本来ならば、負ければ終わりの勝ち抜き戦、3位決定戦とは非常に微妙な存在である。ワールドカップでも、毎回何とも言えない試合が繰り返されている。ところが、五輪と言う大会は「銅メダル」と言う付加価値があり、結構な真剣勝負感が漂う。言うまでもなく、44年前には、かのクラマー氏が「銅の色もよい色だ」との名言を述べられ、釜本大御大が2連発とあいなった訳だし。
そこに韓国である。
この厄介な隣国の宿敵と、世界大会で戦うのは、2回目。2003年のワールドユースの1/16ファイナル以来となる。今野や川島の世代である。あ、そうそう徳永も!あの気持ちのよい勝利の後、「今後、世界で幾度もこの対戦を見ることになるのだろうな」と、感慨にふけったのが、何とも懐かしい。
ここは素直に喜ぼうと想う。この愉しかった大会の最後に、最高の娯楽が訪れてくれたと。だって最高ではないか、勝利した時の歓喜 、敗北した時の絶望。
いや、当面の目標である2014年を考えても、この試合は、この若いチームにとって最高の経験となる。見事なエジプト戦までの成功体験、悔しいメキシコ戦の失敗体験、それぞれの後で、究極の成功体験を積む事ができるのか。それとも…
敵には多くのJリーガがいるし、何より監督は、洪明甫氏。さらには、ベンチには、洪氏に請われてフィジカルコーチに就任した池田誠剛氏が。確かに先方は兵役免除と言う重要な要素はあろうが、巷騒がれるような殺伐とした戦いにはならないだろう。
余談ながら、関塚氏と池田氏は早稲田大学時のチームメート、同じ学齢だが関塚氏が浪人したので後輩となる。
激しく、厳しく、愉しく、そしてすばらしい試合を期待したい。そして、我々の若者の歓喜の銅メダルを。
2012年08月10日
2012年08月06日
2つの準決勝を前に
男女とも堂々とベスト4進出。まことにめだたい。
毎試合毎試合、しっかりと講釈を垂れたいのは山々なのだが、どうにも難しい状況だ。3日に2試合のペースで試合が行われ、しかも試合が深夜に及ぶ。特に午前1時キックオフの試合で、翌日が平日の場合は、試合前の仮眠が必須となる。さらに、ついつい他の競技にも気をとられてしまって、作文の時間が失われて行く。
女子。準々決勝、ブラジルに終始攻め込まれたが、落ち着いて守り切った。
序盤に攻勢をとられ、危ない場面も多かったが、そこをしのいだ前半20分過ぎから幾度も攻め込み、連続して好機を作る事に成功。その流れから得たFKを、澤が素早く蹴り、抜け出した大儀見が、しっかりと決めて、先制に成功。
以降は、ブラジルの攻撃を冷静にいなす。岩清水、熊谷のセンタバック、阪口、澤のドイスボランチの読みはすばらしく、押されてはいたが、ほとんど危ない場面はなかった。
そして、後半半ばには逆襲速攻から大儀見の好クロス、大野が冷静に決めて突き放し、そのまま逃げ切った。ブラジルの攻撃精度は、日本と並んで世界屈指だろうが、その攻撃を狙い通りに押さえ切ったのだから大したものだ。また、体調もここに合わせていたのだろう、終盤にはブラジル選手の多くは疲労から一杯の状態になっていたのに対し、日本の選手はしっかり走り切った。たとえば、1次ラウンドのスウェーデン戦と比較すると、選手達の体調がよいのは明らかだ。
気になったのは、守備ブロックがしっかりしているが、サイドバックが絞り過ぎの場面が見受けられた事。特に鮫島は(日本の右から左、つまり逆サイドから同サイドに)サイドチェンジされた際に、反応が遅れる事が再三あった。あそこの切り替え(内から外へ)が遅れると、川澄がカバーに下がる必要が出てきて、どうしてもボールを奪ってからの攻めが遅くなる。そこを修正するだけで、もっと楽に戦えると思うのだが。
南アフリカ戦の駆け引きに関する騒動。当たり前の事を当たり前にやっただけで、騒ぎになるのだから、注目されると言う事は大変だ。しかし、かつてウェンブレイで柱谷哲二がハンドをしたり、アジアカップの1次リーグ3試合目で思いっ切り手抜きをしても、特別国民的議論?は起こらなかった。それが、今回相応の騒動になったのは、我々が着実にサッカー強国への道を歩む重要な一里塚だったと考えればよいだろう。佐々木氏の日本サッカーへの貢献に改めて感謝するものである。
それにしても、スウェーデン対カナダが同点になった瞬間に、見事にスイッチがはいって、後方でボールを回し始めたのは、おもしろかった。あれを「おもしろい」と感じない人がいるのも、1つの発見だが。
フランス戦は、コンディショニングと試合経験を考えれば、常識的には勝てると思う。
ブラジル戦で見せてくれた守備の堅牢さを考えると、そうは失点しないだろう。またブラジル戦の前半20分過ぎの連続攻撃では、「攻める気になった時の凄さ」を見せてくれた。
一部に宮間不振を心配する向きがあるようだが、私はそれも前向きに捉えている。宮間が今一歩でも、ここまで堅実に勝てると言う事だからだ。そして、宮間のように精神的にも技術的にも充実した選手が、大会最後まで不振を引きずる訳がない。
おごる事なく、冷静に戦えば、決勝進出は相当確率で訪れるはずだ。
さて男子。気持ち良い進撃が続いている。
モロッコ戦。私はあのような緊迫した試合が大好きだ。
両軍が稠密にプレスをかけ合い、僅かな隙から攻め込もうとする。序盤こそ、敵トップに裏をとられ危ない場面を作られたが、山口の忠実さと、扇原の丁寧な展開で、次第に互角の展開に。中々攻め込めない難しい時間帯でも、大津の巧妙な動きから、そこそこ攻める時間を作り、前半終了。麻也のヘディングが決まってリードできていれば最高だったが、それは贅沢と言うものだろう。
そして後半、我慢を継続し、次第に当方の好機が増えて来て、最後にエース永井の一撃で仕留める事に成功。戦闘能力がほんの少し上回っていた差を、しっかりと出せた。同格の敵に、このような勝ち方ができるチームが本当に強いのだ。モロッコは、あの厄介だったトップを下げてくれて楽になった。おそらくスタミナに課題がある選手なのだろう。そして、先方はその後のカードがなかった。当方は向こうが2枚交代して様子をみてから、齋藤を起用できた。資源力の差が出た。サッカー力で上回っていたとも考えられる。
ある意味では、後半10人となったスペインに勝つより、ずっと11人だったモロッコに勝つ方が難しかったはず。実に見事な戦いだった。
ホンジュラス戦。前半は、宇佐美、山村が全くフィットしておらず、また杉本もトップで持ちこたえられず、苦しい展開となったが、麻也を軸に丁寧に守る。
そして後半、ホンジュラスのプレスが弱まると、この3人もそこそこ順調に機能し始める。すばらしかったのは、山口と大津。この2人は出足もよいが、次の展開を考えてプレイをしているので、ファーストタッチと身体の向きが絶品で、次の展開が実にスムーズ。この大会で、完全に大化けしてくれた。また、宇佐美がレギュラクラスが周囲を固めれば、まあまあのプレイを見せてくれたのは好材料。金メダル獲得のためには、この天才肌の選手の活躍は必須なのだから。また、序盤は落ち着かなかったが、村松が自エリアをしっかり押さえる守備を見せたのも大きい。
鈴木も褒めたかったのだが、あのアディショナルタイムのボール回し時に、最後ロングボールを蹴ってしまったので減点。
そしてエジプト戦。序盤に一気に攻勢に立ち、清武のボール刈りから、そのまま永井が先制。守備の組織化の確立が、ボールを奪ってからの意思統一につながり、さらに永井と言う異彩を得て、このチームの長駆型速攻パタンは完成したようだ。日本のトップレベルが国際試合で、このような「長駆型速攻」を「型」として身につけたのは史上初めてではなかろうか。好事魔多し、永井の負傷が心配。メキシコ戦は難しそうだが、決勝に何間に合ってほしい。また、リードして敵が出てくれば、永井不在でも速攻が機能する事を示した斎藤はあっぱれだった。もし、永井不在でもメキシコはそう簡単には、前に出てこられないはずだから。
後半エジプトが交代カードを切り終わった後で負傷者が出て、11対9になったのは幸運だったが、そうならなくても押し切っていた事だろう。そのくらい、攻守のバランスがとれていた。
扇原の展開、清武の最終精度は、ほぼ確立した。残るは東と宇佐美だ。敵が速攻に対応してきた時に、得点を奪うために、最前線で必要な緩急を作り出せるのはこの2人なのだから。
東はすばらしい運動量で献身的に戦っているのは間違いない。しかし、そこに加えて、ちょっとした溜めとか、ほんの少しスピードを落とすなどの工夫を発揮して欲しい。そして宇佐美には、勝負どころであの変幻自在なドリブル突破を。
メキシコは難しい相手だ。しかし、発展途上のこのチームが大会前に互角に近い戦いを演じ、最終的に勝てたと言う実績は非常に大きい。あのメキシコ戦当時と比較し、当方の戦闘能力は格段に向上している。私は楽観的だ。
毎試合毎試合、しっかりと講釈を垂れたいのは山々なのだが、どうにも難しい状況だ。3日に2試合のペースで試合が行われ、しかも試合が深夜に及ぶ。特に午前1時キックオフの試合で、翌日が平日の場合は、試合前の仮眠が必須となる。さらに、ついつい他の競技にも気をとられてしまって、作文の時間が失われて行く。
女子。準々決勝、ブラジルに終始攻め込まれたが、落ち着いて守り切った。
序盤に攻勢をとられ、危ない場面も多かったが、そこをしのいだ前半20分過ぎから幾度も攻め込み、連続して好機を作る事に成功。その流れから得たFKを、澤が素早く蹴り、抜け出した大儀見が、しっかりと決めて、先制に成功。
以降は、ブラジルの攻撃を冷静にいなす。岩清水、熊谷のセンタバック、阪口、澤のドイスボランチの読みはすばらしく、押されてはいたが、ほとんど危ない場面はなかった。
そして、後半半ばには逆襲速攻から大儀見の好クロス、大野が冷静に決めて突き放し、そのまま逃げ切った。ブラジルの攻撃精度は、日本と並んで世界屈指だろうが、その攻撃を狙い通りに押さえ切ったのだから大したものだ。また、体調もここに合わせていたのだろう、終盤にはブラジル選手の多くは疲労から一杯の状態になっていたのに対し、日本の選手はしっかり走り切った。たとえば、1次ラウンドのスウェーデン戦と比較すると、選手達の体調がよいのは明らかだ。
気になったのは、守備ブロックがしっかりしているが、サイドバックが絞り過ぎの場面が見受けられた事。特に鮫島は(日本の右から左、つまり逆サイドから同サイドに)サイドチェンジされた際に、反応が遅れる事が再三あった。あそこの切り替え(内から外へ)が遅れると、川澄がカバーに下がる必要が出てきて、どうしてもボールを奪ってからの攻めが遅くなる。そこを修正するだけで、もっと楽に戦えると思うのだが。
南アフリカ戦の駆け引きに関する騒動。当たり前の事を当たり前にやっただけで、騒ぎになるのだから、注目されると言う事は大変だ。しかし、かつてウェンブレイで柱谷哲二がハンドをしたり、アジアカップの1次リーグ3試合目で思いっ切り手抜きをしても、特別国民的議論?は起こらなかった。それが、今回相応の騒動になったのは、我々が着実にサッカー強国への道を歩む重要な一里塚だったと考えればよいだろう。佐々木氏の日本サッカーへの貢献に改めて感謝するものである。
それにしても、スウェーデン対カナダが同点になった瞬間に、見事にスイッチがはいって、後方でボールを回し始めたのは、おもしろかった。あれを「おもしろい」と感じない人がいるのも、1つの発見だが。
フランス戦は、コンディショニングと試合経験を考えれば、常識的には勝てると思う。
ブラジル戦で見せてくれた守備の堅牢さを考えると、そうは失点しないだろう。またブラジル戦の前半20分過ぎの連続攻撃では、「攻める気になった時の凄さ」を見せてくれた。
一部に宮間不振を心配する向きがあるようだが、私はそれも前向きに捉えている。宮間が今一歩でも、ここまで堅実に勝てると言う事だからだ。そして、宮間のように精神的にも技術的にも充実した選手が、大会最後まで不振を引きずる訳がない。
おごる事なく、冷静に戦えば、決勝進出は相当確率で訪れるはずだ。
さて男子。気持ち良い進撃が続いている。
モロッコ戦。私はあのような緊迫した試合が大好きだ。
両軍が稠密にプレスをかけ合い、僅かな隙から攻め込もうとする。序盤こそ、敵トップに裏をとられ危ない場面を作られたが、山口の忠実さと、扇原の丁寧な展開で、次第に互角の展開に。中々攻め込めない難しい時間帯でも、大津の巧妙な動きから、そこそこ攻める時間を作り、前半終了。麻也のヘディングが決まってリードできていれば最高だったが、それは贅沢と言うものだろう。
そして後半、我慢を継続し、次第に当方の好機が増えて来て、最後にエース永井の一撃で仕留める事に成功。戦闘能力がほんの少し上回っていた差を、しっかりと出せた。同格の敵に、このような勝ち方ができるチームが本当に強いのだ。モロッコは、あの厄介だったトップを下げてくれて楽になった。おそらくスタミナに課題がある選手なのだろう。そして、先方はその後のカードがなかった。当方は向こうが2枚交代して様子をみてから、齋藤を起用できた。資源力の差が出た。サッカー力で上回っていたとも考えられる。
ある意味では、後半10人となったスペインに勝つより、ずっと11人だったモロッコに勝つ方が難しかったはず。実に見事な戦いだった。
ホンジュラス戦。前半は、宇佐美、山村が全くフィットしておらず、また杉本もトップで持ちこたえられず、苦しい展開となったが、麻也を軸に丁寧に守る。
そして後半、ホンジュラスのプレスが弱まると、この3人もそこそこ順調に機能し始める。すばらしかったのは、山口と大津。この2人は出足もよいが、次の展開を考えてプレイをしているので、ファーストタッチと身体の向きが絶品で、次の展開が実にスムーズ。この大会で、完全に大化けしてくれた。また、宇佐美がレギュラクラスが周囲を固めれば、まあまあのプレイを見せてくれたのは好材料。金メダル獲得のためには、この天才肌の選手の活躍は必須なのだから。また、序盤は落ち着かなかったが、村松が自エリアをしっかり押さえる守備を見せたのも大きい。
鈴木も褒めたかったのだが、あのアディショナルタイムのボール回し時に、最後ロングボールを蹴ってしまったので減点。
そしてエジプト戦。序盤に一気に攻勢に立ち、清武のボール刈りから、そのまま永井が先制。守備の組織化の確立が、ボールを奪ってからの意思統一につながり、さらに永井と言う異彩を得て、このチームの長駆型速攻パタンは完成したようだ。日本のトップレベルが国際試合で、このような「長駆型速攻」を「型」として身につけたのは史上初めてではなかろうか。好事魔多し、永井の負傷が心配。メキシコ戦は難しそうだが、決勝に何間に合ってほしい。また、リードして敵が出てくれば、永井不在でも速攻が機能する事を示した斎藤はあっぱれだった。もし、永井不在でもメキシコはそう簡単には、前に出てこられないはずだから。
