不在でもメキシコはそう簡単には、前に出てこられないはずだから。
 後半エジプトが交代カードを切り終わった後で負傷者が出て、11対9になったのは幸運だったが、そうならなくても押し切っていた事だろう。そのくらい、攻守のバランスがとれていた。
 
 扇原の展開、清武の最終精度は、ほぼ確立した。残るは東と宇佐美だ。敵が速攻に対応してきた時に、得点を奪うために、最前線で必要な緩急を作り出せるのはこの2人なのだから。
 東はすばらしい運動量で献身的に戦っているのは間違いない。しかし、そこに加えて、ちょっとした溜めとか、ほんの少しスピードを落とすなどの工夫を発揮して欲しい。そして宇佐美には、勝負どころであの変幻自在なドリブル突破を。

 メキシコは難しい相手だ。しかし、発展途上のこのチームが大会前に互角に近い戦いを演じ、最終的に勝てたと言う実績は非常に大きい。あのメキシコ戦当時と比較し、当方の戦闘能力は格段に向上している。私は楽観的だ。
posted by 武藤文雄 at 21:37| Comment(11) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする