2011年06月19日

東慶悟と酒井宏樹に突き付けられた反省

 開始2分過ぎだったか。日本の連続CKをしのいだクウェートが後方からロングフィード。それを受けようとしたクウェートの選手(たぶん6番だったか)に、鈴木大輔が厳しく当たり、簡単にボールを奪う。鈴木は落ち着いて左サイドに精度の高いボールを入れる事に成功した。この場面を見て、正直ここ最近の緊迫感が、過剰警戒だった事を認識した。クウェートはフィジカルも技巧も、それほど強くない。相当戦闘能力に差があるのが、はっきりとわかったのだ。鈴木大輔はJを代表する優秀な若手CBだが、いつもはアルビレックスでもっと厳しい敵攻撃選手と戦っているはずだ。

 私たちは根底に考え違いをしていたようだ。関塚氏はすべてわかっていたのだ。クウェートは弱い。この明らかに格下の敵に確実に勝つために(あるいは勝つ確率を最大限にするために)、氏は淡々と準備を進めて来たのだ。
 たとえば、濱田水輝。レッズでもほとんど出場経験がない(出場した際の不出来も印象的だったのだが)だけに、私は起用を疑問視していた。このポジションには村松大輔もいる。Jで存分な結果を残している渡部大輔や青木拓矢を中盤に起用して、山村をCBに下げて鈴木大輔と並べる手もある。高橋峻希を右サイドに起用して、頭のよい酒井宏樹をCBで試すのも1つのやり方だ。
 けれども、このクウェートを見て、関塚氏の慧眼に感心した。クウェートに中盤を制される心配はない。ならば、前に強く、高さもある濱田は、とても有効だ。実際、前半から濱田は厳しい守備で敵を封じると共に、セットプレイから鮮やかな2点目も決めてくれた。さらに言えば、こうやって五輪代表で経験を積む事で、この185cmの優秀な素材は間違いなく成長するはずだ。加えて、山村が中盤で利く。この守備力と展開力を具備する若者は、鈴木大輔と濱田がクウェートの攻撃選手を止めるや否や、すぐに挟み込んでボールを奪い、素早い展開で組み立てる。確かにこの相手ならば、この位置に守備が強い選手が欲しい。
 かくして前半から日本が圧倒。攻撃のリーダ東慶悟を軸に猛攻を仕掛ける。東は、時に大迫を追い出し前線で引き出したのみならず、強引にシュートを狙う。あるいは、時に後方に引いて、そこに清武や山村や山崎を進出させて、鋭いラストパスを繰り出す。かくして、日本は幾度も決定機を掴みながら決め切れずにいたが、18分に日本が先制。右サイドから、清武と酒井の巧みな連携から2度崩し、クウェートのクリアを拾った山村が左にシンプルに展開、それを受けた比嘉が左をえぐりセンタリング。この揺さぶりでクウェート守備陣は、完全にボールウォッチャになり、逆から飛び込んだ清武が見事なダイビングヘッドを決めた。さらに38分CKから濱田がダイナミックなヘディングを決めて2−0。重要なのは、得点の時間帯。20分おきの2得点と言うのは、押し込んで揺さぶったために、敵DFが疲れ切った事を示している。見事な前半だった。

 後半は立ち上がりに厳しくプレスをかけて、クウェートを沈黙させたいところだった。しかし、クウェートも必死の抵抗。後半立ち上がりから、前線に人を増やし、前掛りに来た。しかし日本は鈴木を軸に冷静に対応。落ち着いて攻め返し、16分には山崎の好技から、大迫が抜け出し落ち着いて3点目を決めてくれた。
 こうなれば、試合の全ては日本のものになるはずだった。このまま試合を終えてもよい。もしクウェートが強引に出てくれば、落ち着いて逆襲し4点差、5点差にするのも難しくないはずだ。ところが、ここまで落ち着いた守備で右サイドを封印し、鋭い攻撃参加で再三決定機を演出していた酒井宏樹が信じ難いミス。後方からプレスを受けながらボールをキープ、中央の鈴木が権田へのバックパスを指示したにもかかわらず(つまり権田がそれを受ける準備ができていたにもかかわらず)強引に振り向こうとしてボールを奪われ、そこから崩されて失点してしまった。
 酒井はJでの実績、冷静で知的な守備振り、右サイドから繰り出す高精度クロス(特に先日のマリノス戦で北嶋に合わせた高精度クロスが最高だった)で、このチームではA代表に最も近い存在と言う雰囲気があった。実際この日も幾度も高精度のクロスを上げ決定機を演出していた。しかし、この軽率なミスでその地位を完全に失ったと言ってもよいだろう。この大事なタイトルマッチであり得ないミスだった。関塚氏は酒井を猛省させるために、レッズの高橋峻希を呼び、酒井を外すくらいの事をすべきではないのか。と言いたくなるくらいの残念なプレイだった。
 関塚氏としても、疲労が顕著な後半半ば過ぎにアウェイゴールを奪われて2点差となったので、もう後方の選手に一切無理をさせない判断。酒井も比嘉も押し上げず、山村か山口蛍(山本に代って起用された)も、後方に残る安全策となった。こうなると、日本は前半のように「前に前に」と行ってはいけないのだが、エースの東はこの時間帯でも積極的に「前に前に」を継続してしまった。前半の東の攻撃リードは実に見事だったが、後半特に1点取られてからは大いに不満。あそこは、落ち着いて後方でキープし、クウェートを引き出しておいて、大迫や原口に裏を突かせたかった。東も酒井と同様に、目指すはロンドンではなくて、ブラジルやロシアのはずなのだから。

 まあ、終わってみれば、ホームで3−1の完勝。「敵地で2−0で負けたらどうしよう」と言うテレビ局的な煽りを相手にする必要はあるまい。いくら敵地、高温灼熱でも、相手はこのクウェートなのだ。そのような僅少な確率を心配するのではなく、彼らがそのような適度なプレッシャを受けながら、難しい敵地戦を経験し、より逞しくなるのを期待するのが健全と言うものだろう。そして、そのような経験の積み上げのために、このような若年層の国際試合があるのだ。
 大事な事は、2014年にザッケローニ氏が、彼らの世代から何人を選ぶかなのだから。
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2011年06月18日

五輪予選ホームクウェート戦前夜

 今日は町内会の寄り合い!に出席しなければならず、ベガルタのアルビレックス戦は全く映像を見られていない。ただ、結果を知っているだけ。終盤追いつかれる事もあれば、追いつく事もあると、書いてしまえば当たり前なのだけれども、やはりこれは当たり前ではないよね。すごい。詳細は別途。

 で、明日の五輪予選について、改めて講釈を垂れたい。色々検討したのだが、どうしても調整つかず、現地で応援できなくて、情けない限りなのだが。
 以前も述べたように、ホーム&アウェイとは言え、一騎打ちの予選と言うのは番狂わせの可能性も高く、イヤなものだ。しかも、時代の流れと言うのか、五輪予選で強化の時間がここまで取る事ができなかったのは、日本サッカー史上初めての事ではないか。そう言う状況下で、関塚氏はチームのまとまりを重視したのだろう。昨年アジア大会を制したメンバに、Jで活躍中の精鋭を加えるやり方でチームを構成した。守備陣は鈴木大輔と山村を軸に、酒井高徳、酒井宏樹、吉田豊らJで実績のあるサイドバックを加え、攻撃陣は永井謙佑と東を軸に、清武、原口、大迫らを新たに選考している。もちろんGKには権田が起用されている。改めてメンバを見てみると、アジア大会から考えれば、相当戦闘能力は向上しているのは間違いない。
 ただ、これまた以前に述べたが、それでも選考されていない有力選手は多数いるものだ。私は大前や高橋峻希あたりは、絶対選考すべきだったとは思うけれど、関塚氏はこの一騎打ちを、考え得る限りの最大確率で勝ち抜けるメンバを選んだのだろう。
 ただ、この手の年代別代表と言うのは、どうしても層の薄いポジションと言うのがあるもので(あるいは「早熟の選手が少ない」と言う表現が適切だろうが)、今回の年代ではセンタバックがそれに当たる。たとえば、北京ではFW、アテネでは攻撃的MF、シドニーではGK、アトランタでは右サイドのタレントが、それぞれ不足気味だった。もっとも、北京で最も人材不足気味だったFWから、岡崎が完全にA代表に中心選手となり、李忠成も定着しつつある。一方で、同じ北京で最もタレントがいたCBからはいずれも代表に定着した選手がいない。このあたりが、年代別代表のおもしろさ、難しさなのだろう。

 ともあれ、エースの永井が負傷し、今日の練習にも不参加、と言う情報は、やはり心配。「とうとう日本もアジジ作戦か」と言う邪説もあるが、まさかねえ。ファーストタッチが巧くて、加速が抜群に速くて、動き出しもまた早いと言う特長を持つ、この若きストライカがこのチームのエース(ただし現時点の)である事は言うまでもない(しかもこの選手は守備も献身的だし、ボールの引き出しも受けも巧い)。何とか間に合ってくれればよいのだが。
 もちろん、永井が不在でも、優秀な攻撃タレントは多数いるこのチーム。中でも、このチームにおける東と山崎は、才気を実に伸び伸びと発揮している。そして、Jで相当実績を挙げている周囲のタレント達。180分で、2、3点取る実力は十分にあると見る(もちろん、ホームで早い時間帯に先制できれば、もっと得点できる可能性もあるだろう)。

 言うまでもなく、この手のタイトルマッチは守備が重要。上記したCBの層の薄さは気がかりだが、アジア大会からの連携のよさに期待しよう。さらに、その後加わったサイドバック達は皆、既に相当な実績があるブラジル本大会候補生達。信頼してよいだろう。
 現実的にクウェートは後方を固めてくるだろう。となれば、守備の不安はセットプレイと逆襲速攻への対処となる。そこへの対応は、ここまでの集合トレーニングで相当な準備をしているはず。特に先日の豪州戦の、開始早々のCK崩れからの失点と言う失敗経験も、有効にはたらくだろう(だよね)。唯一の不安は、ホームの試合で点を取れずに0−0で推移し、じれて不用意に前掛りになる事。ここは180分間(最悪敵地での延長を含め)勝てばよいと冷静になる事が大事だろう。
 また、何がしかの交通事故で先制を許した場合どうするか。これも慌ててはいけない。特に最初の試合(つまり前半90分)で、先に得点を許しても(たとえ後半が敵地でも)いつかは追いつきひっくり返せると考えて戦えばよい。同点で推移して、敵地後半で先制されたら、少々の無理は必要になるが、前半のホームでは慌てる必要はない。
 クウェートの監督は「日本に勝てば大ボーナス、負ければクビ」と言う契約だろうから、失うものはない。もし勝負度胸がある監督ならば、日本のホームでも立ち上がりに総攻撃をかけるような奇策をしてくる可能性もある。それに対しても、事前に想定していれば対応できるだろう。
 唯一のリスクは、クウェートがとんでもなく一芸に秀でたストライカ(2mくらい上背があるとか、50m走のタイムで永井を上回るとか、帰化選手あたりで)を抱えていて、しかもここまでほとんどの国際試合でその存在を隠しているようなケースくらいか。ビックリしているうちに2点差にされたりするとしたら、それだが、まさかねえ。

 関塚氏は日本人監督としては、岡田氏、西野氏、小林伸二氏に次ぐ実績を持つ。
 実は関塚氏は、私の同年生まれ。先日も同級生への想いを語ったが、同級生屈指のサッカーエリートが、管理職として大活躍するのを見続けるのも愉しい事だ。そして、そのような偉大な同級生が、我々の子供の世代の若年層代表を率いて、世界に挑戦するのは、やはり何とも言えない愉しみがある。歳をとってくると、改めて色々なサッカーの愉しさがあるのだと再発見する。現地に行かれない情けなささを感じつつ、テレビ桟敷でじっくりと大事なタイトルマッチを味わいたい。
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2011年06月08日

ロンドン五輪予選近づく

 帰国して、たまった映像を観るのは愉しい。まず今日選択したのは、五輪代表の豪州戦。試合当日は間抜け極まりない事に、その豪州に滞在していたのだが、この試合の報道はほとんどなかったようだ。だいたい、かの地のスポーツ放送は、オーストラリアンフットボールとラグビーとクリケットしか報道していないような気もした。それでも、サッカーは相当強いのだから、大したものだな。

 試合は開始早々に永井の突破からの決定機を掴む。ところがそれで獲得した直後のCKから、逆に豪州に見事な逆襲速攻を決められ先制を許す。以降、前半は完全な豪州ペース。特に左DFの比嘉、左MFの原口の位置取りが曖昧で、再三左サイドから突破を許した。この2人を含めて、日本の各選手は豪州がフィジカルが強い事をよく理解して厳しく当たるのだが、位置取りの悪さを含めた連携の悪さが災いし、2人目の当たりがないので、完全に押し込まれてしまった。GK権田の再三のファインプレイがなければ、勝負は完全に前半でついていた事だろう。
 前半終了間際に、山村がうまいインタセプトから永井にスルーパス。永井が見事なスピードから抜け出し、落ち着いたシュートでGKを破って同点に。後半は、豪州の運動量が落ちた事、日本の守備が修正された事もあり、日本がペースを掴んだ。そして、永井の活躍を軸に2点を奪い3−1での勝利。
 しかし、前半の守備のまずさは、直近に近づいた五輪予選クウェート戦に、大いに不安を感じさせるものだった。もちろん、権田と永井の充実は見事なものがある。よほどの不運が訪れなければ、大丈夫だとは思うけれど。永井と言うタレントは、足の速さも相当だが、動き出しの早さ、パスを受けたファーストタッチ、勤勉な守備など、FWとしての能力は相当高い。使われて生きるタイプだけに、ワールドカップ予選でも相当機能する期待が持てる。大体、最前線の点取り屋に盤石の信頼を置いて戦う五輪予選は、遥か彼方釜本時代以来じゃないか。アテネ予選時の田中達也と大久保も中々だったけどね。

 過去の五輪代表と異なり、関塚氏に提供された準備時間は非常に限られたもの。したがって、現状でチーム作りが遅れているのは仕方がない部分もある。また不思議な事にこの世代はCBだけは極端にタレントが不足しており、Jで定位置を確保しているのは鈴木大輔と村松大輔くらい(今気がついたがこの2人は同じ名前だったんだ、その村松はCBとしてはやや小柄で、エスパルスでは最近アンカーとして起用される事が多いし)。ここに人材を欠くのは苦しい。そして、この試合ではその鈴木と左DFの酒井高徳が直前の負傷で離脱したため、さらに難しい布陣となった。
 ただし、関塚氏の選手選考にも疑問は多い。セレッソの左DF丸橋、レッズの右DF高橋峻希、アルディージャのユーテリティプレイヤ渡部大輔(この選手も大輔だ)、レイソルのMF茨田と言った、Jで相当なパフォーマンスを発揮している選手を選んでいれば、相当後方の采配は楽になると思うのだが。大学生の比嘉、Jであまり出場機会を得ていない濱田、實藤、山口らよりも、格段に彼らの方が実績があるのだけれど。米本の離脱は確かに痛いが、渡部や茨田を起用すれば、山村をCBに下げる選択肢もとれるし、高橋を右DFに使って、大柄な酒井宏樹をCBに起用する手もあるだろう(酒井宏は頭のよい選手だから、CBもこなせるのではないか)。
 攻撃ラインについては、事情が守備ラインと異なり、多士済々の人材の「誰を起用しないか」が問題となる。よく話題になるのは宇佐美と宮市だが、それ以前に香川と金崎がいる。さらに山田直輝、小野裕二、工藤、水沼ら、相応の実績を持つタレントがズラリ。ただ、私は勝負に徹すると言う意味では、何があっても大前元紀だけは選ぶべきだと思うのだが。たとえば、この日の豪州戦に関して言えば、原口(一瞬すばらしいプレイを見せてくれるが、守備面でも問題が多く、消えている時間も長い、もちろん我慢して使い続ける事で化けた時には、どんなすばらしい選手になってくれるのかと期待も大きいのだが)の代わりに大前を使うだけで、問題の多くは解決したのではないかと思う。ホーム&アウェイの一騎打ちには、精神的にタフで戦い続けられる選手が不可欠。今のエスパルスでの大前の豊富な運動量と高校時代からのゴール前の冷徹さを見ていると、正にそう言う選手だと思えてならないのだが。まあ異論も多かろうが。

 まあ、こうやって監督に文句を言うのが、代表チームの愉しみ方。今回の五輪代表はCBのみタレントが足りないと言う、非常にややこしい状況ゆえ、一層文句を言いやすい状況がある。特に最終ラインの編成をどうするか、文句を言うのはとても愉しい知的遊戯だ。
 今日まで強化合宿が行われたとの事で、10日に選手発表となり、19日の豊田でのクウェートとのホームゲームと進む。何とか日程を調整し、豊田には参戦したい。この試合は、ブラジルワールドカップで好成績を収めるためにも、とても大事な試合なのだから。
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2011年04月02日

五輪代表2次予選2011近づく

 五輪2次予選の相手が、クウェートに決定した。
 今回の予選は、2次予選をホーム&アウェイで戦い、勝ち残った12チームを3グループに分けて、これまたホーム&アウェイの総当たり戦でトップが出場できると言うスタイル。2位になると、3チームがセントラルの総当たり戦を戦い、アフリカ代表とのプレイオフと言う、何とも魅力的なオプションとなる。
 各ラウンドのチーム数は、都度変っているが、おおむね毎回同様の予選方式が続いている。ワールドカップ予選よりも、アジア枠が小さい事もあり、各ラウンドとも1位抜けが必要。その分だけ、「番狂わせの怖れ」が高いので、戦闘能力で優位に立つ日本にとってはリスクが高いとは言えるだろう。

 クウェートとの対戦と言うのは、A代表でも非常に少なく、過去の相性もよくない。
 クウェートは82年スペイン大会に出場、フランス戦では王族が試合中に判定にクレームを付け、得点を取り消させると言う、ワールドカップ史に残るスキャンダルを演じたりした。その後も、アジアの強国として活躍、日本も86年のアジア大会の1次ラウンドで0−2に完敗している。けれども、湾岸戦争の影響で、チーム力は弱体化。以降、アジアのトップと言える活躍はしていない。
 けれども、96年のアジアカップの準々決勝では0−2の完敗。この試合は、その後幾度も手合わせをする事になる「我らが親友」とも言うべきミラン・マチャラ氏との初対決でもあった。日本の中盤のプレスをかいくぐるロングボールで攻められ、守備の弱点である相馬直樹を執拗に狙われ、GK下川健一にもミスが出て2失点。攻撃の中核と期待されていた前園真聖の不振もあり、そのまま完敗してしまった。この試合は、日本が本格的にアジアカップに取り組むようになった92年以降唯一の2点差負けでもある。
 以降は、重要な公式戦での対決は記憶になく、不思議に縁がない国だ。ただ、フランス、ドイツのワールドカップ予選では最終ラウンドに残っているし、アジアカップでも本大会には出てくる事もあり、中東の2番手国と言う地位は保っている。言わば、UAE、カタール、バーレーン、オマーンなどと同レベルと見る。したがって、もう少し手合わせの機会があってもよかったようには思うのだが、縁のおもしろさだろうか。
 そして、一連の最近の地位、実績から考えても、結構厄介な相手だろう。

 関塚氏が率いる今回の五輪代表は、(戦った選手たちには、やや失礼な言い方になるが)過日のアジア大会で堂々と優勝を飾り、順調なスタートを切っている。実際、アジアカップに出場しなかった選手を含め、香川を筆頭に既にJでもチームの中核を担うようなよい人材が非常が非常に多い。
 唯一不安と言えば、現状ではセンタバックに決定的なタレントが不足感があるくらいか。アジアカップで中央を薗田淳と鈴木大輔が固め上々の守備を見せた。先日のウズベク遠征では、村松大輔、濱田水輝らが起用された。皆よい素材だが、村松を除いてはJでの実績がまだ乏しい。唯一実績が豊富な村松は、好調時の1対1の粘り強さは格段のものがある好素材だが、上背が低く、またエスパルス移籍直後でチームで地位を確立したとは言えない点がやや不安(村松の体格はカンナバーロとそう変わらないから、上背が低い事ごときでマイナス評価をするのは失礼千万なのだが)。北京の時は、水本裕貴、青山直晃と言った実績のある選手がここを固め、チームの中核を担っていたのだが。もっとも、当時チーム安定の源泉となっていたこの2人は伸び悩み、当時まだまだ不安定だった他のポジションの選手たちがどんどんと成長し、既にA代表の中心選手となっているのだから、選手の成長曲線というものは難しいものだ。そういう観点で見れば、今回の五輪代表は、たまたまCBに早熟な選手が少ないと言えるだけで、予選本選と戦っているうちに問題なくなっていくような気もする。

 クウェート戦は決して簡単な試合にはならないだろうが、一方でそのような戦いで若い選手を伸びていくはずだ。それがタイトルマッチの醍醐味と言うもの、どのような戦いになるか期待したい。
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2010年11月25日

選手達に多額のボーナスを

 88分、ここまでメンバを一切代えていなかった関塚氏が動いた。東に代えて富山を起用。東は大観衆のブーイングをあざ笑うように(実際ニヤニヤしていたな)時間を稼ぎながらゆっくりとフィールドを去った。あの見え見えの時間稼ぎを見て、UAEのサポータ達の腹は煮えくり返っていたに違いない。しかし、UAE関係者には申し訳ないが、勝負と言うものは強い方が勝つものなのだ。