後半エジプトが交代カードを切り終わった後で負傷者が出て、11対9になったのは幸運だったが、そうならなくても押し切っていた事だろう。そのくらい、攻守のバランスがとれていた。
扇原の展開、清武の最終精度は、ほぼ確立した。残るは東と宇佐美だ。敵が速攻に対応してきた時に、得点を奪うために、最前線で必要な緩急を作り出せるのはこの2人なのだから。
東はすばらしい運動量で献身的に戦っているのは間違いない。しかし、そこに加えて、ちょっとした溜めとか、ほんの少しスピードを落とすなどの工夫を発揮して欲しい。そして宇佐美には、勝負どころであの変幻自在なドリブル突破を。
メキシコは難しい相手だ。しかし、発展途上のこのチームが大会前に互角に近い戦いを演じ、最終的に勝てたと言う実績は非常に大きい。あのメキシコ戦当時と比較し、当方の戦闘能力は格段に向上している。私は楽観的だ。
2012年07月29日
スペイン戦勝利を喜ぶ
女子は、キッチリと1勝1分けのスタート。2試合とも、90分間のスタミナが続かなかったのは、準々決勝以降に合わせているからの好材料と見る。ただ、スウェーデン戦の終盤、全体がエネルギ切れになっていたにもかかわらず、前線の選手が無理に「前に前に」行ってしまった事は不安材料。結果が欲しい大儀見と岩渕が、よい意味での欲を出したと前向きに捉えておこうか。
いずれにしても、カナダ戦の前半にしっかりと2点奪ったところで、1次リーグは完了し、準々決勝以降の調整を始める事ができたようなもの。
1次ラウンドは1位でも2位でも、対戦相手的にはあまり影響はない。ほぼ間違いなく合衆国が1抜けするので、決勝までの同ブロックになるのは、英国、ブラジルのいずれかと、フランス、スウェーデンとなる。
この中で戦闘能力が落ちそうなのは英国だが、地元と言う利点があるので、厄介な事は変わりない。ただ、歴史的な経緯からチームとしてのまとまりは疑問なところ。
フランスは直前の準備試合でやられたが、あの試合のあたりが、先方のピークだったのではないか。北朝鮮への大差の勝利も、フランスが早いところにピークを合わせている証左となる。こちらは準々決勝に合わせているし、タイトルマッチの経験を含め、常識的には日本有利。
もちろん、この中ではブラジルが一番難しい敵となろう。澤がFIFA最優秀選手に選ばれた時の、マルタの悔しそうな顔は忘れ難いし。当方として一番ありがたいのは、ブラジルが1抜けであちら側のブロックに行き、準決勝で合衆国と死闘を演じてくれる事ではあるが(そして、ブラジルが来る事か)。
ただし、もしブラジルが2抜けで、こちら側のブロックに来たとしても、上記の4国中3国と日本の勝ち抜き戦を考えれば、最終的に勝ち残る確率は日本が一番高いだろう(もちろん、だからと言って、決定的な差はないのも確かで、苦しい試合が続くのも間違いないが)。
つい1年前、我々は難しい本番で、ドイツも合衆国も振り切った経験を持つのだ。何ら、楽観的な事を言うつもりはないが、コンディショニングと言う視点からは。昨日のスタミナ切れはよい兆候と見る。期待しよう。
と言う事で、スペイン戦。いや、気持のよい勝利でした。
ピークとすべきこの試合にしっかり合わせ込んで来た関塚氏はさすがだ。このように、「大事な試合に合わせる」のは、監督としての能力の重要な1つ。ここまで氏には、かなり厳しい事を書いてきたが、さすがJ屈指の実績の持ち主。以前も語ったが、我々は関塚氏を超えるカードはそう多くは持っていない。そう考えても、ここに関塚氏が合わせてくれて来た事は、嬉しかったし、やや安堵の気持がある事も否定しない。
オーバエージの2人が、戦略的にチームの中軸となり精神的支柱となるのみならず、予選段階の弱点に対する人材的な補強となっているのも、結構な事だ。これは、関塚監督と原技術委員長の適切な連携を、大いに讃えるべきだろう。
徳永の堅実な守備と、効果的な押し上げは、ブラジルを目指す伊野波や今野や駒野にとって、大いなる脅威と言える。しかも、本業とは言い難い左サイドを如才なくこなしたのだから。
そして麻也の堂々たる君臨振りはもう最高。終盤、スペインの攻撃が、ことごとく麻也の守備範囲に収まる場面は、かつての井原や中澤を彷彿させる感もあった。大会初戦にして、ザッケローニ氏の高笑いが聞こえてくるかのように感じたのは私だけだろうか。
そして、全選手が、敵の喉元に食い付きながら、丁寧にボールを大事にして、几帳面に修正を繰り返してくれた。正に「日本のサッカー」だった。
ただ、このスペイン戦で重要だったのは、やはり永井の存在だろう。従来日本が世界大会で戦う時の1つの課題は、ある程度後方を固めた際に、長駆型の速攻を仕掛けるための最前線で少人数突破が可能なタレントに乏しい事だった。そのため、ある程度攻めの形を作るためには、相当数の人数が前線に入る必要があり、そこがリードした時の試合運びの難しさだった。唯一の例外は、2003年後半から2004年半ばまでの、久保竜彦が君臨したほんの短い期間だったのだが。しかし、この日は永井の長駆俊足が、スペインの守備ラインを悩まし続けた。
終盤、永井が幾度も長駆し好機を演出し、スペインに攻め返されて、トコトコとオフサイドを警戒しながら疲労をこらえながら戻る場面は、美しかった。このやり方は、一昨年のアジア大会を制した際のものだったが、永井は1年グランパスで経験を積み、ボールの受け方が格段にうまくなった点が大きな進歩。これまた、ザッケローニ氏のニヤケ顔が目に浮かぶな。さらに、後方のチームメートも、予選の悪い時期に見せた無計画な縦パスではなく、東を軸に丁寧につないで、フリーになった選手が高精度のロングボールを通したのがよかった。
関塚氏も、さすがにこの難敵はリスペクトしたと言う事だろう。つまり、安易な縦パスではダメで、後方から組み立てなければならないと理解していたのだろう。予選から、このような組み立てをしていれば、シリアにあそこまで苦しむ事はなかったのだが。
もちろん、前半終盤の退場劇が、事実上勝負を決めたのは間違いない。前半半ばから、日本の組織守備がほぼ完璧に機能していたが、前半立ち上がりに(日本から見て)左から右に短いパスを回され崩されかけた場面があった。マタを軸にしたあの高精度パスの連続を考えると、やはり11人揃っていたら、相当苦しい試合になっていたと思う。ただし、あの退場は、永井の突破力が生んだものなので、スペインが10人になってしまったのは、幸運と言うよりは必然と言うべきものだろうが。
そして、スペインは人数が減ったにもかかわらず、11人いる時と同じサッカーを狙って来た。このスペインの柔軟性のなさには驚いた。前半から、日本がブロックを固めた際に、思うようにラストパスを通せなかった。したがって、人数が減って同じ事をしていたら、苦しむのは自明。せめて、サイドチェンジを増やすとか、片方のサイドに偏在するとか、何か工夫をしてくるかと思ったのだが。かくして、1人少ないスペインの攻撃は、ことごとく麻也の餌食となった。危なそうな場面は、アルバに裏を突かれたくらいだったが、権田が冷静にさばいた。
ただし、今後の試合が余談を許さないのは間違いない。最大の課題は、敵が守りを固めて来た時に、崩せるかどうか。初戦がスペインだった幸運を活かし、守備組織はある程度完成した。ここから、どう攻撃を積み上げるか。モロッコもホンジュラスも、そして準々決勝以降の相手も、永井の脅威は理解しているだけに、後方を分厚くしてくる事だろう。そうなった場合に、どうするか。遺憾ながら、スペイン戦後半で、どうにもシュート力に課題がある事を露呈してしまった。また、予選段階で、このチームの攻撃連係が拙い事も示されている。だからこそ、戦いながら、連係をを築き上げて行く必要がある。
カギになるのは、ずばり、扇原、東、そして宇佐美だと思う。
扇原の重要性は言うまでもない。つなぐ場面、ためる場面、縦を急ぐ場面、それぞれをいかに使い分けるか。予選段階で相当苦しく追い込まれたこのチームを救ったのは、敵地マレーシア戦で冷静にボールを回した扇原だった。今度は格段にレベルの高い相手に、同じ事ができるか。期待されるのはこのチームの遠藤的存在である事を自覚して、頭を働かせて欲しいのだが。
スペイン戦の東はもちろんよかった。すばらしいファイトで戦い続け、よく攻撃を展開した。しかし、今後東はもっと難しい責務を果たしてもらう必要がある。スペイン戦では、多くは速攻の担い手だったが、今後の試合では、遅攻の軸となってもらわなければならないのだ。永井はもちろん、大津も清武も齋藤も、前線で技巧と工夫の粋を尽くして、敵を崩そうと努力する。彼らを組織化して、攻撃を操るのは東の役目なのだ。急の中にいかに緩を加えて、攻撃を組み立ててくれるか。
そして宇佐美。最後の最後、敵を崩すためには、切れ味鋭い個人技が必要。そして、その可能性を一番持っているのはやはりこの男だろう。宇佐美の「素材」を疑うものではないが、ガンバでそこそこの活躍をした後に、よりによってバイエルンと言う超トップレベルのクラブに加入した事もあり、試合での実績をほとんど積む事ができていない(まあ、それを言うと大津も、ボルシアMGで出場機会を、あまり得られていないようだが)。そのためもあるのか、とにかく「タフではない」と言う印象が強い。しかし、五輪で上位進出するために、彼の力が必要な事を否定する人も少ないだろう。
初戦に難敵に勝利した事ものの、アトランタのようにその後の失速を心配する向きも多いようだ。しかし、当時のチームのこのチームは、選手のプロフェッショナリズムは全く違う。自ペナルティエリア内で敵の反則と勘違いしボールを手で扱ったり、もっと点差を広げなければならないのに自らの得点を喜ぶパフォーマンスを重視するような選手はいないはずだ。油断してはいけないが、常識的には上記の攻撃連係を積み上げる事で、準々決勝進出は十分可能なはず。スペインに勝利した事で、ブラジルと準々決勝で戦う事も回避できる可能性も高い。各選手には、誇りをもって、より高みを目指す努力を積み重ねてくれる事だろう。
いずれにしても、カナダ戦の前半にしっかりと2点奪ったところで、1次リーグは完了し、準々決勝以降の調整を始める事ができたようなもの。
1次ラウンドは1位でも2位でも、対戦相手的にはあまり影響はない。ほぼ間違いなく合衆国が1抜けするので、決勝までの同ブロックになるのは、英国、ブラジルのいずれかと、フランス、スウェーデンとなる。
この中で戦闘能力が落ちそうなのは英国だが、地元と言う利点があるので、厄介な事は変わりない。ただ、歴史的な経緯からチームとしてのまとまりは疑問なところ。
フランスは直前の準備試合でやられたが、あの試合のあたりが、先方のピークだったのではないか。北朝鮮への大差の勝利も、フランスが早いところにピークを合わせている証左となる。こちらは準々決勝に合わせているし、タイトルマッチの経験を含め、常識的には日本有利。
もちろん、この中ではブラジルが一番難しい敵となろう。澤がFIFA最優秀選手に選ばれた時の、マルタの悔しそうな顔は忘れ難いし。当方として一番ありがたいのは、ブラジルが1抜けであちら側のブロックに行き、準決勝で合衆国と死闘を演じてくれる事ではあるが(そして、ブラジルが来る事か)。
ただし、もしブラジルが2抜けで、こちら側のブロックに来たとしても、上記の4国中3国と日本の勝ち抜き戦を考えれば、最終的に勝ち残る確率は日本が一番高いだろう(もちろん、だからと言って、決定的な差はないのも確かで、苦しい試合が続くのも間違いないが)。
つい1年前、我々は難しい本番で、ドイツも合衆国も振り切った経験を持つのだ。何ら、楽観的な事を言うつもりはないが、コンディショニングと言う視点からは。昨日のスタミナ切れはよい兆候と見る。期待しよう。
と言う事で、スペイン戦。いや、気持のよい勝利でした。
ピークとすべきこの試合にしっかり合わせ込んで来た関塚氏はさすがだ。このように、「大事な試合に合わせる」のは、監督としての能力の重要な1つ。ここまで氏には、かなり厳しい事を書いてきたが、さすがJ屈指の実績の持ち主。以前も語ったが、我々は関塚氏を超えるカードはそう多くは持っていない。そう考えても、ここに関塚氏が合わせてくれて来た事は、嬉しかったし、やや安堵の気持がある事も否定しない。
オーバエージの2人が、戦略的にチームの中軸となり精神的支柱となるのみならず、予選段階の弱点に対する人材的な補強となっているのも、結構な事だ。これは、関塚監督と原技術委員長の適切な連携を、大いに讃えるべきだろう。
徳永の堅実な守備と、効果的な押し上げは、ブラジルを目指す伊野波や今野や駒野にとって、大いなる脅威と言える。しかも、本業とは言い難い左サイドを如才なくこなしたのだから。
そして麻也の堂々たる君臨振りはもう最高。終盤、スペインの攻撃が、ことごとく麻也の守備範囲に収まる場面は、かつての井原や中澤を彷彿させる感もあった。大会初戦にして、ザッケローニ氏の高笑いが聞こえてくるかのように感じたのは私だけだろうか。
そして、全選手が、敵の喉元に食い付きながら、丁寧にボールを大事にして、几帳面に修正を繰り返してくれた。正に「日本のサッカー」だった。
ただ、このスペイン戦で重要だったのは、やはり永井の存在だろう。従来日本が世界大会で戦う時の1つの課題は、ある程度後方を固めた際に、長駆型の速攻を仕掛けるための最前線で少人数突破が可能なタレントに乏しい事だった。そのため、ある程度攻めの形を作るためには、相当数の人数が前線に入る必要があり、そこがリードした時の試合運びの難しさだった。唯一の例外は、2003年後半から2004年半ばまでの、久保竜彦が君臨したほんの短い期間だったのだが。しかし、この日は永井の長駆俊足が、スペインの守備ラインを悩まし続けた。
終盤、永井が幾度も長駆し好機を演出し、スペインに攻め返されて、トコトコとオフサイドを警戒しながら疲労をこらえながら戻る場面は、美しかった。このやり方は、一昨年のアジア大会を制した際のものだったが、永井は1年グランパスで経験を積み、ボールの受け方が格段にうまくなった点が大きな進歩。これまた、ザッケローニ氏のニヤケ顔が目に浮かぶな。さらに、後方のチームメートも、予選の悪い時期に見せた無計画な縦パスではなく、東を軸に丁寧につないで、フリーになった選手が高精度のロングボールを通したのがよかった。
関塚氏も、さすがにこの難敵はリスペクトしたと言う事だろう。つまり、安易な縦パスではダメで、後方から組み立てなければならないと理解していたのだろう。予選から、このような組み立てをしていれば、シリアにあそこまで苦しむ事はなかったのだが。
もちろん、前半終盤の退場劇が、事実上勝負を決めたのは間違いない。前半半ばから、日本の組織守備がほぼ完璧に機能していたが、前半立ち上がりに(日本から見て)左から右に短いパスを回され崩されかけた場面があった。マタを軸にしたあの高精度パスの連続を考えると、やはり11人揃っていたら、相当苦しい試合になっていたと思う。ただし、あの退場は、永井の突破力が生んだものなので、スペインが10人になってしまったのは、幸運と言うよりは必然と言うべきものだろうが。
そして、スペインは人数が減ったにもかかわらず、11人いる時と同じサッカーを狙って来た。このスペインの柔軟性のなさには驚いた。前半から、日本がブロックを固めた際に、思うようにラストパスを通せなかった。したがって、人数が減って同じ事をしていたら、苦しむのは自明。せめて、サイドチェンジを増やすとか、片方のサイドに偏在するとか、何か工夫をしてくるかと思ったのだが。かくして、1人少ないスペインの攻撃は、ことごとく麻也の餌食となった。危なそうな場面は、アルバに裏を突かれたくらいだったが、権田が冷静にさばいた。
ただし、今後の試合が余談を許さないのは間違いない。最大の課題は、敵が守りを固めて来た時に、崩せるかどうか。初戦がスペインだった幸運を活かし、守備組織はある程度完成した。ここから、どう攻撃を積み上げるか。モロッコもホンジュラスも、そして準々決勝以降の相手も、永井の脅威は理解しているだけに、後方を分厚くしてくる事だろう。そうなった場合に、どうするか。遺憾ながら、スペイン戦後半で、どうにもシュート力に課題がある事を露呈してしまった。また、予選段階で、このチームの攻撃連係が拙い事も示されている。だからこそ、戦いながら、連係をを築き上げて行く必要がある。
カギになるのは、ずばり、扇原、東、そして宇佐美だと思う。
扇原の重要性は言うまでもない。つなぐ場面、ためる場面、縦を急ぐ場面、それぞれをいかに使い分けるか。予選段階で相当苦しく追い込まれたこのチームを救ったのは、敵地マレーシア戦で冷静にボールを回した扇原だった。今度は格段にレベルの高い相手に、同じ事ができるか。期待されるのはこのチームの遠藤的存在である事を自覚して、頭を働かせて欲しいのだが。
スペイン戦の東はもちろんよかった。すばらしいファイトで戦い続け、よく攻撃を展開した。しかし、今後東はもっと難しい責務を果たしてもらう必要がある。スペイン戦では、多くは速攻の担い手だったが、今後の試合では、遅攻の軸となってもらわなければならないのだ。永井はもちろん、大津も清武も齋藤も、前線で技巧と工夫の粋を尽くして、敵を崩そうと努力する。彼らを組織化して、攻撃を操るのは東の役目なのだ。急の中にいかに緩を加えて、攻撃を組み立ててくれるか。
そして宇佐美。最後の最後、敵を崩すためには、切れ味鋭い個人技が必要。そして、その可能性を一番持っているのはやはりこの男だろう。宇佐美の「素材」を疑うものではないが、ガンバでそこそこの活躍をした後に、よりによってバイエルンと言う超トップレベルのクラブに加入した事もあり、試合での実績をほとんど積む事ができていない(まあ、それを言うと大津も、ボルシアMGで出場機会を、あまり得られていないようだが)。そのためもあるのか、とにかく「タフではない」と言う印象が強い。しかし、五輪で上位進出するために、彼の力が必要な事を否定する人も少ないだろう。
初戦に難敵に勝利した事ものの、アトランタのようにその後の失速を心配する向きも多いようだ。しかし、当時のチームのこのチームは、選手のプロフェッショナリズムは全く違う。自ペナルティエリア内で敵の反則と勘違いしボールを手で扱ったり、もっと点差を広げなければならないのに自らの得点を喜ぶパフォーマンスを重視するような選手はいないはずだ。油断してはいけないが、常識的には上記の攻撃連係を積み上げる事で、準々決勝進出は十分可能なはず。スペインに勝利した事で、ブラジルと準々決勝で戦う事も回避できる可能性も高い。各選手には、誇りをもって、より高みを目指す努力を積み重ねてくれる事だろう。
2012年07月26日
ロンドン五輪を前に
2週間ほどブラジルを含めた異国に滞在していたため、男女とも五輪代表の準備試合の映像を見ることはできていない。と言う事で、過去の経験からの、大会展望と言うか願望を述べて行きたい。
まず女子。言うまでもなく目標は金メダル。ただし、勝負は水ものだし、サッカーと言う理不尽な競技には常に運不運がつきまとう。「金」に至れるか否かは「神」の領域だろう。私は今回の宮間たちの冒険の成功の正否は(ドイツ不在と言う幸運を含めて)「決勝進出できるか否か」にあると見ている。けれども、今の宮間たちに対して、そのような常識的なものの見方そのものが、失礼と言うものだ。宮間たちは「金」しか考えていないだろう。そうである以上は、我々サポータも「金」のみを考えて応援するのが、ロンドンの正しい愉しみ方と言うものだろう。そして、「金」を狙うと言う視点で考えると、私はポイントが2つあると思っている。
今回のメンバ編成を見ると、全員が、昨年のワールドカップ経験者。佐々木氏は「新しい武器」よりも「安定と成熟」を選択したようだ。
一般的に、この手の短期集中型の大会は、前の大会にはいなかったタレントの登場が勝負を分ける事が多い。前回のワールドカップで、鮫島と熊谷は純然たる新戦力だったし、川澄と(このチームからは、長期離脱していた)丸山が、準々決勝以降に機能したのは記憶に新しい。
ただし、今回の五輪は、昨年のワールドカップから僅か1年後の大会だし、新戦力開拓に十分な時間がなかった。いわゆる「なでしこフィーバー」が、その貴重な時間を奪ったと言う見方もあろうが、あれは「勝利が故についてくる事態」、世界一がゆえのの一種のハンディキャップと考えるのが健全だろう。
ただし、化けた感のある大儀見、負傷癒えた岩渕(が、この1年の様々な経験を活かし、大幅に成長してくれていれば)の2人は、間違いなく「新しい武器」となるだろう。特に大儀見の成長は、結果的に色々な難しい仕事を的確にこなせる安藤をベンチにおけると言うメリットもあるし。
一方、後方のタレントは完全に現状維持。ただ、近賀、熊谷、岩清水、鮫島、阪口、澤に割り込む選手が、そうは出てこないのも理解できる。このベストの6人が万全の体調で大会を終えられればよいのだが。個人的には田中あたりが、ここいらに割って入って欲しかった思いはあるのだが。
佐々木氏の「安定と成熟」の選択が吉とでる事を祈りたい。
2つ目のカギは、やはり澤穂希だろう。
一時期体調を崩していたが、やはり疲労が要因だったのだと思う。そして問題は、33歳と言う年齢だ。疲労で体調を崩したのも、年齢とは無関係とは言えないだろう。彼女の武器は、最高レベルの知性であり、格段の技巧であり、研ぎ澄まされた得点力であり、抜群の精神力である。そして、それらはいずれも年齢的に極端に衰えてくるものではない。また、積み重ねてきた鍛練によるフィジカルは、日々の努力により相変わらず強靭なものだろう。しかし、33歳と言う年齢も、また確かなのだ。
昨年、名実ともに世界一になる以前から、スタアがゆえのオーラが全身から発せられている彼女。ワールドカップの準々決勝以降を思い起こしても、ドイツ戦の絶妙なラストパス、スウェーデン戦の敵先制点となるミスパス、そしてあの決勝延長の舞い。たまに見せる極端なマイナスを含め、いずれもスタアならではのプレイ。そして我々が再び世界一を獲得しようとするならば、澤の昨年同様の活躍は必須なのだ。
直前の準備試合での敗戦を気にする必要は一切ない。過去、このチームは、あのようなフィジカルやスピードをかいくぐって、勝利した実績をいくらでも持っている。しっかりと体調を整えてくれば、彼女達のパスワークを防げる敵はいない。
願わくば、サッカーの女神がほんのちょっと、ほんのちょっとでよい、我々に味方してくれれば。後は彼女達は自らの戦闘能力で、最高の色のメダルを獲得してくれるだろう。
さて男子。ここにきてオーバエージの麻也と徳永が加入。メキシコに競り勝つなど、何とか間に合いそうな雰囲気が出てきたようだ。
過去を振り返ってみよう。まず、気をつけなければならない事だが、シドニーのトルシェ氏、アテネの山本氏は、北京の反町氏、今回の関塚氏と比較すると、「無限の差」と言いたくなるくらいに、提供された準備期間が多かった(アトランタの西野氏は、日本サッカー界そのものが「世界で戦う経験に乏しかった事」、選手を増長させるバカマスコミを防ぐノウハウをがなかったなど、今日と比較してあまりに「時代」が異なるので比較以前と考えた方がよいやに思う)。
確かにトルシェ氏はすばらしいチームを作り、ほんの僅かな不運とミス(主審のミスジャッジによるPK、守備の控えにユーティリティ性がない宮本を選考していた事など)がなければ、メダルを獲得していた可能性も高かった。しかし、もしトルシェ氏に、関塚氏に提供した準備期間と拘束条件で、その仕事を依頼していたら、どんな事態になっていたかは容易に想像できる(笑)訳で、これはやはり比較障害と言うものだろう。
ただし、潤沢な準備期間を与えられながら、そのほとんどを「テストごっこ」に浪費し、大会に入ってからも、ベストメンバさえ決められなかった山本氏のアテネのチームよりは、現状のチームは格段にまともと言う事には言えるだろう。
そう考えると、やはり適切な比較は反町氏率いた北京大会と言うになる。正直言って、いずれのチームも予選段階はひどかった。いずれも選手間の適切な連携は少なく、選手の個人能力の高さでアジアを勝ち抜いたもの。ただし、敵へのリスペクト欠如、常識的修正のなさ、と言う視点からは、関塚氏は、よりダメだったのは間違いないけれど。
しかし、今回のチームは、北京と比較して格段のストロングポイントを持つ。そうオーバエージだ。Jリーグを代表する仕事師の徳永、腕章を巻きこの大会以降世界を席巻する吉田麻也。この2人の存在は、間違いなく、このチームを支える存在だ。
そもそも、北京大会、色々問題は合ったが反町氏は最後の最後で帳尻を合わせつつあった。準備試合のアルゼンチン戦で、そこそこのレベルまでチームを引き上げていたのだし。しかし、初戦の同格の合衆国戦、森重や長友が信じ難い経験不足を露呈し敗戦。戦闘能力的に劣勢のナイジェリアに対し、前掛りで戦う必要が生まれ、最終的にチームは崩壊した。大事なところで、チームに柱となるオーバエージ選手がいてくれれば、十分に上位進出の可能性もあったのだ。つまり、北京での敗因は、誰一人オーバエージを連れて行かなかった事、つまり日本協会が真剣に北京で勝とうとしなかった事にあった。けれども、今大会は違う。日本協会は苦労に苦労を重ね、上々のオーバエージ選手2枚の補強に成功したのだ。そして、この2人は過去積み上げて来た存分な経験で、チームを支えてくれるに違いない。
もちろん、不安も大きい。特に心配なのは、Jリーグで格段の実績を持ち戦える精神力を持った選手の多くを外している事。その分、外見的な潜在力は高いが、Jでの(あるいは所属クラブでの大人になってからの)実績は少なく、過去の準備試合でもほとんど戦い切る事のできなかった選手が、結構選ばれている。もちろん、そう言う事を今さら語っても詮無き事。一人一人がこのロンドンで大化けしてくれる事を期待するのが、今となっては健全だろう。
4年前の北京のチームは、試合内容も結果も残念だった。しかし、言い古された事だが、当時のメンバの多くは、完全に大化けして、4年経った今では世界のトップレベルに飛び出す選手に成長してくれた。そして、今回のチームは、北京と比べて、オーバエージのプラス部分があるのだ。選手全員が誇りを持ち、タフに粘り強く敵の喉元に食らいつき、戦い切ってくれる事を期待したい。そして、メンバの多くが、2年後のブラジルで主力として戦ってくれる事を。
まず女子。言うまでもなく目標は金メダル。ただし、勝負は水ものだし、サッカーと言う理不尽な競技には常に運不運がつきまとう。「金」に至れるか否かは「神」の領域だろう。私は今回の宮間たちの冒険の成功の正否は(ドイツ不在と言う幸運を含めて)「決勝進出できるか否か」にあると見ている。けれども、今の宮間たちに対して、そのような常識的なものの見方そのものが、失礼と言うものだ。宮間たちは「金」しか考えていないだろう。そうである以上は、我々サポータも「金」のみを考えて応援するのが、ロンドンの正しい愉しみ方と言うものだろう。そして、「金」を狙うと言う視点で考えると、私はポイントが2つあると思っている。
今回のメンバ編成を見ると、全員が、昨年のワールドカップ経験者。佐々木氏は「新しい武器」よりも「安定と成熟」を選択したようだ。
一般的に、この手の短期集中型の大会は、前の大会にはいなかったタレントの登場が勝負を分ける事が多い。前回のワールドカップで、鮫島と熊谷は純然たる新戦力だったし、川澄と(このチームからは、長期離脱していた)丸山が、準々決勝以降に機能したのは記憶に新しい。
ただし、今回の五輪は、昨年のワールドカップから僅か1年後の大会だし、新戦力開拓に十分な時間がなかった。いわゆる「なでしこフィーバー」が、その貴重な時間を奪ったと言う見方もあろうが、あれは「勝利が故についてくる事態」、世界一がゆえのの一種のハンディキャップと考えるのが健全だろう。
ただし、化けた感のある大儀見、負傷癒えた岩渕(が、この1年の様々な経験を活かし、大幅に成長してくれていれば)の2人は、間違いなく「新しい武器」となるだろう。特に大儀見の成長は、結果的に色々な難しい仕事を的確にこなせる安藤をベンチにおけると言うメリットもあるし。
一方、後方のタレントは完全に現状維持。ただ、近賀、熊谷、岩清水、鮫島、阪口、澤に割り込む選手が、そうは出てこないのも理解できる。このベストの6人が万全の体調で大会を終えられればよいのだが。個人的には田中あたりが、ここいらに割って入って欲しかった思いはあるのだが。
佐々木氏の「安定と成熟」の選択が吉とでる事を祈りたい。
2つ目のカギは、やはり澤穂希だろう。