 中1日と言う、本格的な国際大会とはとても言えないような、滅茶苦茶な日程。選手達の体調は相当悪そうで、一歩目の出足が遅い。それでも、一人一人が落ち着いて球際で粘り、そうは敵ペースを許さない。しかし、イラン戦で完全に裏を突かれたトラウマか、UAEの逆襲速攻をケアし過ぎたか、4DFのラインが、やや低過ぎた分、敵に攻め込みを許し危ない場面もあった。しかし、前半の終盤には、うまく敵をいなせるようになり、むしろ有効な攻め込みは日本の方が多くなる。皆さん、何となく、何となくだが、このあたりから「後半1点取って勝ち切る」雰囲気と言うか、匂いと言うかを感じ始めませんでしたか?
 後半立ち上がりに1度サイドを破られた、入りの悪さ。このあたりは若さだな(もっとも、この場面、シュートをバーに当てた瞬間にUAEの9番は天を仰いでしまっていた、あそこで集中を切らさずに詰めを狙わなければ...そしてその姿勢の差が勝負を分けたような気もするのだが)。しかし、後の時間帯はUAEがボールを回すものの、そう危ない場面は作られない。次第に先方の疲労も顕著になっていき、上記の「匂い」はますます濃くなっていく。
 そして、決勝点。水沼が視野の広さと強いボールを蹴れる能力を発揮して深いクロス、敵DFが1枚のみで薗田と實藤がファーサイドで余っているところにピタリ。薗田は冷静に敵DFを引きつけてスルー、フリーの大外の實藤は落ち着いて正確なトラップ後、強烈に逆サイドネットに叩き込んでくれた。
 本来であれば、後はボールを回したり、前線でキープしたりして、UAEの焦りを誘うだけでよかったのだが、そこまでの経験を積んでいない選手達。割とまともに受けてしまった。しかし、この時間帯になると、敵の攻撃選手達も疲弊しており、日本の最終ラインを脅かすには至らなかった。いや、フロンターレ関係者は嬉しかろうね。
 終盤、UAEがコーナキックにGKを上げて来た時は、ほとんどのベガルタサポータは「あの場面」を思い起こした事だろう。実際、うまくこぼれ球を拾った日本は、最後山村が決定機を掴んだのだが、必死に全力疾走したGKの正面に蹴ってしまった(おお、そう言えば、あの得点を決められてしまった大前も、この世代の選手ではないか)。

 見事な金メダルである。
 やや押され気味ながら、最終ラインの組織が崩れない。最前線に個人能力の高いエースを置いて、そこを起点に逆襲速攻。セットプレイによる少ないチャンスを活かす。残り時間はうまく時計を進める。イタリアの強豪チームを思い起こさせる勝ち方ではないか。
 さらに、視点を変えれば日本の完勝振りがわかろうと言うもの。決勝点があの時間帯に入った瞬間、明らかにUAEの選手達には「やはり勝てないのか」的な空気が流れていた。それでもメンバを代えて押し込んだり、最後はGKを上げたり、諦めなかったUAEの頑張りが、決勝を一層価値の高いものにしてくれた事は確かだ。しかし、今日は「格下のチームが果敢に攻め込んで幾度か好機を掴んだものの、格上のチームが冷静にいなし、セットプレイを活かしてキッチリと勝った試合」だったのだ。
 今回のメンバは、U21と言っても、ベストとは言い難い事は以前も述べた。そのようなメンバで、ここまで見事な試合をしてくれて、しかもタイトルを取ったのだから、その価値は計り知れない。いずれの選手も、この経験を活かしてくれる事だろう。よく「このチームから五輪代表に選ばれる選手は少ない」と語られるが、そんな事は今からわかる訳がないではないか。確かに国内には(ドイツにも1人いるか)、Jで戦った実績が格段の選手が多数いる。けれども、勝負はこれからなのだ、少なくとも今回のメンバ達は、この金メダルで経験を積み、大いに自信をつけた事は間違いない。皆がロンドンの定位置争いに割って入ってくる事は間違いないだろう。

 だからこそ、日本協会にお願いしたい。彼らに多額のボーナスを。
 彼らは今後、Jでの厳しい定位置争い、そしてロンドンに向けての五輪代表の定位置争いを向かえる。それらは、今回の優勝以上に厳しくタフな戦いとなるかもしれない。
 だからこそ、今回のアジア大会初金メダルと言う快挙については、彼らに対し、日本協会も「結果」で応えるべきではないかと思うのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(8) | TrackBack(2) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月23日

ロンドン五輪代表始動

 ロンドン五輪代表チームが始動した。Jで実績を挙げた関塚隆氏が、A代表のコーチ兼任で監督に就任。まずアジア大会のメンバが発表された。

 五輪は前々回にトルシェ氏率いるチームが堂々とベスト8に進出し、合衆国に悔しいPK負けを演じた以降、アテネも北京も1次リーグで芳しい成績を挙げられずにいる。正直なところ、いずれの大会も、「選手は上々だったにもかかわらず、やり方がまずかった」と言う印象が非常に強い。
 アテネの失敗については散々愚痴を述べたが、「強化機会に恵まれ過ぎると、代表チームはかえって弱くなる」と言う不思議な現象を経験する事となった。当時の監督の山本昌邦氏の強化のやり方は、大量の選手を招集し「ラージグループ」を作り上げると言うもの。これは山本氏がコーチとして仕えていたトルシェ氏の強化方法に則ったものだったが、本大会までにベストメンバを絞る事ができず、完全な失敗に終わった。さらには、山本氏は類似の失敗をジュビロでも演じているのも、注目されてよいだろう。一方で、山本氏は、ここまでJFAの各種年代の指導を務めており、監督としても97年ワールドユースベスト8(中村俊輔、明神、柳沢、宮本ら)と言う実績があった。これらを含めて、アテネの失敗は、日本サッカーにおける1つの経験とも、1つの学習材料とも言えるだろう。
 北京の失敗も興味深い。監督を務めた反町康治氏は、アルビレックスで格段の実績を残し、就任当時は日本屈指の若手指導者と評価は非常に高かった。しかし、これまた再三愚痴を述べる事になるのだが、就任中「ただの1度も颯爽とした試合を見せる事なく、北京で惨敗」すると言う無様な結果に終わってしまった。一方で、反町氏はその後ベルマーレの監督に就任、見事な采配でこの名門クラブをJ1昇格させた手腕は記憶に新しい(現在反町ベルマーレはJ1で苦闘しているが、これは(ベルマーレには失礼な言い方になるが)選手の個人能力の問題も大きく、必ずしも反町監督の手腕の問題のみではなかろう)。なぜ、これだけの名監督が五輪代表でかくも失敗したのかと言う事も、やはり日本サッカーにおける1つの経験とも、1つの学習材料とも言えるだろう。
 さらに言うと、山本氏、反町氏の失敗により、「やはり日本人の監督では、世界で勝てないのか」とすら思う事もあった。その不安を、先日岡田氏が完全に払拭してくれた事は、我々にとってはとても大きな事だ。