一時期体調を崩していたが、やはり疲労が要因だったのだと思う。そして問題は、33歳と言う年齢だ。疲労で体調を崩したのも、年齢とは無関係とは言えないだろう。彼女の武器は、最高レベルの知性であり、格段の技巧であり、研ぎ澄まされた得点力であり、抜群の精神力である。そして、それらはいずれも年齢的に極端に衰えてくるものではない。また、積み重ねてきた鍛練によるフィジカルは、日々の努力により相変わらず強靭なものだろう。しかし、33歳と言う年齢も、また確かなのだ。
昨年、名実ともに世界一になる以前から、スタアがゆえのオーラが全身から発せられている彼女。ワールドカップの準々決勝以降を思い起こしても、ドイツ戦の絶妙なラストパス、スウェーデン戦の敵先制点となるミスパス、そしてあの決勝延長の舞い。たまに見せる極端なマイナスを含め、いずれもスタアならではのプレイ。そして我々が再び世界一を獲得しようとするならば、澤の昨年同様の活躍は必須なのだ。
直前の準備試合での敗戦を気にする必要は一切ない。過去、このチームは、あのようなフィジカルやスピードをかいくぐって、勝利した実績をいくらでも持っている。しっかりと体調を整えてくれば、彼女達のパスワークを防げる敵はいない。
願わくば、サッカーの女神がほんのちょっと、ほんのちょっとでよい、我々に味方してくれれば。後は彼女達は自らの戦闘能力で、最高の色のメダルを獲得してくれるだろう。
さて男子。ここにきてオーバエージの麻也と徳永が加入。メキシコに競り勝つなど、何とか間に合いそうな雰囲気が出てきたようだ。
過去を振り返ってみよう。まず、気をつけなければならない事だが、シドニーのトルシェ氏、アテネの山本氏は、北京の反町氏、今回の関塚氏と比較すると、「無限の差」と言いたくなるくらいに、提供された準備期間が多かった(アトランタの西野氏は、日本サッカー界そのものが「世界で戦う経験に乏しかった事」、選手を増長させるバカマスコミを防ぐノウハウをがなかったなど、今日と比較してあまりに「時代」が異なるので比較以前と考えた方がよいやに思う)。
確かにトルシェ氏はすばらしいチームを作り、ほんの僅かな不運とミス(主審のミスジャッジによるPK、守備の控えにユーティリティ性がない宮本を選考していた事など)がなければ、メダルを獲得していた可能性も高かった。しかし、もしトルシェ氏に、関塚氏に提供した準備期間と拘束条件で、その仕事を依頼していたら、どんな事態になっていたかは容易に想像できる(笑)訳で、これはやはり比較障害と言うものだろう。
ただし、潤沢な準備期間を与えられながら、そのほとんどを「テストごっこ」に浪費し、大会に入ってからも、ベストメンバさえ決められなかった山本氏のアテネのチームよりは、現状のチームは格段にまともと言う事には言えるだろう。
そう考えると、やはり適切な比較は反町氏率いた北京大会と言うになる。正直言って、いずれのチームも予選段階はひどかった。いずれも選手間の適切な連携は少なく、選手の個人能力の高さでアジアを勝ち抜いたもの。ただし、敵へのリスペクト欠如、常識的修正のなさ、と言う視点からは、関塚氏は、よりダメだったのは間違いないけれど。
しかし、今回のチームは、北京と比較して格段のストロングポイントを持つ。そうオーバエージだ。Jリーグを代表する仕事師の徳永、腕章を巻きこの大会以降世界を席巻する吉田麻也。この2人の存在は、間違いなく、このチームを支える存在だ。
そもそも、北京大会、色々問題は合ったが反町氏は最後の最後で帳尻を合わせつつあった。準備試合のアルゼンチン戦で、そこそこのレベルまでチームを引き上げていたのだし。しかし、初戦の同格の合衆国戦、森重や長友が信じ難い経験不足を露呈し敗戦。戦闘能力的に劣勢のナイジェリアに対し、前掛りで戦う必要が生まれ、最終的にチームは崩壊した。大事なところで、チームに柱となるオーバエージ選手がいてくれれば、十分に上位進出の可能性もあったのだ。つまり、北京での敗因は、誰一人オーバエージを連れて行かなかった事、つまり日本協会が真剣に北京で勝とうとしなかった事にあった。けれども、今大会は違う。日本協会は苦労に苦労を重ね、上々のオーバエージ選手2枚の補強に成功したのだ。そして、この2人は過去積み上げて来た存分な経験で、チームを支えてくれるに違いない。
もちろん、不安も大きい。特に心配なのは、Jリーグで格段の実績を持ち戦える精神力を持った選手の多くを外している事。その分、外見的な潜在力は高いが、Jでの(あるいは所属クラブでの大人になってからの)実績は少なく、過去の準備試合でもほとんど戦い切る事のできなかった選手が、結構選ばれている。もちろん、そう言う事を今さら語っても詮無き事。一人一人がこのロンドンで大化けしてくれる事を期待するのが、今となっては健全だろう。
4年前の北京のチームは、試合内容も結果も残念だった。しかし、言い古された事だが、当時のメンバの多くは、完全に大化けして、4年経った今では世界のトップレベルに飛び出す選手に成長してくれた。そして、今回のチームは、北京と比べて、オーバエージのプラス部分があるのだ。選手全員が誇りを持ち、タフに粘り強く敵の喉元に食らいつき、戦い切ってくれる事を期待したい。そして、メンバの多くが、2年後のブラジルで主力として戦ってくれる事を。
2012年06月19日
2012年05月04日
五輪代表男子展望2012
五輪本大会の組み合わせが発表された。女子の組み合わせが、男子以上にマスコミに騒がれるのだから、結構な時代になったものだ。
たしかに、女子は現在世界一だし、今年に入ってからの強化試合は、結果も内容も順調。金メダルの可能性も十分ある状況ゆえ、一般マスコミの注目も高いのは当然だろう。それはそれで、近々講釈を垂れたいとは思っている。
ともあれ、今日は男子の展望と言うか、愚痴と言うか、期待と言うかについて、講釈を垂れたいと思う。
1.五輪への考え方
そもそも日本は五輪にどう臨むべきなのか。2つの考え方がある。
1つは「しょせん若年層の大会、ワールドカップ(予選)、アジアカップ(予選)と、それらの準備で日程は手いっぱい、予選だけは確実に勝ち、本大会は成り行きで戦えばよいだろう。」と言う考えだ。少なくとも、4年前の北京、日本協会は(さすがに、そうは明言しなかったが)そのような選択をした。そして、多くの国がオーバエージを使う中、日本はアンダー23だけで戦い、相応に健闘したが全敗した。反町監督は遠藤、大久保をオーバエージとして選考しようとしたが、遠藤は病気、大久保は所属クラブが派遣拒否。日本協会はそれ以上のアクションはしなかった(ようにしか、我々には見えなかった)。大変、腹が立ち、不愉快ではあった。
それでも、選手達には貴重な経験になった。長友、内田、本田、香川、岡崎、さらに細貝、李、今日のA代表の中核がズラリと並ぶ当時の五輪メンバを見ると、北京五輪はいちがいに失敗とは言えないようにも、思えてきたりもするのだが。
もう1つは、4年前惨敗直後に、エルゴラッソ川端編集長が述べた考え方だ。再度引用しよう。
もっとも、南アフリカでの好成績により、日本国内におけるサッカーの存在感は格段に高まった。したがって、「当時の川端氏ほど悲観的に考える必要はない」と言う考え方もあるかもしれないが。
いったい日本協会は五輪にどのように臨もうとしているのだろうか。 関塚氏が「メダルを狙う」と宣言したとか、協会首脳が「オーバエージを使う」と語ったとか、各種報道が渦巻いているのだが。
私の意見は後で述べる。
2.現状の五輪代表
今回の五輪代表の情けなさについては、過去幾度も述べて来た。
特に残念だったのは、国立シリア戦で、縦に急ぎ過ぎる知性に欠ける試合で苦戦をしたにもかかわらず、修正を何もせずに敵地(厳密には中立地だったが)シリア戦に臨んだ事。再び縦ばかり狙い、知性のかけらも感じさせず、シリアに対するリスペクトを欠いた無様な試合で、終盤突き放されて苦杯を喫した。このシリアとの2試合より前の試合の内容も、確かによくなかった。しかし、しつこく繰り返すが、この2試合は、チーム全軍が知性に欠けたやり方で敵のよさを引き出したと言う、日本サッカー史でも「黒歴史」とも言いたくなる、ひどいものだった。
さすがに、続く敵地マレーシア戦、国立バーレーン戦では、修正がされ、中盤で落ち着いてボールを回すようになった。残念ながら、それまでの連携積み上げが事実上なかったため、この2試合はゆっくりとボールを回し、後は各選手の個人能力頼り、と言う試合となった。いざ、攻撃に入っても、誰がどこに飛び出すとか、スペースを空けて後方の選手が長駆走り込むとか言った連動的な約束事が全くないのだ。それでも、大迫、扇原、酒井宏樹、原口、齋藤、大津、清武と言った各選手が、圧倒的な個人能力を見せてくれて、無事予選突破できた。
つまり、現状では、この五輪代表は、まだ全く形にすらなっていない。そして言うまでもなく、アジア予選は「個人能力」で勝ち切れようが、本大会はそう簡単ではなく、「組織力」が必要になるだろう。そう、今後の積み上げが重要なのだ。関塚氏にその積み上げが可能かどうかは別にして。
また、関塚氏はJで安定して活躍しているタレントの一部を選考せずに、かなり大胆な選手選考を行って来た。しかも、負傷や海外流出がない限り、新たなメンバはあまり選考しないと言う方針を継続しながら。ある程度メンバを固定する考えは、それはそれで妥当と言うものだろう(後から後から新しい選手を呼び続け、結局まとめ切れず情けないサッカーを見せた、8年前のアテネのチームを反面教師にしている可能性もあろう)。
もっとも、関塚氏が期待した中核メンバが、順調に成長してくれればよかったのだが、残念ながら一部の選手はそうならなかった。五輪代表では常時使われながら、今なおJでも定位置獲得どころか、ベンチ入りさえままならない選手すらいるのだ。一方で、関塚氏が重要視して来なかったが、ここに来て欧州のクラブで定位置を確保したり、Jの上位チームで中心選手として機能している選手も出てきている。
ただし、このように選手の成長の見極めが難しいのが、若年層代表強化の厄介なところ。私は上記した縦急ぎ過ぎや、反省欠如や、シリアへのリスペクト不足については、関塚氏を厳しく糾弾したい。けれども、選手の成長見誤りについては、責めるのは気の毒だと思っている。若年層とは言え、代表チームなのだ。選手個々の能力を伸ばすのは、あくまでも単独チームであるべき。代表チームは、個別の連携を磨いたり、タフな国際試合での経験を積ませる事しかできないものだ。まして、若いタレントの将来性を判断するのは、とても難しい事だ。繰り返すが、見誤りについては、仕方がないと思う。ただし、明らかに成長していない選手に拘泥してきたのはいかがかとは思うが。
したがって、確実にメンバ入りしそうな選手を予想するのが、非常に難しくなっている。現実的に、権田、酒井宏樹、鈴木大輔、扇原、清武、大迫あたりまでは、確実に選ばれるような気がするが、他の選手は皆微妙な気がしてくるのだ。
さらに、オーバエージ選考を考えると、ますます選考メンバが予想できなくなってくる。オーバエージ起用そのものは、冒頭に述べたように「五輪にどう臨むのか」で判断される事だろう。けれども、ロンドンで相応の好成績を残そうと言うならば、しかるべきオーバエージ選手を使う方が、勝つ確率が高まるのは自明の事だ。例えば、今回のチームはセンタバックに人材を欠く感があるので、まずはそこにオーバエージタレントを起用するのは、現実的な判断と言うものだろう。ついでに言えば、この世代は、センタバックを除く他のポジションは(関塚氏が不選考の選手を含め)、いずこにも相当なタレントがいる。したがって、どこをオーバエージで補強するかも、かなり議論が分かれよう。
しかも、香川がいる。言うまでもなく、香川はロンドン五輪世代。この世界屈指の攻撃創造主は、オーバエージではなく選考可能となる(ワールドカップ予選との二股が現実的かどうかはさておき)。そして、香川が選考対象になった瞬間、このチームの攻撃的MFは超激戦区となる。私が上記の「確実なメンバ予想」に、原口、齋藤、東、大津と言った、予選終盤関塚氏が重宝した選手を入れてないのも、このためだ。香川が加われば、清武以外の選手の地位は安泰ではなくなる。もちろん、ここには、大前、水沼、高木俊のようなJで堂々と活躍しているタレントも豊富だし、宇佐美、宮市、高木善ら海外で活躍する選手も多い。
いや、他のポジションも結構ややこしい。ボランチに関して言えば、関塚氏は扇原、山口、山村、山本康裕らを固定して使ってきたが、ここにはJで最も実績があると言っても過言ではない青木、負傷から復調しつつある米本、さらには今期好調のエスパルスを支える村松などのタレントが百花繚乱。ここも、確実に選ばれそうなのは扇原くらいに思える。
まあ、人材豊富なのだから、文句を言ってはいけない。結構な事だと前向きに捉えよう。
3.五輪代表指揮は、どのような人が適切なのか
関塚氏に散々文句を言い続けている訳だが、では五輪代表の監督は、どのような人材が適切なのだろうか。
シドニーではフィリップが見事なサッカーを見せてくれた。そして、あの成功の幻影を追う人が多いのは理解できる。しかし、あれは12年前の事。J1のチーム数は少なかったし、地元ワールドカップを控え代表強化最優先で、フィリップに必要な強化時間を潤沢に提供できた時代の事なのだ。あれだけ、たっぷりと強化期間を提供しながらも、フィリップは「時間がない、日本協会は俺のために最善の努力を尽くしてない」と散々文句を語っていたが、あれはあれで愉しかったな。もちろん、本大会ベスト8を合格点とすべきかと言う意見もあるだろうが、アトランタ以降で2次トーナメントまで勝ち残ったのはシドニーだけなのだし、私はあの成績を評価している。また、メンバ選考の疑問(控えとして、宮本、西と多様性の低い選手を選考した事、オーバエージの服部が負傷離脱した代わりにポジションは近いがタイプが全く異なる三浦淳を起用した事など)もあったけれど、このあたりのヘマもいかにもフィリップらしかった。
アテネでは山本氏の自滅が懐かしい。フィリップに対して提供した時間よりは短かっただろうが、日本協会は山本氏に、多くの強化合宿と、有料国際試合を提供した。しかし、山本氏は、それらのことごとくを「テストごっこ」と「勝負への未執着」で浪費した。「代表チームと言うものが、強化期間を提供されればされるほど、弱くなる」ケースがある事を、日本サッカー界が学ぶよい機会ともなった。このフィリップの成功と、山本氏の失敗は、「監督の手腕の差」をわかりやすく説明する格好の教材とも言えたな。