 ここで、関塚氏である。
 フロンターレでの実績は言うまでもない。タイトルこそ獲得できなかったものの、フロンターレをアジア屈指のクラブまで成長させ、さらには中村憲剛と言うスタアを作り出したのは、関塚氏の手腕だ。反町氏は「戦闘能力が十分でないクラブをそこそこ勝たせた」が、関塚氏は「戦闘能力が十分でないクラブを戦闘能力が十分なクラブにした」ところが違う(もっとも、関塚氏も反町氏も、共に高校サッカーの大スタアであり、浪人して志望大学に入り、トップリーグでも活躍するなど共通点も多いのだが...大学入学時の浪人と言うと、もちろん岡田氏もなのだが)。
 また、反町氏は当初オシム氏の代表コーチングスタッフに入っていたが(たとえばアジアカップのベンチにいて、同時開催されているカナダのワールドユースの視察にいかないなど不可思議な行動もあったが)、岡田氏の就任と共にA代表からは消えてしまい、不思議な思いをしたのものだった。関塚氏は、ザッケローニ氏の数少ない日本人スタッフとなるのだろうから、最後までA代表に帯同するのだろうか。そして、ここのA代表との連携はとても重要なものになるはずだ。
 また関塚氏の出身大学により、大学閥の選考と揶揄する向きがあるが(この大学のサッカー界における大学閥が、過去色々に本サッカー界をゆがめていた事も否定しないが)、少なくともそれが関塚氏の実績をゆがめるものではない。関塚氏は国内屈指の実績ある監督の1人なのだ。

 アジアカップがJリーグ最中に開催されるため、今回のアジアカップメンバはJでレギュラ格の選手は少なくベストとは言えない陣容となっている。権田、村松、酒井(おっとこの選手はユース代表には選ばれているな)、椋原、高橋、金崎(これはエースだ)、青木、山本、大津、原口、宇佐美、大迫、もちろん香川(これは大エースか)と言った選手が選考されていない。もちろん、負傷離脱中の米本と山田も不在。今回のメンバでJでそこそこ実績あるのは(と言うか私が映像を含めて見た事があるのはだが)薗田、登里、鎌田、東、工藤、それに水沼くらいか(どうでもよいが、水沼親父と関塚氏は同年齢)。ワールドカップサポートメンバの山村と永井を含め大学生が比較的多いのは最近の傾向と言うものだろう。
 そもそも五輪代表と言うのは、10代後半から20代前半の年齢層。若者が精神的にも完全に大人に自立する年代であり、中心選手は皆トップレベルのJリーガとして活躍する。つまり、選手によっては五輪代表よりも格段に過酷な試合をJで戦っている事になる。さらに選手はこの年代、一気に成長する。昨日までユースで子供っぽかった選手が、一夜で堂々とした大人の選手になる事も珍しくない。
 しかし、A代表とは異なり、五輪代表は「全てのサッカー選手の代表」と言うプレゼンスがある訳でもない。つまり「代表に行く事が、質の高いサッカーを要求されるとは限らない」と言う非常に難しい代表チームなのだ(もちろん、ユース代表でも同じ事が言えるが、ユース代表でJに出ているようなタレントは、ユースでは王様であり、別な体験ができる)。
 そのような難しい年代のエリート達を束ねて、関塚氏がどのようなチームを作ってくれるのか、大いに期待したいところだ。
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2008年09月14日

反町監督、再起への期待 五輪代表ピッチ上の問題(下)

 と言う事で反町氏についてだが。結論を先に述べておく。
 五輪代表監督としての反町氏は、何ら評価のできない失敗だった。しかし、アルビレックス時代の実績は消え去るものではない。是非こそ、捲土重来を図って欲しい。

 反町氏の五輪代表監督振りを振り返ると、何とも重苦しい気分になってしまう。
 確かに、日本協会のサポートに残念な事は多かった。破綻しきった日程を改善すらする気がない協会首脳。そして、その破綻日程下において五輪代表強化の優先順位が低かった事は、止めとなるオーバエージ問題より前にも散見されていた。アジア大会のメンバ規制然り、ワールドユースメンバを2次予選前に融合させる絶好機だった中国トーナメントよりオールスターを優先させる判断然り。ただでさえ破綻している日本サッカー界の日程下では、ワールドカップ予選とJリーグとACLを除く試合への対応は事実上困難になっているのだ。
 けれども、そのような日本協会のバックアップ不足は深刻ではあったものの、反町氏は準備の過程で不可解な施策を連発し自ら墓穴を掘った感が強い。何よりも悲しい事に、反町氏は2年間に渡り、これだけのタレント集団を率いていながら、ただの1度も「お見事!」と言う試合を見せてはくれなかった。確かに、2次予選の敵地ベトナム戦、準備試合のアンゴラ戦、豪州戦などは「よい試合」ではあったけれど。
 本大会までにベストメンバを固めないと言う独特のやり方で散々の評価だった前任の山本氏ですらもアジア大会の一連の試合、五輪最終予選の敵地UAE戦、親善試合の韓国戦など、見事な試合を見せてくれた事があった。
 史上最低の代表監督と言われる横山謙三氏でさえ、(内容面はさておき)イタリアワールドカップ予選の国立北朝鮮戦の逆転勝利(水沼のスーパーボレーと終了間際の自殺点)のように胸のすく試合を見せてくれた事がある。何より、横山氏には井原を抜擢したと言う実績もあった(誰が監督をしても抜擢していただろうと言う突っ込みはさておき)。
 けれども、反町氏は...

 まず予選突破まで。
 反町氏は突っ込みどころ満載の采配を振るってくれた。最も強化に役立ちそうな敵地韓国戦で2軍対応、わざわざ水野と本田圭の前に3トップを起用し蓋をする愚策、この世代で最高レベルの実績を挙げている谷口の軽視、消化試合の国立マレーシア戦で無意味な3軍対応、機能しない固定メンバへの拘泥(たとえば本大会1年前、せめて1次予選勝抜き後の敵地香港戦で豊田を試していれば...)等々。
 それでも、水本、青山直を軸に堅固な守備ラインを形成。退場で10人になった国立カタール戦の終盤の綱渡り(興奮はしました)、よいペースで試合を進めながらこれ以上の不運は考えられないような敗戦を喫した敵地カタール戦を経て、最終国立サウジ戦では意図不明の中途半端な守備戦法による危機一髪など、たっぷり我々を愉しませてくれた上で予選突破に成功した。

 続いて本大会まで。年が明けた08年に入り、反町氏には次々と難しい問題が襲いかかった。
 まず、予選段階の中心選手にトラブルが次々と起こる。柏木、家長が負傷で長期離脱、水野、平山、若森島もチーム事情で出場機会が減り調子を崩す(水本の行ったり来たりもその範疇に加えてもよいかもしれない)など、チーム作りを根底から見直す事態が発生した。一方で、内田、安田、長友、香川、吉田、森重、金崎など、反町氏のチームではそれほど出場機会のなかった新しい選手の活躍が目立ち始める。もっとも、若年層の代表チーム作りの難しさはここにある。どうしても若い選手にはムラがあるから調子を落す選手が出てくるし、一方で逆に伸びてくる選手もいる。
 さらに2月早々からワールドカップ予選が始まり、岡田氏は従来この世代でA代表に選考されていた水本や本田圭に加え、内田、安田、長友、香川らを抜擢する。結果的に反町氏はこれらの中核となる選手を、準備段階で思ったように使えなくなった。しかし、これは仕方がない事だ。むしろ過去の五輪監督が恵まれていたのが異例だったのだ。アトランタの時は全く意味不明の五輪優先でA代表監督の加茂氏は前園、城らの優先選考権がなかった。シドニーの時はワールドカップ予選そのものがなかったし、トルシェ氏が双方の監督を兼任していた。アテネの際は、ジーコ氏は固定メンバに拘泥すると共に、山本氏も永田のようにジーコ氏が評価する選手を軽視するなど、アトランタ時代以上に強化が分離されていた。今回のようにオシム氏なり岡田氏が、五輪代表の中核となりそうな選手を五輪前から招集する方が当たり前であり、A代表と選手選考のバッティングもまた、若年層代表チーム作りの難しさなのだ。
 ワールドカップ予選とJリーグの兼ね合いから準備試合の数も限られたものだったが、アンゴラ戦、トゥーロン国際での上位進出、カメルーン戦とそれなりのサッカーを披露した。谷口の復帰(しつこいがこの選手は自クラブの実績はこの世代でナンバーワンと言っても過言ではなく、予選段階で軽視する理由がわからなかった)、細貝の成長(さすがに拡大トヨタカップでミランと戦った選手は経験値が違う)など中盤で「戦える」選手が増え、吉田、森重の台頭でチームの強みだった守備もさらに強化されてきた。一方で、予選時の攻撃の中核の水野の不振、家長、柏木の不在は、ただでさえFWの層が薄い事と合わせ、悩ましい問題だった。
 逆に考えれば、層が薄いポジションをオーバエージで補強すれば問題は解決し、それなりのチームで本大会を迎える雰囲気も出てきた。そして、反町氏が選んだ大久保と遠藤は、「得点力」と「中盤の変化」の問題解決と言う意味では極めて妥当な人選だった。オーバエージ問題の不手際は日本協会側の問題だが、一方でこの2人がダメとなった時点で、どうして反町氏はあきらめてしまったのか。チームに大きな改善の必要性があるからのオーバエージだったのだから、大久保に代えて佐藤寿人、遠藤に代えて中村憲剛、小笠原あたりの招集に何故拘泥しなかったのだろうか。 
 結果的に、2年の歳月が費やされたにもかかわらず、とうとう得点を取るための共通意識を身につける事なく、このチームは終わりを遂げた。