北京。監督を務めた反町氏は、山本氏のような協会御用達コーチとは異なり、プロフェッショナルとして経歴を積み上げ来た指導者だった。地方の小クラブアルビレックスをJ1に昇格、定着させた実績はすばらしい。そのため、就任時の期待は大きかった。ところが、選手個々の特長を活かす事より、強引に自分好みの配置に選手を並べる事を重視。貴重な強化試合である敵地韓国戦を2軍相当のメンバで戦ったり、Jで相当実績のある選手を控えとして大学生の起用に拘泥するなど、不適切な強化が目立った。結果、たったの1試合も「お見事!」と言う試合を見せずに、北京でも全敗してしまった(オーバエージ不選考については上記参照)。ただし、これも上記したように(結果論ににも思えるが)最終的に北京で戦った選手の多くが大化けしているのだけは間違いないので、五輪代表としての反町氏の評価は難しいのだが。
そして、今回のロンドン。関塚氏は実績は反町氏をさらに上回る。フロンターレでACLベスト8に残ったのを筆頭に、幾度もJでも上位に食い込んだ名将だ。しかし、その期待に反して、上記のように、およそ知性に欠けた、情けない試合を継続している。過去の鮮やかな実績と、シリアとの2試合で見せられた間抜けな采配振りの落差は、あまりにも大きい。もっとも、関塚氏自身の出身がJSLの本田技研で、学生時代から関塚氏が師事していたのが、故宮本征勝氏だった事は、あの縦に急ぐサッカーと、とても関連あるようにも思えてくるが。憲剛との邂逅がただの幸運、と言う説を述べる方も案外と多い事と合わせ、まあ、戯れ言として。
重要な事は、我々は反町氏、関塚氏を超えるカードは、ほとんど持っていないと言う事だ。小林伸二氏の輝かしい実績は、「予算の少ないチームを光らせ続けて来た事」にあり、五輪代表のように「豊富なタレントの取捨選択」とは異なる(でも、私自身は小林氏が率いる、日の丸のチームを1度観てみたいとは思うけれど)。もちろん、アトランタで久々に五輪出場を成し遂げ、本大会でブラジルを破った西野氏ならば、と言う声はあるだろう、「五輪で今度こそ」と言う復讐戦的な意味を含めても、興味深い。もちろん、中国で奮戦中の岡田武史に任せれば、帳尻を合わせてくれる事は間違いないだろう。
外国人監督の招聘も一手段だが、強化時間がほとんど取れない中で、果たして成果が挙げられるものなのか。と言って、A代表と五輪代表の日程が錯綜する現状では、ザッケローニ氏に(かつてのフィリップのように)両方を見てもらう事も現実的ではない。また、外国人監督が皆優秀とは限らない事は、ジーコが体現してくれたではないか。
けれども、「岡田氏、西野氏、小林氏でなければ」と語る時点で、日本サッカー界は優秀な監督をほとんど輩出できていない事になってしまう。たとえば、隣国の韓国は各種の代表チームで自国の監督で日本よりましな成績を挙げる事もある。また尹晶煥と言う気鋭の若手監督も出てきている。韓国と比べて、我が国はよい監督が育ちづらい土壌でもあると言うのだろうか。悩ましい問題だ。え?!、てぐ(以下、自粛)。
そうこう考えると、私はあのシリア戦を見て「関塚氏更迭」を唱えたものだし、不安は無数にあるけれど、もう任せるしかないと思う。予選を突破した以上、今さら西野氏でもあるまい(西野氏自身が、こんなリスクの高いシゴトを引き受けてトクかどうかと言う問題もある)。そして、関塚氏がシリア戦的なやり方を繰り返したら、それまでの事だ。(たとえ中村憲剛と関塚氏の邂逅がまったくの偶然だとしても)、複数年Jで相当な実績を残した関塚氏なのだ。もし、シリアとの2試合のような明らかな失敗があったとしたら、我々のサッカー力がまだまだ低いと言う事なのだろう。
4.では、どうしたらよいのか
ところが、困った事に、準備の時間はほとんどない。
貴重な強化の機会と見られているトゥーロン国際大会は、Jリーグとバッティングしており、直後にワールドカップ予選も始まる。トゥーロンにオーバエージの選手、A代表選手を連れて行くのは、相当難しそうだ。だいたい、既に五輪代表の中核選手は、当然ながらJ各クラブでも中核に近い選手達。五輪世代選手の召集でさえ、一悶着ありそうだ。もちろん、五輪本大会もJとバッティングしている。もし、国内でプレイしているオーバエージ選手を連れて行くとなると、当該クラブには相当な迷惑をかける事になる。
言うまでもなく、海外クラブ所属選手の召集も、ややこしい事になるだろう。一部報道で、FIFAが五輪出場にも、アジアカップなどの大陸大会と同様の強制権を提供するとの話もあるが、実際の運用はどうなる事か。
そうこう考えると、唯一まともな強化期間は、ワールドカップ予選でJが休みとなる5月末から6月上旬までの期間となるが、A代表選手が参加できないのは言うまでもない。困ったものだ。
では、どうしたらよいのか。以下、私案である。
私はリアリズムを徹底して「できる範囲で最善を尽くす」が正解だと思っている。ここで「できる範囲」と書いたのは、ワールドカップ予選への影響と、Jリーグの被害を最小限に止める事を優先せざるを得ないからだ。具体的には、上記述べた五輪本大会、従来の慣例で1クラブからの選抜は3名との不文律があるが、オーバエージ選手を供出したクラブは最大2名とするのが適切ではないか。
そして、日本協会(具体的には原博実強化担当技術委員長)が、五輪に向けた方針とその背景を、丁寧に外部に対し説明するのが重要である。「我々にとって五輪はとても大事な大会だが、一方でワールドカップはそれ以上に重要、そしてJの安定的開催も五輪と同等に重要である。そして、ブラジルでの上位進出のためにも、ロンドン五輪は『できる範囲で最善を尽くし』メダルを狙いに行く」と。とにかく、こう言う時は、もっともらしい正式声明を出すのが肝要なのだから。
そして、オーバエージには精神的な大黒柱1人、A代表の準レギュラクラス2人を選ぶ。
精神的な大黒柱とは、過去圧倒的な実績を挙げている選手、具体的には楢崎、闘莉王、長友、明神、遠藤、憲剛、岡崎、本田と言ったあたりだ。当然、この大黒柱が腕章を巻き、チームの全権も把握する。長友、岡崎、本田を選ぶ場合は、将来のA代表での幹部候補と言う意味もある。そして、ザッケローニ氏がやせ我慢を継続し、闘莉王をA代表に選ばないならば、闘莉王が五輪に回るのが一番現実的だろう。それならば闘莉王を、ワールドカップ予選中に行われるであろう強化合宿に参加させる事も可能になる。闘莉王ならば、名誉(と莫大な成功報酬)のために、きっと積極的に戦ってくれるだろう。
一方準レギュラクラスは、今期のJで好調な選手、森重、高橋秀人、伊野波、豊田、柏木、山田大記あたり、角田、関口、赤嶺も、検討されていいよね。現実的に、今回のアンダー23はセンタバックに人材を欠く感があるので、闘莉王、伊野波、高橋(あるいは森重、角田)と、後方の選手を3人揃えるのがよいようにも思える。
また上記私が提示した方針とは矛盾するが、闘莉王と吉田麻也をセンタバックに並べる手段もあるかもしれない。これはこれで、強力な布陣となるし、ブラジルへの強化布石にもつながる。
上記したように、FIFAが五輪出場の優先権を提供するとすれば、海外クラブ在籍選手の召集は随分と現実的になる。その場合の問題は、オフをどう取らせるかと言う事になる。原氏を中心に日本協会は、各選手の所属クラブと細かく連絡を取り合っていると言うが、どうなるだろうか。
香川は別格の存在であり、何としてでも召集したい。香川をメンバに加えられれば、日本協会の本気度も明確になる。次に、ドイツで完全に定位置を確保している酒井高徳(こちらもA代表から声かかる可能性があろうが)も左サイドバックとして、是非メンバに加えたい。その他の、指宿、宮市、高木善、大津、そして宇佐美は、国内の他のタレントとの競争と言う事になろう。このあたりは、同世代にライバルも多いのだ。
5.全てはこれから
過去と比較しても、今の日本のアンダー23世代の選手の個人能力は(ややセンタバックに人材を欠く感があるものの)かなり高い。そして、何より香川がいるのだ。さらに、弱点のセンタバックはオーバエージでカバー可能だ。
私は、工夫次第では十二分にメダル以上を狙えるとは思っている。金メダルとなると、相当難しかろうが、これも幾多の幸運があれば不可能ではないかもしれない。戦闘能力で日本を明らかに上回りそうなのは、ブラジルとスペインくらいだろう。全英代表がどういう精神状態で臨んでくるかが、大会の趨勢を左右しそうだが、多くのケースでこのような政治問題を抱えたチームはうまく行かないものだ(もちろん、全英代表がよいチームであれば、これはサッカーの将来を変え得る新しい息吹となろうが)。そして、ウルグアイ、メキシコ、スイスあたりは相当強いだろうが、過去の世界大会を思い起こせば、十分に抵抗できる程度の差しかないはずだ。北京大会でも、オランダは大して強くはなかったではないか。そして、スペインと同グループと言う事は、決勝までスペインとは戦わなくてよいと言う事だ。
もちろん、少なくとも現状のチームのままでは、最終ラインは弱々しいし、攻撃の共通理解も、まだまだの状態だ。相応の積み上げがなければ、1次リーグ敗退の可能性も多いだろう。そして、残念な事に、準備期間は限られている。これらもまた事実だ。
全てはこれからなのだ。そして、メンバ編成はさておき、「できる範囲で最善を尽くす」事と、「方針と背景の説明」が、何よりも肝要だ。少なくとも、北京ではその説明が曖昧で、何かフワフワした雰囲気で大会に臨んでしまったのだから。
限られた時間でも、やれる事はたくさんあり、それらをやれば、十分によい結果も可能だろう。
改めて、原博実氏に期待するものである。
たしかに、女子は現在世界一だし、今年に入ってからの強化試合は、結果も内容も順調。金メダルの可能性も十分ある状況ゆえ、一般マスコミの注目も高いのは当然だろう。それはそれで、近々講釈を垂れたいとは思っている。
ともあれ、今日は男子の展望と言うか、愚痴と言うか、期待と言うかについて、講釈を垂れたいと思う。
1.五輪への考え方
そもそも日本は五輪にどう臨むべきなのか。2つの考え方がある。
1つは「しょせん若年層の大会、ワールドカップ(予選)、アジアカップ(予選)と、それらの準備で日程は手いっぱい、予選だけは確実に勝ち、本大会は成り行きで戦えばよいだろう。」と言う考えだ。少なくとも、4年前の北京、日本協会は(さすがに、そうは明言しなかったが)そのような選択をした。そして、多くの国がオーバエージを使う中、日本はアンダー23だけで戦い、相応に健闘したが全敗した。反町監督は遠藤、大久保をオーバエージとして選考しようとしたが、遠藤は病気、大久保は所属クラブが派遣拒否。日本協会はそれ以上のアクションはしなかった(ようにしか、我々には見えなかった)。大変、腹が立ち、不愉快ではあった。
それでも、選手達には貴重な経験になった。長友、内田、本田、香川、岡崎、さらに細貝、李、今日のA代表の中核がズラリと並ぶ当時の五輪メンバを見ると、北京五輪はいちがいに失敗とは言えないようにも、思えてきたりもするのだが。
もう1つは、4年前惨敗直後に、エルゴラッソ川端編集長が述べた考え方だ。再度引用しよう。
僕たちはサッカーが好きで好きでどうしようもないがゆえに忘れてしまいがちだが、多くの日本人にとってサッカーはそこまで重要ではないし、スポーツの中に限っても一番の存在ではない。そんな日本にとって、五輪は勝負すべき大会ではなかったか。ここでの勝利は決して刹那の栄光でなく、「日本サッカーの未来」にも確実に寄与するものではなかっただろうか。言い換えれば、全てを尽くし、最高の成績を目指そうと言う考え方だ。日程の破綻や選手の疲弊を避けられると言う条件が成立すれば、、こちらが正論なのは言うまでもないだろう。あくまでも当該条件が成立すれば、の話だが。
もっとも、南アフリカでの好成績により、日本国内におけるサッカーの存在感は格段に高まった。したがって、「当時の川端氏ほど悲観的に考える必要はない」と言う考え方もあるかもしれないが。
いったい日本協会は五輪にどのように臨もうとしているのだろうか。 関塚氏が「メダルを狙う」と宣言したとか、協会首脳が「オーバエージを使う」と語ったとか、各種報道が渦巻いているのだが。
私の意見は後で述べる。
2.現状の五輪代表
今回の五輪代表の情けなさについては、過去幾度も述べて来た。
特に残念だったのは、国立シリア戦で、縦に急ぎ過ぎる知性に欠ける試合で苦戦をしたにもかかわらず、修正を何もせずに敵地(厳密には中立地だったが)シリア戦に臨んだ事。再び縦ばかり狙い、知性のかけらも感じさせず、シリアに対するリスペクトを欠いた無様な試合で、終盤突き放されて苦杯を喫した。このシリアとの2試合より前の試合の内容も、確かによくなかった。しかし、しつこく繰り返すが、この2試合は、チーム全軍が知性に欠けたやり方で敵のよさを引き出したと言う、日本サッカー史でも「黒歴史」とも言いたくなる、ひどいものだった。
さすがに、続く敵地マレーシア戦、国立バーレーン戦では、修正がされ、中盤で落ち着いてボールを回すようになった。残念ながら、それまでの連携積み上げが事実上なかったため、この2試合はゆっくりとボールを回し、後は各選手の個人能力頼り、と言う試合となった。いざ、攻撃に入っても、誰がどこに飛び出すとか、スペースを空けて後方の選手が長駆走り込むとか言った連動的な約束事が全くないのだ。それでも、大迫、扇原、酒井宏樹、原口、齋藤、大津、清武と言った各選手が、圧倒的な個人能力を見せてくれて、無事予選突破できた。
つまり、現状では、この五輪代表は、まだ全く形にすらなっていない。そして言うまでもなく、アジア予選は「個人能力」で勝ち切れようが、本大会はそう簡単ではなく、「組織力」が必要になるだろう。そう、今後の積み上げが重要なのだ。関塚氏にその積み上げが可能かどうかは別にして。
また、関塚氏はJで安定して活躍しているタレントの一部を選考せずに、かなり大胆な選手選考を行って来た。しかも、負傷や海外流出がない限り、新たなメンバはあまり選考しないと言う方針を継続しながら。ある程度メンバを固定する考えは、それはそれで妥当と言うものだろう(後から後から新しい選手を呼び続け、結局まとめ切れず情けないサッカーを見せた、8年前のアテネのチームを反面教師にしている可能性もあろう)。
もっとも、関塚氏が期待した中核メンバが、順調に成長してくれればよかったのだが、残念ながら一部の選手はそうならなかった。五輪代表では常時使われながら、今なおJでも定位置獲得どころか、ベンチ入りさえままならない選手すらいるのだ。一方で、関塚氏が重要視して来なかったが、ここに来て欧州のクラブで定位置を確保したり、Jの上位チームで中心選手として機能している選手も出てきている。