 こうして振り返ると、予選突破前後で反町氏の苦闘ぶりの色合いが異なる事に気がつく。
 予選段階までは、反町氏は、よりどりみどりの豊富な選手層に対し、自らの独自的な選手選考、配置を試みた。しかし、その試みの多くは奇策で、それらに次々と失敗する事で貴重な機会と時間を失い、結果的にチーム作りが遅れ、自ら苦しんだように思えた。やりたい事があり過ぎて、意欲が空回りしたとでも言おうか。これは現場の指導者、采配を振るう立場での苦闘だった。
 一方、予選より後は、次々と出てくる障害への対応で追われ、逆に反町氏はやりたい事はほとんどやれずに五輪本大会を終えた感が強い。五輪本大会敗退後の、あまり潔いとは言えない一連の発言も、幾多の障害の対応策を見出せなかった混乱とも見て取れる。こちらは、現場の管理者、チームマネージメントでの苦闘と言うべきか。

 では日本協会の監督選考が間違っていたのだろうか。結果が出なかった以上はその指摘は正しいのだが、少なくとも私は、氏の就任時は全くそうは思わなかった。現役時代の選手反町は大好きだった。そして、アルビレックスの監督として、一介の地方のクラブをJ1に昇格させ、さらに定着させる基盤を作った反町氏を高く評価していたし、将来はA代表監督と期待していた。したがい、五輪代表監督就任時には多いに喜んだものだった。これは私の見る目がなかっただけかもしれないが、Jリーグで秀でた若い監督を、若年層代表チームに抜擢する発想は、決して悪いものとは思えない。現実的に考えても、アフリカで実績を挙げていたトルシェ氏はさておき、西野氏や山本氏よりは、上記で厳しく批判した指導面でもチームマネージメント面でも。反町氏には格段の実績があったのだ。
 「だから外国人監督でなければ」と言う理屈を否定はしない。しかし、トルシェ氏時代のような的確な監督選考と強化プランの提供は決して容易ではない。氏にはユース代表、五輪代表、そして地元開催のA代表と全権を任せる事ができた(しかも段階的にチームを把握する時間すら提供できた)。さらに当時は今日ほど日程も破綻していなかった。J1のチーム数も少なかったし、ACLはアジアクラブ選手権時代で今ほど試合数はなかった。そして、何より氏は有能だったし、当時の日本にピタリと合った監督だった(トルシェ氏と我々の出会いについては、当時の日本のサッカーの状況を正確に把握していたアルセーヌ・ベンゲル氏の推薦があったのが大きかったのではないか)。しかし、外国人監督には、選手の把握、生活面でのフォロー、アジア独特の難しさへの対応などリスクが大きい事を忘れてはいけない。赫々たる実績のある指導者がJのクラブで失敗する事例も少なくないのだ。まして現実的に五輪代表監督に海外から招聘した監督に納得できる強化日程を現状の破綻日程下で提供できるのかも微妙なところだ。繰り返すが、トルシェ氏が優秀だったのであり、外国人指導者が皆優秀な訳ではない。それならば、日本のサッカーを熟知したJで実績ある日本人監督と言うのも1つの発想なのだ(だったのだ)。
 また、我々と同格のライバルと言える豪州や韓国は、今大会自国の監督で大会に臨み、我々よりはマシな成績を残した。彼らと比較し、我々は適切な自国指導者の育成が巧く行っていないのだろうか。
 それらを考慮して、反町氏にオシム爺さんのA代表コーチを兼任させた策が、爺さんが倒れた事で頓挫したのも確かなのだが。
 日本協会は、いや我々は、そこまで考えた反省を行うべきではないか。Jリーグで秀でた実績を挙げた監督が失敗してしまったと言う反省を。そして、以降我々はどうすべきなのか。少なくとも、「優秀な外国人指導者を招聘しよう」だけでは正しい解とは言えないだろう。
 
 そして反町氏。
 結果的に氏の五輪代表監督としての冒険は失敗だった。しかし、それはそれで経験である。氏はJリーグで堂々たる実績を残したから、五輪代表監督として闘う事ができたのだ。アルビレックスでの成功経験、今回の失敗経験、それらを活かし捲土重来して欲しい。具体的にはJでの再挑戦である。
 我々は優秀な日本人リーダを求めており、氏は今なおその貴重な候補者なのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(14) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月27日

どう得点を奪うのか 五輪代表ピッチ上の問題(中)

 今回の抜本的な敗因は「オーバエージを選ばない」日本協会(あるいは反町氏)の不首尾であり、勝敗を分けたポイントは「判断」や「工夫」の欠如だったと論じてきた。それに加えて、どうにも「イライラ」させられる時間帯が非常に多かった。

 今回手合わせしたチームは、いずれも大柄な選手を揃える国だった。過去の世界大会では、往々にしてこの手の相手には、単純なぶつかり合いを避け、素早いパスワークで勝負をかけないと、押し込まれるケースが多かった。ところが、今大会は、単純なぶつかり合いに悩まされたケースは少なかったようにも思う。たとえば、豊田の高さは3国全てに通用していた。水本、森重、細貝、谷口の4人は、競り合いにも相当な強さを発揮していた。いや、あの本田圭も単純な競り合いには、ほとんど負けていなかった。いや、ほとんどの選手が同等に競り合っていたではないか。
 そして、これはいつもの世界大会同様に、ボールを回す技術も他国と比較して遜色ない。さすがに厳しいプレッシャの中で突破する事は思うに任せなかったが。つまり、ボールを争う局面ごとにはほとんど負けていなかったのだ。
 それなのに、中々攻め切れないものだから、再三「イライラ」させられたのだと思うのだ。