ただし、このように選手の成長の見極めが難しいのが、若年層代表強化の厄介なところ。私は上記した縦急ぎ過ぎや、反省欠如や、シリアへのリスペクト不足については、関塚氏を厳しく糾弾したい。けれども、選手の成長見誤りについては、責めるのは気の毒だと思っている。若年層とは言え、代表チームなのだ。選手個々の能力を伸ばすのは、あくまでも単独チームであるべき。代表チームは、個別の連携を磨いたり、タフな国際試合での経験を積ませる事しかできないものだ。まして、若いタレントの将来性を判断するのは、とても難しい事だ。繰り返すが、見誤りについては、仕方がないと思う。ただし、明らかに成長していない選手に拘泥してきたのはいかがかとは思うが。
したがって、確実にメンバ入りしそうな選手を予想するのが、非常に難しくなっている。現実的に、権田、酒井宏樹、鈴木大輔、扇原、清武、大迫あたりまでは、確実に選ばれるような気がするが、他の選手は皆微妙な気がしてくるのだ。
さらに、オーバエージ選考を考えると、ますます選考メンバが予想できなくなってくる。オーバエージ起用そのものは、冒頭に述べたように「五輪にどう臨むのか」で判断される事だろう。けれども、ロンドンで相応の好成績を残そうと言うならば、しかるべきオーバエージ選手を使う方が、勝つ確率が高まるのは自明の事だ。例えば、今回のチームはセンタバックに人材を欠く感があるので、まずはそこにオーバエージタレントを起用するのは、現実的な判断と言うものだろう。ついでに言えば、この世代は、センタバックを除く他のポジションは(関塚氏が不選考の選手を含め)、いずこにも相当なタレントがいる。したがって、どこをオーバエージで補強するかも、かなり議論が分かれよう。
しかも、香川がいる。言うまでもなく、香川はロンドン五輪世代。この世界屈指の攻撃創造主は、オーバエージではなく選考可能となる(ワールドカップ予選との二股が現実的かどうかはさておき)。そして、香川が選考対象になった瞬間、このチームの攻撃的MFは超激戦区となる。私が上記の「確実なメンバ予想」に、原口、齋藤、東、大津と言った、予選終盤関塚氏が重宝した選手を入れてないのも、このためだ。香川が加われば、清武以外の選手の地位は安泰ではなくなる。もちろん、ここには、大前、水沼、高木俊のようなJで堂々と活躍しているタレントも豊富だし、宇佐美、宮市、高木善ら海外で活躍する選手も多い。
いや、他のポジションも結構ややこしい。ボランチに関して言えば、関塚氏は扇原、山口、山村、山本康裕らを固定して使ってきたが、ここにはJで最も実績があると言っても過言ではない青木、負傷から復調しつつある米本、さらには今期好調のエスパルスを支える村松などのタレントが百花繚乱。ここも、確実に選ばれそうなのは扇原くらいに思える。
まあ、人材豊富なのだから、文句を言ってはいけない。結構な事だと前向きに捉えよう。
3.五輪代表指揮は、どのような人が適切なのか
関塚氏に散々文句を言い続けている訳だが、では五輪代表の監督は、どのような人材が適切なのだろうか。
シドニーではフィリップが見事なサッカーを見せてくれた。そして、あの成功の幻影を追う人が多いのは理解できる。しかし、あれは12年前の事。J1のチーム数は少なかったし、地元ワールドカップを控え代表強化最優先で、フィリップに必要な強化時間を潤沢に提供できた時代の事なのだ。あれだけ、たっぷりと強化期間を提供しながらも、フィリップは「時間がない、日本協会は俺のために最善の努力を尽くしてない」と散々文句を語っていたが、あれはあれで愉しかったな。もちろん、本大会ベスト8を合格点とすべきかと言う意見もあるだろうが、アトランタ以降で2次トーナメントまで勝ち残ったのはシドニーだけなのだし、私はあの成績を評価している。また、メンバ選考の疑問(控えとして、宮本、西と多様性の低い選手を選考した事、オーバエージの服部が負傷離脱した代わりにポジションは近いがタイプが全く異なる三浦淳を起用した事など)もあったけれど、このあたりのヘマもいかにもフィリップらしかった。
アテネでは山本氏の自滅が懐かしい。フィリップに対して提供した時間よりは短かっただろうが、日本協会は山本氏に、多くの強化合宿と、有料国際試合を提供した。しかし、山本氏は、それらのことごとくを「テストごっこ」と「勝負への未執着」で浪費した。「代表チームと言うものが、強化期間を提供されればされるほど、弱くなる」ケースがある事を、日本サッカー界が学ぶよい機会ともなった。このフィリップの成功と、山本氏の失敗は、「監督の手腕の差」をわかりやすく説明する格好の教材とも言えたな。
北京。監督を務めた反町氏は、山本氏のような協会御用達コーチとは異なり、プロフェッショナルとして経歴を積み上げ来た指導者だった。地方の小クラブアルビレックスをJ1に昇格、定着させた実績はすばらしい。そのため、就任時の期待は大きかった。ところが、選手個々の特長を活かす事より、強引に自分好みの配置に選手を並べる事を重視。貴重な強化試合である敵地韓国戦を2軍相当のメンバで戦ったり、Jで相当実績のある選手を控えとして大学生の起用に拘泥するなど、不適切な強化が目立った。結果、たったの1試合も「お見事!」と言う試合を見せずに、北京でも全敗してしまった(オーバエージ不選考については上記参照)。ただし、これも上記したように(結果論ににも思えるが)最終的に北京で戦った選手の多くが大化けしているのだけは間違いないので、五輪代表としての反町氏の評価は難しいのだが。
そして、今回のロンドン。関塚氏は実績は反町氏をさらに上回る。フロンターレでACLベスト8に残ったのを筆頭に、幾度もJでも上位に食い込んだ名将だ。しかし、その期待に反して、上記のように、およそ知性に欠けた、情けない試合を継続している。過去の鮮やかな実績と、シリアとの2試合で見せられた間抜けな采配振りの落差は、あまりにも大きい。もっとも、関塚氏自身の出身がJSLの本田技研で、学生時代から関塚氏が師事していたのが、故宮本征勝氏だった事は、あの縦に急ぐサッカーと、とても関連あるようにも思えてくるが。憲剛との邂逅がただの幸運、と言う説を述べる方も案外と多い事と合わせ、まあ、戯れ言として。
重要な事は、我々は反町氏、関塚氏を超えるカードは、ほとんど持っていないと言う事だ。小林伸二氏の輝かしい実績は、「予算の少ないチームを光らせ続けて来た事」にあり、五輪代表のように「豊富なタレントの取捨選択」とは異なる(でも、私自身は小林氏が率いる、日の丸のチームを1度観てみたいとは思うけれど)。もちろん、アトランタで久々に五輪出場を成し遂げ、本大会でブラジルを破った西野氏ならば、と言う声はあるだろう、「五輪で今度こそ」と言う復讐戦的な意味を含めても、興味深い。もちろん、中国で奮戦中の岡田武史に任せれば、帳尻を合わせてくれる事は間違いないだろう。
外国人監督の招聘も一手段だが、強化時間がほとんど取れない中で、果たして成果が挙げられるものなのか。と言って、A代表と五輪代表の日程が錯綜する現状では、ザッケローニ氏に(かつてのフィリップのように)両方を見てもらう事も現実的ではない。また、外国人監督が皆優秀とは限らない事は、ジーコが体現してくれたではないか。
けれども、「岡田氏、西野氏、小林氏でなければ」と語る時点で、日本サッカー界は優秀な監督をほとんど輩出できていない事になってしまう。たとえば、隣国の韓国は各種の代表チームで自国の監督で日本よりましな成績を挙げる事もある。また尹晶煥と言う気鋭の若手監督も出てきている。韓国と比べて、我が国はよい監督が育ちづらい土壌でもあると言うのだろうか。悩ましい問題だ。え?!、てぐ(以下、自粛)。
そうこう考えると、私はあのシリア戦を見て「関塚氏更迭」を唱えたものだし、不安は無数にあるけれど、もう任せるしかないと思う。予選を突破した以上、今さら西野氏でもあるまい(西野氏自身が、こんなリスクの高いシゴトを引き受けてトクかどうかと言う問題もある)。そして、関塚氏がシリア戦的なやり方を繰り返したら、それまでの事だ。(たとえ中村憲剛と関塚氏の邂逅がまったくの偶然だとしても)、複数年Jで相当な実績を残した関塚氏なのだ。もし、シリアとの2試合のような明らかな失敗があったとしたら、我々のサッカー力がまだまだ低いと言う事なのだろう。
4.では、どうしたらよいのか
ところが、困った事に、準備の時間はほとんどない。
貴重な強化の機会と見られているトゥーロン国際大会は、Jリーグとバッティングしており、直後にワールドカップ予選も始まる。トゥーロンにオーバエージの選手、A代表選手を連れて行くのは、相当難しそうだ。だいたい、既に五輪代表の中核選手は、当然ながらJ各クラブでも中核に近い選手達。五輪世代選手の召集でさえ、一悶着ありそうだ。もちろん、五輪本大会もJとバッティングしている。もし、国内でプレイしているオーバエージ選手を連れて行くとなると、当該クラブには相当な迷惑をかける事になる。
言うまでもなく、海外クラブ所属選手の召集も、ややこしい事になるだろう。一部報道で、FIFAが五輪出場にも、アジアカップなどの大陸大会と同様の強制権を提供するとの話もあるが、実際の運用はどうなる事か。
そうこう考えると、唯一まともな強化期間は、ワールドカップ予選でJが休みとなる5月末から6月上旬までの期間となるが、A代表選手が参加できないのは言うまでもない。困ったものだ。
では、どうしたらよいのか。以下、私案である。
私はリアリズムを徹底して「できる範囲で最善を尽くす」が正解だと思っている。ここで「できる範囲」と書いたのは、ワールドカップ予選への影響と、Jリーグの被害を最小限に止める事を優先せざるを得ないからだ。具体的には、上記述べた五輪本大会、従来の慣例で1クラブからの選抜は3名との不文律があるが、オーバエージ選手を供出したクラブは最大2名とするのが適切ではないか。
そして、日本協会(具体的には原博実強化担当技術委員長)が、五輪に向けた方針とその背景を、丁寧に外部に対し説明するのが重要である。「我々にとって五輪はとても大事な大会だが、一方でワールドカップはそれ以上に重要、そしてJの安定的開催も五輪と同等に重要である。そして、ブラジルでの上位進出のためにも、ロンドン五輪は『できる範囲で最善を尽くし』メダルを狙いに行く」と。とにかく、こう言う時は、もっともらしい正式声明を出すのが肝要なのだから。
そして、オーバエージには精神的な大黒柱1人、A代表の準レギュラクラス2人を選ぶ。
精神的な大黒柱とは、過去圧倒的な実績を挙げている選手、具体的には楢崎、闘莉王、長友、明神、遠藤、憲剛、岡崎、本田と言ったあたりだ。当然、この大黒柱が腕章を巻き、チームの全権も把握する。長友、岡崎、本田を選ぶ場合は、将来のA代表での幹部候補と言う意味もある。そして、ザッケローニ氏がやせ我慢を継続し、闘莉王をA代表に選ばないならば、闘莉王が五輪に回るのが一番現実的だろう。それならば闘莉王を、ワールドカップ予選中に行われるであろう強化合宿に参加させる事も可能になる。闘莉王ならば、名誉(と莫大な成功報酬)のために、きっと積極的に戦ってくれるだろう。
一方準レギュラクラスは、今期のJで好調な選手、森重、高橋秀人、伊野波、豊田、柏木、山田大記あたり、角田、関口、赤嶺も、検討されていいよね。現実的に、今回のアンダー23はセンタバックに人材を欠く感があるので、闘莉王、伊野波、高橋(あるいは森重、角田)と、後方の選手を3人揃えるのがよいようにも思える。
また上記私が提示した方針とは矛盾するが、闘莉王と吉田麻也をセンタバックに並べる手段もあるかもしれない。これはこれで、強力な布陣となるし、ブラジルへの強化布石にもつながる。
上記したように、FIFAが五輪出場の優先権を提供するとすれば、海外クラブ在籍選手の召集は随分と現実的になる。その場合の問題は、オフをどう取らせるかと言う事になる。原氏を中心に日本協会は、各選手の所属クラブと細かく連絡を取り合っていると言うが、どうなるだろうか。
香川は別格の存在であり、何としてでも召集したい。香川をメンバに加えられれば、日本協会の本気度も明確になる。次に、ドイツで完全に定位置を確保している酒井高徳(こちらもA代表から声かかる可能性があろうが)も左サイドバックとして、是非メンバに加えたい。その他の、指宿、宮市、高木善、大津、そして宇佐美は、国内の他のタレントとの競争と言う事になろう。このあたりは、同世代にライバルも多いのだ。
5.全てはこれから
過去と比較しても、今の日本のアンダー23世代の選手の個人能力は(ややセンタバックに人材を欠く感があるものの)かなり高い。そして、何より香川がいるのだ。さらに、弱点のセンタバックはオーバエージでカバー可能だ。
私は、工夫次第では十二分にメダル以上を狙えるとは思っている。金メダルとなると、相当難しかろうが、これも幾多の幸運があれば不可能ではないかもしれない。戦闘能力で日本を明らかに上回りそうなのは、ブラジルとスペインくらいだろう。全英代表がどういう精神状態で臨んでくるかが、大会の趨勢を左右しそうだが、多くのケースでこのような政治問題を抱えたチームはうまく行かないものだ(もちろん、全英代表がよいチームであれば、これはサッカーの将来を変え得る新しい息吹となろうが)。そして、ウルグアイ、メキシコ、スイスあたりは相当強いだろうが、過去の世界大会を思い起こせば、十分に抵抗できる程度の差しかないはずだ。北京大会でも、オランダは大して強くはなかったではないか。そして、スペインと同グループと言う事は、決勝までスペインとは戦わなくてよいと言う事だ。
もちろん、少なくとも現状のチームのままでは、最終ラインは弱々しいし、攻撃の共通理解も、まだまだの状態だ。相応の積み上げがなければ、1次リーグ敗退の可能性も多いだろう。そして、残念な事に、準備期間は限られている。これらもまた事実だ。
全てはこれからなのだ。そして、メンバ編成はさておき、「できる範囲で最善を尽くす」事と、「方針と背景の説明」が、何よりも肝要だ。少なくとも、北京ではその説明が曖昧で、何かフワフワした雰囲気で大会に臨んでしまったのだから。
限られた時間でも、やれる事はたくさんあり、それらをやれば、十分によい結果も可能だろう。
改めて、原博実氏に期待するものである。
2012年03月15日
個人能力で殲滅
先日の敵地マレーシア戦で、このチームの戦い方は大幅に改善、いや改革された。
シリアとの2試合が典型だったが、せわしなく前にボールを出す事を急ぎ、簡単にカットされては逆襲速攻を許し、自ら状況を苦しくしていた。過去40年近く、色々なサッカーを堪能してきたが、「敵のよさを引き出すサッカー」を全力で、しかも2試合続けて同じ相手に演じるチームを見たのは初めてだった。これはこれで経験である。
しかし、この個性的極まりないサッカーは、先般の敵地マレーシア戦で封印された。扇原を軸に、中盤でじっくりつなぐ、当たり前のサッカーに切り換えたのだ。結果、危ない場所でボールを奪われて、逆襲を食らうリスクは減ったし、敵陣に近づく頻度は減ったが、敵陣を脅かす頻度は、格段に向上した。
ただし、残念な事に、改革以降このチームはまだ2試合目。連携不備と言うよりは、「チームとしてどう崩して、どう得点を奪う」と言う概念が、まだ全くないようだ。したがい、特に前半、守備を分厚く固め、速攻に活路を見出そうとするバーレーンを、攻めあぐんだのは仕方がない事だった。前半の攻撃を見ても、およそ得点の匂いはしなかった。右サイドで酒井が、フリーランしても、東も清武も使おうとしない。その瞬間、観客席から嘆息がこぼれるが、マレーシア戦より前の長い強化期間を無駄にしていたのだから、これはもう仕方がない。
(まだまだ欠点が多いし、この日も前半ミスパスからピンチを招いたりはしていたが)扇原を軸に、スローテンポで丁寧に試合を組み立てるサッカーを構築するには、ある程度時間がかかるものだ。
え、マレーシア戦から、実質的な指揮官が変わっ(以下消去)
とにかく、丁寧にボールをつなぎ、急ぎすぎないサッカーをすれば、失点のリスクも格段に少なくなる。前半を終え、よほどの不運が錯綜しない限り、日本が負ける事はあり得ない事は確認されていた。
で、問題は、いかに点を取るか。
後半、日本は、敵プレッシャの厳しい扇原ではなく、山口が再三敵DF後方にボールを出し、原口、大津、清武らが「裏を突く」攻撃を狙い始めた。見え見えと言えばそれまでだが、とても有効な攻撃方法である。そして、もし敵に読まれたとしても、個人能力(ここでは「個人能力」と言う言葉を、技巧とフィジカルと言う切り口で使っています)を前面に押し立てれば、それを突破する事も可能になる。
1点目、比嘉のフィードを受けた原口の強引極まりない突破、そしてえぐり、鋭く低く上げられたクロス、飛び込んで来た扇原は僅かなスペースを逃さず利き足でない右で強烈に叩き込んだ。正に、圧倒的な個人能力での殲滅。
2点目、原口を警戒するバーレーンDFを引き出しておいて、原口から東に、東は冷静に丁寧なクロス、大津がつぶれ、ファーサイド全くフリーの清武に。清武が全くフリーで悠然とボールに寄るあの瞬間、スタジアムの全てが得点を予感し、全員が立ち上がる、そして、その通り歓喜の絶叫。
連携どころか、共通認識もないこのチームだが、アジアの予選くらいならば、選手個々の個人能力発揮で解決できてしまうのだ。
すばらしい時代になったものだ。
90年代、ようやくアジアのトップになれた頃。吉田光範、ラモス、都並、山口素弘、相馬、呂比須と言った、ある局面では抜群の能力を持っているし、精神的にも格段ではあるが、一部致命的な欠点を持っている選手が中核として機能していた。結果、中東諸国あたりと試合をすると、こう言った選手の弱点を突かれ、苦戦する事が再三あった。それをカバーしていたのが、全選手の意識統一による攻守に渡る連携だったり、井原正巳と言う大巨人のカバーリングだった。
オフト氏就任以降、早いもので20年経った。時代は変わった。少なくともアジア予選。連携のひとかけらもないチームが、中東の強豪国に対し、各選手の個人能力を前面に押し出すだけで、殲滅できる時代となった。11人、いや控えを含めたラージグループのいずれの選手も、もう上記の英雄達が抱えていた欠点は持っていない。
よい時代になったものだ。
今はダメダメの選手達かもしれない。しかし、昨日も述べたように、いわゆる北京世代の現代表の中核選手たちが、4年前の北京で、どんな体たらくだったかは、皆の記憶に新しい。ロンドン世代の若者達の多くも、きっと化けてくれるに違いない。皆が、圧倒的な個人能力を持っているのだから。
みんな、上記の大先輩達の知性を、ちゃあんと身につけてくれるよね。大丈夫だよね。
シリアとの2試合が典型だったが、せわしなく前にボールを出す事を急ぎ、簡単にカットされては逆襲速攻を許し、自ら状況を苦しくしていた。過去40年近く、色々なサッカーを堪能してきたが、「敵のよさを引き出すサッカー」を全力で、しかも2試合続けて同じ相手に演じるチームを見たのは初めてだった。これはこれで経験である。
しかし、この個性的極まりないサッカーは、先般の敵地マレーシア戦で封印された。扇原を軸に、中盤でじっくりつなぐ、当たり前のサッカーに切り換えたのだ。結果、危ない場所でボールを奪われて、逆襲を食らうリスクは減ったし、敵陣に近づく頻度は減ったが、敵陣を脅かす頻度は、格段に向上した。
ただし、残念な事に、改革以降このチームはまだ2試合目。連携不備と言うよりは、「チームとしてどう崩して、どう得点を奪う」と言う概念が、まだ全くないようだ。したがい、特に前半、守備を分厚く固め、速攻に活路を見出そうとするバーレーンを、攻めあぐんだのは仕方がない事だった。前半の攻撃を見ても、およそ得点の匂いはしなかった。右サイドで酒井が、フリーランしても、東も清武も使おうとしない。その瞬間、観客席から嘆息がこぼれるが、マレーシア戦より前の長い強化期間を無駄にしていたのだから、これはもう仕方がない。
(まだまだ欠点が多いし、この日も前半ミスパスからピンチを招いたりはしていたが)扇原を軸に、スローテンポで丁寧に試合を組み立てるサッカーを構築するには、ある程度時間がかかるものだ。
え、マレーシア戦から、実質的な指揮官が変わっ(以下消去)
とにかく、丁寧にボールをつなぎ、急ぎすぎないサッカーをすれば、失点のリスクも格段に少なくなる。前半を終え、よほどの不運が錯綜しない限り、日本が負ける事はあり得ない事は確認されていた。
で、問題は、いかに点を取るか。
後半、日本は、敵プレッシャの厳しい扇原ではなく、山口が再三敵DF後方にボールを出し、原口、大津、清武らが「裏を突く」攻撃を狙い始めた。見え見えと言えばそれまでだが、とても有効な攻撃方法である。そして、もし敵に読まれたとしても、個人能力(ここでは「個人能力」と言う言葉を、技巧とフィジカルと言う切り口で使っています)を前面に押し立てれば、それを突破する事も可能になる。
1点目、比嘉のフィードを受けた原口の強引極まりない突破、そしてえぐり、鋭く低く上げられたクロス、飛び込んで来た扇原は僅かなスペースを逃さず利き足でない右で強烈に叩き込んだ。正に、圧倒的な個人能力での殲滅。
2点目、原口を警戒するバーレーンDFを引き出しておいて、原口から東に、東は冷静に丁寧なクロス、大津がつぶれ、ファーサイド全くフリーの清武に。清武が全くフリーで悠然とボールに寄るあの瞬間、スタジアムの全てが得点を予感し、全員が立ち上がる、そして、その通り歓喜の絶叫。
連携どころか、共通認識もないこのチームだが、アジアの予選くらいならば、選手個々の個人能力発揮で解決できてしまうのだ。
すばらしい時代になったものだ。
90年代、ようやくアジアのトップになれた頃。吉田光範、ラモス、都並、山口素弘、相馬、呂比須と言った、ある局面では抜群の能力を持っているし、精神的にも格段ではあるが、一部致命的な欠点を持っている選手が中核として機能していた。結果、中東諸国あたりと試合をすると、こう言った選手の弱点を突かれ、苦戦する事が再三あった。それをカバーしていたのが、全選手の意識統一による攻守に渡る連携だったり、井原正巳と言う大巨人のカバーリングだった。
オフト氏就任以降、早いもので20年経った。時代は変わった。少なくともアジア予選。連携のひとかけらもないチームが、中東の強豪国に対し、各選手の個人能力を前面に押し出すだけで、殲滅できる時代となった。11人、いや控えを含めたラージグループのいずれの選手も、もう上記の英雄達が抱えていた欠点は持っていない。
よい時代になったものだ。
今はダメダメの選手達かもしれない。しかし、昨日も述べたように、いわゆる北京世代の現代表の中核選手たちが、4年前の北京で、どんな体たらくだったかは、皆の記憶に新しい。ロンドン世代の若者達の多くも、きっと化けてくれるに違いない。皆が、圧倒的な個人能力を持っているのだから。
みんな、上記の大先輩達の知性を、ちゃあんと身につけてくれるよね。大丈夫だよね。
2012年03月13日
五輪予選最終戦のはずのバーレーン戦前夜2012
だんだん興奮してきた。
明日は五輪予選、たぶん最終戦となるはずの国立バーレーン戦だ。このようなタイトルマッチの興奮は、やはり格別なものがある。
今回の五輪代表チームには、無数に不満がある。と言うか、呆れてもいる。知性の欠如、単調な攻撃、相手へのリスペクトの不足。1992年にオフト氏がA代表監督に就任した以降、知性と士気の2面では、最低の代表チームと行っても過言ではないだろう。2006年のいわゆるジーコジャパンも酷かったが、あのチームは滅茶苦茶だったが、選手の多くは成熟し、適切に戦おうとしていた。それに対して、今回の五輪代表は、多くの選手が知性のひとかけらもないサッカーで、敵のよさを引き出し、自ら苦戦を招くと言う悪循環を繰り返して来た。
ようやく、先日のマレーシア戦で、当たり前のサッカーを見せ、選手個々の戦闘能力差を発揮した勝利を上げてくれた状況にある。
まあ、いいだろう。
4年前のチームも酷かった。北京本戦でさえ、長友は自信のないプレイでUSA戦で致命的な失点を演出、本田はオランダ戦であり得ないPKを提供、岡崎は気負いばかりが目立ちファウルを連発、香川は自らイニシアチブを取る事はなかった。
ね、そう考えると、何か余計な心配しなくてよいように思えてくるでしょ。
今、何の役にも立たない選手でも、彼らはエリート中のエリート。何かのきっかけを掴んでくれれば、化けるのではないかと。
まあ、この年代の選手の中で、最もJでの活躍実績がある、大前と青木が不在だとかのツッコミは別として。
明日が愉しみだ。
最高の君が代を歌い、最高の声援を送り、最高の結果を待つ。
こうなると、理屈でも、何でもない。
私たちの若者に最大限の声援を送り、共に戦う事。
そして、歓喜。
他に何があろうか。
明日は五輪予選、たぶん最終戦となるはずの国立バーレーン戦だ。このようなタイトルマッチの興奮は、やはり格別なものがある。
今回の五輪代表チームには、無数に不満がある。と言うか、呆れてもいる。知性の欠如、単調な攻撃、相手へのリスペクトの不足。1992年にオフト氏がA代表監督に就任した以降、知性と士気の2面では、最低の代表チームと行っても過言ではないだろう。2006年のいわゆるジーコジャパンも酷かったが、あのチームは滅茶苦茶だったが、選手の多くは成熟し、適切に戦おうとしていた。それに対して、今回の五輪代表は、多くの選手が知性のひとかけらもないサッカーで、敵のよさを引き出し、自ら苦戦を招くと言う悪循環を繰り返して来た。
ようやく、先日のマレーシア戦で、当たり前のサッカーを見せ、選手個々の戦闘能力差を発揮した勝利を上げてくれた状況にある。
まあ、いいだろう。
4年前のチームも酷かった。北京本戦でさえ、長友は自信のないプレイでUSA戦で致命的な失点を演出、本田はオランダ戦であり得ないPKを提供、岡崎は気負いばかりが目立ちファウルを連発、香川は自らイニシアチブを取る事はなかった。
ね、そう考えると、何か余計な心配しなくてよいように思えてくるでしょ。
今、何の役にも立たない選手でも、彼らはエリート中のエリート。何かのきっかけを掴んでくれれば、化けるのではないかと。
まあ、この年代の選手の中で、最もJでの活躍実績がある、大前と青木が不在だとかのツッコミは別として。
明日が愉しみだ。
最高の君が代を歌い、最高の声援を送り、最高の結果を待つ。
こうなると、理屈でも、何でもない。
私たちの若者に最大限の声援を送り、共に戦う事。
そして、歓喜。
他に何があろうか。
2012年02月23日
マイナスからのスタートだけれども
五輪代表は、まあ「まともな試合」を見せてくれた。とは言え、この最終予選に入って以降、「まとも」と言ってよい試合を見せてくれたのは、初めてなのだから、評価すべきなのだろう。
今までのようにせわしない攻撃ではなく、扇原がテンポを1回落とした「当り前のサッカー」を見せてくれた。もちろん、今までのやり方が滅茶苦茶だったから、積み上げた連携は皆無に近く、せっかくの「緩」から「急」への変化は、ほとんど見られなかった。しかし、個人能力で崩せる確率は、「緩」で攻め込む方が、「急」ばっかりよりは、格段に高まる。そのため、大迫、扇原、酒井の圧倒的な個人能力で、得点を重ねる事に成功した。
4点差と言う結果も、合格点だろう。もちろん、贅沢を言えばきりがない。後半序盤に4点差として、しかも前半からじっくりとボールを回した事でマレーシアが相当疲労していたのだから、もう2点くらいは欲しかった。ただし、現実的には大迫と扇原が敵のラフプレイで負傷退場してしまったのだから、仕方がない。上記の通り、現状のこのチームでは「個人能力」で点をとるしかないのだから。永井も原口も斉藤も、よい体勢でボールを受けて初めて機能するタレントだが、よいボールを供給してくれる人材が、後ろからも前からもいなくなってしまっては。そう言う意味では、自ら能動的にスペースを作って突破ができる山崎の離脱は、本当に痛かった訳だ。
重要な事は、扇原と酒井が、堂々と個人能力を前面に出すプレイをしてくれた事だ。ここまで追い込まれたためかもしれないけれど。そして、相変わらず、東は酒井にスペースを提供しようとはしていなかったし、鈴木や濱田は急ぎ過ぎのパスが多かった。したがって、関塚氏が能動的に、扇原にゆっくりした展開を指示したり、酒井の前進を狙わせた訳ではないように思える。つまり、この2人は、自らの判断で、従来の試合とは異なる、しかも自らの能力を前面に押し立てたプレイを見せてくれたのだ。いや、結構な事ではないか。ロンドンはさておき、ブラジルに向けては。
ザッケローニ氏や原氏が、あの酷いサッカーを放置してきたのは、この2人の自覚を促すためだったのではないかとすら、邪推したくなる。いや、関塚氏の深謀遠慮?