 いささか逆説めく話。この大会最も「イライラ」しなかったのはナイジェリア戦で2失点した時間帯ではないか。ここでのナイジェリアの迫力ある速攻は「さすが」としか言いようがないもので、「先方が明らかに上手」と感じざるを得なかった。そのくらい差がハッキリしていれば、どんなに悔しくても「イライラ」とは感じないものだ。
 特に2点目を取られた際は、逆襲から3対2を作られたたが、森重、水本、西川の3人が、創意に満ちた巧い守備を見せ、角度のない所に敵FWアニチェべを追い出して西川がコースを消したのだが、アニチェベは完璧なトラップと鋭い反転で西川を破ってしまった。こう言うのは、心底絶望的な気分にはなるが、「イライラ」とは言わない。ところが、このように「さっぱりと殺していただける」時間帯は今大会においては、非常に少なかった。
 それ以外の時間帯は、いずれの試合でも「局面ごとには負けていないのに攻め切れない」と言う「イライラ」感に襲われる事が多かった。

 そして、攻め切れなかった要因は、合衆国戦にも指摘した「『どうやって点を取るか』が曖昧」と言う事に尽きるのではないか。内田や長友や安田の外をえぐり、豊田の空中戦、本田圭のプレイスキック。いずれも中々の武器なのに、そこから得点につなげようとする連動が見受けられないのだ。
 典型的な場面は、オランダ戦の前半の好機(になりかけた場面)。梶山が長友(だと思った)を見事に追い越し、右サイド全くのフリーに、今大会には珍しくペナルティエリアには多数の選手がなだれ込んでいる。「これは決まりそう」と期待した瞬間に梶山がボールをこね回し、結局よいボールは入れられず、逆に悪い形で奪われて逆襲を食らいそうになった。あの瞬間冗談抜きに、「このチームはサイドを突破する練習は積んでいるが、サイドから点を取る練習はしていないのではないか」とすら思った。大会直前の懸念がそのまま出たと事だろうか。
 さらに、考えてみれば、このチームは結成して2年近く経つものの、パスワークの妙からの得点は非常に少なかった。ほとんどがセットプレイと選手の個人技の披露によるもの。唯一の例外が、先日の豪州戦の香川の先制点だったのだが、あれはぬか喜びだったのだなと。

 そう言う見地で対照的だったのは女子代表だ。とにかく得点への筋道は明確だった。
 澤と阪口が精度のよいボールを縦に入れ、永里のキープと大野とすり抜けを使った中央突破。
 宮間が個人技で、近賀が後方からタイミングよい攻め上がりで、丸山が短い距離のダッシュの速さで、それぞれサイドを破り、センタリングを入れる。ただし、タッチ沿いから強いボールを鋭角に蹴る脚力はないので、敵DFを完全に抜き去りペナルティエリアあたりまで切れ込む必要があるが。
 女子代表の攻撃は、基本的には以上の2方法の併用。そして、いずれの攻撃を選択するか読まれないように、4人のMFがあちらこちらに顔を出して変化を付けていた。
 佐々木監督が就任したのが今年の1月なのだから、半年強でここまでチームを作り上げたのだから、大したものである。

 もちろん、チーム完成途上期ならば「『どうやって点を取るか』が曖昧」と言う状況もあるだろう。しかし、言うまでもなく、五輪本大会がこのチームの目標だったのだから、言い訳の余地はない。
 と言う事で、極めて月並みな議論である、反町監督批判に続きます(って、あと1回で終わるのだろうか)。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(12) | TrackBack(1) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月25日

精神力以前で負けた事を忘れてはいけない 五輪代表ピッチ上の問題(上)

 女子代表の限界近くまで出し切った惜敗振りが、あまりに颯爽としていたので、一層男への風当たりが強い。確かに、今回の反町氏が率いた五輪代表については不満が多い。その根本要因は先日述べたように、オーバエージ不在と言う日本協会の真剣さの欠如にあった。
 ただし、根本要因がダメだったと言ってしまうと議論はそれで完了してしまう。ピッチ上の問題点はそれでそれで検討し、反省すべきではあろう。と言う事で遅ればせながら、そのあたりについて何回かに分けて講釈を垂れてみたい。
 
 一連の五輪代表批判で気になるのは、「戦う姿勢の欠如」とか「走りが足りない」とか、あまりに精神論に偏った批判が多い事だ。上記した女子との対比が一層その印象を高めているのかもしれない。しかし、私は今回の五輪代表のピッチ上の不首尾を、単に精神論で片付けるのは非常に危険だと思っている。

 例えば合衆国戦。この試合は、後半立ち上がりの勝負どころを巧く突かれた事に尽きる。前半は高温多湿で動けない敵を圧倒しながら決めきれず。初戦で手堅く行こうとし過ぎたドイスボランチが慎重すぎたのが痛かった。そして後半、先制されてからは焦りから攻めが上滑り。終盤、パワープレイで攻めかけ、突破しても最後のラストパスに精度を欠き、明らかなPKを取ってもらえない不運もあり、攻め切れなかったもの。
 敗因は判断力の欠如であり、さらには崩し切れない技巧や工夫の不足だった。

 例えばナイジェリア戦。この試合では、後半非常に強い相手に対して、勝ちたい気持ちが出過ぎて前掛りになってしまったのが致命的だった。誤解されては困るが、点を取るために前に出るのはまちがっていない(前に出ないと合衆国戦のように腰が引けた戦い方になってしまう)。しかし、サイドバックとボランチが揃ってズルズルと前に出るのは避けるべきだし、前に出てボールを受けられないと見たらすぐに後方に下がるべく(非常に過酷だが)執拗に上下動を繰り返す必要があるのだ。しかし、失点の場面は皆が揃って前に行ってしまった。今大会よく頑張っていた細貝と谷口にあれ以上要求するのは酷かもしれないが、(反町氏がどう評価していたかはさておき)事実上2人がチームの中核だったのだから、ナイジェリアに一矢報いるためには、細貝と谷口がより激しい上下動を行うしかなかったのだ。
 また確かに勝ちたい試合ではあったが、最悪引き分けでも「生き残れる」と言う試合で、あの強い相手に皆で前に行き過ぎ逆襲のスペースを提供してしまったのは、若さの現われとも言えるだろう。
 そして、ナイジェリアの速攻は、スピードと言い、技巧の冴えと言い、選手相互の意思統一と言い、実に見事。当方のストロングポイントである、CBとGKの良さを完全に上回っていた。1点目の時の2トップが水本と森重をスクリーンした身体の使い方、2点目よくコースを切った西川のさらに上を行くシュート力。「恐れ入りました」の世界であった。
 敵GKのミスをから1点差にする事に成功したが、それが精一杯だった。
 敗因は、相手の戦闘能力が1枚上だった事と、若さを露呈した攻め急ぎだった。