ただし、今までがあまりに酷かったためか、このチームは問題山積なのも、また事実。
酒井を除く3人のディフェンダ、鈴木、濱田、比嘉の、自信喪失は目を覆うものだった。ここまでのシリアとの2試合で、急ぎ過ぎから再三敵に簡単にボールを渡し、安易に逆襲を許し、難しい1対1の局面を幾度も作られたトラウマのためだろうか。この日も、大した攻撃ではないのに、1対1となると、完全に腰が引けてしまい、与えなくてもよいコーナキックを再三提供していた。困ったものだ。
また、比嘉はこの日(いや、この日も、と言うべきか)、あり得ないプレイをしている。頭を強打した大迫が動けなくなっていた時間帯、永井が交代で入ろうとタッチ沿いで待機していた時(アナウンサがそう言っていた)、反対サイドで得たスローイン。「ああ、大迫を代えられる」と安堵していたら、何と比嘉はクイックスローで、プレイを継続してしまった。何と周りが見えていない頭の悪い選手だろう。このポジションは、ドイツに去った酒井高徳を含め、丸橋祐介、金井貢史、そしてこの日も控えに回った吉田豊と、Jで定位置を確保している選手が多数いるのだが。
東も、相変わらずひどかった。1点目につながったスルーパスなど見事なものだった。なるほど、この選手は鋭い個人技を持っている。けれども、酒井のスペースを消し続けたる動きを典型に、チームメートの特長、能力を活かそうと言う発想が、まるでないのだ。
たとえば、酒井と比嘉、大迫と永井、原口と斉藤では当然使い方が異なる。けれども、そのような意識が極めて希薄なのだ。受け手にパスを合わせるのではなく、受け手に自らのパスに合わせる事を要求すると言う意味では、若かりし頃の(つまり全盛期の)中田英寿をちょっと思い出したりする。けれども、残念ながら、現状の東のパスの鋭さは、往時の中田には遠く及ばない。
まあ、いいだろう。文句を言いたい事は無数にあるが、少なくともこの日は、今まであまりにひどかったこのチームが、相応にまともな試合を見せてくれたのだから。上記したように、現状のチームは、マイナス成分が相当に大きい。でも、たとえマイナスでも、そのマイナスを少しずつ減らし、いつかは反転するためのスタートとなる試合だった。
今までのようにせわしない攻撃ではなく、扇原がテンポを1回落とした「当り前のサッカー」を見せてくれた。もちろん、今までのやり方が滅茶苦茶だったから、積み上げた連携は皆無に近く、せっかくの「緩」から「急」への変化は、ほとんど見られなかった。しかし、個人能力で崩せる確率は、「緩」で攻め込む方が、「急」ばっかりよりは、格段に高まる。そのため、大迫、扇原、酒井の圧倒的な個人能力で、得点を重ねる事に成功した。
4点差と言う結果も、合格点だろう。もちろん、贅沢を言えばきりがない。後半序盤に4点差として、しかも前半からじっくりとボールを回した事でマレーシアが相当疲労していたのだから、もう2点くらいは欲しかった。ただし、現実的には大迫と扇原が敵のラフプレイで負傷退場してしまったのだから、仕方がない。上記の通り、現状のこのチームでは「個人能力」で点をとるしかないのだから。永井も原口も斉藤も、よい体勢でボールを受けて初めて機能するタレントだが、よいボールを供給してくれる人材が、後ろからも前からもいなくなってしまっては。そう言う意味では、自ら能動的にスペースを作って突破ができる山崎の離脱は、本当に痛かった訳だ。
重要な事は、扇原と酒井が、堂々と個人能力を前面に出すプレイをしてくれた事だ。ここまで追い込まれたためかもしれないけれど。そして、相変わらず、東は酒井にスペースを提供しようとはしていなかったし、鈴木や濱田は急ぎ過ぎのパスが多かった。したがって、関塚氏が能動的に、扇原にゆっくりした展開を指示したり、酒井の前進を狙わせた訳ではないように思える。つまり、この2人は、自らの判断で、従来の試合とは異なる、しかも自らの能力を前面に押し立てたプレイを見せてくれたのだ。いや、結構な事ではないか。ロンドンはさておき、ブラジルに向けては。
ザッケローニ氏や原氏が、あの酷いサッカーを放置してきたのは、この2人の自覚を促すためだったのではないかとすら、邪推したくなる。いや、関塚氏の深謀遠慮?
ただし、今までがあまりに酷かったためか、このチームは問題山積なのも、また事実。
酒井を除く3人のディフェンダ、鈴木、濱田、比嘉の、自信喪失は目を覆うものだった。ここまでのシリアとの2試合で、急ぎ過ぎから再三敵に簡単にボールを渡し、安易に逆襲を許し、難しい1対1の局面を幾度も作られたトラウマのためだろうか。この日も、大した攻撃ではないのに、1対1となると、完全に腰が引けてしまい、与えなくてもよいコーナキックを再三提供していた。困ったものだ。
また、比嘉はこの日(いや、この日も、と言うべきか)、あり得ないプレイをしている。頭を強打した大迫が動けなくなっていた時間帯、永井が交代で入ろうとタッチ沿いで待機していた時(アナウンサがそう言っていた)、反対サイドで得たスローイン。「ああ、大迫を代えられる」と安堵していたら、何と比嘉はクイックスローで、プレイを継続してしまった。何と周りが見えていない頭の悪い選手だろう。このポジションは、ドイツに去った酒井高徳を含め、丸橋祐介、金井貢史、そしてこの日も控えに回った吉田豊と、Jで定位置を確保している選手が多数いるのだが。
東も、相変わらずひどかった。1点目につながったスルーパスなど見事なものだった。なるほど、この選手は鋭い個人技を持っている。けれども、酒井のスペースを消し続けたる動きを典型に、チームメートの特長、能力を活かそうと言う発想が、まるでないのだ。
たとえば、酒井と比嘉、大迫と永井、原口と斉藤では当然使い方が異なる。けれども、そのような意識が極めて希薄なのだ。受け手にパスを合わせるのではなく、受け手に自らのパスに合わせる事を要求すると言う意味では、若かりし頃の(つまり全盛期の)中田英寿をちょっと思い出したりする。けれども、残念ながら、現状の東のパスの鋭さは、往時の中田には遠く及ばない。
まあ、いいだろう。文句を言いたい事は無数にあるが、少なくともこの日は、今まであまりにひどかったこのチームが、相応にまともな試合を見せてくれたのだから。上記したように、現状のチームは、マイナス成分が相当に大きい。でも、たとえマイナスでも、そのマイナスを少しずつ減らし、いつかは反転するためのスタートとなる試合だった。
2012年02月20日
五輪代表選手達に期待して
五輪代表監督の関塚氏には、過去再三厳しい論評を繰り返して来た。今さらそれを繰り返すつもりはない。まあ、こう言う事はよくある事なのだ。飲み込みづらい状況を、飲み込みながら、チームを応援するのも、サッカーの愉しみの1つ。そして、己の悲観的予測が外れ、土下座する機会が訪れるのは、サポータ冥利と言うものだ。
とは言え、どうして欧州クラブ在籍選手の召集にこだわるのかは、全く理解できない。先方の判断により、召集選手が変化してしまう事の方がよほどチーム作りの障害になると思うのだが。もちろん、大津はよい選手だ。呼べるにこした事はない。けれども、Jにも多数優秀な選手はいる。五輪本大会ならばさておき(いや、それへの出場権が危ういから、皆で悩んでいるのだが)、予選のこの時点では、確実に召集可能な選手でチームを編成すべきだと思うのだが。まあ、いいや。
しかし、改めて選手達に問いたい。
各選手達は、不本意にも「前に、前に」と言うサッカーを指示され、苦闘しているのだろう。たぶん「不本意と考えている」と思っているのだけれども、そうだよね、皆さん。
しかし、プレイするのは、監督でなく、選手達なのだ。たとえ、監督が不可思議な指示をしていたとしても、その局面の判断は選手達に任されているのがサッカーだ。そして、自分が「ここは急がない方がよい」と考えたならば、急がなければよいのだ。自分の得意なプレイがでいないならば、要求すればよいのだ。
たとえば、扇原貴宏に問いたい。
周囲を見て、前線の受け手の準備が整っていない時に、強引に前に出すのが得策ではない事は、わかっているはずだ。また、後方で安全策で回す事が、バランスを崩すと判断したならば、自らが強引にドリブルで前進すると言う手段もある。いずれにしても、常に変化をつける事が、扇原の仕事のはずだ。その代わり「必ず自分にボールを集めろ」と、チームメートに断言する必要はあるかもしれないが。
たとえば、酒井宏樹に問いたい。
自らの最大の武器を、もっとチーム内で主張すべきではないのか。自分が右サイド前線に進出できれば、大仕事ができる事を。そして、そのためには、自分の前のスペースを空けてもらい、その上で自分がクロスを蹴りやすい場所に、正確にパスを入れてくれる事を要求すべきだろう。その代わり、「毎試合アシストを成功させる」と、チームメートに断言する必要はあるかもしれないが。
五輪に出る事ができるか、できないか。もし、できなければ、その痛みは結局選手達に降り掛かる。もし、できれば、その経験は選手達にとても貴重なものになる。
アテネでも、北京でも、五輪代表は、試合内容も結果も酷かった。でも、当時の五輪代表選手の幾人かは、その後も努力を重ね、今や堂々たる日本代表選手だ。彼らは、五輪の貴重な経験を、自らのものにしたのだ。
結局、戦うのは選手達なのだ。そして、1人1人が、いかに知的にプレイできるかが問われているのだ。
今、重要な事は、残り2試合を「きっちりと勝ち切る事」につきる。状況が許せば、大量点がとれれば、なお嬉しいが、それは試合展開次第と考えるべきだろう。もはや、監督采配云々ではなく、各選手が、プロフェッショナルとしての誇りを持ち、常に状況を的確に判断したプレイをしてくれればよいのだ。そうすれば、結果はついてくるはずだ。
とは言え、どうして欧州クラブ在籍選手の召集にこだわるのかは、全く理解できない。先方の判断により、召集選手が変化してしまう事の方がよほどチーム作りの障害になると思うのだが。もちろん、大津はよい選手だ。呼べるにこした事はない。けれども、Jにも多数優秀な選手はいる。五輪本大会ならばさておき(いや、それへの出場権が危ういから、皆で悩んでいるのだが)、予選のこの時点では、確実に召集可能な選手でチームを編成すべきだと思うのだが。まあ、いいや。
しかし、改めて選手達に問いたい。
各選手達は、不本意にも「前に、前に」と言うサッカーを指示され、苦闘しているのだろう。たぶん「不本意と考えている」と思っているのだけれども、そうだよね、皆さん。
しかし、プレイするのは、監督でなく、選手達なのだ。たとえ、監督が不可思議な指示をしていたとしても、その局面の判断は選手達に任されているのがサッカーだ。そして、自分が「ここは急がない方がよい」と考えたならば、急がなければよいのだ。自分の得意なプレイがでいないならば、要求すればよいのだ。
たとえば、扇原貴宏に問いたい。
周囲を見て、前線の受け手の準備が整っていない時に、強引に前に出すのが得策ではない事は、わかっているはずだ。また、後方で安全策で回す事が、バランスを崩すと判断したならば、自らが強引にドリブルで前進すると言う手段もある。いずれにしても、常に変化をつける事が、扇原の仕事のはずだ。その代わり「必ず自分にボールを集めろ」と、チームメートに断言する必要はあるかもしれないが。
たとえば、酒井宏樹に問いたい。
自らの最大の武器を、もっとチーム内で主張すべきではないのか。自分が右サイド前線に進出できれば、大仕事ができる事を。そして、そのためには、自分の前のスペースを空けてもらい、その上で自分がクロスを蹴りやすい場所に、正確にパスを入れてくれる事を要求すべきだろう。その代わり、「毎試合アシストを成功させる」と、チームメートに断言する必要はあるかもしれないが。
五輪に出る事ができるか、できないか。もし、できなければ、その痛みは結局選手達に降り掛かる。もし、できれば、その経験は選手達にとても貴重なものになる。
アテネでも、北京でも、五輪代表は、試合内容も結果も酷かった。でも、当時の五輪代表選手の幾人かは、その後も努力を重ね、今や堂々たる日本代表選手だ。彼らは、五輪の貴重な経験を、自らのものにしたのだ。
結局、戦うのは選手達なのだ。そして、1人1人が、いかに知的にプレイできるかが問われているのだ。
今、重要な事は、残り2試合を「きっちりと勝ち切る事」につきる。状況が許せば、大量点がとれれば、なお嬉しいが、それは試合展開次第と考えるべきだろう。もはや、監督采配云々ではなく、各選手が、プロフェッショナルとしての誇りを持ち、常に状況を的確に判断したプレイをしてくれればよいのだ。そうすれば、結果はついてくるはずだ。