 既に敗退が決まっていたオランダ戦だけは、前2試合とは状況が違った。どうしても勝ち点3が欲しいオランダは守備を厚くして、逆襲速攻から確実に勝利を狙ってきた。ところが、日本はそんなに弱いチームではなく、互角の攻防が継続した。オランダも暑さによる消耗を恐れたのかもしれないが、作戦的には失敗と言える内容だった。ところが勝負は思わぬところでついてしまった。
 主審が、前半豊田と谷口が倒されたPKを取らなかったくせに、本田圭の間抜けな反則だけはしっかりと笛を吹いてきたのだ(生真面目な南米の主審は、往々にして両チームの過去の実績から「決めてかかったような判定」をするものだ、例外は2002年ね(笑))。まあ、PKを取られてもおかしくない愚行だったのは確かだが。このPKの他には西川が脅かされたのは、僅かにマッカイが後方からの何でもないボールを振り向きながら枠近くに飛ばしてきた場面くらいだった。
 もっとも、先制されてからの日本は、分厚く守るオランダの牙城をおびやかす程の技巧も判断も、ほとんど見せられなかったが。確かにこの試合の終盤は「戦う姿勢が欠如」していたように思う。
 いささか蛇足だが、今大会見事な敢闘精神でチームを引き締めた岡崎が、全く主審の判定基準を読む事ができず、ルーズボールになる度に反則を取られて、再三再四ボールを失ったのは、この試合においては相当痛かった。岡崎の「戦う姿勢」は素晴らしかったし、この姿勢を継続すれば、将来的に大化けする可能性が十分あるタレントだが、主審の癖を理解する判断力は身につけてもらわなければならない。
 敗因は軽率な本田圭のプレイであり、守備を固められた状態で敵を崩す技巧や発想の不足だった。唯一この試合だけが、終盤「勝利への熱意」の欠如が顕著だった。まあ、既に敗退が決まっていて、チームメートが自爆的な反則を行い、かつ主審が当方の反則だけ取る、と言った状況が重なって、「なお勝利のために献身せよ」と言うのは無理な注文だろう。

 以上、簡単に今回の日本の3試合を振り返ったが、1次リーグ敗退を決めた最初の2試合の敗因は「相手よりも判断が悪かった事」による失点、「相手より工夫が足りなかった事」による攻撃力不足だったと見る。「相手より頑張らなかった事」ではない。繰り返すが、精神力の問題以前の問題があったにもかかわらず、精神論に議論を持ち込むのは、敗因を見誤る事になる。
 ただし、「判断」や「工夫」の欠如はあったにしても、フラストレーションを感じさせる戦い方だった事も確かだった。特に個人の戦闘能力にそれほど差があるように見えなかった合衆国戦は、それが顕著だった。それについては明日以降。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(14) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月13日

日本協会は五輪にもっと真剣に臨むべきだった

 諸事情で更新できずにいる間に、ナイジェリアに敗北し1次リーグ敗退が決定、オランダにも敗れて3戦全敗での帰国になってしまった。3試合とも、互角(あるいはそれ以上)の中盤戦を展開、点が取りきれないうちに、勝負ところで守り切れずに先に失点するパタンを繰り返した。

 そもそもオーバエージを選考せずに大会に臨む事自体、日本協会も監督も真剣さが不足している訳であり、勝負はそんな甘いものではなかったと言う事だ。負けた事はもちろんだが、その準備に真剣さが欠けていた事は、非常に悔しいし、腹も立っている。しかし、一方で相応の安心感と満足感もある。あれだけいい加減な準備体制で、しかもほとんどぶっつけ本番のチームで、あそこまで各国に抵抗できたからだ。逆説的に言えば、いかに日本のサッカーの基盤がしっかりしてきたかを、改めて示す大会だったとも言える。

 いずれの強国が相手でも、日本が中盤でそれなりの互角の展開に持ち込める事は、過去のワールドカップや五輪を見ればよくわかっていた事だ(ブラジルとアルゼンチンと互角の試合ができるかはさておき)。しかし、言うまでもなく、問題はその互角の中盤戦から、いかに点を取って勝ち切る事ができるか、あるいはいかに丁寧に守備を行い守り切る事ができるかなのだ。そして、今回のチームには全くそのプラスアルファが見えなかった。
 攻撃については、香川が内田、安田、長友に展開するところまでの連携以降は、各選手のヒラメキ任せ。セットプレイについても、トリックプレイには見るものがあったが、蹴り込まれるボールと飛び込む選手に有意な連動は見られなかった(オランダ戦後に、友人が指摘してくれたのだが「エースの青山直」不在は大きかったのかもしれない)。
 守備についても、合衆国戦の失点は明らかにチームとしての経験不足。集中しなければならない後半開始早々の戦い方が、あまりに甘かった。長友、水本とチームの軸となるべき存在の選手が若さを露呈した。ナイジェリア戦も「勝ちたい」気持ちはわからなくもないが、あの強い相手に対して、内田、安田、本田拓、細貝と4人揃って、あそこまで前掛りになっては、逆襲速攻の餌食になっても仕方がない。香川の不用意なボールの奪われ方も含め、これも若さの露呈であろう。
 そう考えてくれば、今回のオーバエージ不在が実に痛かった事、いや適切なオーバエージ選手を選考していれば事態は飛躍的に改善されていた可能性が高い事が理解できよう。そもそも年代別代表チームは、どうしても人材の薄いポジションが出てくるものだ。ただでさえよいFWが他ポジションに少ない日本だが、特にこの世代はFWに決定的な人材を欠いていたために、上記で悩んだ攻撃面の問題が顕著になった。中盤後方にオーバエージ選手を起用していれば、あのような不用意な失点はそうは食らわなかった事だろう。さらに言えば、経験豊富な選手がいれば、勝負どころの見極めや駆け引きも全然違っていただろう。
 
 それなりの費用をかけ、Jリーグの真っ最中に多くの選手を拘束して大会に臨み、かつ結構強い国と国際試合をする得難い機会だったのだから、やはりもっと真剣に大会に臨むべきではなかったのか。13日発売のエルゴラッソで川端暁彦氏が
僕たちはサッカーが好きで好きでどうしようもないがゆえに忘れてしまいがちだが、多くの日本人にとってサッカーはそこまで重要ではないし、スポーツの中に限っても一番の存在ではない。そんな日本にとって、五輪は勝負すべき大会ではなかったか。ここでの勝利は決して刹那の栄光でなく、「日本サッカーの未来」にも確実に寄与するものではなかっただろうか。
と述べ、多くの国民が注目する五輪に真剣に臨まなかった日本協会を批判している。現実的に現状の日本サッカー界の「破綻する日程」を考慮すれば、どこまで五輪を重視できるかどうかは難しいところだが、この川端氏の意見は非常に説得力があるものだ。
 人材不足のポジションにオーバエージを使うべきだったのだ。そして、過去も幾度も述べたが、「破綻する日程」の日本サッカー界だからこそ、早い段階で各クラブと連携した活動で、オーバエージを選考しておくべきだったのだ。
 負けるには負けるなりの幾多の要因があるものだ。今回の3連敗についても、様々な要因がある。しかし、今大会の敗退の主要因は「オーバエージの不選考」につきるのであり、さらに結果がそうなったのは、「オーバエージ選考の遅延」が悪かったのだ。他にも無数に失敗はあったが、根底的な敗因はそこに尽きる事を間違えるべきではない。つまり、敗因は「日本協会の不適切な準備」そのものだったのだ。
 
 結びに余談。
 準備面では論外だっただけが、今大会の不出来でピッチ上の日本サッカーの進み方を全否定するのは危険に思う。例えば、一部に「ボール回しばかりに拘泥する日本サッカー」を否定する論議があった。しかし、4年前に「速く攻める事が得点への近道」と手段と目的を取り違えた理屈から長いボールを最前線に放り込む事に拘泥した監督で痛い目にあった事は忘れてはいけない。
 繰り返すが、今大会の敗因はレギュレーションを的確に活かさなかった協会のいい加減な準備にある。いかにボールを素早く回し点を取るのか、ボール保持の時間を長くして守るのか。それらのプラスアルファを積み上げる以前の問題で敗れた事を、正しく認識すべきではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(37) | TrackBack(3) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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